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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B23K
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 一部申し立て 2項進歩性  B23K
管理番号 1396272
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-19 
確定日 2023-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6952218号発明「衝突防止の方法およびレーザマシニングツール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6952218号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2〜11〕、〔12〜18〕について訂正することを認める。 特許第6952218号の請求項3、9〜13に係る特許を維持する。 特許第6952218号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6952218号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜18に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)9月23日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年9月24日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月29日にその特許権の設定登録がされ、同年10月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、その手続の概要は以下のとおりである。
令和 4年 4月19日 :特許異議申立人 弁理士法人大手門国際特許事務所(以下、「申立人」という。)による請求項1、3、9〜13に係る特許に対する特許異議の申立て
同 年 6月29日付け:取消理由通知
同 年 9月29日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(この訂正請求による訂正を以下「本件訂正」という。)
同 年11月15日 :申立人による意見書の提出


第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は、各訂正事項について特許権者が付したものである。)

(1)一群の請求項〔1〜11〕について
ア 訂正事項1
本件訂正前の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
本件訂正前の請求項2を、「レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップは、切断片(600;700)の切断輪郭(602;706)に沿って、切断輪郭(602;706)の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識することと、を特徴とする方法。」と訂正する。(請求項2を引用する請求項4、11も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項3
本件訂正前の請求項3を、「レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
前記画像は時間をずらして撮影されることと、前記工作物(112)の時間的により早い画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位が検出されることと、を特徴とする方法。」と訂正する。(請求項3を引用する請求項4、11も同様に訂正する。)

エ 訂正事項4
本件訂正前の請求項4を、「請求項2または3に記載の方法であって、前記変化部位の3Dオブジェクトはモデル化され、前記3Dオブジェクトと前記レーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックされることを特徴とする方法。」と訂正する。(請求項4を引用する請求項11も同様に訂正する。)

オ 訂正事項5
本件訂正前の請求項5を、「レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、を含み、更に:
− ある画像において、点から成りかつ切断輪郭(602)の境界線と平行に位置する、少なくとも2つの形状(1202、1204)を計算するステップであって、1つの形状(1202)は前記境界線の内側に位置し、1つの形状(1204)は前記境界線の外側に位置する、計算するステップと、
− 前記形状(1202、1204)の前記点に従って画像画素を抽出するステップと、
− 各形状(1202、1204)について画素輝度のヒストグラムを計算することによって、前記画像画素を正規化するステップと、
− 前記ヒストグラムを、入力層、複数の内部層、および出力層を備える深層ニューラルネットワークに入力するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークを用いて前記ヒストグラムを処理するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークによって変数を出力するステップと、
− 前記変数の値が閾値の第1の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、前記変数の値が閾値の第2の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識するステップと、を含むことを特徴とする方法。」と訂正する。(請求項5を引用する請求項6〜8、11も同様に訂正する。)

カ 訂正事項6
本件訂正前の請求項9を、「レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
前記認識は、前記工作物(112)の切断片の予め事前計算されたあり得る位置に基づくことと、を特徴とする方法。」と訂正する。(請求項9を引用する請求項11も同様に訂正する。)

キ 訂正事項7
本件訂正前の請求項10を、「レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること、を特徴とする方法。」と訂正する。(請求項10を引用する請求項11も同様に訂正する。)

ク 訂正事項8
本件訂正前の請求項11を、「請求項2から10のいずれか1項に記載の方法であって、前記レーザマシニングヘッド(102)が、その軌跡を利用して、前記変化部位を迂回することまたは停止することが見込まれることを特徴とする方法。」と訂正する。

ケ 訂正事項9
明細書の段落【0009】を、「この目的は、請求項2、3、5、9、10に記載の方法、または請求項12に記載の数値制御式レーザマシニングツールによって達成される。」と訂正する。

コ 訂正事項10
明細書の段落【0010】を、「本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
−マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
−工作物の画像を撮影するステップと、
−工作物の画像の変化部位(change)を検出するステップと、を含み、
−変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
−所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
−衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
工作物の画像の変化部位を検出するステップは、切断片の切断輪郭に沿って、切断輪郭の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識することと、を特徴とする。」と訂正する。

サ 訂正事項11
明細書の段落【0011】を、「機械の修理およびダウンタイムに繋がる切断ヘッドと工作物の間の衝突を防止するために、本発明に係る衝突防止方法は、機械の内部を少なくとも1つのセンサでモニタすることを提案する。好適なセンサは、例えば、ToF(time−of−flight)カメラまたはCCD/CMOSカメラなどのカメラであり、好ましくはCMOSカメラである。センサからの実データを使用して、傾斜または流出した切断片などの傾斜したオブジェクトが認識される。切断ヘッドの計画される軌道とセンサが記録した傾斜したオブジェクトとを組み合わせることによって、衝突の早期の認識が可能になる。かかる事象が発生した場合、機械は停止するか、または例えば、Z軸を上げることによって危機的な箇所を迂回する。例えば、1つのカメラは、様々な角度または視点から画像を生成するための、デュアル型センサまたはステレオセンサを備え得る。これらの画像は同時に、または続けてすぐに、例えば1秒未満の間隔で、記録することができる。同様に、深度表現または深度認識のための情報を提供する、様々な角度または視点からの画像を生成するために、カメラまたはレンズを空間的に移動させることが可能である。複数のカメラを使用してもよい。工作物の時間的により早い画像に対する、工作物の画像の1つ以上の変化部位が検出される。時間的により早い画像は、上記の画像に直接先行するものであり得る。上記の画像が今度は後ほど、後続の画像にとっての時間的により早い画像になる。」と訂正する。

シ 訂正事項12
明細書の段落【0014】を、「本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
画像が時間をずらして撮影されることと、工作物の時間的により早い画像に対する工作物の画像の変化部位が検出されること、を特徴とする。このことにより高速画像処理が可能になる。」と訂正する。

ス 訂正事項13
明細書の段落【0016】を、「本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、を含み、更に:
−ある画像において、点から成りかつ切断輪郭の境界線と平行に位置する、少なくとも2つの形状を計算するステップであって、1つの形状は境界線の内側に位置し、1つの形状は境界線の外側に位置する、計算するステップと、
−形状の点に従って画像画素を抽出するステップと、
−各形状について画素輝度のヒストグラムを計算することによって、画像画素を正規化するステップと、
−ヒストグラムを、入力層、複数の内部層、および出力層を備える深層ニューラルネットワークに入力するステップと、
−深層ニューラルネットワークを用いてヒストグラムを処理するステップと、
−深層ニューラルネットワークによって変数を出力するステップと、
−変数の値が閾値の第1の側にあることから、切断輪郭内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、変数の値が閾値の第2の側にあることから、切断輪郭内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識するステップと、を含むことを特徴とする。」と訂正する。

セ 訂正事項14
明細書の段落【0025】を、「本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
工作物の切断片の予め事前計算されたあり得る位置に基づくことと、を特徴とする。この目的のために、切り出されるべき部片である切断片の輪郭が回転され、あり得る位置に保存される。回転は軸、例えば垂直軸もしくはz軸を中心に、または更にはいくつかの軸を中心に、行われ得る。」と訂正する。

ソ 訂正事項15
明細書の段落【0026】を、「本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
切断片が識別され、その位置がこの切断片の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物の輪郭と比較されること、を特徴とする。その場合、ランタイムまたはマシニング時間中に単純なマッチングまたは比較アルゴリズムしか必要とならず、このことにより時間が節減され、この結果プロセスがより高速になる。」と訂正する。

タ 訂正事項16
明細書の段落【0027】を、「レーザマシニングヘッドが変化部位を迂回するかまたは停止するように駆動されることもまた実現され得る。レーザマシニングヘッドの速さ、加速度、および/もしくは位置に、または変化部位の、すなわち工作物の傾斜した部分もしくは分離された部片の位置に起因して、それ以上の迂回が不可能な場合には、停止または緊急停止の制御によって、衝突を防止することができる。衝突が防止可能な場合は、変化部位が回避または迂回される。その後レーザマシニングヘッドはそれに応じて駆動される。」と訂正する。

チ 訂正事項17
明細書の段落【0073】を、「図8は、画像処理によって抽出された部片を示す、図7の切り抜かれた部片の概略的表現を示す。カメラ画像中の傾斜した切断片700の輪郭800が判定される。この目的のために、例えば減算アルゴリズムが使用される。この判定はグラフィック処理ユニット214においても行われる。」と訂正する。

ツ 一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
本件訂正前の請求項1〜11は、本件訂正前の請求項11が請求項1から10のいずれかを引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1〜11〕に対して請求されたものである。また、訂正事項9〜17の明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1〜11〕について請求されたものである。
さらに、特許権者は、訂正後の請求項3、5、9、10についての訂正が認められる場合には、一群の請求項〔1〜11〕とは別の訂正単位とすることを求めている。

(2)一群の請求項〔12〜18〕について
ア 訂正事項18
本件訂正前の請求項12を、「マシニングすべき金属工作物を受け入れるためのマシニング空間(106)と、前記工作物をマシニングするためのレーザマシニングヘッド(102)と、を有する、数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、
数値制御ユニット(202、1012)と、
前記マシニング空間(106)の少なくとも一部およびその中に配置されている前記工作物(112)を撮影する少なくとも1つの光センサ(212)を有する、光センサ系と、
前記光センサ系に接続され前記工作物(112)の変化部位を認識するべく前記光センサ(212)からのデータを処理するように構成されており、かつ、前記数値制御ユニット(202、1012)に接続されている、グラフィック処理ユニット(214)と、を備え、
前記グラフィック処理ユニット(214)は、変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識するように構成されていることと、
前記グラフィック処理ユニット(214)および/または前記数値制御ユニット(202、1012)は、所定の切断プランならびに/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置および/もしくは軌跡(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックするように構成されていることと、
前記数値制御ユニット(202、1012)は、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されていることと、
前記光センサ(212)は、時間をずらして前記工作物(112)を撮影することと、
グラフィック処理ユニット(214)は、時間的により早く撮影した前記工作物(112)の画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位を認識することと、
を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。」と訂正する。(請求項12を引用する請求項13〜18も同様に訂正する。)

イ 訂正事項19
本件訂正前の請求項13を、「請求項12に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記光センサ系は、少なくとも2つのカメラ(212)を備えることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。」と訂正する。(請求項13を引用する請求項14〜18も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項20
本件訂正前の請求項18を、「請求項12から17のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記カメラシステムおよび/または前記グラフィック処理ユニット(214)は、固有のカメラパラメータの第1の較正と、前記数値制御式レーザマシニングツール(100)の座標系と比較した前記光センサ(212)の座標系の並進および回転のパラメータの第2の較正と、を実行するように構成されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。」と訂正する。

エ 訂正事項21
明細書の段落【0028】を、「マシニングすべき金属工作物を受け入れるためのマシニング空間と、工作物をマシニングするためのレーザマシニングヘッドと、を有する、本発明に係る数値制御式レーザマシニングツールは、
− 数値制御ユニットと、
− マシニング空間の少なくとも一部およびその中に配置されている工作物を撮影する少なくとも1つの光センサを有する、光センサ系と、
− 光センサ系に接続され工作物の変化部位を認識するためにセンサからのデータを処理するように構成されており、かつ、数値制御ユニットに接続されている、グラフィック処理ユニットと、を備え、
グラフィック処理ユニットは、変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識するように構成されており、
グラフィック処理ユニットおよび/または数値制御ユニットは、所定の切断プランならびに/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置および/もしくは軌跡に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックするように構成されていることと、
数値制御ユニットは、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されていることと、
光センサは、時間をずらして工作物を撮影することと、
グラフィック処理ユニットは、時間的により早く撮影した工作物の画像に対する工作物の画像の変化部位を認識することと、を特徴とする。」と訂正する。

オ 訂正事項22
明細書の段落【0030】を、「光センサ系が少なくとも2つのカメラを備えることが実現され得る。画像処理を伴わないCMOSカメラまたは画像取得ユニットの使用によって非常に高い処理速度が可能になり、この結果、レーザマシニングヘッドが高速であっても十分な応答時間が利用可能である。4つ以上のカメラの場合、例えば、より良好な解像度が達成でき、また視差を低減できる。」と訂正する。

カ 一群の請求項
本件訂正前の請求項12〜18は、本件訂正前の請求項18が請求項12から17のいずれかを引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔12〜18〕に対して請求されたものである。また、訂正事項21〜22の明細書に係る訂正は、一群の請求項〔12〜18〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件
(1)一群の請求項〔1〜11〕について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、
a 本件訂正前の請求項2を、請求項1の記載を引用しない請求項(独立形式)に改め、
b 本件訂正前の請求項1にあった「直立状態のオブジェクト」、「前記直立的なオブジェクト」を、「傾斜したオブジェクト」、「前記傾斜したオブジェクト」に、
c 本件訂正前の請求項2の「測定点(704)が切断片(600;700)の切断輪郭(602)に沿って定められ、輝度および/または色値についてモニタされること」を、「前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップは、切断片(600;700)の切断輪郭(602;706)に沿って、切断輪郭(602;706)の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識することと、」に、
訂正するものである。
上記bの訂正について、本件特許の明細書の段落【0011】には、「傾斜または流出した切断片などの直立的なオブジェクト」と記載されていることに鑑みれば、本件訂正前の請求項2が引用する請求項1における「直立的なオブジェクト及び「直立状態のオブジェクト」が「傾斜または流出した」切断片などのオブジェクトを意味し、「直立的な」オブジェクトには、傾斜または流出したものを包含するものであったものを、本件訂正により「傾斜」したオブジェクトに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、上記cの訂正については、本件訂正前の請求項2の発明特定事項である「測定点(704)が切断片(600;700)の切断輪郭(602)に沿って定められ、輝度および/または色値についてモニタされること」を、「測定点」及び「輝度および/または色値」について限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
以上から、訂正事項2についての訂正は、本件訂正前の請求項2について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に規定する他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る訂正について、上記(ア)a、bの訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であることは明らかである。また、上記(ア)cの訂正に関し、特許明細書等には以下の記載がある。
・段落【0011】の「傾斜または流出した切断片などの直立的なオブジェクト」
・段落【0013】の「測定点が切断片の切断輪郭に沿って定められ、輝度および/または色値についてモニタされることが実現され得る。測定点のこの配置によって、カラー‐アロング‐エッジアルゴリズム(colour−along−edges algorithm)などの、非常に効果的なアルゴリズムの使用が可能になる。」
・段落【0058】の「図7は、工作物112の切り抜かれた部片または切断片700の概略的表現を示す。図7の上側の2つの図は今度は、1つ以上のカメラからの撮影したものであり得る。図7の最も下の図には、工作物112の画像の変化部位を検出するための、カラー‐アロング‐エッジアルゴリズムが描かれている。」
・段落【0065】〜【0071】の「・・・測定点704を使用して、工作物112の画像の変化部位を検出する。
ここで、切断片700が傾斜すると、第1のステップにおいて、カメラに到達する輪郭706に沿った光の量の変化が検出される。・・・
傾斜した切断片700の一部が残っている工作物112の下に隠れ、この結果強いコントラストが生まれる。ここではこのコントラストは、白色と黒色の間の変化として示されている。実際には、色値、輝度値、および/またはコントラスト値の変化を使用することができる。
・・・図7の一番下の図によれば、輪郭706内にある測定点704の色値と、輪郭706の外側に位置する点との間の差が判定され、次いで評価される。
反射した光の両方の色値が同じであるかまたは非常に僅かしか離れていない場合には、切断片700は傾斜していないか(図7、上)、または、傾斜した切断片700および残っている工作物112は、ほぼ同じ高さ(図7、中)に、例えば切断片700の下側左のコーナーの場合である。・・・
両方の色値が異なる場合には、切断片700はこれらの測定点においてもはや輪郭706内にはなく(図7、中央)、例えば切断片700の上側左のコーナーの場合である。・・・
両方の色値が部分的に異なる場合には、切断片700はこれらの測定点において輪郭706の外側でかつ残っている工作物112よりも上に位置しており(図7、中央)、例えば切断片700の上側右のコーナーの場合である。この場合、切断片700が立ち上がり閾値を超過しているので、衝突のリスクがある。」
上記の各記載、及び図7の記載に鑑みれば、「切断片(600;700)の切断輪郭(602;706)に沿って、切断輪郭(602;706)の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点」とが「測定点」として定められるものであること、「輝度および/または色値」のモニタが、「工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップ」についてのものであり、かつ、「各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識すること」であることが理解されるから、上記(ア)cの訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用しないものとするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
「[図7]



