• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1398800
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-28 
確定日 2023-06-01 
事件の表示 特願2019−570091「半導体レーザーダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日国際公開、WO2018/234068、令和 2年 8月13日国内公表、特表2020−524407〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)6月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年)6月19日 独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年12月18日 :手続補正書の提出
令和3年 1月20日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 9月27日付け:拒絶査定
令和4年 1月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 6月27日 :上申書の提出

第2 令和4年1月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年1月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「活性層(3)を有する半導体層列(2)を備える半導体レーザーダイオード(100)であって、
前記活性層は主要延在面を有しており、かつ動作中に活性領域(5)において光(8)を生成し、光取り出し面(6)を介して放射するように構成されており、
前記活性領域(5)は、前記光取り出し面(6)に対向する側の背面(7)から前記光取り出し面(6)へ、長手方向(93)に沿って前記主要延在面において延在し、
前記半導体層列(2)は表面領域(20)を有しており、前記表面領域上に、直接的に接触して第1のクラッド層(4)が被着されており、
前記第1のクラッド層(4)は、前記半導体層列(2)とは異なる材料系からの透明導電性酸化物を有しており、
前記第1のクラッド層(4)は構造化されており、前記第1のクラッド層の材料を含まない少なくとも1つの空隙を備えた第1の構造を有しており、前記第1のクラッド層(4)の少なくとも1つの領域(41,42)上に金属コンタクト層が被着されており、
前記半導体レーザーダイオード(100)の動作中、前記活性領域(5)において生成された前記光(8)は、前記第1のクラッド層(4)に達する、
半導体レーザーダイオード(100)。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「活性層(3)を有する半導体層列(2)を備える半導体レーザーダイオード(100)であって、
前記活性層は主要延在面を有しており、かつ動作中に活性領域(5)において光(8)を生成し、光取り出し面(6)を介して放射するように構成されており、
前記活性領域(5)は、前記光取り出し面(6)に対向する側の背面(7)から前記光取り出し面(6)へ、長手方向(93)に沿って前記主要延在面において延在し、
前記半導体層列(2)は表面領域(20)を有しており、前記表面領域上に、直接的に接触して第1のクラッド層(4)が被着されており、
前記第1のクラッド層(4)は、前記半導体層列(2)とは異なる材料系からの透明導電性酸化物を有しており、
前記第1のクラッド層(4)は構造化されており、前記第1のクラッド層の材料を含まない少なくとも1つの空隙を備えた第1の構造を有しており、前記第1のクラッド層(4)の少なくとも1つの領域(41,42)上に金属コンタクト層が被着されている、
半導体レーザーダイオード(100)。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、活性領域(5)において生成された「光(8)」について、「半導体レーザーダイオード(100)の動作中」「第1のクラッド層(4)に達する」と限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2015/0194788号明細書(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「1. A ridge laser comprising
a semiconductor layer sequence comprising an active zone,
a waveguide also designated as ridge, having a width, wherein the waveguide is shaped as an elevation from the semiconductor layer sequence,
a contact metallization, which is applied on a top side of the waveguide facing away from the active zone, and
an energization layer, which is in direct contact with the contact metallization and via which the contact metallization is electrically connected,
wherein
an energization width of at least one of the active zone and the waveguide is less than the width of the waveguide,
the waveguide is spaced apart from the active zone,
the top side is only partly covered by the contact metallization with a contact width, and the contact width is less than the width of the waveguide,
the energization layer touches the top side in places,
a distance between the contact metallization and an edge of the top side is at least 0.15 μm and at least 2.5% of the width of the waveguide, and
a passivation layer is situated in places between the semiconductor layer sequence and the energization layer.」
(当審訳:活性層を含む半導体層列と
幅を持ちリッジと称される導波路であって、該導波路が該半導体層列からの高さを有する形状である導波路と
導波路の上面に活性層とは反対側に形成されたコンタクトメタルライゼーション、および前記コンタクトメタライゼーションと直接接触し、前記コンタクトメタライゼーションを介して電気的に接続される通電層と、を備えるリッジレーザであって、
活性層と導波路の少なくとも一方の通電幅が、導波路の幅よりも小さく、
導波路は、活性層から間隔をあけて配置され、
上面の一部のみがコンタクト幅を有するコンタクトメタライゼーションによって覆われており、コンタクト幅は導波路の幅よりも小さく、
通電層は、部分的に上面に接触しており、
コンタクトメタライゼーションと上面の縁部との距離が0.15μm以上、導波路の幅の2.5%以下であり、かつ、半導体層列と通電層との間にパッシベーション層が所定位置にある、リッジレーザ。)

