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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1399288 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-01-13 |
確定日 | 2023-07-04 |
事件の表示 | 特願2020−558242「斜交検出電極群を有する近接検出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日国際公開、WO2020/110627、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2019年11月5日(優先権主張 2018年11月27日(以下、「優先日」という。) 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和4年4月20日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年6月20日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたたが、令和4年10月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和5年1月13日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和4年10月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性) 本願請求項1−6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、および、引用文献2に記載された技術事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2011−65575号公報 2.特開2017−4482号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和4年6月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 複数本の検出電極を有する第1の検出電極群と、 前記第1の検出電極群と直交する複数本の検出電極を有する第2の検出電極群と、 前記第1の検出電極群および第2の検出電極群の各々と斜交する複数本の検出電極を有する斜交検出電極群と、 前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々について、検出対象物の近接状態に応じた静電容量を検出可能な検出手段と、 前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の各々の前記静電容量に基づいて、1つの前記検出対象物の近接状態を判定する第1の検出モードと、前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々の前記静電容量に基づいて、複数の前記検出対象物の各々の近接状態を判定する第2の検出モードと、を切り替えて実行する制御手段と を備え、 前記制御手段は、 前記第1の検出モードにおいて、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の少なくともいずれか一方によって複数の前記検出対象物が検出されるまでは、当該第1の検出モードを維持し、 前記第1の検出モードにおいて、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の少なくともいずれか一方によって複数の検出対象物が検出されると、前記第2の検出モードに切り替え、 前記第1の検出電極群または前記第2の検出電極群のいずれか一方の前記静電容量に基づいて、前記検出対象物の近接の有無を判定する第3の検出モードをさらに有し、 前記制御手段は、 前記第3の検出モードにおいて、前記検出対象物の近接が有ると判定されるまでは、当該第3の検出モードを維持し、 前記第3の検出モードにおいて、前記検出対象物の近接が有ると判定されると、前記第1の検出モードに切り替え、 前記制御手段は、 前記第1の検出モードにおいて、 前記第3の検出モードで検出された前記第1の検出電極群または前記第2の検出電極群のいずれか一方の前記静電容量と、当該第1の検出モードで検出された前記第1の検出電極群または前記第2の検出電極群のいずれか他方の前記静電容量とに基づいて、1つの前記検出対象物の近接状態を判定する ことを特徴とする近接検出装置。 【請求項2】 前記制御手段は、 前記第2の検出モードにおいて、 前記第1の検出モードで検出された前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の各々の前記静電容量と、当該第2の検出モードで検出された前記斜交検出電極群の前記静電容量とに基づいて、複数の前記検出対象物の各々の近接状態を判定する ことを特徴とする請求項1に記載の近接検出装置。 【請求項3】 前記検出手段は、 前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々について、自己容量方式によって、前記静電容量を検出する ことを特徴とする請求項1または2に記載の近接検出装置。 【請求項4】 前記検出対象物は、手または指である ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の近接検出装置。 【請求項5】 前記第1の検出モードは、前記手または前記指を1つの前記検出対象物として、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群への近接状態を判定するシングルポイント検出モードである ことを特徴とする請求項4に記載の近接検出装置。 【請求項6】 前記第2の検出モードは、複数本の指を複数の前記検出対象物とするマルチポイント検出モードである ことを特徴とする請求項5に記載の近接検出装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。) A 「【発明を実施するための形態】 【0015】 以下、本発明の実施の形態を、図1〜図18を参照して説明する。 【0016】 図1は、本発明の一実施形態の例である、情報処理装置の外観図である。 図1に示すように、位置検出装置102は、センサ106上の状態を示すデータをパソコン103に送信する。