• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1399296
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-02-14 
確定日 2023-07-18 
事件の表示 特願2021− 11308「無線通信システムにおけるシンボルの送信および受信」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月30日出願公開、特開2021−125878、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月27日(パリ条約による優先権主張2020年1月31日、欧州特許庁)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月22日 :手続補正書の提出
令和4年 3月16日付け:拒絶理由通知書
令和4年 6月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年10月19日付け:拒絶査定
令和5年 2月14日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年10月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1−3、6−8、13、15−18に係る発明は、以下の引用文献1−3に記載された発明に基づいて、また、本願請求項4−5、9−12、14に係る発明は、以下の引用文献1−4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2013−534103号公報
2.特表2019−531643号公報(周知技術を示す文献)
3.特表2019−526979号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平10−117213号公報

第3 本願発明
本願請求項1−18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明18」という。)は、令和4年6月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−18に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、6は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
物理層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット送信機(120)によって実行される前記方法は、
前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)へ送信中のシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)よりも優先順位の高いシンボルの第2のストリーム(220)を送信する必要があることを検出するステップ(S102)を含み、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、前記方法はさらに、
物理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の送信済みシンボルの後に挿入するステップ(S104)と、
前記パケット受信機(130)に前記シンボルの第2のストリーム(220)を送信するために、前記専用タグ(240)の後に前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち複数のシンボルを挿入するステップ(S106)とを含む、方法。」

「【請求項6】
物理層プロトコルデータユニットPDUの受信のための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット受信機(130)によって実行される前記方法は、
シンボルにフラグメント化されているシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を受信するステップ(S202)を含み、シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であり、前記方法はさらに、
物理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の受信済みシンボルの後に受信するステップ(S204)とを含む、方法。」

また、本願発明2−5、7−18の概要は以下のとおりである。
本願発明2−5、10−14は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明7−9は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明15、17は、それぞれ、本願発明1に対応する「パケット送信機(120)」、「コンピュータプログラム(1210a)」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明16、18は、それぞれ、本願発明6に対応する「パケット受信器(130)」、「コンピュータプログラム(1210b)」の発明であり、本願発明6とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

ア 【図1】「



イ 「【0006】
図1は、システム100の実施形態を示す図である。システム100では、ホスト10が1以上の無線ネットワークおよび/または有線ネットワーク50を介してホスト20に通信可能に結合されているとしてよい。ホスト10および20はそれぞれ、互いに地理的に離れた位置にあるとしてよい。ある実施形態によると、「ホストコンピュータ」、「ホスト」、「サーバ」、「クライアント」、「ネットワークノード」、「エンドステーション」、「中間ステーション」、および、「ノード」といった用語は、同義語として利用されるとしてよく、例えば、これらに限定されないが、1以上のエンドステーション、モバイルインターネットデバイス、スマートフォン、メディアデバイス、入出力(I/Oデバイス)、タブレットコンピュータ、電気機器、中間ステーション、ネットワークインターフェース、クライアント、サーバおよび/またはこれらの一部分を意味するとしてよい。本実施形態では、「ネットワーク」とは、2以上のエンティティが少なくとも部分的に通信可能に結合されることを許可、円滑化および/または実現させる任意のメカニズム、手段、手順および/またはこれらの一部であるか、または、それらを含むものとしてよい。また、本実施形態では、第1のエンティティが第2のエンティティに「通信可能に結合」されている場合、第1のエンティティは1以上のコマンドおよび/またはデータを第2のエンティティとの間で送受信することが可能であるとしてよい。本実施形態では、「無線ネットワーク」は、少なくとも部分的に、少なくとも2つのエンティティが無線通信可能に、少なくとも部分的に、結合するネットワークを意味するとしてよい。本実施形態によると、「有線ネットワーク」は、少なくとも部分的に、少なくとも2つのエンティティが、少なくとも部分的に、無線以外の方法で通信可能に結合されているネットワークを意味するとしてよい。本実施形態によると、「データ」および「情報」は、同義語として利用されるとしてよく、1以上のコマンド(例えば、1以上のプログラム命令)であるか、または、1以上のコマンドを含むとしてよく、および/または、このような1以上のコマンドは、データおよび/または情報であるか、または、データおよび/または情報を含むとしてよい。また、本実施形態によると、「命令」は、データおよび/または1以上のコマンドを含むとしてよい。
【0007】
ホスト10は、回路基板(CB)74および回路カード(CC)75を有するとしてよい。本実施形態によると、CB74は、例えば、図示していないが、バスコネクタ/スロットシステムを介してCC75に物理的且つ通信可能に結合されているシステムマザーボードを含むとしてよい。CB74は、1以上のシングルコア式および/またはマルチコア式ホストプロセッサ(HP)12およびコンピュータ可読/書込可能メモリ21を含むとしてよい。図示していないが、CB74はさらに、1以上のチップセット(例えば、メモリ、入出力コントローラ回路、および/または、ネットワークインターフェースコントローラ(NIC)回路を含む)を含むとしてよい。1以上のホストプロセッサ12は、メモリ21およびCC75に1以上のチップセットを介して通信可能に結合されるとしてよい。CC75は、NIC回路118を含むとしてよい。」