なお、請求項2を引用する請求項4、11は、請求項2についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項2を引用する請求項4、11の訂正についても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
訂正事項2は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項2について、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものと認められる。
そこで、独立特許要件について検討すると、訂正事項2により訂正された請求項2における、「前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップは、切断片(600;700)の切断輪郭(602;706)に沿って、切断輪郭(602;706)の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識すること」との構成は、申立人が提出した甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも記載も示唆もないことから(後述する、甲1発明(下記第7の1(3))、甲2に記載された技術的事項(下記第7の2(2))及び甲3に記載された技術的事項(下記第7の3(2))を参照。)、本件訂正後の請求項2に係る発明が当業者にとって容易になし得たということはできない。
また、他に独立特許要件を満たさない理由も発見しない。
したがって、本件訂正後の請求項2に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を、請求項1のみを引用するものとした上で独立形式に改め、本件訂正前の請求項1にあった「直立状態のオブジェクト」、「前記直立的なオブジェクト」を、「傾斜したオブジェクト」、「前記傾斜したオブジェクト」に訂正するものであるところ、上記イ(ア)において、訂正事項2のbの訂正について説示したと同様に、訂正事項3についての訂正は、本件訂正前の請求項3について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に規定する他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3に係る訂正は、上記イ(イ)において、訂正事項2のa、bの訂正について説示したと同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

なお、請求項3を引用する請求項4、11は、請求項3についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項3を引用する請求項4、11の訂正についても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
本件訂正前の請求項3について特許異議申立がされているので、訂正事項3について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、請求項1から3のいずれか1項を引用していた本件訂正前の請求項4を、請求項2又は請求項3を引用する本件訂正後の請求項4に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

なお、本件訂正前の請求項4を引用する請求項11は、請求項4についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項4を引用する請求項11の訂正についても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
訂正事項4は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項4について、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正と認められる。
そこで、独立特許要件について検討すると、訂正事項4により訂正された本件訂正後の請求項2又は請求項3を引用する請求項4は、本件訂正後の請求項2及び請求項3についてと同様の理由(上記イ(ウ)及び下記第7の4(1)を参照。)により、甲1発明(下記第7の1(3))、甲2に記載された技術的事項(下記第7の2(2))及び甲3に記載された技術的事項(下記第7の3(2))を参照。)に基づいて、当業者にとって容易になし得たということはできない。
また、他に独立特許要件を満たさない理由も発見しない。
したがって、本件訂正後の請求項4に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5を、請求項1のみを引用するものとした上で独立形式に改め、本件訂正前の請求項1にあった「直立状態のオブジェクト」、「前記直立的なオブジェクト」を、「傾斜したオブジェクト」、「前記傾斜したオブジェクト」に訂正するものであるところ、上記イ(ア)において、訂正事項2のbの訂正について説示したと同様に、訂正事項5についての訂正は、本件訂正前の請求項5について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に規定する他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5に係る訂正は、上記イ(イ)において、訂正事項2のa、bの訂正について説示したと同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

なお、請求項5を引用する請求項6〜8、11は、請求項5についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項5を引用する請求項6〜8、11の訂正についても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
訂正事項5は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項5について、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものと認められる。
そこで、独立特許要件について検討すると、訂正事項5により訂正された本件訂正後の請求項5における、「− ある画像において、点から成りかつ切断輪郭(602)の境界線と平行に位置する、少なくとも2つの形状(1202、1204)を計算するステップであって、1つの形状(1202)は前記境界線の内側に位置し、1つの形状(1204)は前記境界線の外側に位置する、計算するステップと、
− 前記形状(1202、1204)の前記点に従って画像画素を抽出するステップと、
− 各形状(1202、1204)について画素輝度のヒストグラムを計算することによって、前記画像画素を正規化するステップと、
− 前記ヒストグラムを、入力層、複数の内部層、および出力層を備える深層ニューラルネットワークに入力するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークを用いて前記ヒストグラムを処理するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークによって変数を出力するステップと、
− 前記変数の値が閾値の第1の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、前記変数の値が閾値の第2の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識するステップと、を含む」との構成は、申立人が提出した甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも記載も示唆もないことから(後述する、甲1発明(下記第7の1(3))、甲2に記載された技術的事項(下記第7の2(2))及び甲3に記載された技術的事項(下記第7の3(2))を参照。)、本件訂正後の請求項5に係る発明が当業者にとって容易になし得たということはできない。
また、他に独立特許要件を満たさない理由も発見しない。
したがって、本件訂正後の請求項5に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、同様に、本件訂正後の請求項5を引用する本件訂正後の請求項6〜8に係る発明も特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

カ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、本件訂正前の請求項9を、請求項1のみを引用するものとした上で独立形式に改め、本件訂正前の請求項1にあった「直立状態のオブジェクト」、「前記直立的なオブジェクト」を、「傾斜したオブジェクト」、「前記傾斜したオブジェクト」に訂正するものであるところ、上記イ(ア)において、bについて説示したと同様に、訂正事項6についての訂正は、本件訂正前の請求項9について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に規定する他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6に係る訂正は、上記イ(イ)において、訂正事項2のa、bの訂正について説示したと同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

なお、請求項9を引用する請求項11は、請求項9についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項9を引用する請求項11の訂正についても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
本件訂正前の請求項9について特許異議申立がされているので、訂正事項6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

キ 訂正事項7について
(ア)訂正の目的
訂正事項7は、
a 本件訂正前の請求項10を、請求項1のみを引用するものとした上で独立形式に改め、
b 本件訂正前の請求項1にあった「直立状態のオブジェクト」、「前記直立的なオブジェクト」を、「傾斜したオブジェクト」、「前記傾斜したオブジェクト」に、
c 本件訂正前の請求項10における「切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置と比較される」との構成を、「切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること」に、
訂正するものである。
上記bの訂正について、上記イ(ア)において、訂正事項2のbの訂正について説示したと同様に、また、上記cの切断片の位置の訂正について、比較の対象を限定したものと認められることから、訂正事項7についての訂正は、本件訂正前の請求項10について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第4号に規定する他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7に係るa、bの訂正は、上記イ(イ)において、訂正事項2のa、bの訂正について説示したと同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは明らかである。また、訂正事項7に係る「切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること」との、切断片の比較の訂正については、特許明細書等の段落【0074】〜【0081】の「図9は、抽出された部片のマッチングの概略的表現を示す。・・・
切断プランからまず、カラー‐アロング‐エッジアルゴリズムで検出された、危機的な切断片700が選択される。カメラ画像(図8を参照)とは対照的に、部片700の完全な輪郭900が切断プランから取得される。
ある可能なマッチングアルゴリズムは、以下に記載するように機能する。
元の輪郭900を、3Dフィッティングアルゴリズムによって、1つの、いくつかの、または3つ全ての軸に沿って回転させる。この結果、輪郭900は、切断片700が存在し得る全てのあり得る位置においてモデル化される。例として、ここでは輪郭900a、900b、および900cが示されている。
・・・輪郭900a、900b、および900c、または切断片のこのモデル化は、・・・切断の開始前に行うことができる。
次に、モデルの情報が利用可能でありかつ切断片が傾斜している場合、カメラが認識した傾斜した部片700の輪郭800を、モデル900a、900b、および900cと比較する。
モデルと傾斜した部片700の輪郭800との間の最良のマッチングが定められる。ここではそれは輪郭900aである。ここから、その部片がどの位置でおよびどの程度直立状態であるかを計算することができる。・・・
衝突が起こり得る場合、その位置の周囲のエリアがリスクゾーンとしてマークされる。・・・」の記載、及び図9に記載された事項からみて、やはり特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

「[図9]



なお、請求項10を引用する請求項11は、請求項10についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項10を引用する請求項11の訂正についても、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
本件訂正前の請求項10について特許異議申立がされているので、訂正事項7について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

ク 訂正事項8について
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、請求項1から10のいずれか1項を引用していた本件訂正前の請求項11を、請求項2から10のいずれかを引用する本件訂正後の請求項11に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ウ)独立特許要件
本件訂正前の請求項11について特許異議申立がされているので、訂正事項8について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

ケ 訂正事項9〜17について
(ア)訂正の目的
訂正事項9〜17に係る訂正は、訂正前の請求項1〜11に対応する記載がなされていた本件訂正前の明細書の段落【0009】、【0010】、【0011】、【0014】、【0016】、【0025】、【0026】、【0027】、【0073】について、訂正事項2、3、5、6、7の特許請求の範囲の訂正と連動して訂正して整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9〜17に係る訂正は、訂正事項2、3、5、6、7について検討したのと同様の理由により、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

(2)一群の請求項〔12〜18〕について
ア 訂正事項18について
(ア)訂正の目的
訂正事項18は、
a 本件訂正前の請求項12における「直立状態のオブジェクト」、「前記直立的なオブジェクト」を「傾斜したオブジェクト」、「前記傾斜したオブジェクト」に、
b 本件訂正前の請求項12における「前記センサ(212)」を、「前記光センサ(212)」に、
c 本件訂正前の請求項12の「光センサ(212)」、「グラフィック処理ユニット(214)」について、「前記光センサ(212)は、時間をずらして前記工作物(112)を撮影することと、
グラフィック処理ユニット(214)は、時間的により早く撮影した前記工作物(112)の画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位を認識すること」との構成を付加して限定する
訂正をするものである。
上記aの訂正については、上記(1)イ(ア)において、訂正事項2のbの訂正について説示したと同様に、特許請求の範囲を減縮するものであり、上記bの訂正については、用語を統一して、記載を明確にしたものであり、上記cの訂正については、特許請求の範囲を減縮するものである。
以上から、訂正事項18についての訂正は、本件訂正前の請求項12について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項18に係る訂正は、上記(ア)bの訂正については、用語を統一したものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであるところ、上記(ア)aの訂正についても、上記(1)イ(イ)において、訂正事項2のbの訂正について説示したと同様に、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
そして、上記(ア)cの訂正については、本件特許明細書等の
・請求項3、
・段落【0011】の「好適なセンサは、例えば、ToF(time−of−flight)カメラまたはCCD/CMOSカメラなどのカメラであり、好ましくはCMOSカメラである。・・・工作物の時間的により早い画像に対する、工作物の画像の1つ以上の変化部位が検出される。時間的により早い画像は、上記の画像に直接先行するものであり得る。上記の画像が今度は後ほど、後続の画像にとっての時間的により早い画像になる。」、
・段落【0014】の「画像が時間をずらして撮影されることと、工作物の時間的により早い画像に対する工作物の画像の変化部位が検出されることが、更に実現され得る。このことにより高速画像処理が可能になる。」
との記載に鑑みれば、「光センサ(212)」、「グラフィック処理ユニット(214)」が、「前記光センサ(212)は、時間をずらして前記工作物(112)を撮影することと、グラフィック処理ユニット(214)は、時間的により早く撮影した前記工作物(112)の画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位を認識すること」が理解されるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項18は、用語を統一するとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

なお、請求項12を引用する請求項13〜18は、請求項12についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項12を引用する請求項13〜18の訂正についても、不明瞭な記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
本件訂正前の請求項12について特許異議申立がされているので、訂正事項18について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

なお、本件訂正後の請求項12を直接的又は間接的に引用する請求項14〜18は、本件訂正後の請求項12及び請求項13についてと同様の理由(下記第7の4(5)、(6)を参照。)により、甲1発明(下記第7の1(3))、甲2に記載された技術的事項(下記第7の2(2))及び甲3に記載された技術的事項(下記第7の3(2))を参照。)に基づいて、当業者にとって容易になし得たということはできず、他に独立特許要件を満たさない理由も発見しないから、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

イ 訂正事項19について
(ア)訂正の目的
訂正事項19は、本件訂正前の請求項13の「前記光センサ系は、少なくとも2つのまたは好ましくは少なくとも4つのカメラ(212)、好ましくはCMOSカメラを備える」との構成を、「前記光センサ系は、少なくとも2つのカメラ(212)を備える」とするものであるところ、この訂正は、光センサの個数や種類が不明確であったものを明確にしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項19に係る訂正は、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであることは明らかであり、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

なお、請求項13を引用する請求項14〜18は、請求項13についての訂正に伴い訂正されるものであるところ、請求項13を引用する請求項14〜18の訂正についても、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
訂正事項19は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

ウ 訂正事項20について
(ア)訂正の目的
訂正事項20は、本件訂正前の請求項18の「前記レーザマシニングツール(100)の座標系と比較した前記カメラ(212)の座標系の並進および回転のパラメータの第2の較正」との構成を、「前記数値制御式レーザマシニングツール(100)の座標系と比較した前記光センサ(212)の座標系の並進および回転のパラメータの第2の較正」と訂正することで、「数値制御式レーザマシニングツール(100)」及び「光センサ(212)」について、請求項18及び請求項18が引用する請求項12と用語を統一して記載を明確にしたものであるところ、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項20に係る訂正は、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであることは明らかであり、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

(ウ)独立特許要件
訂正事項20は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

エ 訂正事項21、22について
(ア)訂正の目的
訂正事項21、22に係る訂正は、訂正前の請求項12、13に対応する記載がなされていた本件訂正前の明細書の段落【0028】、【0030】について、訂正事項18、19の特許請求の範囲の訂正と連動して訂正して整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項21、22に係る訂正は、訂正事項18、19について検討したのと同様の理由により、特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、実質的に内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1、〔2〜11〕、〔12〜18〕について訂正することを認める。
なお、特許権者は、訂正後の請求項3、5、9、10について、一群の請求項〔1〜11〕の他の請求項とは別途の訂正とすることを求めているが、訂正後の請求項11は、訂正後の請求項2〜10を引用するものであるから、特許権者の求めにかかわらず、訂正後の請求項2〜11は一群の請求項をなすものである。


第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。また、便宜上、当審で本件発明の各構成について、「A」〜「S」の符号を付して分説した。以下、それぞれの構成について、「構成A」などという場合がある。また、概略等しい構成は符号を統一した。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、請求項1は削除されている。)

