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審決分類 |
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61G 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61G |
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管理番号 | 1397604 |
総通号数 | 18 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-12-03 |
確定日 | 2023-05-08 |
事件の表示 | 特願2020−157293「電動ベッド」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月 7日出願公開、特開2021− 491〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年5月1日に出願した特願2017−91076号(以下「原出願」という。)の一部を令和2年9月18日に新たな出願にしようとしたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 6月15日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 8月16日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 9月 1日付け:拒絶査定 令和 3年12月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 4年10月13日付け:拒絶理由通知書 令和 4年12月12日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、令和4年12月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は、以下のとおりのものである。 「床面に対するベッド面の高さが変更可能な電動ベッドにおいて、 検出部で検出された検出結果により使用者の状態が覚醒状態か入眠状態または睡眠状態かを判定する処理部を有し、 前記検出部は、前記使用者の状態に応じた振動を検出し、 前記処理部は、 前記検出部により検出された振動に基づいて、前記使用者の活動量を算出する活動量算出手段と、 前記活動量算出手段により第1時刻に算出された活動量と、前記活動量算出手段により第2時刻に算出された活動量と、に基づいて睡眠判定値を算出する睡眠判定値算出手段と、 前記睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定する睡眠状態判定手段と、 を含み、 前記睡眠状態判定手段により、 前記使用者の状態が前記覚醒状態から前記入眠状態または前記睡眠状態に変化したと判定されたときには、前記ベッド面を前記床面に対して最低の高さにする、電動ベッド。」 第3 当審における拒絶の理由 当審が通知した上記令和4年10月13日付け拒絶理由通知書は、次の理由を含むものである。 4.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2018−187022号公報 なお、令和4年10月13日付け拒絶理由通知書において、引用文献1は「特開2018−187002号公報」とされているが、「特開2018−187022号公報」の誤記であり、このことは、令和4年12月7日の応対により、請求人代理人において了解済みである。 第4 理由4(進歩性)についての当審の判断 1 分割要件について (1)本願の明細書等の記載事項 本願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願の明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は当審が付加した。以下同様。)。 「【請求項1】 ・・・ 前記睡眠状態判定手段により、 前記使用者の状態が前記覚醒状態から前記入眠状態または前記睡眠状態に変化したと判定されたときには、前記ベッド面を前記床面に対して最低の高さにする、電動ベッド。」 「【0005】 実施形態によれば、電動ベッドは、床面に対するベッド面の高さが変更可能となっている。そして、検出部で検出された使用者の状態が入眠状態または睡眠状態のとき、前記ベッド面は、前記床面に対して最低の高さになる。」 【請求項1】の記載は、「前記使用者の状態が前記覚醒状態から前記入眠状態または前記睡眠状態に変化したと判定されたとき」には、「前記ベッド面を前記床面に対して最低の高さにする」ものであるが、ベッド面を床面に対して最低の高さにする制御を実行するための制御手段については特段の特定がない。