「[0007] In accordance with at least one embodiment, the ridge laser comprises a ridge. Hereinafter, the term ridge is designated synonymously with the term waveguide, since the ridge is essential for guiding radiation in a direction parallel to a main extension direction of the semiconductor layer sequence. The guiding of radiation in a direction perpendicular to the main extension direction, that is to say parallel to a growth direction of the semiconductor layer sequence, takes place in particular through layers of the semiconductor layer sequence which are at least partly not encompassed by the actual ridge. In this connection, therefore, the term waveguide relates to waveguiding in a direction parallel to the main extension direction.」
(当審訳:少なくとも1つの実施形態によれば、リッジレーザはリッジを含んでいる。以下では、リッジは、半導体層列の主延長方向に平行な方向に放射を導くために不可欠であるため、リッジという用語を導波路という用語と同義に指定する。主延長方向に垂直な方向、すなわち半導体層列の成長方向に平行な方向への放射線の案内は、特に、実際のリッジによって少なくとも部分的に包含されない半導体層列の層を介して行われる。したがって、この関連で、導波路という用語は、主延長方向と平行な方向での導波に関するものである。)


「[0008] The ridge or else waveguide is shaped from the semiconductor layer sequence. The waveguide is thus embodied as an elevation above remaining regions of the semiconductor layer sequence, in a direction parallel to a growth direction of the semiconductor layer sequence. In other words, the waveguide is formed from a material of the semiconductor layer sequence. A material of the semiconductor layer sequence is removed on both sides of the waveguide. The waveguide extends along an emission direction and/or a resonator longitudinal direction of the ridge laser. Besides ridge, the synonymous term here, such a waveguide can also be designated as a ridge waveguide.」
(当審訳:リッジまたは他の導波路は、半導体層列から形成される。したがって、導波路は、半導体層列の成長方向と平行な方向において、半導体層列の残りの領域よりも高くなるように具現化されている。言い換えれば、導波路は、半導体層列の材料から形成される。導波路の両側には、半導体層列の材料が除去されている。導波路は、リッジレーザの発光方向及び/又は共振器長手方向に沿って延びている。このような導波路は、ここで同義語であるリッジの他に、リッジ導波路と指定することもできる。)

「[0009] In accordance with at least one embodiment, the ridge laser comprises a contact metallization. The contact metallization is situated on a top side of the waveguide facing away from the active zone. In particular, the contact metallization touches a semiconductor material of the semiconductor layer sequence that shapes the top side. The contact metallization is preferably shaped from a metal or from a metal alloy. Alternatively or additionally, it is possible for the contact metallization to be formed from a semiconductor material which has metallic properties or substantially metallic properties by means of a corresponding doping.」
(当審訳:少なくとも1つの実施形態によれば、リッジレーザは、コンタクトメタライゼーションを含んでいる。コンタクトメタライゼーションは、活性層から離れる方向に面する導波路の上面に位置する。特に、コンタクトメタライゼーションは、上面を形成する半導体層列の半導体材料に接する。コンタクトメタライゼーションは、好ましくは、金属から、または金属合金から成形される。代替的または付加的に、コンタクトメタライゼーションが、対応するドーピングによって金属特性または実質的に金属特性を有する半導体材料から形成されることが可能である。)

