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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1397626
総通号数 18 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-20 
確定日 2023-05-17 
事件の表示 特願2019−531926「半導体構成素子を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日国際公開、WO2018/109193、令和 2年 1月23日国内公表、特表2020−502796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年(平成28年)12月16日 独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 7月11日 :国際出願翻訳文提出書の提出
令和2年 9月23日付け:拒絶理由通知書
令和3年 2月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 8月31日付け:拒絶査定
令和3年12月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 6月20日 :上申書の提出

第2 令和3年12月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「半導体構成素子(10)を製造する方法であって、
−第1の横方向熱膨張係数を有する補助支持体(40)を、半導体本体(20)の第1の側(27)に被着させるステップと、
−第2の横方向熱膨張係数を有する接続支持体(60)を、前記補助支持体(40)とは反対側の、前記半導体本体(20)の第2の側(28)に被着させるステップと、を含み、
前記接続支持体(60)は、集積回路を有し、
−前記半導体本体(20)は、前記補助支持体(40)とは異なる成長基板(30)上で成長し、
−前記第1および第2の横方向熱膨張係数は、ほぼ等しく
−前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に除去され、
−前記成長基板(30)は、前記半導体本体(20)の成長中に当該半導体本体(20)の前記第1の側(27)に配置されており、
−前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に前記半導体本体(20)の第1の側(27)から除去される、半導体構成素子(10)を製造する方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年2月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「半導体構成素子(10)を製造する方法であって、
−第1の横方向熱膨張係数を有する補助支持体(40)を、半導体本体(20)の第1の側(27)に被着させるステップと、
−第2の横方向熱膨張係数を有する接続支持体(60)を、前記補助支持体(40)とは反対側の、前記半導体本体(20)の第2の側(28)に被着させるステップと、を含み、
−前記半導体本体(20)は、前記補助支持体(40)とは異なる成長基板(30)上で成長し、
−前記第1および第2の横方向熱膨張係数は、最大で50%異なり、
−前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に除去される、半導体構成素子(10)を製造する方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「接続支持体(60)」について、「集積回路を有し」と限定し、「第1の横方向熱膨張係数」と「第2の横方向熱膨張係数」の関係について、「最大で50%異なり」とあったものを「ほぼ等しく」とし、「補助支持体(40)」が被着される半導体本体(20)の「第1の側(27)」について、「前記成長基板(30)は、前記半導体本体(20)の成長中に当該半導体本体(20)の前記第1の側(27)に配置されており、前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に前記半導体本体(20)の第1の側(27)から除去される」と、「成長基板(30)」が配置される側であることを限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2002−261335号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【請求項9】 複数の発光素子が配列され所要の画像信号に対応して画像を表示する画像表示装置の製造方法において、所要の配線をマトリクス状に配設した配線用基板を用意すると共に、個別のチップに分離された一個の素子占有面積が25μm2以上で10000μm2以下とされる複数の発光素子を用意し、該発光素子を前記配線に接続するように実装して画像表示装置を構成することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項10】 所要の素子形成用基板上に半導体層を積層し、該半導体層に前記複数の発光素子を並べて形成した後、各発光素子毎に分離し、その分離した各発光素子を前記配線用基板に実装することを特徴とする請求項9記載の画像表示装置の製造方法。」

「【0027】図1は第1の実施例の画像表示装置の要部のレイアウトを示す図であり、図1では垂直水平方向に2画素分ずつの要部を図示している。本実施例の画像表示装置では、配線用基板1の主面上に水平方向に延在された複数本のアドレス線ADD0、ADD1が形成され、さらに図示しない層間絶縁膜を介して垂直方向に延在された複数本のデータ線DLR0〜DLB1が形成されている。配線用基板1は例えばガラス基板や、合成樹脂又は絶縁層で被覆された金属基板、或いはシリコン基板等の半導体製造に汎用な基板であり、アドレス線やデータ線を求められる精度で形成可能な基板であればどのような基板であっても良い。」

