• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1398095
総通号数 18 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-09-01 
確定日 2023-05-30 
事件の表示 特願2021−182242「データ出力コンピュータ、データ出力システム、データ出力方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年11月9日の出願であって、令和4年3月3日付けで拒絶理由が通知され、令和4年4月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和4年7月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和4年9月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、令和5年2月6日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、令和5年2月24日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和4年7月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 (進歩性)本願請求項1、3−6に係る発明は、以下の引用文献A、C−Dに基づいて、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献A−Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2007−288349号公報
B.特開2008−33764号公報
C. 特開2000−66857号公報
D.特開2000−181651号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 (明確性)請求項1−7に係る発明は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 (進歩性)本願請求項1、3−7に係る発明は、以下の引用文献1−2に基づいて、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1−3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2000−66857号公報(拒絶査定時の引用文献C)
2.特開2007−310432号公報(当審において新たに引用された文献)
3.特開2008−33764号公報(拒絶査定時の引用文献B)

第4 本願発明
本願請求項1−5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明5」という。)は、令和5年2月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−5に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「所定の第1対象データと、第2対象データとを一の出力媒体に纏めて出力するデータ出力システムであって、
前記第1対象データの出力指示を行う第1出力指示部と、
前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を配置情報と共に行う第2出力指示部と、
前記第1対象データの出力指示と前記第2対象データの出力指示を受け取り、前記第1対象データと、前記第2対象データと、前記配置情報とに基づいて、前記第1対象データと前記第2対象データとが統合されたデータ出力結果を出力する出力部と、を備え、
前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行うデータ出力システム。」

なお、本願発明2−5の概要は以下のとおりである。
本願発明2−3は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明4、5は、それぞれ本願発明1に対応するデータ出力方法、コンピュータ読み取り可能なプログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

ア 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は印刷装置に係り、特に印刷データをラスタライズ処理するよりも速いスピードで印刷できる高速印刷が可能な高速の印刷装置に関する。」

イ 【図2】





ウ 段落【0019】−【0021】
「【0019】図2において、30は印刷要求や印刷データを入力する入力部であって、例えば印刷要求を発生させるユーザアプリケーション33及び図示省略したキーボードの如き入力手段を有し、印刷部分をサーバで実行するときには、クライアントとして機能するもので構成することができる。なお入力された印刷データは、これをラスタ制御部31に出力するとき、識別フラグを付して定型部分、準定型部分、真可変部分を表現している。勿論これらの識別は識別フラグではなく、出力タイミングにより行うこともできる。
【0020】31はラスタ制御部であって、印刷データのラスタライズやページデータの制御を行うコンポーネントであり、入力部30から転送された印刷データをラスタライズ処理するRIP(Raster Imaging Processor)で構成されるラスタ処理部34や、印刷データを定型部分か、準定型部分か、真可変部分かを識別する識別部35、ラスタライズ処理された2値データを、例えばランレングス法の如き可逆圧縮処理したり、圧縮されたものを元に復元する圧縮復元部36、転送された印刷データのうち頻繁に現れる文章や図などを格納しておくオーバレイ・ボリウム・データ保持部37を具備している。
【0021】32はプリント処理部であって、印刷データを図示省略したプリンタに対して印刷制御を行うものであり、転送されたラスタイメージの印刷データを組み合わせてページ単位の印刷用データを作成するイメージコンバータ38、印刷するページで使用される組み合わせ部分、つまりオーバレイのみを格納するオーバレイ・メモリ39、圧縮データを復元する復元部40等を具備している。」