「[0011] In accordance with at least one embodiment, an energization width of the active zone and/or of the waveguide is less than the width of the waveguide. The energization width is that width within which the active zone is supplied with a current above a threshold current for generating laser radiation during use of the ridge laser as intended. That is to say that, within the energization width, laser radiation is generated in the active zone during use as intended. The energization width of the waveguide is that width at the top side within which a current is impressed into the waveguide through the contact metallization.」
(当審訳:少なくとも1つの実施形態に従って、活性層及び/又は導波路の通電幅は、導波路の幅より小さい。通電幅は、リッジレーザの意図された使用中にレーザ放射を発生させるための閾値電流を超える電流が活性層に供給されるその幅である。すなわち、通電幅内では、意図したとおりに使用中に活性層でレーザ放射が発生する。導波路の通電幅とは、コンタクトメタライゼーションを通して導波路に電流が印加される上辺の幅である。)

「[0036] In accordance with at least one embodiment, the energization layer comprises one of the following materials or consists of one or more of the following materials: Au, Ni, Ti, ZnO:Al, ZnO:Ga, ITO. Preferably, the energization layer is formed from Au or from Ti. It is possible for the energization layer to be shaped from a plurality of individual layers also of different materials. In this case, it is possible for layers of the energization layer which are not in direct contact with the top side to be formed from materials other than those mentioned.」
(当審訳:少なくとも1つの実施形態によれば、通電層は、以下の材料のうちの1つを含むか、または以下の材料のうちの1つ以上から構成される。Au、Ni、Ti、ZnO:Al、ZnO:Ga、ITO。好ましくは、通電層は、Auから形成されるか、またはTiから形成される。通電層が、同じく異なる材料からなる複数の個別層から形成されることも可能である。この場合、通電層のうち上面と直接接触しない層が、言及した材料以外の材料から形成されることも可能である。)

「[0037] In accordance with at least one embodiment, the energization layer is shaped from such a material such that a non-ohmic contact is formed with the semiconductor layer sequence.In accordance with at least one embodiment, the contact metallization is formed from one or from a plurality of the materials mentioned below or comprises such materials: Pd, Ti, Pt, Ni, ZnO:Al, ZnO:Ga, ITO. The work function of the oxidic materials presented can be set by means of corresponding doping.」
(当審訳:少なくとも1つの実施形態によれば、コンタクトメタライゼーションは、後述する材料のうちの1つから、または複数の材料から形成され、またはそのような材料から構成される。Pd、Ti、Pt、Ni、ZnO:Al、ZnO:Ga、ITO。提示された酸化性材料の仕事関数は、対応するドーピングによって設定することができる。)

「[0050] An exemplary embodiment of a ridge laser 1 is indicated in a sectional illustration in FIG. 1. The ridge laser 1 comprises a semiconductor layer sequence 2. A waveguide 3 in the form of an elevation is formed out of the semiconductor layer sequence 2. The waveguide 3 has a width B. The semiconductor layer sequence 2 furthermore comprises an active zone 20 for generating electromagnetic radiation.」
(当審訳:リッジレーザ1の例示的な実施形態が、図1に断面図で示されている。リッジレーザ1は、半導体層列2を含んで構成される。半導体層列2のうちには、立面形状の導波路3が形成されている。導波路3は幅Bを有し、半導体層列2はさらに、電磁放射を発生させるための活性層20を含んでいる。)

「[0051] The waveguide 3 has a top side 30 oriented parallel to the active zone 20. Lateral boundary surfaces of the waveguide 3 are formed by flanks 35. The flanks 35 are oriented perpendicular to the active zone 20. The waveguide 3 has a main extension direction perpendicular to the plane of the drawing. A resonator of the ridge laser 1 is likewise oriented perpendicular to the plane of the drawing. As also in all the other sectional illustrations, the laser radiation generated in the ridge laser 1 propagates within the semiconductor layer sequence 2 perpendicular to the plane of the drawing.」
(当審訳:導波路3は、活性層20と平行に向き合った上面30を有する。導波路3の側方境界面は側面35によって形成されている。側面35は、活性層20に対して垂直に配置されている。導波路3は、図面の平面に垂直な主延長方向を有する。リッジレーザ1の共振器も同様に、図面の平面に対して垂直に向いている。他の全ての断面図でもそうであるように、リッジレーザ1で発生したレーザ光は、図面の平面に垂直に半導体層列2内を伝搬する。)

