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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1397179
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-01 
確定日 2023-02-13 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6930774号発明「自動車用部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6930774号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 特許第6930774号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6930774号(以下「本件特許」という)の請求項1〜4に係る特許についての出願は、2018年3月29日を国際出願日とする出願であって、令和3年8月16日に特許権の設定登録がされ、同年9月1日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立ては、本件特許のすべての請求項に係る特許を対象としたものであって、その手続の経緯は、次のとおりである。
令和4年 3月 1日 :特許異議申立人鈴木久代(以下「申立人」という)による特許異議の申立て
同年 7月 5日付け:取消理由の通知
同年 9月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月26日 :申立人による意見書の提出

第2 本件訂正
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6930774号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜4について訂正することを求める。」というものであって、その訂正(以下「本件訂正」という)の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付して示した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記セルの前記開放端が、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されており」と記載されているのを、「前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜4の記載も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記開放端によって形成される開放面の面積と前記開放面に対応する前記樹脂フィルム層に設けられた前記開孔の面積との比をSとする」と記載されているのを、「前記開放端によって形成される開放面の面積S2と前記開放面に対応する前記樹脂フィルム層に設けられた前記開孔の面積S1との比をS(=S1/S2)とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜4の記載も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「0<S<0.3となるように前記開孔を設けた」と記載されているのを、「0<S<0.3となるように前記開孔が設けられ、前記比Sが全体の面積でとらえた平均での比であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜4の記載も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「自動車用部品」と記載されているのを、その記載の直前に「前記不織布層が前記樹脂フィルム層に直接貼り合わされている」との記載を加える訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2〜4の記載も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「比P/Pcが0.25から0.8の間である」と記載されているのを、「比P/Pcが0.25から0.8の間であり、前記ピッチの比は、開放端が同一の向きにあるセルが隣接して列をなす方向またはそれに直行する幅方向のピッチの比である」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3及び4の記載も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「前記ピッチの比は、少なくともセルが隣接して列をなす方向に直交する幅方向のピッチの比である」と記載されているのを、「前記ピッチの比は、開放端が同一の向きにあるセルが隣接して列をなす方向に直交する幅方向のピッチの比である」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4の記載も同様に訂正する。)。

(7)本件訂正前の請求項1〜4は、請求項2〜4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項について請求されている。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、当審から通知した取消理由にもなっていた本件訂正前の請求項1の文意が明瞭でなかった開放端の配置の記載について明瞭化を図ったものであり、また、当該訂正事項により配置を特定したものともいえるから、明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件明細書等の段落【0024】及び【0026】の記載に基づくものといえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。

(2)訂正事項2及び3について
ア 訂正の目的
訂正事項2及び3は、当審から通知した取消理由にもなっていた本件訂正前の請求項1の記載で明瞭でなかった比Sの求め方について、明瞭化を図ったものであり、また、当該訂正事項により構成を具体化して特定したものともいえるから、明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2、3により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項2、3は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2、3は、いずれも、本件明細書等の段落【0034】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。

(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1に記載された「不織布層」と「樹脂フィルム層」について、両者が「直接張り合わされている」という関係にあることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書等の段落【0038】及び【0055】の記載や実施の形態を示す図5〜図7に図示された内容から、「不織布層」と「樹脂フィルム層」が他の層を介在させずに貼り合わされるものであることが理解される。また、本件明細書等で不織布層と樹脂フィルム層との間に他の層を介在させる記載はない。
したがって、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。

(5)訂正事項5及び6について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、当審から通知した取消理由にもなっていた本件訂正前の請求項2の記載で明瞭でなかったピッチの比の求め方について、明瞭化を図ったものであり、また、当該訂正事項により構成を具体化して特定したものともいえるから、明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6も、請求項2の記載を引用した請求項3の記載に対して、同様に、明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5及び6により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項5、6は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5中の「セルが隣接して列をなす方向またはそれに直行する幅方向のピッチの比である」という事項は、本件明細書等の段落【0026】及び【0035】の記載に基づくもものである。
また、訂正事項5及び6中の「開放端が同一の向きにあるセル」は、それらの段落の記載及びコア層の概略平面図たる図3の記載内容から理解できる事項である。
したがって、訂正事項5及び6は、いずれも、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜4〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1〜4に係る発明は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(これらの各発明を以下「本件発明1」のようにいう)。