そうすると、当該記載は、入眠状態や睡眠状態に変化したと判定されたときに、他の操作等によらずに自動的に、ベッド面の高さを最低の高さにするものを特定しているか、仮にそうでなくても、少なくともそのように特定しているものをも含むと認められる。 また、段落【0005】の記載は、「検出部で検出された使用者の状態が入眠状態または睡眠状態のとき」に、「前記ベッド面は、前記床面に対して最低の高さになる」ものであり、ベッド面が床面に対して最低の高さになるための制御手段が何ら特定されていないから、同様に、入眠状態や睡眠状態となったときに、他の操作等によらずに自動的に、ベッド面の高さが最低の高さとなるものを含むと認められる。 (2)原出願の当初明細書等の記載事項 一方、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原出願の当初明細書等」という。)には、上記(1)のベッド面に相当する可動部の制御に関して、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 第1操作受付部が受け付けた操作に応じて動く可動部と、 検出部で検出された使用者の状態が第1使用者状態のときに前記可動部の第1可動部状態を記憶する記憶部と、 を備え、 前記可動部は、第2操作受付部が操作を受け付けたときに前記記憶された前記第1可動部状態になる、電動家具。」 「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、電動家具に関する。 【背景技術】 【0002】 例えば、高さや背もたれの角度を変更可能な電動家具(例えば、電動ベッドまたは電動椅子など)がある。これらの電動家具は、手元スイッチなどの制御装置(例えばリモートコントローラ:リモコン)により操作される。このような制御装置において、使い易さの向上が望まれる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開平11−235363号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の実施形態は、使い易さを向上できる電動家具を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 実施形態によれば、電動家具は、第1操作受付部が受け付けた操作に応じて動く可動部と、検出部で検出された使用者の状態が第1使用者状態のときに前記可動部の第1可動部状態を記憶する記憶部と、を含む。前記可動部は、第2操作受付部が操作を受け付けたときに前記記憶された前記第1可動部状態になる。 【発明の効果】 【0006】 本発明の実施形態は、使い易さを向上できる電動家具を提供できる。」 「【0009】 (第1実施形態) ・・・」 「【0054】 例えば、使用者が所定の状態(例えば離床など)になりたい場合、第2操作受付部25(例えばメモリーボタン)を押す。複数の第2操作受付部25が設けられる場合、その1つが、例えば、「離床」に対応づけられる。使用者がその第2操作受付部25を押すと、第2操作受付部25が受け付けた信号が、制御部42に供給される。制御部42は、その信号に基づいて、記憶部48に記憶された1つの可動部70の状態を形成するように、駆動部72を制御する。駆動部72の駆動により、可動部70は、使用者の所定の状態(例えば離床など)に対応した状態となる。」 「【0086】 図5(a)〜図5(c)は、第1実施形態に係る電動家具の状態を例示する模式図である。 これらは、電動家具310が電動ベッドであるときの例である。 図5(a)に示す例では、ベッド面の高さが低い。ベッド面の高さは、例えば、制御可能な最低の高さである。例えば、特に、高齢者などが使用者である場合において、使用者の状態が入眠(または睡眠)であるときにベッド面が高いと、使用者が寝ている間にベッドから落ちると危険である。ベッド面を低くすることで、より安全になる。使用者状態が入眠(または睡眠)であるときに、ベッド面が低いこのような状態が、可動部状態として記憶部48に記憶される。そして、第2操作受付部25に入眠(または、睡眠、「ねる」)のメモリーポジションが設定される場合に、第2操作受付部25が操作を受け付けると、記憶部48に記憶された可動部状態が読み出される。これにより、ベッド面が低い状態が形成される。」 「【0092】 (第2実施形態) 図6は、第2実施形態に係る電動家具を例示する模式的斜視図である。 図6に示すように、本実施形態に係る電動家具320も、可動部70、検出部60及び制御部42を含む。この例においても、検出部60は、使用者の状態を検出する。制御部42は、検出部60により検出された使用者の状態に基づいて可動部70を動かす可動部制御が可能である。本実施形態においては、検出部60として、シート型の離床センサ61が設けられる。