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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61J
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
管理番号 1396313
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-02 
確定日 2023-03-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第7080436号発明「薬剤払出し装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7080436号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7080436号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜4に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)11月18日(優先権主張 平成25年11月22日 平成26年 9月24日)を国際出願日とする特願2015−549159号の一部を平成31年 2月 1日に新たな特許出願とした特願2019−17254号の一部を令和 2年 2月14日に新たな特許出願とした特願2020−23319号の一部を、さらに令和 3年 6月 3日に新たな特許出願としたものであって、令和 4年 5月27日にその特許権の設定登録がされ、令和 4年 6月 6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和 4年12月 2日に特許異議申立人 中谷浩美(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。


第2 本件発明
本件特許の請求項1〜4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。

「【請求項1】
薬剤が収容された薬剤容器と、薬剤容器の薬剤が投入される分配皿と、分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパーと、薬剤包装装置とを備えた薬剤払出し装置であって、
薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能であり、
清掃作業が必要な薬剤が分包された場合、自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器が選定され、選定された薬剤容器が容器載置装置に載置され、容器載置装置に載置された薬剤容器から分配皿に清掃剤が投入され、清掃剤が投入された分配皿から清掃剤を排出して、散薬投入ホッパーに清掃剤が投入され、散薬投入ホッパーの清掃作業を実施することを特徴とする薬剤払出し装置。
【請求項2】
薬剤が収容された薬剤容器と、薬剤容器の薬剤が投入される分配皿と、分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパーと、薬剤包装装置とを備えた薬剤払出し装置であって、
薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能であり、
薬剤の包装が終了すると散薬投入ホッパーの清掃作業を実施するものであり、
散薬投入ホッパー内を負圧に吸引する吸引手段と、散薬投入ホッパー内に清掃剤を投入する清掃剤投入手段とを有し、
散薬投入ホッパー内に清掃剤を投入して吸引手段で散薬投入ホッパー内を負圧に吸引するホッパー清掃機能を備えたことを特徴とする薬剤払出し装置。
【請求項3】
散薬投入ホッパーには、散薬を導入する導入側開口と、導入側開口よりも下の位置にあって散薬を排出する薬剤排出口と、吸引手段と接続される吸引開口があり、当該吸引開口は導入側開口よりも下であって薬剤排出口よりも導入側開口に近い高さの位置に開いており、吸引開口から吸引手段に至る間の吸引路であって吸引開口の直近の位置に曲路があることを特徴とする請求項2に記載の薬剤払出し装置。
【請求項4】
分配皿には、薬剤が投入される薬剤投入溝が設けられ、
分配皿が設けられたテーブル部材を有し、
テーブル部材の下方に薬剤包装装置が設けられ、
散薬投入ホッパーには、薬剤排出口を有し、
薬剤投入溝から掻き出された薬剤が散薬投入ホッパーに投入されて薬剤排出口から薬剤包装装置側に散薬を投下させ、散薬投入ホッパーの薬剤排出口の近傍にエアーブロー用のノズルが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の薬剤払出し装置。」


第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証〜甲第6号証を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。

1 申立理由1(明確性要件)
(1)申立理由1−1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器が選定され、選定された薬剤容器が容器載置装置に載置され、」と記載されているが、この記載は、文理上、「自動又は手動によって〜充填され」であるのか、「自動又は手動によって〜選定され」であるのか、「自動又は手動によって〜載置され」であるのかが不明であり、日本語として表現が不適切であるから、発明が不明確である。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由1−2
本件発明は、「薬剤払出し装置」に係る「物の発明」である。この薬剤払出し装置は、本件発明の発明特定事項からすると、薬剤を包装する際には、薬剤が収容された薬剤容器が選定され、該薬剤容器が容器載置装置に載置され、載置された薬剤容器から分配皿に薬剤が投入され、薬剤が投入された分配皿から薬剤を排出して、散薬投入ホッパーに薬剤が投入され、最終的に薬剤包装装置で包装されるように構成されている。
ここで、本件発明は、薬剤容器を活用して清掃剤を投入する発明であるところ、上記構成によって薬剤を払い出すことができる薬剤払出し装置において、薬剤の代わりに清掃剤を薬剤容器に収容したにすぎない発明であり、従来の薬剤払出し装置の構成を何ら変更することなく、ただ単に払い出す対象物を薬剤に替えて清掃剤としたにすぎない発明である。しかも、清掃剤は、処方されたものであり、薬効の有無に関係ないものが選択されるところ、清掃剤は薬剤と等価のものが含まれることから、本件発明は、散薬投入ホッパーを介して払い出す薬剤そのものによって散薬投入ホッパーが清掃されるものを含む。
したがって、本件発明は、「物の発明」としての装置の構成を何ら具体的に特定するものではないから、発明として不明確である。しかも、本件発明は、散薬投入ホッパーを介して払い出す薬剤によって散薬投入ホッパーが清掃されるものを含むから、発明の範囲の外延が不明確である。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 申立理由2(サポート要件)
(1)申立理由2−1
本件特許公報の明細書【0229】、【0230】の記載、及び令和 4年 3月 4日付け意見書(甲第6号証)の記載「本願発明1は、自動または手動によって選択された薬剤容器から分配皿に清掃剤が投入され〜本願発明の特有の効果を奏します(段落[0229])。」によれば、本件発明の課題は「清掃剤投入装置を設けずに、清掃剤を充填して保管しておいた薬剤容器を利用して清掃剤を投入する点」にある。
しかし、請求項1では、清掃剤を薬剤容器に充填して保管しておく構成について具体的に何ら特定されておらず、どの場所に保管された薬剤容器の中から清掃剤を収容する薬剤容器を選定し、容器載置装置に載置するのか特定されていない。しかも、清掃剤を収容する薬剤容器が容器保管装置に保管されない態様を含んでいるが、当初明細書等には、清掃剤を収容する薬剤容器が容器保管装置に保管されることのみ記載されている(明細書【0229】)。また、「清掃作業が必要な薬剤が分包された場合」に、「自動または手動によって」「清掃剤が充填され」るのであれば、清掃剤を保管しておくのではなく、清掃が必要なときになってはじめて清掃剤を充填する態様をも含んでいる。
よって、本件発明は、明細書の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2−2
明細書の記載から導かれる本件発明の課題は「清掃剤投入装置を用いずに清掃剤を投入する」である(明細書【0229】)ところ、請求項1にて、清掃剤を収容した薬剤容器の選定、載置、あるいは薬剤容器からの清掃剤の投入を具体的にどのような構成で実行するのか何ら特定されていない。
よって、本件発明は、明細書の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

