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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1398982
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-30 
確定日 2023-06-15 
事件の表示 特願2018−132495「放送信号の受信方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020− 10291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月12日の出願であって、令和3年1月4日に手続補正書が提出され、令和4年1月31日付けで拒絶の理由が通知されると同時に指令書により、同日出願人による同日出願の発明と同一と認められるため、いずれか一の出願を定めて届け出るべき旨を出願人に命じ、同年2月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
なお、上記令和4年1月31日付け指令書の通知に対して、協議結果の届出はなされていない。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年5月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。符号AないしEは、分説するため当審にて付与した。以下、符号A等を付した事項を「構成A」等という。

「A 放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信方法において、
B1 前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含め、
B2 かつ前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含めて送信され、
C 前記放送信号を受信し、
D1 前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、
D2 前記アプリケーション符号化方式が0x1である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得し、
E 取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する
A 受信方法。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

1.(同日出願)この出願の下記の請求項に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特願2018−132494号(特開2020−010290号)


第4 引用された同一出願人が同日出願した発明
原査定の拒絶の理由に引用された特願2018−132494号の請求項1係る発明(以下、「同日発明」という。)は、令和4年2月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。符号a等は、本願発明の構成A等に対応させて当審で付与した。以下、符号a等を付した事項を「構成a」等という。
なお、特願2018−132494号の令和4年5月30日にされた手続補正は、本審決と同日付けで、補正の却下の決定がなされている。

「a 放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信装置において、
b1 前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含め、
b2 かつ前記アプリケーションサービス記述子設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含めて送信され、
c 前記放送信号を受信する受信手段と、
d1 前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、
d2 前記アプリケーション符号化方式が0x10である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段と、
e 取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する制御手段と、
a を有する受信装置。」

第5 対比
本願発明と同日発明とを対比する。
1 構成Aについて
発明のカテゴリーに関して、本願発明は「受信方法」の発明であるのに対して、同日発明は「受信装置」の発明である点で相違する。
また、同日発明の構成aの「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」のものであるから、当該「放送番組」に「アプリケーション機能」を付与するものといえる。
そうすると、同日発明と本願発明とは「放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する」点で共通する。
ただし、アプリケーション機能を付与した制御情報に関して、本願発明は「放送番組に」アプリケーション機能を付与した制御情報であるのに対して、同日発明は「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」アプリケーション機能を付与した制御情報である点で相違する。

2 構成B1について
同日発明の構成b1と本願発明の構成B1とは、文言上一致しており、同日発明の構成b1は本願発明の構成B1に相当する。

3 構成B2について
同日発明の構成b2の「アプリケーションサービス記述子設定可能な値」について、特願2018−132494号の明細書の【0036】には「アプリケーションサービス記述子のapplication_formatフィールドで規定されている設定可能な値」と記載されており、「アプリケーションサービス記述子」には「設定可能な値」があるといえ、同日発明の「アプリケーションサービス記述子設定可能な値」は本願発明の「アプリケーションサービス記述子に設定可能な値」に相当する。
そして、同日発明の構成b2と本願発明の構成B2とは、上記の箇所以外は文言上一致しており、同日発明の構成b2は本願発明の構成B2に相当する。

4 構成CないしEについて
同日発明の構成d2の「0x10である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する」ことについて、明細書の発明の詳細な説明を参照すると、設定された値が“0x1”である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を所望の拡張アプリケーションサービス記述子と判定すること(【0063】、【0085】、【0091】)の記載があるのみであって、設定された値が“0x10”のときの記載がないことから、同日発明の構成d2の「0x10」は「0x1」の誤記と認められる。
そうすると、上記1のとおり、本願発明と同日発明とは発明のカテゴリーが異なり、それに伴い、本願発明は「・・・を受信し、」(構成C)、「・・・を取得し、」(構成D2)、「・・・を制御する」(構成E)処理を行うものとして表現されているのに対して、同日発明は「・・・を受信する受信手段」(構成c)、「・・・を取得する制御情報解析手段」(構成d2)、「・・・を制御する制御手段」(構成e)といった手段を有するものとして表現されている以外は、文言上一致している。

したがって、本願発明と同日発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

<相違点1>
発明のカテゴリーに関して、本願発明は「受信方法」の発明であるのに対して、同日発明は「受信装置」の発明であり、それに伴い、本願発明は「・・・を受信し、」、「・・・を取得し、」、「・・・を制御する」処理を行うものとして表現されているのに対して、同日発明は「・・・を受信する受信手段」、「・・・を取得する制御情報解析手段」、「・・・を制御する制御手段」といった手段を有するものとして表現されている点。

<相違点2>
アプリケーション機能を付与した制御情報に関して、本願発明は「放送番組に」アプリケーション機能を付与した制御情報であるのに対して、同日発明は「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」アプリケーション機能を付与した制御情報である点。

第6 判断
1 同日発明を先願とし、本願発明を後願とした場合について判断する。
(1)相違点1について
上記相違点1の差異は「受信装置」と「受信方法」というカテゴリーの差のみによって一応の相違が存在するのみで、単なるカテゴリー表現上の差異であり、相違点1に係る両発明の構成に実質的な差異はない。

(2)相違点2について
上記「第5」「1」で述べたとおり、同日発明の構成aの「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」のものであるから、当該「放送番組」に「アプリケーション機能」を付与するものといえる。
したがって、同日発明(先願)の「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、本願発明(後願)の「放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報」に相当し、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