「【0158】例6
本例は2回転写用基板を用いて実装する例であり、本例を図50乃至図54を参照しながら説明する。
【0159】図50に示すように、成長用基板336上には発光素子を構成するように、下地成長層332上に六角錐状の結晶成長層333が形成され、結晶成長層333上にはp電極334が下地成長層332上には更にn電極が形成され、p電極334と高さを同程度とするためのバンプ335が形成されている。成長用基板336上には発光素子は配線用基板の電極ピッチに合わせて離間している。この成長用基板336は転写用基板330と対向するように保持され、成長用基板336の裏面からレーザー光を照射することで、発光素子は素子ごと分離され、転写用基板330に転写される。転写用基板330にはこの時シリコーン樹脂などからなる転写材331が形成されていて、この転写材331により、発光素子は素子ごとに保持される。
【0160】次に、図51に示すように、Ga層の除去により、転写用基板330に光取出し面が外側となる形で保持され、さらに図52に示すように、転写材340が上面に塗布された第2の転写用基板341が貼り合わせられる。この場合において、転写材340は例えば紫外線硬化型粘着材であり、第2の転写用基板341はガラスもしくは石英ガラスである。
【0161】次に、最初の転写用基板330が剥がされることで、図53に示すように、発光素子は第2の転写用基板341に転写される。
【0162】そして図54に示すように、配線用基板342の主面には電極層343、344が所要のピッチで形成されているところで、第2の転写用基板341と配線用基板342が対向して保持された、配線用基板の電極ピッチに合わせてレーザービームが照射される。成長用基板328の裏面からレーザー光を照射することで、転写材340のアブレーションにより発光素子は素子ごと分離され、配線用基板342に保持される。この転写はレーザービームの照射が電極ピッチに合わせた選択的なものであるために、成長用基板328上の全部の発光素子が分離するわけではなく、配線用基板の電極ピッチに合わせた単色の素子だけが確実に転写される。この工程を他の波長の素子に対して繰り返し、配線用基板342上の接着剤345を硬化させて画像表示装置が完成する。なお、転写材340のアブレーションの残さが発光素子裏面に付着しているときは洗浄もしくは研磨の工程を付加する。」

「図1


「図50


「図51


「図52


「図53


「図54



イ 上記アの【請求項10】及び【0159】より、「素子形成用基板」は、「成長用基板336」であると認められる。

ウ 以上より、引用文献には、例6(図50〜54)に係る2回転写用基板を用いて複数の発光素子を配線用基板に実装する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。
また、上記アの【0162】には、「成長用基板328の裏面からレーザー光を照射することで、転写材340のアブレーションにより発光素子は素子ごと分離され、配線用基板342に保持される」と記載されているところ、「転写材340」は「第2の転写用基板341」の上面に塗布されたものである(【0160】)ことを踏まえると、上記記載中の「成長用基板328」が、「第2の転写用基板341」の誤記であることは明らかであるから、そのように認めて、引用発明を認定する。

<引用発明>
「複数の発光素子が配列され所要の画像信号に対応して画像を表示する画像表示装置の製造方法において、
所要の配線をマトリクス状に配設した配線用基板を用意すると共に、個別のチップに分離された一個の素子占有面積が25μm2以上で10000μm2以下とされる複数の発光素子を用意し、該発光素子を前記配線に接続するように実装して画像表示装置を構成し、(【請求項9】)
所要の素子形成用基板上に半導体層を積層し、該半導体層に前記複数の発光素子を並べて形成した後、各発光素子毎に分離し、その分離した各発光素子を前記配線用基板に実装し、(【請求項10】)
配線用基板は、ガラス基板や、合成樹脂又は絶縁層で被覆された金属基板、或いはシリコン基板等の半導体製造に汎用な基板であり、(【0027】)
素子形成用基板は、成長用基板336であり、(上記イ)
成長用基板336上には発光素子を構成するように、下地成長層332上に六角錐状の結晶成長層333が形成され、
成長用基板336は転写用基板330と対向するように保持され、
成長用基板336の裏面からレーザー光を照射することで、発光素子は素子ごと分離され、転写用基板330に転写され、転写用基板330に光取出し面が外側となる形で保持され、(【0159】・【0160】)
転写材340が上面に塗布された第2の転写用基板341が貼り合わせられ、第2の転写用基板341はガラスもしくは石英ガラスであり、(【0160】)
最初の転写用基板330が剥がされることで、発光素子は第2の転写用基板341に転写され、(【0161】)
第2の転写用基板341と配線用基板342が対向して保持され、
第2の転写用基板341の裏面からレーザー光を照射することで、転写材340のアブレーションにより発光素子は素子ごと分離され、配線用基板に保持される、(【0162】)
画像表示装置の製造方法。(【請求項9】・【請求項10】)」