「【請求項1】(削除)
【請求項2】
A: レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
B: 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップは、切断片(600;700)の切断輪郭(602;706)に沿って、切断輪郭(602;706)の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識することと、を特徴とする方法。
【請求項3】
A: レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
C: 前記画像は時間をずらして撮影されることと、前記工作物(112)の時間的により早い画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位が検出されることと、を特徴とする方法。
【請求項4】
D: 請求項2または3に記載の方法であって、前記変化部位の3Dオブジェクトはモデル化され、前記3Dオブジェクトと前記レーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックされることを特徴とする方法。
【請求項5】
A: レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
E: を含み、更に:
− ある画像において、点から成りかつ切断輪郭(602)の境界線と平行に位置する、少なくとも2つの形状(1202、1204)を計算するステップであって、1つの形状(1202)は前記境界線の内側に位置し、1つの形状(1204)は前記境界線の外側に位置する、計算するステップと、
− 前記形状(1202、1204)の前記点に従って画像画素を抽出するステップと、
− 各形状(1202、1204)について画素輝度のヒストグラムを計算することによって、前記画像画素を正規化するステップと、
− 前記ヒストグラムを、入力層、複数の内部層、および出力層を備える深層ニューラルネットワークに入力するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークを用いて前記ヒストグラムを処理するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークによって変数を出力するステップと、
− 前記変数の値が閾値の第1の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、前記変数の値が閾値の第2の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
F: 請求項5に記載の方法であって、2つの更なる形状(1200、1206)が計算され、前記切断輪郭(602)上に第1の更なる形状(1200)が位置し、前記切断輪郭(602)の内側の全エリアを第2の更なる形状(1206)が覆うことを特徴とする方法。
【請求項7】
G: 請求項5または6に記載の方法であって、画像画素を抽出する前記ステップの前に、前記レーザマシニングツール(100)の一部によって覆われていないのはどの画像画素かが判定され、前記判定のために、前記レーザマシニングツール(100)の前記一部の動的3Dモデルが提供され、前記レーザマシニングツール(100)からの実座標で更新され、見えている抽出されるべき画像画素が前記動的3Dモデルと前記画像の比較によって計算されることを特徴とする方法。
【請求項8】
H: 請求項5から7のいずれか1項に記載の方法であって、前記画像画素を正規化する前記ステップは、前記少なくとも2つの形状(1202、1204)について2Dヒストグラムを計算することを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
A: レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
I: 前記認識は、前記工作物(112)の切断片の予め事前計算されたあり得る位置に基づくことと、を特徴とする方法。
【請求項10】
A レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
J: 切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること、を特徴とする方法。
【請求項11】
K: 請求項2から10のいずれか1項に記載の方法であって、前記レーザマシニングヘッド(102)が、その軌跡を利用して、前記変化部位を迂回することまたは停止することが見込まれることを特徴とする方法。
【請求項12】
L: マシニングすべき金属工作物を受け入れるためのマシニング空間(106)と、前記工作物をマシニングするためのレーザマシニングヘッド(102)と、を有する、数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、
数値制御ユニット(202、1012)と、
前記マシニング空間(106)の少なくとも一部およびその中に配置されている前記工作物(112)を撮影する少なくとも1つの光センサ(212)を有する、光センサ系と、
前記光センサ系に接続され前記工作物(112)の変化部位を認識するべく前記光センサ(212)からのデータを処理するように構成されており、かつ、前記数値制御ユニット(202、1012)に接続されている、グラフィック処理ユニット(214)と、を備え、
前記グラフィック処理ユニット(214)は、変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識するように構成されていることと、
前記グラフィック処理ユニット(214)および/または前記数値制御ユニット(202、1012)は、所定の切断プランならびに/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置および/もしくは軌跡(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックするように構成されていることと、
前記数値制御ユニット(202、1012)は、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されていることと、
M: 前記光センサ(212)は、時間をずらして前記工作物(112)を撮影することと、
グラフィック処理ユニット(214)は、時間的により早く撮影した前記工作物(112)の画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位を認識することと、
を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項13】
N: 請求項12に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記光センサ系は、少なくとも2つのカメラ(212)を備えることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項14】
O: 請求項13に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、2つのカメラ(212)が提供され、それらの撮影エリア(302)は同じ方向に整列されていることと、第1のカメラ(212)の前記撮影エリア(302)は前記マシニング空間(106)の第1の半部を撮影することと、第2のカメラ(212)の前記撮影エリア(302)は前記マシニング空間(106)の第2の半部を撮影することと、を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項15】
P: 請求項13または14に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、4つのカメラ(212)が提供されることと、2つのカメラ(212)の撮影エリア(302;402)は前記マシニング空間(106)の第1の半部を撮影することと、2つのカメラ(212)の撮影エリア(302、402)は前記マシニング空間(106)の第2の半部を撮影することと、前記2つのカメラ(212)は互いにずらされて各々配置されていることと、を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項16】
Q: 請求項12から15のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記光センサ系は高速接続部によって前記グラフィック処理ユニット(214)に接続されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項17】
R: 請求項12から16のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記グラフィック処理ユニット(214)はリアルタイムイーサネット接続部によって前記数値制御ユニット(202、1012)に接続されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項18】
S: 請求項12から17のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記カメラシステムおよび/または前記グラフィック処理ユニット(214)は、固有のカメラパラメータの第1の較正と、前記数値制御式レーザマシニングツール(100)の座標系と比較した前記光センサ(212)の座標系の並進および回転のパラメータの第2の較正と、を実行するように構成されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、3、9〜13に係る特許に対して、当審が令和4年6月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(新規性)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)(進歩性)請求項1、11〜13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1、11〜13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)(明確性)請求項1、3、9〜13に係る特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 証拠
甲第1号証:特開2015−44231号公報(以下「甲1」という。)


第5 取消理由についての判断
新規性及び進歩性欠如について
本件訂正後の本件発明3、9〜13について、上記第4の取消理由の1(1)、(2)の新規性及び進歩性欠如により取り消されるべきものであるか検討する。

本件発明3、9、10は、新規性及び進歩性欠如についての取消理由を通知していない本件訂正前の請求項3、9、10又はそれらを減縮したものに該当するため、本件発明3、9、10は、新規性及び進歩性欠如についての取消理由により取り消すことはできない。
さらに、本件発明12は、本件訂正前の請求項12に、新規性及び進歩性欠如についての取消理由を通知していない本件訂正前の請求項3に対応する発明特定事項を付加したものに該当するため、新規性及び進歩性欠如についての取消理由により取り消すことはできない。
そして、上記のとおり取消理由を有さないものとなった本件発明3、9、10を引用する本件発明11、及び同じく取消理由を有さないものとなった本件発明12を引用する本件発明13についても、同様の理由により、新規性及び進歩性欠如についての取消理由により取り消すことはできない。
なお、請求項1については本件訂正で削除されている。

明確性要件違反について
(1)概要
上記第4の取消理由の1(3)の明確性要件違反として、本件訂正前の請求項1、3、9〜13について、以下の点が不明確である旨を通知した。

ア 本件訂正前の請求項1、12には、「直立状態のオブジェクト」との記載及び「前記直立的なオブジェクト」との記載があるところ、両者の関連(異同)が不明確である。さらに、「直立的なオブジェクト」について、「直立的な」とは、範囲を曖昧にし得る表現である。

イ 本件訂正前の請求項10には、「切断片が識別され、その位置がこの切断片の既に計算されたあり得る位置と比較される」との記載があるところ、「この切断片の既に計算されたあり得る位置」とはどのような位置を特定しているのか不明確である。

ウ 本件訂正前の請求項13には、「前記光センサ系は、少なくとも2つのまたは好ましくは少なくとも4つのカメラ、好ましくはCMOSカメラを備える」との記載があり、「好ましくは」との記載を含むところ、カメラの台数及びカメラの仕様の外縁が不明確である。

(2)判断
本件訂正後の本件発明3、9〜13について、上記第4の取消理由の1(3)の明確性要件違反により取り消されるべきものであるか検討する。
ア 上記(1)アについて
本件訂正により、本件発明の「直立状態のオブジェクト」及び「直立的なオブジェクト」との記載は、それぞれ「傾斜したオブジェクト」に訂正され、用語が統一されたことにより両者が同じものであることが明確となった。
さらに、上記訂正事項2について説示したとおり(上記第2の2(1)イ(ア))、本件特許明細書等の段落【0011】に、「直立的なオブジェクト(直立状態のオブジェクト)」について、「傾斜または流出した切断片などの直立的なオブジェクト」と記載されていることに鑑みれば、「直立的なオブジェクト」及び「直立状態のオブジェクト」が、「傾斜または流出した」切断片などのオブジェクトを意味し、「直立的な」オブジェクトには、傾斜または流出したものを包含するものであったものを、「傾斜」したオブジェクトに限定したものといえるところ、「直立的な(直立状態の)」との不明確な表現が、「傾斜した」という明確な記載となった。

イ 上記(1)イについて
本件訂正により、本件発明10の発明特定事項は、「切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること」と訂正された。
本件訂正後の請求項10では、切断片が識別されること、及び、識別された切断片の位置が、(この切断片の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された)工作物の輪郭と比較されることが理解できる。
さらに、「この切断片の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された工作物の輪郭」については、「工作物の輪郭」がどのような位置で事前にモデル化されるかについて、その比較対象である「切断片」が存在し得る位置であることを記載したものと解せる。
これについて、本件特許明細書等には、
「【0077】
元の輪郭900を、3Dフィッティングアルゴリズムによって、1つの、いくつかの、または3つ全ての軸に沿って回転させる。この結果、輪郭900は、切断片700が存在し得る全てのあり得る位置においてモデル化される。例として、ここでは輪郭900a、900b、および900cが示されている。
【0078】
・・・輪郭900a、900b、および900c、または切断片のこのモデル化は、・・・切断の開始前に行うことができる。
【0079】
次に、モデルの情報が利用可能でありかつ切断片が傾斜している場合、カメラが認識した傾斜した部片700の輪郭800を、モデル900a、900b、および900cと比較する。
【0080】
モデルと傾斜した部片700の輪郭800との間の最良のマッチングが定められる。ここではそれは輪郭900aである。ここから、その部片がどの位置でおよびどの程度直立状態であるかを計算することができる。・・・」
と記載されており、元の輪郭900を、1つの、いくつかの、または3つ全ての軸に沿って回転させるような計算を行うことで、輪郭900は切断片700が存在し得る全てのあり得る位置においてモデル化されること及びそのようなモデル化が切断の開始前に行われることが理解できるところ、本件訂正後の請求項10の記載は、この記載とも整合するから、不明確であるということはできない。

ウ 上記(1)ウについて
本件訂正により、本件発明13の発明特定事項は、「前記光センサ系は、少なくとも2つのカメラ(212)を備える」と訂正された。
上記本件訂正により、光センサ系が2つ以上のカメラを備えることが明確となった。

以上により、本件発明3、9〜13について、上記第4の取消理由の1(3)の明確性要件違反により取り消すことはできない。
なお、請求項1については本件訂正で削除されている。


第6 取消理由通知において採用しなかった申立人の申立理由の概要
1 申立理由の概要
本件特許に対して、取消理由通知において採用しなかった申立理由の要旨は、本件訂正前の請求項1、3、9〜13に係る発明は、甲1発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるから、請求項1、3、9〜13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであるというものである。

2 証拠
甲1(上記第4の2を参照。)及び
甲第2号証:特開2012−148302号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2016−22511号公報(以下「甲3」という。)


第7 取消理由通知において採用しなかった申立理由についての判断
本件訂正後の本件発明3、9〜13に係る特許は、甲1ないし甲3に基づく進歩性欠如により取り消されるべきものであるか検討する。

1 甲1について
(なお、下線部については、当審で付した。以下同様である。)
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載事項及び図面が記載されている。
「【要約】
【課題】剣山パレット上でレーザ加工した場合の部品の立ち上がりを加工しながら検出し、逃げ動作の必要性を判断し、逃げ量を最適にすることによって、無駄な動作を減らし加工時間を短縮させる。
【解決手段】材料Wから部品Pa、部品Pbを切断加工するレーザ加工機Mのレーザヘッド制御システムSである。空間深度センサ1、空間深度センサ2により部品Pa、部品Pb、切かす等の立ち上がり高さを検出すると共に部品Pa、Pb、切かす等の機械座標位置を生成するする第一手段と、この第一手段で得たデータを蓄積する第二手段と、第二手段で蓄積したデータから材料W上の凸部を生成する第三手段とを備える。一経路の切断が完了してレーザヘッドを上昇させ、次のピアス位置に移動する前に、材料W上の凸部に応じてレーザ加工ヘッド3の動作を決定する。」