例えば、電動家具320(この例では電動ベッド)の使用者が、電動ベッドから起き上がり離床センサ61の上に乗ると、使用者の体重が離床センサ61に加わる。離床センサ61は、体重による荷重を検出する。これにより、離床センサ61は、離床を検出できる。」 「【0102】 センサ部62bに、マットレス76を介して、使用者81による力(圧力及び音波の少なくともいずれか)が加わる。例えば、センサ部62bで検出された力に基づく信号が、回路部62aから出力される。出力された信号が制御部42に供給される。制御部42において、信号(力)の大きさ及び信号(力)の大きさの時間的な変化の少なくともいずれかに基づいて、使用者81の状態(離床、睡眠、または覚醒など)が推定される。または、回路部62aにおいて、センサ部62bで検出された力及び力の時間的な変化の少なくともいずれかに基づいて、使用者81の状態(離床、睡眠、または覚醒など)が推定されても良い。使用者81の状態は、起き上がり、端座位(例えば離床準備状態)、離床、入眠、睡眠、または覚醒を含んでも良い。」 「【0117】 以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電動家具に含まれる第1操作受付部、操作ボタン、第2操作受付部、メモリーボタン、スイッチ、表示領域、検出部、可動部、駆動部、制御部及び記憶部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。」 (3)分割要件についての判断 原出願の当初明細書等に記載されるのは、睡眠状態に変化したと判定されたときに、ベッド面を床面に対して最低の高さにすることを、手元スイッチ等の操作によって行うものであって、少なくともこれを他の操作等によらずに自動的に行うものについては記載も示唆もない。 上記(2)からも明らかなように、原出願の当初明細書等に記載される発明は、手元スイッチ(例えば、リモートコントローラ)といった手動操作の制御装置を用いる、電動ベッド等の電動家具において、使い易さの向上を課題(段落【0002】〜【0004】)とするものである。そして、当該発明は、この課題を解決するために、第1操作受付部による操作により可動部の動作を制御するとともに、使用者の状態を検出部で検出し、検出部で検出した使用者の状態が第1使用者状態であると判定した場合、そのときの可動部の状態を記憶部に記憶しておき、第2操作受付部が操作された場合、記憶部に記憶された可動部の状態になるように制御するのである(特許請求の範囲、段落【0005】等)。すなわち、原出願の当初明細書等に記載されるのは、電動ベッド等の電動家具の可動部の動作制御を、第1操作受付部や第2操作受付部といった手動操作の制御装置によって行うことを前提にするものであって、少なくともこれを他の操作等によらずに自動的に行うようなものではない。 このことは、原出願の実施形態の記載からも裏付けられる。具体的には、原出願の当初明細書等において、第1実施形態(段落【0009】〜【0091】、図1〜5)には、所定の状態として判定する使用者の状態の種類やその判定の方法、判定結果に基づく可動部の状態の記憶の方法等についての具体例が開示されており、例えば、段落【0086】には、使用者の状態が入眠又は睡眠であるときに、ベッド面が制御可能な最低の高さである状態を可動部状態として記憶部48に記憶し、第2操作受付部25が操作を受け付けると、記憶部48に記憶された可動部状態が読み出され、ベッド面が低い状態が形成されることが記載されているが、使用者の状態が覚醒から入眠又は睡眠に変化したと判定されたときに、他の操作等によらずに自動的に、ベッド面を制御可能な最低の高さにすることについて、記載も示唆も見いだせない。 また、第2実施形態(段落【0092】〜【0114】、図6〜8)には、主に、所定の状態として判定する使用者の状態の種類やその判定の方法等が記載されていると認められるところ、例えば、段落【0092】には、「制御部42は、検出部60により検出された使用者の状態に基づいて可動部制御が可能である。」と記載されているが、具体的にどのような使用者の状態を検出した場合に、どのように可動部を制御するかについては、何ら記載されていない。加えて、段落【0092】の「第2実施形態に係る電動家具・・・本実施形態に係る電動家具320も、可動部70、検出部60及び制御部42を含む」という記載によると、第2実施形態においては、第1実施形態と同様の制御部42を含むものであることが前提と解されるところ、第1実施形態における、制御部42による可動部70の制御は、段落【0054】、【0086】等に記載された、第2操作受付部25が操作を受け付けると、記憶部48に記憶された使用者の所定の状態に対応した状態(例えば、入眠または睡眠)となるように可動部70を駆動する制御であるから、「検出部60により検出された使用者の状態に基づいて可動部70を動かす可動部制御」は、第1実施形態と同様の、第2操作受付部25が操作を受け付けたときに、使用者の所定の状態に対応した状態となるように可動部70を動かす制御を指しているものと解するのが相当である。