エ 【図4】




オ 段落【0022】−【0029】
「【0022】本発明の動作を図4、図5に示すフローチャートにしたがって、図3に示すメイルを印刷する例について説明する。
S1.先ず印刷動作の開始において、オペレータはユーザ・アプリケーション33を起動し、図3(A)に示す文章と、同(B)に示す文章を入力する。このとき、ユーザは、図3(A)に示す文章のうち、定型部分については句点で終わる各文の最初にフラグF1 を記入しておき、その一部分に真可変部分が組み合わされる準定型部分についてはフラグF2 が記入する。そして図3(B)に示す如く真可変部分についてはフラグF3 を記入する。このようにして印刷データの定型部分にはフラグF1 が、準定型部分にはフラグF2 が、真可変部分にはフラグF3 が付加されて、印刷を求める印刷コマンドとともに入力部30からラスタ制御部31にこれらが伝達される。これによりラスタ制御部31では、そのコマンドが解読され、また識別部35が、前記フラグF1 〜F3 を認識して、印刷データの定型部分、準定型部分、真可変部分を識別する。

・・・(中略)・・・

【0024】S3.ラスタ制御部31は、このラスタライズした定型部分を前記保持と同時にプリント処理部32に1ページ分転送する。このようにして印刷データの定型部分のデータが可逆圧縮されて1ページ分プリント処理部32に転送される。

・・・(中略)・・・

【0028】S8.この判別の結果真可変部分が準定型部分にはみ出さないと認定されたとき、ラスタ処理部34はこの真可変部分のみをラスタライズし、圧縮復元部36により可逆圧縮したのち、プリント処理部32に転送する。
【0029】S9.前記S7において真可変部分が準定型部分にはみ出すと判断したとき、ラスタ制御部31は、このはみ出しによりページからはみ出した定型部分があるか否かを判断する。」

カ 【図5】




キ 段落【0036】−【0046】
「【0036】次に、このようにしてラスタ制御部31からプリント処理部32に印刷データが転送されたときのプリント処理部32の動作を、主として図5に基づき説明する。
【0037】S20.プリント処理部32は、ラスタ制御部31から転送された印刷データを受信し、例えばそのフラグにより定型部分が、準定型部分か、真可変部分か識別する。
【0038】S21.定型部分と準定型部分については、これを復元してオーバレイ・メモリ39に格納する。そして定型部分のみの1ページ分のデータについてはこれを図示省略したプリンタに送り印刷する。
【0039】S22.前記S20において、定型部分又は準定型部分でないと判断された印刷データは真可変部分であるから、プリント処理部32はこれを準定型部分と組み合わせるものか否かを判断する。

・・・(中略)・・・

【0041】S24.プリント処理部32は、これを準定型部分と組み合わせるべきものでないと判断したとき、この転送されたラスタデータとオーバレイ・メモリ39に保存しておいた定型部分と組み合わせてページデータを作成し、印刷する。

・・・(中略)・・・

【0046】
【発明の効果】本発明によれば下記の如きすぐれた効果を奏するものとすることができる。
(1)定型部分と準定型部分を予めプリント処理手段側に送っておき、ページ毎に真可変部分を処理してそれをプリント処理手段に送ることにより、プリント処理手段ではこれらを組み合わせて印刷するので、印刷データを高速プリンタの印刷性能を低下させることなく、高速に印刷することができる。」

(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「30は印刷要求や印刷データを入力する入力部であって、印刷部分をサーバで実行するときには、クライアントとして機能するもので構成することができ、
31はラスタ制御部であって、印刷データのラスタライズやページデータの制御を行うコンポーネントであり、ラスタ処理部34を具備し、
32はプリント処理部であって、印刷データをプリンタに対して印刷制御を行うものであり、
メイルを印刷する場合、
S3.ラスタ制御部31は、このラスタライズした定型部分を前記保持と同時にプリント処理部32に1ページ分転送し、
S8.この判別の結果真可変部分が準定型部分にはみ出さないと認定されたとき、ラスタ処理部34はこの真可変部分のみをラスタライズし、圧縮復元部36により可逆圧縮したのち、プリント処理部32に転送し、
S20.プリント処理部32は、ラスタ制御部31から転送された印刷データを受信し、例えばそのフラグにより定型部分が、準定型部分か、真可変部分か識別し、
S21.定型部分と準定型部分については、これを復元してオーバレイ・メモリ39に格納し、
S22.前記S20において、定型部分又は準定型部分でないと判断された印刷データは真可変部分であるから、プリント処理部32はこれを準定型部分と組み合わせるものか否かを判断し、
S24.プリント処理部32は、これを準定型部分と組み合わせるべきものでないと判断したとき、この転送されたラスタデータとオーバレイ・メモリ39に保存しておいた定型部分と組み合わせてページデータを作成し、印刷することによって、
定型部分と準定型部分を予めプリント処理手段側に送っておき、ページ毎に真可変部分を処理してそれをプリント処理手段に送ることにより、プリント処理手段ではこれらを組み合わせて印刷するので、印刷データを高速プリンタの印刷性能を低下させることなく、高速に印刷することができる、
印刷装置。」

