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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 E04B 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E04B |
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管理番号 | 1397135 |
総通号数 | 17 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-05-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2022-04-08 |
確定日 | 2023-04-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5445808号発明「凹凸素材の遮熱構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 次を結論とする審決を求める。 (1) 特許第5445808号の請求項1及び5に係る発明についての特許を無効とする。 (2) 審判費用は被請求人の負担とする。 2 答弁の趣旨 次を結論とする審決を求める。 (1) 本件審判請求は成り立たない。 (2) 審判費用は請求人の負担とする。 第2 手続の経緯 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第5445808号(以下、「本件特許」という。平成25年6月10日出願(優先権主張:平成25年1月10日)、平成26年1月10日設定登録、請求項数は6。)の、請求項1及び5に係る発明の特許を無効とすることを求める事案であって、本件無効審判における手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年 4月 8日 :審判請求書の提出 令和 4年 7月19日 :審判事件答弁書の提出 令和 4年 9月29日付け:審理事項通知 令和 4年10月24日 :請求人による口頭審理陳述要領書(以下「請求人口頭審理陳述要領書」という。)の提出 令和 4年11月18日 :請求人による上申書の提出 令和 4年11月21日 :被請求人による口頭審理陳述要領書(以下「被請求人口頭審理陳述要領書」という。)の提出 令和 4年12月 5日 :口頭審理 第3 本件発明 本件特許の請求項1及び5に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」、「本件発明2」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び5の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と、該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とからなり、前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造であって、 前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させていることを特徴とする凹凸素材の遮熱構造。」 「【請求項5】 前記凹凸のある素材には、金属、コンクリート、レンガ、プラスチック、木、折板屋根材、スレート屋根材を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の凹凸素材の遮熱構造。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 (1) 無効理由1(明確性要件違反) 本件特許の請求項1及び5に係る発明は、不明確であり、特許法36条6項2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。 具体的な主張は次のとおりである。 ア 「本件特許請求の範囲の「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造」に係る発明特定事項は、本件明細書において本件発明の作用効果、特に本件発明の遮熱効果が不明確である。したがって、 ○1(当審注:数字を○で囲む文字を表す。以下同様。) 従来技術に記載された従来の遮熱構造との違いが不明確であり、 ○2 凸部の裏面への前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の接着の程度(一時的に接着した物も該当するか)を当業者が理解できるよう記載されていないとともに、 ○3 広い面積に亘って凹凸が多数存在する凹凸のある素材への前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の接着の範囲(多数存在する凸部の裏面の一部にのみ接着した物も該当するか)を当業者が理解できるよう記載されておらず、不明確である。」(審判請求書14頁25〜36行) イ 「被請求人は、本件特許の成立過程で提出した意見書(甲11)では従来技術との遮熱効果の違いを縷々主張し、また本件特許の特許権侵害訴訟において主張している「本件特許の技術的意義」では本件発明の特徴、従来技術との技術的違いは「遮熱効果の向上」にあることを主張し、その上で、したがって、凸部への接着のみで遮熱材が落下しないように維持できるか否かはとは無関係に、広い面積においてたとえ一部でも「凹凸部材の凸部のみに接着」した構造は、本件特許発明の構成要件を充足するものであると主張している。 しかしながら、このような遮熱効果の主張は、伝熱工学の理論に反し、また実施例で裏付けられたものではなく、技術的に何ら根拠がない虚偽の主張である。 したがって、このような遮熱効果の主張は、請求項の文言解釈や無効論における進歩性判断において考慮されるべきではなく、結局のところ、本件特許発明の技術的特徴は、本件明細書の記載からして、「軽天材などの費用を削減し、かつ、遮熱材の使用量を減らす」(【0007】【0008】)ことにあるものと認められる。」(請求人口頭審理陳述要領書3頁26行〜4頁4行) ウ 「本件発明の遮熱効果が不明確であることについては、無効審判請求書第15頁第1行〜第25行に記載したとおり、本件明細書の各記載及び意見書(甲11)における被請求人の主張から判断すると、本件発明における遮熱効果とは、「屋根材の凹部における空間形成による高反射の性能と、凸部における密着による低放射の性能の両方の遮熱に関する効果によって、従来技術にはない遮熱効果を奏することができる」ということであると推察される。 しかしながら、屋根材の凹部と凸部それぞれにおける遮熱シートによる高反射と低放射の作用は、単に、従来から知られているところの、屋根材と遮熱シートの間に空間を設けた場合(例えば甲2、甲3、甲8、甲9参照)の遮熱効果と、遮熱シートを直接屋根材凸部に接着した場合(例えば甲2、甲3、甲4参照)の遮熱効果が、屋根材の凹部と凸部にそれぞれ存すると述べているに過ぎず、その凹部と凸部の個々の遮熱効果を組み合わせることで全体として従来技術に無いどのような相乗的な遮熱効果を奏するか、すなわち本件発明特有の遮熱効果が如何なるものか不明である。 その結果、○1従来技術に記載された従来の遮熱構造との違いが不明確である。」(請求人口頭審理陳述要領書4頁26行〜5頁4行) エ 「無効審判請求書第15頁第36行〜第16頁第19行に記載したとおり、実施例には、接着方法を変えた複数の記載があり、それぞれについて、遮熱効果(温度の変化)についての主張がなされており、本件特許発明は遮熱効果との関係があるとも考えられるところ、関係があるとしても、構成要件との関連で、どのような関係があるのかについて、特許請求の範囲の記載からは不明確である。 本件明細書における実施例(実施例1〜10)は、基材(実施例1〜9は鉄板、実施例10のみALC)とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(遮熱シート)との接着方法、空気層の有無及び配置をそれぞれ異ならせたものである。 しかし、いずれの実施例も、基材(鉄板又はALC)とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(遮熱シート)とが接着された場合の記載であって、接着されていない場合の遮熱効果に関する記載は存在しない。また、基材と遮熱シートとの間に所定の空間を設けた場合について、明細書には高々1mm程度の空間における実施例が記載されているに過ぎず、それを実際の屋根材で形成される高さ少なくとも十数cmの空間での実施例に拡大解釈することはできない。 したがって、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造」の発明特定事項は、○2凸部の裏面への前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の接着の程度(一時的に接着した物も該当するか)を当業者が理解できるよう記載されておらず不明確である。」(請求人口頭審理陳述要領書5頁9〜30行) オ 「無効審判請求書第16頁第21行〜第17頁第11行に記載したとおり、本件発明の遮熱効果が不明であるから、本件発明の遮熱効果を奏するためには、本件発明は、全ての凸部の裏側においてアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材が貼り付けられる必要があるのか、あるいは、その凸部の裏側のーか所でもアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材が貼り付けられていれば該当するのか(さらには、例えば90%以上は凸部の裏面と遮熱シートとを接着させる必要があるのか、それとも10%程度の凸部の裏面と遮熱シートとを接着させれば足りるのか)、その境界が全く明らかではない。 この点、例えば広い面積の屋根において、その殆どの凸部の裏面にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着することが無い場合も、本件特許範囲の権利に含むと解釈することは到底できないというべきである。 また、本件明細書には、図1に示すとおり、凸部が2か所形成された素材の実施例が記載されているのみであり、本件発明を広い面積の屋根材に適用する場合についての言及はない。 したがって、○3広い面積に亘って凹凸が多数存在する凹凸のある素材への前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の接着の範囲(多数存在する凸部の裏面の一部にのみ接着した物も該当するか)を当業者が理解できるよう記載されておらず、不明確である。」(請求人口頭審理陳述要領書5頁32行〜6頁13行) (2) 無効理由2(甲第1号証に記載された発明を主引用例とした進歩性の欠如) 本件特許の請求項1及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第2〜7号証)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである(審判請求書17頁19行〜28頁下から5行)。 (3) 無効理由3(甲第8号証に記載された発明を主引用例とした進歩性の欠如) 本件特許の請求項1及び5に係る発明は、甲第8号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第1〜7、9及び10号証)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである(審判請求書28頁下から3行〜43頁3行)。 