そうすると、第2実施形態を記載した箇所においても、使用者の状態が覚醒から入眠又は睡眠に変化したと判定されたときに、他の操作等によらずに自動的に、ベッド面を制御可能な最低の高さにすることについて、記載も示唆も見いだせない。 さらに、原出願の当初明細書等のその他の記載を参酌しても、このような記載や示唆は見いだせない。 したがって、本願の明細書等(【請求項1】、段落【0005】)の使用者の状態が覚醒から入眠又は睡眠に変化したと判定されたときに、ベッド面を制御可能な最低の高さにすることについては、少なくとも原出願の当初明細書等に記載されていない事項を含むものであり、分割出願の実体的要件を満たさないことになるから、本願の出願日は原出願の出願日に遡及せず、令和2年9月18日と認められる。 2 引用文献1 (1)引用文献1の記載 当審が通知した拒絶の理由で引用され、本願の出願日前である平成30年11月29日に公開された引用文献1(特開2018−187022号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、引用文献1は、原出願の公開公報(特開2018−187021号公報)とは異なる文献である。 ア 記載事項 「【0009】 (第1実施形態) ・・・」 「【0011】 この例では、電動家具310は、電動ベッドである。電動ベッドは、可動部70を有する。可動部70は、例えば、背ボトム70a、膝ボトム70b、脚ボトム70c及び高さ変更部70d(例えばベッド昇降機)などを含む。背ボトム70a、膝ボトム70b及び脚ボトム70cにおいて、互いの角度は変更可能である。背ボトム70aの動作により、使用者の背の角度が変更可能である。膝ボトム70bと脚ボトム70cとの間の角度の変更により、膝の角度が変更可能である。これらの角度は、連動して変化しても良い。高さ変更部70dは、例えば、床面とベッド面との間の距離(高さ)を変更可能である。高さ変更部70dは、ベッドの頭側の高さと、ベッドの足側の高さと、独立して変更できても良い。これにより、ベッド面の全体の傾斜が変更できる。これらの可動部70には、例えばアクチュエータなどが用いられる。可動部70の動作により、「背上げ」、「膝上げ」、「高さ調整」及び「傾斜」などの少なくともいずれかが可能である。「傾斜」は、ローリング及びチルトの少なくともいずれかを含む。」 「【0034】 例えば、上記のように、第1操作受付部20または第2操作受付部25が制御操作を受け付けると可動部70が動く。これは、手動動作である。実施形態においては、第1操作受付部20または第2操作受付部25が制御操作を受け付けなくても、検出部により検出された使用者の状態に基づいて、可動部70が動く。すなわち、電動家具310に制御部42(図1(a)参照)が設けられる。制御部42は、検出部により検出された使用者の状態に基づいて被制御部70C(この例では、可動部70)を制御する。すなわち、制御部42は、検出部により検出された使用者の状態に基づいて可動部70を動かす「可動部制御」が可能である。これにより、操作がより簡単になる。使い易さを向上できる電動家具が提供できる。」 「【0054】 一方、例えば、検出部60(この例では駆動部72)により、使用者の状態が検出される。検出部60で検出された使用者の状態に対応する信号が、制御部42に供給される。検出された使用者の状態が、所定の状態であるかどうかが、制御部42で判断(推定)される。例えば、検出部60で検出された使用者の状態が所定の状態である場合、制御部42は、記憶部48に記憶された可動部情報に基づいて可動部70を動かす。例えば、使用者の状態が所定の状態(例えば、睡眠など)であると判断されると、可動部70が睡眠に適した状態に向けて動く。 【0055】 例えば、使用者の状態が睡眠である場合、ベッド面が高いと使用者がベッド面から落下すると危険である。使用者の状態が睡眠である場合に、ベッド面を低くすることで、使用者はより安全になる。 【0056】 例えば、多くの患者(または非介護者)を収容している病院などの施設がある。このような施設において、睡眠時の安全を確保するためにベッド面を低くする作業を、看護師または介護者が行うと、非常に大きな労力となる。 【0057】 実施形態においては、例えば、使用者の状態が睡眠であるときに、それを判断して、ベッド面が自動で低くなる。これにより、看護師または介護者の負担が軽減する。」 「【0060】 使用者の状態の検出は、検出部60で行われる。検出された状態が所定の状態であるかどうかの判断(推定)は、例えば、制御部42で行われる。検出された状態が所定の状態であるかどうかの判断(推定)の少なくとも一部は、検出部60及び記憶部48の少なくとも一部で行われても良い。 