3 申立理由3(進歩性
(1)申立理由3−1
本件発明は、甲第1号証に記載された発明、及び周知・慣用技術(甲第2号証及び甲第3号証)に基いて、その技術の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由3−2
本件発明は、甲第4号証に記載された発明、及び周知・慣用技術(甲第2号証及び甲第3号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3−3
本件発明は、甲第5号証に記載された発明、及び周知・慣用技術(甲第2号証及び甲第3号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2001−95896号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2014−105514号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:曽我聡外7名、「薬物のクロスコンタミネーションの検討(第 4報) 結晶乳糖,倍散用結晶乳糖の除去剤としての効果比較 」、九州薬学会会報、1983年第37号、P.97〜102(以下 「甲3」という。)
甲第4号証:特開平7−132135号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2007−137446号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:意見書(以下「甲6」という。)


第4 本件明細書の記載事項
本願の願書に添付した明細書又は図面(以下「本願明細書等」という。)には、以下の記載がある(なお、下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。

1 「【0012】
前記した様に、清掃作業は重要であり、欠くことができない作業である。
しかしながら、清掃作業は面倒な作業である。そこで本発明は、従来技術の薬剤払出し装置を改良し、清掃作業が楽であり、且つ従来に比べてより綺麗に清掃することができる薬剤払出し装置を提供することを目的とするものである。」

2 「【0035】
テーブル部材の下方に薬剤包装装置が設けられ、薬剤投入溝から掻き出された散薬が投入されて薬剤包装装置側に散薬を投下させる散薬投入ホッパーと、散薬投入ホッパー内を負圧に吸引する吸引手段と、散薬投入ホッパー内に清掃剤を投入する清掃剤投入手段とを有し、散薬投入ホッパー内に粉体を投入して吸引手段で散薬投入ホッパー内を負圧に吸引するホッパー清掃機能を備えることが好ましい。
ここで、散薬投入ホッパー内に清掃剤を投入する清掃剤投入手段を有する。ここで「清掃剤」とは、処方された清掃剤であり、ホッパー内を洗浄するための粉体である。また「清掃剤」は、薬効の有無に関係無く、仮に人の口に入っても害が無いものが選択される。「清掃剤」は、剥離材として機能するものである。
このようにすると、散薬投入ホッパー内に清掃剤を投入した状態で吸引手段で散薬投入ホッパー内を負圧に吸引する。そのため散薬投入ホッパー内で「清掃剤」が舞い、散薬投入ホッパーの内壁と衝突して散薬の残渣を剥離する。」

3 「【0060】
次に、薬剤払出し装置1の概要と大まかな動作について説明する。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、処方箋に応じて薬剤を選び出す動作と、所定量の薬剤を分配皿201に投入する動作と、薬剤を分割して薬剤包装装置410に投入する動作を自動的に行うことができる。
またその後に、分配皿201の清掃が自動的に行われ、さらに掻出機構606についても自動的に清掃される。
さらにその後、散薬投入ホッパー413内についても自動的に清掃される。
【0061】
即ち本実施形態の薬剤払出し装置1は、処方箋に応じて自動的に薬剤容器2を選び出す。具体的には、容器保管装置101のドラム部材102を回転し、所望の薬剤容器2を容器移動手段700に近づける。そして容器移動手段700のハンド部707で、薬剤容器2を保持し、アーム等を動作させて当該薬剤容器2を容器載置装置3の振動台20に設置する。
なお複数の薬剤を配合して、一つの包装中に同封する場合には、複数の薬剤容器2が容器載置装置3に設置される。」

4 「【0229】
図60に示した実施形態では、散薬投入ホッパー413の導入側開口の近傍に清掃剤投入装置423を設けたが、薬剤容器2を利用して散薬投入ホッパー413に清掃剤を投入してもよい。即ち先の実施形態では、清掃剤を投入する清掃剤投入手段として清掃剤投入装置423を設けたが、薬剤容器2を清掃剤投入手段として活用してもよい。
例えば特定の薬剤容器2に重曹等の清掃剤を充填しておき、他の薬剤容器2と同様に容器保管装置101に保管しておく。
そして通常の薬剤容器2から散薬を取り出して散薬投入ホッパー413に投入する動作に準じた動作により、薬剤容器2内の清掃剤を散薬投入ホッパー413に投入する。
【0230】
具体的に説明すると、清掃作業が必要な薬剤が分包された場合や、残薬センサー等により、散薬投入ホッパー413に汚れがあることが判明した場合、自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器2を選定する。
そしてロボット702のハンド部707で薬剤容器2を保持し、薬剤容器2を移動し、清掃剤が充填された薬剤容器2を容器載置装置3に載置する。
その後に容器載置装置3の防振台23を動作させて薬剤容器2から散薬分配装置202の分配皿201に散薬を投入する。そして掻出装置930で分配皿201から清掃剤を排出し、散薬投入ホッパー413に投入する。
なおこの一連の動作は、通常の薬剤分包時の動作スピードよりも早いスピードで実行される。」


第5 甲各号証の記載事項、並びに甲1発明、甲4発明、甲5発明及び周知技術
1 甲1の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。
ア「【0020】
【第1実施例】本発明の散薬供給装置の第1実施例について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、その全体構成を示す概要ブロック図である。図2は、(a)が散薬収容器及び散薬送出部の斜視図であり、(b)が他の形態の散薬収容器及び散薬送出部の斜視図であり、(c)が散薬供給装置を実装した散薬分包機の正面模式図であり、(d)がその右側面模式図である。
【0021】この散薬供給装置は(図1参照)、振動式の散薬フィーダ10と、制御手段および補正手段を具現化した制御装置20とを具えており、これらは、適宜のケーブル等を介して信号送受等可能に接続されるとともに、そのケーブル端等に設けられたコネクタ11a等にて容易に分離しうるようになっている。・・・
【0022】散薬フィーダ10は(図1参照)、振動するために、振幅可変な発振回路とその発振信号に従ってスイッチングするパワートランジスタとを有して所望の駆動電圧や駆動電流を生成する駆動回路11と、その駆動電圧等を受けて伸縮や回転等して振動を生じるピエゾ素子や偏心モータ等を含んだ振動発生部材15とを具えている。」

イ「【0024】また、散薬フィーダ10には(図1参照)、その振動にて散薬を送り出すために、送出を待っている散薬を一時貯留しておく散薬収容器12と、この散薬収容器12から排出された散薬に振動を与えながら一定経路を流下させることで排出量・流量を安定させる散薬送出部13も、設けられている。これらの散薬収容器12と散薬送出部13は、プラスチックの射出成形等にて一体成形されており、振動発生部材15の上に又はアッパーベース16の上に纏めて装着されるようになっている。」