「【0001】
本発明はレーザヘッド制御システム及びその方法に関し、詳細には空間深度センサを利用し材料の凹凸を把握するレーザヘッド制御システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光移動型のレーザ加工機では、剣山のようなテーブルの上に材料を載せ、加工するのが一般的である。剣山は一定ピッチの点で材料を支持することになる。この状態で小さな部品を加工したり、穴を開けた場合には、部品や穴の切りかすと剣山の位置関係によってテーブルから落下したり、剣山に支えられて落下しなかったりする。場合によっては、不安定に支えられ、斜めに傾いて材料表面よりも高くせり上がることや、アシストガスによって吹き上げられる場合がある。
【0003】
傾いた部品や切りかすは、水平方向に送り移動するレーザヘッドと干渉する場合があるため、部品や穴を加工するたびにレーザヘッドを充分な位置まで上昇させ、それを待ってから水平移動させるなどの回避策をとる。また、レーザヘッドの高さを次の移動点まで水平方向に移動するのと同時に放物線状に上昇・下降させ、干渉を回避しながらも上昇・下降時間を短縮する手法もある。
・・・
【0008】
このように、従来の方法では、加工に対して一律に逃げの有無や逃げ量を指示するだけなので、逃げる必要のない領域では無駄な動作となる。また、逃げる量は一定にしておくか、加工の状態を目視して、都度、変更する必要がある。
【0009】
本発明は、剣山パレット上でレーザ加工した場合の部品の立ち上がりを加工しながら検出し、垂直方向の逃げ動作の必要性を判断し、逃げ量または経路を最適にすることによって、加工時間を短縮させ、かつ無駄な動作を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の問題を解決するためのものであり、請求項1に係る発明は、材料から部品を切断加工するレーザ加工機のレーザヘッド制御システムにおいて、特定のセンサにより切断物の立ち上がり高さを検出すると共に前記切断物の機械座標位置を生成するする第一手段と、この第一手段で得たデータを蓄積する第二手段と、前記第二手段で蓄積したデータから材料上の凸部を生成する第三手段とを備え、一経路の切断が完了して、次のピアス位置に移動する前に、前記材料上の凸部に応じてレーザヘッドの動作を決定することを特徴とする。
・・・
【0019】
図1〜図3を参照し、レーザヘッド制御システムSの構成を説明する。図1は、レーザヘッド制御システムSのレーザヘッド3の部分を示す。図2は、切断した部品の状態を示す。図3は、切断した部品の断面状態を示す。
【0020】
図1、図2に示すように、レーザヘッド制御システムSは、空間深度センサ1、2により切断物である部品Pb(部品Paは立ち上がりが無い)や、切かす等の立ち上がり高さを検出すると共に、部品Pbや切かす等の機械の位置を換算する。そして、加工と平行処理し、1経路の切断完了ごとに検出動作を行い、検出データを蓄積することで材料Wの高さと位置を把握し、次のピアス位置に移動する前に、現在値から目標位置に移動する経路上の最大高さを求め、適正な逃げ量でレーザヘッド3を動作させるものである。
【0021】
空間深度センサ1、空間深度センサ2は、赤外線ロジェクタによって無数の赤外線を照射し、その反射を赤外線カメラによって読み取ることで距離を検出する。このとき一箇所の距離を測るのではなく、赤外線カメラの解像度(通常30万点以上)に相当する点の距離を求めることができるため、カメラで撮影された空間全体の深度を把握することができる。深度情報はXY座標とその深度(距離)Zから構成される。X軸方向の広角範囲は57度、Y軸方向の広角範囲は43度である。なお、本例では、座標軸Dimに従いXYZ軸を定義している。
【0022】
空間深度センサ1、空間深度センサ2は、レーザ加工機MのY軸キャレッジ4上のレーザヘッド3に取り付けられる。そして、レーザヘッド3の周辺エリアERを検出しながらも、レーザヘッド3自体を検出しないように左右(Y+側とY−側)に取り付けられる。
【0023】
材料Wからは、加工プログラムによって複数の部品Pa、Pbが製作される。剣山テーブル5の上に材料Wが載っているが、切断することにより傾く部品Pbもあれば、部品Paのように傾かない平常の状態のものもある。
【0024】
図3に示すように、部品Pbが立ち上がったところは深度(センサからの距離)が異なる。例えば、矢印ARで示したところの深度は材料Wの深度より浅い(空間深度センサ1、2までの距離は短い)。
【0025】
図4を参照する。レーザヘッド制御システムSの制御構成を示す。レーザ加工機Mは制御装置6を備える。制御装置6は、コンピュータからなり、ROMおよびRAM等が接続されたCPUを有している。
【0026】
制御装置6により、レーザヘッド3はY軸キャリッジ4上をY軸方向に位置決め自在に制御されるものであり、さらに、X軸に移動位置決め自在に制御され、Z軸方向の高さも移動位置決め自在に制御され材料Wを切断する。
【0027】
制御装置6は、加工プログラムを実行し加工制御を行うものであり、空間深度センサ1、空間深度センサ2と制御装置6とは通信可能に構成される。そして、剣山テーブル5上に乗せた材料Wを空間深度センサ1、空間深度センサ2で読み取る処理を行う。また、制御装置6は、メモリ等のデータベース7、ディスプレイ等の表示装置8、マウス、キーボード等の入力装置9と接続されている。
・・・
【0029】
制御装置6について詳細に説明する。制御装置6は、空間深度センサ1,空間深度センサ2により、切断物(部品、切りかす等)の立ち上がり高さを検出すると共に切断物の機械座標位置を生成するする第一手段と、この第一手段で得たデータを蓄積する第二手段と、第二手段で蓄積したデータから材料上の凸部(部品高さ、切かす等の高さを含む)を生成する第三手段とを備え、一経路(切断経路の1単位)の切断が完了して、次のピアス位置に移動する前に、材料W上の凸部に応じてレーザヘッド3の動作を決定する。
【0030】
ここで、凸部とは例えば傾いた部品Pbにおいて、材料Wの表面の平坦な面を基準として、材料Wの平坦な面より突出している部分である。すなわち、本例で凸部とは部品高さの情報を含むものである。なお、材料Wの平坦な面より下側に落ち込んでいる状態を凹部として生成してもよい。
【0031】
制御装置6は、一経路の切断が完了してレーザヘッド3を上昇させ、次のピアス位置に移動する前に、移動経路に応じてレーザヘッド3の最大上昇高さを決定することができる。また、一経路の切断が完了してレーザヘッド3を上昇させ、次のピアス位置に移動する前に、凸部に応じて移動経路(凸部を回避する経路等)を決定することが可能である。すなわち、部品Pbの高さだけでなく、その位置をも捉えることができるため、レーザヘッド3を高さ方向に逃がすだけでなく、水平方向の直線移動を複数に分割したり、平面上の円弧移動を利用して立ち上がった部品Pbを回避することもできる。
【0032】
制御装置6は、図5に示す深度情報入力部10と、現在位置入力部11と、部品高さ情報生成部12と、Gコード解析部13と、レーザヘッド逃げ高さ生成部14と、位置決め指令部15などのソフトウェア処理部を包含している。レーザ加工機Mと一体、または別置となる。
・・・
【0042】
以上のように構成されたレーザヘッド制御システムSの動作を示す。前提として、通常のレーザ加工は、以下a1〜a4の命令の繰り返しとなる。
【0043】
[a1] 早送り(G00)。
【0044】
[a2] シャッター開およびレーザヘッド3の下降(M103)。
【0045】
[a3] 切削送り(G01,G02,G03)。
【0046】
[a4] シャッター閉およびレーザヘッド3の上昇(M104)。
【0047】
本発明は、[a1]の動作中にレーザヘッド3と立ち上がった切断物の衝突を防ぐために、a4の処理でレーザヘッド3の高さを適切に変更する。
【0048】
レーザヘッド制御システムSのユースケースを[b1]〜[b12]に示す。
【0049】
[b1] 作業者が剣山テーブル5上に材料Wを載せる。
【0050】
[b2] 作業者は制御装置6に加工プログラムを設定する。
【0051】
[b3] 作業者は加工プログラムを実行する。
【0052】
[b4] 制御装置6はパラメータ16から、ノズル先端から空間深度センサ1、2までの高さ、ノズル幅、ノズル幅の余裕、高さの余裕などの値を取得する。
【0053】
[b5] 制御装置6はM104(シャッター閉およびヘッド上昇)で、Z軸が上昇したときに深度情報入力部10から空間深度センサ1、2の情報を読み取る。
【0054】
[b6] 制御装置6は現在位置入力部11からX,Y,Zの軸座標を読み取る。
【0055】
[b7] 部品高さ情報生成部12は、空間深度センサ情報をX,Y,Zの基準座標に変換し、部品高さ情報を生成する。
【0056】
[b8] 部品高さ情報生成部12は、変換した情報を部品高さ情報保持メモリ17に記憶する。このとき、前の情報とXY座標が重複する場合は、高さの高い方を記憶する。
【0057】
[b9] Gコード解析部13は、次のM103(シャッター開およびヘッド下降)の位置を取得する。
【0058】
[b10] レーザヘッド逃げ高さ生成部14は、現在の位置と次のM103の位置を直線で結んだ移動経路と、部品高さ情報保持メモリ17に記憶された部品高さから立ち上がった部品を回避するためのレーザヘッド3の高さを求める。
【0059】
[b11] 位置決め指令部15は、求めた高さまでレーザヘッド3が上昇するようZ軸に指令を出す。
【0060】
[b12] [b5]〜[b11]は、シャッター閉およびレーザヘッド3の上昇(M104)で処理される。
【0061】
図6〜図11を参照し、レーザヘッド制御システムSの制御装置6等の動作を詳細に説明する。
【0062】
図6を参照する。初めにステップSA01では、パラメータ16より、ノズル先端から空間深度センサ1、2までの高さ、ノズル幅、ノズル幅の余裕、高さの余裕などの値を取得する。
【0063】
ステップSA02では、加工プログラムの実行の開始を行う。ステップSA03では、早送り(G00)を行う。ステップSA04では、シャッター開およびレーザヘッド3の下降(M103)の実行動作を行う。ステップSA05では、切削送り(G01、G02、G03)を行う。
【0064】
ステップSA06では、シャッター閉およびレーザヘッド3の上昇(M104)の動作を実行する。ステップSA07では、プログラム終了(M02、M30)か否かを判断する。プログラム終了と判断した場合に処理は終了する。プログラム終了でないと判断した場合に処理はステップSA03に戻り上記処理を実行する。
【0065】
図7を参照する。シャッター閉およびレーザヘッド3の上昇(M104)内部フローである。(図6のステップSA06に相当する)
初めに、ステップSB01では、シャッター閉の動作を実行する。ステップSB02では、レーザヘッド3の上昇が実行される。ステップSB03では、部品高さ情報(材料W上の凸部を作成するための情報)の生成を行う。以下、部品高さというときは材料上の凸部を作成するための情報である。
【0066】
ステップSB04では、レーザヘッド3の逃げ高さ生成を行う。ステップSB05では、現在のレーザヘッド3の高さは逃げ高さより低いか否かを判断する。低いと判断した場合に処理はステップSB06に進む。低くないと判断した場合に処理は終了する。ステップSB06では、逃げ高さまでレーザヘッド3が上昇する。
【0067】
図8を参照する。部品高さ生成処理フローを示す。(図7ステップSB03に相当する)ステップSC01では、M104(シャッター閉およびレーザヘッド3の上昇)指令のフェッチ(CPU動作のうち、メモリから指令を取り出してくる動作のことである。)を行う。
【0068】
ステップSC02では、深度情報を取得する。図9(a)を参照する。レーザヘッド3の両側に備えられた空間深度センサ1、2により深度情報を取得する。
【0069】
ステップSC03では、現在位置(X,Y,Z)を取得する。
【0070】
ステップSC04では、深度情報のX,Y座標情報を機械のX,Y現在位置でオフセットする。
【0071】
ステップSC05では、深度情報の距離情報をパラメータを使ってZ軸基準からの高さに変換する。図9(a)を参照する。部品の立ち上がり高さは式「H1+H2−H3」で算出される値となる。ここで、H1は空間深度センサ1、2からノズル先端までの長さである。H2は、ノズル先端からZ軸基準(例えば、剣山の先端)までの長さである。H3は、空間深度センサ1、2からパーツの上端までの長さである。
【0072】
ステップSC06では、部品高さ情報保持メモリ17に書き込むX,Y座標が重複する場合は高さの高い方を書き込む。そして、処理を終了する。
【0073】
なお、図9(b)に示すように、加工範囲(軸の移動範囲)E1において、例えば検出範囲E2の分解能は、(例960×640)で部品立ち上がりの高さを検出するものである。
【0074】
図10を参照する。レーザヘッド3の逃げ高さ生成処理フローを示す。(図7のステップSB04に相当する)
初めに、ステップSD01では、Gコードを先読みして早送り指令を抽出し、早送り前後の位置を求める。
【0075】
ステップSD02では、早送り前と後の座標を結んだ移動経路にノズル幅と余裕を加味した領域の部品高さをすべて取得し、部品高さの最大値を求める。
【0076】
ステップSD03では、早送り指令のレーザヘッド3の上昇量を移動経路上の部品高さ最大値に余裕を加えた高さにする。
【0077】
図11を参照する。レーザヘッド3は位置P1から位置P2までの経路Kを早送りで移動する。この範囲内の部品の最大高さ(凸部に含まれる)を求め高さに余裕を持たせる。経路Kの幅はノズル幅に余裕を持たせた幅である。
【0078】
部品の高さだけでなく、その位置をも捉えることができるため、レーザヘッド3を高さ方向に逃がすだけでなく、水平方向の直線移動を複数に分割したり、平面上の円弧移動を利用して立ち上がった部品を回避することもできる。
【0079】
図12を参照する。空間深度センサ1、2は、赤外線プロジェクタと赤外線カメラの組み合わせにより構成される。本例に適用可能な構造の市販型の空間深度センサSrを示す。距離センサ用赤外線ライトSr1と、映像センサSr2と、電源ランプSr3と、距離センサSr4と、台座Sr5とを備えている。
【0080】
距離センサ用赤外線ライトSr1によって無数の赤外線を照射し、その反射を映像センサSr2によってよって読み取ることで距離センサSr4が距離を検出する。
【0081】
このとき一箇所の距離を測るのではなく、映像センサSr2の解像度(通常30万点以上)に相当する点の距離を求めることができるため、映像センサSr2に映った空間全体の深度を把握することができる。
【0082】
また、赤外線を使っているため、補助光は全く不要で、暗闇でも計測が可能であることが特徴である。深度情報は画像データとして出力することができる。
【0083】
その他、赤外線以外でもレーザや超音波によって空間の深度を検出できる方法でも応用可能である。レーザヘッド3が充分な高さまで上昇する動作の場合でも、水平方向に移動しながら放物線状に上昇・下降する動作する場合でも、どちらの早送り動作でも対応可能である。
【0084】
深度情報は640×480の分解能で取得できる深度(距離)に応じて色分した画像として入力された例検出対象範囲の実際の画像である。」

「【図1】


【図3】


【図7】


【図8】


【図10】



(2)甲1の記載から理解できる事項
上記(1)の記載から、以下のことが理解できる。
ア 段落【0022】及び図1等から、レーザヘッド制御システムSが、空間深度センサ1、2で検出するレーザヘッド3の周辺エリアERを含むマシニング空間を有することが理解できる。
また、段落【0021】〜【0024】及び図3等から、上記マシニング空間内の材料W及び部品Pbを、空間深度センサ1、2でモニタしていることが理解できる。
イ 段落【0082】等から、空間深度センサ1、2が画像を撮影していることが理解できる。
ウ 段落【0023】〜【0024】、【0030】及び図3等から、空間深度センサ1、2は、材料Wに対する部品Pbの立ち上がりを検出しており、該部品Pbの立ち上がりは、材料W及び部品Pbの深度の変化として認識されるものであって、空間深度センサによる画像の変化部位として検出されることが理解できる。
エ 段落【0029】〜【0030】等から、制御装置6は、材料Wに対する部品Pbの立ち上がりから、材料上の凸部を生成して、該材料W上の凸部に応じてレーザヘッド3の動作を決定していることが理解できる。
オ 段落【0025】、【0031】、【0065】〜【0072】、【0074】〜【0077】及び図7、8、10等から、制御装置6(又はそのCPU)が、加工プログラム及びレーザヘッド3の現在の位置に基づいて、現在のレーザヘッド3の高さが、材料上の凸部の最大高さに余裕を持たせた逃げ高さよりも低いか判断し、現在のレーザヘッド3の高さが逃げ高さよりも低い場合に、逃げ高さまでレーザヘッド3を上昇させて立ち上がった部品Pbを回避する(衝突防止をする)ことが理解できる。

(3)甲1発明
上記(1)及び(2)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「レーザヘッド制御システムSのマシニング空間内でのレーザヘッド3の衝突防止の方法であって、
前記マシニング空間内の材料W及び部品Pbを2つの空間深度センサ1、2でモニタし、
前記材料W及び部品Pbの画像を撮影し、
前記部品Pbの立ち上がりを検出し、
前記部品Pbの立ち上がりから材料W上の凸部を生成し、
加工プログラムおよびレーザヘッド3の現在の位置に基づいて、現在のレーザヘッド3の高さが、材料W上の凸部の最大高さに余裕を持たせた逃げ高さよりも低いか判断し、
現在のレーザヘッド3の高さが逃げ高さよりも低い場合に、逃げ高さまでレーザヘッド3を上昇させて立ち上がった部品Pbを回避する、方法。」

2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「【0002】
・・・加工としては、文字や絵の描画、露光、基板の製造過程で生じた欠陥の修復(リペア)等がある。・・・」
「【0127】
次に、本発明を適用した第6の実施の形態を説明する。
(第6の実施の形態)
本発明を適用した第6の実施の形態は、一度、キャリブレーションが実行された後、再度キャリブレーションを実行する実施の形態である。・・・
・・・
【0130】
そこで、あらかじめムラの発生する部分を特定し(図11の(6))、ムラを避けるようにキャリブレーションパターンを配置することで(図11の(7))、ムラのないキャリブレーションパターンを作成することができ(図11の(8))、キャリブレーションパターン形状を正確に検出することができる(図11の(9))。
【0131】
具体的な処理としては、まず、加工前と加工後の画像間差分をとることで、差分画像を作成する。作成された差分画像には、加工により変化した部分のみが検出されるので、レーザ光の全面照射形状を取得することが可能である。
【0132】
次に、差分画像に対し2値化処理を実行することで、良好な加工部分とムラの影響を受けた加工部分とを分離する。キャリブレーションパターンは、光量分布の一定なレーザ光が良好に加工される領域に配置されることが望ましい。そこで、2値化処理により検出された良好に加工される領域上に配置されるように、キャリフレーションパターンの位置を移動させる。・・・」

「【図11】の(6)



(2)甲2に記載された技術的事項
上記(1)の記載等から、甲2には、以下の技術的事項(以下「甲2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「加工前と加工後の画像間差分をとることで差分画像を作成し、当該差分画像から、加工により変化した部分が検出され、良好な加工部分とムラの影響を受けた加工部分とを分離できる。」

3 甲3について
(1)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「【0002】
例えば比較的厚い板状のワークのレーザ切断加工を行うとき、レーザ切断加工時の熱がワークに蓄熱されて、バーニングや切断溝の幅が次第に広くなるなどのレーザ切断不良を生じることがある。・・・」
「【0021】
なお、レーザ切断不良箇所NGの検出方法としては、前述した方法に限ることなく、次のように行うことも可能である。すなわち、ワークWのレーザ切断加工の終了後に、例えばCCDカメラによってワーク(製品WP)を撮像する。そして、当該制御装置25に備えた表示手段25の表示画面27A又は前記自動プログラミング装置13に備えた表示画面27B上に表示された製品WPの形状(CADデータ又はCAMデータに基づく形状)に対して撮像した製品WPの形状を重ね合わせる。その後、撮像した形状においてのレーザ切断不良箇所NGの始点、終点を例えば、タッチパネルの場合には画面上でタッチすることで指示するなど、適宜の不良箇所指示手段29によって指示することも可能である。」

(2)甲3に記載された技術的事項
上記(1)の記載等から、甲3には、以下の技術的事項(以下「甲3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ワークWのレーザ切断加工の終了後に、CCDカメラによってワークを撮像し、CADデータ又はCAMデータに基づくワークの形状に対して撮像したワークの形状を重ね合わせて、撮像した形状においてのレーザ切断不良箇所NGの始点、終点を指示する。」

