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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1398183
総通号数 18 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-12-01 
確定日 2023-06-13 
事件の表示 特願2021− 1686「接触検知器」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月 8日出願公開、特開2022− 56304、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年(令和2年)9月29日(以下、「優先日」という。) 中国)の出願であって、令和3年12月21日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年3月31日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたが、令和4年8月9日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和4年8月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(理由1)新規性
本願請求項1、4に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由2)進歩性
本願請求項1−6に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.中国特許出願公開第110597420号明細書


第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和4年12月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
検知部の上面に第1の接触感知回路を有し、前記検知部の底面に第2の接触感知回路を有する前記検知部と、
前記検知部に設けられた光学部と、
前記光学部に設けられた透明カバーと、
フレキシブル回路部と、
を備え、
前記光学部、前記検知部及び前記透明カバーは収容空間を形成し、
前記フレキシブル回路部は第1の延長板と第2の延長板とを有し、前記第1の延長板は前記検知部の前記上面の前記第1の接触感知回路に接続するために前記収容空間に設けられ、前記第2の延長板は前記検知部の前記底面の前記第2の接触感知回路に接続し、
前記透明カバーと前記フレキシブル回路部は接続部を形成し、前記接続部には前記透明カバーと前記フレキシブル回路部を接続するための固定層が設けられ、
前記検知部は、さらに前記フレキシブル回路部が設けられた接続領域と、可視領域と、を備え、
前記フレキシブル回路部と前記光学部の間に接着剤を含む充填領域を設け、
前記検知部は、検知面を備え、
前記検知面の法線方向は第1の方向に平行であり、前記フレキシブル回路部の前記第1の延長板の第1の方向の厚さは、前記収容空間の第1の方向の厚さの50%〜80%である、
接触検知器。
【請求項2】
前記検知部は、検知面を備え、
前記検知面の法線方向は第1の方向に平行であり、前記固定層の第1の方向の厚さは、前記収容空間の第1の方向の厚さの10%〜40%である、
請求項1に記載の接触検知器。
【請求項3】
前記光学部は、第1の透明接着剤層と、偏光層と、第2の透明接着剤層を備え、
前記偏光層は、前記第1の透明接着剤層に設けられ、
前記第2の透明接着剤層は、前記偏光層に設けられる、
請求項1または2に記載の接触検知器。
【請求項4】
前記接触検知器は、導電性接続層をさらに備え、
前記導電性接続層は、前記検知部と前記フレキシブル回路部との間に設けられ、前記導電性接続層の厚さは、前記検知部における前記収容空間の第1の方向の厚さの10%〜25%である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の接触検知器。
【請求項5】
前記検知面の法線方向は第1の方向に平行であり、前記フレキシブル回路部の第1の方向の厚さは、30μm〜43μm又は10μm〜15μmである、
請求項1に記載の接触検知器。」


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)