ウ「【0033】このような散薬供給装置は、散薬分包機40に搭載して用いられることが多いので、それについても言及する(図2(c),(d)参照)。最近よく用いられている散薬分包機40は、それぞれが散薬フィーダ10を実装した2台の散薬分配分割装置(43〜45)が左右に並んで設置されており(なお、基本動作には1台あれば足りるので図2(c)では2台目を二点鎖線で示している)、何れも、必要量だけ秤量された散薬を分包単位で均等に分割するために、散薬を等速で少しずつ送出する上述の散薬フィーダ10に加えて、回転しながらその散薬を溝に受けることで円環状に均す環状テーブル44と、これを回転させるテーブル駆動部43と、環状テーブル44の溝から散薬を所定量ずつ切り出す切り出し装置45とを具えている。両散薬分配分割装置(43〜45)の中間位置には、共通ホッパー46が設置されており、これによって、それらの切り出された散薬を包装装置(41,42)へ導くようになっている。
【0034】包装装置(41,42)は、共通ホッパー46を介して落下して来た散薬を受ける投入ホッパー42と、予め二つ折りされ巻き取られている分包帯に加えて適宜ユニット化されたその送り機構やヒートシール部材さらにはプリンタ等も収めた包装装置本体41とを具えていて、薬剤を受ける度に、投入ホッパー42が上下動するとともに、分包帯を間欠的に送り出しながら、薬剤を服用単位・施用単位で分包するようになっている。」

エ「【0037】この散薬供給装置を用いて散薬の定量送りを行う場合、分包しようとする散薬を必要量だけ秤量して散薬収容器12へ投入するとともに、その種類や重量等に基づいて適宜決定・選定した振動条件の標準設定値を、すなわち振動強度および時間の情報を、入力装置30を介して制御装置20に入力する。」

2 甲1発明
上記1のア〜エを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「散薬供給装置を実装した散薬分包機であって、
散薬供給装置は、
振動発生部材15と、
その振動にて散薬を送り出すために、送出を待っている散薬を一時貯留しておく散薬収容器12と、
散薬収容器12と一体成形されており、振動発生部材15の上に纏めて装着され、散薬収容器12から排出された散薬に振動を与えながら一定経路を流下させることで排出量・流量を安定させる散薬送出部13とが設けられ、 散薬を等速で少しずつ送出する振動式の散薬フィーダ10を具え、
散薬分包機40は、
散薬分配分割装置(43〜45)が設置され、
必要量だけ秤量された散薬を分包単位で均等に分割するために、回転しながら、散薬フィーダ10から送出された散薬を溝に受けることで円環状に均す環状テーブル44と、
環状テーブル44の溝から散薬を所定量ずつ切り出す切り出し装置45とを具え、
共通ホッパー46が設置され、これにより、切り出された散薬を包装装置(41,42)へ導き、
包装装置(41,42)は、共通ホッパー46を介して落下して来た散薬を服用単位・施用単位で分包する、
散薬供給装置を実装した散薬分包機40。」

3 甲2の記載事項
(1)甲2には、次の記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、錠剤や散薬を患者が1回に服用する量にまとめて包装する薬剤包装装置を清掃する技術に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば散薬包装装置における分割円盤、掻出装置、ホッパー、シュート等の薬剤接触部材に付着した散薬や粉末化した錠剤を清掃材を使用して除去し、後処理薬の汚染を防止するとともに、清掃性を向上するようにした技術に関する。」

イ「【0023】
第1の発明は、特に散薬のための薬剤包装装置に関係している。すなわち、本発明は、投入ホッパーを介して投入された散薬を分割装置に供給し、該分割装置で散薬を1回服用分毎に分割し、分割された薬剤を包装ホッパーを介して包装装置に供給し、該包装装置で散薬を包装袋に包装する薬剤包装装置において、清掃材容器に収容した清掃材を前記投入ホッパーから前記包装ホッパーの出口までの一連の薬剤経路のいずれかに供給する清掃材供給装置を備え、清掃が必要なときに、前記清掃材を前記薬剤経路に供給した後、薬剤径路に残留した散薬と共に清掃材を薬剤経路から回収することで薬剤経路を清掃するようにしたものである。
【0024】
前記投入ホッパーに前記清掃材を供給することが好ましい。また、前記清掃材供給装置により前記清掃材を前記薬剤径路の複数の部分に供給することができる。さらに、前記薬剤径路に供給された清掃材を前記包装装置で少なくとも1つの包装袋に包装して回収することができる。」

ウ「【0028】
第2の発明は、特に錠剤のための薬剤包装装置に関係している。すなわち、本発明は、錠剤を種類毎に収容した複数のカセット容器から1回毎服用分の錠剤を供給し、該錠剤を共通通路を経て収集ホッパーで収集し、収集された錠剤を包装ホッパーを介して包装装置に供給し、該包装装置で錠剤を包装袋に包装する薬剤包装装置において、清掃材容器に収容した清掃材を前記カセット容器の出口から前記包装ホッパーの出口までの一連の薬剤経路のいずれかに供給する清掃材供給装置を備え、清掃が必要なときに、前記清掃材を前記薬剤経路に供給した後、薬剤径路に残留した薬剤と共に清掃材を薬剤経路から回収することで薬剤経路を清掃するようにしたものである。」

エ「【0144】
図27および図28に示すように、清掃材容器118の下部には、モータ121により回転して清掃材容器118内の清掃材を供給ノズル119に搬送するスクリューフィーダ120が設けられている。清掃材容器118には、後述する清掃材が収容され、その上端開口部は、防湿キャップ129で封止されている。」

オ「【0149】
このように、投入ホッパー1の内壁面に清掃材を積極的に飛散させることで、内壁面に残留する薬剤が清掃材に吸着し、清掃材と共にトラフ3上に落下する。」

カ「【0152】
3.トラフの清掃
トラフ3の清掃は、前記投入ホッパー1の清掃と一緒に行うとよい。薬剤の供給中はトラフ3を振動させるため、トラフ3上の薬剤が投入ホッパー1の下端出口より高い位置に達し、投入ホッパー1の下端部外面やトラフ3の内側壁に薬剤が付着する。しかし、投入ホッパー1からトラフ3に供給される清掃材は、薬剤が付着した高さまで到達しにくいため、トラフ3の高い位置に付着した薬剤が清掃材と接触することなく残留するという問題がある。」

