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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1397212 |
総通号数 | 17 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-10-17 |
確定日 | 2023-04-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7056175号発明「積層体及び該積層体で構成される袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7056175号の請求項1〜9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7056175号の請求項1〜9に係る特許についての出願は、平成30年1月26日(優先権主張、平成29年3月29日、日本国)を出願日とする出願であって、令和4年4月11日にその特許権の設定登録がなされ、令和4年4月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許に対する特許異議申立の経緯は、以下のとおりである。 令和4年10月17日 特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て 令和4年12月28日付け 取消理由通知 令和5年 3月 3日 意見書の提出(特許権者) 第2 本件発明 本件特許の請求項1から9に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」から「本件発明9」という。まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1から9に記載された以下の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 外面及び内面を含む積層体であって、 外面側から内面側に順に並ぶ基材、接着剤層及びシーラント層を備え、 前記基材は、プラスチックフィルムを1つのみ有し、 前記プラスチックフィルムは、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、 前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含み、 前記基材は、二軸延伸フィルムであり、 前記積層体中に前記基材を構成する二軸延伸フィルムが一つのみであり、 前記シーラント層の厚みは、70μm以上である、積層体。 【請求項2】 前記積層体の突き刺し強度が12N以上である、請求項1に記載の積層体。 【請求項3】 前記積層体を2つ準備し、温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数が、0.24以下である、請求項1又は2に記載の積層体。 【請求項4】 前記積層体を2つ準備し、温度20〜30℃及び湿度40〜60%の環境において少なくとも24時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数と称し、 常温静摩擦係数及び常温動摩擦係数の測定後、2つの前記積層体を温度40℃及び湿度90%の高温恒温槽において48時間にわたって保管した後に測定される、一方の前記積層体の外面の、他方の前記積層体の外面に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を高温高湿静摩擦係数及び高温高湿動摩擦係数と称する場合、 前記高温高湿静摩擦係数から前記常温静摩擦係数を引いた値が0.03以下であり、且つ、前記高温高湿動摩擦係数から前記常温動摩擦係数を引いた値が0.03以下である、 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項5】 前記基材を構成する、一つのみの前記二軸延伸フィルムは、10層以上を含む多層構造部を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項6】 前記基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項7】 前記基材の面上に位置する蒸着層を更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項8】 前記蒸着層上に位置するガスバリア性塗布膜を更に備える、請求項7に記載の積層体。 【請求項9】 本体部及び前記本体部に接続された注出口部を有する袋であって、 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の積層体と、 前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備える、袋。」 第3 取消理由の概要 令和4年12月28日付けで通知した取消理由及び甲各号証は以下のとおりである。 <理由> (進歩性)本件特許の請求項1から9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <甲各号証> 甲第1号証:特開2012−214248号公報 甲第2号証:特開2013−154605号公報 甲第3号証:特開2015−224062号公報 甲第4号証:特開2001−96683号公報 甲第5号証:永江修一、「二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(開発品)」、コンバーテック、加工技術研究会、2016年3月15日発行、第44巻(通巻516号)、第3号、p.108−111 (以下「甲第1号証」を「甲1」とよび、他の各甲号証についても同様である。) なお、申立人が主張する本件特許異議の申立理由は全て通知した。 