4 対比、判断
(1)本件発明3について
ア 対比
甲1発明の「レーザヘッド制御システムS」は、本件発明3の「レーザマシニングツール」に相当し、以下同様に、「レーザヘッド3」は、「レーザマシニングヘッド」に、「材料W及び部品Pb」は、「工作物」に、「2つ」は、「少なくとも1つ」に、「空間深度センサ1、2」は、「光センサ」に、「部品Pbの立ち上がり」は、上記1(2)ウから「工作物の画像の変化部位」に、「材料W上の凸部」は、「傾斜したオブジェクト」に、「加工プログラム」は、「切断プラン」に、「判断」は、「チェック」に、それぞれ相当する。
また、上記相当関係に鑑みれば、甲1発明の「前記マシニング空間内の材料W及び部品Pbを2つの空間深度センサ1、2でモニタし」は、本件発明3の「前記マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップ」に相当し、同様に、「前記材料W及び部品Pbの画像を撮影し」は、「前記工作物の画像を撮影するステップ」に、「前記部品Pbの立ち上がりを検出し」は、「前記工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、」に、それぞれ相当する。
さらに、甲1発明の「前記部品Pbの立ち上がりから材料W上の凸部を生成し」は、制御装置6が、材料Wに対する部品Pbの立ち上がりから、材料上の凸部を生成して、該材料W上の凸部に応じてレーザヘッド3の動作を決定していることから、本件発明3の「前記変化部位が前記工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識すること」に相当する。
加えて、甲1発明の「現在のレーザヘッド3の高さが、材料上の凸部の最大高さに余裕を持たせた逃げ高さよりも低いか判断し」は、レーザヘッド3の高さが逃げ高さよりも低い場合には材料上の凸部とレーザヘッド3の間に衝突のリスクがあることから、本件発明3の「前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすること」に相当し、同様に、甲1発明の「現在のレーザヘッド3の高さが逃げ高さよりも低い場合」は、本件発明3の「衝突のリスクを認識した場合」に相当する。
そして、甲1発明の「逃げ高さまでレーザヘッド3を上昇させて立ち上がった部品Pbを回避する」ことは、レーザヘッド3の駆動装置を部品Pbとの衝突を防止するように制御することであるから、本件発明3の「前記レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御すること」に相当する。
以上に鑑みれば、本件発明3と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、を含む方法。

<相違点1>
本件発明3は、「前記画像は時間をずらして撮影されることと、前記工作物(112)の時間的により早い画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位が検出されること」との構成(構成C)を有するのに対し、甲1発明は、材料W及び部品Pbを2つの空間深度センサ1、2でモニタし、材料W及び部品Pbの画像を撮影し、部品Pbの立ち上がりを検出するものであって、画像を時間をずらして撮影して、それらの画像の変化部位を検出するものではない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲2には、「加工前と加工後の画像間差分をとることで差分画像を作成し、当該差分画像から、加工により変化した部分が検出され、良好な加工部分とムラの影響を受けた加工部分とを分離できる。」との技術的事項(上記2(2)を参照。)が記載されている。
一方、甲1発明は、空間深度センサ1、2で部品Pbの立ち上がりを検出するものであって、甲1の段落【0021】には、「空間深度センサ1、空間深度センサ2は、・・・距離を検出する。・・・カメラで撮影された空間全体の深度を把握することができる。深度情報はXY座標とその深度(距離)Zから構成される。」、段落【0083】には、「その他、赤外線以外でもレーザや超音波によって空間の深度を検出できる方法でも応用可能である。」、段落【0084】には、「深度情報は640×480の分解能で取得できる深度(距離)に応じて色分した画像として入力された例検出対象範囲の実際の画像である。」と記載されているところ、甲1の明細書全体を参酌すれば、部品Pbの立ち上がりを検出するためには、空間深度センサを用いて空間の深度を測定することが必須の要件であると認められる。
しかしながら、上記甲2には、空間の深度を測定するようなことは記載も示唆もないため、甲1発明の空間深度センサを用いて空間の深度を測定する構成について甲2に記載された技術的事項を適用する動機が見いだせない。また、甲2は、良好な加工部分とムラの影響を受けた加工部分とを分離するために、差分画像を用いるというものであって、甲1発明と甲2に記載された技術的事項における画像を撮影することの作用機能は大きくことなるものである。
さらに、仮に甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用したとしても、甲1発明は、空間深度センサ1、2によって、カメラで撮影された空間全体の深度を把握することができ、部品Pbの立ち上がりを検出することができるもの、すなわち特定の一時点での画像に基づいて部品Pbの立ち上がりを検出することができるものであるから、甲2のように、時間をずらして画像を撮影し、それらの差分画像から、加工により変化した部分を検出するように、処理工程が増加する手段に置換する意味がないし、上記のとおり、甲2に記載された技術的事項は、空間の深度を測定することとは無関係であるから、本件発明3には至らない。
同様に、甲3に記載された技術的事項(上記3(2)を参照。)にも空間の深度を測定するようなことは記載も示唆もないため、甲1発明に甲3の技術的事項を適用する動機もない。
以上から、本件発明3が、甲1発明、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たとはいえない。

(2)本件発明9について
上記(1)アの対比に照らせば、本件発明9と甲1発明とは、上記(1)アの一致点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明9は、「前記認識は、前記工作物(112)の切断片の予め事前計算されたあり得る位置に基づくこと」との構成(構成I)を有するのに対し、甲1発明は、部品Pbの立ち上がりから材料W上の凸部を生成するものであって、部品Pbの立ち上がりを何かと比較するものではない点。
上記相違点2について検討する。
甲3に、「ワークWのレーザ切断加工の終了後に、CCDカメラによってワークを撮像し、CADデータ又はCAMデータに基づくワークの形状に対して撮像したワークの形状を重ね合わせて、撮像した形状においてのレーザ切断不良箇所NGの始点、終点を指示する。」との技術的事項(上記3(2)を参照。)が記載されているとしても、上述したとおり、甲3に記載された技術的事項は空間の深度を測定するようなこととは無関係であるため、甲1発明に甲3の技術的事項を適用する動機がない。さらに、甲3に記載された技術的事項の「CADデータ又はCAMデータに基づくワークの形状」が本件発明9の「前記工作物(112)の切断片の予め事前計算されたあり得る位置」に相当するともいえないから、甲1に甲3に記載された技術的事項を適用しても、本件発明9の構成に至らない。
また、上記(1)イで説示したとおり、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用する動機もない。
以上から、本件発明9が、甲1発明、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たとはいえない。

(3)本件発明10について
上記(1)アの対比に照らせば、本件発明10と甲1発明とは、上記(1)アの一致点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明10は、「切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること」との構成(構成J)を有するのに対し、甲1発明は、部品Pbの立ち上がりから材料W上の凸部を生成するものであって、部品Pbの立ち上がりを何かと比較するものではない点。
上記相違点3について検討する。
上記(1)イで説示したとおり、甲1発明に甲3の技術的事項を適用する動機がない。さらに、甲3に記載された技術的事項の「CADデータ又はCAMデータに基づくワークの形状」が本件発明10の「この切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)」に相当するともいえないから、甲1に甲3に記載された技術的事項を適用しても、本件発明10の構成に至らない。
また、上記(1)イで説示したとおり、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用する動機もない。
以上から、本件発明10が、甲1発明、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たとはいえない。

(4)本件発明11について
本件発明11と甲1発明とは、上記相違点1ないし3で相違するところ、上記(1)ないし(3)で説示したのと同様の理由により、本件発明11が、甲1発明、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たとはいえない。

(5)本件発明12について
ア 甲1A発明
甲1の記載等から、甲1には、甲1発明に加えて、以下の発明(以下、甲1発明と合わせて「甲1A発明」という。)も記載されていると認められる。
「マシニングすべき金属製である材料W及び部品Pbを受け入れるためのマシニング空間と、前記材料W及び部品Pbをマシニングするためのレーザヘッド3と、を有する、Gコード解析部13を包含する制御装置6を備えるレーザヘッド制御システムSであって、
Gコード解析部13を包含する制御装置6と、
前記マシニング空間の中に配置されている前記材料W及び部品Pbを撮影する2つの空間深度センサ1,2と、
前記空間深度センサ1、2に接続され、空間深度センサ1、2が検出した部品Pbの立ち上がりを処理するように構成されている、制御装置6が備えるCPUと、を備え、
前記CPUは、部品Pbの立ち上がりを処理して、材料W上の凸部を生成し、
前記CPUは、現在のレーザヘッド3の高さが、材料W上の凸部の最大高さに余裕を持たせた逃げ高さよりも低いか判断し、
現在のレーザヘッド3の高さが逃げ高さよりも低い場合に逃げ高さまでレーザヘッド3を上昇させて立ち上がった部品Pbを回避する、Gコード解析部13を包含する制御装置6を備えるレーザヘッド制御システムS。」

イ 対比
対比に関して、上記(1)アも参照されたい。
加えて、甲1A発明の「金属製である材料W及び部品Pb」は、本件発明12の「金属工作物」に相当し、以下同様に、「Gコード解析部13を包含する制御装置6を備えるレーザヘッド制御システムS」は、「数値制御式レーザマシニングツール」に、「Gコード解析部13を包含する制御装置6」は、「数値制御ユニット」に、「マシニング空間の中に配置されている前記材料W及び部品Pb」は、「マシニング空間の少なくとも一部およびその中に配置されている前記工作物」に、「CPU」は空間深度センサ1、2からのデータを処理するとの機能に鑑みれば、「グラフィック処理ユニット」に、それぞれ相当する。
また、甲1A発明の「前記空間深度センサ1、2に接続され、空間深度センサ1、2が検出した部品Pbの立ち上がりを処理するように構成されている、制御装置6が備えるCPU」と、本件発明12の「前記光センサ系に接続され前記工作物の変化部位を認識するべく前記光センサからのデータを処理するように構成されており、かつ、前記数値制御ユニットに接続されている、グラフィック処理ユニット」とは、「前記光センサ系に接続され前記光センサからのデータを処理するように構成されており、かつ、前記数値制御ユニットに接続されている、グラフィック処理ユニット」である点では共通している。
さらに、甲1A発明の「前記CPUは、現在のレーザヘッド3の高さが、材料W上の凸部の最大高さに余裕を持たせた逃げ高さよりも低いか判断し」は、本件発明12の「前記グラフィック処理ユニットおよび/または前記数値制御ユニットは、所定の切断プランならびに/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置および/もしくは軌跡に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックするように構成されていること」に相当し、同様に甲1A発明の「前記CPUは、・・・現在のレーザヘッド3の高さが、逃げ高さよりも低い場合に逃げ高さまでレーザヘッド3を上昇させて立ち上がった部品Pbを回避する」は、本件発明12の「前記数値制御ユニットは、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されている」に相当する。
よって、上記対比に照らすと、本件発明12と甲1A発明とは、以下の点で相違し、その余の点では、一致している。
<相違点4>
本件発明12では、グラフィック処理ユニットが、「工作物の変化部位を認識するべく」センサからのデータを処理しているのに対し、甲1A発明では、CPUが、空間深度センサ1、2が検出した部品Pbの立ち上がりを処理しているものの、そのことが部品Pbの変化部位を認識するための処理であるのか不明な点。
<相違点5>
本件発明12では、「前記光センサ(212)は、時間をずらして前記工作物(112)を撮影することと、グラフィック処理ユニット(214)は、時間的により早く撮影した前記工作物(112)の画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位を認識すること」との構成(構成M)を備えるのに対し、甲1A発明では、材料W及び部品Pbを2つの空間深度センサ1、2でモニタし、材料W及び部品Pbの画像を撮影し、部品Pbの立ち上がりを検出するものであって、画像を時間をずらして撮影して、それらの画像の変化部位を検出するものではない点。

ウ 判断
事案に鑑みて、相違点5から判断する。
相違点5に係る本件発明12の構成(構成M)は、概ね相違点1に係る本件発明3の構成(構成C)に該当する。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、本件発明12が、甲1A発明、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たとはいえない。

(6)本件発明13について
本件発明13と甲1A発明とは、上記相違点4及び5で相違するところ、上記(5)で説示したのと同様の理由により、本件発明13が、甲1発明、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たとはいえない。

(7)小括
以上のとおり、本件訂正後の本件発明3、9〜13に対しては、甲1発明(甲1A発明)、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たということはできない。


第8 申立人の意見書の主張について
1 申立人の主張の概要
本件訂正後の本件発明3、9〜13に対して、異議申立人は令和4年11月15日に提出の意見書において概ね以下の点を主張している。
(1)本件発明3、12は、依然として進歩性欠如が解消されていない。甲2が看過されている。
(2)本件発明10の「切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置」とは、「あり得る」と無限に広がる外縁となっており、いかなる計算によって特定されるかが明らかでないため、不明確である。
(3)本件発明2、3、5、9、10、12について、「直立状態のオブジェクト」及び「直立的なオブジェクト」を「傾斜したオブジェクト」とする訂正は、減縮とは異なる権利範囲を別の外縁への訂正となっている。

2 判断
上記1(1)〜(3)の各主張について検討する。
(1)の主張について検討すると、上記第7の4(1)イで説示したとおり、甲2には、空間の深度を測定するようなことは記載も示唆もないため、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用する動機が見いだせないし、甲2は、良好な加工部分とムラの影響を受けた加工部分とを分離するために、差分画像を用いるというものであって、甲1発明と甲2に記載された技術的事項とでは撮影された画像の作用機能は大きくことなるものである。さらに、仮に甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用したとしても、甲1発明は、空間深度センサ1、2によって、カメラで撮影された空間全体の深度を把握することができ、部品Pbの立ち上がりを検出することができるもの、すなわち特定の一時点での画像に基づいて部品Pbの立ち上がりを検出することができるものであるから、甲2のように、時間をずらして画像を撮影し、それらの差分画像から、加工により変化した部分を検出するように、処理工程が増加する手段に置換する意味がないし、甲2に記載された技術的事項は、空間の深度を測定することとは無関係であるから、本件発明3、12には至らない。
また、申立人は、甲2の段落【0131】の記載に基づいて、「加工前の画像から変化した時間的に後となる加工後との画像差分で、加工した部分を検出することが、当業者にとって当たり前の技術として記載されている」旨を指摘するとともに、甲2のものが「キャリブレーションについて」であるのに対して、本件発明3、12では、「加工前後による変化部位に関する記載」であることは認めつつ、「加工前後の差分は、キャリブレーションで問題となる差分よりも遥かに大きな変化を変化部位に伴う」ことを根拠に、本件発明3、12の進歩性を否定する主張をしている。
しかしながら、甲2のレーザ光の照射の仕方を調整するためのキャリブレーションのために、加工により変化した部分を検出することと、本件発明3、12の加工前後での変化部位(切断物の立ち上がり高さ)を検出することとは、単に加工前後の変化の大小というだけでなく、検出しようとする対象としても、前者は被加工物の表面の性状の変化、後者が被加工物の位置的な変化と、全く異なるものであるから、申立人の主張は採用することができない。
したがって、甲2に記載された技術的事項について検討しても、本件発明3、12が、進歩性欠如により取り消されるべきものとはいえない。
以上から、(1)の主張は採用できない。

(2)の主張について検討すると、本件発明10の発明特定事項は、本件訂正により、「切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること」と訂正された。
申立人は、本件特許明細書等の段落【0025】、【0056】、【0077】の記載を参酌しても、「3Dフィッティング」あるいは「3Dフィッティングアルゴリズム」により工作物の位置を求めることが記載されているのみであり、これ以外の方法による事前計算については開示されていないことに基づいて、本件発明10の「切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置」の発明特定事項が明確性違反である旨を主張している。
しかしながら、上記本件訂正により、計算方法にかかわらず切断片が識別されること、及び、識別された切断片の位置が、(この切断片の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された)工作物の輪郭と比較されることが理解でき、本件特許明細書等の記載から、元の輪郭900を、1つの、いくつかの、または3つ全ての軸に沿って回転させるような計算を行うことで、輪郭900は切断片700が存在し得る全てのあり得る位置においてモデル化されること及びそのようなモデル化が切断の開始前に行われることが理解できるから、本件発明10の上記発明特定事項が不明確であるということはできない。
また、「あり得る」について「無限に広がる外縁」となっていることを主張するが、これは計算されたことで求められたあり得る位置と解されるものであって、その域を出るものでないから、外縁が無限に広がることはない。
以上から、(2)の主張は採用できない。

(3)の主張について検討すると、「直立状態のオブジェクト」及び「直立的なオブジェクト」を「傾斜したオブジェクト」とする訂正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められること、特許請求の範囲の拡張変更に当たらないことは、上記第2の2(1)イ(ア)、(イ)で説示したとおりであるから、「傾斜したオブジェクト」に限定する訂正が、減縮とは異なる権利範囲を別の外縁への訂正となっている旨の主張は採用できない。