ウ 「【0009】
図1に図示しているように、ホスト20は、回路118が実行する演算と同一または略同様の演算を実行可能なNIC回路118´を有するとしてよい。NIC回路118´および回路118の演算の関係は、逆であってもよい。図示していないが、ホスト20は、全体または一部に、少なくとも部分的に、ホスト10の他の構成要素と同様または同一の他の構成要素および/または機能を含むとしてよい。本明細書で用いる場合、「回路」とは、例えば、単独または組み合わせて、アナログ回路、デジタル回路、ハードワイヤード回路、プログラム可能回路、コプロセッサ回路、ステートマシン回路、および/または、プログラム可能回路で実行されるプログラム命令を含むメモリを含むとしてよい。また、本実施形態では、プロセッサ、プロセッサコア、コアおよびコントローラはそれぞれ、少なくとも部分的に、1以上の算術演算および/または論理演算を実行可能な回路、例えば、1以上の中央処理装置を含むとしてよい。また、本実施形態によると、チップセットは、少なくとも部分的に、1以上のホストプロセッサ、ストレージ、大容量ストレージ、1以上のノードおよび/またはメモリのうち2以上を通信可能に結合可能な回路を含むとしてよい。図示していないが、ホスト10は、グラフィカルユーザインターフェースシステムを含むとしてよい。図示していないグラフィカルユーザインターフェースシステムは、例えば、人間であるユーザがコマンドを入力でき、ホスト10、ホスト20および/またはシステム100の動作を監視できるようなキーボード、ポインティングデバイス、および、ディスプレイシステムを含むとしてよい。」

エ 「【0012】
回路118は、1以上の通信プロトコルに応じて、1以上のネットワーク50を介して、ホスト20の回路118´との間で、データおよび/またはコマンドをやり取りするとしてよい。例えば、本実施形態によると、これらの1以上のプロトコルは、例えば、1以上のイーサネット(登録商標)プロトコルおよび/またはTCP/IP(トランスミッション・コントロール・プロトコル/インターネット・プロトコル)プロトコルに準拠したものであってよい。
【0013】
例えば、システム100で利用される1以上のイーサネット(登録商標)プロトコルは、米国電気電子学会(IEEE)規格802.3?2008、2008年12月26日(例えば、「MAC制御一時停止処理」と題された添付書類31Bを含む)、IEEE規格802.1Q?2005、2006年5月19日、IEEE規格案P802.1Qau/D2.5、2009年12月18日、IEEE規格案P802.1Qaz/D1.2、2010年3月1日、IEEE規格案P802.1Qbb/D1.3規格案、2010年2月10日に準拠しているプロトコルであるとしてよい。システム100で利用されるTCP/IPプロトコルは、インターネット・エンジニアリング・タスク・フォース(IETF)リクエスト・フォー・コメント(RFC)791および793(1981年9月に公開)に記載されているプロトコルに準拠しているプロトコルであってもよい。これら以外にも、本実施形態から逸脱することなく、このようなデータおよび/またはコマンドのやり取りには、多くのさまざまなプロトコル(例えば、上述したものを含む)を利用するとしてよい(例えば、上述したプロトコル、関連するプロトコルおよび/またはその他のプロトコルの早期および/または今後開発されるバージョンを含む)。」

