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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1396772
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-11 
確定日 2023-04-13 
事件の表示 特願2020− 77441「印刷装置、印刷装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月27日出願公開、特開2020−114033〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月21日(優先権主張 平成27年5月8日)に出願した特願2015−144395号の一部を令和2年4月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 5月22日 :手続補正書の提出
令和3年 4月13日 :手続補正書、上申書の提出
令和3年 7月 7日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年10月20日付け:拒絶査定
令和4年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 7月25日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和4年 9月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 9月30日付け:拒絶理由通知書(当審:最後の拒絶理由)
令和4年11月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 令和4年11月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年11月30日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。また、説明のために、各段落にA〜Jを付した。以下、「構成A」〜「構成J」という。)

A 複数枚の原稿を搬送する搬送手段と、
B 前記搬送手段によって搬送された前記複数枚の原稿を読み取る読み取り手段と、
C 画像データに基づいて印刷を実行する印刷手段と、
D 前記読み取り手段で前記複数枚の原稿が読み取られたことによって生成された画像データを記憶する第1の記憶手段と、
E 前記第1の記憶手段から読み出された画像データを記憶する第2の記憶手段と
J を有する印刷装置であって、
F 前記読み取り手段が前記複数枚の原稿を読み取って、当該読み取りによって生成された画像データに基づいて画像を用紙に印刷する一つのコピージョブを前記印刷装置が正常に実行している状態で、
G 印刷対象の画像データを印刷するための印刷処理を実行するタイミングで前記第1の記憶手段から当該画像データを読み出せる場合、前記第1の記憶手段から読み出された当該画像データに基づく画像を前記印刷手段が用紙に印刷し、
H 前記印刷対象の画像データを印刷するための前記印刷処理を実行するタイミングで前記第1の記憶手段から当該画像データを読み出せない場合、当該画像データが前記第2の記憶手段から前記第1の記憶手段に読み出された後に前記第1の記憶手段から読み出された当該画像データに基づく画像を前記印刷手段が用紙に印刷し、
I 前記第1の記憶手段は、前記複数枚の原稿が読み取られたことによって生成された前記画像データを圧縮せずに記憶し、前記第2の記憶手段は前記第1の記憶手段から読み出された前記画像データを圧縮することによって生成された画像データを記憶する
J ことを特徴とする印刷装置。

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年9月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

複数枚の原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記複数枚の原稿を読み取る読み取り手段と、
画像データに基づいて印刷を実行する印刷手段と、
前記読み取り手段で前記複数枚の原稿が読み取られたことによって生成された画像データを記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段から読み出された画像データを記憶する第2の記憶手段とを有する印刷装置であって、
前記読み取り手段が前記複数枚の原稿を読み取って、当該読み取りによって生成された画像データに基づいて画像を用紙に印刷する一つのコピージョブを前記印刷装置が正常に実行している状態で、
印刷対象の画像データを印刷するための印刷処理を実行するタイミングで前記第1の記憶手段から当該画像データを読み出せる場合、前記第1の記憶手段から読み出された当該画像データに基づく画像を前記印刷手段が用紙に印刷し、
前記印刷対象の画像データを印刷するための前記印刷処理を実行するタイミングで前記第1の記憶手段から当該画像データを読み出せない場合、当該画像データが前記第2の記憶手段から前記第1の記憶手段に読み出された後に前記第1の記憶手段から読み出された当該画像データに基づく画像を前記印刷手段が用紙に印刷することを特徴とする印刷装置。

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の記憶手段」及び「第2の記憶手段」について、上記構成Iのとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
令和4年9月30日付け拒絶理由通知で引用文献1として引用された特開2001−320561号公報には、以下の記載がある。
なお、下線は、当審で付したものである。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動作が高速な画像メモリ(RAM)と動作が遅いが大容量な画像メモリ(HD(ハードディスク))を持つ複合複写機に代表される画像処理装置に関する。

【0002】
【従来の技術】現在、複合複写機のような画像処理装置では、スキャナなどの高速に読み込まれる画像データを処理しなければならない。そこで、入力画像データを高速アクセス可能なRAMに格納することで、スキャナのスピードに合わせている。同様に出力側でもプリンタの印字速度に合わせるため、出力画像データをRAMに格納しここから画像データをプリンタに供給することが行われている。
【0003】またさらに、複数ページ原稿の複数部数コピーに対しては、大容量画像メモリとしてHD100005を使い、スキャナで読み取った画像データをRAMに格納し、これを一旦HDに移して、プリンタで必要な画像データをHD100005からRAMに移し、これをプリンタに出力することで、原稿を1回読むだけでコピーを必要なだけ作成する技術が提案されている。