2 引用文献2、引用文献3について
(1) 引用文献2には、以下の記載がある。
ア 段落【0068】
「【0068】
可変データ情報は、データベースのどのカラムのレコードが可変フィールドに差し込まれるかを示した情報である。配置情報は、可変フィールドの配置に関する情報である。配置情報は、原稿ページのどの位置に共有可変フィールドを配置するかを示した座標情報と、可変フィールドのサイズ情報を含む。また、可変フィールドを配置する位置は原稿ページのサイズによって相対的な位置(右揃え、左右中央揃え、左揃え、上揃え、上下中央揃え、下揃え)で指定することも可能であり、その情報も含まれる。フォント情報は、差し込まれたレコードを表示、印刷するためのフォントの情報である。フォントの種類、フォントサイズ、文字飾り、位置揃え等が含まれる。枠修飾情報は、枠線の色、太さ、塗りつぶしの色、可変フィールドの透過率などの情報である。」

イ 段落【0074】
「【0074】
2003は、可変フィールドを原稿ページ上のどの位置に配置するかを可変フィールドの左上の座標で指定するユーザインタフェースである。座標は原稿ページの左上を基準に(0,0)から始まり、ミリメートル単位で指定することができる。なお、座標の基準は原稿ページの左上でなくても構わないし、指定単位もミリメートルではなくインチなどの単位を用いてもよい。2003で指定した位置情報が、可変フィールドの配置情報に含まれる座標情報に設定される。」

ウ 段落【0137】
「【0137】
図43は、電子原稿デスプーラ105により、電子原稿ファイル103から原稿ページ単位でデータを読み出し、プリンタドライバ106に読み出したデータを送信する手順のフローチャートである。まず文書データ(電子原稿ファイル103)が読み出されて(S4301)、その属性情報(ブック属性、章属性)に基づいて、印刷設定情報が作成される(S4302)。この印刷設定情報は電子原稿ファイル103に保存された設定であり、たとえばジョブチケットと呼ばれる規格化された形式で作成されている。次に原稿ページのデータを配置順に読み出す(S4303)。そしてその原稿ページを印刷設定情報に応じて編集する(S4304)。それから編集した原稿ページを出力データとしてプリンタドライバに送信する(S4305)。ステップS4304では、たとえは可変フィールドがページ属性として定義されている場合、その可変フィールドの属性にしたがってデータベースからレコードをフェッチし、フェッチしたレコードを可変フィールドに相当する位置およびサイズで、ページ上にオーバーレイする。このオーバーレイは、画像データ自体を合成しても良いが、オーバレイする画像と、それがオーバーレイされるページおよび位置と関連づけて1ページ分のデータとしてプリンタドライバに送信しても良い。後者の場合、合成はプリンタドライバあるいはプリンタで実行される。また、データベースからの可変レコードのフェッチは、ページ単位ではなくたとえは部単位で行っても良い。その場合には、共有可変フィールドに挿入されるレコードは、1部ごとに共通したレコードである。たとえばレコードに文書の配布先となる人物の氏名等を定義しておけば、1部分の文書の前ページに各受取人の氏名を印刷することができる。」

