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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B60C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B60C 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B60C |
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管理番号 | 1399326 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-12-13 |
確定日 | 2023-05-01 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6888366号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6888366号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6、10〜15〕、〔7〜8〕、9について訂正することを認める。 特許第6888366号の請求項1〜15に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6888366号の請求項1〜15に係る特許についての出願は、平成29年3月29日(優先権主張 平成28年7月12日)の出願であって、令和3年5月24日にその特許権の設定登録がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1〜15に係る特許について、令和3年12月10日に特許異議申立人村川明美(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、令和4年3月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月25日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年6月1日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内である同年7月5日に申立人から意見書が提出され、同年10月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月8日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年12月21日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内である令和5年1月20日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年12月8日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許68883666号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜15ついて訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和4年5月25日の訂正請求書による訂正請求は取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられているタイヤ。」 と記載されているのを、 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部とが設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記ショルダー陸部には、一端が前記ショルダー主溝に連なりかつ他端が前記ショルダー陸部内で途切れる複数のラグサイプが設けられており、 前記ショルダー陸部は、前記複数のラグサイプを除いて、溝やサイプを有しないセミプレーンリブであるタイヤ。」 に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2〜6、10〜15も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記外側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁の凹壁部と向き合いかつ前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部と、前記内側溝壁の凸壁部と向き合いかつ前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記外側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁の凹壁部と向き合いかつ前記内側溝壁に近付く凸壁部と、前記内側溝壁の凸壁部と向き合いかつ前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。」 に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5〜6も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に 「前記外側溝壁及び前記内側溝壁は、それぞれ、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって溝中心から遠ざかる向きに傾斜し、 前記ショルダー主溝のいずれの溝横断面においても、前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度は、前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度よりも大きい請求項4記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「前記内側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって溝中心から遠ざかる向きに傾斜し、 前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜し、 前記ショルダー主溝のいずれの溝横断面においても、前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度は、前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度よりも大きい請求項4記載のタイヤ。」 に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に 「前記ミドル横溝は、陸部の踏面側で開口する本体部と、前記本体部の底部から前記本体部よりも小さい幅でタイヤ半径方向内方にのびるサイプ部とを含む請求項6記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部と(合議体注:この「と」は訂正特許請求の範囲には記載されていないが、訂正事項4には記載されている。)が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記ミドル陸部には、前記凹部と、前記凹部に連なりかつ前記ミドル陸部を横切るミドル横溝が設けられており、 前記ミドル横溝は、陸部の踏面側で開口する本体部と、前記本体部の底部から前記本体部よりも小さい幅でタイヤ半径方向内方にのびるサイプ部とを含むタイヤ。」 に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に 「前記凹部は、前記内側溝壁に連なる一対の第1溝壁と、前記一対の第1溝壁の間をタイヤ周方向にのびる第2溝壁とを含む請求項1乃至8のいずれかに記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記凹部は、前記内側溝壁に連なる一対の第1溝壁と、前記一対の第1溝壁の間をタイヤ周方向にのびる第2溝壁とを含むタイヤ。」 に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に 「前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記ショルダー主溝の溝横断面において、 前記内側溝壁及び前記外側溝壁は、それぞれ、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有する請求項1記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記ショルダー主溝の溝横断面において、 前記内側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有し、 前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有する請求項1記載のタイヤ。」 に訂正する(請求項10の記載を直接又は間接的に引用する請求項11〜15も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項11に 「前記外側部の最大の深さは、前記ショルダー主溝の最大の深さの0.30〜0.50倍である請求項10記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「前記内側溝壁の前記外側部の最大の深さ、及び、前記外側溝壁の前記外側部の最大の深さは、それぞれ、前記ショルダー主溝の最大の深さの0.30〜0.50倍である請求項10記載のタイヤ。」 に訂正する(請求項11の記載を直接又は間接的に引用する請求項12〜15も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項12に 「前記各本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項10又は11記載のタイヤ。」 と記載されているのを、 「前記内側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記外側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部と、前記内側溝壁に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項10又は11記載のタイヤ。」 に訂正する(請求項12の記載を直接又は間接的に引用する請求項13〜15も同様に訂正する。)。 (9)一群の請求項 訂正前の請求項1〜15について、請求項2〜15は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1〜15に係る本件訂正は、一群の請求項1〜15に対して請求されたものである。 また、訂正後の請求項7〜9に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときには、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「トレッド部」について、「前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部」「が設けられ」、「前記ショルダー陸部には、一端が前記ショルダー主溝に連なりかつ他端が前記ショルダー陸部内で途切れる複数のラグサイプが設けられており、前記ショルダー陸部は、前記複数のラグサイプを除いて、溝やサイプを有しないセミプレーンリブである」という事項を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 (ア) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ともいう。)の段落【0029】には、「本実施形態の各ショルダー主溝5は、例えば、最もトレッド端Te側に配され、直線状にのびている。ショルダー主溝5とトレッド端Teとの間には、ショルダー陸部9が区分されている。」と記載され、同段落【0053】には、「本実施形態のショルダー主溝5及びクラウン主溝6には、一端が主溝に連なりかつ他端が陸部内で途切れる複数のラグサイプ30が設けられている。」と記載され、同段落【0067】には、「ショルダー陸部9は、上述したラグサイプ30を除いて、溝やサイプを有しないセミプレーンリブである。」と記載され、図1から、トレッド部2に、ショルダー陸部9が設けられていることが看取できるから、訂正事項1の訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である(なお、下線は当審が付した。)。 (イ) また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正前の請求項4の「前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部」及び「前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部」について、それぞれ、「前記内側溝壁に近付く凸壁部」及び「前記内側溝壁に近付く凸壁部」と訂正することで、「外側溝壁」の「凸壁部」及び「凹壁部」の方向を明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、この明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正は、図2等から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は、訂正前の請求項5の「前記外側溝壁」「は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって溝中心から遠ざかる向きに傾斜し」について、「前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜し」と訂正することで、「外側溝壁」の傾斜方向を明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、この明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正は、図2等から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、訂正前の請求項7が、訂正前の請求項1乃至5のいずれかを引用する訂正前の請求項6を引用する記載であったものを、訂正前の請求項2乃至5のいずれをも引用しないようにし、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項6を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、5つの択一的な記載の1つの記載を選択した訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正及び5つの択一的な記載の1つの記載を選択した訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1乃至8のいずれかを引用する記載であったものを、訂正前の請求項2乃至8のいずれをも引用しないようにし、訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、8つの択一的な記載の1つの記載を選択した訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正及び8つの択一的な記載の1つの記載を選択した訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、訂正前の請求項10の「前記外側溝壁は、」「溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有する」について、「前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有する」と訂正することで、「外側溝壁」の「本体部」及び「外側部」の傾斜方向を明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、この明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正は、図2等から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、訂正前の請求項11の「前記外側部の最大の深さは」について、「前記内側溝壁の前記外側部の最大の深さは、及び、前記外側溝壁の前記外側部の最大の深さは、それぞれ」と訂正することで、「前記外側部の最大の深さ」がどの部分の構成であるかを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、この明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正は、図2等から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的の適否 訂正事項8は、訂正前の請求項12の「前記各本体部」について、「前記内側溝壁の前記本体部」及び「前記外側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部と、前記内側溝壁に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含む」と訂正することで、「前記各本体部」がそれぞれどの部分の構成であるかを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 また、この明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正は、図2等から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (9)独立特許要件 本件においては、訂正前の全ての請求項1〜15について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1〜15に係る訂正事項1〜訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 小括 上記のとおり、本件訂正の訂正事項1〜訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6、10〜15〕、〔7〜8〕、9について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜15に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」〜「本件発明15」という。)は、令和4年12月8日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部とが設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記ショルダー陸部には、一端が前記ショルダー主溝に連なりかつ他端が前記ショルダー陸部内で途切れる複数のラグサイプが設けられており、 前記ショルダー陸部は、前記複数のラグサイプを除いて、溝やサイプを有しないセミプレーンリブであるタイヤ。 【請求項2】 前記凹部は、少なくとも前記踏面において、タイヤ周方向の幅がタイヤ軸方向内側に向かって漸減している請求項1記載のタイヤ。 【請求項3】 前記凹部は、前記踏面から溝底面までのびている請求項1又は2記載のタイヤ。 【請求項4】 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記外側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁の凹壁部と向き合いかつ前記内側溝壁に近付く凸壁部と、前記内側溝壁の凸壁部と向き合いかつ前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項5】 前記内側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって溝中心から遠ざかる向きに傾斜し、 前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜し、 前記ショルダー主溝のいずれの溝横断面においても、前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度は、前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度よりも大きい請求項4記載のタイヤ。 【請求項6】 前記トレッド部には、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部が設けられ、 前記ミドル陸部には、前記凹部と、前記凹部に連なりかつ前記ミドル陸部を横切るミドル横溝が設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項7】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記ミドル陸部には、前記凹部と、前記凹部に連なりかつ前記ミドル陸部を横切るミドル横溝が設けられており、 前記ミドル横溝は、陸部の踏面側で開口する本体部と、前記本体部の底部から前記本体部よりも小さい幅でタイヤ半径方向内方にのびるサイプ部とを含むタイヤ。 【請求項8】 前記サイプ部のタイヤ周方向の一方側のサイプ壁は、前記本体部のタイヤ周方向の一方側の溝壁と滑らかに連続している請求項7記載のタイヤ。 【請求項9】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記凹部は、前記内側溝壁に連なる一対の第1溝壁と、前記一対の第1溝壁の間をタイヤ周方向にのびる第2溝壁とを含むタイヤ。 【請求項10】 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記ショルダー主溝の溝横断面において、 前記内側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有し、 前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有する請求項1記載のタイヤ。 【請求項11】 前記内側溝壁の前記外側部の最大の深さ、及び、前記外側溝壁の前記外側部の最大の深さは、それぞれ、前記ショルダー主溝の最大の深さの0.30〜0.50倍である請求項10記載のタイヤ。 【請求項12】 前記内側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記外側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部と、前記内側溝壁に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項10又は11記載のタイヤ。 【請求項13】 前記内側溝壁の前記各凸壁部は、前記外側溝壁の前記凹壁部と向き合っている請求項12記載のタイヤ。 【請求項14】 前記外側溝壁の前記本体部は、前記内側溝壁の前記本体部よりも大きいトレッド法線に対する角度を有する請求項12又は13記載のタイヤ。 【請求項15】 前記内側溝壁の前記本体部と前記外側溝壁の前記本体部とのトレッド法線に対する角度の差は、2〜13°である請求項14記載のタイヤ。」 第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和4年10月6日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 [取消理由1](上記取消理由通知書の取消理由2) (進歩性)本件特許の請求項1〜3、5、6及び10〜15に係る発明は、本件特許の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [取消理由2](上記取消理由通知書の取消理由3) (サポート要件)請求項1〜3、5、6及び10〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。 [取消理由3](上記取消理由通知書の取消理由4) (明確性要件)請求項1〜3、5、6及び10〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。 [刊行物等一覧] 1:特開平10−211805号公報 2:特開2010−58569号公報 3:米国特許第3055410号明細書 4:特開昭60−193704号公報 5:国際公開第2007/083657号 6:特開2008−296795号公報 上記1〜6の刊行物等(以下それぞれ「甲1」〜「甲6」ともいう。)は、それぞれ順に申立人が提出した「甲第1号証」〜「甲第6号証」である。 なお、令和4年5月25日の訂正請求書による訂正により請求請4は削除されていたから、上記の各取消理由の対象とはなっていない。 2 当審の判断 2−1 取消理由1(進歩性)について 2−1−1 甲号証 (1)甲1について 段落【0071】の「濡れた路面でも同様に十分な接着力を保つ目的のため、タイヤの摩耗が増すに伴い、図示した実施例における周溝2a、2b(中央溝2aの双方)の1つ以上の底面19が溝自体の長手方向伸長部に沿って波状のトレンドに従って伸長するようにすることが有利である。対応する溝2aの長手方向伸長部内に波状のトレンドを有するサイドウォール21は、底面19に接触し、溝自体の上方の溝端縁が周方向伸長部を有することが好ましい。このため、タイヤが新品であるとき、中央溝2aは、地面に接触する領域に全く直線状の伸長部分を有する。タイヤの摩耗が進むに伴い。地面に接触する領域における中央溝2aの伸長部は、益々より顕著となる波状部分を有し、特に、ブレーキ時に発生する接線方向力に関して、路面保持力が増大してトレッドバンド1の摩耗を補うことができる。」という記載及び図1から、甲1には、次の技術事項(以下「甲1に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲1に記載された技術事項] 「中央溝2aは、底面19が溝自体の長手方向伸長部に沿って曲線の波状のトレンドに従って伸長し、長手方向伸長部内に曲線の波状のトレンドを有するサイドウォール21を有し、地面に接触する領域に全く直線状の伸長部分を有する、タイヤ。」 (2)甲2について ア 甲2の記載事項 (1a) 「【請求項1】 タイヤ周方向に延在する少なくとも3本の周方向主溝と、前記周方向主溝に連通する態様でタイヤ幅方向に対し傾斜して延在する複数の副溝とによりブロック形状の陸部が区画形成されたトレッド部を有する空気入りタイヤにおいて、 タイヤ周方向で対向する前記副溝の各溝壁が、前記副溝の延在方向で接触せず一部重複する態様で、前記トレッド部の踏面の法線に対する傾斜角度を変化して形成された重複部を備え、 平面視で、前記陸部の踏面のタイヤ幅方向中心をタイヤ周方向に沿って通過する第1分割線と、前記陸部を挟む各前記副溝における踏面側開口部の溝中心間でのタイヤ周方向の中点の少なくとも2つを結ぶ第2分割線とにより前記陸部を仮想的に4つの領域に分割し、そのうち1つの前記副溝に沿う鋭角側および鈍角側の2つの領域について、鋭角側の前記陸部の踏面の面積Sa、鈍角側の前記陸部の踏面の面積Sb、鋭角側で前記副溝の溝壁の傾斜により前記陸部の踏面から前記副溝の溝底に至り拡大した溝底での面積La、および鈍角側で前記副溝の溝壁の傾斜により前記陸部の踏面から前記副溝の溝底に至り拡大した溝底での面積Lbの関係が、 Lb<La、 0.05≦La/Sa、 1.1≦(La/Sa)÷(Lb/Sb) の範囲に設定されていることを特徴とする空気入りタイヤ。」 (1b) 「【0005】 上記従来の空気入りタイヤにより、排水性能および雪上性能を維持しつつ、タイヤ幅方向に対して傾斜させた幅方向溝で区画された陸部の剛性を高めることが可能である。しかし、近年では、車両の高性能化に対応するため、陸部の剛性のさらなる向上が望まれている。 【0006】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、排水性能および雪上性能を維持しつつ、剛性を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記目的を達成するため、本発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に延在する少なくとも3本の周方向主溝と、前記周方向主溝に連通する態様でタイヤ幅方向に対し傾斜して延在する複数の副溝とによりブロック形状の陸部が区画形成されたトレッド部を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向で対向する前記副溝の各溝壁が、前記副溝の延在方向で接触せず一部重複する態様で、前記トレッド部の踏面の法線に対する傾斜角度を変化して形成された重複部を備え、平面視で、前記陸部の踏面のタイヤ幅方向中心をタイヤ周方向に沿って通過する第1分割線と、前記陸部を挟む各前記副溝における踏面側開口部の溝中心間でのタイヤ周方向の少なくとも2つの中点を結ぶ第2分割線とにより前記陸部を仮想的に4つの領域に分割し、そのうち1つの前記副溝に沿う鋭角側および鈍角側の2つの領域について、鋭角側の前記陸部の踏面の面積Sa、鈍角側の前記陸部の踏面の面積Sb、鋭角側で前記副溝の溝壁の傾斜により前記陸部の踏面から前記副溝の溝底に至り拡大した溝底での面積La、および鈍角側で前記副溝の溝壁の傾斜により前記陸部の踏面から前記副溝の溝底に至り拡大した溝底での面積Lbの関係が、Lb<La、0.05≦La/Sa、1.1≦(La/Sa)÷(Lb/Sb)の範囲に設定されていることを特徴とする。 【0008】 この空気入りタイヤによれば、重複部により、副溝の延在方向で副溝の溝壁が重ね合わされることから、陸部の変形が抑制される。このため、タイヤ周方向での陸部の剛性を向上できる。また、重複部によりインフレート時に副溝を起点とした溝開きが抑えられ、タイヤ転動時のトレッド部の変形を抑制できる。さらに、重複部によりタイヤ周方向で隣接する各陸部が相互に支え合うように作用するので、タイヤ幅方向の荷重に対しても陸部の変形を抑制できる。さらにまた、重複部は、各溝壁が接触せずに形成されおり、副溝の溝深さが延在方向で変化することがないので、排水性能および雪上性能を維持できる。しかも、この空気入りタイヤによれば、面積Sa,Sb,La,Lbの関係が、上記範囲に設定されているため、陸部の剛性向上効果と、摩耗後での排水性能および雪上性能の維持効果とを適宜図ることができる。 【0009】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、平面視で、前記鋭角側の領域について、前記陸部の踏面の鋭角部における角度Ga1に対し、前記副溝の溝壁の傾斜により前記陸部の踏面から前記副溝の溝底に至り拡大した溝底での角度Ga2が、0.1≦Ga2/Ga1≦0.4の範囲に設定されていることを特徴とする。 【0010】 この空気入りタイヤによれば、角度Ga1に対する角度Ga2の比が0.1未満であると、陸部24の剛性向上効果が悪化する。一方、角度Ga1に対する角度Ga2の比が0.4を超えると、摩耗後での排水性能および雪上性能の維持効果が悪化する。したがって、角度Ga1に対する角度Ga2の比を上記範囲に設定することが、陸部の剛性向上効果と、摩耗後での排水性能および雪上性能の維持効果とを図るうえで好ましい。 【0011】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、前記重複部は、前記副溝の溝底が前記副溝の延在方向で屈曲された屈曲部を有していることを特徴とする。 【0012】 この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向で隣接する陸部が、タイヤ幅方向の荷重に対して相互に支え合う効果がさらに向上するので、陸部の剛性をさらに向上できる。なお、屈曲部は、少なくとも1点で折れ曲がって設けられていてもよい。また、屈曲部は、湾曲して設けられていてもよい。屈曲部が湾曲して設けられていれば、溝底でのクラックの発生を抑制できる。 【0013】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、前記周方向主溝をタイヤ周方向に沿って5本以上延在して区画された周方向陸部列を、タイヤ幅方向中央部からタイヤ幅方向外側にR1,R2,R3…Rnとし、各前記周方向陸部列R1,R2,R3…Rnをブロック形状に区画する前記副溝をそれぞれS1,S2,S3…Snとし、前記副溝S1の傾斜がタイヤ赤道線となす鋭角をD1、前記副溝S2の傾斜がタイヤ赤道線となす鋭角をD2、および前記副溝S3の傾斜がタイヤ赤道線となす鋭角をD3とした場合、55[度]≦D1≦70[度]、65[度]≦D2≦80[度]、D1<D2<D3の関係を有することを特徴とする。 【0014】 この空気入りタイヤによれば、インフレート時のタイヤ幅方向中央部でのタイヤ幅方向外側へのトレッド部の変位を、タイヤ幅方向外側部(ショルダー部に最も近い部分)に対して少なくして、タイヤ接地時でのトレッド部の変形を抑制する。このため、陸部の剛性をさらに向上できる。 【0015】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、少なくとも1本の前記周方向主溝は、前記トレッド部の踏面の法線に対する前記各溝壁の傾斜角度をタイヤ周方向で変化して形成されていることを特徴とする。 【0016】 この空気入りタイヤによれば、周方向主溝により区画された陸部の変形が抑制されるので、陸部の剛性をさらに向上できる。 【0017】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、前記トレッド部に配置されたタイヤ径方向最外側のベルトにおける補強材と、タイヤ赤道線の最も近くに配置された前記周方向主溝の溝底との間でのゴムの厚さTが、3.0[mm]≦T≦5.5[mm]の範囲に設定されていることを特徴とする。 【0018】 この空気入りタイヤによれば、ゴムの厚さTが3.0[mm]未満の場合、周方向主溝の溝底でのクラックの発生が懸念される。一方、ゴムの厚さTが5.5[mm]を超えた場合、タイヤ接地時におけるトレッド部の歪みが大きくなり、陸部の倒れ込みが発生してトレッド部の剛性が高められない、したがって、ゴムの厚さTが上記範囲に設定されていることが好ましい。 【0019】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、前記トレッド部のゴムの100[℃]加熱時におけるtanδが、tanδ≦0.10の範囲に設定されていることを特徴とする。 【0020】 この空気入りタイヤによれば、tanδが0.10を超える場合、トレッド部のゴムの発熱量が増加してタイヤの転がり抵抗が増加する。したがって、tanδが上記範囲に設定されていることが好ましい。 【0021】 また、本発明にかかる空気入りタイヤでは、重荷重用空気入りタイヤに適用されることを特徴とする。 【0022】 この空気入りタイヤによれば、重荷重用空気入りタイヤでは、タイヤの転がり抵抗が増加し易い傾向にある。したがって、重荷重用空気入りタイヤを適用対象とすることにより、転がり抵抗の低減効果がより顕著に得られる利点がある。 【発明の効果】 【0023】 本発明にかかる空気入りタイヤは、副溝がタイヤ幅方向に対して傾斜して鋭角部分を有する陸部に対応し、排水性能および雪上性能を維持しつつ、剛性を向上できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0024】 以下に、本発明にかかる空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。 【0025】 図1は、本発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの子午断面図、図2は、図1に示す空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図、図3は、図2に示すトレッド部の要部拡大図、図4は、図2に示すトレッド部の要部拡大斜視図、図5および図6は、図2に示すトレッド部の要部拡大図、図7は、重複部の折れ曲がる屈曲部を示す拡大平面図、図8は、重複部の湾曲する屈曲部を示す拡大平面図、図9は、陸部の他の形態を示す平面図、図10は、本発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。 【0026】 なお、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから離れる側をいう。 【0027】 また、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを中心としてほぼ対称になるように構成されている。タイヤ赤道面Cとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから最も離れている部分間の距離である。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面C上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。そして、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを中心としてほぼ対称になるように構成されていることから、空気入りタイヤ1の回転軸を通る平面で空気入りタイヤを切った場合の子午断面図(図1)においては、タイヤ赤道面Cを中心とした一側を図示して当該一側のみを説明し、他側の説明は省略する。 【0028】 図1に示すように、本実施の形態にかかる空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、そのタイヤ幅方向両外側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス6と、ベルト層7とを含み構成されている。 【0029】 トレッド部2は、空気入りタイヤ1の外部に露出したものであり、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面21には、図1および図2に示すように、タイヤ周方向に延在して形成された少なくとも3本(本実施の形態では5本)の周方向主溝22と、周方向主溝22を連通する態様でタイヤ幅方向に対し傾斜して延在する複数の副溝23とによりブロック形状の複数の陸部24が区画形成されている。なお、周方向主溝22は、トレッド部2の踏面21の法線に対する溝壁22aの角度が5[度]程度に設定されていることが好ましい。また、副溝23は、溝幅が周方向主溝22よりも狭く、かつ5[mm]以上10[mm]以下であることが好ましい。また、副溝23は、周方向主溝22の溝深さに対して同一であっても、同一でなくてもよい。例えば、周方向主溝22の溝深さが20[mm]に設定され、副溝23の溝深さが15[mm]に設定されている。 【0030】 ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤ51aをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス6の端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置される。 【0031】 カーカス6は、一対のビード部5に対して各タイヤ幅方向端部が折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス6は、有機繊維(ナイロンやポリエステルなど)やスチールなどのカーカスコードが、ゴムで被覆されたものである。 【0032】 ベルト層7は、トレッド部2においてカーカス6よりもタイヤ径方向外側に設けられている。ベルト層7は、有機繊維(ナイロンやポリエステルなど)やスチールなどのコード(補強材)がゴムで被覆されたベルトからなり、このベルトが複数積層されたものである。本実施の形態におけるベルト層7は、カーカス6のタイヤ径方向外側からタイヤ径方向外側に向かって第1ベルト71、第2ベルト72、第3ベルト73、第4ベルト74の順で積層された4層構造を有している。 【0033】 このような空気入りタイヤ1にかかり、タイヤ周方向に隣接する陸部24の間で延在する副溝23には、重複部25が形成されている。 【0034】 重複部25は、副溝23のタイヤ周方向で対向する各溝壁23a,23aが、副溝23の延在方向で接触せず一部重複する態様で、トレッド部2の踏面21の法線に対する傾斜角度を変化して形成されている。 【0035】 この重複部25は、図3(a)、図3(b)および図4に示すように、タイヤ周方向で対向する副溝23の各溝壁23a,23aが、陸部24の踏面21から副溝23の溝底に向けて広がるように、踏面21の法線21aに対して傾斜角度θを変化して形成されている。さらに、各溝壁23aは、相互に接触することなく、タイヤ周方向で対向する一方の溝壁23aの傾斜角度が漸次大きくなると、他方の溝壁23aの傾斜角度が漸次小さくなるように、副溝23の溝中心で対称に設けられている。かかる構成により、図3(b)に示すように、副溝23の溝深さDが延在方向で一定とされ、かつ副溝23を延在方向で見た場合、重複幅Lpにおいて各溝壁23aが接触せず相互に重なる重複部25が形成される。 【0036】 また、図5に示すように、平面視で、陸部24の踏面21のタイヤ幅方向中心をタイヤ周方向に沿って通過する第1分割線C1と、陸部24を挟む各副溝23における踏面側開口部の溝中心Ca,Ca間でのタイヤ周方向の少なくとも2つの中点α,βを結ぶ第2分割線C2とにより陸部24を仮想的に4つの領域に分割する。そのうち1つの副溝23に沿う鋭角側および鈍角側の2つの領域について、鋭角側の陸部24の踏面21の面積Sa、鈍角側の陸部24の踏面21の面積Sb、鋭角側で副溝23の溝壁23aの傾斜により陸部24の踏面21から副溝23の溝底に至り拡大した溝底での面積La、および鈍角側で副溝23の溝壁23aの傾斜により陸部24の踏面21から副溝23の溝底に至り拡大した溝底での面積Lbの関係が、 Lb<La、 0.05≦La/Sa、 1.1≦(La/Sa)÷(Lb/Sb) の範囲に設定されている。 【0037】 上述のように構成される空気入りタイヤ1では、重複部25を備え、副溝23の各溝壁23a(陸部24の壁部)が副溝23の延在方向で重ね合わされることから、陸部24の変形、特に、陸部24の鋭角側の変形が抑制されるので、タイヤ周方向での陸部24の剛性を向上することが可能になる。このため、転がり抵抗を低減でき、ヒールアンドトウ摩耗を抑制することが可能になる。また、副溝23の溝壁23a(陸部24の壁部)が副溝23の延在方向で重ね合わされることから、インフレート時に副溝23を起点として副溝23が開く事態が抑えられるので、タイヤ転動時のトレッド部2の変形を抑制することが可能になる。さらに、副溝23の溝壁23a(陸部24の壁部)が副溝23の延在方向で重ね合わされることから、タイヤ周方向で隣接する各陸部24が相互に支え合うように作用するので、タイヤ幅方向の荷重に対しても陸部24の変形を抑制することが可能になる。さらにまた、重複部25は、各溝壁23aが接触せずに形成されおり、副溝23の溝深さDが延在方向で変化することがないので、排水性能および雪上性能を維持することが可能になる。 ・・・ 【0043】 また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、重複部25は、副溝23の延在方向で溝底が屈曲された屈曲部25aを有している。この屈曲部25aは、図7に示すように、副溝23の溝壁23aの傾斜角度の変化により副溝23の溝底が少なくとも1点(本実施の形態では2点)で折れ曲がって設けられている形態、または図8に示すように、副溝23の溝壁23aの傾斜角度の変化により副溝23の溝底が湾曲して設けられている形態がある。 【0044】 かかる構成によれば、タイヤ周方向で隣接する各陸部24が、タイヤ幅方向の荷重に対して相互に支え合う効果がさらに向上するので、陸部24の剛性をさらに向上することが可能になる。また、屈曲部25aが湾曲して設けられていれば、副溝23の溝底でのクラックの発生を抑制することが可能になる。 ・・・ 【0047】 また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図9に示すように、少なくとも1本の周方向主溝22は、トレッド部2の踏面21の法線に対する各溝壁22aの傾斜角度をタイヤ周方向で変化して形成されている。」 (1c) 図1、図7、図9の内容は、以下のとおりである。 【図9】 イ 甲2に記載された発明 甲2の各構成要素(溝壁22a等)について、トレッド部2のセンター(赤道)に近い部分を「内側」と定義し、段落【0005】〜【0037】、【0043】、【0044】、【0047】の記載及び図1、7、9を総合すると(特に、段落【0005】の「・・・排水性能および雪上性能を維持しつつ、」、段落【0029】の「また、副溝23は、周方向主溝22の溝深さに対して同一であっても、同一でなくてもよい。例えば、周方向主溝22の溝深さが20[mm]に設定され、副溝23の溝深さが15[mm]に設定されている。」、段落【0033】の「タイヤ周方向に隣接する陸部24の間で延在する副溝23」、段落【0047】の「本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図9に示すように、少なくとも1本の周方向主溝22は、トレッド部2の踏面21の法線に対する各溝壁22aの傾斜角度をタイヤ周方向で変化して形成されている。」という記載及び図1、7、9を参照すると)、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる(対比・判断を行う便宜上、発明をまとまった構成毎に、「構成A:」のように分説して記載する。)。 [甲2発明] 「構成A:トレッド部2を有するタイヤ1であって、 構成B:トレッド部2には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22と、周方向主溝22とトレッド端との間に区分されたタイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向外側の陸部24と、周方向主溝22に隣接しタイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向内側の陸部24とが設けられ、 構成C1:周方向主溝22は、タイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向内側の陸部24毎に形成された、複数のタイヤ軸方向内側の内側溝壁22aを有し、 構成C2:複数のタイヤ軸方向内側の内側溝壁22aは、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる、複数のタイヤ軸方向内側の陸部24の踏面21側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 構成C3:タイヤ軸方向内側の各陸部24に形成された内側溝壁22aは、トレッド部2の踏面21の法線に対する傾斜角度を、タイヤ周方向の一方側に向かって順に、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状凸部の波の立ち上がり部を形成するように、最大傾斜角度から徐々に小さくし最小傾斜度とする区間と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状の頂部を形成するように、最小傾斜度に維持したままの一定区間と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状凸部の波の立ち下がり部を形成するように、最小傾斜角度から徐々に大きくし最大傾斜度とする区間と、を構成するように、タイヤ周方向で変化して形成され、 構成C4:周方向主溝22は、周方向で向かい合う、タイヤ軸方向内側の陸部24に形成された内側溝壁22aが最大傾斜度となっている部分で、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状凸部が途切れ、タイヤ周方向に隣接するタイヤ軸方向内側の陸部24と陸部24との間で延在し周方向主溝22の溝深さと深さが同一である上方が開放された副溝23の、踏面を除きタイヤ周方向の幅がタイヤ軸方向内側に向かって漸減している端部に繋がる、 構成A:排水性能を維持したタイヤ1。」 (3)甲3について 第3欄第41〜71行及び図6〜9から、甲3には、次の技術事項(以下「甲3に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲3に記載された技術事項] 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝28と、前記ショルダー主溝28と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部とが設けられ、 前記ショルダー主溝28は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿ってのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝28の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部34が設けられている、 タイヤ10。」 (4)甲4について 2ページ右上欄7行〜同左下欄2行の「そして1つの縦溝(G2)の側壁(5a,5b)は、タイヤトレッド表面の法線(D)に対してそれぞれ所定の角度(α,β)を形成するように傾斜している。ここでタイヤ軸方向外側の側壁(5b)の角度(β)はタイヤ軸方向内側の側壁(5a)の角度(α)よりも大きく傾斜する非対称溝である。・・・排水性が保持されるとともに操縦安定性も一層向上する。」という記載、3ページ左上欄9〜11行の「またタイヤ軸方向内側の側壁(5a)の角度(α)とタイヤ軸方向外側の側壁(5b)の角度(β)の差は5°〜20°の範囲に設定されることが好適である。」という記載及び第1〜2図から、甲4には、次の技術事項(以下「甲4に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲4に記載された技術事項] 「ショルダー主溝である縦溝(G2)のタイヤ軸方向内側の側壁(5a)及びタイヤ軸方向外側の側壁(5b)は、それぞれ、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって溝中心から遠ざかる向きに、タイヤトレッド表面の法線(D)に対して所定の角度(α,β)を形成するように、傾斜し、タイヤ軸方向外側の側壁(5b)の角度(β)はタイヤ軸方向内側の側壁(5a)の角度(α)よりも大きく、タイヤ軸方向内側の側壁(5a)の角度(α)とタイヤ軸方向外側の側壁(5b)の角度(β)の差は5°〜20°の範囲に設定される、排水性が保持されるタイヤ。」 (5)甲5について 甲5には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「[0031] 図3に示すように、一対のセカンドリブ11のトレッド端E側のリブ端には、複数本のマルチサイブ25が間隔を置いてそれぞれ形成されている。ここで、マルチサイプとは、長さlmm以上5mm以下で、2mm以上20mm以下のサイプ間隔で形成されるサイプのことをいう。 ・・・ [0040] 一対のセカンドリブ11に複数本のサイプ19が横断するようにそれぞれ形成され、各々の分割リブ21にサイプ19に連通した湯溝23がセカンドリブ11を横断するようにそれぞれ形成されている。このため、エッジ効果(水膜を切る効果)及び排水性を高めることができる。」 (6)甲6について 甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0002】 排水性を確保するために、空気入りタイヤのトレッド部には、タイヤ周方向にのびる比較的幅の広い1ないし複数本の主溝が設けられる。このような空気入りタイヤで工事現場や砂利などが敷き詰められた路面を走行すると、前記主溝内に小石が噛み込まれてそのまま残るいわゆる石噛みが生じやすい。そして、このような石噛みが生じた状態で空気入りタイヤを走行させると、主溝にゴム欠けやクラック等を発生させるおそれがある。また、このような石噛みは、トレッド踏面の接地圧が大きくかつ溝深さが大きい重荷重用の空気入りタイヤにおいて特に生じやすい傾向がある。 ・・・ 【0005】 発明者らは、トレッド部に設けられた主溝の位置に応じ、それらに最適な溝断面形状を採用することにより、主溝への石噛みをさらに効果的に防止しうることを知見した。このように、本発明は、石噛みを効果的に抑制しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。 ・・・ 【0025】 図3(a)には、図1におけるB-B断面(センター主溝3の溝長さ方向と直角な溝断面)が示される。同様に、図3(b)には、図1におけるC-C断面(ショルダー主溝4の溝長さ方向と直角な溝断面)が示される。さらに、図4には、図1のE-E断面が示される。これらの図から明らかなように、各主溝3及び4において、溝壁面10は、溝底Bからトレッド踏面2a側に垂直又は溝幅を増加させる向きの傾斜でのびる基部10bと、該基部10bの上端からトレッド踏面2aまで前記基部10bよりも緩やかな傾斜でのびる緩斜面部10aとから構成される。即ち、各主溝3及び4の溝壁面10が、いわゆる二段テーパ状に形成される。なお、図3において、トレッド踏面2aと平行に近づくものほど傾斜が緩やかと理解される。また、溝底Bと基部10bとは、慣例に従い、円弧面を介して滑らかな接続されるのが望ましい。 【0026】 前記緩斜面部10aは、基部10bのタイヤ半径方向外側にトレッド踏面2a側に向かって溝幅が顕著に増大するより広い溝空間を提供する。従って、緩斜面部10a、10a間で石が保持される機会が低減する。また、図4に仮想線で示されるように、基部10bに石が噛み込んだ場合でも、そのタイヤ半径方向外側には緩斜面部10a、10a間が形成する広い溝空間が形成されているため、基部10b間で保持されている石は、より保持抵抗の少ない緩斜面部10a、10a間に押し出されやすい。従って、噛み込んだ石を主溝3ないし4から容易に外部に排出させ得る。 ・・・ 【0034】 また、ショルダー主溝4における緩斜面部10aのタイヤ半径方向の高さHs1は、センター主溝3の緩斜面部10aの高さHc1よりも小さければ特に限定されない。しかしながら、前記高さHs1が過度に小さくなると、ショルダー主溝4での石噛み防止機能が著しく低下するおそれがある。このような観点より、ショルダー主溝4における緩斜面部10aのタイヤ半径方向の高さHs1は、該ショルダー主溝4の溝深さDの33%以上、より好ましくは35%以上であるのが望ましい。」 上記の記載事項及び図1〜3から、甲6には、次の技術事項(以下「甲6に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲6に記載された技術事項] 「排水性を確保するためのショルダー主溝4において、内側溝壁面10及び外側溝壁面10は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる向きに、溝底Bからトレッド踏面2a側に溝幅を増加させる向きの傾斜でのびる基部10bと、該基部10bの上端からトレッド踏面2aまで前記基部10bよりも緩やかな傾斜でのびる緩斜面部10aとから構成され、緩斜面部10aのタイヤ半径方向の高さHs1は、該ショルダー主溝4の溝深さDの33%以上である、タイヤ。」 2−1−2 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)構成Aについて 甲2発明の構成Aの「トレッド部2」、「タイヤ1」及び「トレッド部2を有するタイヤ1」は、それぞれ、本件発明1の「トレッド部」、「タイヤ」及び「トレッド部を有するタイヤ」に相当する。 (イ)構成Bについて 甲2発明の構成Bの「トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22」は、本件発明1の「トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝」に相当する。 甲2発明の構成Bの「周方向主溝22とトレッド端との間に区分されたタイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向外側の陸部24」は、本件発明1の「前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部」に相当する。 これらのことと上記(ア)から、甲2発明の構成Bの「トレッド部2には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22と、周方向主溝22とトレッド端との間に区分されたタイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向外側の陸部24と」「が設けられ」ることは、本件発明1の「前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部とが設けられ」ることに相当する。 (ウ)構成C1について 甲2発明の構成C1の「タイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向内側の陸部24毎に形成された、複数のタイヤ軸方向内側の内側溝壁22a」は、本件発明1の「タイヤ軸方向内側の内側溝壁」に相当する。 このことと上記(ア)から、甲2発明の構成C1の「周方向主溝22は、タイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向内側の陸部24毎に形成された、複数のタイヤ軸方向内側の内側溝壁22aを有」すること、本件発明1の「前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有」することに相当する。 (エ)構成C2について 甲2発明の構成C2の「踏面21」、「タイヤ周方向に沿って直線状にのびる、複数のタイヤ軸方向内側の陸部24の踏面21側の溝縁」及び「タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁」は、それぞれ、本件発明1の「踏面」、「タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁」及び「タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁」に相当する。 このことと上記(イ)から、甲2発明の構成C2の「複数のタイヤ軸方向内側の内側溝壁22aは、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる、複数のタイヤ軸方向内側の陸部24の踏面21側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されて」いることは、本件発明1の「前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されて」いることに相当する。 以上から、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点1> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部とが設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されている、 タイヤ。」 <相違点1−1> 本件発明1では、 「前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられて」いるのに対して、 甲2発明では、 「構成C3:タイヤ軸方向内側の各陸部24に形成された内側溝壁22aは、トレッド部2の踏面21の法線に対する傾斜角度を、タイヤ周方向の一方側に向かって順に、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状凸部の波の立ち上がり部を形成するように、最大傾斜角度から徐々に小さくし最小傾斜度とする区間と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状の頂部を形成するように、最小傾斜度に維持したままの一定区間と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状凸部の波の立ち下がり部を形成するように、最小傾斜角度から徐々に大きくし最大傾斜度とする区間と、を構成するように、タイヤ周方向で変化して形成され、 構成C4:周方向主溝22は、周方向で向かい合う、タイヤ軸方向内側の陸部24に形成された内側溝壁22aが最大傾斜度となっている部分で、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁の波状凸部が途切れ、タイヤ周方向に隣接するタイヤ軸方向内側の陸部24と陸部24との間で延在し周方向主溝22の溝深さと深さが同一である上方が開放された副溝23の、踏面を除きタイヤ周方向の幅がタイヤ軸方向内側に向かって漸減している端部に繋が」る点。 <相違点2−1> 本件発明1では、 「前記ショルダー陸部は、一端が前記ショルダー主溝に連なりかつ他端が前記ショルダー陸部内で途切れる複数のラグサイプが設けられており、 前記ショルダー陸部は、前記複数のラグサイプを除いて、溝やサイプを有しないセミプレーンリブである」のに対して、 甲2発明では、そのような構成を備えていない点。 イ 判断 事案に鑑み、最初に相違点2−1について検討する。 (ア)相違点2−1について 上記相違点2−1に係る本件発明1の構成(セミプレーンリブに係る構成)は、甲1〜甲6及び甲第7〜11号証(後述「第5 1(2)」参照)にも記載も示唆もされていない。 また、甲2発明において、軸方向の副溝23が設けられているショルダー陸部の構成を別のものに変えようとする動機付けはない。 そして仮に、甲2発明において、ショルダー陸部をセミプレーンリブにしてしまうと、副溝23が存在しなくなってしまう結果、排水性能が低下して「排水性能および雪上性能を維持しつつ、剛性を向上する」(段落【0006】)という課題が解決できなくなるから、このように変更することには阻害要因も存在する。 (イ)小括 以上から、上記相違点1−1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1、甲3〜甲11に記載された技術事項に基いて[谷37]、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明7について ア 対比 (ア) 本件発明7と甲2発明とを対比すると、上記(1)ア(ア)、(ウ)、(エ)において、「本件発明1」を「本件発明7」に読み替えたとおりのことがいえる。 (イ) 甲2発明の構成Bの「トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22」は、本件発明1の「トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝」に相当する。 甲2発明の構成Bの「周方向主溝22に隣接しタイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向内側の陸部24」は、本件発明1の「前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部」に相当する。 これらのことと上記(ア)から、甲2発明の構成Bの「トレッド部2には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22と、」「周方向主溝22に隣接しタイヤ周方向に複数設けられたタイヤ軸方向内側の陸部24とが設けられ」ることは、本件発明7の「前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部が設けられ」ることに相当する。 以上から、本件発明7と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点7> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されている、 タイヤ。」 <相違点1−7> 本件発明7では、 「前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられて」いるのに対して、 甲2発明では、構成C3及び構成C4を備える点。 <相違点2−7> 本件発明7では、 「前記ミドル陸部には、前記凹部と、前記凹部に連なりかつ前記ミドル陸部を横切るミドル横溝が設けられており、 前記ミドル横溝は、陸部の踏面側で開口する本体部と、前記本体部の底部から前記本体部よりも小さい幅でタイヤ半径方向内方にのびるサイプ部とを含む」のに対して、 甲2発明では、構成C4の「タイヤ周方向に隣接するタイヤ軸方向内側の陸部24と陸部24との間で延在し周方向主溝22の溝深さと深さが同一である上方が開放された副溝23」を備える点。 イ 判断 事案に鑑み、最初に相違点2−7について検討する。 (ア)相違点2−7について 甲2発明の構成C4の「タイヤ周方向に隣接するタイヤ軸方向内側の陸部24と陸部24との間で延在し周方向主溝22の溝深さと深さが同一である上方が開放された副溝23」は、本件発明7の「前記ミドル陸部を横切るミドル横溝」に相当するところ、当該「副溝23」の形状は、「副溝23の各溝壁23a(陸部24の壁部)が副溝23の延在方向で重ね合わされる」(段落【0037】)、「タイヤ周方向で対向する前記副溝の各溝壁が、前記副溝の延在方向で接触せず一部重複する態様で、前記トレッド部の踏面の法線に対する傾斜角度を変化して形成された」(請求項1)、「重複部25」を構成する形状となっている。 そして、この形状を、相違点2−7に係る本件発明7の構成の「陸部の踏面側で開口する本体部と、前記本体部の底部から前記本体部よりも小さい幅でタイヤ半径方向内方にのびるサイプ部とを含む」形状にしてしまうと、上記「重複部25」を構成することができず、上記「重複部25」による「陸部24の変形を抑制すること」(段落【0037】)ができなくなり、「排水性能および雪上性能を維持しつつ、剛性を向上する」(段落【0006】)という課題が解決できなくなってしまうから、甲2発明において、相違点2−7に係る本件発明7の構成とすることには、阻害要因が存在する。 したがって、甲2発明に、甲1、甲3〜甲6に記載された技術事項などを適用することを検討するまでもなく、甲2発明において、相違点2−7に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 (イ)小括 以上から、上記相違点1−7について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明及び甲1、甲3〜甲11に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明9について ア 対比 (ア) 本件発明9と甲2発明とを対比すると、上記(1)ア(ア)、(ウ)、(エ)において、「本件発明1」を「本件発明9」に読み替えたとおりのことがいえる。 (イ) 甲2発明の構成Bの「トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22」は、本件発明1の「トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝」に相当する。 このことと上記(ア)から、甲2発明の構成Bの「トレッド部2には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる周方向主溝22」「が設けられ」ることは、本件発明7の「前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝が設けられ」ることに相当する。 以上から、本件発明9と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点9> 「トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されている、 タイヤ。」 <相違点1−9> 本件発明9では、 「前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられて」いるのに対して、 甲2発明では、構成C3及び構成C4を備える点。 <相違点2−9> 本件発明9では、 「前記凹部は、前記内側溝壁に連なる一対の第1溝壁と、前記一対の第1溝壁の間をタイヤ周方向にのびる第2溝壁とを含む」のに対して、 甲2発明では、構成C4の「タイヤ周方向に隣接するタイヤ軸方向内側の陸部2と陸部24との間で延在し周方向主溝22の溝深さと深さが同一である上方が開放された副溝23の、踏面を除きタイヤ周方向の幅がタイヤ軸方向内側に向かって漸減している端部」を備える点。 イ 判断 事案に鑑み、最初に相違点2−9について検討する。 (ア)相違点2−9について 甲2発明の構成C4の「タイヤ周方向に隣接するタイヤ軸方向内側の陸部2と陸部24との間で延在し周方向主溝22の溝深さと深さが同一である上方が開放された副溝23の、踏面を除きタイヤ周方向の幅がタイヤ軸方向内側に向かって漸減している端部」(本件発明9の「凹部」に相当。上記(1)イ(ア)c参照。)は、「副溝23」の一部を構成している。 そして、前記「端部」(凹部)を含む前記「副溝23」形状を変更することについては、上記(2)イ(ア)で述べたことと同じことがいえるから、甲2発明において、前記「端部」(凹部)を含む前記「副溝23」の構成を変えて、相違点2−9に係る本件発明9の構成とすることには、阻害要因が存在する。 したがって、甲2発明に、甲1、甲3〜甲6に記載された技術事項などを適用することを検討するまでもなく、甲2発明において、相違点2−9に係る本件発明9の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 (イ)小括 以上から、上記相違点1−9について検討するまでもなく、本件発明9は、甲2発明及び甲1、甲3〜甲11に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明2〜6、8及び10〜15について 本件発明2〜6及び10〜15は、それぞれ、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2〜6及び10〜15の発明特定事項を付加して限定したものであるから、また、本件発明8は、本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに請求項8の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(1)、(2)と同様の理由により、本件発明2〜6、8及び10〜15は、甲2発明及び甲1、甲3〜甲6に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立人の主張について 申立人は、令和5年1月20日の意見書において、令和4年7月5日の意見書に添付した甲第7号証を主引用例とした主張をするが、特許異議申立書において、上記主張はされておらず、時期に遅れた新たな主張であり、訂正の請求の内容に付随して生じる理由であるとも、適切な取消理由を構成することが一見して明らかであるともいえないから、当該主張は採用できない(参考:審判便覧67−05.4の1.(2))。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、取消理由1には理由がない。 2−2 取消理由2(サポート要件)及び取消理由3(明確性要件)について 本件訂正により、訂正前の請求項1の「前記外側溝壁は、踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に連続して波状にのびる外側溝底縁との間に形成されている」という不明確かつ発明の詳細な説明に記載されていない事項を削除し、訂正前の請求項1〜15の「外側溝壁」及び「外側溝壁」に係る構成についての「ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる」という不明確な記載を、「内側溝壁から遠ざかる」という記載に訂正した。 したがって、特許請求の範囲の記載は明確になり、請求項1〜15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなったから、取消理由2及び取消理由3には理由がない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 甲1に記載された発明を主たる発明とした新規性欠如(特許法第29条第1項第3号)及び進歩性欠如(特許法第29条第2項)について (1) 甲1の段落【0071】の「図示した実施例における周溝2a、2b(中央溝2aの双方)の1つ以上の底面19が溝自体の長手方向伸長部に沿って波状のトレンドに従って伸長するようにすることが有利である」という記載における「周溝2a、2b(中央溝2aの双方)」は、「中央溝2aの双方」という記載を参照すると、「周溝2a、2a(中央溝2aの双方)」の誤記であることが明らかであり、請求項15の「前記周溝(2a、2b)の少なくとも1つ」には、「前記周溝2a」が該当し、「前記周溝2b」が該当しないことは、明らかである。 (2) そうすると、甲1には、本件発明1、7、9が備える 「前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、」 という構成は記載も示唆もされていない。 この構成は、甲3(甲3に記載された技術事項の「タイヤ周方向に沿ってのびる踏面側の溝縁」は、「タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁」ではない。)及び甲4〜甲6にも、特開2008−222075号公報、特開2009−248919号公報、特表2002−512575号公報、特開2007−320539号公報、韓国登録特許第10−1601670号公報(これらは、順に、申立人が意見書に添付して提出した甲第7〜11号証である。)にも記載も示唆もされていない。 (3) また、ほかに甲1の周溝2b(ショルダー主溝)の構成を変更する理由、例えば、これを甲1の中央溝2aの構成とすることや、甲2発明の構成とする理由も見出せない。 (4) したがって、本件発明1〜15(本件発明1、7、9及びこれらを直接又は間接的に引用する発明)は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明及び甲2〜甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5) 以上から、本件発明1〜15に対して、当該特許異議申立理由(甲1に記載された発明を主たる発明とした新規性欠如及び進歩性欠如)は理由がない。 2 甲2発明を主たる発明とした新規性欠如(特許法第29条第1項第3号)について 上記「第4 2 2−1」のとおり、本件発明1〜15は進歩性を有するから、新規性も有する。 したがって、本件発明1〜15に対して、当該特許異議申立理由(甲2発明を主たる発明とした新規性欠如)は理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1〜15に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件特許の請求項1〜15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝と前記トレッド端との間に区分されたショルダー陸部とが設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記ショルダー陸部には、一端が前記ショルダー主溝に連なりかつ他端が前記ショルダー陸部内で途切れる複数のラグサイプが設けられており、 前記ショルダー陸部は、前記複数のラグサイプを除いて、溝やサイプを有しないセミプレーンリブであるタイヤ。 【請求項2】 前記凹部は、少なくとも前記踏面において、タイヤ周方向の幅がタイヤ軸方向内側に向かって漸減している請求項1記載のタイヤ。 【請求項3】 前記凹部は、前記踏面から溝底面までのびている請求項1又は2記載のタイヤ。 【請求項4】 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記外側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁の凹壁部と向き合いかつ前記内側溝壁に近付く凸壁部と、前記内側溝壁の凸壁部と向き合いかつ前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項5】 前記内側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって溝中心から遠ざかる向きに傾斜し、 前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜し、 前記ショルダー主溝のいずれの溝横断面においても、前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度は、前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度よりも大きい請求項4記載のタイヤ。 【請求項6】 前記トレッド部には、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部が設けられ、 前記ミドル陸部には、前記凹部と、前記凹部に連なりかつ前記ミドル陸部を横切るミドル横溝が設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤ。 【請求項7】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側に隣接するミドル陸部とが設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記ミドル陸部には、前記凹部と、前記凹部に連なりかつ前記ミドル陸部を横切るミドル横溝が設けられており、 前記ミドル横溝は、陸部の踏面側で開口する本体部と、前記本体部の底部から前記本体部よりも小さい幅でタイヤ半径方向内方にのびるサイプ部とを含むタイヤ。 【請求項8】 前記サイプ部のタイヤ周方向の一方側のサイプ壁は、前記本体部のタイヤ周方向の一方側の溝壁と滑らかに連続している請求項7記載のタイヤ。 【請求項9】 トレッド部を有するタイヤであって、 前記トレッド部には、トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびるショルダー主溝が設けられ、 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向内側の内側溝壁を有し、 前記内側溝壁は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびる踏面側の溝縁と、タイヤ周方向に波状にのびる内側溝底縁との間に形成されており、 前記内側溝壁は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記凹壁部のタイヤ軸方向の内端部には、タイヤ軸方向内側に局部的に凹みかつ前記トレッド部の踏面で開口する凹部が設けられており、 前記凹部は、前記内側溝壁に連なる一対の第1溝壁と、前記一対の第1溝壁の間をタイヤ周方向にのびる第2溝壁とを含むタイヤ。 【請求項10】 前記ショルダー主溝は、タイヤ軸方向外側の外側溝壁を有し、 前記ショルダー主溝の溝横断面において、 前記内側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有し、 前記外側溝壁は、溝底面からタイヤ半径方向外側に向かって前記内側溝壁から遠ざかる向きに傾斜する本体部と、前記本体部のタイヤ半径方向外側に連なりかつトレッド法線に対して前記本体部よりも大きい角度で傾斜する外側部とを有する請求項1記載のタイヤ。 【請求項11】 前記内側溝壁の前記外側部の最大の深さ、及び、前記外側溝壁の前記外側部の最大の深さは、それぞれ、前記ショルダー主溝の最大の深さの0.30〜0.50倍である請求項10記載のタイヤ。 【請求項12】 前記内側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記ショルダー主溝の溝中心から遠ざかる凹壁部と、前記ショルダー主溝の溝中心に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含み、 前記外側溝壁の前記本体部は、溝横断面でのトレッド法線に対する角度がタイヤ周方向に周期的に増減を繰り返すことにより、前記内側溝壁から遠ざかる凹壁部と、前記内側溝壁に近付く凸壁部とをタイヤ周方向に交互に含む請求項10又は11記載のタイヤ。 【請求項13】 前記内側溝壁の前記各凸壁部は、前記外側溝壁の前記凹壁部と向き合っている請求項12記載のタイヤ。 【請求項14】 前記外側溝壁の前記本体部は、前記内側溝壁の前記本体部よりも大きいトレッド法線に対する角度を有する請求項12又は13記載のタイヤ。 【請求項15】 前記内側溝壁の前記本体部と前記外側溝壁の前記本体部とのトレッド法線に対する角度の差は、2〜13°である請求項14記載のタイヤ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2023-04-20 |
出願番号 | P2017-065633 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B60C)
P 1 651・ 537- YAA (B60C) P 1 651・ 113- YAA (B60C) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
中村 則夫 |
特許庁審判官 |
大谷 光司 一ノ瀬 覚 |
登録日 | 2021-05-24 |
登録番号 | 6888366 |
権利者 | 住友ゴム工業株式会社 |
発明の名称 | タイヤ |
代理人 | 石原 幸信 |
代理人 | 石原 幸信 |
代理人 | 住友 慎太郎 |
代理人 | 浦 重剛 |
代理人 | 浦 重剛 |
代理人 | 苗村 潤 |
代理人 | 住友 慎太郎 |
代理人 | 市田 哲 |
代理人 | 市田 哲 |
代理人 | 苗村 潤 |