キ「【0163】
分割円盤110,54の清掃を行うには、様々な清掃材供給方法が考えられる。例えば、V桝円盤50からの清掃材を供給する方法、トラフ3から振動フィーダ2の振動によって清掃材を供給する方法、または、図27に示す専用の清掃材供給装置により清掃材を供給する方法がある。・・・
【0164】
前記3つの清掃材供給方法によって一定量の清掃材を供給した後、掻出装置40を使用して分割円盤110,54に設けた包装ホッパー18に清掃材を掻き出しながら残薬を処理する。」

ク「【0172】
通常、V桝60に薬剤を投入する場合、前記清掃材供給装置135は、図30(a)に示すように、V桝60から離隔したところに位置している。清掃が必要な場合、清掃材供給装置135を、図30(b)に示すように、V桝60の上方の位置に移動させる。そして、図30(c)に示すように、軸137aを中心にダクト部137を上方に回動させてダクト部137の底を開口すると、内部の清掃材が案内板136に沿って滑り落ちてV桝60の内壁に直接的に供給され、清掃される。」

ケ「【0174】
8.清掃材の回収
以上のように薬剤径路に供給された清掃材の回収には、3つの方法がある。第1の方法は、清掃材を残薬とともに包装ホッパ18から流出させ、包装部17で少なくとも1つの包装袋113に包装して回収する方法である。」

コ「【0176】
従来、錠剤包装装置では、薬剤径路の各部分を開放して錠剤の粉塵で汚れた部分を布等で清拭することによって清掃していたが、煩わしい作業であった。
ここでは、本発明による錠剤包装装置の自動清掃について説明する。清掃材は、散薬包装装置の場合のように粉体を使用せず、粒子状の清掃材であることを前提とする。」

サ「【0178】
モーターベース140の作動により錠剤カセット139から排出された錠剤は、落下案内通路141を通って収集ホッパーに落下し、包装ホッパー18を介して包装部17に供給される。ロールから包装部17に供給される包装紙143にはプリンター112により所定のデータが印字される。包装部17では、包装紙143を2つ折りして形成された包装袋113に錠剤が包装される。・・・
【0179】
2.清掃装置
錠剤包装装置は、錠剤カセット139の出口の落下案内通路141から包装ホッパー18の出口までの薬剤径路を自動的に清掃して残薬を除去する自動清掃装置を備えている。」

シ「【0187】
このようにして一定時間、清掃材を循環させると、錠剤径路に付着した錠剤粉塵は、清掃材と共に吸い上げられて分離装置144で清掃材と分離され、掃除機に吸引され、錠剤径路が完全に清掃される。清掃材を使用しないで、空気のみ通過させることができるが、錠剤径路に堆積した粉塵が舞い上がらないためほとんど効果がない。粒状清掃材を用いると、清掃材が落下する衝撃等で堆積した粉塵が舞い上がり、空気の流れに乗って排出されるので清掃効果が高い。・・・
【0188】
清掃材の投入は、錠剤カセット139の一部を使用して行ってもよい。」

(2)甲2に記載された技術的事項
上記(1)のア〜シを総合すると、甲2には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「散薬包装装置における分割円盤、掻出装置、ホッパー、シュート等の薬剤接触部材に付着した散薬を清掃材を使用して除去する技術であって、
投入ホッパーを介して投入された散薬を分割装置に供給し、分割装置で散薬を分割し、分割された薬剤を包装ホッパーを介して包装装置に供給し、包装装置で散薬を包装袋に包装する薬剤包装装置において、
清掃材容器に収容した清掃材を投入ホッパーから包装ホッパーの出口までの一連の薬剤経路のいずれかに供給する清掃材供給装置を備え、
清掃が必要なときに、清掃材を薬剤経路に供給した後、薬剤経路に残留した散薬と共に清掃材を薬剤経路から回収することで薬剤経路を清掃するようにしたものであり、
投入ホッパーに清掃材を供給し、薬剤経路に供給された清掃材を包装装置で少なくとも1つの包装袋に包装して回収することができ、
投入ホッパー1の内壁面に残留する薬剤が清掃材に吸着し、清掃材と共にトラフ3上に落下し、
清掃材は、投入ホッパー1からトラフ3に供給されて、トラフ3の清掃は、投入ホッパー1の清掃と一緒に行われ、
トラフ3から振動フィーダ2の振動によって分割円盤110,54に供給され、
掻出装置40を使用して分割円盤110,54に設けた包装ホッパー18に清掃材を掻き出しながら残薬を処理し、
清掃材を残薬とともに包装ホッパー18から流出させ、包装部17で少なくとも1つの包装袋113に包装して回収する技術。」(以下、「甲2技術1」という。)

「錠剤を種類毎に収容した複数のカセット容器から1回毎服用分の錠剤を供給し、錠剤を共通通路を経て収集ホッパーで収集し、収集された錠剤を包装ホッパーを介して包装装置に供給し、包装装置で錠剤を包装袋に包装する錠剤包装装置において、
清掃材容器に収容した清掃材を錠剤カセット139の出口から包装ホッパーの出口までの一連の錠剤経路のいずれかに供給する清掃材供給装置を備え、
清掃が必要なときに、清掃材を錠剤経路に供給した後、錠剤経路に残留した錠剤粉塵と共に清掃材を錠剤経路から回収することで錠剤経路を清掃するようにした技術であって、
錠剤包装装置は、錠剤カセット139の出口の落下案内通路141から包装ホッパー18の出口までの錠剤経路を自動的に清掃して残薬を除去する自動清掃装置を備えており、
粒状の清掃材を用い、清掃材が落下する衝撃等で堆積した粉塵が舞い上がり、空気の流れに乗って排出されるものであり、
一定時間、掃除機による吸引動作により清掃材を循環させると、錠剤経路に付着した錠剤粉塵は、清掃材と共に吸い上げられて分離装置144で清掃材と分離され、掃除機に吸引され、錠剤経路が完全に清掃されるものであり、
清掃材の投入は、錠剤カセット139の一部を使用して行い得る技術。」(以下「甲2技術2」という。)

4 甲3の記載事項
(1)甲3には、次の記載がある。
ア「そこで今回は,分包機に残置付着する薬物粉末を取り除く除去剤として,結晶乳糖を用い,その粒度分布が除去能力にどのように影響するかを,倍散用として試作された結晶乳糖と,従来より用いられている結晶乳糖を用いて比較検討した。」(第98頁第2−4行)

イ「第1薬を1日分2gとして7日分14gを2回秤取し,42包に分割分包し,その直後同様に同量の除去剤(結晶乳糖)を第2薬として分割分包し,これを試料とした。」(第98頁第23−24行)