「[0052] The waveguide 3 fashioned as an elevation is unstructured, such that the waveguide has a rectangular basic shape as viewed in cross section. A height h of the waveguide is approximately 0.6 μm, for example. In general, the height h is less than the width B. Furthermore, the waveguide 3 is spaced apart from the active zone 20. A distance d between the active zone 20 and the waveguide 3 is approximately 100 nm, for example.」
(当審訳:高さを有する形状として形成された導波路3は、断面で見て矩形の基本形状を有するようなものである。導波路の高さhは、例えば、約0.6μmである。一般に、高さhは幅Bよりも小さい。さらに、導波路3は、活性層20から間隔を空けて配置されている。活性層20と導波路3との間の距離dは、例えば、約100nmである。)

「[0054] Furthermore, an energization layer 5 composed of an electrically conductive material is situated at the top side 30 and also at the contact metallization 4. The energization layer 5 touches the top side 30 on both sides of the metallization 4. No or no significant current is impressed into the semiconductor layer sequence 2 via the energization layer 5, in particular at energization intensities near a threshold current for the generation of laser radiation.」
(当審訳:さらに、導電性材料からなる通電層5は、上面30に配置されるとともに、コンタクトメタライゼーション4にも配置されている。通電層5は、メタライズ4の両側で上面30に接している。通電層5を介して半導体層列2に、特にレーザ光発生のための閾値電流付近の通電強度で、有意な電流は印加されないか、または印加されない。)

「[0065] In the exemplary embodiment in accordance with FIG. 4, a plurality of strips of the contact metallization are fitted on the top side 30.Said strips extend perpendicular to the plane of the drawing along the entire waveguide 3.The ridge laser 1 shown in FIG. 4 is a multimode laser.Regions of maximum intensity of the electric field E can be energized more intensely in a targeted manner by means of the strips of the contact metallization 4. In the case of such a multimode laser, a width of the waveguide 3 is preferably between 3 μm and 50 μm inclusive. A distance between adjacent strips is preferably at least 1 μm. The strips are spaced apart from an edge of the top side 30, in a direction parallel to the width B.」
(当審訳:図4に従った例示的な実施形態では、コンタクトメタライゼーションの複数のストリップが上面30に取り付けられている。前記ストリップは、導波路3全体に沿って図面の平面に対して垂直に延びている。図4に示すリッジレーザ1は、マルチモードレーザである。電界Eの強度が最大となる領域は、コンタクトメタライゼーション4のストリップによって、より強く狙った形で通電させることができる。このようなマルチモードレーザの場合、導波路3の幅は、好ましくは、3μm以上50μm以下である。隣接するストリップの間の距離は、好ましくは、少なくとも1μmである。ストリップは、上面30の端部から、幅Bと平行な方向に間隔をあけて配置されている。)

「[0075] FIG. 15 shows a schematic plan view of an exemplary embodiment of the ridge laser 1. The energization layer 5 is not illustrated, in order to simplify the illustration. The contact metallization 4 extends along a main light guiding direction L of the waveguide 3. The flanks 35 are oriented parallel to the main light guiding direction L. Facets 33 serving as resonator mirrors are oriented perpendicularly to the main light guiding direction L. It is possible, as also in all the exemplary embodiments, for the contact metallization 4 not to extend as far as the facets 33.」
(当審訳:図15は、リッジレーザ1の例示的な実施形態を示す概略平面図である。図示を簡略化するために、通電層5は図示されていない。コンタクトメタライゼーション4は、導波路3の主光導波方向Lに沿って延びている。側面35は、主導光方向Lに平行に配向され、共振器ミラーとして機能するファセット33は、主光導波方向Lに垂直に配向される。すべての例示的な実施形態と同様に、コンタクトメタライゼーション4がファセット33まで延びないことが可能である。)