(3)本件補正発明と引用発明の対比・判断
ア 対比(一致点及び相違点)
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)本件補正発明の「第1の横方向熱膨張係数を有する補助支持体(40)を、半導体本体(20)の第1の側(27)に被着させるステップ」との特定事項について
引用発明の「発光素子」は、「所要の素子形成用基板上に半導体層を積層し、該半導体層に前記複数の発光素子を並べて形成した」ものであり、「成長用基板336の裏面からレーザー光を照射することで、」「素子ごと分離され、転写用基板330に転写され」、「転写用基板330に光取出し面が外側となる形で保持され」る。そして、当該「転写用基板330」に、「転写材340が上面に塗布された第2の転写用基板341が貼り合わせられ」、「最初の転写用基板330が剥がされることで」、当該「発光素子」は、「第2の転写用基板341に転写され」ている。
そうすると、引用発明の「第2の転写用基板341」及び「発光素子」は、本件補正発明の「補助支持体(40)」及び「半導体本体(20)」に相当するといえ、上記の工程に照らせば、発光素子の素子形成用基板側(以下「形成基板側」という。)が、本件補正発明の「第1の側(27)」に相当し、引用発明は、本件補正発明の「補助支持体(40)を、半導体本体(20)の第1の側(27)に被着させるステップ」を備えるといえる。また、引用発明の「第2の転写用基板341」は、所定の横方向熱膨張係数を有するものであるから、当該「第2の転写用基板341の横方向熱膨張係数」は、本件補正発明の「第1の横方向熱膨張係数」に相当するといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。

(イ)本件補正発明の「第2の横方向熱膨張係数を有する接続支持体(60)を、前記補助支持体(40)とは反対側の、前記半導体本体(20)の第2の側(28)に被着させるステップ」との特定事項について
引用発明は、「第2の転写用基板341と配線用基板342が対向して保持され」、「第2の転写用基板341の裏面からレーザー光を照射することで、転写材340のアブレーションにより発光素子は素子ごと分離され、配線用基板342に保持される」との工程を備えている。
そうすると、引用発明の「配線用基板342」は、本件補正発明の「接続支持体(60)」に相当し、「形成基板側」と反対の側が、本件補正発明の「第2の側(28)」に相当し、引用発明は、本件補正発明の「接続支持体(60)を、前記補助支持体(40)とは反対側の、前記半導体本体(20)の第2の側(28)に被着させるステップ」を備えるといえる。また、引用発明の「配線用基板342」は、所定の横方向熱膨張係数を有するものであるから、当該「配線用基板342の横方向熱膨張係数」は、本件補正発明の「第2の横方向熱膨張係数」に相当するといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。

(ウ)本件補正発明の「前記接続支持体(60)は、集積回路を有し」との特定事項について
引用発明の「配線用基板342」は、集積回路を有しているか否か特定されてはいない。

(エ)本件補正発明の「前記半導体本体(20)は、前記補助支持体(40)とは異なる成長基板(30)上で成長し」との特定事項について
引用発明の「発光素子」は、「所要の素子形成用基板上に半導体層を積層し、該半導体層に前記複数の発光素子を並べて形成」しており、当該「素子形成用基板」は「成長用基板336」であるから、引用発明の「素子形成用基板(成長用基板336)」は、本件補正発明の「成長基板(30)」に相当し、引用発明の「前記半導体本体(20)」は、「第2の転写用基板341」と異なる「成長用基板336」上で成長したものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。

(オ)本件補正発明の「前記第1および第2の横方向熱膨張係数は、ほぼ等しく」との特定事項について
引用発明の「第2の転写用基板341」と「配線用基板342」との横方向熱膨張係数の関係は特定されていない。