(2)甲3に記載された技術的事項
上記(1)のア〜イを総合すると、甲3には次の技術的事項が記載されているといえる。

「分包機に残置付着する薬物粉末を取り除く除去剤として、結晶乳糖を用い、第1薬を分割分包し、その直後同様に除去剤(結晶乳糖)を第2薬として分割分包することで、残置付着する薬物粉末を除去する技術。」(以下「甲3技術」という。)

5 甲2及び甲3から把握される周知技術
上記3に記載された甲2技術1、及び上記4に記載された甲3技術によれば、分包機の残留薬物を除去するために、清掃剤を、分包動作における薬剤が払い出される経路に流して清掃することは周知技術である。

6 甲4の記載事項
(1)甲4には、次の記載がある。
ア「【0007】
【実施例】図1〜図3はこの発明による散薬供給装置を採用した散薬分包機の一実施例を示したものであり、この散薬分包機1は、手前に配置された分割包装機2と、その背後に配置された散薬収納庫20とから構成されている。
【0008】分割包装機2は、配分/分割装置3を左右に2台(3a、3b)具え、その下方に、両者に共通のホッパ4を有する包装装置5が設置されたものである。配分/分割装置3は、断面が円弧状に窪んだ環状の凹溝6を具えた回転体と、散薬の配分時に回転体を定速回転させ、また、散薬の分割時に分割数に応じた角度ずつ回転体を回動させるようになった駆動装置7とを具えている。また、配分/分割装置3は、回転体の内側から凹溝6上へ突き出して設けられた切出装置8を具え、切出装置8は、凹溝6の円弧状内側面に接触する円形の仕切板の側面に、所定幅の切出板が形成されたものであり、仕切板が凹溝6の円弧状内側面に沿って1回転すると、切出板がその幅相当分に集められた散薬を切り出して、凹溝6から包装装置5のホッパ4に導入するように構成されている。また,配分/分割装置3は、散薬の分割時に切出装置8を1回転ずつ繰り返し回転させるとともに、散薬の配分時には邪魔にならないよう切出装置8を上方へ退避させるようになった駆動装置9を具え、さらに、手撒き用の振動フィーダ10も具えている。
【0009】散薬収納庫20は、散薬をカセット21に収容して、このようなカセット21を散薬の種類に応じて多数具えたものであり、どのカセット21に収容された散薬でも分割包装機2の配分/分割装置3に配分するため、左右の配分/分割装置3a、3bに対応した供給位置40a、40bのいずれにもすべてのカセット21を移動させることのできる移動機構41を具えている。」

イ「【0011】散薬収納庫20内において、各カセット21は、左右の反転輪間に張設したチェーン等の無端条帯42に所定のピッチで設けた各支持体43に着脱可能に装着して配置され、無端条帯42の内側空間に設けたモータ44が無端条帯42を正逆任意の方向に回転させることにより、各カセット21は左右いずれの方向にも循環されるようになっている。この場合、散薬の重量を支えるため、循環路に沿って支持体43またはカセット21を支える手段を設けることが好ましい。」

ウ「【0012】供給位置40a、40bには、配分/分割装置3a、3bに配分する散薬を供給するための散薬フィーダ50a、50bが設けられ、各散薬フィーダ50は、その供給位置40に位置するカセット21と、カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51と、カセット21から排出される散薬を計量する計量装置61とから構成されている。」

エ「【0014】計量装置61は、たとえば、秤量器と秤量皿とからなる秤量装置として構成することができるものであるが、その場合、計量時には、供給位置40に位置するカセット21の前方において、その排出部23の正面出口から排出される散薬を受け取るために、排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置される必要がある。・・・また、計量装置61には、配分位置において、配分/分割装置3に対する散薬の配分動作を円滑に行わせるため、散薬を徐々に供給する振動フィーダ63が設けられている。」

オ「【0019】つぎに、上記のように構成された散薬供給装置を採用した散薬分包機の作用について説明する。散薬収納庫20に収納されている所定の散薬を、所定の量だけ処方して、これを所定の包数に分包する場合、つぎのようにして行う。
【0020】まず、その散薬を収容したカセット21が装着されている(はずの)支持体43を、移動機構41に設けられたすべての支持体43の中から見つける。つぎに、その支持体43のアドレスに基づいて、その支持体43が供給位置40に来るように、移動機構41を作動させて、必要な循環、昇降を行わせる。このとき、他の段の無端条帯42は、必要に応じて循環させることができる。
【0021】支持体43が供給位置40に到達したら、その位置に設けられたリーダライタ81が、その支持体43に装着されているカセット21のデータキャリア80からアドレスおよび薬品名を読み取り、それによって、そのカセット21が所定のものに間違いないことを、散薬供給に先立って確認する。つぎに、散薬フィーダ50を作動させて、そのカセット21から散薬を排出させながら、それを計量位置にある計量装置61によって計量して、その量が所定の量に達したら、散薬フィーダ50の作動を終わらせる。・・・
【0022】つぎに、シフト機構62を作動させて、計量装置61を配分位置へシフトさせる。この位置で、計量装置61の振動フイーダ63を作動させるとともに、駆動装置7によって配分/分割装置3の凹溝6を定速回転させ、それにより、振動フィーダ63のトラフ64内にある散薬を、凹溝6の全周にわたって実質的に均等に配分する。・・・
【0023】配分が終了したら、駆動装置7を切り換えて、配分/分割装置3の凹溝6を、所定の包数に相当する分割数に応じた角度ずつ回動させながら、駆動装置9によって切出装置8を1回転ずつ繰り返し回転させ、それにより、凹溝6内の散薬を1包相当分ずつ切り出して、包装装置5のホッパ4に順次導入する。包装装置5はこれを受けて、その散薬を1包分ずつ分包する。」

7 甲4発明
上記6のア〜オを総合すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

「分割包装機2と、散薬収納庫20とから構成される散薬分包機1であって、
分割包装機2は、配分/分割装置3を具え、その下方に、ホッパ4を有する包装装置5が設置され、
配分/分割装置3は、環状の凹溝6を具えた回転体と、切出装置8とを具え、
切出装置8は、切出板が散薬を切り出して、凹溝6から包装装置5のホッパ4に導入するように構成されており、
散薬収納庫20は、散薬をカセット21に収容して、分割包装機2の配分/分割装置3に配分するため、配分/分割装置3に対応した供給位置40にすべてのカセット21を移動させることのできる、循環路に沿って支持体43を設けた移動機構41を具え、
供給位置40には、配分/分割装置3に配分する散薬を供給するための散薬フィーダ50が設けられ、
散薬フィーダ50は、その供給位置40に位置するカセット21と、カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51と、カセット21から排出される散薬を計量する計量装置61とから構成され、
計量装置61には、配分位置において、配分/分割装置3に対する散薬の配分動作を円滑に行わせるため、散薬を徐々に供給する振動フィーダ63が設けられており、
所定の量だけ処方して所定の包数に分包する散薬を収容したカセット21が装着されている支持体43を、移動機構41に設けられたすべての支持体43の中から見つけ、
つぎに、その支持体43が供給位置40に来るように、移動機構41を作動させて、
支持体43が供給位置40に到達したら、散薬フィーダ50を作動させ、そのカセット21から散薬を排出させながら、それを計量位置にある計量装置61によって計量して、
計量装置61の振動フィーダ63を作動させ、振動フィーダ63のトラフ64内にある散薬を、凹溝6の全周にわたって実質的に均等に配分し、
配分が終了したら、凹溝6内の散薬を1包相当分ずつ切り出して、包装装置5のホッパ4に順次導入し、包装装置5はこれを受けて、その散薬を1包分ずつ分包する、
散薬分包機1。」