オ 【図6】「



カ 「【0014】
図6は、実施形態で実行される動作600を示す図である。例えば、ホスト10、ホスト20、システム100のリセット、および/または、ホスト10とホスト20との間でのネットワーク50を介した通信の再構築を行った後、ホスト10の回路118およびホスト20の回路118´は、1以上の(例えば、3つの)制御フレーム(CF)70をやり取り(例えば、送受信)するとしてよい。このような1以上の制御フレームのやり取りによって、少なくとも部分的に、回路118、ホスト10、回路118´、および/または、ホスト20の機能に、少なくとも部分的に、比較的優先度の高い1以上の他のフレーム52の1以上の部分(例えば、ペイロード(PL)54および/または1以上のその他の部分)の送信を優先し、少なくとも部分的に、比較的優先度の低い1以上のフレーム(F)40の送信(例えば、現在進行中の送信)に対して、少なくとも部分的に、割り込み(例えば、少なくとも一時的に、および/または、少なくとも部分的に、一時停止)を行うように、許可、イネーブルおよび/または指示を行うとしてよい。本実施形態によると、ペイロードは、フレームの1以上の部分、例えば、イーサネット(登録商標)フレーム、IPパケットおよび/またはTCPパケットのペイロードのうち1以上の部分を含むとしてよい。」