(カ)本件補正発明の「前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に除去され」、「前記成長基板(30)は、前記半導体本体(20)の成長中に当該半導体本体(20)の前記第1の側(27)に配置されており」及び「前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に前記半導体本体(20)の第1の側(27)から除去される」との特定事項について
引用発明は、「成長用基板336上には発光素子を構成するように、下地成長層332上に六角錐状の結晶成長層333が形成され」との工程を備えており、引用発明の「素子形成用基板(成長用基板336)」は、「形成基板側」に配置されている。当該工程を踏まえると、引用発明は、「転写用基板330」を介した2回転写により、「発光素子」の「成長用基板336」が除去された側(形成基板側)に「第2の転写用基板341」が貼り合わせられるものと理解できる。
そうすると、引用発明の「素子形成用基板(成長用基板336)」は、「発光素子」の形成中に「発光素子」の「形成基板側」に配置されており、「第2の転写用基板341」の貼り合わせ前に除去されるものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。

(キ)本件補正発明の「半導体構成素子(10)を製造する方法」との特定事項について
引用発明は、「画像表示装置の製造方法」であるから、引用発明と本件補正発明の上記特定事項とは、「物品を製造する方法」である点で一致する。

(ク)以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「物品を製造する方法であって、
−第1の横方向熱膨張係数を有する補助支持体(40)を、半導体本体(20)の第1の側(27)に被着させるステップと、
−第2の横方向熱膨張係数を有する接続支持体(60)を、前記補助支持体(40)とは反対側の、前記半導体本体(20)の第2の側(28)に被着させるステップと、を含み、
−前記半導体本体(20)は、前記補助支持体(40)とは異なる成長基板(30)上で成長し、
−前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に除去され、
−前記成長基板(30)は、前記半導体本体(20)の成長中に当該半導体本体(20)の前記第1の側(27)に配置されており、
−前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に前記半導体本体(20)の第1の側(27)から除去される、物品を製造する方法。」

<相違点1>
「前記接続支持体(60)」について、本件補正発明は、「集積回路」を有しているのに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

<相違点2>
「横方向熱膨張係数」について、本件補正発明は、「前記第1および第2の横方向熱膨張係数は、ほぼ等しく」と特定するのに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

<相違点3>
「物品」について、本件補正発明は、「半導体構成素子(10)」であるのに対し、引用発明は、「画像表示装置」である点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
引用発明は「複数の発光素子が配列され所要の画像信号に対応して画像を表示する画像表示装置」の製造方法であるところ、発光素子を配列する基板が、当該発光素子を駆動するために「集積回路」を有することは周知技術(例えば、特表2015−524623号公報の【0024】、特開2007−266593号公報の【0004】、特開2001−267578号公報の【0011】参照)であり、引用発明により製造される画像表示装置が駆動回路を備えていることは明らかであるから、引用発明に当該周知技術を適用し、引用発明の「配線用基板342」が「集積回路」を有するよう構成することは、当業者が容易になし得たことといえる。

(イ)相違点2について
引用発明の「第2の転写用基板341」は「ガラスもしくは石英ガラス」であり、「配線用基板」は「ガラス基板や、合成樹脂又は絶縁層で被覆された金属基板、或いはシリコン基板等の半導体製造に汎用な基板」である。そうすると、引用発明は、「第2の転写用基板341」及び「配線用基板」として、両者が「ガラス」であるものを含むものである。
よって、上記相違点2は実質的な相違とは認められない。
仮に、そこまではいえないとしても、転写工程における各基板の熱膨張係数をほぼ等しくすることにより、製造工程中の熱変化による影響を抑制することは周知技術(例えば、特開平11−250795号公報の【0045】、特開2003−162231号公報の【0022】、特開2012−230969号公報の【0068】参照)であるところ、引用発明も複数の発光素子を転写して配列するものであるから、引用発明が、製造工程中の熱変化による影響との課題を有していることは明らかであり、引用発明に当該周知技術を適用する動機はあるといえる。
よって、引用発明に当該周知技術を適用し、引用発明の「第2の転写用基板341」及び「配線用基板」の横方向熱膨張係数をほぼ等しく構成して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。