8 甲5の記載事項
(1)甲5には、次の記載がある。
ア「【0020】
図1に示すように、この実施形態の分包機1は、分包機本体1aと、分包機本体1aに組み込まれ、各々に任意の種類の散薬Aが収容された3つの散薬カセット2とを備えている。分包機本体1aは、散薬カセット2を設置する設置部3と、散薬カセット2に駆動力を伝達する駆動部4と、散薬カセット2に振動を与える起振手段5とを備えている。さらに、分包機1は、散薬カセット2から排出された散薬Aを1包単位毎に計量して、排出する計量手段6と、計量手段6によって排出された1包単位の散薬Aを1箇所に集合させる集合ホッパ7と、集合ホッパ7の下部に位置し、集合ホッパ7で集合された1包単位の散薬Aを包装する包装手段8とを備えている。」

イ「【0029】
図1、図2に示すように、計量手段6は、散薬カセット2の排出部10から排出された散薬Aを収容する計量皿37と、棒状で、一端38aで計量皿37を保持し、他端38bで設置部3に固定され、計量皿37に収容された散薬Aの重量を計量可能なロードセル38とを備える。」

ウ「【0033】
次に、この実施形態の分包機1の作用について説明する。図1に示すように、まず、各種の散薬から所定の散薬Aが収容された散薬カセット2を選択して、設置部3の係合部3aに係合して設置する。」

エ「【0037】
以上のようにして、散薬カセット2から排出される散薬Aは、計量手段6の計量皿37に排出され、計量される。設定手段(不図示)で設定される1包分の散薬量となるよう、駆動部4から搬送機構11に回転を与えて、散薬Aは散薬カセット2から排出されて、計量手段6で計量し、誤差が無いことを確認した時点で、駆動部4は制御部(不図示)から停止の信号を受けて、散薬カセット2からの排出を停止する。次に、制御部(不図示)は、計量手段6の計量皿37の底板37aを回動させて、計量皿37に収容された1包分の散薬Aを集合ホッパ7に投下する。集合ホッパ7に投下された散薬Aは、さらに集合ホッパ7の下方の投下位置41に位置する包装ロール紙40の上に投下される。すべての散薬Aが投下されたのが確認された後、すなわち計量手段6の計量値が0となった後、計量手段6の計量皿37の底板37aは再び閉合し、包装ロール紙40は回動機構39及び誘導部42によって1包分移動し、投下された散薬Aは、溶着機構(不図示)によって、1包分に封印される。この工程を1工程とし、順次散薬カセット2から1包分ずつ排出し、包装していく。」

9 甲5発明
上記8のア〜エを総合すると、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。

「散薬カセット2を設置する設置部3を備えた分包機本体1aと、分包機本体1aに組み込まれ、各々に任意の種類の散薬Aが収容された3つの散薬カセット2とを備えた分包機1であって、
分包機1は、
散薬カセット2から排出された散薬Aを収容する計量皿37を備え、計量皿37で1包単位毎に計量して、排出する計量手段6と、
計量手段6によって排出された1包単位の散薬Aを1箇所に集合させる集合ホッパ7と、
集合ホッパ7の下部に位置し、集合ホッパ7で集合された1包単位の散薬Aを包装する包装手段8とを備え、
各種の散薬から所定の散薬Aが収容された散薬カセット2を選択して、設置部3の係合部3aに係合して設置し、
散薬カセット2から排出される散薬Aは、計量手段6の計量皿37に排出され、
次に、計量手段6の計量皿37の底板37aを回動させて、計量皿37に収容された1包分の散薬Aを集合ホッパ7に投下し、集合ホッパ7に投下された散薬Aは、さらに集合ホッパ7の下方の投下位置41に位置する包装ロール紙40の上に投下され、投下された散薬Aは、1包分に封印される、
分包機1。」


第6 当審の判断
1 申立理由1−1について
(1)上記第2に摘記したとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器が選定され、選定された薬剤容器が容器載置装置に載置され、」との記載がある。

(2)「自動又は手動」とは、機器等を自動で作動させるか手動で動作させるかということであり、それら以外のもの、すなわち自動でも手動でもないものは実質的に存在しないから、「自動または手動によって」との特定は、機器等の動作のさせ方について実質的に何ら特定していない。
してみると、請求項1の記載における「自動または手動によって」が、文理上、「清掃剤が充填され」、「薬剤容器が選定され」及び「薬剤容器が容器載置装置に載置され」のいずれにかかるのかを問う意義は認められず、この記載により、第三者に不測の不利益をもたらす程の不明確さが生じるとはいえない。

(3)したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものとすることはできない。

2 申立理由1−2について
(1)本件発明は、「薬剤払出し装置」に係る「物の発明」である。

(2)そして、本件明細書の【0229】に「図60に示した実施形態では、散薬投入ホッパー413の導入側開口の近傍に清掃剤投入装置423を設けたが、薬剤容器2を利用して散薬投入ホッパー413に清掃剤を投入してもよい。即ち先の実施形態では、清掃剤を投入する清掃剤投入手段として清掃剤投入装置423を設けたが、薬剤容器2を清掃剤投入手段として活用してもよい。例えば特定の薬剤容器2に重曹等の清掃剤を充填しておき、他の薬剤容器2と同様に容器保管装置101に保管しておく。そして通常の薬剤容器2から散薬を取り出して散薬投入ホッパー413に投入する動作に準じた動作により、薬剤容器2内の清掃剤を散薬投入ホッパー413に投入する。」(上記第4の4参照。)と記載されるように、本件発明は、薬剤容器を活用して清掃剤を投入する発明である。
また、同【0035】の「ここで「清掃剤」とは、処方された清掃剤であり、ホッパー内を洗浄するための粉体である。また「清掃剤」は、薬効の有無に関係無く、仮に人の口に入っても害が無いものが選択される。」(上記第4の2参照。)の記載から、「清掃剤」は、処方されたものであり、薬効の有無に関係無いものが選択されるものであるから、明確である。