第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項3、9〜13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項3、9〜13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、請求項1に係る特許は、上記のとおり本件訂正により削除された。これにより、請求項1に係る特許異議の申立ては対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】衝突防止の方法およびレーザマシニングツール
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマシニングヘッドの衝突防止の方法および数値制御式レーザマシニングツールに関する。特に、本発明は、請求項1に記載の衝突防止の方法、および請求項12に記載の数値制御式レーザマシニングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ切断機は、切断グリッドに載置された平板なシートまたは管材をレーザビームで分断するものである。切断ガスの圧力上昇または熱応力、更にはグレーチング(grate)上での支持点の不具合に起因して、切断片が切断ヘッドの先端を覆い、切断ヘッドを閉塞する場合がある。また、切断片が残りの材料から完全に切り離され、切断機の内部へと投げ出される可能性もある。レーザ切断機における衝突阻止の以下の手法が、既に用いられている。
【0003】
微小なブリッジを残す:小さい部片の外側輪郭を完全には切断しない。これらの部片は小さいブリッジで付着したままである。マシニングの最後に、これらの部片を完全に切り離すか、または更なる工程で破壊して除去しなければならない。
【0004】
インテリジェントな切断輪郭の提供:切断ヘッドを切断済みの部片の上には移動させない。このことにより、移動パターンがより複雑で時間のかかるものになる。
【0005】
内側輪郭の破砕処理:余分な部片を前もって破砕して、それらを支持点間に落下させ立ち上がることができないようにする。このことはエネルギー消費およびマシニング時間を増加させる。
【0006】
高品質の原材料の使用:高品質の原材料の使用によって熱膨張を低減できるが、その他の不具合の原因には効果がない。
【0007】
それでもなお、これらの手法は満足できない結果しかもたらさず、所望の信頼性を実現しない。米国特許第5751584号には、加工の準備における、マシニングツール用の衝突チェックの方法が開示されている。駆動装置の制御による衝突防止については開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、先行技術の欠点を回避すること、および改善されたレーザマシニングツールを提供することである。代替の目的としては、改善された衝突防止の方法または改善されたレーザマシニングツールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項2、3、5、9、10に記載の方法、または請求項12に記載の数値制御式レーザマシニングツールによって達成される。
【0010】
本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位(change)を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
工作物の画像の変化部位を検出するステップは、切断片の切断輪郭に沿って、切断輪郭の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識することと、を特徴とする。
【0011】
機械の修理およびダウンタイムに繋がる切断ヘッドと工作物の間の衝突を防止するために、本発明に係る衝突防止方法は、機械の内部を少なくとも1つのセンサでモニタすることを提案する。好適なセンサは、例えば、ToF(time−of−flight)カメラまたはCCD/CMOSカメラなどのカメラであり、好ましくはCMOSカメラである。センサからの実データを使用して、傾斜または流出した切断片などの傾斜したオブジェクトが認識される。切断ヘッドの計画される軌道とセンサが記録した傾斜したオブジェクトとを組み合わせることによって、衝突の早期の認識が可能になる。かかる事象が発生した場合、機械は停止するか、または例えば、Z軸を上げることによって危機的な箇所を迂回する。例えば、1つのカメラは、様々な角度または視点から画像を生成するための、デュアル型センサまたはステレオセンサを備え得る。これらの画像は同時に、または続けてすぐに、例えば1秒未満の間隔で、記録することができる。同様に、深度表現または深度認識のための情報を提供する、様々な角度または視点からの画像を生成するために、カメラまたはレンズを空間的に移動させることが可能である。複数のカメラを使用してもよい。工作物の時間的により早い画像に対する、工作物の画像の1つ以上の変化部位が検出される。時間的により早い画像は、上記の画像に直接先行するものであり得る。上記の画像が今度は後ほど、後続の画像にとっての時間的により早い画像になる。
【0012】
本発明に係る衝突防止方法は、起こり得る衝突の認識および衝突の阻止に加えて、更なる利点を有する。この場合、操作者にとっての切断エリアの視覚化がもたらされ得る。更に、グリッドおよび台の状態ならびに工作物の位置、工作物サイズ、ならびに損傷を判定することができる。
【0013】
測定点が切断片の切断輪郭に沿って定められ、輝度および/または色値についてモニタされることが実現され得る。測定点のこの配置によって、カラー−アロング−エッジアルゴリズム(colour−along−edges algorithm)などの、非常に効果的なアルゴリズムの使用が可能になる。測定点の数および厳密な配置は、例えば切断されるべき部品の幾何形状、切断速度、材料厚さなどの状況に合わせることができる。全てのまたはいくつかの面、例えば両端にある2つの対向する面に、測定点を設けることができる。
【0014】
本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
画像が時間をずらして撮影されることと、工作物の時間的により早い画像に対する工作物の画像の変化部位が検出されること、を特徴とする。このことにより高速画像処理が可能になる。
【0015】
変化部位の3Dオブジェクトがモデル化されることと、3Dオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間の衝突がチェックされることと、が実現され得る。センサからの実データを使用して、切断エリアの3Dモデルを跡付けることができる。切断ヘッドの計画される軌道とセンサが記録し計算した3Dトポロジとを組み合わせることによって、衝突の早期の認識が可能になる。
【0016】
本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、を含み、更に:
− ある画像において、点から成りかつ切断輪郭の境界線と平行に位置する、少なくとも2つの形状を計算するステップであって、1つの形状は境界線の内側に位置し、1つの形状は境界線の外側に位置する、計算するステップと、
− 形状の点に従って画像画素を抽出するステップと、
− 各形状について画素輝度のヒストグラムを計算することによって、画像画素を正規化するステップと、
− ヒストグラムを、入力層、複数の内部層、および出力層を備える深層ニューラルネットワークに入力するステップと、
− 深層ニューラルネットワークを用いてヒストグラムを処理するステップと、
− 深層ニューラルネットワークによって変数を出力するステップと、
− 変数の値が閾値の第1の側にあることから、切断輪郭内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、変数の値が閾値の第2の側にあることから、切断輪郭内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
かかる手法は非常に短時間で実行され、この結果応答時間が短縮される。2つの形状は、切断輪郭の内側または外側にある点の跡を含むか、またはそれから成る。切断輪郭までのずれは2から10mmの範囲内、好ましくは5mmであり得る。2つ以上の形状、例えば切断輪郭の内側の2つの形状および外側の2つの形状を使用することが可能である。更に、切断前の部片または工作物の基準画像を、更なる形状として実装してもよい。切断輪郭を画定するために画像上に切断プランを投影してもよい。
【0018】
画素輝度のヒストグラムを計算することによって、画像画素が正規化される。画素の輝度はその画素での光の反射に依存するものであり、その画素が位置している部片の向きまたは角度の指標である。反射値は暗色/黒色(切断片がないかまたは傾斜している)から明色/白色(完全な反射)まで達し得る。例えば、0から256までのグレースケール値をビニングしてもよい。各ヒストグラムは12個から64個の間、好ましくは32個のビン、すなわち輝度値を有し得る。ビンは同じ輝度範囲を有してもよく、または解像度もしくは輝度分布を適合させるために異なるサイズもしくは範囲を有してもよい。ヒストグラムによる正規化の結果、どの輪郭でもその形状およびサイズに関係なく、同じ量の事前処理されたデータが得られる。形状において任意の数の画素を減らし、32個の値しかないヒストグラムにすることによって、輪郭のサイズまたは形状についての何らかの情報が無関係になる。更に、全てのヒストグラムが同じサイズすなわちビンの数を有するので、ニューラルネットワークを用いたかかるデータの処理が改善される。
【0019】
ヒストグラムを深層ニューラルネットワークに入力する前に、ヒストグラムのこの入力データを連結して、ベクトルにしてもよい。ベクトルのサイズは、使用されるカメラの数に関して異なり得る。例えば、ベクトルのサイズは、2つのカメラの場合と1つのカメラの場合で異なる。2つ以上のカメラの場合、ベクトルはヒストグラムを、および任意選択的に各カメラからの2Dまたは共起ヒストグラムを含む。
【0020】
ニューラルネットワークは、入力層としての1つの平坦化層、バッチ正規化を伴う5つの内部緻密層、および出力層としてのシグモイド活性化を伴う1つの緻密層から成る、深層ニューラルネットワークであり得る。深層ニューラルネットワークまたはモデルは、カメラの数に関して、入力層のサイズおよび係数の数だけが異なり得る。少なくとも2つのカメラ、好ましくは2つのカメラを有するモデルを使用してもよい。切断ヘッドがカメラ問に位置する場合、完全な輪郭を示すカメラを用いて推論を行ってもよい。
【0021】
出力するステップおよび認識するステップは、以下を含み得る:
− 深層ニューラルネットワークによって、切断輪郭について、0,0から1,0までの範囲内の値を有する1つの浮動小数点変数を出力することと、
− 浮動小数点変数の値が0.5以上であることから、切断輪郭内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、浮動小数点変数の値が0.5未満であることから、切断輪郭内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識すること。
【0022】
2つの更なる形状が計算され、切断輪郭上に第1の更なる形状が位置し、切断輪郭の内側の全エリアを第2の更なる形状が覆うことが、実現され得る。第1の更なる形状内の点間隔は、例えば1mmあたり3つの点など、非常に密であってもよい。更なる3つの形状内の点は、例えば隣り合う2つの点の間の距離が2mmなど、より疎に配置されてもよい。点間の距離は、画像中でmm単位で計算されても画像の画素単位で計算されてもよい。
【0023】
画像画素を抽出するステップの前に、レーザマシニングツールの一部によって覆われていないのはどの画像画素かが判定され、判定のために、レーザマシニングツールの一部の動的3Dモデルが提供され、レーザマシニングツールからの実座標で更新され、見えている抽出されるべき画像画素が動的3Dモデルと画像の比較によって計算されることが、更に実現され得る。視覚情報に基づいてAIを使用するために、輪郭が見えているかそれとも機械の一部で覆われているかを判定してもよい。この目的のために、ブリッジと支持部と切断ヘッドとから成る切断機の動的3Dモデルが実装され得る。機械からの実座標で、すなわち実際の位置、速度、および/または加速度でモデルを更新し、その後、どの輪郭または輪郭のどの部分が見えているかを計算するために使用することができる。利用されるカメラから、例えば両方のカメラから、左側カメラだけから、右側カメラだけから、どの輪郭がまたは輪郭のどの部分が見えているのか、または全く見えていないのかを、更に計算してもよい。
【0024】
画像画素を正規化するステップが、少なくとも2つの形状について2Dヒストグラムを計算することを更に含むことが、実現され得る。切断輪郭の内側および外側にある形状について、かかる2Dまたは共起ヒストグラムが計算される。この2Dヒストグラムは、ヒストグラムに関するビンの乗算、例えば32×32個のビンを用いる。2Dヒストグラムは、切断したものの内側および外側にある対応する点の輝度を相関させて、切断線に沿った処理を改善する。
【0025】
本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− マシニング空間内の工作物を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
工作物の切断片の予め事前計算されたあり得る位置に基づくことと、を特徴とする。この目的のために、切り出されるべき部片である切断片の輪郭が回転され、あり得る位置に保存される。回転は軸、例えば垂直軸もしくはz軸を中心に、または更にはいくつかの軸を中心に、行われ得る。
【0026】
本発明に係る、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドの衝突防止の方法は、
− 工作物の画像を撮影するステップと、
− 工作物の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、レーザマシニングヘッドを移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
切断片が識別され、その位置がこの切断片の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物の輪郭と比較されること、を特徴とする。その場合、ランタイムまたはマシニング時間中に単純なマッチングまたは比較アルゴリズムしか必要とならず、このことにより時間が節減され、この結果プロセスがより高速になる。
【0027】
レーザマシニングヘッドが変化部位を迂回するかまたは停止するように駆動されることもまた実現され得る。レーザマシニングヘッドの速さ、加速度、および/もしくは位置に、または変化部位の、すなわち工作物の傾斜した部分もしくは分離された部片の位置に起因して、それ以上の迂回が不可能な場合には、停止または緊急停止の制御によって、衝突を防止することができる。衝突が防止可能な場合は、変化部位が回避または迂回される。その後レーザマシニングヘッドはそれに応じて駆動される。
【0028】
マシニングすべき金属工作物を受け入れるためのマシニング空間と、工作物をマシニングするためのレーザマシニングヘッドと、を有する、本発明に係る数値制御式レーザマシニングツールは、
− 数値制御ユニットと、
− マシニング空間の少なくとも一部およびその中に配置されている工作物を撮影する少なくとも1つの光センサを有する、光センサ系と、
− 光センサ系に接続され工作物の変化部位を認識するために光センサからのデータを処理するように構成されており、かつ、数値制御ユニットに接続されている、グラフィック処理ユニットと、を備え、
グラフィック処理ユニットは、変化部位が工作物に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識するように構成されており、
グラフィック処理ユニットおよび/または数値制御ユニットは、所定の切断プランならびに/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置および/もしくは軌跡に基づいて、傾斜したオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックするように構成されていることと、
数値制御ユニットは、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されていることと、
光センサは、時間をずらして工作物を撮影することと、
グラフィック処理ユニットは、時間的により早く撮影した工作物の画像に対する工作物の画像の変化部位を認識することと、を特徴とする。
【0029】
グラフィック処理ユニットは好ましくはリアルタイム画像処理を行うように構成され、理想的には1つ以上のCPUおよび/またはGPUを備える。特に好適なのは、256個以上のコアを有する高度並列GPUである。それ以外には、上記したものと同じ利点および変形が当てはまる。
【0030】
光センサ系が少なくとも2つのカメラを備えることが実現され得る。画像処理を伴わないCMOSカメラまたは画像取得ユニットの使用によって非常に高い処理速度が可能になり、この結果、レーザマシニングヘッドが高速であっても十分な応答時間が利用可能である。4つ以上のカメラの場合、例えば、より良好な解像度が達成でき、また視差を低減できる。
【0031】
2つのカメラが提供され、それらの撮影エリアは同じ方向に整列されることと、第1のカメラの撮影エリアはマシニング空間の第1の半部を撮影することと、第2のカメラの撮影エリアはマシニング空間の第2の半部を撮影することと、が更に達成され得る。この配置では、少なくとも1つのカメラが常に自由な視野を有するので、レーザマシニングヘッドで陰になることが少なくなる。
【0032】
4つのカメラが提供されることと、2つのカメラの撮影エリアがマシニング空間の第1の半部を撮影することと、2つのカメラの撮影エリアがマシニング空間の第2の半部を撮影することと、2つのカメラが互いに各々ずらされていることが、実現され得る。両方の視点または両方の撮影エリアを組み合わせることによって、観察されるオブジェクトの深度についての情報を得ることが可能になる。理想的には、評価を精緻化するために、切断エリアの両側にカメラが設置される。
【0033】
1つのカメラまたは複数のカメラが高速接続部によってグラフィック処理ユニットに接続されることが実現され得る。危機的な状況に最小限の遅延で応答するために、この高速リンクは低レイテンシの伝送を提供する。更に、高速接続部は、カメラとグラフィック処理ユニットの間の数メートルを橋渡しし得る。高速接続部は、例えば、光ファイバ、同軸ケーブル、ツイストペアなどを備え得る。ビデオデータ用の新しいバスとしては、例えば、車両のディスプレイを駆動するために使用されるFPDリンクがある。かかるリンクまたは接続部は、多数の高解像度画像の伝送のための、例えば1GHzを超える高いデータ転送速度を可能にする。
【0034】
グラフィック処理ユニットがリアルタイムイーサネット接続部によって数値制御ユニットに接続されることが実現され得る。EtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology)などのリアルタイムイーサネット接続部によって、グラフィック処理ユニットがリアルタイムで処理を行うための、リアルタイムの画像データ可用性が実現される。