【0008】請求項2の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記複数の画像入力手段の中には原稿を読み取って画像データを発生するスキャナを含むことを特徴とする。

【0018】以下の実施例では、画像入力部1(100001)が画像を読取り画像データを発生するスキャナである。画像入力部2がFAXデータから画像データを作成するFAX展開機能を有するFAXモデムである。画像入力部3がPDLデータから画像データを作成する手段である。
【0019】画像出力部1(100006)が記録用紙に画像データを印刷出力するプリンタである。画像出力部2(100007)がLAN等の通信ネットワークに接続し画像データを出力するネットワークI/F(インターフェース)である。画像出力部3は画像データからFAXデータを生成し出力する手段である。これらの画像入力手段と画像出力手段は選択的に使用される。一例として第1のジョブとして、画像入力部1(100001)で読み取った画像を、画像出力部2(100007)を通して外部に送るSEND(センド)ジョブが実行され、同時に第2のジョブとして画像入力部2(100020)が受信した画像を、画像出力部1(100006)で出力するFAX受信ジョブが実行されているものとする。

【0033】メッセージEstimatedImageを受けた画像出力部1(100006)は、画像サイズから給紙段を決定し給紙を開始する。プリンタのビデオ入力準備が完了した時点で画像出力部1(100006)は、メッセージImageReadReqを画像データコントローラ100002に要求する。画像データコントローラ100002はメッセージImageReadReqを受け取ると、その画像がRAM100003またはRAM100004に格納されているかをチェックし、格納されていなければHD100005から読み出す準備をする。
【0034】まず、RAM100003またはRAM100004に指定された画像を格納するだけの連続した領域をサーチする。いま仮にRAM100004に領域を発見したとする。次に画像データコントローラ100002は、図示しないDMAコントローラと図示しないPCIコントローラに、ソースとしてHD100005に格納されている画像データの先頭アドレスを、ディスティネーションとしてRAM100004内に見つけた領域の先頭アドレスを、転送バイト数として要求されている画像データのサイズを設定し、転送を開始する。
【0035】転送が完了し、DMAコントローラからのデータ転送完了割り込みを受けると画像データコントローラ100002は、RAM100004から画像出力部1(100006)までのDMA設定を行う。DMAコントローラへの設定が完了した時点で、画像データコントローラ100002はメッセージImageReadReadyを画像出力部1(100006)に通知する。
【0036】画像出力部1(100006)はメッセージImageReadReadyを受けると、プリンタに画像データ転送開始を通知する。転送完了しDMAからの転送割り込みを受けた画像出力部1(100006)は、画像データコントローラ100002にメッセージImageReadCompletedを送る。画像データコントローラ100002はメッセージImageReadCompletedを受け取ると、その画像の係数セマフォDirectReadingを1つ開放する(持っていない場合には開放しない)。
【0037】画像出力部1(100006)は所定の画像出力を完了し、必要のなくなった画像データに関して画像データコントローラ100002にメッセージImageDeleteReqを送る。画像データコントローラ100002はメッセージImageDeleteReqを受けると、指示のあったHD100005内の画像を破棄する。

【0044】画像データコントローラ100002はメッセージImageReadReqを受け取ると、その画像がRAM100003またはRAM100004に格納されているかをチェックし、RAMにそのデータが格納中または格納されていると判断した場合には、出力系とのRAMの共有を行う。

【0049】以上の説明から明らかなように本実施形態では、画像データを格納するRAMと、画像データを格納するHD100005と、画像データを作成し、RAMに格納する複数の画像入力部と、RAMから画像データを読み出し、出力用紙に印字する複数の画像出力部と、画像入力部の格納指示に従いRAMに格納されている画像データをHD100005に格納し、画像出力部の出力指示に従いHD100005に格納されている画像データをRAMに格納する画像データコントローラを有し、上記複数の入出力部を組み合わせたジョブを複数同時に実行可能である画像処理装置において、画像入力部が格納している画像データに対する、画像出力部の出力指示が、ある条件のタイミングで与えられた場合には、画像入力部のRAMから画像出力部へ画像を出力するRAM折り返し動作が選択可能であり、このRAM折り返しの条件判断を、ジョブが独立に判断することで、課題であった複合機で同時に実行されている複数のジョブのFCOTの高速化を、高価なRAMやHD100005なしに可能とする。