(3)そうすると、本件発明は、薬剤容器を活用して清掃剤を投入する、すなわち、薬剤払出し装置において薬剤を払い出す通常の動作で用いる機構を利用し、当該通常の動作における薬剤の流れに倣わせるように、薬剤容器から清掃剤を当該機構に投入することで、散薬投入ホッパーの清掃作業を行うものであり、当該機構については、請求項1に「薬剤が収容された薬剤容器と、薬剤容器の薬剤が投入される分配皿と、分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパーと、薬剤包装装置とを備えた薬剤払出し装置であって、薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能であ」ると特定されているから、「薬剤払出し装置」は物として明確である。

(4)したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、本件発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものとすることはできない。

3 申立理由2−1及び2−2について
(1)本件明細書の【0012】の記載(上記第4の1参照。)からすると、本件発明が解決しようとする課題は、清掃作業を楽にし、且つ従来よりも綺麗に清掃することができる薬剤払出し装置を提供することである。

(2)そして、同【0060】〜【0061】の記載(上記第4の3参照。)、及び同【0229】〜【0230】の記載(上記第4の4参照。)を参照すると、当該課題は、薬剤払出し装置として、薬剤容器内の薬剤を分配皿に投入する動作と薬剤を薬剤包装装置に投入する動作とを行い、その後に散薬投入ホッパー内の清掃を行うものにおいて、清掃剤投入装置として薬剤容器を活用し、薬剤容器に清掃剤を充填しておき、清掃作業を実施する際には、清掃剤が充填された薬剤容器を選定して容器載置装置に載置し、薬剤容器内の清掃剤を散薬投入ホッパーに投入することで解決されると理解できる。

(3)そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとはいえない。

(4)したがって、本件発明は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとすることはできない。

4 申立理由3−1について
(1)本件発明と甲1発明との対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
後者の「送出を待っている散薬を一時貯留しておく散薬収容器12」及びこれと「一体成形され」た「散薬送出部13」は、前者の「薬剤が収容された薬剤容器」に相当し、以下同様に、
「散薬フィーダ10」「の散薬収容器12」「から送出された散薬を溝に受ける」「環状テーブル44」は、「薬剤容器の薬剤が投入される分配皿」に、
「切り出し装置45」によって「環状テーブル44の溝から」「切り出された散薬を包装装置(41,42)へ導」く「共通ホッパー46」は、「分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパー」に、
「包装装置41、42」は、「薬剤包装装置」に、
「散薬供給装置を実装した散薬分包機40」は、「薬剤払出し装置」に、それぞれ相当する。
また、後者の「包装装置(41,42)は、共通ホッパー46を介して落下して来た散薬を服用単位・施用単位で分包する」ことは、前者の「薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能であ」ることに相当する。
そして、後者の「振動発生部材15」は、「散薬に振動を与えながら一定経路を流下させる」ために、その「上に」「散薬収容器12」及び「散薬送出部13」を「装着」するものであるから、前者の「容器載置装置」に相当する。

そうすると、両者は、
「薬剤が収容された薬剤容器と、薬剤容器の薬剤が投入される分配皿と、分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパーと、薬剤包装装置とを備えた薬剤払出し装置であって、
薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能である薬剤払出し装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本件発明は、「清掃作業が必要な薬剤が分包された場合、自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器が選定され、選定された薬剤容器が容器載置装置に載置され、容器載置装置に載置された薬剤容器から分配皿に清掃剤が投入され、清掃剤が投入された分配皿から清掃剤を排出して、散薬投入ホッパーに清掃剤が投入され、散薬投入ホッパーの清掃作業を実施する」のに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての検討
上記相違点1について検討する。
上記第5の5に記載したとおり、分包機の残留薬物を除去するために、清掃剤を、分包動作における薬剤が払い出される経路に流して清掃することは周知技術であるから、仮に、当該周知技術を甲1発明に適用して、甲1発明の散薬分包機40の分包動作における薬剤が払い出される経路のいずれかの箇所に清掃剤を流し、共通ホッパー46を清掃するよう構成することまでが、当業者が容易に想到し得たとしても、甲1発明の「散薬収容器12」は、「送出を待っている散薬を一時貯留しておく」ものであって、散薬を充填しておくのに用いられるものではない。そうすると、甲1発明に上記周知技術を適用しても、予め清掃剤を充填しておき、清掃作業を実施する際に、清掃剤が充填された薬剤容器が選定されるものとはならず、本件発明のように、薬剤容器を「清掃剤が充填され」、かつ「選定され」るものとすることまでを、甲1発明及び上記周知技術から当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)よって、本件発明は、甲1発明及び甲2〜甲3に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。

5 申立理由3−2について
(1)本件発明と甲4発明との対比
本件発明と甲4発明とを対比する。
後者の「散薬を収容したカセット21」は、前者の「薬剤が収容された薬剤容器」に相当し、以下同様に、
「散薬フィーダ50を作動させ、そのカセット21から散薬を排出させ」て、「散薬フィーダ50」を「構成」する「計量装置61」に「設けられ」た「振動フィーダ63のトラフ64内にある散薬」が、その「凹溝6の全周にわたって実質的に均等に配分」される「環状の凹溝6を具えた回転体」は、「薬剤容器の薬剤が投入される分配皿」に、
「切出装置8」の「切出板が散薬を切り出して、凹溝6から」散薬を「導入する」包装装置5の「ホッパ4」は、「分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパー」に、
「包装装置5」は、「薬剤包装装置」に、
「分割包装機2と、散薬収納庫20とから構成される散薬分包機1」は、「薬剤払出し装置」に、それぞれ相当する。
また、後者の「溝6内の散薬を1包相当分ずつ切り出して、包装装置5のホッパ4に順次導入し、包装装置5はこれを受けて、その散薬を1包分ずつ分包する」ことは、前者の「薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能であ」ることに相当する。