2 証拠方法 甲第1号証:特開2008−127871号公報 甲第2号証:特開平5−1448号公報 甲第3号証:特開2012−92578号公報 甲第4号証:登録実用新案第3129145号公報 甲第5号証:特開2006−112230号公報 甲第6号証:特開2000−220255号公報 甲第7号証:特開2012−229544号公報 甲第8−1号証:Melody, Ingrid, "Radiant Barriers: A Question and Answer Primer", インターネットのURL 甲第8−2号証:インターネット 甲第9号証:特開2012−112180号公報 甲第10号証:特開2000−160772号公報 甲第11号証:本件特許に係る出願(特願2013−121593号)の審査過程において被請求人が提出した平成25年10月4日付け意見書 以下、甲第1号証等を、「甲1」等と略記する。 なお、令和4年12月5日に行った口頭審理において被請求人は、甲1〜11(枝番を含む)の成立を認めた。 また、請求人は、上申書とともに甲第12〜21号証を提出したが、いずれも、本件発明に係る侵害訴訟の進捗状況の説明のための資料であるから、口頭審理において、当事者が合意したように、参考資料1〜10として扱うこととした。 第5 被請求人の主張 1 被請求人の主張の概要 (1) 無効理由1について 「(ア)主張○1について 本件発明の凹凸素材の遮熱構造は、少なくとも「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付け」られている点で、その範囲は明確である。 (イ)主張○2について 本件発明は、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着により取り付けた遮熱構造」を規定しており、その範囲は明確である。 (ウ)主張○3について 本件発明は、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着により取り付けた遮熱構造」を規定しており、その範囲は明確である。」(審判事件答弁書4頁2〜15行) (2) 無効理由2について 「(イ)本件特許発明1と主引用発明1(甲1発明)との対比 上述したとおり、主引用例1には、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造」であることは記載されていない。そのため、少なくともこの点が本件特許発明1と相違する(相違点1)。 (ウ)相違点の検討 主引用発明1は、折板製の屋根材に取付部を設けることにより、屋根材を取り付ける際の工程数を減少させ、屋根を形成するコストを低減させることを目的とする発明である。熱反射シートについては、折板製の屋根材18の支持梁10ヘの取付け(=屋根材18と支持梁10をビス34で固定する)にあたり、熱反射シート12を両者の間に挟んで固定してもよいことが記載されている。しかし、これは、熱反射シート12を挟んで固定することにより、熱反射シート12の取付けに伴う工程数の増加を最低限のものに抑えることができ、屋根を形成するコストを低減させるという目的に適うからである。 しかるところ、主引用発明1は、折板製の屋根材18の支持梁10への取付けを容易にする発明であるから、ビス留めをやめて、接着手段をその他の方法に代える動機づけは存在しない。 この点、主引用例1には、【0023】「本発明は新設の屋根を形成する場合に適用されるが、既設の屋根を補修又は補強する目的で、既設の屋根の上にもう一層屋根を形成する場合にも適用可能である。」との記載があり、この記載からしても、主引用例1において熱反射シートを挟んで固定することが、主引用発明1の技術的思想の本質であることを示している。 また、主引用発明1においては、熱反射シート12は屋根材18と支持梁10で挟んで固定されており、熱反射シート12の固定性に何ら問題はないから、熱反射シート12を固定するために、あえて接着手段を付加する動機づけも存在しない。 加えて、主引用発明1は、折板製の屋根材18を取付部を設けることにより、屋根材18を敗り付ける際の工程数を減少させ、屋根を形成するコストを減少させることを目的とする発明であるところ、熱反射シート12に対して、接着手段での接着を施す工程を付加することは、余計な工程数を発生させてしまい、屋根を形成するコストを増加させることは必至であるから、主引用発明1の目的に反することとなる(動機付けの欠如、及び阻害事由)。 ・・・(中略)・・・ 以上より、本件特許発明1は、主引用発明1(甲1発明)及び副引用発明1〜3(甲2乃至4発明)に記載の事項に基づいて、いわゆる当業者が容易に発明することができたものではないため、特許法第29条第2項の要件を満たす。」(審判事件答弁書10頁下から5行〜14行26行) (3) 無効理由3について 「主引用例2(甲8)には、少なくとも、「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と」の記載はないし、主引用発明と副引用発明を組み合わせることはできないし、仮に組み合わせたとしても、本件発明の構成には至らないから、請求人の主張には理由がない。」(審判事件答弁書16頁10〜14行) 第6 当審の判断 1 甲号証の記載 (1) 甲1に記載された事項及び甲1発明 ア 甲1に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様である。)。 (ア) 【特許請求の範囲】 「【請求項1】 突条と凹溝を交互に略平行に有する折板からなり、該折板の一方の端縁側は該突条の一つからなり、該折板の他方の端縁側には、該凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部が形成され、該取付部は、該傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、該上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、該直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなることを特徴とする屋根材。 【請求項2】 前記突条が断面略台形をしており、前記凹溝が断面略逆台形をしていることを特徴とする請求項1に記載の屋根材。 ・・・(中略)・・・ 【請求項7】 前記屋根材の下に静止空気層を介して熱反射シートが設けられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の屋根構造。」 (イ) 明細書段落【0005】〜【0010】 「【0005】 解決しようとする問題点は、タイトフレームを介さないと屋根材を支持梁に取り付けることができない点である。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は、支持梁に屋根材を直接取り付け可能とするため、突条と凹溝を交互に略平行に有する折板で屋根材を形成し、該折板の一方の端縁側は該突条の一つとし、該折板の他方の端縁側には、該凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部を形成し、該取付部は、該傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、該上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、該直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなるようにしたことを最も主要な特徴とする。 【0007】 この屋根材は、一の折板の取付部の下平坦部を支持梁に固定し、一の折板の取付部に、隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条を重ねた状態で連結して屋根構造を形成する。前記突条は断面略台形をし、前記凹溝は断面略逆台形をしていてもよく、また、前記取付部の高さと、前記一方の端縁側の突条の高さは略同一で、前記凹溝から前記取付部に至る傾斜部の角度と、前記一方の端縁側の突条の外側の傾斜部の角度は略同一であることが望ましい。また、屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に静止空気層を形成することにより、遮熱性能の高い屋根構造とすることができる。また、一の折板の取付部に隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条が重ねられた部分に保護キャップを取り付けてもよい。 【発明の効果】 【0008】 本発明は、屋根材の端縁に断面略クランク形の取付部を設け、屋根材を支持梁に直接取り付けることができるので、タイトフレームを使用する必要が無くなり、タイトフレームを支持梁に溶接する工程が不要になり、屋根材を取り付ける際の工程数が減少し、従って、屋根を形成するコストが低減するという利点がある。 【0009】 また、本発明は、前記突条の断面形状を略台形をし、前記凹溝の断面形状を略逆台形とし、前記取付部の高さと、前記一方の端縁側の突条の高さを略同一とし、前記凹溝から前記取付部に至る傾斜部の角度と、前記一方の端縁側の突条の外側の傾斜部の角度を略同一とした場合、隣り合う屋根材は、一の屋根材の取付部に隣り合う他の屋根材の一方の端縁側の突条が重なり易く、連結され易いという利点がある。 【0010】 また、本発明は、屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に静止空気層を形成した場合、屋内と屋外で温度差が有っても、空気の対流による熱伝導が少なくなり、屋内と屋外との間の熱の移動が抑制され、屋内が暑くなり過ぎたり、寒くなり過ぎることがなく、また、冷暖房をした場合に冷暖房効率も良好になるという利点がある。」 (ウ) 明細書段落【0014】〜【0018】 「【0014】 支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められている。熱反射シート12は、多孔質樹脂シート14と、多孔質樹脂シート14の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層16,16とにより構成されている。金属反射層16,16はアルミニウムからなる。熱反射シート12の端部はジョイントアルミテープ(図示せず)により連結され、熱反射シート12は2次元方向に広がっている。 【0015】 熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められている。屋根材18は断面略台形の突条20と断面略逆台形の凹溝22を交互に略平行に有する折板(鋼板)からなる。屋根材18の一方の端縁側は突条20の一つからなり、屋根材18の他方の端縁側には、凹溝22の底から立ち上がる傾斜部24の先に延長形成された断面略クランク形の取付部26が形成されている。 【0016】 取付部26は、傾斜部24に続いて設けられた上平坦部28と、上平坦部28の先に続いて設けられた直立面部30と、直立面部30の先に続いて設けられた下平坦部32とからなる。一の屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定されている。 【0017】 取付部26の高さと、一方の端縁側の突条20の高さは略同一で、凹溝22から取付部26に至る傾斜部24の角度と、一方の端縁側の突条20の外側の傾斜部25の角度は略同一になっている。屋根材18の裏側にはスポンジシート27が積層貼付されている。 