イ 引用発明
(ア)上記アの【0034】の「画像データコントローラ100002は、」「ソースとしてHD100005に格納されている画像データの先頭アドレスを、ディスティネーションとしてRAM100004内に見つけた領域の先頭アドレスを、」「設定し、転送を開始する。」との記載より、引用文献1の画像データコントローラは、ソースとしてHD100005に格納されている画像データの先頭アドレスを設定し、ディスティネーションとしてRAM100004内に見つけた領域の先頭アドレスを設定するものである。
すなわち、ソース及びディスティネーションとして設定されるアドレスが、それぞれ、HD100005及びRAM100004のアドレスであるから、【0034】の「転送を開始する。」とは、HD100005からRAM100004への画像データの転送を開始することである。

(イ)上記アの【0035】〜【0037】には、「転送が完了し、」「RAM100004から画像出力部1(100006)までのDMA設定を行う。」「転送完了し」「画像出力部1(100006)は所定の画像出力を完了し、」と記載されている。
ここで、「転送が完了し、」とは、上記(ア)より、HD100005からRAM100004への画像データの転送が完了することである。
また、「RAM100004から画像出力部1(100006)までのDMA設定を行う。」とは、RAM100004から画像出力部1へのデータ転送を行うための設定を行うことであり、その後の「転送完了」とは、RAM100004から画像出力部1への画像データの転送が完了することである。

そうすると、【0035】〜【0037】の「転送が完了し、」「RAM100004から画像出力部1(100006)までのDMA設定を行う。」「転送完了し」「画像出力部1(100006)は所定の画像出力を完了し、」とは、HD100005からRAM100004への画像データの転送が完了すると、RAM100004から画像出力部1へ画像データの転送を行い、画像出力部1は所定の画像出力を完了することである。

上記アの記載及び上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
なお、括弧内は、関連する段落番号等である。

(引用発明)
a 原稿を読み取って画像データを発生するスキャナ(画像入力部)と、(【0008】、【0018】)
b 記録用紙に画像データを印刷出力するプリンタ(画像出力部)と、(【0019】)
c 画像入力部からの画像データを格納するRAMと、(【0049】)
d RAMに格納されている画像データを格納するHDとを有する複合複写機であって、(【0049】、【0001】)
e プリンタのビデオ入力準備が完了した時点で画像出力部より要求されるメッセージImageReadReqを画像データコントローラが受け取ると、画像がRAM100003またはRAM100004に格納されているかをチェックし、(【0033】、【0044】)
f RAMに格納されていなければHDから読み出す準備をし、HD100005からRAM100004への画像データの転送を開始し、HD100005からRAM100004への画像データの転送が完了すると、RAM100004から画像出力部1へ画像データの転送を行い、画像出力部1は所定の画像出力を完了し、(【0033】〜【0037】(上記(ア)、(イ)も併せて参照))
g RAMにそのデータが格納中または格納されていると判断した場合には、出力系とのRAMの共有を行い、画像入力部のRAMから画像出力部へ画像を出力するRAM折り返し動作が選択可能である(【0044】、【0049】)
複合複写機。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比、一致点及び相違点
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)構成Aについて
引用発明は、構成Aを有する構成に特定されているものではない。

(イ)構成Bについて
構成aの「原稿を読み取って画像データを発生するスキャナ(画像入力部)」は、原稿を読み取る読み取り手段である点で、構成Bと共通する。
しかし、上記(ア)で検討したように、引用発明は、構成Aすなわち「複数枚の原稿を搬送する搬送手段」を有する構成に特定されているものではないので、原稿が、「前記搬送手段によって搬送された前記複数枚の原稿」であることに特定されているものではない点で、本件補正発明と相違する。

(ウ)構成Cについて
構成bの「記録用紙に画像データを印刷出力するプリンタ(画像出力部)」は、画像データに基づいて印刷を実行する印刷手段であるから、引用発明は、構成Cに相当する構成を有するものである。