キ 【図2】「



ク 「【0015】
例えば、図2に示すように、本実施形態では、1以上の制御フレーム70は、IEEE規格802.3?2008、添付書類31B、2008年12月26日に準拠した種類の1以上のイーサネット(登録商標)制御一時停止フレーム(PF)202、および/または、IEEE規格案P802.1Qbb/D1.3、2010年2月10日に準拠した種類の1以上のイーサネット(登録商標)優先度フロー制御フレーム(PFCF)204であるか、これらのフレームを含むとしてよい。本実施形態によると、1以上のPF202および/または1以上のPFCF204は、値0x8808(つまり、16進法の8808)を含むイーサネット(登録商標)タイプフィールド(不図示)を含むとしてよい。また、本実施形態によると、1以上のPF202および/または1以上のPFCF204は、MAC制御オペコードフィールド(FLD)205および210を含むとしてよい。このような制御オペコードフィールド205および210は、1以上の所定のフィールド値(FV)206および212を含むとしてよい。これらの所定のフィールド値206および212は、1以上の所定の確保されていたオペコード304(例えば、0x0202)を含むとしてよい。本実施形態によると、1以上の所定のオペコード304は、1以上のPF202および/またはPFCF204を、受信することによって、少なくとも部分的に、(1)少なくとも部分的に、1以上のフレーム52の1以上の部分の送信を優先して、少なくとも部分的に、1以上のフレーム40の送信への割り込みがイネーブルとなること、および/または、(2)このような割り込みが現在開始されていること、を指示する、および/または、可能とする特別な制御フレームとして指定しているとしてよい。これに代えて、または、これに加えて、本実施形態から逸脱することなく、このようにイネーブルにすること、および/または、指示することは、少なくとも部分的に、例えば、IEEE規格案P802.1Qaz/D1.2,2010年3月1日に準拠したデータ・センター・ブリッジング・エクスチェンジ(DCBX)プロトコルで利用されている1以上の所定および/または確保していたTLV(タイプ、長さ、値)を受信することによって、少なくとも部分的に、行われるとしてよい。
【0016】
この機能が許可、イネーブルおよび/または指示された後、少なくとも部分的に、回路118は、少なくとも部分的に、1以上のフレーム40をホスト20の回路118´(例えば、回路118´および/またはホスト20が、1以上のフレーム40の受信者であるとしてよい)に1以上のネットワーク50を介して送信し始めるとしてよい。1以上のフレーム40を全てホスト20の回路118´に送信し終える前に、(1)少なくとも部分的に、1以上のフレームフラグメント(FF)60で、1以上の他のフレーム52の1以上の部分(例えば、ペイロード54)をホスト20へ送信すること、および/または、(2)少なくとも部分的に、例えば、ホスト10および/またはホスト20(図6の処理602を参照のこと)によって1以上の入力フロー制御通知(FCN)71を処理することを優先して、回路118は、少なくとも部分的に、回路118´および/またはホスト20に対して、少なくとも部分的に、回路118および/またはホスト10による1以上のフレーム40の回路118´および/またはホスト20への送信に対する割り込みを、少なくとも部分的に、指示するとしてよい。回路118は、1以上のネットワーク50を介して、ホスト20の回路118´に1以上の追加CF70を、少なくとも部分的に、発行することによって、少なくとも部分的に、この指示を行うとしてよい。回路118´は、1以上の追加CF70を、少なくとも部分的に、受信するとしてよく、図6の処理603に示すように、この際に、少なくとも部分的に、この指示を受信するとしてよい。