【0061】 検出部60(例えば、駆動部72である荷重センサ付きアクチュエータ)により、使用者の状態が検出される。そして、検出結果が特定の状態かどうかが判断される。 【0062】 電動家具310が、電動ベッドの場合、この特定の状態は、例えば、起き上がり、端座位、離床、入眠、睡眠、及び覚醒などの1つである。例えば、検出部60が、荷重センサ付きの複数のアクチュエータである場合、複数の荷重センサのそれぞれに加わる荷重から、使用者が、起き上がり、端座位、離床、入眠、睡眠、覚醒などのいずれかの状態であることが判断(推定)できる。」 「【0069】 図4(a)〜図4(d)は、第1実施形態に係る電動家具の状態を例示する模式図である。 これらは、電動家具310が電動ベッドであるときの例である。 図4(a)に示す例では、ベッド面の高さが低い。例えば、特に、高齢者などが使用者である場合において、使用者の状態が入眠(または睡眠)であるときにベッド面が高いと、使用者が寝ている間にベッドから落ちると危険である。ベッド面を低くすることで、より安全になる。使用者状態が睡眠であるときに、可動部70(高さ変更部70d)は、ベッド面が低いこのような状態となる。このように、制御部42は、使用者の状態が睡眠状態であるときに、高さ変更部70dの高さを下げる。ベッド面の高さは、例えば、制御可能な最低の高さとされる。」 「【0079】 上記のように、実施形態においては、検出部60により検出された使用者の状態に基づいて、可動部70が自動的に(手動ではなく)動く。このとき、自動で動く可動部70などに使用者が挟まれると危険である。このため、例えば、以下のような安全を確保する手段が設けられても良い。」 「【0087】 (第2実施形態) 図7は、第2実施形態に係る電動家具を例示する模式的斜視図である。 図7に示すように、本実施形態に係る電動家具320も、可動部70、検出部60及び制御部42を含む。この例においても、検出部60は、使用者の状態を検出する。制御部42は、検出部60により検出された使用者の状態に基づいて可動部70を動かす可動部制御が可能である。本実施形態においては、検出部60として、身体検知器63が設けられる。身体検知器63は、使用者の身体の位置を検出できる。身体検知器63として、例えば、画像センサ(例えばカメラ)などを用いることができる。画像センサは、使用者、電動家具320、及び、その周囲の画像を取得する。この画像に基づいて、使用者の身体の位置と、電動家具320の位置と、の相対的な関係を検知できる。身体検知器63の検知結果(出力信号)が制御部42に供給される。」 「【0094】 離床センサ61、センサ62及び身体検知器63(画像センサ)は、検出部60の例である。検出部60は、種々の変形が可能である。 【0095】 以下、センサ62のいくつかの例について説明する。」 「【0101】 例えば、使用者81の状態に応じた振動が、センサ部62bに加わる。振動は、例えば、使用者81の体動に応じている。振動がセンサ部62bにおいて検出される。振動は、音を含んでも良い。 【0102】 例えば、振動検出手段(センサ部62b)と、処理部(回路部62a及び制御部42の少なくともいずれかの少なくとも一部)と、が設けられる。処理部は、例えば、コンピュータを含む。振動検出手段は、例えば、寝具(ベッド70)上の就寝者(使用者81)の振動を検出する。処理部は、例えば、活動量算出手段と、睡眠判定値算出手段と、睡眠状態判定手段と、を含む。これらの手段は、機能的に分けられている。活動量算出手段は、例えば、振動検出手段により検出された振動に基づいて、就寝者の活動量をサンプリング単位時間毎に算出する。睡眠判定値算出手段は、例えば、第1時刻(例えば、現在の時刻)の活動量と、第2時刻(例えば現在の時刻以前の時刻)に算出した活動量と、に、時間に応じて重み付けした補正係数を乗じた値の総和を睡眠判定値として算出する。睡眠状態判定手段は、例えば、睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定する。」 イ 図面 図1 「 」 図4 「 」 図7 「 」 (2)認定事項 ア 段落【0009】の「第1実施形態」という記載、段落【0087】の「第2実施形態に係る電動家具・・・本実施形態に係る電動家具320も、可動部70、検出部60及び制御部42を含む。この例においても、検出部60は、使用者の状態を検出する。制御部42は、検出部60により検出された使用者の状態に基づいて可動部70を動かす可動部制御が可能である。」という記載より、第2実施形態における「使用者の状態に基づいて可動部70を動かす可動部制御」は、第1実施形態と同様の制御と認められる。 イ 段落【0060】の「使用者の状態の検出は、検出部60で行われる。検出された状態が所定の状態であるかどうかの判断(推定)は、例えば、制御部42で行われる。」という記載、段落【0061】の「検出部60・・・により、使用者の状態が検出される。