【0035】
カメラシステムおよび/またはグラフィック処理ユニットが、固有のカメラパラメータの第1の較正と、レーザマシニングツールの座標系と比較したカメラの座標系の並進および回転のパラメータの第2の較正と、を実行するように構成されることが、更に実現され得る。固有のカメラパラメータの較正は複雑であり自動化されていない。カメラのレンズが調整されない限りは、単一の経路で十分であり得る。この較正のために、例えば様々な角度のチェス盤の画像が必要である。次いで画像処理およびこれらの画像を用いて固有のパラメータが較正される。この較正によって、カメラおよびレンズのソフトウェアモデルが作成される。並進および回転のパラメータの較正は、カメラまたはその固定具の各移動と共に繰り返すことができる。この較正は自動化が容易であり、したがってこれらのパラメータを定期的に再較正することが推奨される。機械ハウジングの振動または僅かな熱変形に起因する、時間の経過に伴う移動が予想される。この較正のためには、機械の座標系におけるおよび画像上の、少なくとも4つの点が既知でなければならない。この較正のために、十分なサイズのハリスコーナーを切断ヘッドに取り付けることができる。このハリスコーナーをカメラで認識し、現在の切断機ヘッドの座標と比較することができる。対応する機械および画像の座標を決定することができる。
【0036】
本発明の更なる好ましい実施形態が、従属請求項で述べる残りの特徴から明らかになるであろう。
【0037】
本願において述べる本発明の様々な実施形態は、個々の事例においてそうではないと明記しない限りは、互いと有利に組み合わせることができる。
【0038】
本発明を、添付の図面を参照して例示的な実施形態として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】数値制御式レーザマシニングツールの概略斜視図である。
【図2】図1の数値制御式レーザマシニングツールの制御の概略的表現である。
【図3】マシニング空間を撮影するためのレーザマシニングツールの2つのカメラの概略的表現である。
【図4】マシニング空間を撮影するためのレーザマシニングツールの2つの他のカメラの概略的表現である。
【図5】図4の4つのカメラの撮影エリアの概略的表現である。
【図6】工作物の流出した部片の概略的表現である。
【図7】測定点を有する工作物の切り抜かれた部片の概略的表現である。
【図8】画像処理によって抽出された部片を示す、図7の切り抜かれた部片の概略的表現である。
【図9】抽出された部片のマッチングの概略的表現である。
【図10】レーザマシニングヘッドの衝突防止の方法のフローチャートである。
【図11】レーザマシニングヘッドの衝突防止の一般的方法のフローチャートである。
【図12】切断輪郭の形状の例示的な描写である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、数値制御式レーザマシニングツール100、特に、レーザマシニングヘッド102、特にレーザ切断ヘッドを有するレーザ切断機の、概略斜視図を示す。レーザ切断へッド102は、可動ブリッジ104上に、レーザマシニングツール100のマシニング空間106内で少なくともx方向およびy方向に移動できるように配置されている。レーザ源108が、レーザ光を生成し、光導体110を介してそれをレーザ切断ヘッド102に供給する。工作物112、例えば金属シートがマシニング空間106内に配置され、レーザビームによって切断される。
【0041】
図2は、図1の数値制御式レーザマシニングツール100の制御装置200の更なる概略的表現を示す。数値制御ユニット202はCNC(Computerised Numerical Control)とも呼ばれ、EtherCATバス206を介してEtherCATスレーブ210としての駆動装置208に位置信号が出力されるというかたちで、EtherCATマスター204として切断プランを実行する。駆動装置208のうちの1つがEtherCATスレーブ210として例示されている。このEtherCATスレーブ210および他のEtherCATスレーブは、例えばインクリメンタルエンコーダなどのセンサからのデータをEtherCATバス206に書き込み、例えば出力を制御するために使用されるデータをEtherCAT206バスから読み出す。
【0042】
この例では4つのカメラ212が提供されるが、数値制御式レーザマシニングツールのマシニング空間106内でのそれらの配置を、以下の図でより詳細に説明する。好ましくは、画像処理を行わないCMOSカメラまたは画像記録ユニットが提供され、このことにより非常に高い処理速度が可能になる。
【0043】
カメラ212の画像データはグラフィック処理ユニット214に転送され、そこで画像データの処理が行われる。グラフィック処理ユニット214は好ましくは複数の、例えば512個以上のGPUを備え、好ましくはリアルタイム画像処理を行うように構成される。特に好適なのは、256個以上のコアを有する高度並列GPUである。グラフィック処理ユニット214はまたEtherCATスレーブ210としても動作し、したがって数値制御ユニット202と直接通信している。
【0044】
グラフィック処理ユニット214および/または数値制御ユニット202は、図6から図10に示しかつ以下に記載する方法または動作を実行するように構成されている。特に、グラフィック処理ユニット214は、工作物の変化部位を認識するためにカメラ212からのデータを処理し、3Dオブジェクトから変化部位をモデル化し、任意選択的に数値制御ユニット202と共に、3Dオブジェクトとレーザマシニングヘッドの間の衝突がないかを、所定の1つの切断プランおよび/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置に基づいてチェックするように、構成されている。更に、数値制御ユニット202は、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されている。
【0045】
グラフィック処理ユニット214は、数値制御ユニット202からEtherCATバス206を介してレーザ切断ヘッドの切断幾何形状または軌跡を取得する。衝突事象が発生する前に、グラフィック処理ユニット214はEtherCATバス206を介してこれをシグナリングする。このシグナリングは数値制御ユニット202に、および/または、緊急停止もしくは迂回などの可能な最速の応答として駆動装置208に直接、送ることができる。
【0046】
このことは、衝突までに利用可能な時間に応じて漸進的に行うことができる。回避動作のための十分な時間がある場合、グラフィック処理ユニット214は衝突の位置または座標などのデータを数値制御ユニット202に送り、そして数値制御ユニット202は回避ルートを計算し、それに応じて駆動装置208を駆動する。新しい代替のルートはグラフィック処理ユニット214にも送られ、今度はここでこの新しいルートを、衝突がないか引き続きチェックする。
【0047】
回避動作のための時間が不十分である場合、グラフィック処理ユニット214は、レーザ切断ヘッドの可能な最速の停止を達成するために、緊急停止コマンドを駆動装置208に直接送る。
【0048】
グラフィック処理ユニット214の演算ユニット216は、CPU、グラフィック処理ユニットGPU、またはこれらの組合せのいずれかによって実現され得る。演算ユニット216は、受信したカメラデータをリアルタイムで評価するのに、および、衝突が差し迫っているかどうかについての判定を行うのに、十分な演算能力を有する。このことは、機械の数値制御ユニット202が衝突防止のための適切な処置を行うのに、十分な速さで行われねばならない。演算ユニット216またはグラフィック処理ユニット214は、例えば図示したEtherCATバス206を介して、数値制御ユニット202に接続されている。
【0049】
制御装置200の全要素、特にグラフィック処理ユニット214、カメラ212、およびバス206は、システムのリアルタイム能力に適するように構成される。
【0050】
図3から図5は、少なくとも2カメラ212を有する数値制御式レーザマシニングツール100のカメラシステム300の更なる概略的表現を示す。カメラ212に加えて、カメラ画像の品質を高めるための好適な照明、例えばLEDライトを設けてもよい。
【0051】
図3は、撮影エリア302が同じ方向に整列されている2つのカメラ212を示す。第1のカメラ212の撮影エリア302は、工作物112のまたはマシニング空間106の、第1の半部を撮影する。第2のカメラ212の撮影エリア302は、工作物112のまたはマシニング空間106の、第2の半部を撮影する。こうして、2つのカメラはマシニング空間106全体を撮影する。2つのカメラ212はマシニング空間106の長手軸Aから側方にずらして配置されており、この結果、撮影エリア302はマシニング空間106内へと側方にまたは斜めに延びている。
【0052】
図4は、数値制御式レーザマシニングツール100のカメラシステム400の更なる概略的表現を示す。ここでは、2つのカメラ212は、図3の配置と比較して、マシニング空間106の長手軸Aに対して鏡写しに配置されている。同様に、撮影エリア402は傾斜しており、図3と比較すると、長手軸Aの反対側に整列されている。図3と同様に、第1のカメラ212の撮影エリア402は、工作物112のまたはマシニング空間の、第1の半部を撮影する。第2のカメラ212の撮影エリア402は、工作物112のまたはマシニング空間の、第2の半部を撮影する。
【0053】
図5は、4つのカメラ(ここには図示せず)の撮影エリア302および402と共に、数値制御式レーザマシニングツール100のカメラシステム500の更なる概略図を示す。
【0054】
この例では、評価を精緻化するために、切断エリアまたはマシニングエリアの両側にカメラが設置される。両方の視点302および402を組み合わせることによって、観察されるオブジェクトの深度についての情報が得られる。この深度または空間情報によって、工作物112の変化部位から3Dオブジェクトをモデル化することが可能になる。
【0055】
図6は、工作物の流出した部片または切断片600の概略図を示す。ここに示す切断片600は切断輪郭602の隣に位置しているが、そこは切断片600が元々、すなわち切断前に位置していた場所である。ここに示す図は、例えば、単一のカメラで撮影したものであり得る。
【0056】
ガス圧によって飛ばされ原材料または工作物112上の任意の場所に着地する、そのような切断片600の検出は、まず工作物112の基準描画を作成し、次いで現在の描画または撮影画像をこの基準描画と連続的に比較することで、行うことができる。このことは特に、原材料がまだ加工されていない箇所で行うことができる。比較において位置または変化が危機的であると分類される場合、工作物112の上に留まっている部片の厳密な位置、特に高さを、3Dフィッティングによって判定することができる。
【0057】
すなわち、切断片600とレーザマシニングヘッドの間の起こり得る衝突における、可能な是正処置として、流出した切断片600をガス圧で吹き飛ばすことができるか、このエリアを切断しないようにするか、または動作が中断される。
【0058】
図7は、工作物112の切り抜かれた部片または切断片700の概略的表現を示す。図7の上側の2つの図は今度は、1つ以上のカメラからの撮影したものであり得る。図7の最も下の図には、工作物112の画像の変化部位を検出するための、カラー−アロング−エッジアルゴリズムが描かれている。
【0059】
カラー−アロング−エッジアルゴリズムには、機械の座標系における3D点の、2D画像上への非常に正確な投影が望ましい。このためには、カメラ212を較正しなければならない。画像処理は、例えばグラフィック処理ユニット214において実行され、較正および投影のために使用される。2つの異なる較正が実行される。第1のものは固有のカメラパラメータの較正である。第2の較正は、機械100の座標系と比較した、カメラ212の座標系における並進および回転のパラメータの較正である。
【0060】
固有のカメラパラメータの較正は複雑であり自動化されていない。カメラ212のレンズが調整されない限りは、単一の経路で十分であり得る。この較正のために、様々な角度のチェス盤の画像が必要である。次いで画像処理およびこれらの画像を用いて固有のパラメータが較正される。この較正によって、カメラおよびレンズのソフトウェアモデルが作成される。
【0061】
並進および回転のパラメータの較正は、カメラ212またはその固定具の各移動と共に繰り返すことができる。この較正は自動化が容易であり、したがってこれらのパラメータを定期的に再較正することが推奨される。機械ハウジングの振動または僅かな熱変形に起因する、時間の経過に伴う移動が予想される。この較正のためには、機械の座標系におけるおよび画像中の、少なくとも4つの点が既知でなければならない。
【0062】
この較正のための標的として、十分なサイズのハリスコーナーを切断ヘッドに取り付けることができる。このハリスコーナーをカメラ212で認識し、現在の切断機ヘッドの座標と比較することができる。対応する機械および画像の座標を結び付けることができる。
【0063】
標的、例えばハリスコーナーは、好ましくは切断ヘッドに取り付けられる。この標的は、画像上のおおよその位置が知られていれば、自動的に認識可能である。このことは定期的な較正の場合に当てはまる。
【0064】
したがって、較正プロセスに関して、以下のステップがそれぞれ実行される。まず、切断ヘッドが4つの定められた位置に位置決めされる。これらの位置の各々において、2つのカメラまたは2つの視野角の各々を用いて、1つの画像が撮影される。各画像上で、ハリスコーナーの画像の座標が判定される。機械の4つの位置の座標、および画像のハリスコーナーの座標から、並進および回転のパラメータが計算される。
【0065】
工作物112からレーザビーム702によって、切断片700が切り出される。このプロセスはカメラで観察される。グラフィック処理ユニット214において実行される画像処理において、断面輪郭に沿った特定の測定点704において測定が行われる。測定点704を使用して、工作物112の画像の変化部位を検出する。
【0066】
ここで、切断片700が傾斜すると、第1のステップにおいて、カメラに到達する輪郭706に沿った光の量の変化が検出される。光の量のこの変化は、切断片700の反射角度の変化によって生じる。このことは、輝度の増加と輝度の減少の両方を意味し得る。
【0067】
傾斜した切断片700の一部が残っている工作物112の下に隠れ、この結果強いコントラストが生まれる。ここではこのコントラストは、白色と黒色の間の変化として示されている。実際には、色値、輝度値、および/またはコントラスト値の変化を使用することができる。
【0068】
これらの変化が分析され、更なる処理を開始するための閾値に達したかどうかを確認するためのチェックが行われる。図7の一番下の図によれば、輪郭706内にある測定点704の色値と、輪郭706の外側に位置する点との間の差が判定され、次いで評価される。
【0069】
反射した光の両方の色値が同じであるかまたは非常に僅かしか離れていない場合には、切断片700は傾斜していないか(図7、上)、または、傾斜した切断片700および残っている工作物112は、ほぼ同じ高さ(図7、中)に、例えば切断片700の下側左のコーナーの場合である。この場合リスクはなく、値は閾値を下回る。更なる処置は必要なく、モニタリングを継続することになる。
【0070】
両方の色値が異なる場合には、切断片700はこれらの測定点においてもはや輪郭706内にはなく(図7、中央)、例えば切断片700の上側左のコーナーの場合である。この場合もやはりリスクはなく、値は閾値を下回る。更なる処置は必要なく、モニタリングを継続することになる。
【0071】
両方の色値が部分的に異なる場合には、切断片700はこれらの測定点において輪郭706の外側でかつ残っている工作物112よりも上に位置しており(図7、中央)、例えば切断片700の上側右のコーナーの場合である。この場合、切断片700が立ち上がり閾値を超過しているので、衝突のリスクがある。
【0072】
その後、第2のアルゴリズムを開始するための閾値に達する。第2のアルゴリズムは3Dフィッティングと呼ばれるもので、これについては図8および図9を参照して説明する。変化、およびしたがって生じ得るリスクが迅速に認識されるカラー−アロング−エッジアルゴリズムとは対照的に、3Dフィッティングには、対応する部片が実際に切断ヘッドに対して、およびしたがってマシニングプロセスに関して、リスクを呈するかどうかの認識が関与している。変化が検出されるがそれが最終的にリスクとはならないことは、十分あり得る。そのようなケースでは、アルゴリズムの分岐に起因して、マシニングプロセスの停止には至らない。
【0073】
図8は、画像処理によって抽出された部片を示す、図7の切り抜かれた部片の概略的表現を示す。カメラ画像中の傾斜した切断片700の輪郭800が判定される。この目的のために、例えば減算アルゴリズムが使用される。この判定はグラフィック処理ユニット214においても行われる。
【0074】
図9は、抽出された部片のマッチングの概略的表現を示す。マッチングまたは比較もグラフィック処理ユニット214で行われる。
【0075】
切断プランからまず、カラー−アロング−エッジアルゴリズムで検出された、危機的な切断片700が選択される。カメラ画像(図8を参照)とは対照的に、部片700の完全な輪郭900が切断プランから取得される。
【0076】
ある可能なマッチングアルゴリズムは、以下に記載するように機能する。
【0077】
元の輪郭900を、3Dフィッティングアルゴリズムによって、1つの、いくつかの、または3つ全ての軸に沿って回転させる。この結果、輪郭900は、切断片700が存在し得る全てのあり得る位置においてモデル化される。例として、ここでは輪郭900a、900b、および900cが示されている。
【0078】
行う必要があるのは比較だけであり、モデル化は必要ないことから、輪郭900a、900b、および900c、または切断片のこのモデル化は、試験中のアルゴリズムの効率が可能な限り高まるように、切断の開始前に行うことができる。
【0079】
次に、モデルの情報が利用可能でありかつ切断片が傾斜している場合、カメラが認識した傾斜した部片700の輪郭800を、モデル900a、900b、および900cと比較する。
【0080】
モデルと傾斜した部片700の輪郭800との間の最良のマッチングが定められる。ここではそれは輪郭900aである。ここから、その部片がどの位置でおよびどの程度直立状態であるかを計算することができる。次の数秒の間に切断ヘッドがどこに移動するかについての情報と併せて、衝突が起こり得るか否かを計算することができる。
【0081】
衝突が起こり得る場合、その位置の周囲のエリアがリスクゾーンとしてマークされる。この時点で、制御ユニットが対策として何を開始すべきかを決定しなければならない。例えば機械を素早く停止することによって、衝突を阻止できる。より一層効率的な解決法は、切断ヘッドをリスクゾーンの周囲で駆動させるか、衝突を回避するように上昇させるか、またはこれらの組合せのいずれかである。
【0082】
図10は、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドによる衝突防止の方法のフローチャートを示す。
【0083】
第1のステップ1000において、カメラデータ、すなわち工作物の画像が、少なくとも1つの光センサ、好ましくは2つの、4つの、または更に多くのセンサを用いて生成される。
【0084】