【0018】 隣り合う屋根材18,18は、一の屋根材18の取付部26に隣り合う他の屋根材18の一方の端縁側の突条20が重ねられて連続し、屋根が形成されている。一の屋根材18と、隣り合う他の屋根材18は重ねられた部分でビス36により連結・固定されている。」 (エ) 明細書段落【0020】 「【0020】 熱反射シート12と屋根材18との間には静止空気層38が形成されている。屋外が暑い場合、屋外の熱が屋根材18を伝わって屋内側に入って来るが、屋内側に入ってきた熱は熱反射シート12の金属反射層16によって屋外側に反射されるので、屋内側が屋外側の熱によって暑くなり難く、従って、屋内を冷房している場合はその冷房効率が良くなる。」 (オ) 【図1】及び【図2】 「【図1】 ![]() 【図2】 ![]() 」 (カ) 図面から看取できる事項 前記(エ)の記載を参酌すると前記(オ)の【図1】から次の事項が看取できる。 「屋根材18の表面は屋外側を向いていること。」 「突条20は屋外側、凹溝22は屋内側に、それぞれ配置されていること。」 イ 甲1発明 前記アにおいて摘記した記載事項及び図面の内容を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「断面略台形の突条20と断面略逆台形の凹溝22を交互に略平行に有する折板からなる屋根材18、 多孔質樹脂シート14と、多孔質樹脂シート14の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層16、16とにより構成されている熱反射シート12を有し、 屋根材18の表面は屋外側を向いており、 突条20は屋外側、凹溝22は屋内側に、それぞれ配置され、 屋根材18の他方の端縁側には、凹溝22の底から立ち上がる傾斜部24の先に延長形成された断面略クランク形の取付部26が形成され、 屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定され、 金属反射層16、16はアルミニウムからなり、 支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められ、 熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められ、 屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に静止空気層を形成した、遮熱性能の高い屋根構造。」 (2) 甲2に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0003】〜【0008】 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記の屋根構造においては、断熱材7により小屋裏空間5のある程度の断熱性が得られる。しかし、特に夏季の野地板2からのふく射熱に対して、十分な断熱性が得難く、そのため断熱による冷房負荷の軽減効果も十分に期待することができないものであった。野地板2の断熱性を十分に高いものとするためには、断熱材7に、質的,性能的に優れた材質のものを使用し、かつ厚く貼付ける必要があって、材料コストが高くなる。 【0004】この発明の目的は、優れた断熱性能を低コストで得ることができ、また結露対策としても優れた性能を発揮できる屋根構造を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】この発明の屋根構造は、屋根板の裏側に、棟および軒に開放された空気層を形成する熱反射フィルムを設けたものである。 【0006】 【作用】この構成によると、屋根板の熱が伝導と対流により空気層に伝わるとともに、屋根板のふく射熱が熱反射フィルムで遮断されて空気層に反射される。この空気層では、軒の開放部から入った空気が、内部で温まることにより棟の開放部から外部へ排出される空気流れがあり、これにより、熱気の多くが外部に放出され、小屋裏空間に対する断熱性能が高められる。 【0007】 【実施例】この発明の一実施例を図1ないし図3に基づいて説明する。同図において、図4に示す従来例と同一個所にはそれぞれ同一の符号を付して、それらの説明を省略する。 【0008】屋根板である野地板2は、屋根の傾斜方向に延びる垂木10上に設けてあり、図2に示すように野地板2との間に空気層12を形成する熱反射フィルム11が垂木10の下面に貼付けてある。垂木10への熱反射フィルム11の貼付けは、両面テープで貼付けた後、その上からコ字状のステープル(タッカー)を打付けることにより行う。空気層12の軒先部および棟部は、それぞれ換気ガラリ13,14から屋外に開放する。前記熱反射フィルム11としては、アルミ箔、アルミ付クラフト紙、アルミ付シート断熱材あるいは白色シート等が使用される。」 イ 明細書段落【0014】 「【0014】 【発明の効果】この発明の屋根構造は、屋根板の裏側に熱反射フィルムを設けて、棟および軒に開放された空気層を形成したので、夏季の屋根板からのふく射熱を熱反射フィルムによる反射で遮断すると共に、この反射等により温まった空気層の空気を自然換気により棟部から屋外に排出することができる。そのため、優れた断熱性能が得られ、夏季の冷房負荷の軽減が図れる。また、このように熱反射フィルムを設けただけで優れた断熱性が得られるため、屋根板に高品質で厚い断熱材を設ける必要がなくて、材料コストが低減される。しかも、室内からの湿気の影響が熱反射フィルムで遮断されて屋根板まで及ばないため、結露対策としても優れた性能が得られるという効果がある。」 ウ 【図2】 「 ![]() 」 (3) 甲3に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲3には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0015】 「【0015】 図1および図5に示すように、実施例に係る遮熱断熱屋根構造は、折板屋根18から吊り下げられた第1吊下げボルト24に遮熱断熱材取付具10が連結されると共に、遮熱断熱材取付具10に対して垂下するように連結された第2吊下げボルト26に天井下地材50が吊り下げられて、該天井下地材50に対して天井材22が固定されている。そして、前記遮熱断熱材取付具10に第1野縁(設置部材)28が着脱可能に保持されると共に、該第1野縁に対して遮熱断熱材取付具10の下方から遮熱シート(遮熱断熱材)20が取り付けられて、遮熱シート20を天井材22から離間した位置で支持するよう構成されている。ここで、実施例に係る遮熱シート20は、空気層を形成したポリエチレンシートの表裏面にアルミニウム薄膜が形成されたシート状物であって、熱線をアルミニウム薄膜で反射する遮熱効果と共に、空気層により熱伝導を抑制する断熱効果を備えたものである。」 イ 明細書段落【0020】 「【0020】 前記係合片部33は、前記基部32の下端中央から下方に延在する接続部33aと、該接続部33aから下方に延在する下方延出部33bとから構成される。前記下方延出部33bは、上辺が長い略台形状に形成されて、該下方延出部33bの上辺が接続部33aの左右側端部から左右に突出しており、該下方延出部33bの突出部分に前記第1野縁(後述する係合縁部28c)が係合するよう構成されている。すなわち、前記下方延出部33bは、接続部33aとの接続部位から左右側方に延出して形成されて、左右の側縁部(傾斜縁部33c)が左右上端から下方へ向けて夫々内側に傾斜している。ここで、前記第1野縁28の構成は、図3および図4に示すように、底板28aの側縁から立ち上がった両側板28b,28bの上端に、逆L字形の係合縁部28cが夫々形成されたチャンネル形状に形成されている。そして、前記係合片部33における各傾斜縁部33cに、前記第1野縁28の係合縁部28cを対応的に当接させたもとで第1野縁を下から押圧することで、当該第1野縁28の両側板28b,28bが弾性的に拡開し、該係合縁部28cが下方延出部33bの上端まで達すると、両側板28b,28bが弾性復帰して該係合縁部28cが下方延出部33bの上端に当接係合して支持部12に第1野縁28が取り付けられる。このとき、前記各係合縁部28cが前記基部32の下端に当接して、第1野縁28の上方向の移動が規制されるようになっている。図5に示すように、複数の第1野縁28における底板28aの下面に、既知の固定接着手段(図示せず)を用いて遮熱シート20が取り付けられる。実施例では、固定接着手段として両面テープを用いたが、これに限られず適宜の接着剤やネジ止めにより固定しても良い。ここで、図3に示すように、第1野縁28に取り付けられた遮熱シート20は、遮熱断熱材取付具10(第2連結部16)の下端より下方に位置している。」 ウ 【図5】 「 ![]() 」 (4) 甲4に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲4には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0001】 「【0001】 本考案は、例えば日除けシート,屋外テントシート,屋根材シート,車カバーシート,建物や工場の屋根や外壁に対し直接貼付けるシートなどの、室温上昇対策、遮熱対策に用いられる遮熱シートに関するものである。」 イ 明細書段落【0024】 「【0024】 本考案の請求項5記載の遮熱シートは、前記シート本体の裏面に、剥離可能な保護シート付きの粘着層が積層されていることを特徴とする。保護シートを剥離することで、遮熱シートを建物の屋根や外壁表面に簡単に貼り付けて施工することができる。」 ウ 明細書段落【0047】 「【0047】 本考案の遮熱シートは、遮熱を必要とするシート、例えば、畜舎,車,屋外テント,屋外コンテナ,配電盤,日除けシート,トラック荷台のシート,建物の屋根や外壁に貼付けるシート,農業用ハウス資材等の遮熱シート、断熱シート、遮光シートとして、幅広い用途に利用可能である。」 (5) 甲5に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲5には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0012】 「【0012】 折板屋根2は、複数の折板屋根材7が接続されて構成されたもので、各折板屋根材7の表面は防錆加工が施されている。各折板屋根材7は、金属製の板材を凹凸状に折り曲げて形成したもので、図1に示すように複数条(本実施の形態では2条)の底板部8a、8bと、両方の底板部8a、8bを接続する山部9と、各底板部8a、8bの外側縁に連続して形成された冠状部10、11とを有する。冠状部は、一方がすくい側冠状部10で、他方がかぶせ側冠状部11になっている。」 (6) 甲6に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0002】 【0002】 【従来の技術】従来より、例えば図26に示すように、巾方向Mに山部2と谷部3とが連続して形成されている屋根材1の巾方向Mの一端部に断面略逆U字状の支持片4、他端部に断面略逆U字状の接続片5をそれぞれ設け、巾方向Mにおいて隣接する一方の屋根材1の支持片4の上に他方の屋根材1の接続片5を重ね合わせるようにした屋根材1の構造が知られている。」 イ 明細書段落【0012】 「【0012】前記外皮24の巾方向Mの一端部には、断面略逆U字状の支持片4が設けられ、他端部に支持片4に下方から支持される断面略逆U字状の接続片5が設けられており、巾方向Mに複数の屋根材1を設置したときに隣接する一方の屋根材1の支持片4にて他方の屋根材1の接続片5を支持できるようになっている。