少なくとも部分的に、処理602および/または603の実行後、または、実行と同時に、少なくとも部分的に、回路118および/またはホスト10による回路118´および/またはホスト20への1以上のフレーム40の送信は、少なくとも部分的に、割り込みの対象になるとしてよい。このため、本実施形態では、回路118および/または回路118´は、(1)少なくとも部分的に、1以上のフレームフラグメント(FF)60において1以上の他のフレーム52の1以上の部分(例えば、ペイロード54)をホスト20に送信すること、および/または、(2)少なくとも部分的に、1以上の入力フロー制御通知71を処理することを優先して、少なくとも部分的に、回路118および/またはホスト10から回路118´および/またはホスト20への1以上のフレーム40の送信に対して、少なくとも部分的に、割り込みを許可するとしてよい。本実施形態によると、エンティティは、当該エンティティが、少なくとも部分的に、イベントまたは発生につながるような1以上の動作を、少なくとも部分的に、円滑化、イネーブル、実施、要求、命令、指令、および/または、実行することが可能である場合に、当該イベントまたは発生を「許可」すると言うとしてよい。
【0017】
本実施形態によると、それぞれの追加CF70の、少なくとも部分的な、送信は、一のフレームフラグメント(例えば、ユーザ優先度毎、および、通信リンク毎に、並行に)に、対応付けられているか、および/または、インターリーブされているとしてよい。この制限を超えて追加CF70が回路118´で受信されると、回路118´によって、対応付けられている優先度に応じてフレームを再収集するべくリセットが行なわれるとしてよい。しかし、本実施形態から逸脱することなく、複数のフレームフラグメントを一の追加CF70に対応付けるとしてもよいし、その逆も可能である。また、本実施形態によると、1以上のフレーム40の送信は、ホスト10による送信が継続して行われる1以上のフレーム40のペイロードが、(1)最小イーサネット(登録商標)ペイロード長(例えば、46バイト)より大きく、(2)システム100で実施し得るバッファリングを調整するように、割り込みを行うとしてよい。後者の条件を考慮すると、本実施形態では、このように残ったペイロードが、最大許容ペイロードサイズ(例えば、ジャンボイーサネット(登録商標)フレームの場合には9000バイト、通常のイーサネット(登録商標)フレームの場合には1500バイト)と、250バイトとの差分未満になるとしてよい。言うまでもなく、上記の内容は、一例に過ぎず、本開示から逸脱することなく変更するとしてよい。
【0018】
処理602、処理603および/または処理604を少なくとも部分的に実行した後、回路118は、(1)1以上のネットワーク50を介して1以上のFF60を回路118´に、少なくとも部分的に、送信するとしてよく、および/または、(2)回路118、回路118´、ホスト10、および/または、ホスト20は、1以上のフロー制御通知71(図6の処理605を参照のこと)を、少なくとも部分的に、処理するとしてよい。1以上のFF60は、PL54の1以上の部分および1以上の所定値(PV)74を含むとしてよい。1以上のPV74は、少なくとも部分的に、回路118´および/またはホスト20に対して、1以上のFF60は、実際には、1以上のFF60であることを指示するとしてよい。回路118は、1以上のダイレクトメモリアクセス処理によって、メモリ21からペイロード54を、少なくとも部分的に、受信するとしてよい。これに代えて、または、これに加えて、回路118は、他の種類のデータ転送処理によって、および/または、システム100内の他の構成要素から、ペイロード54を、少なくとも部分的に、受信するとしてよい。」