第2のステップ1002において、既に記載したカラー−アロング−エッジアルゴリズムによって、工作物の画像の変化部位が検出される。ステップ1004において局所的な変化が検出される場合、方法はブロック1010に進む。検出されない場合には、ステップ1002のモニタリングに分岐して戻り、この結果モニタリングがループされる。このアルゴリズムは、工作物の供給や除去などの全体的な変化ではなく、切断片などの局所的な変化を検出する。2つのステップ1002および1004は、局所変化認識プロセスの一部である。
【0085】
数値制御プロセス1012は数値制御ユニットにおいて実行される。数値制御ユニットは切断プラン1014および切断ヘッドの現在の位置1016を知っており、ステップ1018において、所与の切断プラン1014および/またはレーザマシニングヘッドの現在の位置から、切断ヘッドの計画される軌道またはルートを計算する。
【0086】
切断プラン1014は、内部空間またはマシニング空間をモデル化するためのプロセスに供給される。このプロセス、および局所変化認識プロセスは、グラフィック処理ユニットに形成されるかまたはこれによって実行される、衝突モニタリングシステムにおいて機能する。
【0087】
内部モデル化プロセスのブロック1006には、切断プラン1014が供給される。内部またはマシニングされるべき工作物のトポロジが切断プラン1014から作成される。トポロジは、工作物および工作物に計画される切断パターンを含み、切断片のそれぞれの外周および場所を含み得る。このトポロジはブロック1010に供給される。
【0088】
ブロック1010において、3Dフィッティング、すなわち、上記したような変化部位の3Dオブジェクトのモデル化が、実行される。この目的のために、カメラデータ1000はブロック1010に供給される。3Dフィッティングは、ブロック1004において局所的な変化部位が検出されると開始される。モデル化の出力として、変化部位の3Dトポロジ1008、例えば輪郭800が提供される。
【0089】
この3Dトポロジ1008は、計画される軌道1018と同様に、プロセス衝突検出器に供給される。このプロセスは、グラフィック処理ユニットに形成されるかまたはこれによって実行される。
【0090】
3Dトポロジ1008および計画される軌道1018は、衝突検出器1020に、グラフィック処理ユニットにおけるアルゴリズムに、および/または数値制御ユニット1012に供給される。衝突検出器1020は、3Dトポロジ1008が計画される軌道内にあるかどうかを確認するためのチェックを行う。ステップ1022において衝突が起こり得ると判定されると、方法はブロック1024に進む。起こり得ると判定されない場合には、ステップ1002のモニタリングに分岐して戻り(図示せず)、この結果モニタリングがループされる。ブロックまたはステップ1002は連続的に実行される。
【0091】
ステップ1024において、衝突のリスクの認識が行われた場合に、衝突を防止するようにレーザマシニングヘッドを駆動することで対策が取られる。この対策は、停止、および/または障害の回避もしくは迂回である。ブロック1020、1022、および1024は、衝突検出器のプロセスの一部である。
【0092】
ステップ1024の結果は、CNCプロセス1012に供給されて処理および実装される。例えば、緊急停止のために、レーザマシニングヘッドの駆動装置を直接、すなわち数値制御ユニットを関与させずに制御することもできる。
【0093】
図11は、レーザマシニングヘッドの衝突防止の一般的方法のフローチャートを示す。第1のステップ1100において、切断エリア全体またはマシニング空間全体が、センサシステムによって連続的にモニタされる。
【0094】
ステップ1101において、上で述べたような局所的な変化がないかのチェックも引き続き行われる。局所的な変化は通常、切断プロセスによって引き起こされる。局所的な変化がない場合、ステップ1100に分岐して戻ることにより、結果的にモニタリングがループする。
【0095】
局所的な変化が認識される場合、方法はステップ1102に進み、ここで上で概説したように変化が分析される。
【0096】
図12は、図6の切断輪郭602のような切断輪郭の形状の例示的な描写を示す。切断輪郭に関して、システムは、形状1200、1202、1024、および1206と呼ぶ4つの点の組を計算する。形状1200、1202、1204、および1206は、工作物の画像または切断輪郭上に配置され得る。
【0097】
第1の形状1200は、実際の切断線上にある点から成る。第2の形状1202は、切断輪郭から5mmずらした内側にある点の跡から成る。第3の形状1204は、切断輪郭からやはり例えば5mmずらした、外側にある点の跡から成る。第4の形状1206は、切断輪郭の内側の全エリアを覆う。
【0098】
画像から、4つの形状1200、1202、1204、および1206の画像画素が抽出される。正規化ステップにおいて、4つの形状1200、1202、1024、および1206の各々について、画素輝度のヒストグラムが計算される。各ヒストグラムは例えば32個のビンを有する。更に、第2の形状1202および第3の形状1204、3について、共起ヒストグラムが計算される。この共起または2Dヒストグラムは32×32個のビンを含み、切断部の内側および外側の対応する点の輝度を相関させる。2Dヒストグラムのx軸が第2の形状1202であってもよく、2Dヒストグラムのy軸が第3の形状1204であってもよい。
【0099】
次いで、入力データのベクトルへの連結が計算される。ベクトルのサイズは、2つのカメラのニューラルネットワークの場合と1つのカメラのニューラルネットワークの場合とで異なる。
【0100】
ニューラルネットワークは、入力データを、連結されたヒストグラムを含むベクトルとして受け入れる。2つのカメラによって見えている輪郭を予測するニューラルネットワークの場合は、以下のシークエンスが使用される:
・ 右側カメラからの形状1200のヒストグラム(32個の値)
・ 左側カメラからの形状1200のヒストグラム(32個の値)
・ 右側カメラからの形状1202のヒストグラム(32個の値)
・ 左側カメラからの形状1202のヒストグラム(32個の値)
・ 右側カメラからの形状1204のヒストグラム(32個の値)
・ 左側カメラからの形状1204のヒストグラム(32個の値)
・ 右側カメラからの形状1206のヒストグラム(32個の値)
・ 左側カメラからの形状1206のヒストグラム(32個の値)
・ 右側カメラからの共起ヒストグラム(32×32=1024個の値)
・ 左側カメラからの共起ヒストグラム(32×32=1024個の値)
これは合計でニューラルネットワーク用の2304個の入力値となる。
【0101】
ただ1つのカメラによって見えている輪郭を予測するニューラルネットワークの場合は、シークエンスは以下の通りである:
・ 形状1200のヒストグラム(32個の値)
・ 形状1202のヒストグラム(32個の値)
・ 形状1204のヒストグラム(32個の値)
・ 形状1206のヒストグラム(32個の値)
・ 共起ヒストグラム(32×32=1024個の値)
これを合計すると、ニューラルネットワーク用の1152個の入力値となる。
【0102】
ニューラルネットワークはこの例では、入力層としての1つの平坦化層、バッチ正規化を伴う5つの内部緻密層、および出力層としてのシグモイド活性化を伴う1つの緻密層から成る、深層ニューラルネットワークである。
【0103】
正規化され連結された入力データから、深層ニューラルネットワークは、1つの輪郭あたり0,0から1,0までの範囲内の1つの浮動小数点値を出力する。値が0,5未満である場合、輪郭は安全であると予測される。値が0,5以上である場合、輪郭は危険な傾斜を有すると予測される。
【0104】
レーザマシニングヘッドの衝突防止の方法を示す図10において、ニューラルネットワークの上記した実装によって、内部モデル化(ステップ1006および1010)およびステップ1008を置き換えることができる。別法として、ニューラルネットワークの上記した実装によって、局所的な変化の認識(ステップ1002および1004)、内部モデル化(ステップ1006および1010)、およびステップ1008を置き換えることができる。
【0105】
ここに提示する、レーザマシニングツールのマシニング空間内でのレーザマシニングヘッドによる衝突防止の方法によって、計画される軌道においてあり得る障害の、リアルタイムでの単純かつ精確な認識、および、衝突のリスクを認識した場合の衝突防止が可能になる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップは、切断片(600;700)の切断輪郭(602;706)に沿って、切断輪郭(602;706)の内側の複数測定点と、各内側の測定点に対応する複数の外側の測定点とを定め、各内側の測定点と各外側の測定点の輝度および/または色値を検出して画像の変化部位を検出し、
各内側の測定点の輝度および/または色値と、対応する各外側の測定点の輝度および/または色値とが部分的に異なる場合に、前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むと認識することと、を特徴とする方法。
【請求項3】
レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
前記画像は時間をずらして撮影されることと、前記工作物(112)の時間的により早い画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位が検出されることと、を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、前記変化部位の3Dオブジェクトはモデル化され、前記3Dオブジェクトと前記レーザマシニングヘッドの間に衝突がないかをチェックされることを特徴とする方法。
【請求項5】
レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、を含み、更に:
− ある画像において、点から成りかつ切断輪郭(602)の境界線と平行に位置する、少なくとも2つの形状(1202、1204)を計算するステップであって、1つの形状(1202)は前記境界線の内側に位置し、1つの形状(1204)は前記境界線の外側に位置する、計算するステップと、
− 前記形状(1202、1204)の前記点に従って画像画素を抽出するステップと、
− 各形状(1202、1204)について画素輝度のヒストグラムを計算することによって、前記画像画素を正規化するステップと、
− 前記ヒストグラムを、入力層、複数の内部層、および出力層を備える深層ニューラルネットワークに入力するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークを用いて前記ヒストグラムを処理するステップと、
− 前記深層ニューラルネットワークによって変数を出力するステップと、
− 前記変数の値が閾値の第1の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜しているかどうかを、または、前記変数の値が閾値の第2の側にあることから、前記切断輪郭(602)内のオブジェクトが傾斜していないかどうかを、認識するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、2つの更なる形状(1200、1206)が計算され、前記切断輪郭(602)上に第1の更なる形状(1200)が位置し、前記切断輪郭(602)の内側の全エリアを第2の更なる形状(1206)が覆うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、画像画素を抽出する前記ステップの前に、前記レーザマシニングツール(100)の一部によって覆われていないのはどの画像画素かが判定され、前記判定のために、前記レーザマシニングツール(100)の前記一部の動的3Dモデルが提供され、前記レーザマシニングツール(100)からの実座標で更新され、見えている抽出されるべき画像画素が前記動的3Dモデルと前記画像の比較によって計算されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の方法であって、前記画像画素を正規化する前記ステップは、前記少なくとも2つの形状(1202、1204)について2Dヒストグラムを計算することを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
前記認識は、前記工作物(112)の切断片の予め事前計算されたあり得る位置に基づくことと、を特徴とする方法。
【請求項10】
レーザマシニングツール(100)のマシニング空間(106)内でのレーザマシニングヘッド(102)の衝突防止の方法であって、
− 前記マシニング空間(106)内の工作物(112)を少なくとも1つの光センサでモニタするステップと、
− 前記工作物(112)の画像を撮影するステップと、
− 前記工作物(112)の画像の変化部位を検出するステップと、を含み、
− 前記変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識することと、
− 所定の切断プランおよび/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックすることと、
− 衝突のリスクを認識した場合に、前記レーザマシニングヘッド(102)を移動させるための駆動装置を衝突を防止するように制御することと、
切断片(600;700)が識別され、その位置がこの切断片(600;700)の既に計算されたあり得る位置においてモデル化された前記工作物(112)の輪郭(900)と比較されること、を特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2から10のいずれか1項に記載の方法であって、前記レーザマシニングヘッド(102)が、その軌跡を利用して、前記変化部位を迂回することまたは停止することが見込まれることを特徴とする方法。
【請求項12】
マシニングすべき金属工作物を受け入れるためのマシニング空間(106)と、前記工作物をマシニングするためのレーザマシニングヘッド(102)と、を有する、数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、
数値制御ユニット(202、1012)と、
前記マシニング空間(106)の少なくとも一部およびその中に配置されている前記工作物(112)を撮影する少なくとも1つの光センサ(212)を有する、光センサ系と、
前記光センサ系に接続され前記工作物(112)の変化部位を認識するべく前記光センサ(212)からのデータを処理するように構成されており、かつ、前記数値制御ユニット(202、1012)に接続されている、グラフィック処理ユニット(214)と、を備え、
前記グラフィック処理ユニット(214)は、変化部位が前記工作物(112)に対して傾斜したオブジェクトを含むかどうかを認識するように構成されていることと、
前記グラフィック処理ユニット(214)および/または前記数値制御ユニット(202、1012)は、所定の切断プランならびに/または前記レーザマシニングヘッドの現在の位置および/もしくは軌跡(1016)に基づいて、前記傾斜したオブジェクトと前記レーザマシニングヘッド(102)の間に衝突がないかをチェックするように構成されていることと、
前記数値制御ユニット(202、1012)は、衝突のリスクの認識が行われた場合に衝突を防止するように構成されていることと、
前記光センサ(212)は、時間をずらして前記工作物(112)を撮影することと、
グラフィック処理ユニット(214)は、時間的により早く撮影した前記工作物(112)の画像に対する前記工作物(112)の画像の変化部位を認識することと、
を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項13】
請求項12に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記光センサ系は、少なくとも2つのカメラ(212)を備えることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項14】
請求項13に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、2つのカメラ(212)が提供され、それらの撮影エリア(302)は同じ方向に整列されていることと、第1のカメラ(212)の前記撮影エリア(302)は前記マシニング空間(106)の第1の半部を撮影することと、第2のカメラ(212)の前記撮影エリア(302)は前記マシニング空間(106)の第2の半部を撮影することと、を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項15】
請求項13または14に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、4つのカメラ(212)が提供されることと、2つのカメラ(212)の撮影エリア(302;402)は前記マシニング空間(106)の第1の半部を撮影することと、2つのカメラ(212)の撮影エリア(302、402)は前記マシニング空間(106)の第2の半部を撮影することと、前記2つのカメラ(212)は互いにずらされて各々配置されていることと、を特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記光センサ系は高速接続部によって前記グラフィック処理ユニット(214)に接続されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記グラフィック処理ユニット(214)はリアルタイムイーサネット接続部によって前記数値制御ユニット(202、1012)に接続されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか1項に記載の数値制御式レーザマシニングツール(100)であって、前記カメラシステムおよび/または前記グラフィック処理ユニット(214)は、固有のカメラパラメータの第1の較正と、前記数値制御式レーザマシニングツール(100)の座標系と比較した前記光センサ(212)の座標系の並進および回転のパラメータの第2の較正と、を実行するように構成されていることを特徴とする、数値制御式レーザマシニングツール。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-01-26 
出願番号 P2021-516614
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B23K)
P 1 652・ 537- YAA (B23K)
P 1 652・ 113- YAA (B23K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 大山 健
田々井 正吾
登録日 2021-09-29 
登録番号 6952218
権利者 バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
発明の名称 衝突防止の方法およびレーザマシニングツール  
代理人 弁理士法人YKI国際特許事務所  
代理人 弁理士法人YKI国際特許事務所  

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