なお外皮24及び内皮25の材質は特に限定されないが、一例として亜鉛めっき鋼板、アルミニウム板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、チタン鋼板、或いはこれら金属板に一般の塗料で着色したものや、塩化ビニル樹脂、アクリルフィルム、フッ素樹脂などを被覆したものを用いることができる。」 ウ 【図26】 「 ![]() 」 (7) 甲7に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲7には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 【要約】の【解決手段】 「【解決手段】使用中のスレート屋根材22が波形であるため、板状の断熱板26を頂面に固定した場合には、使用中のスレート屋根材22と断熱板26とが当接する部分と当接しない部分とが生じる。また、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間にも、同様の部分が生じる。こうすることにより、熱伝導はそれぞれのスレート屋根材と断熱板とが当接する部分のみ生じることになるため、全面が当接している場合と比較して、熱伝導を低減させることができる。加えて、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間には空間を有するため、新しいスレート屋根材24の熱が空間の空気に伝わった場合であっても、断熱板26によって使用中のスレート屋根材22に伝わる熱量を低減させている。」 イ 【図1】 「 ![]() 」 (8) 甲8−1に記載された事項及び甲8発明 甲8−1は、インターネットのURL ア 甲8−1に記載された事項 甲8−1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、請求人が作成したものを基に当審が作成した翻訳文を併せて示す。 (ア) 1頁左欄16〜22行 「Q: What is a radiant barrier? A radiant barrier is a layer of aluminum foil placed in an airspace to block radiant heat transfer between a heat-radiating surface (such as a hot roof) and a heat-absorbing surface (such as conventional attic insulation). Figure 1 illustrates a radiant barrier installed in an attic.」 (翻訳文:質問:放射障壁とは何ですか? 放射障壁とは、熱を発する面(高温の屋根など)と熱を吸収する面(従来の屋根裏の断熱材など)との間の輻射熱の移動を遮断するために、空気層にアルミニウム箔を敷いたものです。図1は、屋根裏に設置された放射障壁の例です。) (イ) 1頁右欄1〜35行 「Q: What are the benefits of radiant barriers in attics? In hot climates, benefits of attic radiant barriers include both dollar savings and increased comfort. Without a radiant barrier, your roof radiates solar-generated heat to the insulation below it. The insulation absorbs the heat and gradually transfers it to the material it touches -- principally, the ceiling. This heat transfer makes your air conditioner run longer and consume more electricity. An aluminum foil radiant barrier blocks 95 percent of the heat radiated down by the roof so it can't reach the insulation. In summer, when your roof gets very hot, a radiant barrier cuts air-conditioning costs by blocking a sizable portion of the downward heat gain into the building. In the warm spring and fall, radiant barriers may save even more energy and cooling dollars by increasing your personal comfort. During these milder seasons, outdoor air temperatures are comfortable much of the time. Yet solar energy still heats up your roof, insulation, attic air and ceiling to temperatures that can make you uncomfortably warm. An attic radiant barrier stops almost all of this downward heat transfer so that you can stay comfortable without air conditioning during mild weather. You may also find that radiant barriers can expand the use of space in your home. For instance, uninsulated, unconditioned spaces such as garages, porches and workrooms can be more comfortable with radiant barriers. And because radiant barriers keep attics cooler, the space is more usable for storage. One final benefit: a cooler attic transfers less heat into air conditioner ducts, so the cooling system operates more efficiently.」 (翻訳文:質問:屋根裏に放射障壁を設置するメリットは何ですか? 暑い気候では、屋根裏の放射障壁は、コスト削減と快適性の向上の両方のメリットがあります。 放射障壁がないと、屋根は太陽で発生した熱をその下の断熱材に放射します。断熱材はこの熱を吸収し、それから接触する素材(主に天丼)に徐々に熱を伝えます。この熱伝達により、エアコンの稼働時間が長くなり、消費電力も大きくなります。 アルミ箔の放射障壁は、屋根から放射される熱の95%を遮断し、断熱材に熱が伝わらないようにします。 屋根が非常に高温になる夏には、放射障壁が建物内への下向きの熱取得のかなりの部分を遮断することで、エアコンのコストを削減できます。 春や秋の暖かい季節には、放射障壁が快適性を向上させることで、さらにエネルギーと冷房費を節約できるかもしれません。この温暖な季節には、外気の温度はほとんどの場合は快適です。 しかし、太陽エネルギーは屋根や断熱材、屋根裏の空気や天丼を熱し、不快なほどの温度になります。屋根裏の放射障壁は、この下方への熱移動をほぼすべて阻止するので、温暖な気候の中でエアコンなしでも快適に過ごすことができます。 また、放射障壁により、家の中のスペースを広く使うことができます。例えば、ガレージやポーチ、仕事部屋などの断熱されていない未調整の空間は、放射障壁によってより快適になります。また、屋根裏を涼しく保つことができるので、収納スペースとしても活用できます。 さらに、屋根裏が涼しければ、エアコンのダクトヘの熱の移動が少なくなるため、冷房の効率が上がるというメリットもあります。) (ウ) 1頁右欄36行〜2頁左欄14行 「Q: How do radiant barriers "block" heat transfer? Aluminum foil, -- the operative material in attic radiant barriers -- has two physical properties of interest here. First, it reflects thermal radiation very well. Second, it emits (gives off) very little heat. In other words, aluminum is a good heat reflector and a bad heat radiator. Your grandmother probably made use of these properties through "kitchen physics." She covered the Thanksgiving turkey with a loose "tent" of aluminum foil before she put it in the oven. The foil reflected the oven's thermal radiation, so the meat cooked as evenly on top as on the bottom. She removed the foil briefly to let the skin brown, but when she took the bird from the oven, she "tented" it with foil again. Since aluminum doesn't emit much heat, the turkey stayed hot until the rest of the meal was ready. Cooking a turkey is a simple analogy, but the same principles of physics apply to an attic radiant barrier. Aluminum foil across the attic airspace reflects heat radiated by the roof. Even if the radiant barrier material has only one aluminum foil side and that side faces down, it still stops downward heat transfer because the foil will not emit − it will not radiate the roof's heat to the insulation below it. (翻訳文:質問:どのようにして熱の移動を「遮断」するのですか? 屋根裏の放射障壁に使われているアルミニウム箔には、2つの物理的特性があります。第一に熱放射をよく反射すること。第二に熱をほとんど放出しない、言い換えれば、アルミニウムは良い熱反射体であり、また悪い熱放出体であることです。 あなたのおばあさんは、この特性を「台所の物理学」で利用していたのではないでしょうか。