位置検出装置102は、センサ106上に人体の指105が近接している時に、その位置に該当するデータに変化が生じる。 パソコン103は、位置検出装置102から送信される位置検出平面データを解析し、指105の有無とその位置を算出する。そして、得られた指105の有無とその位置の情報を、描画ソフト等の種々のアプリケーションソフトウェア(プログラム)にて利用する。 【0017】 位置検出平面データから指105の有無とその位置の情報を算出する機能を提供するプログラムである位置算出部109は、OS上で稼動するデバイスドライバとしてパソコン103に読み込まれる。 【0018】 まず、本発明が適用される情報処理装置の概略構成を図1に従って説明する。 情報処理装置101は、位置検出装置102とパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」)103よりなる。 位置検出装置102は、例えば、ディスプレイを備えるパソコン103にケーブル104を介して接続され、パソコン103の入力装置として用いられる。 この位置検出装置102は、指105を検出するセンサ106と、このセンサ106を有する中空の薄い略直方体をなす筐体107等から構成されている。筐体107は、センサ106の入力面を露出させるための開口部108aを有する上ケース108と、この上ケース108に重ね合わされる図示しない下ケースとを有している。上ケース108の開口部108aにセンサ106が嵌め込まれる。そして、この位置検出装置102のセンサ106の上面を、指示体である指105により位置を指示することにより、文字や図等の入力が行われる。 【0019】 次に、本発明を適用した位置検出装置の回路構成の概略を、図2を参照して説明する。位置検出装置102は、その上面に、後述する第三の導体304に人体(手指)が直接触れないように保護するための、例えばPET(ポリエステルフィルム)からなる保護シート106aが貼付されたセンサ106と、信号処理回路202とを有している。このセンサ106は、後述する導体における静電容量の変化を測定するためのものであり、信号処理回路202に接続されている。信号処理回路202は、指105がセンサ106に近接することにより生じた電気的特性の変化をデータとして出力するための回路である。この信号処理回路202は、ケーブル104を介してパソコン103に接続され、演算結果である位置検出平面データをパソコン103の中央演算装置(MPU)等に出力する。 【0020】 次に、位置検出装置102のセンサ106の構造の概略について、図3を参照して説明する。センサ106は、例えば、PETシートからなる略長方形のベース基材106bと、このベース基材106bの一方の面(以下、表面という)106cの略中央部に設けられた略長方形の検出領域301とから構成される。この検出領域301は、人体(手指)等の接近又は接触を検出してその接近又は接触した点の座標を検出するものである。」 B 「【図1】 」 C 「【0021】 次に、検出領域301の詳細を図4〜図7を参照して説明する。 検出領域301は、複数の第一及び第二の導体302,303と、後述する第三の導体304とから構成される。この検出領域301を構成する複数の第一の導体302及び複数の第二の導体303は、図4及び図5に示すように、それぞれが略四角形状の検出部302a,303aを有している。 【0022】 各第一の導体302は、図4に示すように、ベース基材106bの短手方向(以下、Y軸方向という)に、所定の間隔を開けて設けられた複数の検出部302aの列で構成されている。この第一の導体302のY軸方向に隣り合う各検出部302aは、それぞれ対向する互いの頂点同士を接続部302bによって連結することにより電気的に接続されている。そして、この第一の導体302が、ベース基材106bのY軸方向と直交する長手方向(以下、X軸方向という)に所定の間隔を開けて複数並べてられている。 【0023】 同様に、第二の導体303は、図5に示すように、ベース基材106bのX軸方向に所定の間隔を開けて設けられた複数の検出部303aの列で構成される。この第二の導体303のX軸方向に隣り合う各検出部303aは、それぞれ対向する互いの頂点同士を接続部303bによって連結することにより電気的に接続されている。そして、この第二の導体303が、ベース基材106bのY軸方向に所定の間隔を開けて複数並べられている。 そして、この第一及び第二の導体302,303は、第一及び第二の導体302,303における各検出部302a,303a間に、所定の間隔L(図6参照)だけ隙間が生じるように配置される。 【0024】 第三の導体304は、図6及び図7に示すように、略線状の導体を、X軸方向及びY軸方向に対して45度の方向(第3の方向)に複数並べて構成されている。すなわち、この第三の導体304は、第一及び第二の導体302,303の各検出部302a,303a間に設けられた所定の間隔Lの隙間と略重なるように配置され、各第三の導体304は、各接続部302b,303bの交点を横切るように設けられる。」 D 「【図4】 」 E 「【図5】 」 F 「【図7】 」 G 「【0031】 次に、信号処理回路202の構成の概略について、図9を参照して説明する。この信号処理回路202は、例えば、アナログマルチプレクサよりなるスイッチ回路902と、容量検出部903と、これらスイッチ回路902及び容量検出部903を制御する制御部904とから構成される。 ・・・中略・・・ 【0037】 図9に示すスイッチ回路902は、第一の導体302、第二の導体303及び第三の導体304のそれぞれ各一本の導体を選択してホット側端子に接続すると共に、このホット側端子に接続された導体の両脇に位置する導体をコールド側端子に接続する。すると、ホット側端子に接続された導体と、その両脇に位置するコールド側端子に接続された導体との組み合わせによって、コンデンサが形成される。 そして、このコンデンサに指105が近接すると、その静電容量が変化する。指105は実質的に導体と等しいので、指105が近づくことにより静電容量が増加する。容量検出部903はこの指105の近接による静電容量の変化を検出する。 ・・・中略・・・ 【0045】 次に、位置検出装置102の制御部904が出力する位置検出平面データを図12を参照して説明する。この図12は、制御部904が出力する位置検出平面データを時間軸上で表現する概略図である。 位置検出装置102の制御部904は、第一の導体302、第二の導体303及び第三の導体304の各導体の計測値に、ヘッダ情報を付加して送出する。