(エ)構成Dについて
構成cの「画像入力部からの画像データを格納するRAM」は、前記読み取り手段で前記原稿が読み取られたことによって生成された画像データを記憶する第1の記憶手段である点で、構成Dと共通する。
しかし、上記(ア)で検討したように、引用発明は、構成Aすなわち「複数枚の原稿を搬送する搬送手段」を有する構成に特定されているものではないので、原稿が、「前記複数枚の原稿」であることに特定されているものではない点で、本件補正発明と相違する。

(オ)構成Eについて
構成dの「RAMに格納されている画像データを格納するHD」は、RAMから読み出された画像データを記憶するHDであるから、引用発明のHDは、構成Eの「第2の記憶手段」に相当する。
すなわち、引用発明は、構成Eに相当する構成を有するものである。

(カ)構成Fについて
引用発明は、構成Fに相当する構成に特定されているものではない。

(キ)構成Gについて
構成e及び構成gより、引用発明は、「プリンタのビデオ入力準備が完了した時点で」「RAMにそのデータが格納中または格納されていると判断した場合には、」「画像入力部のRAMから画像出力部へ画像を出力する」ものである。
すなわち、引用発明は、印刷処理を実行するタイミングでRAMから画像データを読み出せる場合、RAMから読み出された画像を印刷するものであるから、構成Gに相当する構成を有するものである。

(ク)構成Hについて
構成e及び構成fより、引用発明は、「プリンタのビデオ入力準備が完了した時点で」「画像が」「RAMに格納されていなければHDから読み出す準備をし、HD100005からRAM100004への画像データの転送を開始し、HD100005からRAM100004への画像データの転送が完了すると、RAM100004から画像出力部1へ画像データの転送を行い、画像出力部1は所定の画像出力を完了」するものである。

そうすると、引用発明は、印刷処理を実行するタイミングでRAMから画像データを読み出せない場合、HDからRAMに読み出された後にRAMから読み出された画像を印刷するものであるから、構成Hに相当する構成を有するものである。

(ケ)構成Iについて
引用発明は、構成Iに相当する構成に特定されているものではない。

(コ)構成Jについて
引用発明の「複合複写機」は、構成bより、印刷出力するプリンタ(画像出力部)を有するものであり、印刷装置であるといえるので、構成Jに相当する。

イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
B’原稿を読み取る読み取り手段と、
C 画像データに基づいて印刷を実行する印刷手段と、
D’前記読み取り手段で前記原稿が読み取られたことによって生成された画像データを記憶する第1の記憶手段と、
E 前記第1の記憶手段から読み出された画像データを記憶する第2の記憶手段と
J を有する印刷装置であって、
G 印刷対象の画像データを印刷するための印刷処理を実行するタイミングで前記第1の記憶手段から当該画像データを読み出せる場合、前記第1の記憶手段から読み出された当該画像データに基づく画像を前記印刷手段が用紙に印刷し、
H 前記印刷対象の画像データを印刷するための前記印刷処理を実行するタイミングで前記第1の記憶手段から当該画像データを読み出せない場合、当該画像データが前記第2の記憶手段から前記第1の記憶手段に読み出された後に前記第1の記憶手段から読み出された当該画像データに基づく画像を前記印刷手段が用紙に印刷する
J ことを特徴とする印刷装置。

<相違点>
(相違点1)
本件補正発明は、「複数枚の原稿を搬送する搬送手段」を有し、読み取り手段で読み取られる原稿は、「前記搬送手段によって搬送された前記複数枚の原稿」であり、第1の記憶手段が記憶する画像データは、「前記読み取り手段で前記複数枚の原稿が読み取られたことによって生成された画像データ」であるのに対し、
引用発明は、「複数枚の原稿を搬送する搬送手段」を有することに特定されておらず、そのことに起因して、スキャナで読み取られる原稿は、搬送手段によって搬送された複数枚の原稿でなく、また、RAMが格納する画像データは、スキャナで原稿が読み取られたことによって発生する画像データであるものの、当該原稿が複数枚であることに特定されているものではない点。
(相違点2)
本件補正発明は、「前記読み取り手段が前記複数枚の原稿を読み取って、当該読み取りによって生成された画像データに基づいて画像を用紙に印刷する一つのコピージョブを前記印刷装置が正常に実行している状態」で印刷するのに対し、
引用発明は、そのような構成に特定されているものではない点。