彼女は感謝祭の七面鳥をオーブンに入れる前に、アルミニウム箔でゆるい「テント」を張っていました。アルミニウム箔はオーブンの熱放射を反射するので、肉は上からも下からも均等に焼けるのです。その後、皮に焼き色をつけるためにアルミニウム箔を外しますが、オーブンから取り出すときには再びアルミ箔でテントを張りました。アルミニウムは熱を発しにくいので、料理が完成するまで七面鳥は熱々のままだったのです。 七面鳥の調理は簡単な例えですが、屋根裏の放射障壁にも同じ物理学の原理が当てはまります。屋根裏の空気層を覆うアルミニウム箔は、屋根から放射される熱を反射します。たとえ放射障壁材にアルミニウム箔の面が1つしかなく、その面が下を向いていたとしても、アルミニウム箔は屋根の熱を下の断熱材に放射しないため、下向きの熱伝達を止めることができます。) (エ) 4頁左欄14〜20行 「Q:How should I install a radiant barrier in my attic? The most effective way to install a radiant barrier in an existing attic is simply to staple the foil material to the underside of the top chord of the roof trusses or to the underside of the roof decking. See Figure 3 for an illustration.」 (翻訳文:質問:私の屋根裏に放射障壁をどのように設置するとよいでしょうか? 既存の屋根裏に放射障壁を設置する最も効果的な方法は、屋根トラスの垂木の下側または屋根板の下側に箔材料をステープル留めするだけのことです。説明のために図3を参照してください。) (オ) 「Figure 1. An installed radiant barrier.」 (翻訳文:図1 設置された放射障壁) 「 ![]() 」 (カ) 「Figure 3. Locations for radiant barrier materials.」 (翻訳文:図3 放射障壁材の位置) 「 ![]() 」 (キ) 図面から看取できる事項 前記(ア)及び(エ)の記載を踏まえると、前記(オ)及び(カ)の図1及び3から次の事項を看取できる。 「表面側が屋外を向いた平板状の屋根板の裏面に屋根トラスの複数の垂木が所定の間隔で設けられ、 前記垂木の下側にアルミニウム箔がステープル留めされ、 前記屋根板、前記垂木及びアルミニウム箔の間に空気層が存在し、高温の屋根板と屋根裏の断熱材との間の輻射熱の移動を遮断する構造。」 イ 甲8発明 前記アにおいて摘記した記載事項及び図面の内容を総合すると、甲8−1には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。 「表面側が屋外を向いた平板状の屋根板の裏面に屋根トラスの複数の垂木が所定の間隔で設けられ、 前記垂木の下側にアルミニウム箔がステープル留めされ、 前記屋根板、前記垂木及びアルミニウム箔の間に空気層が存在し、高温の屋根板と屋根裏の断熱材との間の輻射熱の移動を遮断する構造。」 (9) 甲9に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲9には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0028】 「【0028】 一方、遮熱シート10の取付対象は、図2に示しているように波形屋根1であり、波形屋根1の屋根材の端部を連結した連結山部1aに屋根上固定具3を固定したうえで、その上に溝形フレーム30を架設して、さらにその上に遮熱シート10を取り付けるようにしたものである。なお、取付対象の屋根は波形屋根1に限定されず、他の形状の屋根であってもよい。」 イ 【図2】 「 ![]() 」 (10) 甲10に記載された事項 本件特許の出願前に発行された甲10には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 明細書段落【0009】 「【0009】屋根1の上部に付設する折版屋根材取付用フレーム2の上部に突設され、上方からナット3を螺着することで、折版屋根材取付用フレーム2に折版屋根材5を固定する為の吊子4若しくは折版屋根材5を、止着し得る折版屋根材取付用フレームのボルト構造であって、このボルト6の上端部に前記ナット3の螺着孔7にこのナット3を回動しなくても挿通し得る無螺子部8を設け、この無螺子部8の上端部を略平坦面に設け、このボルト6の無螺子部8とこの下方の螺子部9との境界部に、螺子山が下端側に向かって徐々に径大となり螺子部9の螺子山に連続するテーパー状螺子部10を設けたことを特徴とする折版屋根材取付用フレームのボルト構造に係るものである。」 イ 【図2】 「 ![]() 」 2 無効理由1:明確性要件違反について (1) 明確性要件の判断基準 特許法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。 そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 以下、この観点に立って、本件発明が明確であるか否かについて検討する。 (2) 本件発明1についての検討・判断 本件特許の請求項1における「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造」との記載は、「前記凹凸のある素材」において、「凸部の裏面に対してのみ」に「高反射率の素材」を「接着手段」で取り付けた「遮熱構造」を意味するものと理解できる。 そして、本件発明1は、前記記載の「遮熱構造」により請求項1に記載された「前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている」構造を有するものであることを意味することは明らかである。 したがって、本件発明1の特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはない。 (3) 請求人の主張について 請求人が主張する点についての見解は次のとおりである。 ア 請求人が主張する「凸部の裏面への前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の接着の程度(一時的に接着した物も該当するか)を当業者が理解できるよう記載されていない」(前記第4の1(1)アの○2及びエ)点(以下「主張A−1」という。)について、本件発明1は「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた」ものである。 また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、次の記載及び図面がある。 「【0025】 図1の様な凹凸のある折板屋根材1を例に説明する。熱は図1の上部から来るものとする。 高反射の性能を引き出す方法として、折板屋根材1凹部2とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5との間に輻射熱を反射する空気層4が必要である。即ち、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5は、熱源側である折板屋根材1凹部2から離れていなければならない。」(段落【0025】) 「【0034】 施工方法は非常に簡単で、例えばあらゆる素材の凸部に接着剤を塗布、その上からアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5を貼ればよい。ただ接着する時、素材とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5との間には空気を含ませないことが大切であり、接着後空気が良く抜けるようローラー等でしごく事が重要である。 万一、空気が巻き込まれると、空気が過熱されアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5に多くの熱が伝わり、結果的には室内側にその熱が供給され、省エネ効果の低減に繋がる。 ここで、あらゆる素材の凸部に対する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5の接着方法には、上記のような接着剤による接着の他に熱溶着、両面テープなどによる接着方法がある。 なお、あらゆる素材の凸部に対する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材5の接着を工場にて行う場合は、熱溶着又は接着剤による接着が主体であり、現地工事の場合は、接着剤による接着又は両面テープによる接着が主体となる。」(段落【0034】) 「 ![]() 」(【図1】) よって、明細書等の記載からも「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付」られ、「遮熱構造」として機能する程度に接着されているものと理解できる。 よって、前記主張A−1は採用できない。 イ 請求人が主張する「広い面積に亘つて凹凸が多数存在する凹凸のある素材への前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の接着の範囲(多数存在する凸部の裏面の一部にのみ接着した物も該当するか)を当業者が理解できるよう記載されておらず、不明確である」(前記第4の1(1)アの○3及びオ)点(以下「主張A−2」という。)について、明細書等(段落【0034】、【図1】等)からみて「凹凸のある素材」に「凸部の裏側」が遮熱構造として機能する程度に接着されているものと理解できる。 よって、前記主張A−2は採用できない。 ウ 請求人が主張する本件特許の遮熱効果が不明確であることに基づく「従来技術に記載された従来の遮熱構造との違いが不明確である」(前記第4の1(1)アの○1、イ及びウ)点(以下「主張A−3」という。)について、前記(2)で検討・判断したとおり、本件発明1の「遮熱構造」を理解することはできるものであるから、従来の遮熱構造との遮熱効果の違いが明確か否かにかかわらず、「遮熱構造」というものが明確である以上、本件発明1が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはない。 よって、前記主張A−3は採用できない。 (4) 本件発明1についての明確性のまとめ よって、本件明細書等の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、本件発明1における「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた遮熱構造」は、「前記凹凸のある素材」において、「凸部の裏面に対してのみ」に「高反射率の素材」を「接着手段」で取り付けた「遮熱構造」と解することが相当であり、請求人の主張によりその判断が左右されるものではない。 したがって、請求人の主張によっては、本件発明1は、第三者に不測の利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件発明1は明確である。 (5) 本件発明2について 本件発明2についても、本件発明1と同様、明確である。 (6) 小括 よって、本件発明1及び2についての特許は、請求人が主張する無効理由1によって無効とすることはできない。 