すなわち、制御部904から出力される位置検出平面データは、第一の導体302のヘッダ情報である縦電極ヘッダ1202と、第二の導体303のヘッダ情報である横電極ヘッダ1203と、第三の導体のヘッダ情報である斜め電極ヘッダ1204と、第一乃至第三の導体302,303,304の各導体の計測値とからなり、第一の導体302、第二の導体303、第三の導体304の順に出力される。具体的には、第一の導体302がm本、第二の導体303がn本、第三の導体がp本の導体でそれぞれ構成されているとすると、制御部904は、まず縦電極ヘッダ1203を送出し、この縦電極ヘッダ1203に続いて第一の導体302を構成する各導体の計測値である第一計測値、第二の計測値…第m計測値を送出する。この第m計測値に続いて横電極ヘッダ1203を送出し、この横電極ヘッダ1203に続いて第二の導体303を構成する各導体の計測値である第一計測値、第二計測値…第n計測値を送出し、同様に、この第n計測値に続いて斜め電極ヘッダ1204を送出し、この斜め電極ヘッダ1204に続いて、第三の導体304を構成する各導体の計測値である第一計測値、第二計測値、…第p計測値を送出する。」 H 「【図9】 」 I 「【0046】 次に、位置算出部109の構成について、図13を参照して説明する。なお、この位置算出部109は、パソコン103側のデバイスドライバによって実現される機能である。 この図13に示すように、位置算出部109は、記憶部1302と、重心演算部1303と、座標演算部1304とから構成される。位置検出装置102の制御部904から出力された位置検出平面データは、例えば、RAM(Random Access Memory)よりなる記憶部1302に一旦蓄積される。 重心演算部1303は、位置検出平面データのうちの第一の導体302のデータが揃った時、及び第二の導体303のデータが揃った時に、第一及び第二の導体302,303のそれぞれのデータについて重心演算を行い、第一の導体302及び第二の導体303にそれぞれ最大二点の位置データを演算し、その演算結果を後段の座標演算部1304に出力する。 座標演算部1304は、重心演算部1303から得られた演算結果、つまり第一の導体302及び第二の導体303にそれぞれ最大二点の位置データを受けて、指105の位置を算出する。その際、指105が2本あるときには、記憶部1302に格納されている位置検出平面データのうちの第三の導体304のデータを用いて、真の指105の位置を確定する。 【0047】 次に、位置算出部109の動作処理を図14に示すフローチャートを参照して説明する。 位置検出部109は処理を開始すると(S1401)、重心演算部1303が記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第一の導体302のデータが全て揃ったか否かを確認する(S1402)。この処理は第一の導体302のデータが全て揃うまで繰り返される。 【0048】 第一の導体302のデータが全て揃ったら(S1402のYES)、重心演算部1303は第一の導体302に対する重心演算を行う(S1403)。 次に、重心演算部1303は記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第二の導体303のデータが全て揃ったか否かを確認する(S1404)。この処理は第二の導体303のデータが全て揃うまで繰り返される。第二の導体303のデータが全て揃ったら(S1404のYES)、重心演算部1303は第二の導体303に対する重心演算を行う(S1405)。 【0049】 第一の導体302の重心演算と第二の導体303の重心演算が完了すると、座標演算部1304は先ず、指105がセンサ106上に存在するか否かを判定する(S1406)。もし、指105が存在しているならば(S1406のYES)、次に座標演算部1304は、第一の導体302の重心あるいは第二の導体303の重心が二箇所存在するか、つまり指105が2本あるか否かを判定する(S1407)。指105が2本存在する場合は(S1407のYES)、座標演算部1304は指105の存在する位置を確定するための指候補確定処理を実行する(S1408)。そして、一連の処理を終了し(S1409)、ステップS1401に戻り、再度上記処理を繰り返す。 【0050】 一方、指105がセンサ106上に存在しない場合(S1406のNO)は、座標演算部1304は、指105が存在しない旨を示すデータを出力して(S1410)、処理を終了し(S1409)、ステップS1401に戻り、再度上記処理を繰り返す。 同様に、指105が一本のみ存在する場合(S1407のNO)は、座標演算部1304は、指候補確定処理を実行せずに一本のみの指105の存在を示すデータを出力して(S1411)、処理を終了し(S1409)、ステップS1401に戻り、再度上記処理を繰り返す。」 J 「【図14】 」 K 「【0051】 次に、上記図14のフローチャートにおける座標演算部1304によって実行される指候補確定処理(S1408)について、図15〜図18を参照して説明する。ここで、図15は、座標演算部1304によって実行される指候補確定処理のフローチャート、図16は、指が存在する点と、斜め電極の角度と電極間距離との関係を示す図であり、図17は、指が座標A,Bに存在する場合に第一及び第二の導体から得られた計測値に基づいて重心演算をした結果と、真に指が存在する座標A,Bにおける第三の導体から得られた計測値との関係を模式的に示す図である。そして、図18は、指が座標A,Bに存在する場合に第一及び第二の導体から得られた計測値に基づいて重心演算をした結果と、本来は指が近接していない座標A’,B’における第三の導体から得られた計測値との関係を模式的に示す図である。なお、以下の説明においては、説明の便宜のため、図17及び図18に示すように、指105が座標A(X1,Y1)及び座標B(X2,Y2)に近接しているものとして説明する。 指105が図17及び図18に示す座標A,Bに存在する場合、縦電極重心演算S1402及び横電極重心演算S1405を行うと、それぞれ値X1,X2及びY1,Y2を得る。この演算結果を得て、座標演算部1304は、真に指105が存在する可能性がある座標である座標A(X1,Y1)及び座標B(X2,Y2)、座標A’(X1,Y2)及び座標B’(X2,Y1)から2点の座標を特定する演算を行う。 具体的には、座標演算部1304は処理を開始すると(S1501)、四つの座標A,A’,B及びB’について、それぞれ第三の導体304の候補番号を計算する(S1502)。この計算は、各座標A,A’,B及びB’について以下の演算を行う。 ・・・中略・・・ 【0056】 上記の式のZaとZbの組み合わせを第一候補とし、Za’とZb’の組み合わせを第二候補とする。 