そうすると、両者は、
「薬剤が収容された薬剤容器と、薬剤容器の薬剤が投入される分配皿と、分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパーと、薬剤包装装置とを備えた薬剤払出し装置であって、
薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能である薬剤払出し装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点2]
本件発明は、「清掃作業が必要な薬剤が分包された場合、自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器が選定され、選定された薬剤容器が容器載置装置に載置され、容器載置装置に載置された薬剤容器から分配皿に清掃剤が投入され、清掃剤が投入された分配皿から清掃剤を排出して、散薬投入ホッパーに清掃剤が投入され、散薬投入ホッパーの清掃作業を実施する」のに対し、甲4発明は、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての検討
上記相違点2について検討する。
上記第5の5に記載したとおり、分包機の残留薬物を除去するために、清掃剤を、分包動作における薬剤が払い出される経路に流して清掃することは周知技術であるから、仮に、当該周知技術を甲4発明に適用して、甲4発明の散薬分包機40の分包動作における薬剤が払い出される経路のいずれかの箇所に清掃剤を流して、共通ホッパー46を清掃するよう構成することが、当業者が容易になし得たとしても、分包動作における薬剤が払い出される経路のいずれかの箇所に流す清掃剤を、散薬を収容することに用いる「カセット21」に予め充填しておき、清掃作業を実施する際に、清掃剤が充填されたカセット21が選定されるよう構成することまでを当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲4発明において、上記第5の3の甲2技術1における、清掃材容器に収容した清掃材を投入ホッパーから包装ホッパーの出口までの一連の薬剤経路のいずれかに供給する清掃材供給装置を備え、清掃材を残薬とともに包装ホッパー18から流出させ、包装部17で少なくとも1つの包装袋113に包装して回収する点と、甲2技術2における、清掃材の投入を錠剤カセット139の一部を使用して行う点とを適用することを試み得たか否かを検討すると、甲2技術1と甲2技術2とでは、前者では粉体であるのに対して後者では粒子状の清掃材を用いるというように、用いる清掃材の性状が異なるうえに、前者では薬剤経路に供給された清掃材を包装装置で少なくとも1つの包装袋に包装して回収するのに対して、後者では掃除機による吸引動作において錠剤粉塵と清掃材とが分離され、清掃材が包装されるものでない、というように、清掃材の取り扱いについても異なっているから、薬剤(散薬)を扱う甲2技術1において、錠剤を扱う甲2技術2の、清掃材を錠剤カセットの一部を使用して投入する点を参酌し、これらを組み合わせたものをさらに甲4発明に適用するというような動機づけは生じ得ない。
よって、本件発明は、甲4発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、また、甲4発明及び甲2の記載事項に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)よって、本件発明は、甲4発明及び甲2〜甲3に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。
また、甲4発明及び甲2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。

6 申立理由3−3について
(1)本件発明と甲5発明との対比
本件発明と甲5発明とを対比する。
後者の「各々に任意の種類の散薬Aが収容された3つの散薬カセット2」は、前者の「薬剤が収容された薬剤容器」に相当し、以下同様に、
「散薬カセット2から排出された散薬Aを収容する計量皿37」は、「薬剤容器の薬剤が投入される分配皿」に、
「計量皿37で1包単位毎に計量して、排出する計量手段6」「によって排出された1包単位の散薬Aを1箇所に集合させる集合ホッパ7」は、「分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパー」に、
「包装手段8」は、「薬剤包装装置」に、
「散薬カセット2を設置する設置部3を備えた分包機本体1aと、分包機本体1aに組み込まれ、各々に任意の種類の散薬Aが収容された3つの散薬カセット2とを備えた分包機1」は、「薬剤払出し装置」に、それぞれ相当する。
また、後者の「包装手段8」が「集合ホッパ7で集合された1包単位の散薬Aを包装する」ことは、前者の「薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能であ」ることに相当する。

そうすると、両者は、
「薬剤が収容された薬剤容器と、薬剤容器の薬剤が投入される分配皿と、分配皿から薬剤が投入される散薬投入ホッパーと、薬剤包装装置とを備えた薬剤払出し装置であって、
薬剤包装装置は、散薬投入ホッパーから導入された薬剤を包装することが可能である薬剤払出し装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3]
本件発明は、「清掃作業が必要な薬剤が分包された場合、自動または手動によって清掃剤が充填された薬剤容器が選定され、選定された薬剤容器が容器載置装置に載置され、容器載置装置に載置された薬剤容器から分配皿に清掃剤が投入され、清掃剤が投入された分配皿から清掃剤を排出して、散薬投入ホッパーに清掃剤が投入され、散薬投入ホッパーの清掃作業を実施する」のに対し、甲5発明は、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての検討
上記相違点3について検討する。
上記第5の5に記載したとおり、分包機の残留薬物を除去するために、清掃剤を、分包動作における薬剤が払い出される経路に流して清掃することは周知技術であるから、仮に、当該周知技術を甲1発明に適用して、甲4発明の散薬分包機40の分包動作における薬剤が払い出される経路のいずれかの箇所に清掃剤を流して、共通ホッパー46を清掃するよう構成することが、当業者が容易になし得たとしても、分包動作における薬剤が払い出される経路のいずれかの箇所に流す清掃剤を、散薬を収容することに用いる「散薬カセット2」に予め充填しておき、清掃作業を実施する際に、清掃剤が充填された散薬カセット2が選定されるよう構成することまでを当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲5発明において、上記第5の3の甲2技術1における、清掃材容器に収容した清掃材を投入ホッパーから包装ホッパーの出口までの一連の薬剤経路のいずれかに供給する清掃材供給装置を備え、清掃材を残薬とともに包装ホッパー18から流出させ、包装部17で少なくとも1つの包装袋113に包装して回収する点と、甲2技術2における、清掃材の投入を錠剤カセット139の一部を使用して行う点とを適用することを試み得たか否かを検討すると、甲2技術1と甲2技術2とでは、前者では粉体であるのに対して後者では粒子状の清掃材を用いるというように、用いる清掃材の性状が異なるうえに、前者では薬剤経路に供給された清掃材を包装装置で少なくとも1つの包装袋に包装して回収するのに対して、後者では掃除機による吸引動作において錠剤粉塵と清掃材とは分離され、清掃材が包装されるものでない、というように、清掃材の取り扱いについても異なっているから、薬剤(散薬)を扱う甲2技術1において、錠剤を扱う甲2技術2の、清掃材を錠剤カセットの一部を使用して投入する点を参酌し、これらを組み合わせたものをさらに甲5発明に適用するというような動機づけは生じ得ない。
よって、本件発明は、甲5発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、また、甲5発明及び甲2の記載事項に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)よって、本件発明は、甲5発明及び甲2〜甲3に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。
また、甲5発明及び甲2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。


第7 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-03-16 
出願番号 P2021-093638
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A61J)
P 1 652・ 537- Y (A61J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 角田 貴章
栗山 卓也
登録日 2022-05-27 
登録番号 7080436
権利者 株式会社湯山製作所
発明の名称 薬剤払出し装置  
代理人 藤田 隆  

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