(2) 引用文献3には、以下の記載がある。
ア 段落【0072】−【0074】
「【0072】
一方、バリアブル印刷の要求があった場合、CPU1は、ユーザーコマンド入力装置5により、テンプレートのファイルが格納されている場所を示すURLが指定されるまで待機する(ステップS403)。そして、テンプレートのファイルが格納されている場所を示すURLが指定されると、CPU1は、ユーザーコマンド入力装置5により、バリアブル情報のファイルが格納されている場所を示すURLが指定されるまで待機する(ステップS404)。
【0073】
そして、バリアブル情報のファイルが格納されている場所を示すURLが指定されると、CPU1は、ユーザーコマンド入力装置5により、バリアブル情報の印刷すべき番号(印刷開始番号と印刷終了番号)が指定されるまで待機する(ステップS405)。
尚、以上のステップS403、S404、S405における判断は、例えば、図14に示すユーザインターフェース1400に従ったユーザーコマンド入力装置5の操作結果に
基づいて行われる。
【0074】
そして、バリアブル情報の印刷すべき番号が指定されると、CPU1は、ユーザーコマンド入力装置5により、透かし印刷が指定されたか否かを判断する(ステップS406)。この判断の結果、透かし印刷が指定されていない場合、CPU1は、通常のバリアブル印刷指示を行い(ステップS407)、ステップS401を再度実施する。一方、透かし印刷が指定されている場合、CPU1は、透かし印刷すべき項目の指定が完了するまで待機する(ステップS408)。」

イ 【図14】




第6 対比、判断
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「印刷データ」の「定型部分」は、本願発明1の「所定の第1対象データ」に相当する。
引用発明の「印刷データ」の「真可変部分」は、本願発明1の「第2対象データ」に相当する。
引用発明の「印刷装置」は、本願発明1の「データ出力システム」(「出力システム」)に相当する。
よって、引用発明の「印刷装置」は、「定型部分と準定型部分を予めプリント処理手段側に送っておき、ページ毎に真可変部分を処理してそれをプリント処理手段に送ることにより、プリント処理手段ではこれらを組み合わせて印刷する」から、本願発明1の「所定の第1対象データと、第2対象データとを一の出力媒体に纏めて出力するデータ出力システム」に相当する。

イ 引用発明のステップ「S3」において、「S3.ラスタ制御部31は、このラスタライズした定型部分を前記保持と同時にプリント処理部32に1ページ分転送し」ていることは、本願発明1の「前記第1対象データの出力指示を行う第1出力指示部」に相当する。

ウ 引用発明のステップ「S8」において、「S3.ラスタ制御部31は、このラスタライズした定型部分を前記保持と同時にプリント処理部32に1ページ分転送し」、その後、「S8.この判別の結果真可変部分が準定型部分にはみ出さないと認定されたとき、ラスタ処理部34はこの真可変部分のみをラスタライズし、圧縮復元部36により可逆圧縮したのち、プリント処理部32に転送し」ていることは、本願発明1の「前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を配置情報と共に行う第2出力指示部」と、「前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、行う第2出力指示部」である点で共通するといえる。

エ 引用発明のステップ「S20」−「S24」において、これに先行するステップ「S3」で「定型部分を」「1ページ分転送し」た後で、「S20.プリント処理部32は、ラスタ制御部31から転送された印刷データを受信し、例えばそのフラグにより定型部分が、準定型部分か、真可変部分か識別し、
S21.定型部分と準定型部分については、これを復元してオーバレイ・メモリ39に格納し、
S22.前記S20において、定型部分又は準定型部分でないと判断された印刷データは真可変部分であるから、プリント処理部32はこれを準定型部分と組み合わせるものか否かを判断し、
S24.プリント処理部32は、これを準定型部分と組み合わせるべきものでないと判断したとき、この転送されたラスタデータとオーバレイ・メモリ39に保存しておいた定型部分と組み合わせてページデータを作成し、印刷すること」は、本願発明1の「前記第1対象データの出力指示と前記第2対象データの出力指示を受け取り、前記第1対象データと、前記第2対象データと、前記配置情報とに基づいて、前記第1対象データと前記第2対象データとが統合されたデータ出力結果を出力する出力部」を備えていることと、「前記第1対象データの出力指示と前記第2対象データの出力指示を受け取り、前記第1対象データと、前記第2対象データと、に基づいて、前記第1対象データと前記第2対象データとが統合されたデータ出力結果を出力する出力部」を備えている点で共通するといえる。