3 無効理由2(甲1に記載された発明を主引用例とした進歩性の欠如) (1) 本件発明1 ア 本件発明1と甲1発明の対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア) 甲1発明の「断面略台形の突条20」及び「断面略逆台形の凹溝22」は「突条20は屋外側、凹溝22は屋内側に、それぞれ配置され」るから、それぞれ、本件発明1の「該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部」に相当する。そして、甲1発明の「屋根材18」は、「表面は屋外側を向いて」おり、屋外側から日差しを受けるから、熱源側を向いていることは自明である。 そうすると、甲1発明の「断面略台形の突条20と断面略逆台形の凹溝22を交互に略平行に有する折板からなる屋根材18」は、本件発明1の「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」に相当する。 (イ) 甲1発明の「熱反射シート12」を構成する「アルミニウムからな」る「金属反射層16」において「アルミニウム」が輻射熱に対して高反射率という性質を有することは自明である。 そうすると、甲1発明の「屋根材の下」に「設け」られた「熱反射シート12」を構成する「金属反射層16」は、本件発明1の「該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」に相当する。 (ウ) 甲1発明の「屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に静止空気層を形成」することは、本件発明1の「前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている」ことに相当する。 (エ) 前記(ア)〜(ウ)を踏まえると、甲1発明の「遮熱性能の高い屋根構造」は、本件発明1の「凹凸素材の遮熱構造」に相当する。 以上を整理すると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。 <一致点> 「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材と、該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とからなる遮熱構造であって、 前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている凹凸素材の遮熱構造。」 <相違点1> 本件発明1の「遮熱構造」は「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付けた」ものであるのに対し、甲1発明の「屋根構造」の「屋根材18」は「屋根材18の他方の端縁側には、凹溝22の底から立ち上がる傾斜部24の先に延長形成された断面略クランク形の取付部26が形成され、屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定され」、「支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められ、熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められ」るものであるが、「熱反射シート12」と「屋根材18」とを固定する手段があるか否か不明である点。 イ 相違点についての検討・判断 (ア) 甲1発明の「課題」、「課題を解決するための手段」及び「発明の効果」について 前記1(1)ア(イ)の記載から、甲1発明の「屋根構造」は、「タイトフレームを介さないと屋根材を支持梁に取り付けることができない点」を課題とし、それを解決するために「支持梁に屋根材を直接取り付け可能とするため、突条と凹溝を交互に略平行に有する折板で屋根材を形成し、該折板の一方の端縁側は該突条の一つとし、該折板の他方の端縁側には、該凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部を形成し、該取付部は、該傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、該上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、該直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなるようにしたことを最も主要な特徴とする」ものである。 そして、発明の効果として「本発明は、屋根材の端縁に断面略クランク形の取付部を設け、屋根材を支持梁に直接取り付けることができるので、タイトフレームを使用する必要が無くなり、タイトフレームを支持梁に溶接する工程が不要になり、屋根材を取り付ける際の工程数が減少し、従って、屋根を形成するコストが低減するという利点がある」としている。 (イ) 甲1発明の「屋根材18」の支持梁への取り付け構造について 甲1発明の「屋根構造」は前記(ア)に示したとおり「支持梁に屋根材を直接取り付け可能」、すなわち、「屋根材18の取付部26」により支持梁に直接取り付け可能なものである。 「熱反射シート12」は「支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められ」るものであるが、「支持梁10」に対して具体的にどのように「熱反射シート12が敷き詰められ」るかは甲1に記載されておらず、示唆もない。 そして、「熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められ」、「屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定され」ることにより「屋根材18」は「支持梁に直接取り付け可能なもの」であり、当該固定により「屋根材18」の「凹溝22」と「支持梁10」の間に「熱反射シート12」が挟まれる状態になり、「凹溝22」と「熱反射シート12」が接するものである。 (ウ) 周知技術について 甲2には、「屋根の傾斜方向に延びる垂木10上に屋根板である野地板2を設け、野地板2との間に空気層12を形成する熱反射フィルム11が垂木10の下面に貼付けてあり、垂木10への熱反射フィルム11の貼付けは、両面テープで貼付けた後、その上からコ字状のステープル(タッカー)を打付けることにより行い、前記熱反射フィルム11としては、アルミ箔が使用される」技術が記載(前記1(2)ア参照)されている。 甲3には、「遮熱断熱屋根構造において、折板屋根18から吊り下げられた第1吊下げボルト24に連結された遮熱断熱材取付具10に第1野縁(設置部材)28が着脱可能に保持され、複数の第1野縁28における底板28aの下面に、両面テープ、接着剤やネジ止めによる固定接着手段を用いて遮熱シート20が取り付けられる」技術が記載(前記1(3)ア及びイ参照)されている。 甲4には、「遮熱シートは、前記シート本体の裏面に、剥離可能な保護シート付きの粘着層が積層され、保護シートを剥離することで、遮熱シートを建物の屋根に簡単に貼り付けて施工される」技術が記載(前記1(4)イ参照)されている。 これらから、屋根に用いる遮熱シートを屋根に関連する部材に接着手段で固定することは本件出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。 (エ) 甲1発明の「屋根材18」の「凹溝22」と「熱反射シート12」に対する周知技術1の適用について a 「屋根材18」、「熱反射シート12」、「支持梁10」の間の固定構造を周知技術の接着手段に置換することについて 前記(ア)及び(イ)に示したとおり、甲1発明の「屋根材18の取付部26」は、タイトフレームを使用せずとも「支持梁10」へ取り付けるようにするために従来技術に対して付加されたものである。 しかしながら、「屋根材18の取付部26」を「接着手段」に置換するには、甲1発明と同様の「タイトフレームを使用せずとも「支持梁10」へ取り付けるようにする」ために接着手段を用いて屋根材を「支持梁10」に接着する技術が必要であるところ、周知技術1は、単に屋根に用いる遮熱シートを屋根に関連する部材に接着手段で固定することにすぎず、甲2〜10に屋根材を支持梁に接着する技術について記載も示唆もない。 そうすると、甲1発明の「屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定され」る固定構造に代えて、「取付部」と目的を同じとしない周知技術1を採用することは、動機付けがあったとはいえない。 b 「屋根材18」、「熱反射シート12」、「支持梁10」の間の固定構造に加え、周知技術1を付加することについて 甲1発明は前記(ア)に示したとおり、「屋根材18の取付部26」により支持梁に直接取り付け可能なものであり、前記周知技術1は支持梁に直接取り付け可能な屋根材に対して熱反射シートを取り付けることを目的としたものでなく、甲2〜4にも前記目的を示唆する記載もない。 また、甲1発明が有する構成により「タイトフレームを支持梁に溶接する工程が不要になり、屋根材を取り付ける際の工程数が減少し、従って、屋根を形成するコストが低減するという利点」をその効果とするものであるから、甲1発明において、前記(イ)に示したように「支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められ」、「熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められ」、「屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定され」ることにより「屋根材18」の「凹溝22」と「支持梁10」の間に「熱反射シート12」が挟まれる状態になり、「凹溝22」と「熱反射シート12」が接しているものに対して、屋根材の施工の際に付加的な工程を追加するような構成を採用することは阻害要因を有するといえる。 そうすると、甲1発明の「屋根材18」の「凹溝22」と「熱反射シート12」に対して、それらを接着する手段を付加する前記周知技術1を適用することは、阻害要因を有することである。 そして、甲5〜10にも前記周知技術1を適用可能とする動機付けを示す記載も示唆もない。 (オ) 相違点1についての検討・判断のまとめ 前記(エ)のとおり、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明の構成を採用することは、甲2〜10に示される技術的事項を考慮しても、当業者にとって容易になし得た事項ではない。 ウ 請求人による主張について (ア) 請求人による主張 請求人は、請求人口頭審理陳述要領書において、概略以下の主張をしている。 a 主張B−1 審理事項通知書の「3(2)ア」で指摘した「ア 請求人は、(ア)甲1に記載された「屋根材18」、「熱反射シート12」、「支持梁10」の間の固定構造に加えて、接着手段により熱反射シートを接着する技術を適用する(周知技術の付加)と主張するのか、または、(イ) 前記固定構造に代えて周知技術の接着手段を適用する(周知技術による置換)と主張するのか。」に対し、 「請求人は、(イ)前記固定構造に代えて周知技術の接着手段を適用する(周知技術による置換)と主張するものである。」(請求人口頭審理陳述要領書7頁8及び9行)とした上で次の主張をしている。 (主張B−1) 「すなわち、主引用発明1(甲1)には、屋根材18と熱反射シート12と支持梁10による固定構造に係る発明のみが記載されているものではない。 甲1における取付部26の下平坦部32は、タイトフレームを使用せずとも支持梁10へ取り付けるようにするために従来技術に対して付加された特徴部分であって、主引用発明1の遮熱構造は、取付部26の下平坦部32を設けなくとも、また、支持梁10への取り付けがなくとも、凹凸ある折板18と熱反射シート12とからなり、前記凹凸のある折板18の凸部22のみ前記熱反射シート12を取り付けた構成で達成できる。 