そして、検出結果が特定の状態かどうかが判断される。」という記載、及び段落【0062】の「この特定の状態は、例えば、起き上がり、端座位、離床、入眠、睡眠、及び覚醒などの1つである。」という記載より、第1実施形態において、制御部42が、検出部60で検出された使用者の状態が入眠、睡眠、覚醒などの所定の状態ないし特定の状態であるかどうかを判定するものと認められる。 このことと、上記アより、第2実施形態において、検出部60で検出された使用者の状態が入眠状態、睡眠状態、または覚醒状態であるかどうかを判定する制御部42を有する構成を認定することができる。 ウ 段落【0069】の「制御部42は、使用者の状態が睡眠状態であるときに、高さ変更部70dの高さを下げる。ベッド面の高さは、例えば、制御可能な最低の高さとされる。」という記載、段落【0102】の「睡眠状態判定手段は、例えば、睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定する。」という記載、及び上記アより、第2実施形態において、睡眠状態判定手段により、使用者の状態が睡眠状態と判定されたときに、ベッド面の高さは制御可能な最低の高さとされる構成を認定することができる。 エ 段落【0094】の「離床センサ61、センサ62及び身体検知器63(画像センサ)は、検出部60の例である。」という記載、段落【0095】の「以下、センサ62のいくつかの例について説明する。」という記載、段落【0101】の「使用者81の状態に応じた振動が、センサ部62bに加わる。振動は、例えば、使用者81の体動に応じている。振動がセンサ部62bにおいて検出される。」という記載、及び段落【0102】の「振動検出手段(センサ部62b)」という記載より、第2実施形態において、振動検出手段ないしセンサ部62bを検出部60としていることが理解できる。そして、検出部60は、使用者81の状態に応じた振動を検出する構成を認定することができる。 オ 段落【0102】の「振動検出手段(センサ部62b)と、処理部(回路部62a及び制御部42の少なくともいずれかの少なくとも一部)と、が設けられる。」という記載より、処理部は制御部42であることが理解できる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)より、引用文献1には、第2実施形態に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明> 「電動ベッドであって、 床面とベッド面との間の距離(高さ)を変更可能であり、 検出部60で検出された使用者の状態が入眠状態、睡眠状態、または覚醒状態であるかどうかを判定する制御部42を有し、 検出部60は、使用者81の状態に応じた振動を検出し、 制御部42は、活動量算出手段と、睡眠判定値算出手段と、睡眠状態判定手段と、を含み、 活動量算出手段は、検出部60により検出された振動に基づいて、就寝者の活動量を算出し、 睡眠判定値算出手段は、第1時刻の活動量と、第2時刻に算出した活動量と、に、時間に応じて重み付けした補正係数を乗じた値の総和を睡眠判定値として算出し、 睡眠状態判定手段は、睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定し、 睡眠状態判定手段により、使用者の状態が睡眠状態と判定されたときに、ベッド面の高さは制御可能な最低の高さとされる、電動ベッド。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「電動ベッド」は、本願発明の「電動ベッド」に相当し、以下同様に、「床面」は「床面」に、「ベッド面」は「ベッド面」に、「検出部60」は「検出部」に、「制御部42」は「処理部」に、「活動量算出手段」は「活動量算出手段」に、「睡眠判定値算出手段」は「睡眠判定値算出手段」に、「睡眠状態判定手段」は「睡眠状態判定手段」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「使用者」、「使用者81」、「就寝者」はいずれも、本願発明の「使用者」に相当する。 そして、上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 (2)引用発明の「電動ベッドであって、床面とベッド面との間の距離(高さ)を変更可能であり」という構成は、本願発明の「床面に対するベッド面の高さが変更可能な電動ベッドにおいて」という構成に相当する。 (3)引用発明の「検出部60で検出された使用者の状態が入眠状態、睡眠状態、または覚醒状態であるかどうかを判定する制御部42を有し」という構成は、本願発明の「検出部で検出された検出結果により使用者の状態が覚醒状態か入眠状態または睡眠状態かを判定する処理部を有し」という構成に相当する。 (4)引用発明の「検出部60は、使用者81の状態に応じた振動を検出し」という構成は、本願発明の「前記検出部は、前記使用者の状態に応じた振動を検出し」という構成に相当する。 (5)引用発明の「制御部42は、活動量算出手段と、睡眠判定値算出手段と、睡眠状態判定手段と、を含み、活動量算出手段は、検出部60により検出された振動に基づいて、就寝者の活動量を算出し、睡眠判定値算出手段は、第1時刻の活動量と、第2時刻に算出した活動量と、に、時間に応じて重み付けした補正係数を乗じた値の総和を睡眠判定値として算出し、睡眠状態判定手段は、睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定し」という構成は、本願発明の「前記処理部は、前記検出部により検出された振動に基づいて、前記使用者の活動量を算出する活動量算出手段と、前記活動量算出手段により第1時刻に算出された活動量と、前記活動量算出手段により第2時刻に算出された活動量と、に基づいて睡眠判定値を算出する睡眠判定値算出手段と、前記睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定する睡眠状態判定手段と、を含」むという構成に相当する。 (6)上記(1)〜(5)より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「床面に対するベッド面の高さが変更可能な電動ベッドにおいて、 検出部で検出された検出結果により使用者の状態が覚醒状態か入眠状態または睡眠状態かを判定する処理部を有し、 前記検出部は、前記使用者の状態に応じた振動を検出し、 前記処理部は、 前記検出部により検出された振動に基づいて、前記使用者の活動量を算出する活動量算出手段と、 前記活動量算出手段により第1時刻に算出された活動量と、前記活動量算出手段により第2時刻に算出された活動量と、に基づいて睡眠判定値を算出する睡眠判定値算出手段と、 前記睡眠判定値が所定の閾値を超えた場合には覚醒状態と判定し、それ以外の場合には睡眠状態と判定する睡眠状態判定手段と、 を含む、電動ベッド。」 <相違点> 本願発明は、「前記睡眠状態判定手段により、前記使用者の状態が前記覚醒状態から前記入眠状態または前記睡眠状態に変化したと判定されたときには、前記ベッド面を前記床面に対して最低の高さにする」構成であるのに対し、引用発明は、「睡眠状態判定手段により、使用者の状態が睡眠状態と判定されたときに、ベッド面の高さは制御可能な最低の高さとされる」構成である点。 4 判断 上記相違点について検討する。 引用発明の「睡眠状態判定手段により、使用者の状態が睡眠状態と判定されたときに、ベッド面の高さは制御可能な最低の高さとされる」構成では、使用者の状態が睡眠状態と判定されたときにベッド面の高さを最低の高さとするものであり、使用者の状態が睡眠状態以外の状態である場合には最低高さとしないことは明らかであるから、使用者の状態が睡眠状態以外の状態、例えば覚醒状態から、睡眠状態に変化したときに、ベッド面の高さを最低の高さとするものであることも自明である。そうすると、引用発明の上記構成は、本願発明の文言を用いると、「睡眠状態判定手段により、使用者の状態が覚醒状態から睡眠状態に変化したと判定されたときには、ベッド面を床面に対して最低の高さにする」構成といえる。 また、引用発明は、「検出部60で検出された使用者の状態が入眠状態、睡眠状態、または覚醒状態であるかどうかを判定する制御部42を有」するものであるから、使用者の状態が覚醒状態から入眠状態へ変化することを判定可能である。 さらに、引用文献1の段落【0069】には、「使用者の状態が入眠(または睡眠)であるときにベッド面が高いと、使用者が寝ている間にベッドから落ちると危険である。ベッド面を低くすることで、より安全になる。」と記載されている。 してみると、引用発明において、使用者の状態が入眠であるときにもベッド面が低くなるように、睡眠状態判定手段により、使用者の状態が覚醒状態から入眠状態に変化したと判定されたときにも、ベッド面の高さは制御可能な最低の高さとされる構成として、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 よって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2023-03-06 |
結審通知日 | 2023-03-07 |
審決日 | 2023-03-22 |
出願番号 | P2020-157293 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61G)
P 1 8・ 55- WZ (A61G) P 1 8・ 03- WZ (A61G) P 1 8・ 537- WZ (A61G) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
大谷 光司 八木 誠 |
発明の名称 | 電動ベッド |
代理人 | 日向寺 雅彦 |