ケ 「【0033】
1以上のFF60を、少なくとも部分的に、回路118によって送信した後、および/または、1以上のフロー制御通知71が、少なくとも部分的に処理された後(処理605を参照のこと)、回路118は、以前の送信途中に割り込みが発生していた1以上のフレーム40の送信を、少なくとも部分的に、再開するとしてよい(図6の処理606を参照のこと)回路118´は、1以上のフレームFF60および1以上のフレーム40を、少なくとも部分的に受信してもよく、少なくとも部分的に処理するとしてもよい。回路118´は、1以上のFF60でエラー(例えば、1以上のCRC関連のエラー)を検出すると、この旨を回路118に信号伝達するとしてよく、回路118は、1以上のフレーム52を再送信用に再スケジューリングするとしてよい。」

ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。
上記ア−ケの記載から、引用文献1には、「システム100においてホスト10によって実行される方法」が記載されていると認められる。

(2)引用発明
上記(1)から、システム100においてホスト10によって実行される方法に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、回路118は、ホスト10の構成の一部であるから、「回路118」は、「ホスト10」と表し、また、回路118´は、ホスト20の構成の一部であるから、「回路118´」は、「ホスト20」と表することとした。

「システム100においてホスト10によって実行される方法であって、
システム100では、ホスト10が無線ネットワーク50を介してホスト20に通信可能に結合されており、
ホスト10は、通信プロトコルに応じて、ネットワーク50を介して、ホスト20との間で、データおよび/またはコマンドをやり取りし、
ホスト10およびホスト20は、制御フレーム(CF)70をやり取り(例えば、送受信)し、
このような制御フレームのやり取りによって、ホスト10およびホスト20の機能に、比較的優先度の高い他のフレーム52の送信を優先し、比較的優先度の低い1以上のフレーム(F)40の送信(例えば、現在進行中の送信)に対して、割り込みを行うように指示を行い、
制御フレーム70は、イーサネット(登録商標)制御一時停止フレーム(PF)202、および/またはイーサネット(登録商標)優先度フロー制御フレーム(PFCF)204であり、
PF202および/またはPFCF204は、MAC制御オペコードフィールド(FLD)205および210を含み、
オペコード304は、PF202および/またはPFCF204を、受信することによって、フレーム52の送信を優先して、フレーム40の送信への割り込みがイネーブルとなることを指示し、
ホスト10は、フレーム40をホスト20にネットワーク50を介して送信し始め、
フレーム40を全てホスト20に送信し終える前に、フレームフラグメント(FF)60で、他のフレーム52をホスト20へ送信することを優先して、ホスト10は、ホスト20に対して、ホスト10によるフレーム40のホスト20への送信に対する割り込みを指示し、
ホスト10は、ネットワーク50を介して、ホスト20に追加CF70を発行することによって、この指示を行い、
ホスト10によるホスト20へのフレーム40の送信は、割り込みの対象になり、
ホスト10は、フレームフラグメント(FF)60において他のフレーム52をホスト20に送信することを優先して、ホスト10からホスト20へのフレーム40の送信に対して、割り込みを許可し、
ホスト10は、ネットワーク50を介してFF60をホスト20に送信し、
FF60は、PL54の部分および所定値(PV)74を含み、
PV74は、ホスト20に対して、FF60は、実際には、FF60であることを指示し、
FF60をホスト10によって送信した後、ホスト10は、以前の送信途中に割り込みが発生していたフレーム40の送信を再開する
方法。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0020】
基地局110がUE120および/または140に送信すべきデータを有するとき、基地局110は、割り振られたリソース、たとえば時間/周波数リソースを使用して1つまたは複数のダウンリンク送信においてこのデータを送信する。UE120、140への送信のために特定のリソースパーティションが割り当てられ得る。低レイテンシデータのダウンリンク送信のために時間/周波数リソースの部分が予約されることがあり、この部分は低レイテンシリソースと呼ばれ得る。レイテンシトレラントデータのダウンリンク送信のために時間/周波数リソースの何らかの他の部分が予約されることがあり、この部分はレイテンシトレラントリソースと呼ばれ得る。低レイテンシリソースとして予約されるリソースの部分は、たとえばトラフィック負荷、帯域幅要件、およびレイテンシなどの要因に基づいて、時間とともに動的または半静的に変化し得る。低レイテンシデータは本質的にバースト的またはスポラディックであり得、短いパケット中で送信され得る。低レイテンシデータのためにリソースを専用化するのは非効率的なことがある。したがって、レイテンシトレラントトラフィックのためのリソース割当てが、時間ドメインおよび周波数ドメインにおいて低レイテンシトラフィックのためのリソース割当てと重複する、共存領域が定義され得る。レイテンシトレラントUEは、それらが共存領域中にスケジュールされた場合、それらの送信中に低レイテンシトラフィックの存在を監視し得る。別の例では、特定の共存領域は予約されないことがある。共存は、キャリア帯域幅(BW)内の共有時間周波数リソース内で動的に発生し得る。さらに、共存リソースが複数のキャリアBWにわたり得ることも可能である。あるいは、進行中のまたはスケジュールされた(レイテンシトレラント)送信は、他の(低レイテンシ)送信のためにスケジュールされたリソースの部分を割り振るかまたはさもなければ使用することによって「パンクチャリング」または「プリエンプト」され得る。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0065】
ダウンリンク物理層への入力は、キュー108からのデータ並びにパイロットシーケンス及びインジケータシーケンスを含み、これらの全ては最終的にリソースマッパー120を用いてリソースにマッピングされる。」