【請求項1】
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に位置する不織布層と、前記コア層と前記不織布層との間に複数の開孔を有する薄い樹脂フィルム層を備える複層構造の自動車用部品であって、前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、前記開放端によって形成される開放面の面積S2と前記開放面に対応する前記樹脂フィルム層に設けられた前記開孔の面積S1との比をS(=S1/S2)とすると、0<S<0.3となるように前記開孔が設けられ、前記比Sが全体の面積でとらえた平均での比であり、前記不織布層が前記樹脂フィルム層に直接貼り合わされている自動車用部品。
【請求項2】
前記フィルム層の開孔パターンは、千鳥配列または格子配列とし、前記フィルム層の開孔のピッチPと前記コア層のセルのピッチPcの比P/Pcが0.25から0.8の間であり、前記ピッチの比は、開放端が同一の向きにあるセルが隣接して列をなす方向またはそれに直行する幅方向のピッチの比である請求項1に記載の自動車用部品。
【請求項3】
前記ピッチの比は、開放端が同一の向きにあるセルが隣接して列をなす方向に直交する幅方向のピッチの比である請求項2に記載の自動車用部品。
【請求項4】
前記複数の列をなして配置されているセルのうちの少なくとも一部のセルの前記閉鎖面に、当該セルの内部空間が外部と連通する貫通孔を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用部品。

第4 当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して令和4年7月5日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
・ (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載に不備があるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
・ (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載に不備があるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
・ (進歩性)請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1: 実公昭58−16850号公報
引用文献2: 特開2013−237242号公報
引用文献3: 特許第5924460号公報

2 取消理由についての判断
(1)実施可能要件について
本件訂正前は、請求項1〜4に係る発明の「S」がどのようにして求まるものなのか明確に特定できなかったがゆえに、これらの発明が実施可能要件の不備が見いだされたが、この不備は、本件訂正により解消した。
なお、申立人は、明細書に実施例の記載がないことを指摘するが、本件明細書等の実施例1乃至3、実施例4及び実施例5は(【0055】〜【0065】)、その樹脂フィルム層の「開孔率」がそれぞれ「0.36%」、「2.33%」及び「1.94%」であることからすると、それらのSの値がコア層の厚みによるとはいえ、「0<S<0.3」の範囲に入っているものと推測でき、“実施例”として位置づけ得るものである。
したがって、本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1〜本件発明4に係る特許は、同法第113条第4号に該当するものではない。

(2)明確性について
本件訂正前は、請求項1〜4に係る発明の「S」という「比」がどのようにして求まるものなのか、「開放端」がどのように配置されたものなのか、「ピッチ」の「比」がどのようにして求まるものなのか、といったことが明確に特定できなかったがゆえに、これらの発明の明確性上の不備が見いだされたが、これらの不備は、本件訂正により解消した。
したがって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1〜本件発明4に係る特許は、同法第113条第4号に該当するものではない。