第4 当審の判断 1 甲1、2について (1)甲1に記載された発明 甲1の特に段落【0009】から【0011】、【0020】、実施例1(【0023】、【0026】)、表1等について着目しつつ総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「外面及び内面を含む積層体であって、 外面側から内面側に順に並ぶOPBT系フィルムによる基材層、接着剤層及びシーラント層を備え、 前記OPBT系フィルムによる基材層は、プラスチックフィルムを1つのみ有し、 前記プラスチックフィルムは、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して0から30重量部のポリエチレンテレフタレートを含み、 前記シーラント層は、未延伸ポリエチレンを含み、 前記OPBT系フィルムによる基材層は、二軸延伸フィルムであり、 前記積層体中に前記基材を構成する二軸延伸フィルムが一つのみであり、 前記シーラント層の厚みは、60μmであり、 前記基材は、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下であり、 前記OPBT系フィルムによる基材層の面上に位置する蒸着膜を更に備え、バリア樹脂からなるコーティング層を更に備える積層体。」 (2)甲2に記載された事項 甲2の特に【0007】、【0077】、【0101】等について着目して総合すると、甲2には次の事項が記載されている(以下「甲2記載事項」という。)。 「優れた接着性、耐熱水性、低溶出性を有する包装材料に用いるシーラントフィルムが、オカモト株式会社製LR−124の直鎖状低密度ポリエチレンを含み、厚みが70μmであること。」 2 本件特許1 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを、対比する。 甲1発明の「OPBT系フィルムによる基材層」は、本件発明1の「基材」に相当する。 さらに、甲1発明の「プラスチックフィルム」は「OPBT系フィルム」であって、ポリブチレンテレフタレートを含むので、本件発明1の「前記プラスチックフィルムは、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含」むことと、「プラスチックフィルムはポリブチレンテレフタレートを含む」という限りで一致する。 してみると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「外面及び内面を含む積層体であって、 外面側から内面側に順に並ぶ基材、接着剤層及びシーラント層を備え、 前記基材は、プラスチックフィルムを1つのみ有し、 前記プラスチックフィルムは、ポリブチレンテレフタレートを含み、 前記基材は、二軸延伸フィルムであり、 前記積層体中に前記基材を構成する二軸延伸フィルムが一つのみである、積層体」 <相違点1> プラスチックフィルムがポリブチレンテレフタレートを含む態様に関し、プラスチックフィルムのポリブチレンテレフタレートの含有割合は、本件発明1では51質量%以上であるのに対して、甲1発明では、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して0から30重量部のポリエチレンテレフタレートが含有されるものの、ポリブチレンテレフタレートの含有割合は不明である点。 <相違点2> シーラント層について、本件発明1では直鎖状低密度ポリエチレンを含むのに対して、甲1発明では未延伸ポリエチレンである点。 <相違点3> シーラント層の厚みについて、本件発明1では70μm以上であるのに対して、甲1発明では60μmである点。 (2)判断 事案に鑑みて、相違点2から検討する。 甲1の【0001】、【0006】、【0007】等を参酌すれば、甲1発明は、耐レトルト性に優れたレトルト用包材に関するものであり、その温度条件として、「130℃以上の過酷なレトルト条件においても使用可能」とするものである。 他方、シーラントフィルムにおいて直鎖状低密度ポリエチレンを用いたパウチのレトルト殺菌に関して、甲2の実施例1〜6(【0101】〜【0106】)では熱水式レトルト殺菌機にて121℃、30分で処理するものであり、130℃を超える温度条件を想定するものではない。 また、甲2記載事項にあるように、包装材料に用いるシーラントフィルムが含む直鎖状低密度ポリエチレンは、オカモト株式会社製LR−124であり、通常、121℃までのレトルト処理を行うものである(オカモト株式会社、‘LR124技術資料’、2004年6月、http://cfile215.uf.daum.net/attach/207276484F326DD80FF237(乙2)参照。)。 また、LR−124の融点は、127℃程度である(LR124の示差走査熱量測定結果のプリントアウト(乙3)参照。)。 してみると、130℃以上の過酷なレトルト条件において使用可能とすることを意図している甲1発明に、130℃を超えて使用することを想定していない甲2記載のシーラントフィルムを採用する動機はないし、採用することにむしろ阻害要因があるともいえる。 したがって、相違点1、3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2〜9 本件発明2〜9は、本件発明1を引用して限定した発明である。したがって、本件発明2〜9は、「2 本件発明1」で示した理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 小括 本件発明1〜9は、甲1発明並びに甲2〜5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由(進歩性)には理由がない。 第5 むすび したがって、請求項1〜9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2023-04-11 |
出願番号 | P2018-011912 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B32B)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 中野 裕之 |
登録日 | 2022-04-11 |
登録番号 | 7056175 |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 積層体及び該積層体で構成される袋 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 岡村 和郎 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 堀田 幸裕 |