「図1



「図4



「図15



イ 上記アより、以下の事項が認められる。
(ア)[0036]より、引用文献には、通電層としてAu又はTiを備えたリッジレーザが記載されていること。

(イ)[0037]より、引用文献には、コンタクトメタライゼーションとして、透明導電膜(ZnO:Al、ZnO:Ga、ITO)を備えたリッジレーザが記載されていること。

(ウ)[0075]を参酌しつつ、図15より、ファセット33は、リッジレーザの光出射面及び後方端面と、見てとれること。

ウ 以上より、引用文献には、図4に係るマルチモードのリッジレーザである次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<引用発明>
「活性層を含む半導体層列と
幅を持ちリッジと称される導波路であって、該導波路が該半導体層列からの高さを有する形状である導波路と
導波路の上面に活性層とは反対側に形成されたコンタクトメタルライゼーション、および前記コンタクトメタライゼーションと直接接触し、前記コンタクトメタライゼーションを介して電気的に接続される通電層と、を備えるリッジレーザであって、
活性層と導波路の少なくとも一方の通電幅が、導波路の幅よりも小さく、
導波路は、活性層から間隔をあけて配置され、
上面の一部のみがコンタクト幅を有するコンタクトメタライゼーションによって覆われており、コンタクト幅は導波路の幅よりも小さく、
通電層は、部分的に上面に接触しており、
コンタクトメタライゼーションと上面の縁部との距離が0.15μm以上、導波路の幅の2.5%以下であり、かつ、半導体層列と通電層との間にパッシベーション層が所定位置にあり、(請求項1)
導波路は、半導体層列から形成され、半導体層列の主延長方向に平行な方向に放射を導き、リッジレーザの発光方向及び/又は共振器長手方向に沿って延びており、([0008])
通電幅は、リッジレーザの使用中に、レーザ光を発生させるための閾値電流を超える電流が活性層に供給される、その幅であり、
通電幅内では、使用中に活性層でレーザ光が発生し、([0011])
コンタクトメタライゼーションは、上面を形成する半導体層列の半導体材料に接し、([0009])
コンタクトメタライゼーションの複数のストリップが上面に取り付けられており、前記ストリップは、導波路全体に沿って延びており、
電界Eの強度が最大となる領域は、コンタクトメタライゼーションのストリップによって、より強く狙った形で通電させることができ、
リッジレーザは、マルチモードレーザであり、([0065])
コンタクトメタライゼーションは、導波路の主光導波方向Lに沿って延びており、([0075])
共振器ミラーとして機能するファセットは、主光導波方向Lに垂直に配向され、リッジレーザの光出射面及び後方端面であり、([0075]・上記イ(ウ))
通電層としてAu又はTiを備え、(上記イ(ア))
コンタクトメタライゼーションとして、透明導電膜(ZnO:Al、ZnO:Ga、ITO)を備える、(上記イ(イ))
リッジレーザ。」

(3)本件補正発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)本件補正発明の「活性層(3)を有する半導体層列(2)を備える半導体レーザーダイオード(100)であって」との特定事項について
引用発明の「リッジレーザ」は、「活性層を含む半導体層列」を備えている。
そうすると、引用発明の「活性層」、「半導体層列」及び「リッジレーザ」は、それぞれ本件補正発明の「活性層(3)」、「半導体層列(2)」及び「半導体レーザーダイオード(100)」に相当するといえる、
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。

(イ)本件補正発明の「前記活性層は主要延在面を有しており、かつ動作中に活性領域(5)において光(8)を生成し、光取り出し面(6)を介して放射するように構成されており」との特定事項について
引用発明の「活性層」は、「半導体層列」に含まれているところ、当該「半導体層列」が「主延長方向」を有していることを踏まえると、引用発明の「活性層」は、「主延長方向に延長する面」を有するといえる。また、当該「活性層」には、「リッジレーザの使用中に、レーザ光を発生させるための閾値電流を超える電流が」「供給され」ており、「通電幅内では、使用中に」「レーザ光が発生」しているから、引用発明の「光出射面」より、「レーザ光」が放射されているものと理解できる。
そうすると、引用発明の「半導体層列の主延長方向に延長する面」、「活性層の通電幅内」、「レーザ光」及び「光出射面」は、それぞれ本件補正発明の「主要延在面」、「活性領域(5)」、「光(8)」及び「光取り出し面(6)」に相当し、引用発明の「発光層」は、本件補正発明の「主要延在面を有しており、かつ動作中に活性領域(5)において光(8)を生成し、光取り出し面(6)を介して放射するように構成されており」との事項を満たすといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。