(3)進歩性について
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献1には以下の記載がある。
・「考案の詳細な説明
本案は例えば自動車の内装板(天井内張り板・ドアトリムボード等)・建築内装板・化粧板などとして多用されているフアブリツク表皮積層板(複合体)の改良に係り、良好な吸音性を具備させることを目的とする。
フアブリツク表皮積層板は基板1として軽量でかつ適度の剛性を有する板材、例えば樹脂レジンフエルト板、ガラス繊維プレス板、合成樹脂シート製等の所謂段ボール構造板(図示例)、比較的硬質の樹脂発泡体板などを用い、その面にウレタン発泡体など適当厚さ(例えば2〜8mm)のクツシヨン材層2と、織布・編布・フエルトなど繊維製の表皮層(フアブリツク表皮)3を順次に貼り合せて成るもので、フアブリツク表皮3のもつ高級・重厚な趣味感、手触りの良さ等により車内等を上品・豪華に内装することができる。
ところで自動車内装板等はその具備すべき特性の一つとして良好な吸音性を有すべきことが挙げられるが、上記従来のフアブリツク表皮積層板は吸音性に優れるものであると云えない。」(第2欄第1行〜第21行)
・「本案は上記のような基板1,クツション材層2,フアブリツク表皮層3の貼り合せからなる積層板に於て吸音性を向上させることを目的とするもので、第1図に示すように基板1を、数多の独立内部凹部12を有する合或樹脂製段ボール構造板で且つその板のクツシヨン材層貼り合せ面に個々の内部凹部12に対応させて凹部12に連通する吸音孔15を形成したものとし、フアブリツク表皮層3はクツシヨン材層2に対して数多の小孔41を形成したフイルム層4を介して貼り合せた、ことを要旨とする。
具体的に図の実施例積層板の基板1は厚さ約0.3mmの半硬質のポリプロピレン樹脂シート11の面に直径約7mm、深さ約4mmの数多の円形小凹部12を隣接凹部との間隔約3mmの分布密度で真空形成したものの両面に厚さ約0.3mmの半硬質ポリプロピレン樹脂シート13,14を貼り合せて構成した合成樹脂製段ボール構造板(ダンプラ)で、且つその板のクツシヨン材層貼り合せ面シート13に予め個々の内部凹部12に対応させて凹部に連通する孔径約1mmの吸音孔15を形成したものである。
又クツシヨン材層2及びフイルム層4は厚さ約5mm、比量約0.03のウレタン発泡シート2の片面に厚さ約0.25mmの薄い塩化ビニルフイルム4をラミネート処理し、そのフイルム4及び発泡シート2を厚さ方向に貫通して直径約1mmの小孔41,41’の分布密度約2個/cm2で数多形成したもの(開口率2.8%)をフイルム層4側を上側にして上記基板1の孔あけ処理面に貼り合せた。
フアブリツク表皮3は6−6ナイロン製の商品名フレンチパイル布(目付200g/m2)を貼り合せた。」(第3欄第4行〜第36行)
・「本案は上記のようにクツシヨン材層2に対してフアブリツク表皮層3を、数多の小孔41を形成したフイルム層4を介して貼り合せたものであるから、フアブリツク表皮層3の外面に当つた音波a(第3図)は該層3→フイルム層4の各小孔41を通つてクツシヨン材層2内に進入し基板1の面に当つて反射a’する。又進入音波の一部は基板1の小孔15から更に基板1の各独立内部凹部12内に進入a”する。そしてその反射音波a’のうちの一部はフイルム層4の孔41→フアブリツク表皮層3を逆通過して積層板外部に出るけれどもそれ以外の大部分の反射音波a’はフイム層4の内面の孔のない部分に当ることによりフアブリツク表皮層3側への放出が阻止される。即ち反射音波a’の大部分がフイルム層4と基板1面との間のクツシヨン層2内にこもつた状態になり減衰する。又基板1の各独立凹部12内に進入した音波a”も凹部12内にこもつた状態になつて外部に出すに減衰する。
その結果本案積層板は極めて高い吸音率を示す。具体的に前記例示した第1図例構造の積層板につき垂直入射吸音テストを行なつたところ第2図グラフの曲線ハの結果を得た。即ち前述従来品イに比べて各種の周波数音波の吸音率が何れも極めて大きく向上した。」(第4欄第13行〜第37行)
(イ)以上を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半硬質のポリプロピレン樹脂シート11の面に直径約7mm、深さ約4mmの数多の円形小凹部12を隣接する円形小凹部12との間隔約3mmの分布密度で真空形成したものの両面に半硬質ポリプロピレン樹脂シート13,14を貼り合せて構成した合成樹脂製段ボール構造板で、且つその板のクッション材層2貼り合せ面となる半硬質ポリプロピレン樹脂前記シート13に予め個々の前記内部円形小凹部12に対応させて前記円形小凹部12に連通する孔径約1mmの吸音孔15を形成したものを有し、
ウレタン発泡シートたるクッション材層2に数多の小孔41、41’を形成した薄い塩化ビニルフィルムたるフィルム層4をラミネート処理して前記フィルム層4を上側にして前記シート13に貼り合わせ、
クッション材層2が、クッション材層2貼り合わせ面となる半硬質ポリプロピレン樹脂シート13に貼り合わせられ、フィルム層4が、前記クッション材層2にラミネート処理され、ファブリック表皮層3が前記フィルム層4に貼り合わされた、
積層板。」

