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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) C23C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録(定型) C23C
管理番号 1397017
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-05 
確定日 2023-05-16 
事件の表示 特願2018− 54367「塗装めっき鋼板、その製造方法及び建材」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月 3日出願公開、特開2019−167563、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月22日の出願であって、令和3年10月4日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月13日付けで手続補正がされ、令和3年12月27日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年3月7日付けで手続補正がされ、同年3月31日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
令和4年7月5日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2 補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、請求項1、9に「前記下塗塗料に含有される前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールであり」との記載、及び、「前記上塗塗料に含有される前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールである」との記載を追加する補正事項を含むものである。

(2)本件補正の適否についての当審の判断
ア 本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「当初明細書」という。)には、以下の記載がある。
「【0032】
下塗塗料は第一軟質樹脂を含む。すなわち下塗層4は第一軟質樹脂を含む。この第一軟質樹脂は、ポリエステルポリオールである。第一軟質樹脂は、下塗層4に柔軟性を付与することができ、塗装めっき鋼板1の加工性を向上させられる。また下塗層4の耐傷付性も向上させられる。その理由として、架橋剤(B)がブロックイソシアネートを含有する場合には、ポリエステルポリオール由来の水酸基と、上述のブロックシアネートのイソシアネート基とが反応することが考えられる。
【0033】
ポリエステルポリオールは、例えば、低分子量のポリオールと、多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られる。ポリエステルポリオールは、例えば、ラクトン類またはヒドロキシカルボン酸化合物の縮重合によって製造され得る。
【0034】
低分子量のポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びテトラメチロールプロパンなどの3価以上の脂肪族又は脂環式アルコールからなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。
【0035】
多価カルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の3量体などのトリカルボン酸類;及びピロメリット酸などのテトラカルボン酸以上のポリカルボン酸からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。
【0036】
ラクトン類は、例えば、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、及びδ−バレロラクトンからなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。」

「【0053】
上塗塗料は、第二軟質樹脂を含む。すなわち上塗層5は第二軟質樹脂を含む。この第二軟質樹脂は、ポリエステルポリオールである。第二軟質樹脂は、上塗層5に柔軟性を付与することができ、塗装めっき鋼板1の加工性を向上させられる。また上塗層5の耐傷付性も向上させられる。その理由としては、ポリエステルポリオール由来の水酸基と、上述のブロックシアネートのイソシアネート基とが反応することが考えられる。第二軟質樹脂は、下塗塗料に含まれる第一軟質樹脂であるポリエステルポリオールと同様の材料を用いることができる。」

「【0084】
なお、表1に記載されている下塗塗料及び上塗塗料に含まれる各成分の詳細は、以下の通りである。
・ポリエステル樹脂1:LH822−01(商品名、エボニック社製)(ガラス転移温度:17℃、水酸基価:50mgKOH/g、数平均分子量:5,000)。
・ポリエステル樹脂2:VYLON29XS(商品名、東洋紡社製)(ガラス転移温度:72℃、水酸基価:7mgKOH/g、数平均分子量:22,000)。
・ポリエステル樹脂3:LH820−16(商品名、エボニック社製)(ガラス転移温度:55℃、水酸基価:20mgKOH/g、数平均分子量:5,000)。
・ポリエステル樹脂4:ALKYNOL TPLS2013(水酸基価:94mgKOH/g、数平均分子量:2,350)。
・エポキシ樹脂:jER1004(商品名、三菱ケミカル社製)エポキシ当量:925、数平均分子量:1,650)。
・架橋剤:ブロックイソシアネート。
・軟質樹脂1:DESMOPHEN C1200(商品名、コベストロ社製)(水酸基価:56.1mgKOH/g)。
・軟質樹脂2:DESMOPHEN C1100(商品名、コベストロ社製)(水酸基価:109mgKOH/g)。
・ワックス1:KTL−1N(商品名、喜多村社製)(90%径(D90):3.3μm)。」

イ また、令和4年7月5日提出の審判請求書には以下の記載がある。
「(2)補正の根拠の明示
本審判請求書と同日付けの手続補正書により、本願特許請求の範囲を補正している。
補正後の請求項1及び9は、補正前の請求項1及び9のそれぞれに、「前記下塗塗料に含有される前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールであり、」との文言、及び「前記上塗塗料に含有される前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールである、」との文言を加えたものである。「前記下塗塗料に含有される前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールであり、」との文言、及び「前記上塗塗料に含有される前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールである、」との文言の追加は、本願の当初明細書の段落[0084]の記載に基づくものである。
上記の補正は、本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものである。」

ウ 上記アの記載によれば、当初明細書には、下塗塗料及び上塗塗料に含有されるポリエステルポリオールとしてポリカーボネートポリエステルポリオールを用いることは、明示的に記載されておらず、また、そのようなことが当初明細書の記載から自明な事項とも認められない。
さらに、当初明細書【0084】に記載されている、DESMOPHEN C1200及びDESMOPHEN C1100が、それぞれポリカーボネートポリエステルポリオールだったとしても、当初明細書に記載された事項から把握されるのは、DESMOPHEN C1200及びDESMOPHEN C1100を、ポリエステルポリオールとして用いることであり、当初明細書【0084】の記載を根拠として、ポリエステルポリオールとして、ポリカーボネートポリエステルポリオールを用いることが記載されているとは認められない。
以上によれば、上記補正事項を含む本件補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明と本願についての当審の判断
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜9に係る発明は、令和4年3月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-04-21 
出願番号 P2018-054367
審決分類 P 1 8・ 121- WYF (C23C)
P 1 8・ 561- WYF (C23C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 井上 猛
特許庁審判官 羽鳥 友哉
佐藤 陽一
発明の名称 塗装めっき鋼板、その製造方法及び建材  
代理人 弁理士法人北斗特許事務所  

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