(当審訳)
具体的な実施形態
[0019] 当業者が本発明の技術的解決策をよりよく理解できるようにするため、以下、添付図面および具体的実施形態と併せて本発明をさらに詳細に説明する。
[0020] 実施例1:
[0021] 図1及び図2を参照すると、本実施形態は、タッチ機能層と第1偏光板2とが積層されてなるタッチコントロールアセンブリを提供し、タッチ機能層は、薄膜基板(別途図示せず)とタッチ電極パターン(別途図示せず)とからなり、薄膜基板の第1偏光板2に面する側にボンディングパッド13(ボンディングパッド)が設けられ、タッチ機能層は有効領域11(AA領域)と有効領域11を囲む縁部領域12に分けられ、タッチ電極パターンが有効領域11に位置するとともにボンディングパッド13が縁部領域12に位置している。
[0022] タッチ機能層は、具体的には、外部タッチパネル用のタッチ感応層とすることができる。薄膜基板の材料は、先行技術に従って選択することができる。薄膜基板の質感が比較的柔らかいことは容易に理解できる。タッチ機能層は、静電容量式タッチセンシングを可能にし、タッチ電極パターンだけでなく、タッチ電極パターンに接続されたタッチ駆動線(Tx線)およびタッチセンシング線(Rx線)は、既存のソリューションに従って設計することができる。タッチ機能層のボンディングパッド13は、両者が電気的に接続された状態で、第1フレキシブル回路基板31の電極を固定するために使用される。
[0023] 第1偏光板2は切り欠きを有し、切り欠きはタッチ機能層の正投影における縁部領域12内に位置し、切り欠きはボンディングパッド13を露出させる。
[0024] 通常、タッチ機能層の構造は脆弱であるため、タッチ機能層を保護せずに第一偏光板2を貼り付けると、第1偏光板2の境界がタッチ機能層の境界と面一になったり、第1偏光板2がタッチ機能層の境界を適切に超えてしまう。しかし、本実施形態では、タッチコントロールアセンブリのベゼルサイズを短くするために、第1偏光板2の境界は平坦でなく、切り欠きを設けている。この切り欠きは、タッチ機能層の有効領域11に入ることなく、タッチ機能層に直交するように突設されているため、有効領域11内のタッチ電極パターンを露出させることがない。切り欠きによってタッチ機能層のボンディングパッド13が露出するので、切り欠きがある空間に第1のフレキシブル回路基板31を結合することができ、第1偏光板2に切り欠きがない解決策に比べて、ボンディングパッド13がある側のタッチコントロールアセンブリの境界を小さくすることができる。
[0025] タッチコントロールアセンブリは、第1のフレキシブル回路基板31をさらに備え、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域はボンディングパッド13に結合され、タッチコントロールアセンブリは、タッチ機能層上に貼り付けられた第1のフレキシブル回路基板31の表面に貼り付けられた保護フィルム4をさらに備え、保護フィルム4は第1のフレキシブル回路基板31を越えて延び、余分は切り欠きによって露出するタッチ機能層の表面に貼り付けられている。
[0026] 第1のフレキシブル回路基板31の機能は、タッチ機能層の信号を完成機(例えば携帯電話)のメイン基板との間で伝送できるようにすることである。通常、第1のフレキシブル回路基板31にはタッチドライバチップ3aも結合されており、第1偏光板2の切り欠きの存在により、第1のフレキシブル回路基板31のタッチ機能層とは反対側には制限された構造になっていない。図3は、表示装置におけるタッチコントロールアセンブリの適用シーンを示す図であるが、図3の現状の観点によれば、タッチコントロールアセンブリの第1のフレキシブル回路基板31は、通常、下方に折り曲げることが要求される。そこで、本発明者は保護フィルム4を設計し、保護フィルム4の役割は、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域を強化し、その後の第1のフレキシブル回路基板31とタッチ機能層との間の分離を防止することである。保護フィルム4の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。もちろん保護フィルム4の表面には粘着物質が設けられている必要があり、これにより保護フィルム4を所定の位置に粘着させる役割を果たす。保護フィルム4の境界は、切り欠きの境界からはみ出さないようにし、その結果、タッチコントロールアセンブリの全体構造をより平坦にすることが望ましい。
[0027] オプションとして、有効領域11は長方形の形状であり、長方形の第1の辺は切り欠きに対向し、保護フィルム4は第1のフレキシブル回路基板31を越えて第1の辺に沿って両方向に延在する。
[0028] 図1の現在の図によれば、長方形の第1の辺、すなわち有効領域11の下辺である。保護フィルム4は、第1のフレキシブル回路基板31を越えて、左右の少なくとも2つの方向に延びている。