イ 引用文献2及び3の記載事項
(ア)引用文献2には、以下の記載がある(下線は当審が付したもの)。
・「【0018】
図1において、ハニカム構造体1は複数のセル2で構成され、セル2はセル側壁3と表面層により構成される。表面層は上面部材4および下面部材5からなる。またハニカム構造体1を構成するセルのうち、セル側壁3と下面部材5とで構成されるセル2aと、セル側壁3と上面部材4とで構成されるセル2bを、一つずつ抜き出し模式的に示した。
【0019】
本発明のハニカム構造体1は、複数の六角柱状のセル2(セル2a、セル2b)をそれぞれ直線状に列をなして配置することにより形成される。セル2は、上面、下面の何れか一方に六角形状の表層面、すなわち上面部材4または下面部材5を有し、他方は開放されている。また、表層面の6辺をひとつの辺として環状に隣接するセル側壁3を有し、表層面とセル側壁3は互いに垂直である。図示の例では、セル側壁3は長方形の平板からなり、6枚のセル側壁3が互いの長辺を隣接するセル側壁3の長辺と衝き合せるように接続して6角形の環状体を形成することにより、6枚のセル側壁3の短辺により6角形をした端部が形成される。この6角形の環状体を立てたとき、その上側端部または下側端部に6角形の表面層(上面部材4または下面部材5)を有し、その端部を塞いでいる。また上面部材4および下面部材5の反対側の端部は開放されている。
【0020】
複数のセル2は、図中の矢印Xuの方向に、上面部材4を有するセル2bを直線的に配置して上面で上面部材4が連続的に連結している。また、図中の矢印Xbの方向に、下面部材5を有するセル2aを直線的に配置して下面で下面部材5連続的に連結している。さらに、セル2aを連続的に連結した列とセル2bを連続的に連結した列を交互に配置することによりハニカム構造体1を構成する。従って、例えば上面に上面部材4を有するセル2bの群は、矢印Xu方向には連続的に連結され、これと直交する矢印Yu方向には間欠的にセル側壁3を介して連結される。また、下面に下面部材5を有するセル2aの群は、矢印Xb方向には連続的に連結され、これと直交する矢印Yb方向には間欠的にセル側壁3を介して連結される。
【0021】
本発明のハニカム構造体1は後述するように1枚の平面体を塑性変形した後に折り畳むことによって形成されるため、実質的に切られていないハニカム構造体である。」
「【0122】
本発明のハニカム構造体およびサンドイッチ構造体は、軽量であり、静荷重では十分な剛性を有し、高速度の衝撃を受けた際には対象物に与える最大荷重が低く、かつ大きなエネルギーを吸収することから、省スペース、軽量性、低コストが厳しく求められつつ高い衝撃吸収性を必要とされる用途に好ましく使用される。また、中空構造を有するため防音性や断熱性にも優れることから、例えば、作業空間と居住空間、野外と屋内というように、空間を仕切る用途など、防音性や断熱性が求められる用途に好ましく使用される。また、本発明のサンドイッチ構造体は、上下面に用途に応じた平板を配することができることから装飾性に優れ、外観が要求される用途にも好ましく用いられる。また、本発明のサンドイッチ構造体は、上下面に用途に応じた平板を配することができることから電磁波シールド性にも優れ、ノイズの遮断を要する用途にも好ましく用いられることができる。
【0123】
以下、本発明のハニカム構造体およびサンドイッチ構造体を好ましく用いることができる用途を例示する。これらの中でも、特に、自動車内外装用の衝撃吸収部材に好ましく使用され、具体的には、クラッシュボックス、エアバック部品、ピラー、バンパー、フェンダー、ドアパネル等がより好ましい用途として挙げられる。」
・「【図1】