(2) よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「所定の第1対象データと、第2対象データとを一の出力媒体に纏めて出力するデータ出力システムであって、
前記第1対象データの出力指示を行う第1出力指示部と、
前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、行う第2出力指示部と、を備え、
前記第1対象データの出力指示と前記第2対象データの出力指示を受け取り、前記第1対象データと、前記第2対象データと、に基づいて、前記第1対象データと前記第2対象データとが統合されたデータ出力結果を出力する出力部と、を備える、
データ出力システム。」

[相違点1]
本願発明1では、「第2対象データの出力指示を配置情報と共に出力装置に行う第2出力指示部」を備えるのに対して、引用発明では、「配置情報と共に」印刷データの真可変部分の印刷を指示することが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、「前記第1対象データと、前記第2対象データと、前記配置情報とに基づいて、前記第1対象データと前記第2対象データとが統合されたデータ出力結果を出力する出力部」を備えるのに対して、引用発明では、「前記配置情報と」に基づいて、印刷することが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1では、「前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行う」のに対して、引用発明では、「前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行う」ことが特定されていない点。

(3) 当審の判断
事案に鑑みて、上記[相違点3]について先に検討すると、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行う」構成は、上記引用文献1−3には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
引用文献2(上記2(1)を参照。)には、可変データを含む印刷データを印刷する際、可変データを配置すべき位置を、「座標情報」を含む配置情報によって指定する周知技術が記載され、引用文献3(上記2(2)を参照。)には、可変データを印刷する際、可変データのうち「一部の出力指示」を行う周知技術は開示されているものの、「前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行う」構成は開示されていない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2−5について
本願発明2−5も、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行う」構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 当審拒絶理由の理由1(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、(1)請求項1−7について、「出力対象に纏めて出力する」との記載が不明確である旨、(2)請求項1−6について、冒頭の「データ出力システム(データ出力方法)」と、末尾の「出力システム(出力方法)」との異同が不明確である旨、(3)請求項1−5について、「データ出力システム」に「出力装置」が含まれるか否かが不明確である旨の拒絶の理由を通知しているが、令和5年2月24日付けの補正において、(1)「出力対象」とあったものが「出力媒体」と補正され、(2)各請求項の末尾が「データ出力システム(データ出力方法)」と補正され、(3)「データ出力システム」に係る記載から「出力装置」を削除する補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 原査定についての判断
令和5年2月24日付けの手続補正により、補正後の請求項1−5は、本願発明1の上記[相違点3]に係る「前記配置情報は、前記第1対象データと前記第2対象データを統合するための座標系を含み、
前記出力部は、前記データ出力結果を出力する際、システムリソース上に中間ファイルを生成せず、
前記第2出力指示部は、前記第1対象データ及び前記第2対象データがドキュメントである場合、前記第2対象データのドキュメントから当該ドキュメントを構成するすべての出力要素各々の前記配置情報を抽出し、前記第1対象データの出力指示を行った後に、同じ出力媒体に対して、前記第2対象データの出力指示を、抽出した前記配置情報と共に行う」という技術的事項を有するものとなった。
当該技術的事項は、原査定における引用文献A−Dには記載されておらず、周知技術でもないので、本願発明1−5は、当業者であっても、原査定における引用文献A−Dに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-04-28 
出願番号 P2021-182242
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中野 裕二
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
富澤 哲生
発明の名称 データ出力コンピュータ、データ出力システム、データ出力方法及びプログラム  
代理人 小木 智彦  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