次に、座標演算部1304は、記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第三の導体304のデータが全て揃ったか否かを確認する(S1503)。この処理は第三の導体304のデータが全て揃うまで繰り返される。 第三の導体304のデータが全て揃ったら(S1503のYES)、座標演算部1304は第一候補に基づく第三の導体304の計測値に基づく演算と、第二候補に基づく第三の導体304の計測値に基づく演算とを実行する(S1504)。具体的には、以下の演算を行う。 ・・・中略・・・ 【0058】 次に、座標演算部1304は、上述の演算によって求めた第一候補の演算値Vtと第二候補の演算値Vt’を比較する(S1505)。この比較の結果、第一候補の演算値Vtが第二候補の演算値Vt’より大きければ(S1505のYES)、第一候補に相当する2点の座標データ、つまり(X1,Y1)と(X2,Y2)を出力する(S1506)。 逆に、第二候補の演算値Vt’が第一候補の演算値Vtより大きければ(S1505のNO)、第二候補に相当する2点の座標データ、つまり(X1,Y2)と(X2,Y1)を出力する(S1507)。そして、一連の処理を終了する(S1508)。」 L 「【図15】 」 M 「【図17】 」 N 「【図18】 」 (2)引用発明 上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「位置検出装置102とパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」)103よりなる情報処理装置101において、 位置検出装置102は、センサ106と、信号処理回路202とを有し、そして、このセンサ106は、導体における静電容量の変化を測定するためのものであり、信号処理回路202に接続され、信号処理回路202は、指105がセンサ106に近接することにより生じた電気的特性の変化をデータとして出力するための回路であって、ケーブル104を介してパソコン103に接続され、演算結果である位置検出平面データをパソコン103の中央演算装置(MPU)等に出力するものであって、 センサ106は、PETシートからなる略長方形のベース基材106bと、このベース基材106bの一方の面(以下、表面という)106cの略中央部に設けられた略長方形の検出領域301とから構成され、この検出領域301は、人体(手指)等の接近又は接触を検出してその接近又は接触した点の座標を検出するものであって、 検出領域301は、複数の第一及び第二の導体302,303と、第三の導体304とから構成され、 各第一の導体302は、ベース基材106bの短手方向(以下、Y軸方向という)に、所定の間隔を開けて設けられた複数の検出部302aの列で構成されており、 第二の導体303は、ベース基材106bのX軸方向に所定の間隔を開けて設けられた複数の検出部303aの列で構成され、 第三の導体304は、略線状の導体を、X軸方向及びY軸方向に対して45度の方向(第3の方向)に複数並べて構成され、 信号処理回路202は、アナログマルチプレクサよりなるスイッチ回路902と、容量検出部903と、これらスイッチ回路902及び容量検出部903を制御する制御部904とから構成され、 スイッチ回路902は、第一の導体302、第二の導体303及び第三の導体304のそれぞれ各一本の導体を選択してホット側端子に接続すると共に、このホット側端子に接続された導体の両脇に位置する導体をコールド側端子に接続することで、ホット側端子に接続された導体と、その両脇に位置するコールド側端子に接続された導体との組み合わせによって、コンデンサを形成するものであって、 容量検出部903は、このコンデンサに指105が近接することによる、静電容量が変化を検出するものであって、 制御部904は、第一の導体302、第二の導体303及び第三の導体304の各導体の計測値に、ヘッダ情報を付加して送出するものであり、すなわち、制御部904から出力される位置検出平面データは、第一の導体302のヘッダ情報である縦電極ヘッダ1202と、第二の導体303のヘッダ情報である横電極ヘッダ1203と、第三の導体のヘッダ情報である斜め電極ヘッダ1204と、第一乃至第三の導体302,303,304の各導体の計測値とからなり、第一の導体302、第二の導体303、第三の導体304の順に出力されるものであって、 パソコン103側のデバイスドライバによって実現される位置算出部109は、記憶部1302と、重心演算部1303と、座標演算部1304とから構成され、 記憶部1302は、位置検出装置102の制御部904から出力された位置検出平面データを、RAM(Random Access Memory)よりなる記憶部1302に一旦蓄積されるものであり、 重心演算部1303は、位置検出平面データのうちの第一の導体302のデータが揃った時、及び第二の導体303のデータが揃った時に、第一及び第二の導体302,303のそれぞれのデータについて重心演算を行い、第一の導体302及び第二の導体303にそれぞれ最大二点の位置データを演算し、その演算結果を後段の座標演算部1304に出力するものであり、 座標演算部1304は、重心演算部1303から得られた演算結果、つまり第一の導体302及び第二の導体303にそれぞれ最大二点の位置データを受けて、指105の位置を算出し、その際、指105が2本あるときには、記憶部1302に格納されている位置検出平面データのうちの第三の導体304のデータを用いて、真の指105の位置を確定するものであって、 位置検出部109は処理を開始すると(S1401)、重心演算部1303が記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第一の導体302のデータが全て揃ったか否かを確認し(S1402)、この処理を第一の導体302のデータが全て揃うまで繰り返し、 第一の導体302のデータが全て揃ったら(S1402のYES)、重心演算部1303は第一の導体302に対する重心演算を行い(S1403)、 次に、重心演算部1303は記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第二の導体303のデータが全て揃ったか否かを確認し(S1404)、この処理を第二の導体303のデータが全て揃うまで繰り返し、第二の導体303のデータが全て揃ったら(S1404のYES)、重心演算部1303は第二の導体303に対する重心演算を行い(S1405)、 