(ウ)相違点3について
引用発明は、「画像表示装置の製造方法」であるところ、当該「画像表示装置」は、「複数の発光素子」が「配線用基板342に保持される」ものであり、当該「発光素子」は、「素子形成用基板上に半導体層を積層し、該半導体層に前記複数の発光素子を並べて形成した」ものであるから、半導体の発光素子であると理解できる。
そうすると、引用発明により製造される「画像表示装置」は、複数の半導体発光素子を配線用基板に保持したものと解されるから、半導体構成の物品ということに差し障りはない。そして、そのような物品を「装置」と呼ぶか「素子」と呼ぶかは、単に呼称の問題にすぎないものと解される。
よって、相違点3に係る本件補正発明の構成は、実質的な相違ではない。

(エ)本件補正発明の効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(オ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書及び上申書にて、ガラス基板に集積回路を組み込んだ先行技術は存在せず、特開2007−266593号公報には、集積回路を内蔵したガラス基板は記載されていない旨主張している。
しかしながら、本件補正発明は、「前記接続支持体(60)は、集積回路を有し」と特定するものであり、ガラス板上にTFTが形成された基板は、当該特定事項を満たすものと解される。このことは、本願の発明の詳細な説明に「本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、接続支持体は集積回路を有する。例えば、接続支持体は、シリコン基板上もしくはその内部に電子制御機器を有することができる」(【0032】)と記載されており、当該「シリコン基板上もしくはその内部」との記載は、上記の理解に沿うものといえる。
よって、請求人の上記主張は、本件補正発明に特定される構成に基づかない主張であり、上記判断を左右するものではない。

ウ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年12月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年2月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由により特許を受けることができない、というものを含むものである。
(1)(明確性要件違反)この出願は、請求項1の「第1および第2の横方向熱膨張係数は、最大で50%異なり」との記載が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)(新規性欠如)この出願の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(3)(進歩性欠如)この出願の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

特開2002−261335号公報

3 判断
(1)理由1(明確性要件違反)について
本願の請求項1には、「第1および第2の横方向熱膨張係数は、最大で50%異なり」と記載されているところ、第1および第2の横方向熱膨張係数のとりうる範囲が不明である。
例えば、「第1の横方向熱膨張係数」を「1.0」とする。その上で、(i)「第1の横方向熱膨張係数」を基準とすると、「最大で50%異な」る「第2の横方向熱膨張係数」は、「0.5〜1.5」((1.0×0.5)/1.0〜(1.0×1.5)/1.0)となり、(ii)「第2の横方向熱膨張係数」を基準とすると、「最大で50%異な」る「第2の横方向熱膨張係数」は、「0.67〜2」(1.0/(1.0×1.5)〜1.0/(1.0×0.5))となる。このように、第1および第2の横方向熱膨張係数のどちらを基準にするかによって、第1および第2の横方向熱膨張係数のとりうる範囲が変わってくるため、第1および第2の横方向熱膨張係数のとりうる範囲がわからず不明である。
よって、本願発明は、明確でない。

(2)理由2(新規性欠如)及び理由3(進歩性欠如)について
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献(特開2002−261335号公報)の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

イ 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、(i)「接続支持体(60)」に係る「集積回路を有し」との限定事項を削除し、(ii)「第1および第2の横方向熱膨張係数」について、「ほぼ等しく」を「最大で50%異なり」とし、(iii)半導体本体(20)の「第1の側(27)」に係る「−前記成長基板(30)は、前記半導体本体(20)の成長中に当該半導体本体(20)の前記第1の側(27)に配置されており、−前記成長基板(30)は、前記補助支持体(40)の被着前に前記半導体本体(20)の第1の側(27)から除去される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに当該発明特定事項を限定したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、上記第2の[理由]2(3)を参酌して、本願発明と引用発明とを対比すると、両者に実質的な相違は認められないから、本願発明は、引用文献に記載された発明である。
よって、本願発明は、引用文献に記載された発明であると供に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができず、特許法29条第2項及び特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬川 勝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-11-30 
結審通知日 2022-12-06 
審決日 2022-12-21 
出願番号 P2019-531926
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
吉野 三寛
発明の名称 半導体構成素子を製造する方法  
代理人 上島 類  
代理人 前川 純一  
代理人 永島 秀郎  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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