「【0091】
また、「インジケーション制御」、「インジケータシーケンス」、及び「インジケーション制御シグナリング」といった専門用語は、本明細書では同じ意味で用いられている。さらに、「パンクチャリング」及び「プリエンプト」は、本明細書では同じ意味を含む。プリエンプトされたあらゆるデータは、データが元々スケジューリングされたリソースで送出されないという点でパンクチャリングされている。逆もまた真である。すなわち、パンクチャリングされたあらゆるデータは、データが元々スケジューリングされたリソースで送出されないという点でプリエンプトされている。プリエンプトされたデータは、後の時間−周波数リソースで送出されてもよく又は送出されなくてもよい。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0027】図6において、フレームは可変長の低優先データのみが入るタイプ0フレームと、固定長の高優先データと可変長の低優先データがこの順番で入るタイプ1のフレームの2タイプのフォーマットを有する。フレームデリミタはフレームの開始と終了を表すビット列である。フレームデリミタとして、例えば、”11111111”が使用される。
【0028】図7において、上位レイヤから低優先パケット転送要求があると、低優先パケットはタイプ0のフレームに入れられて転送される。このフレームを転送中に上位レイヤから高優先パケット転送要求があると、ただちにフレームデリミタを送信することによりタイプ0のフレーム転送を中断する。そして直ちに高優先パケットの全部または一部が固定長のタイプ1のフレームに入れられて転送される。高優先パケットの一部しかタイプ1のフレームに入らない場合には複数のタイプ1のフレームに分割されて転送される。タイプ1のフレーム中の高優先データ部の余った部分には値0が書き込まれる。さらに、高優先パケットを転送終了時に次の高優先パケットの転送要求がなく、かつ、転送が中断された低優先パケットがある場合には、同じタイプ1のフレームの低優先データ部に中断された低優先パケットを入れて転送する。もし、このフレームを転送中に高優先パケットの転送要求が新たに発生した場合には、再び低優先パケットの転送を中断するために、ただちにフレームデリミタが送信され新たな高優先パケットが入った別のタイプ1のフレームの転送が行われる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明において、「PF202および/またはPFCF204は、MAC制御オペコードフィールド(FLD)205および210を含」むことから、通信技術分野の技術常識に照らすと、引用発明は、MAC層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法といえる。

イ 引用発明の「システム100」、「ホスト10」及び「ホスト20」は、それぞれ、本願発明1の「無線通信システム(100)」、「パケット送信機(120)」及び「パケット受信機(130)」に相当する。また、引用発明の「MAC層」は、本願発明1の「物理層」と、「OSI参照モデル階層」である点で共通する。さらに、引用発明の「フレーム40」、「他のフレーム52」、「フレーム」は、それぞれ、本願発明1の「シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)」、「シンボルの第2のストリーム(220)」及び「シンボルの」「ストリーム」と、「第1の通信データ」、「第2の通信データ」及び「通信データ」である点で共通する

ウ 引用発明は、「システム100においてホスト10によって実行される方法」である。
したがって、上記ア−イを踏まえると、引用発明の「MAC層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法であって、システム100においてホスト10によって実行される方法」は、本願発明1の「物理層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット送信機(120)によって実行される前記方法」と、「OSI参照モデル階層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット送信機(120)によって実行される前記方法」である点で共通する。

エ 引用発明において、「このような制御フレームのやり取りによって、ホスト10およびホスト20の機能に、比較的優先度の高い他のフレーム52の送信を優先し、比較的優先度の低い1以上のフレーム(F)40の送信(例えば、現在進行中の送信)に対して、割り込みを行うように指示を行い」、「フレーム40を全てホスト20に送信し終える前に、フレームフラグメント(FF)60で、他のフレーム52をホスト20へ送信することを優先して、ホスト10は、ホスト20に対して、ホスト10によるフレーム40のホスト20への送信に対する割り込みを指示」することから、ホスト10からホスト20へ送信中のフレーム40よりも優先順位の高い他のフレーム52を送信する必要があることを検出しているといえる。
したがって、上記イを踏まえると、引用発明の「ホスト10からホスト20へ送信中のフレーム40よりも優先順位の高い他のフレーム52を送信する必要があることを検出」する構成は、本願発明1の「前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)へ送信中のシンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)よりも優先順位の高いシンボルの第2のストリーム(220)を送信する必要があることを検出するステップ(S102)」と、「前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)へ送信中の第1の通信データよりも優先順位の高い第2の通信データを送信する必要があることを検出するステップ」である点で共通する。

オ 引用発明の「フレーム」は、「MAC層プロトコルデータユニットPDUに対応する」といえる。
したがって、上記イを踏まえると、引用発明の「フレームはMAC層プロトコルデータユニットPDUに対応する」構成は、本願発明1の「シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であ」る構成と、「各通信データはOSI参照モデル階層PDUに対応する」構成で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「OSI参照モデル階層プロトコルデータユニットPDUの送信を準備するための方法であって、無線通信システム(100)においてパケット送信機(120)によって実行される前記方法は、
前記パケット送信機(120)からパケット受信機(130)へ送信中の第1の通信データよりも優先順位の高い第2の通信データを送信する必要があることを検出するステップを含み、各通信データはOSI参照モデル階層PDUに対応する、方法。」

(相違点1)
OSI参照モデル階層が、本願発明1では、「物理層」であるのに対し、引用発明では、「MAC層」である点。

(相違点2)
通信データが、本願発明1では、「シンボルの」「ストリーム」であるのに対し、引用発明では、「フレーム」である点。

(相違点3)
各通信データはOSI参照モデル階層PDUに対応する構成において、本願発明1では、「シンボルの各ストリームは対応する物理層PDUの一部であ」るのに対し、引用発明では、「フレームはMAC層プロトコルデータユニットPDUに対応する」点。

(相違点4)
本願発明1では、「物理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の送信済みシンボルの後に挿入するステップ(S104)」を含むのに対し、引用発明では、「ホスト10は、フレーム40をホスト20にネットワーク50を介して送信し始め」、「フレーム40を全てホスト20に送信し終える前に、フレームフラグメント(FF)60で、他のフレーム52をホスト20へ送信することを優先して、ホスト10は、ホスト20に対して、ホスト10によるフレーム40のホスト20への送信に対する割り込みを指示し」、「ホスト10は、ネットワーク50を介して、ホスト20に追加CF70を発行することによって、この指示を行」う点。

(相違点5)
本願発明1では、「前記パケット受信機(130)に前記シンボルの第2のストリーム(220)を送信するために、前記専用タグ(240)の後に前記シンボルの第2のストリーム(220)のうち複数のシンボルを挿入するステップ(S106)」を含むのに対し、引用発明では、「ホスト10は、ネットワーク50を介して、ホスト20に追加CF70を発行することによって、この指示を行い」、「ホスト10によるホスト20へのフレーム40の送信は、割り込みの対象になり」、「ホスト10は、フレームフラグメント(FF)60において他のフレーム52をホスト20に送信することを優先して、ホスト10からホスト20へのフレーム40の送信に対して、割り込みを許可し」、「ホスト10は、ネットワーク50を介してFF60をホスト20に送信」する点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、「専用タグ(240)」に関する点で互いに関連している上記相違点4−5についてまとめて先に検討する。
引用文献2−4には、上記相違点4−5に係る本願発明1の構成について記載も示唆もなく、また、このような構成が本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
また、引用発明は、「FF60は、PL54の部分および所定値(PV)74を含み」、「PV74は、ホスト20に対して、FF60は、実際には、FF60であることを指示」する構成を有するものの、上記第4の2−3の記載事項から、上記相違点4−5に係る本願発明1の構成が容易想到とはいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項から、上記相違点4−5に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、上記相違点1−3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2−5、10−14について
本願発明2−5、10−14は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1と、送信及び受信という一対の対応関係にある発明であり、上記相違点4に係る本願発明1の構成と対応関係にある「物理層においてプリエンプションされている前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)を示す専用タグ(240)を、前記シンボルの第1のストリーム(210,210a,210b)のうち最新の受信済みシンボルの後に受信するステップ(S204)」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明7−9について
本願発明7−9は、本願発明6と同一の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明15、17について
本願発明15、17は、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 本願発明16、18について
本願発明16、18は、本願発明6の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−18は、当業者が引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2023-07-03 
出願番号 P2021-011308
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山澤 宏
特許庁審判官 中野 裕二
富澤 哲生
発明の名称 無線通信システムにおけるシンボルの送信および受信  
代理人 弁理士法人深見特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