第一の導体302の重心演算と第二の導体303の重心演算が完了すると、座標演算部1304は先ず、指105がセンサ106上に存在するか否かを判定し(S1406)、もし、指105が存在しているならば(S1406のYES)、次に座標演算部1304は、第一の導体302の重心あるいは第二の導体303の重心が二箇所存在するか、つまり指105が2本あるか否かを判定し(S1407)、指105が2本存在する場合は(S1407のYES)、座標演算部1304は指105の存在する位置を確定するための指候補確定処理を実行し(S1408)、 指105が一本のみ存在する場合(S1407のNO)は、座標演算部1304は、指候補確定処理を実行せずに一本のみの指105の存在を示すデータを出力して(S1411)、処理を終了する(S1409)、 座標演算部1304によって実行される指候補確定処理(S1408)は、指105が座標A,Bに存在する場合、縦電極重心演算S1402及び横電極重心演算S1405を行うと、それぞれ値X1,X2及びY1,Y2を得る、この演算結果を得て、座標演算部1304は、真に指105が存在する可能性がある座標である座標A(X1,Y1)及び座標B(X2,Y2)、座標A’(X1,Y2)及び座標B’(X2,Y1)から2点の座標を特定する演算を行うものであって、具体的には、座標演算部1304は処理を開始すると(S1501)、四つの座標A,A’,B及びB’について、それぞれ第三の導体304の候補番号を計算し(S1502)、この計算は、各座標A,A’,B及びB’について行い、 次に、座標演算部1304は、記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第三の導体304のデータが全て揃ったか否かを確認し(S1503)、この処理は第三の導体304のデータが全て揃うまで繰り返し、第三の導体304のデータが全て揃ったら(S1503のYES)、座標演算部1304は第一候補に基づく第三の導体304の計測値に基づく演算と、第二候補に基づく第三の導体304の計測値に基づく演算とを実行し(S1504)、 次に、座標演算部1304は、演算によって求めた第一候補の演算値Vtと第二候補の演算値Vt’を比較し(S1505)、この比較の結果、第一候補の演算値Vtが第二候補の演算値Vt’より大きければ(S1505のYES)、第一候補に相当する2点の座標データ、つまり(X1,Y1)と(X2,Y2)を出力し(S1506)、逆に、第二候補の演算値Vt’が第一候補の演算値Vtより大きければ(S1505のNO)、第二候補に相当する2点の座標データ、つまり(X1,Y2)と(X2,Y1)を出力し(S1507)、そして、一連の処理を終了する(S1508)、 情報処理装置101。」 2 引用文献2について (1)引用文献2記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 A 「【0015】 タッチ検出機能付き表示装置100は、画像表示機能を動作させて表示パネル20への画像表示を行うとともにタッチ検出を行う通常動作モードと、画像表示機能を停止、すなわち表示パネル20への画像表示を行わずにタッチ検出を行うスリープモードと、を有する。タッチ検出機能付き表示装置100は、通常動作モードで一定期間タッチ操作がないと、スリープモードに移行する。タッチ検出機能付き表示装置100は、スリープモードで所定のジェスチャを検出したら、通常動作モードに移行する。ここで、所定のジェスチャとは、例えば、ダブルタップ操作やスワイプ操作等、タッチパネル30上における指などの外部近接物体の動き方の軌跡パターンが定義されたものであり、タッチ検出機能付き表示装置100は、スリープモードにおいて、スリープモードから通常動作モードへの移行するためのジェスチャを検出することにより、画面表示を行う通常動作モードに移行する。 ・・・中略・・・ 【0049】 スリープモード時の第2のタッチ検出モードにおいて、図1に示すタッチパネル30は、第1駆動ドライバ41−1から供給される駆動信号に従って、複数の後述するタッチ検出電極TDLに電荷が供給される。このスリープモード時の第2のタッチ検出モードにおいて、タッチ検出部40は、タッチ検出電極TDLの自己静電容量方式によりタッチパネル30におけるタッチ検出を行うようになっている。 【0050】 スリープモード時の第2のタッチ検出モードにおいて、タッチパネル30は、複数の後述するタッチ検出電極TDLから、図7または図8に示す電圧検出器DETを介して、第2のタッチ検出信号Vdet2を出力する。この第2のタッチ検出信号Vdet2は、タッチ検出部40の第1検出部42−1に供給される。 【0051】 スリープモード時の第2のタッチ検出モードにおいて、第1検出部42−1は、タッチパネル30から供給される第2のタッチ検出信号Vdet2を増幅する。 【0052】 スリープモード時の第2のタッチ検出モードにおいて、第2A/D変換部43−2は、第1検出部42−1から入力された信号をA/D変換して、信号処理部44に出力する。 【0053】 一方、スリープモード時の第3のタッチ検出モードにおいて、図1に示すタッチパネル30は、第1駆動ドライバ41−1から複数の後述するタッチ検出電極TDLに供給される第1の駆動信号に従って、タッチ検出電極TDLに電荷が供給されると共に、駆動信号スイッチ140を介して第2駆動ドライバ41−2から複数の後述する駆動電極COMLに供給される第2の駆動信号に従って、駆動電極COMLに電荷が供給される。このスリープモード時の第3のタッチ検出モードにおいて、タッチ検出部40は、タッチ検出電極TDLの自己静電容量方式、及び、駆動電極COMLの自己静電容量方式の双方を併用することにより、タッチパネル30におけるタッチ検出を行うようになっている。 【0054】 スリープモード時の第3のタッチ検出モードにおいて、タッチパネル30は、複数の後述するタッチ検出電極TDLから、図7または図8に示す電圧検出器DETを介して、第3のタッチ検出信号Vdet3を出力すると共に、複数の後述する駆動電極COMLから、図7または図8に示す電圧検出器DETを介して、第4のタッチ検出信号Vdet4を出力する。第3のタッチ検出信号Vdet3は、タッチ検出部40の第1検出部42−1に供給され、第4のタッチ検出信号Vdet4は、タッチ検出部40の第2検出部42−2に供給される。 【0055】 スリープモード時の第3のタッチ検出モードにおいて、第1検出部42−1は、タッチパネル30から供給される第3のタッチ検出信号Vdet3を増幅し、第2検出部42−2は、タッチパネル30から供給される第4のタッチ検出信号Vdet4を増幅する。なお、第1検出部42−1は、第2のタッチ検出信号Vdet2、及び第3のタッチ検出信号Vdet3に含まれる高い周波数成分(ノイズ成分)を除去して出力する低域通過アナログフィルタであるアナログLPF(Low Pass Filter)を備えていてもよい。