(イ)引用文献3には、以下の記載がある(下線は当審が付したもの)。
・「【0058】
図1は本発明の好ましい一実施形態であるハニカム構造体の部分構造を示した概略斜視図である。図1において、ハニカム構造体100は複数のセル1a及び1bで構成され、セル1a及び1bはそれぞれセル側壁2と表層面により構成される。表層面は上面部材3aまたは下面部材3bからなる。ハニカム構造体100を構成するセルのうち、セル1aはセル側壁2と下面部材3bとで構成され、セル1bはセル側壁2と上面部材3aとで構成される。図1では、セル1a及び1bをそれぞれ一つずつ抜きだして図示した。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態において、ハニカム構造体100は、複数の6角柱状のセル(セル1a、セル1b)をそれぞれ直線状に配列して形成される。各セルは、上面、下面の何れか一方に6角形状の表層面、すなわち上面部材3aまたは下面部材3bを有し、他方は開放されている。また、表層面の6辺を一つの辺として環状に隣接するセル側壁2を有し、表層面とセル側壁2は互いに垂直である。セル側壁2は長方形の平板からなり、6枚のセル側壁2の各長辺がそれぞれ隣接するセル側壁2の長辺と接続して6角柱状体を形成することにより、6枚のセル側壁2の短辺により6角形をした端部が形成される。この6角柱状体の上側端部または下側端部は、6角形状の表層面(上面部材3aまたは下面部材3b)によって塞がれている。また上面部材3aおよび下面部材3bの反対側の端部は開放されている。
【0060】
図中の矢印Xuの方向に、上面部材3aを有するセル1bを直線的に配置し、上面では上面部材3aが連続的に連結している。また、図中の矢印Xbの方向に、下面部材3bを有するセル1aを直線的に配置し、下面では下面部材3bが連続的に連結している。セル1aを連続的に連結した列とセル1bを連続的に連結した列を交互に配置することによりハニカム構造体100を構成する。すなわち、上面に上面部材3aを有するセル1bの群は、矢印Xu方向には連続的に連結され、これと直交する矢印Yu方向には間欠的にセル側壁2を介して連結される。また、下面に下面部材3bを有するセル1aの群は、矢印Xb方向には連続的に連結され、これと直交する矢印Yb方向には間欠的にセル側壁2を介して連結される。
【0061】
上記したハニカム構造体100は1枚の平面体であるハニカム用基材を塑性変形してハニカム構造体部品を形成した後、ハニカム構造体部品を折り畳むことによって形成することができる。」
・「【図1】



(ウ)上記(ア)及び(イ)に示されるように、開放端が一方側の面に開放しているセルが複数並んで形成される列と、開放端が他方側の面に開放しているセルが複数並んで形成される列とが、交互に配置されたハニカム構造体は、周知である。
中空構造を有する構造体が防音に資することは技術常識の範疇と理解されるところ、引用文献2にはハニカム構造体が有する中空構造が防音性をもたらすという技術思想も明示されている(特に段落【0122】参照)。

ウ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「円形小凹部12」を有する「半硬質のポリプロピレン樹脂シート11」は、本件発明1の「セル」を有する「コア層」に相当する。
引用発明の「ファブリック表皮層3」と本件発明1の「不織布層」は、「布層」であるという限りで一致する。
引用発明の「吸音孔15」が形成された「半硬質ポリプロピレン樹脂シート13」は、本件発明1の「複数の開孔」を有する「薄い樹脂フィルム層」に相当する。
引用発明の「半硬質のポリプロピレン樹脂シート11」の「円形小凹部12」の各々の「半硬質ポリプロピレン樹脂シート13」側は、明らかに外部と連通していて、「開放端」ということができて、また、「円形小凹部12」が一列おきに配置されているともいえる。
引用発明の「半硬質のポリプロピレン樹脂シート11」の「円形小凹部12」の「半硬質ポリプロピレン樹脂シート14」側は、「閉鎖端」ということができる。
引用発明の「円形小凹部12」の“開放端”の面積S2(直径約7mm)と「吸音孔15」の面積S1(孔径約1mm)との比S1/S2は、およそ0.02と算出されるから、本件発明1の「前記開放端によって形成される開放面の面積S2と前記開放面に対応する前記樹脂フィルム層に設けられた前記開孔の面積S1との比をS(=S1/S2)とすると、0<S<0.3となる」に含まれる。
引用発明の「積層板」は、部品として用いられることが想定されたものであるから、引用発明の「積層板」と本件発明1の「自動車用の部品」は、「部品」であるという限りで一致する。
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に位置する布層と、前記コア層と前記布層との間に複数の開孔を有する薄い樹脂フィルム層を備える複層構造の部品であって、
前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、
前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、
前記開放端によって形成される開放面の面積S2と前記開放面に対応する前記樹脂フィルム層に設けられた前記開孔の面積S1との比をS(=S1/S2)とすると、0<S<0.3となるように前記開孔が設けられ、前記比Sが全体の面積でとらえた平均での比である部品。
<相違点1>
「布層」について、本件発明1は「不織布層」であるのに対し、引用発明は「ファブリック表皮層」である点。
<相違点2>
本件発明1においては「前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されて」いるのに対し、引用発明においては、セル(円形小凹部12)の開放端は、コア層(半硬質のポリプロピレン樹脂シート11)の一方の面において、一列おきに配置されている点。
<相違点3>
「部品」について、本件発明1は「自動車用部品」であるのに対し、引用発明では「積層板」とされている点。
<相違点4>
「布層」と「樹脂フィルム層」の関係につき、本件発明1では「直接貼り合わされている」とされているのに対し、引用発明では両者の間に「ウレタン発泡シートたるクッション材層に数多の小孔を形成した薄い塩化ビニルフィルムたるフィルム層をラミネート処理」した層が介在している点。