(相違点3)
本件補正発明は、「前記第1の記憶手段は、前記複数枚の原稿が読み取られたことによって生成された前記画像データを圧縮せずに記憶し、前記第2の記憶手段は前記第1の記憶手段から読み出された前記画像データを圧縮することによって生成された画像データを記憶する」のに対し、
引用発明のRAM及びHDは、そのような構成に特定されているものではない点。

(4)判断
以下、各相違点について検討する。

ア 相違点1について
上記(2)アで摘記したように、引用文献1の【0002】、【0003】には、従来の技術として、複数ページ原稿のコピーについての説明がされていること、また、令和4年9月30日付け拒絶理由通知で引用文献2として引用された特開2015−5950号公報(特に【0014】)のドキュメントフィーダや、引用文献3として引用された特開2003−152918号公報(特に【0010】)の自動原稿送り装置のように、複数枚の原稿を搬送する搬送手段を有する構成は、そもそも周知の構成(以下、「周知技術1」という。)であることを考慮すると、引用発明において、複数枚の原稿を搬送する搬送手段を有する構成とすることに格別の困難性はない。

そして、複数枚の原稿を搬送する搬送手段を有する構成にした場合に、スキャナで読み取られる原稿は、搬送手段によって搬送された複数枚の原稿となり、また、RAMが格納する画像データは、スキャナで複数枚の原稿が読み取られたことによって発生する画像データとなる。

イ 相違点2について
コピージョブが正常に実行している状態で印刷することは、複合複写機として当然の構成にすぎない。

ウ 相違点3について
第1の記憶手段はスキャンした画像を圧縮せずに記憶し、第2の記憶手段は第1の記憶手段からの画像を圧縮して記憶する構成は、周知技術(以下、「周知技術2」という。)(必要であれば、以下の周知文献A〜Cを参照のこと。)に過ぎず、また、複合複写機の記憶装置(RAM及びHD)において、格納の前に圧縮するか否かは、記憶装置の容量や圧縮伸張に要する時間等を総合的に判断して適宜設計するものであることを考慮すると、引用発明において、RAMは複数枚の原稿が読み取られたことによって生成された画像データを圧縮せずに記憶し、HDはRAMから読み出された画像データを圧縮することによって生成された画像データを記憶するように構成することに格別の困難性はない。

(周知文献A)
特開平4−261265号公報(【0001】、【0012】、【0023】、【0024】より、複合機の画像処理装置において、ディスクへの書き込みデータを一時的に格納するページバッファは、入力画像データを圧縮することなく格納し、ディスクは、圧縮処理された画像データを蓄積する構成が記載されている。)

(周知文献B)
特開2005−73083号公報(【0001】、【0019】、【0045】、【0075】〜【0087】、【図1】、【図4】より、画像形成装置において、1次記憶装置であるメモリと2次記憶装置であるHDDとの間でデータ転送する際には、圧縮伸長器を通し、スキャナ等から1次記憶装置に記憶する際には、圧縮伸長器を通さない構成が記載されている。)

(周知文献C)
特開2011−239308号公報(【0001】、【0026】より、画像形成装置において、スキャンされた画像データをRAMに格納し、圧縮伸張部により圧縮し、圧縮したデータを不揮発記憶装置に格納する構成が記載されている。)

エ まとめ
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1(引用文献2、3を参照)、周知技術2(周知文献A〜Cを参照)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年11月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年9月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 令和4年9月30日付け拒絶理由通知について
当審が最後の拒絶理由として通知した令和4年9月30日付け拒絶理由通知の拒絶の理由のうち理由1は以下のとおりである。

この出願の請求項1〜9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2001−320561号公報
引用文献2:特開2015−5950号公報
引用文献3:特開2003−152918号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、構成Iに係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点は、前記第2の[理由]2(3)イに示した一致点と同じである。
また、相違点3は構成Iに関するものであることから、本願発明と引用発明との相違点は、前記第2の[理由]2(3)イに示した相違点1及び2である。
そして、相違点1及び2に関する検討は、前記第2の[理由]2(4)ア及びイで検討したとおりのものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-02-07 
結審通知日 2023-02-14 
審決日 2023-02-27 
出願番号 P2020-077441
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (H04N)
P 1 8・ 121- WZ (H04N)
P 1 8・ 575- WZ (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 畑中 高行
特許庁審判官 渡辺 努
木方 庸輔
発明の名称 印刷装置、印刷装置の制御方法  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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