[0029] さらに、もちろん、保護フィルム4は、第1のフレキシブル回路基板31を越えて、第1の辺の延長線と直交する方向に、有効領域11側に向かって延びてもよいが、ただし、この方向に保護フィルム4を設定できるスペースは、タッチコントロールアセンブリのバウンド基板側のベゼルサイズを短くする目的で制限されている。
[0030] オプションとして、保護フィルム4は、第1のフレキシブル回路基板31を越えて第1の辺に沿った両方向に0.2mm以上の大きさに延び、第1の辺に沿った延在方向の保護フィルム4の大きさは、第1のフレキシブル回路基板31の補強を容易にするには短すぎる。
[0031] オプションとして、保護フィルム4は、切り欠き内に配置される。このようにすると、タッチコントロールアセンブリの全体構造を平坦にすることができる。
[0032] オプションとして、第1偏光板2のタッチ機能層とは反対側に配置された封止カバー6も含み、第1偏光板2と封止カバー6は、第1の光学接着剤51によって一緒に接着される。封止カバー6の材質は、例えばガラスであり、この場合、封止カバー6は、通称、カバーガラス(またはCG)とも呼ばれる。封止カバー6は、第1偏光板2およびタッチ機能層(いずれも軟質材料で構成されている)を支持し、保護する。
[0033] オプションとして、第1の光学接着剤51は固体光学接着剤であり、第1の光学接着剤51、封止カバー6及び保護フィルム4は重なる領域を有し、保護フィルム4の厚さはa、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域の厚さはb、第1偏光板2の厚さはcとし、これら3つはa+b=cを満たす。
[0034] すなわち、保護フィルム4の一方の面が第1の光学接着剤51に接着され、その反対側の面が第1のフレキシブル配線板31(具体的には、その結合領域)に接着される。図3を参照すると、タッチコントロールアセンブリと表示パネル7が第2光学接着剤52によって接着されるとき、第2光学接着剤52と表示パネル7は、結合パッド13が設けられたタッチ機能層の側で通常くぼみ、すなわち図3の現在の図によれば、ボンディングパッド13を備えるタッチ機能層の側の下の縁領域12ははみ出ている。第1のフレキシブル回路基板31が下方に曲げられると、タッチ機能層の境界領域も下方に曲げられるように駆動することが容易である。保護フィルム4の厚さは、第1のフレキシブル回路基板31の固定が良くなるように設定することができ、さらに、第1のフレキシブル回路基板31とともにタッチ機能層の縁部が曲げられることによって生じる不良回路の断線も防止することができる。
[0035] もちろん、保護フィルム4の厚みを薄くすることで、構造的に干渉するリスクを低減することも可能である。ただし、これではタッチ機能層の境界での回路破壊を防ぐことはできない。
[0036] 実施例2:
[0037] 図3を参照すると、本実施形態は、表示パネル7と、表示パネル7の発光面に貼付されたタッチコントロールアセンブリとを備え、タッチコントロールアセンブリは、実施例1のタッチコントロールアセンブリである表示装置を提供する。
[0038] 具体的には、表示パネル7の発光面と、タッチコントロールアセンブリの表示機能層の第1偏光板2とは反対側の面とを第2の光学接着剤52を介して接着される。
[0039] オプションとして、表示パネル7は有機発光ダイオード表示パネル7または液晶表示パネル7であり、表示パネル7が有機発光ダイオード表示パネル7である場合、第1偏光板2は、外光が表示に干渉してコントラストが低下することを防止する役割を果たす。また、表示パネル7が液晶表示パネル7である場合、液晶表示パネル7の第1偏光板2に向かって奥まった側には、第2偏光板(図示せず)が設けられる。
[0040] 任意に、第1のフレキシブル回路基板31は、第1偏光板2から離れる方向に曲げられて固定される。すなわち、第1のフレキシブル回路基板31は、図3の現在の図によれば、下方に曲げられる。もちろん、表示パネル7に接続される第2のフレキシブル回路基板32も下方に曲げられている。また、第2のフレキシブル回路基板32には、通常、表示ドライバ3bが搭載される。
[0041] 任意選択に、表示装置は、タッチコントロールアセンブリとは反対側の表示パネル7上に配置されたヒートシンク層8をさらに含む。特に、表示パネル7が有機発光ダイオード表示パネル7の場合、表示パネル7の発熱が液晶表示パネル7より高いので、有機発光ダイオード表示パネル7を冷却するためにヒートシンク層8を提供する必要がある。
[0042] 具体的には、表示装置は、液晶表示モジュール、有機EL表示モジュール、携帯電話、タブレット端末、テレビ、モニター、ノートパソコン、デジタルフォトフレーム、ナビゲータ、その他表示機能を有する製品・部品であってもよい。」