(ウ)本件補正発明の「前記活性領域(5)は、前記光取り出し面(6)に対向する側の背面(7)から前記光取り出し面(6)へ、長手方向(93)に沿って前記主要延在面において延在し」との特定事項について
引用発明の「活性層の通電幅内(以下「通電領域」という。)」に、「レーザ光を発生させるための閾値電流を超える電流が」「供給され」ていることを踏まえると、通電領域の形状は、電流を供給する「コンタクトメタライゼーション」の形状に倣うものと解されるところ、引用発明の「コンタクトメタライゼーション」は、「複数のストリップ」が、(導波路の)「上面に取り付けられており」、当該「ストリップ」は、「導波路全体に沿って延びて」いるものである。そして、当該「導波路」は、「主光導波方向Lに沿って延びており」、「共振器ミラーとして機能するファセット」は、「主光導波方向Lに垂直に配向され、リッジレーザの光出射面及び後方端面」である。
そうすると、引用発明の「後方端面」及び「主光導波方向L」は、それぞれ本件補正発明の「背面(7)」及び「長手方向(93)」に相当し、引用発明の「通電領域」は、本件補正発明の「前記光取り出し面(6)に対向する側の背面(7)から前記光取り出し面(6)へ、長手方向(93)に沿って前記主要延在面において延在し」との構成を満たすといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。

(エ)本件補正発明の「前記半導体層列(2)は表面領域(20)を有しており、前記表面領域上に、直接的に接触して第1のクラッド層(4)が被着されており」及び「前記第1のクラッド層(4)は、前記半導体層列(2)とは異なる材料系からの透明導電性酸化物を有しており」との特定事項について
引用発明の「導波路」は、「半導体層列から形成され」ており、「コンタクトメタライゼーション」は、「導波路の上面に活性層とは反対側に形成され」、「上面を形成する半導体層列の半導体材料に接し」、「透明導電膜(ZnO:Al、ZnO:Ga、ITO)」である。ここで、当該「透明導電膜」の材料に照らせば、引用発明の「コンタクトメタライゼーション」は、「透明導電性酸化物」であり、「半導体層列」を構成する半導体と異なる材料であることは明らかといえる。そして、引用発明の「コンタクトメタライゼーション」と本件補正発明の「第1のクラッド層(4)」とが、同じ「透明導電性酸化物」であることを踏まえると、両者の呼称は異なるとしても、その機能・作用(導電性・透明性)は同じであると解することが自然といえる。
そうすると、引用発明の「導波路の上面」及び「コンタクトメタライゼーション」は、それぞれ本件補正発明の「表面領域(20)」及び「第1のクラッド層(4)」に相当し、引用発明の「半導体層列」及び「コンタクトメタライゼーション」は、それぞれ本件補正発明の「表面領域(20)を有しており、前記表面領域上に、直接的に接触して第1のクラッド層(4)が被着されており」及び「前記半導体層列(2)とは異なる材料系からの透明導電性酸化物を有しており」との構成を満たすといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。