以上のとおりであるから、本願発明(後願)は同日発明(先願)と実質的に同一である。

2 本願発明を先願とし、同日発明を後願とした場合について判断する。
(1)相違点1について
上記相違点1の差異は「受信方法」と「受信装置」というカテゴリーの差のみによって一応の相違が存在するのみで、単なるカテゴリー表現上の差異であり、相違点1に係る両発明の構成に実質的な差異はない。

(2)相違点2について
ア 本願明細書の【0004】及び特願2018−132494号の明細書の【0004】において、ともに先行技術文献の非特許文献2としてあげている「『高度広帯域衛星デジタル放送運用規定 技術資料』 ARIB TR-B39 1.7版 2018年4月12日改定、一般社団法人 電波産業会」(以下「非特許文献2」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付与。)。

「6.1 データコンテンツサービスの概要と運用
6.1.1 データコンテンツサービスとは
データコンテンツサービスとは、service_type=0x01で示されるデジタルTVサービスに付随し、映像・音声によるTVサービスに、HTML等のアプリケーション機能を同時に提供する、放送サービスの構成要素である。MPTにアプリケーションサービス記述子が配置されていることによりデータコンテンツサービスが当該サービスに付加されていることを示す。service_idで識別されservice_typeで分類される放送サービスの種類を意味するものではない。」(3・31頁)

「6.2 データコンテンツサービスに関わる制御情報の運用
本節では、データコンテンツサービスに関するメッセージ、テーブルなどの制御情報の運用について規定する。ただし、本節にメッセージ、テーブルなどの制御情報に関する、高度広帯域衛星デジタル放送における共通する運用については、TR−B39第一部第四編6章を参照のこと。
6.2.1 MPTの運用
データコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTにおいては以下の記述子を運用する。
6.2.1.1 アプリケーションサービス記述子
データコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTのMPT記述子領域にアプリケーションサービス記述子を1つのみ必ず配置する。ただし、将来、本記述子が複数配置された場合でも、受信機は本版の運用に準拠した記述子を適用して動作すること。表6−3にアプリケーションサービス記述子の運用の詳細を示す。」(3・39頁)

イ 一方、制御情報のMPTに関して、本願明細書の【0005】には、発明が解決しようとする課題について「アプリケーションサービス記述子は、非特許文献2にあるようにデータコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTのMPT記述子領域に、1つのみ必ず配置する運用になっている。しかし将来、・・・テレビジョン受信装置の能力に応じたデータコンテンツサービスを提供するためには、MPTのMPT記述子領域には、アプリケーションサービス記述子を複数配置することが考えられる。」と記載されており、【0034】には「MPTに複数の拡張アプリケーションサービス記述子を配置可能とする拡張MPTを生成する機能、および解析する機能を備える。」と記載されている。
同様に、特願2018−132494号の明細書の【0005】には、発明が解決しようとする課題について「アプリケーションサービス記述子は、非特許文献2にあるようにデータコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTのMPT記述子領域に、1つのみ必ず配置する運用になっている。しかし将来、・・・テレビジョン受信装置の能力に応じたデータコンテンツサービスを提供するためには、MPTのMPT記述子領域には、アプリケーションサービス記述子を複数配置することが考えられる。」と記載されており、【0034】には「MPTに複数の拡張アプリケーションサービス記述子を配置可能とする拡張MPTを生成する機能、および解析する機能を備える。」と記載されている。

ウ 上記ア、イの記載及び技術常識を考慮すると、本願発明及び同日発明における制御情報のMPTは、上記非特許文献2の「ただし、将来、本記述子が複数配置された場合でも、受信機は本版の運用に準拠した記述子を適用して動作すること。」という内容に沿ったものであり、本願発明及び同日発明は、いずれも「MPT」に複数の「アプリケーションサービス記述子」を配置可能とする運用を採用したものといえる。

エ また、そのような運用を採用した本願発明及び同日発明においては「アプリケーションサービス記述子」及び「MTP」を、それぞれ、「拡張アプリケーションサービス記述子」及び「拡張MPT」と言い換えることができるものと認められる。

オ ここで、上記アの記載によれば、MPTへの「アプリケーションサービス記述子」の配置は、「放送サービス」に付随する「データコンテンツサービス」を提供するためのものといえる。
また、技術常識を考慮すると、「放送サービス」は「放送番組」を放送信号で送信するものであるから、上記アにおいて「放送サービス」に付随する「データコンテンツサービス」は、「放送番組」に付随する「データコンテンツサービス」ともいえる。
そうすると、本願発明(先願)の「放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報」は、少なくとも構成B1において「アプリケーションサービス記述子」を「MPT」に含めている以上、放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためのものと認められ、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

以上のとおりであるから、同日発明(後願)は本願発明(先願)と実質的に同一である。

3 まとめ
以上のように、本願発明と同日発明とは、どちらの発明に着目しても、他の発明と実質的に同一であるといえるから、本願発明は同日発明と同一である。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-03-28 
結審通知日 2023-04-04 
審決日 2023-04-24 
出願番号 P2018-132495
審決分類 P 1 8・ 4- Z (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 畑中 高行
特許庁審判官 田中 啓介
五十嵐 努
発明の名称 放送信号の受信方法  
代理人 弁理士法人スズエ国際特許事務所  

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