したがって、甲1には、凹凸折板の凸部のみに平坦状に遮熱シートを取り付けた構成が記載されている。 ただし、かかる構成においては、熱反射シートの凸部への固定方法は不明であり、凹凸折板と熱反射シートとからなる遮熱構造を生産するには何らかの取付手段が必要となる。 そこで、周知の接着手段を適用するものである。」(請求人口頭審理陳述要領書7頁11〜24行)。 b 主張B−2 審理事項通知書の「3(2)イ」で指摘した「イ 周知技術の適用にあたり、甲1に記載された発明の固定構造を考慮した上で、副引用発明1と併せて周知技術を適用するに足る動機付けが存在するか否か」に対し、次の主張をしている。 (主張B−2) 「主引用発明(甲1)に係る凹凸折板の凸部のみに平坦状に遮熱シートを取り付けた遮熱構造を生産するには、何らかの取付手段が必要である。 しかるに、遮熱シートの素材への接着手段は、甲1発明と技術分野・課題・作用・機能が共通する副引用発明1(甲2)に記載されている。 すなわち、甲1発明は、屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートとの間に空気層を形成することで遮熱性能の高い屋根構造とするものである。そして、甲2発明も、垂木に熱反射フィルムを貼り付け、野地板との間に空気層を形成することで、夏季の屋根板からの輻射熱を熱反射フィルムによる反射で遮熱することができ、遮熱性能の高い屋根構造とするものである。 この点、主引用発明と副引用発明1とは、いずれも屋根の遮熱構造に関する発明であって技術分野が共通する。 また、主引用発明と副引用発明1とは、いずれも低コストで屋根の遮熱構造を構築するものであって、課題が共通する。 更に、主引用発明と副引用発明1とは、いずれも屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に空気層を形成することにより、遮熱性能の高い屋根構造とするものであって、作用・機能が共通する。 しかるに、主引用発明において、屋根材の下に熱反射シートを取り付けることで遮熱構造を構築する際、屋根材と熱反射シートとを固着しないと建造構造物としての安全性が欠けるので、どのような手段で熱反射シートを取り付けるかを考慮する必要があるところ、本件発明と同じ技術分野に係る屋根の遮熱構造であって課題・作用・機能が共通する副引用発明1に基づき、両面テープの接着手段により熱反射シートを接着するよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。 また、遮熱シートを接着手段によって素材へ貼り付けることは、副引用発明1〜3(甲2〜甲4)に示されるように周知慣用技術であって、甲1発明の遮熱構造に、甲2〜甲4に記載の接着手段を用いることは阻害要因もない。」(請求人口頭審理陳述要領書7頁30行〜8頁19行) c 主張B−3 「被請求人は、主引用発明1(甲1)は、折板製の屋根材に取付部を設けることにより、屋根材を取り付ける際の工程数を減少させ、屋根を形成するコストを低減させることを目的とする発明であるとし、折板製の屋根材の支持梁への取り付けを容易にする発明であるとしている。 しかし、甲1には、折板製の屋根材の支持梁への取付けを容易にする発明のみが記載されているものではない。 すなわち、前述のように、甲1における取付部26の下平坦部32は、タイトフレームを使用せずとも支持梁10へ取り付けるようにするために従来技術に対して付加された特徴部分であって、主引用発明1の遮熱構造は、取付部26の下平坦部32を設けなくとも、また、支持梁10への取り付けがなくとも、凹凸ある折板18と熱反射シート12とからなり、前記凹凸のある折板18の凸部22のみ前記熱反射シート12を取り付けた構成で達成できる。 したがって、甲1には、凹凸折板の凸部のみに平坦状に遮熱シートを取り付けた構成が記載されている。 そして、甲1の凹凸折板の凸部のみに平坦状に遮熱シートを取り付けた構成においては、何らかの遮熱シートの取り付け手段は必要となるものの、取付部及び支持梁は存在しない構成であることから、取り付け手段はビス留めでなければならない必然性はない。」(請求人口頭審理陳述要領書9頁17行〜10頁3行) (イ) 請求人の主張についての判断 請求人の主張について検討する。 主張B−1について、請求人の主張する「主引用発明1の遮熱構造は、取付部26の下平坦部32を設けなくとも、また、支持梁10への取り付けがなくとも、凹凸ある折板18と熱反射シート12とからなり、前記凹凸のある折板18の凸部22のみ前記熱反射シート12を取り付けた構成で達成できる。」点については、前記イ(ア)に示した甲1発明の課題及び課題を解決するための手段からみて、甲1発明の「屋根材18」は、「取付部26」により「支持梁10」に取り付けられるものであって、「取付部26」及び「支持梁10」が存在しない「凹凸折板と熱反射シートのみからなる屋根構造」を認定することはできない。したがって、前記イ(エ)aに示したとおり、甲1発明の「屋根材18の取付部26」は、タイトフレームを使用せずとも支持梁10へ取り付けるようにするために従来技術に対して付加されたものであり、それを「接着手段」に置換する動機付けがあったとはいえない判断を左右するものでない。 また、主張B−2、B−3についても、前記イ(エ)a及びbのとおり、「屋根材18」、「熱反射シート12」、「支持梁10」の間の固定構造を周知技術の接着手段に置換することに動機付けがなく、「屋根材18」、「熱反射シート12」、「支持梁10」の間の固定構造に加え、周知技術1を付加することに阻害要因があり、動機付けもない判断を左右するものでない。 よって、請求人の主張B−1〜B−3は採用できない。 エ 本件発明1に関する無効理由2のまとめ 前記イ及びウから、本件発明1は甲1発明及び甲2〜10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (2) 本件発明2 本件発明2は、本件発明1に対して、さらに「前記凹凸のある素材には、金属、コンクリート、レンガ、プラスチック、木、折板屋根材、スレート屋根材を含む」という技術的事項を追加したものである。 よって、前記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は甲1発明及び甲2〜10に示される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 無効理由2のまとめ よって、本件発明1及び2は、甲1発明及び甲2〜10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 4 無効理由3(甲8に記載された発明を主引用例とした進歩性の欠如) (1) 本件発明1 ア 本件発明1の「凹凸のある素材」について 本件発明1の「凹凸のある素材」について本件発明の明細書等段落【0001】、【0008】及び【0016】には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、折板屋根材やスレート屋根材等凹凸のある素材に直接遮熱材を貼る事により、安くて簡単に省エネルギー効果を産むことが出来る遮熱構造を提供するものである。」 「【0008】 折板屋根材等凹凸のある素材の室内側に、凹凸面に沿って遮熱材を直接貼る方法は、放射率が低下させるので大きな省エネ効果をもたらす事が可能である。しかし、この場合凹凸のある全ての面に連続的に密着して遮熱材を貼る必要がある為、必要面積例えば水平面での屋根面積と遮熱施工面積では大きな差が出来、大幅なコストアップとなる。」 「【0016】 本発明は、金属製の折板屋根材や角波外壁材、縦葺き屋根等凹凸のある素材にボンド等の接着剤で貼れば良く、誰でも簡単に施工でき施工コストが大幅に削減できる。」 【図1】 「 ![]() 」 これらの記載及び図面から、本件発明1の「凹凸のある素材」は、「折板屋根材」等それ自体で凹凸を含めて一体化した部材で構成されたものを意味するものと理解できる。 イ 本件発明1と甲8発明の対比 本件発明1と甲8発明を対比する。 (ア) 甲8発明の「屋根板」は「表面側が屋外を向い」ており、屋外側から日差しを受けるから、熱源側を向いていることは自明である。 そして、甲8発明の「表面側が屋外を向いた平板状の屋根板の裏面に屋根トラスの複数の垂木が所定の間隔で設けられ」たものは、その構造により「屋根板」と「垂木」により屋外側に凹部、屋内側に凸部が形成されている。 そうすると、本件発明1の「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」と、甲8発明の「表面側が屋外を向いた平板状の屋根板に屋根トラスの複数の垂木が所定の間隔で設けられ」たものは、「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸部」という点で共通する。 (イ) 「アルミニウム」が輻射熱に対して高反射率という性質を有することは自明である。そして、前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「該凹凸のある素材の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」と甲8発明の「アルミニウム箔」は、「凹凸部の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材」という点で共通する。 (ウ) 前記(ア)を踏まえると、本件発明1の「前記凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させていること」と、甲8発明の「前記屋根板、前記垂木及びアルミニウム箔の間に空気層が存在する」ことは、「凹凸部の凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている」点で共通する。 (エ) 甲8発明の「高温の屋根板と屋根裏の断熱材との間の輻射熱の移動を遮断する構造」は、遮熱機能を有することが自明であるから、本件発明1の「凹凸素材の遮熱構造」と甲8発明の「高温の屋根板と屋根裏の断熱材との間の輻射熱の移動を遮断する構造」は、「遮熱構造」という点で共通する。 以上を整理すると、本件発明と甲8発明とは、次の一致点で一致し、相違点2の点で相違する。 <一致点> 「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸部と、凹凸部の裏面側に位置するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とからなる遮熱構造であって、 凹凸部の凹部とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材との間に空間を存在させている遮熱構造。」 <相違点2> 「凹凸部」に関する構成が、本件発明1は「表面が熱源側を向いており、該熱源側に位置する凹部と非熱源側に位置する凸部とが交互に設けられた凹凸のある素材」として、それ自体で凹凸を含めて一体化した部材で構成され、「前記凹凸のある素材の凸部の裏面に対してのみ前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を接着手段により取り付け」られているのに対し、甲8発明は「表面側が屋外を向いた平板状の屋根板の裏面に屋根トラスの複数の垂木が所定の間隔で設けられ」たものであって、「屋根板」と「垂木」が一体化した部材で構成されておらず、「垂木」と「アルミニウム箔」が「ステープル留めされ」ている点。 