また、第2検出部42−2は、第4のタッチ検出信号Vdet4に含まれる高い周波数成分(ノイズ成分)を除去して出力する低域通過アナログフィルタであるアナログLPF(Low Pass Filter)を備えていてもよい。 【0056】 スリープモード時の第3のタッチ検出モードにおいて、第1A/D変換部43−1は、第1検出部42−1から入力された信号をA/D変換して、信号処理部44に出力する。また、第2A/D変換部43−2は、第2検出部42−2から入力された信号をA/D変換して、信号処理部44に出力する。」 B 「【0061】 本実施形態において、通常動作モード時の第1のタッチ検出モードでは、後述する駆動電極COMLと後述するタッチ検出電極TDLとの間の相互静電容量方式によりタッチパネル30におけるタッチ検出を行うことで、タッチパネル座標を求めることが可能である。一方、スリープモード時の第2のタッチ検出モードにおける一般的な自己静電容量方式では、タッチ検出電極TDLの配列方向の座標は検出可能であるが、タッチ検出電極TDLの配列方向に直交した駆動電極COMLの配列方向の座標は検出することができない。このため、本実施形態では、スリープモード時、まず、第2のタッチ検出モードにおいて、タッチ検出電極TDLの自己静電容量方式によりタッチ操作を検出し、この第2のタッチ検出モードにおいてタッチ操作を検出した場合に、第3のタッチ検出モードにおいて、タッチ検出電極TDLの自己静電容量方式、及び、駆動電極COMLの自己静電容量方式の双方を併用することにより、タッチ検出電極TDLの配列方向の座標を求めると共に、駆動電極COMLの配列方向の座標を求めるようにしている。これにより、スリープモードにおいて、表示制御部11によりタイミング制御が必要な駆動電極COMLとタッチ検出電極TDLとの間の相互静電容量方式のタッチ検出を行うことなく、タッチ座標やジェスチャを検出することができる。 C 「【0089】 図14に示す例において、(A)はタッチ検出用IC18のタッチ検出モードを示している。(B)はホストIC17から表示制御用IC19に送信されるコマンドを示し、(C)はホストIC17とタッチ検出用IC18との間で送受信されるコマンドを示している。(D)はタッチ検出電極TDLに与える駆動信号を示し、(E)は駆動電極COMLに与える駆動信号を示している。(F)は、タッチ検出用IC18から表示制御用IC19に実装されたスイッチ制御部110を含む一部機能を起動させるためのハードウェアリセット信号であるRESX2信号を示し、(G)はタッチ検出用IC18から表示制御用IC19に出力される制御信号であるTRGT信号を示し、(H)はタッチ検出用IC18から表示制御部11のスイッチ制御部110に出力されるRC信号(フローティング状態解除信号)を示している。(I)は表示制御用ICにおける表示動作タイミングを示し、(J)は表示制御部11のスイッチ制御部110から出力されるSELF_EN信号、GOFF信号、xDISC信号の動作タイミングを示し、(K)は表示制御部11のスイッチ制御部110から出力されるASW信号の動作タイミングを示している。 ・・・中略・・・ 【0093】 タッチ検出用IC18は、タイミングt3において、所定のインターバルで、タッチ検出電極TDLの自己静電容量方式と駆動電極COMLの自己静電容量方式を併用し(図14(D)、(E))、第3のタッチ検出モードでの動作を開始する(図14(A))。タッチ検出用IC18は、この第3のタッチ検出モードにより、スリープモードにおいてタッチ操作が行われた座標を検出する。具体的には、第3のタッチ検出モードで動作しているタッチ検出期間(タイミングt3〜t4期間)内において、第1駆動ドライバからタッチ検出電極TDLに所定間隔で第1の駆動信号が出力され、第1検出部42−1において、タッチ検出電極TDLの電圧変動(第1検出部42−1に入力される第3のタッチ検出信号Vdetの電圧変動)が検出され、第2駆動ドライバから駆動電極COMLに所定間隔で第2の駆動信号が出力され、第2検出部42−2において、駆動電極COMLの電圧変動(第2検出部42−2に入力される第4のタッチ検出信号Vdetの電圧変動)が検出され、これら第3のタッチ検出信号Vdet3の電圧変動及び第4のタッチ検出信号Vdet4の電圧変動に基づき、タッチ操作が行われた座標の検出が行われる。この第3のタッチ検出モード中のタッチ検出期間において、スイッチ制御部110は、一時的に走査信号線GCL及び画素信号SGLのフローティング状態を解除する。すなわち、この第3のタッチ検出モード中のタッチ検出期間において、スイッチ制御部110は、走査信号線GCL及び画素信号SGLが間欠的にフローティング状態となるように制御する。例えば、図14に示す例において、タッチ検出用IC18は、表示制御用IC19のスイッチ制御部110に出力されるRC信号(フローティング状態解除信号)を一時的にアクティブ(ハイレベル)とする(図14(H))。これにより、スイッチ制御部110から出力されるxDISC信号、GOFF信号、SELF_EN信号、及びASW信号のそれぞれのロジックが反転し、一時的に走査信号線GCL及び画素信号SGLのフローティング状態が解除される。なお、走査信号線GCL及び画素信号SGLのフローティング状態を解除するタイミングは、例えば、通常動作モードにおける1フレーム期間と同期して定期的であるのが好ましい(例えば、60Hz(1周期=16.7ms))。このように周期的に走査信号線GCL及び画素信号SGLのフローティング状態を解除することにより、走査信号線GCL及び画素信号SGLは、間欠的にフローティング状態となる。」 D 「【図14】 」 第5 対比・判断 1 本願発明1について対比 (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「複数の第一の導体302」は、「検出領域301」を「構成」し、「各第一の導体302は、ベース基材106bの短手方向(以下、Y軸方向という)に、所定の間隔を開けて設けられた複数の検出部302aの列で構成され」るものであるから、引用発明の「複数の第一の導体302」は、本願発明1の「複数本の検出電極を有する第1の検出電極群」に相当する。 イ 引用発明の「複数の第二の導体303」は、「検出領域301」を「構成」し、各「第二の導体303は、ベース基材106bのX軸方向に所定の間隔を開けて設けられた複数の検出部303aの列で構成され」るものであるから、上記アの点も踏まえると、引用発明の「複数の第二の導体303」は、本願発明1の「前記第1の検出電極群と直交する複数本の検出電極を有する第2の検出電極群」に相当する。 