B 「【図1】



C 「【図2】



D 「【図3】



(2)引用発明
上記(1)から、特に、図3の表示パネル7にタッチコントロールアセンブリが貼付される実施形態のものに注目すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「表示パネル7の発光面に、タッチ機能層と第1偏光板2とが積層されてなるタッチコントロールアセンブリが貼付された表示装置であって、
タッチ機能層は、薄膜基板とタッチ電極パターンとからなり、薄膜基板の第1偏光板2に面する側にボンディングパッド13が設けられ、タッチ機能層は有効領域11と有効領域11を囲む縁部領域12に分けられ、タッチ電極パターンが有効領域11に位置するとともにボンディングパッド13が縁部領域12に位置しており、
第1偏光板2は切り欠きを有し、切り欠きはタッチ機能層の正投影における縁部領域12内に位置し、切り欠きはボンディングパッド13を露出させるものであって、切り欠きは、タッチ機能層の有効領域11に入ることなく、有効領域11内のタッチ電極パターンを露出させることがないものであって、
タッチコントロールアセンブリは、第1のフレキシブル回路基板31をさらに備え、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域はボンディングパッド13に結合され、そして、第1のフレキシブル回路基板31の機能は、タッチ機能層の信号を完成機(例えば携帯電話)のメイン基板との間で伝送できるようにすることであって、
また、タッチコントロールアセンブリは、タッチ機能層上に貼り付けられた第1のフレキシブル回路基板31の表面に貼り付けられた保護フィルム4をさらに備え、保護フィルム4は第1のフレキシブル回路基板31を越えて延び、余分は切り欠きによって露出するタッチ機能層の表面に貼り付けられており、保護フィルム4の役割は、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域を強化し、その後の第1のフレキシブル回路基板31とタッチ機能層との間の分離を防止することであって、保護フィルム4の表面には粘着物質が設けられており、これにより保護フィルム4を所定の位置に粘着させるものであって、さらに、切り欠き内に配置されることで、タッチコントロールアセンブリの全体構造を平坦にすることができるものであり、
第1偏光板2のタッチ機能層とは反対側に配置された封止カバー6を含み、第1偏光板2と封止カバー6は、第1の光学接着剤51によって一緒に接着されており、
第1の光学接着剤51、封止カバー6及び保護フィルム4は重なる領域を有し、保護フィルム4の厚さはa、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域の厚さはb、第1偏光板2の厚さはcとすると、これら3つはa+b=cを満たしており、すなわち、保護フィルム4の一方の面が第1の光学接着剤51に接着され、その反対側の面が第1のフレキシブル配線板31(具体的には、その結合領域)に接着されている、
表示装置。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について対比
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「タッチ機能層」は、「第1偏光板2」が積層されるものであって、「薄膜基板とタッチ電極パターンとからなり、薄膜基板の第1偏光板2に面する側にボンディングパッド13が設けられ」、「有効領域11と有効領域11を囲む縁部領域12に分けられ、タッチ電極パターンが有効領域11に位置するとともにボンディングパッド13が縁部領域12に位置」するものであって、引用発明の「タッチ機能層」は、「有効領域11と有効領域11を囲む縁部領域12に分けられ」、「縁部領域12の第1偏光板2に面する側にボンディングパッド13が設けられ」ているものといえる。
さらに、「第1偏光板2」は「切り欠きを有し、切り欠きはタッチ機能層の正投影における縁部領域12内に位置し、切り欠きはボンディングパッド13を露出させるものであって、切り欠きは、タッチ機能層の有効領域11に入ることなく、有効領域11内のタッチ電極パターンを露出させることがないものであ」るから、引用発明の「タッチ電極パターン」は、「ボンディングパッド13」と同一の面、すなわち、「第1偏光板2に面する側」の面の「有効領域11」に設けられているものと認められる。また、「タッチ機能層」の「第1偏光板2に面する側」の面は「タッチ電極パターン」が設けられる面であるから検知面といえる。
また、引用発明の「タッチ機能層」の「第1偏光板2に面する側」の面を、「上面」と称することは任意である。
してみると、引用発明の「タッチ電極パターン」は、本願発明1の「第1の接触感知回路」に相当し、引用発明の「タッチ機能層」と、本願発明1の「検知部の上面に第1の接触感知回路を有し、前記検知部の底面に第2の接触感知回路を有する前記検知部」とは、後記の点で相違するものの、「検知部の上面に第1の接触感知回路を有する前記検知部」の点では共通し、また、引用発明は、本願発明1の「前記検知部は、検知面を備え」ることに相当する構成を有するものである。

イ 引用発明の「第1偏光板2」は、「タッチ機能層」に積層されるものであるから、本願発明1の「前記検知部に設けられた光学部」に相当する。

ウ 引用発明の「封止カバー6」は、「第1偏光板2のタッチ機能層とは反対側に配置され」るものであって、また、引用発明は「表示装置」であるから「封止カバー6」が透明であることは明らかである。してみると、引用発明の「封止カバー6」は、本願発明1の「前記光学部に設けられた透明カバー」に相当する。

エ 引用発明の「第1のフレキシブル回路基板31」は、本願発明1の「フレキシブル回路部」に相当する。

オ 引用発明は、「第1偏光板2」が「切り欠きを有し、切り欠きはタッチ機能層の正投影における縁部領域12内に位置し、切り欠きはボンディングパッド13を露出させるものであって」、「ボンディングパッド13」には「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域」が結合されるものであって、また、「第1のフレキシブル回路基板31の表面に貼り付けられた保護フィルム4をさらに備え、保護フィルム4は第1のフレキシブル回路基板31を越えて延び、余分は切り欠きによって露出するタッチ機能層の表面に貼り付けられて」いるものである。
さらに、引用発明は、「第1偏光板2のタッチ機能層とは反対側に配置された封止カバー6を含み、第1偏光板2と封止カバー6は、第1の光学接着剤51によって一緒に接着されており」、「第1の光学接着剤51、封止カバー6及び保護フィルム4は重なる領域を有」するものである。
してみると、引用発明は、「タッチ機能層」、「タッチ機能層」に積層された「第1偏光板2」の「切り欠き」、「第1偏光板2」に「第1の光学接着剤51」によって接着される「封止カバー6」によって、「第1のフレキシブル回路基板31」が収容される空間を形成しているものと認められる。
したがって、引用発明の「タッチ機能層」、「タッチ機能層」に積層された「第1偏光板2」の「切り欠き」、「第1偏光板2」に「第1の光学接着剤51」によって接着される「封止カバー6」によって「第1のフレキシブル回路基板31」を収容する空間を形成することは、本願発明1の「前記光学部、前記検知部及び前記透明カバーは収容空間を形成」することに相当する。

カ 引用発明の「第1のフレキシブル回路基板31」は、「結合領域」が、「ボンディングパッド13に結合され」、また、「第1のフレキシブル回路基板31の機能は、タッチ機能層の信号を完成機(例えば携帯電話)のメイン基板との間で伝送できるようにすることであ」るから、引用発明においては、「ボンディングパッド13」を介して、「タッチ機能層」の「タッチ電極パターン」と「第1のフレキシブル回路基板31」が接続されていることは明らかである。
してみると、上記ア、オの点も考慮すると、引用発明の「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域」は、本願発明1の「第1の延長板」に相当し、そして、引用発明の「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域」が「ボンディングパッド13に結合され」ることと、本願発明1の「前記フレキシブル回路部は第1の延長板と第2の延長板とを有し、前記第1の延長板は前記検知部の前記上面の前記第1の接触感知回路に接続するために前記収容空間に設けられ、前記第2の延長板は前記検知部の前記底面の前記第2の接触感知回路に接続」することとは、後記の点で相違するものの、「前記フレキシブル回路部は第1の延長板を有し、前記第1の延長板は前記検知部の前記上面の前記第1の接触感知回路に接続するために前記収容空間に設けられ」ることの点では共通する。

キ 引用発明は、「第1の光学接着剤51、封止カバー6及び保護フィルム4は重なる領域を有」するものであり、ここで、「第1の光学接着剤51」が「封止カバー6及び保護フィルム4」に接着されていることは明らかであって、さらに、「保護フィルム4」は「第1のフレキシブル回路基板31の表面に貼り付けられ」るものである。
してみると、引用発明では、「封止カバー6」と「第1のフレキシブル回路基板31」の間には接続するための部分が形成され、その部分に「第1の光学接着剤51」及び「保護フィルム4」が「封止カバー6」と「第1のフレキシブル回路基板31」を接続するために設けられているものと認められる
したがって、引用発明の「封止カバー6」と「第1のフレキシブル回路基板31」の間の部分が、本願発明1の「前記透明カバーと前記フレキシブル回路部」が「形成」する「接続部」に相当し、引用発明の「第1の光学接着剤51」及び「保護フィルム4」が、本願発明1の「前記接続部」に「設けられ」た「前記透明カバーと前記フレキシブル回路部を接続するための固定層」に相当し、さらに、引用発明の「第1の光学接着剤51、封止カバー6及び保護フィルム4は重なる領域を有」し、「第1のフレキシブル回路基板31の表面に貼り付けられた保護フィルム4をさらに備え」ることは、本願発明1の「前記透明カバーと前記フレキシブル回路部は接続部を形成し、前記接続部には前記透明カバーと前記フレキシブル回路部を接続するための固定層が設けられ」ることに相当する。

ク 引用発明の「タッチ機能層」は、「有効領域11と有効領域11を囲む縁部領域12」を備えるものであって、「タッチ機能層」は「表示パネル7の発光面」に貼付されるものであり、「有効領域11」が可視可能な領域であることは明らかであって、また、「縁部領域12」には「第1のフレキシブル回路基板31」が接合される「ボンディングパッド13」が位置するものである。
してみると、引用発明の「タッチ機能層」の「縁部領域12」、「有効領域11」は、各々、本願発明1の「前記フレキシブル回路部が設けられた接続領域」、「可視領域」に相当し、引用発明の「タッチ機能層」は、「有効領域11と有効領域11を囲む縁部領域12」を備えることは、本願発明1の「前記検知部は、さらに前記フレキシブル回路部が設けられた接続領域と、可視領域と、を備え」ることに相当する。

ケ 引用発明の「保護フィルム4」は、「タッチ機能層上に貼り付けられた第1のフレキシブル回路基板31の表面に貼り付けられ」、「第1のフレキシブル回路基板31を越えて延び、余分は切り欠きによって露出するタッチ機能層の表面に貼り付けられ」、「切り欠き内に配置されることで、タッチコントロールアセンブリの全体構造を平坦にすることができるものであ」る。
してみると、引用発明では、「第1偏光板2」の「切り欠き」内において、「第1のフレキシブル回路基板31」と「第1偏光板2」の間には隙間があり、この隙間に「保護フィルム4」が充填されているものと認められ、この隙間は充填領域といえる。また、「保護フィルム4」は「表面には粘着物質が設けら」れるものであるから、接着剤を含むものと認められる。
したがって、引用発明の「保護フィルム4は第1のフレキシブル回路基板31を越えて延び、余分は切り欠きによって露出するタッチ機能層の表面に貼り付けられており」、「切り欠き内に配置されることで、タッチコントロールアセンブリの全体構造を平坦にすること」は、本願発明1の「前記フレキシブル回路部と前記光学部の間に接着剤を含む充填領域を設け」ることに相当する。

コ 引用発明の「表示装置」は、「タッチ機能層」、「第1偏光板2」、「封止カバー6」、「第1のフレキシブル回路基板31」を備えるものであるから、本願発明1の「接触検知器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

〈一致点〉
「検知部の上面に第1の接触感知回路を有する前記検知部と、
前記検知部に設けられた光学部と、
前記光学部に設けられた透明カバーと、
フレキシブル回路部と、
を備え、
前記光学部、前記検知部及び前記透明カバーは収容空間を形成し、
前記フレキシブル回路部は第1の延長板を有し、前記第1の延長板は前記検知部の前記上面の前記第1の接触感知回路に接続するために前記収容空間に設けられ、
前記透明カバーと前記フレキシブル回路部は接続部を形成し、前記接続部には前記透明カバーと前記フレキシブル回路部を接続するための固定層が設けられ、
前記検知部は、さらに前記フレキシブル回路部が設けられた接続領域と、可視領域と、を備え、
前記フレキシブル回路部と前記光学部の間に接着剤を含む充填領域を設け、
前記検知部は、検知面を備える、
接触検知器。」

〈相違点1〉
本願発明1では、「前記検知部の底面に第2の接触感知回路を有する」ものであるのに対して、引用発明では、「タッチ機能層」の底面にそのようなものを有していない点。

〈相違点2〉
本願発明1では、「フレキシブル回路部」が、「第2の延長板とを有し」、「前記第2の延長板は前記検知部の前記底面の前記第2の接触感知回路に接続」するものであるのに対して、引用発明では、「第1のフレキシブル回路基板31」はそのようなものを有していない点。

〈相違点3〉
本願発明1では、「前記検知面の法線方向は第1の方向に平行であり、前記フレキシブル回路部の前記第1の延長板の第1の方向の厚さは、前記収容空間の第1の方向の厚さの50%〜80%である」のに対して、引用発明では、「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域」の厚さに関してその旨の特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点3について検討する。
引用発明では、「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域」の厚さに関して、「保護フィルム4の厚さはa、第1のフレキシブル回路基板31の結合領域の厚さはb、第1偏光板2の厚さはcとすると、これら3つはa+b=cを満た」すとするのみで、厚さbの具体的な値に関しては特定されておらず、また、引用文献2の図3を参照しても、「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域の厚さb」は、「第1偏光板2の厚さはc」(収容空間の厚さ)の20%程度である。したがって、引用発明において、「第1のフレキシブル回路基板31の結合領域」の厚さを、「第1偏光板2の厚さ」の50%〜80%に特定する理由が存在しない。また、そのようにすることについて、本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献2に記載された発明ではなく、また、当業者であっても引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1の構成を含むものである。
したがって、本願発明4は、本願発明1と同じ理由により、引用文献2に記載された発明ではなく、また、本願発明2ないし5は、当業者であっても引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし5は上記第3に示したとおりのものとなっているから、本願発明1、4は引用文献2に記載された発明ではなく、また、本願発明1ないし5は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-05-19 
出願番号 P2021-001686
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中野 裕二
特許庁審判官 富澤 哲生
山澤 宏
発明の名称 接触検知器  
代理人 家入 健  
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