(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点4の検討から始める。
引用発明は、良好な吸音性を備えることを目的としたものであり、そのためにクッション材層とフィルム層を設けることは不可欠である。
そのような引用発明において、あえてクッション材層とフィルム層を削除して構成するには、積極的な理由が必要であるというべきところ、そのような理由あるいは動機付けとなる事由は見当たらない。
そうしてみると、引用発明において、相違点4に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

エ 本件発明2〜本件発明4について
本件発明2〜本件発明4は、本件発明1の構成を全て含んだ上で他の構成を付加して限定したものであるから、引用発明と対比すると、少なくとも上記ウ(ア)で述べた本件発明1と引用発明の相違点が存在することは明らかである。
そして、それら相違点についての判断は、既に上記ウ(イ)で述べたとおりであるから、本件発明2〜本件発明4は、いずれも、引用発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

オ 以上のとおりであるから、本件発明1〜本件発明4は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
したがって、本件発明1〜本件発明4に係る特許は、いずれも、特許法第113条第2号に該当しない。

3 取消理由の通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1に係る発明でいう「0<S<0.3」に対して発明の詳細な説明で具体的な数値について何ら触れられていないことから、当該発明に対する特許が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。
しかし、既に「第4 2(1)」でも触れたように、実施例1〜5は、それらを実施例として位置づけることが不合理ではなく、それら実施例1〜5を踏まえれば、「0<S<0.3」の範囲で吸音性能が向上することは、期待し得ることである。
すなわち、当業者にとって、本件発明1により所与の課題を解決することができると認識し得るというべきである。
したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第4号に該当しない。

4 申立人の他の主張について
なお、申立人は、意見書において本件各発明が甲第5号証(特開2015−187632号公報)又は甲第6号証(特開平10−245907号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得た旨指摘する。
しかし、甲第5号証又は甲第6号証に記載された発明は、いずれも、本件各発明においていわば前提構成ともいえる「前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されて」いるという構成を備えていないから、当業者がそれらに基づいて本件各発明を容易に発明し得たといい得るものではなく、申立人の上記指摘に沿って取消理由が存在するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜4に係る特許を取り消すことができない。また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に位置する不織布層と、前記コア層と前記不織布層との間に複数の開孔を有する薄い樹脂フィルム層を備える複層構造の自動車用部品であって、前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されており、前記開放端によって形成される開放面の面積S2と前記開放面に対応する前記樹脂フィルム層に設けられた前記開孔の面積S1との比をS(=S1/S2)とすると、0<S<0.3となるように前記開孔が設けられ、前記比Sが全体の面積でとらえた平均での比であり、前記不織布層が前記樹脂フィルム層に直接貼り合わされている自動車用部品。
【請求項2】
前記フィルム層の開孔パターンは、千鳥配列または格子配列とし、前記フィルム層の開孔のピッチPと前記コア層のセルのピッチPcの比P/Pcが0.25から0.8の間であり、前記ピッチの比は、開放端が同一の向きにあるセルが隣接して列をなす方向またはそれに直交する幅方向のピッチの比である請求項1に記載の自動車用部品。
【請求項3】
前記ピッチの比は、開放端が同一の向きにあるセルが隣接して列をなす方向に直交する幅方向のピッチの比である請求項2に記載の自動車用部品。
【請求項4】
前記複数の列をなして配置されているセルのうちの少なくとも一部のセルの前記閉鎖面に、当該セルの内部空間が外部と連通する貫通孔を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用部品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-02-03 
出願番号 P2020-508766
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 藤原 直欣
藤井 眞吾
登録日 2021-08-16 
登録番号 6930774
権利者 MT−Tec合同会社
発明の名称 自動車用部品  
代理人 中村 綾子  
代理人 中村 綾子  
代理人 奥山 尚一  
代理人 森本 聡二  
代理人 奥山 尚一  
代理人 森本 聡二  

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