ウ 引用発明の「複数の第三の導体304」は、「検出領域301」を「構成」し、各「第三の導体304は、略線状の導体を、X軸方向及びY軸方向に対して45度の方向(第3の方向)に複数並べて構成され」るものであるから、上記ア、イの点も踏まえると、引用発明の「複数の第三の導体304」は、本願発明1の「前記第1の検出電極群および第2の検出電極群の各々と斜交する複数本の検出電極を有する斜交検出電極群」に相当する。 エ 引用発明の「信号処理回路202」の「スイッチ回路902」および「容量検出部903」は、「スイッチ回路902」が「第一の導体302、第二の導体303及び第三の導体304のそれぞれ各一本の導体を選択してホット側端子に接続すると共に、このホット側端子に接続された導体の両脇に位置する導体をコールド側端子に接続することで、ホット側端子に接続された導体と、その両脇に位置するコールド側端子に接続された導体との組み合わせによって、コンデンサを形成」し、「容量検出部903」が、「このコンデンサに指105が近接することによる、静電容量が変化を検出するものであ」る。 してみると、引用発明の「スイッチ回路902」および「容量検出部903」は、「複数の第一の導体302」、「複数の第二の導体303」、および「複数の第三の導体304」の各々について、「指」の近接状態に応じた静電容量を検出しているといえる。 したがって、引用発明の「指」は、本願発明1の「検出対象物」に相当し、そして、引用発明の「スイッチ回路902」および「容量検出部903」は、本願発明1の「前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々について、検出対象物の近接状態に応じた静電容量を検出可能な検出手段」に相当する。 オ−1 引用発明の「位置検出部109」は、「処理を開始すると(S1401)、重心演算部1303が記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第一の導体302のデータが全て揃ったか否かを確認し(S1402)、この処理を第一の導体302のデータが全て揃うまで繰り返し、第一の導体302のデータが全て揃ったら(S1402のYES)、重心演算部1303は第一の導体302に対する重心演算を行い(S1403)、次に、重心演算部1303は記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第二の導体303のデータが全て揃ったか否かを確認し(S1404)、この処理を第二の導体303のデータが全て揃うまで繰り返し、第二の導体303のデータが全て揃ったら(S1404のYES)、重心演算部1303は第二の導体303に対する重心演算を行い(S1405)」、「次に座標演算部1304は、第一の導体302の重心あるいは第二の導体303の重心が二箇所存在するか、つまり指105が2本あるか否かを判定し(S1407)」、「指105が一本のみ存在する場合(S1407のNO)は、座標演算部1304は、指候補確定処理を実行せずに一本のみの指105の存在を示すデータを出力(S1411)」するものである。ここで「第一の導体302のデータ」、「第二の導体303のデータ」が、「制御部904から出力される位置検出平面データ」であって、「静電容量」であることは明らかである。 してみると、引用発明の「位置検出部109」は、「指105が一本のみ存在する場合」(1本の指105のみが近接する場合)は、「複数の第一の導体302」の「静電容量」、「複数の第二の導体303」の「静電容量」に基づいて、「一本のみの指105の存在を示すデータを出力」しているといえ、また、この「一本のみの指105の存在を示すデータを出力」する処理は、「一本のみの指」の近接状態を判定しているものと認められ、さらに、この処理を「第1の検出モード」と称することは任意である。 オ−2 さらに、引用発明の「位置検出部109」は、「指105が2本あるか否かを判定し(S1407)、指105が2本存在する場合は(S1407のYES)、座標演算部1304は指105の存在する位置を確定するための指候補確定処理を実行(S1408)」するものであって、「指候補確定処理を実行(S1408)」は、「指105が座標A,Bに存在する場合、縦電極重心演算S1402及び横電極重心演算S1405を行うと、それぞれ値X1,X2及びY1,Y2を得る、この演算結果を得て、座標演算部1304は、真に指105が存在する可能性がある座標である座標A(X1,Y1)及び座標B(X2,Y2)、座標A’(X1,Y2)及び座標B’(X2,Y1)から2点の座標を特定する演算を行うものであって、具体的には、座標演算部1304は処理を開始すると(S1501)、四つの座標A,A’,B及びB’について、それぞれ第三の導体304の候補番号を計算し(S1502)、この計算は、各座標A,A’,B及びB’について行い、次に、座標演算部1304は、記憶部1302内のデータの蓄積状態を見て、第三の導体304のデータが全て揃ったか否かを確認し(S1503)、この処理は第三の導体304のデータが全て揃うまで繰り返し、第三の導体304のデータが全て揃ったら(S1503のYES)、座標演算部1304は第一候補に基づく第三の導体304の計測値に基づく演算と、第二候補に基づく第三の導体304の計測値に基づく演算とを実行し(S1504)、次に、座標演算部1304は、演算によって求めた第一候補の演算値Vtと第二候補の演算値Vt’を比較し(S1505)、この比較の結果、第一候補の演算値Vtが第二候補の演算値Vt’より大きければ(S1505のYES)、第一候補に相当する2点の座標データ、つまり(X1,Y1)と(X2,Y2)を出力し(S1506)、逆に、第二候補の演算値Vt’が第一候補の演算値Vtより大きければ(S1505のNO)、第二候補に相当する2点の座標データ、つまり(X1,Y2)と(X2,Y1)を出力(S1507)」するものである。 してみると、上記オ−1の点も踏まえると、引用発明の「位置検出部109」は、「指105が2本存在する場合」(2本の指105が近接する場合)は、「複数の第一の導体302」の「静電容量」、「複数の第二の導体303」の「静電容量」、「複数の第三の導体304」の「静電容量」に基づいて、「2本の指」の座標を出力しているといえ、また、この「2本の指105」座標を出力する処理は、「2本の指」の近接状態を判定しているものと認められ、さらに、この処理を「第2の検出モード」と称することは任意である。 