(オ)本件補正発明の「前記第1のクラッド層(4)は構造化されており、前記第1のクラッド層の材料を含まない少なくとも1つの空隙を備えた第1の構造を有しており、前記第1のクラッド層(4)の少なくとも1つの領域(41,42)上に金属コンタクト層が被着されており、」との特定事項について
引用発明の「コンタクトメタライゼーション」は、「複数のストリップ」であり、当該「ストリップ」は「導波路全体に沿って延びており」、「上面の一部のみ」を覆う「導波路の幅よりも小さ」いものである。また、引用発明の「通電層」は、「コンタクトメタライゼーションと直接接触し」、「コンタクトメタライゼーションを介して電気的に接続される」、「Au又はTi」よりなるものである。そして、当該「コンタクトメタライゼーション」が「複数のストリップ」であり、「上面の一部のみ」を覆うものであることを踏まえると、その構成は「構造化」されているといえ、当該「複数のストリップ」同士の間には隙間(空隙)があると理解できるから、当該「複数のストリップ(コンタクトメタライゼーション)」は、「空隙」を備えているといえ、当該「空隙」に「コンタクトメタライゼーション」が存在しないことは明らかといえる。
そうすると、引用発明の「通電層」は、本件補正発明の「金属コンタクト層」に相当し、引用発明の「コンタクトメタライゼーション」及び「通電層」は、それぞれ本件補正発明の「構造化されており、前記第1のクラッド層の材料を含まない少なくとも1つの空隙を備えた第1の構造を有しており」及び「前記第1のクラッド層(4)の少なくとも1つの領域(41,42)上に」「被着されており」との構成を満たすといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。

(カ)本件補正発明の「前記半導体レーザーダイオード(100)の動作中、前記活性領域(5)において生成された前記光(8)は、前記第1のクラッド層(4)に達する、」との特定事項について
引用発明において、「通電領域」では、「使用中に」「レーザ光が発生し」ており、当該「レーザ光」は、「導波路」により「半導体層列の主延長方向に平行な方向に」「導」かれている。
そして、以下の技術常識等を踏まえると、引用発明の「レーザ光」は、「コンタクトメタライゼーション」に達していると解することが自然といえる。
a 引用発明の「導波路」は、「半導体層列から形成され、半導体層列の主延長方向に平行な方向に放射を導」くものであり、その呼称に照らせば、レーザ光は、当該導波路内を導波していると解することが自然であること。
b 引用発明の「コンタクトメタライゼーション」は、当該「導波路」の上面に「接し」ていること。
c 「導波路」の高さ(h)が高すぎてはいけないこと。
すなわち、引用発明は、「コンタクトメタライゼーション」の「ストライプ」により、「電界Eの強度が最大となる領域」へ「より強く狙った形で通電させる」ものであるから、電流が通過する層の層厚が厚くなると電流の拡散により電流密度が均一化されるとの技術常識(いわゆる「電流拡散層」の有する機能)に鑑みれば、導波路の高さ(h)は、上記狙いを満たす程度の高さであるものと理解できる。
d 図1に係る実施形態において、導波路の高さhとして「0.6μm」が例示されており、当該実施形態のリッジレーザも、「電界Eの強度が最大となる領域」へ「より強く狙った形で通電させる」ものと解されること。
e 半導体レーザは、その出射光を円形に近づけるため、活性層に垂直な方向へある程度光をしみ出させる(光閉じ込めを弱める)ことが、技術常識であること。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たすといえる。

(キ)以上より、本件補正発明と引用発明とに実質的な相違は認められない。

イ 判断
上記アのとおりであるから、本件補正発明は、引用文献に記載された発明である。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、図4を引用し、電磁波は金属被覆層と通電層には存在していない旨を主張している。
しかしながら、図4における電解Eの記載は、活性層における電界Eの強度分布を示すものと解されるし、その概念図でしかない。
よって、請求人の上記主張は、上記判断を左右するものではない。

エ 小括
したがって、本件補正発明は、引用文献に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年1月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由により特許を受けることができない、というものを含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

米国特許出願公開第2015/0194788号明細書

3 判断
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献(米国特許出願公開第2015/0194788号明細書)の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

イ 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記半導体レーザーダイオード(100)の動作中、前記活性領域(5)において生成された前記光(8)は、前記第1のクラッド層(4)に達する」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに当該発明特定事項を限定したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用文献に記載された発明であるから、本願発明も、引用文献に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬川 勝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-12-26 
結審通知日 2023-01-05 
審決日 2023-01-19 
出願番号 P2019-570091
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01S)
P 1 8・ 113- Z (H01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
吉野 三寛
発明の名称 半導体レーザーダイオード  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 永島 秀郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