ウ 相違点2についての検討・判断 (ア) 甲8発明の「輻射熱の移動を遮断する構造」は、「屋根トラス」の上に「屋根板」を設置する屋根構造に用いるものであり、「屋根トラス」の「垂木」に「アルミニウム箔」が「ステープル留めされ」た構造である。 (イ) 一方、甲1には、凹凸形状の「屋根材」と支持梁の間に「熱反射シート12」を有する構造が記載(甲1発明参照)され、甲9には、「波形屋根1の屋根材の端部を連結した連結山部1aに屋根上固定具3を固定したうえで、その上に溝形フレーム30を架設して、さらにその上に遮熱シート10を取り付けるようにしたもの」が記載され(前記1(9)ア参照)、甲6には、「巾方向Mに山部2と谷部3とが連続して形成されている屋根材1」が記載され(前記1(6)ア参照)、甲7には、使用中の波形のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24との間に各々と当接する断熱板26を有するものが記載され(前記1(7)ア参照)、甲10には、「折版屋根材取付用フレーム2に折版屋根材5を固定する」ことが記載されている(前記1(10)ア参照)。 しかしながら、前記各甲号証には、凹凸形状の「屋根材」が記載されているものの、建築物において機能の異なる「垂木」と「屋根材」を一体化することも、さらにそれを凹凸形状とする技術を示すものでも示唆するものでもない。そして、甲2〜5にもそのような記載も示唆もない。 (ウ) したがって、前記甲号証のいずれの技術を甲8発明の「平板状の屋根板」や「垂木」に適用しても「屋根板」と「垂木」を一体の凹凸形状の素材として形成することは容易に想到し得たものでない。 よって、甲8発明において、前記相違点2に係る本件発明の構成を採用することは、甲1〜7、9及び10に示される技術的事項を考慮しても、当業者にとって容易になし得たことではない。 (エ) 相違点2についての検討・判断のまとめ 前記(ア)〜(ウ)で前記相違点2について検討・判断したとおりであるから、本件発明1は甲8発明及び甲1〜7、9及び10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 エ 請求人による主張について (ア) 請求人による主張 請求人は、請求人口頭審理陳述要領書において、無効理由3について、概略次の2つの主張をしている。 a 主張C−1 審理事項通知の「3(3)イ」で指摘した「請求書41頁21〜31行の「c 相違点○1 (当審注:数字を○で囲む文字を表す。)について」において、異なる種類の「屋根材」同士の置換・交換を行うよう設計することが通常であるところ、「屋根材」と「垂木」をまとめて「折板や波型スレート」の屋根材に代える動機付けが存在するか不明である。」点について、次の主張をしている。 (主張C−1) 「主引用発明2では、「平板状屋根板」と「垂木」とが組み合わされることで「屋根材」が構成されているものである。すなわち、垂木は、屋根板を支えるため、屋根の最上部にある棟木から軒桁にかけて斜めに取り付けられる部材ではあるが、建築物完成時には垂木は屋根板と一体化して屋根材を構成している。 そして、屋根材として折板や波型スレートを使用することは、本件特許発明と同じ建築の分野における周知慣用技術である(副引用発明7〜11参照)。 また、太陽熱による屋内空間の温度上昇の問題は、主引用発明2が想定する平板状屋根材においても、副引用発明7〜11(甲1、甲9、甲6、甲7、甲10)に記載された折板や波型スレートの屋根材においても、共通に生じる課題である。 したがって、太陽熱による屋内空間の温度上昇を抑える目的をもって、主引用発明において記載された平板状屋根板と垂木とからなり一体化した屋根材における遮熱構造に代えて、副引用発明7〜11で示された折板や波型スレートの屋根材における遮熱構造を製作することは、当業者にとって容易である。」(請求人口頭審理陳述要領書13頁11〜25行) b 主張C−2 請求人口頭審理陳述要領書において、「確かに、主引用発明2(当審注:請求人による甲8−1号に記載された発明を表す。以下同様である。)に示されている平板状屋根板自体は、凹凸がある素材ではない。 しかし、平板状屋根板(Roof decking)と、当該屋根板の熱源側と反対の非熱源側(裏面側)に凸状に設けられた垂木(Top chord of truss)とが組み合わさることにより、凹部空間が形成されており、組み合わされた平板状屋根板と垂木をもって「屋根材」が構成されていると見ることができる。 そして、主引用発明2では、遮熱シート(Aluminum foil material)は、屋根材を構成する垂木の裏面にのみステイプルガンで取り付けられており、垂木の側面や、平板状屋根板の裏面とは接触しておらず、垂木の側面と平板状屋根板の裏面と、遮熱シートにより空間が形成されている。」(請求人口頭審理陳述要領書15頁12〜17行)とし、本件発明1と甲8発明の相違点について、 「○1 相違点1 本件発明は、「素材」が、折板や波型スレートのようにそれ自体が「凹部と凸部が交互に設けられた凹凸のある素材」であるのに対し、主引用発明2は、「平板状の屋根材(Roof decking)と、この屋根材の裏面側に設けられた垂木(Top chord of truss)とにより構成され、屋根材の裏面側と垂木によって空間(凹部)が形成された素材」である点(構成要件A、B、Cの一部) ○2 相違点2 本件発明は、遮熱シートが、接着手段により素材の凸部裏面に取り付けられている(構成要件C)のに対し、主引用発明2は、遮熱シートが素材に直に取り付けられてはいるものの、ステイプルによる固定である点 (接着が不明である点については、被請求人の指摘を踏まえてステイプルによる固定に記載を改めた。)」(請求人口頭審理陳述要領書17頁下から4行〜18頁8行)とした上で、次の主張をしている。 (主張C−2) 「d 副引例7〜11(甲1、9、6、7、10)について 前述のように、被請求人は、主引用発明2は屋根材が垂木で支えられていることを大前提として、木製の垂木にアルミホイルを(ステイプルガンで)ホチキス留めするだけで、放射障壁(Radiant barrier)を効果的に取り付けられることを示したもので、この垂木を、金属等のホチキス留めができない材料の部材に代える動機づけはなく、また阻害要因が存在する旨主張する。 しかし、副引用発明7〜11(甲1、9、6、7、10)は、屋根材として、鋼製の折板屋根や波型スレート屋根が広く用いられていることを示しているものである。 そして、鋼製の折板屋根や波型スレート屋根においても、主引用発明2の木製の平板状屋根においても、太陽熱による屋内空間の温度上昇の問題は、共通に生じる課題であるから、鋼製の折板屋根や波型スレート屋根においても、遮熱の必要性は認められる。 したがって、遮熱効果を奏する目的をもって、前記アで述べた主引用発明2の技術思想を、主引用発明2の木製の平板状屋根に代えて、副引用発明7〜11(甲1、9、6、7、10)に示す金属製や樹脂製の折板屋根やスレート屋根に適用することは、当業者であれば当然に想到することであり、組み合わせの動機付けがあるとともに、組み合わせることに何らの阻害要因もない。 e 副引例1〜3(甲2〜4)について 前述のように、被請求人は、主引用発明2は屋根材が垂木で支えられていることを大前提とする発明であるところ、この垂木に対して、金属製や樹脂製等に関する事項を適用することは主引用発明2の本質を変えることに他ならないなどと主張する。 しかし、屋根材として、木材、金属、樹脂等様々な材質のものを使用することは周知慣用技術であり、また、本件発明の請求項5として、「前記凹凸のある素材には、金属、コンクリート、レンガ、プラスチック、木、折板屋根材、スレート屋根材を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の凹凸素材の遮熱構造。」とあるように、金属も木も樹脂等も、屋根材を構成する材料の一つに過ぎず、主引用発明2の本質を何ら変えることにはならない。 そして、副引例発明1〜3(甲2〜4)は、遮熱シートを対象物に取り付けるに当たって、接着剤等の接着手段が用いられていることを示すものである。 そうすると、主引用発明2の技術を、副引例7〜11(甲1、9、6、7、10)の屋根に適用するにあたり、主引用発明2におけるステイプルガンによる取り付けに代え、副引例発明1〜3(甲2〜4)が示す接着によるものとすることもまた、当業者にとっては容易であり、阻害事由はない。」(請求人口頭審理陳述要領書18頁10行〜19頁11行) (イ) 請求人の主張についての判断 a 前記主張C−1について、「垂木は、屋根板を支えるため、屋根の最上部にある棟木から軒桁にかけて斜めに取り付けられる部材ではあるが、建築物完成時には垂木は屋根板と一体化して屋根材を構成している。」と主張しているが、前記アに示したとおり本件発明1の「凹凸のある素材」は、「折板屋根材」等それ自体で一体化した部材で構成されたもの」であり、前記ウで検討・判断したとおり、甲1、6、7、9及び10号証には、凹凸形状の「屋根材」が記載されているものの、建築物において機能の異なる「垂木」と「屋根材」を素材として一体化することも、さらにそれを凹凸形状とする技術を示すものでも、示唆するものでもない。そして、甲2〜5にもそのような記載も示唆もない。 b また、主張C−2は、相違点2において、甲8発明の「垂木」と「屋根材」を一体化することが容易に想到し得たことを前提とするものである以上、主張C−2を検討するまでもなく、主張C−1及びC−2は前記ウの判断を左右するものでない。 オ 本件発明1に関する無効理由2のまとめ 前記ウ及びエから、本件発明1は甲8発明及び甲1〜7、9及び10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (2) 本件発明2 本件発明2は、本件発明1に対して、さらに「前記凹凸のある素材には、金属、コンクリート、レンガ、プラスチック、木、折板屋根材、スレート屋根材を含む」という技術的事項を追加したものである。 よって、前記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲8発明及び甲1〜7、9及び10に示される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 無効理由3のまとめ よって、本件発明1及び2は、甲8発明及び甲1〜7、9及び10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、無効理由1〜3はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1及び5に係る発明についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2023-02-13 |
結審通知日 | 2023-02-16 |
審決日 | 2023-03-02 |
出願番号 | P2013-121593 |
審決分類 |
P
1
123・
537-
Y
(E04B)
P 1 123・ 121- Y (E04B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
住田 秀弘 |
特許庁審判官 |
居島 一仁 土屋 真理子 |
登録日 | 2014-01-10 |
登録番号 | 5445808 |
発明の名称 | 凹凸素材の遮熱構造 |
代理人 | 遠坂 啓太 |
代理人 | 南瀬 透 |
代理人 | 宇野 智也 |
代理人 | 水崎 慎 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 服部 謙太朗 |
代理人 | 加藤 久 |
代理人 | 堀籠 佳典 |
代理人 | 高橋 克宗 |
代理人 | 伊藤 表 |