オ−3 そして、引用発明の「位置検出部109」は、「指105が2本あるか否かを判定(S1407)」することで、上記オ−1とオ−2の処理を切り替えるものであるから、引用発明の「位置検出部109」は、本願発明1の「前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の各々の前記静電容量に基づいて、1つの前記検出対象物の近接状態を判定する第1の検出モードと、前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々の前記静電容量に基づいて、複数の前記検出対象物の各々の近接状態を判定する第2の検出モードと、を切り替えて実行する制御手段」に相当する。 カ さらに、引用発明の「位置検出部109」は、「指105が2本あるか否かを判定(S1407)し、指105が2本存在する場合」、すなわち、「第一の導体302の重心演算」および「第二の導体303の重心演算」の少なくともいずれか一方によって「重心が二箇所存在する」(複数の指が検出される)場合に、上記オ−2の処理を行うものであるから、引用発明は、「重心が二箇所存在する」ことが検出されるまでは上記オ−1の処理を維持し、「重心が二箇所存在する」ことが検出されると上記オ−2の処理に切り替えるものと認められる。 したがって、引用発明の「位置検出部109」のこの切り替えは、本願発明1の「前記制御手段は、前記第1の検出モードにおいて、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の少なくともいずれか一方によって複数の前記検出対象物が検出されるまでは、当該第1の検出モードを維持し、前記第1の検出モードにおいて、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の少なくともいずれか一方によって複数の検出対象物が検出されると、前記第2の検出モードに切り替え」ることに相当する。 キ 引用発明の「情報処理装置101」は、「複数の第一の導体302」、「複数の第二の導体303」、「複数の第三の導体304」、「スイッチ回路902」および「容量検出部903」、「位置検出部109」を備え、「指105」の近接を検出するものであるから、後記の点で相違するものの、本願発明1の「近接検出装置」に対応するものである。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 〈一致点〉 「複数本の検出電極を有する第1の検出電極群と、 前記第1の検出電極群と直交する複数本の検出電極を有する第2の検出電極群と、 前記第1の検出電極群および第2の検出電極群の各々と斜交する複数本の検出電極を有する斜交検出電極群と、 前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々について、検出対象物の近接状態に応じた静電容量を検出可能な検出手段と、 前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の各々の前記静電容量に基づいて、1つの前記検出対象物の近接状態を判定する第1の検出モードと、前記第1の検出電極群、前記第2の検出電極群、および前記斜交検出電極群の各々の前記静電容量に基づいて、複数の前記検出対象物の各々の近接状態を判定する第2の検出モードと、を切り替えて実行する制御手段と を備え、 前記制御手段は、 前記第1の検出モードにおいて、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の少なくともいずれか一方によって複数の前記検出対象物が検出されるまでは、当該第1の検出モードを維持し、 前記第1の検出モードにおいて、前記第1の検出電極群および前記第2の検出電極群の少なくともいずれか一方によって複数の検出対象物が検出されると、前記第2の検出モードに切り替える、 近接検出装置。」 〈相違点〉 本願発明1では、 「前記第1の検出電極群または前記第2の検出電極群のいずれか一方の前記静電容量に基づいて、前記検出対象物の近接の有無を判定する第3の検出モードをさらに有し、 前記制御手段は、 前記第3の検出モードにおいて、前記検出対象物の近接が有ると判定されるまでは、当該第3の検出モードを維持し、 前記第3の検出モードにおいて、前記検出対象物の近接が有ると判定されると、前記第1の検出モードに切り替え、 前記制御手段は、 前記第1の検出モードにおいて、 前記第3の検出モードで検出された前記第1の検出電極群または前記第2の検出電極群のいずれか一方の前記静電容量と、当該第1の検出モードで検出された前記第1の検出電極群または前記第2の検出電極群のいずれか他方の前記静電容量とに基づいて、1つの前記検出対象物の近接状態を判定する」ものであるのに対して、 引用発明では、そのような「第3の検出モード」を備えておらず、「位置検出部109」にその旨の特定がされていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 引用文献2には、表示装置とタッチパネルが一体の装置において、スリープモード時の第2のタッチ検出モード(「第3の検出モード」)として、タッチ検出電極TDL(「第1の検出電極群または第2の検出電極群の一方」)の静電容量を検出し指の近接の有無を判定し、指の近接が有るまでこのモードを維持し、指の近接が有ると、スリープモード時の第3のタッチ検出モード(「第1の検出モード」)として、タッチ検出電極TDL(「第1の検出電極群」)および駆動電極COML(「第2の検出電極群」)の両方の静電容量を検出し、指の位置(「近接状態」)を検出することが記載されている。 しかしながら、引用文献2のものでは、スリープモード時の第3のタッチ検出モード(「第1の検出モード」)において、スリープモード時の第2のタッチ検出モード(「第3の検出モード」)で検出されたタッチ検出電極TDLの静電容量を用いるものではなく、そのことが本願優先日前の周知技術であったとも認められない。 また、引用発明における指の近接状態の判定(「第1の検出モード」)は、スリープモード時に行うものではなく、引用文献2のスリープモード時のものを組合わせる理由が存在しない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、本願発明1の構成を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2023-06-19 |
出願番号 | P2020-558242 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 山澤 宏 |
発明の名称 | 斜交検出電極群を有する近接検出装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |