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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09K 審判 全部申し立て 2項進歩性 C09K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C09K |
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管理番号 | 1399331 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-25 |
確定日 | 2023-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6927373号発明「表面処理剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6927373号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜21〕、22について訂正することを認める。 特許第6927373号の請求項1、2、5、9〜13、15〜22に係る特許を維持する。 特許第6927373号の請求項3、4、6〜8、14に対する異議申立を却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6927373号の請求項1〜22に係る特許(以下「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和2年6月23日(優先権主張 令和元年7月17日 日本国)を出願日とする特許出願であって、令和3年8月10日にその特許権の設定登録(請求項の数22)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、当該特許に対して、令和4年2月25日に特許異議申立人宮本邦彦(以下「申立人」ともいう。)により請求項1〜22に係る特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は、次のとおりである。 令和4年 8月23日付け 取消理由の通知 同年10月28日付け 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年11月28日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛) 同年12月28日付け 意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年10月28日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の(1)〜(32)のとおりである。なお、訂正箇所に下線を引いた。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「該金属化合物に含まれる金属原子は、Ta、Nb、Zr、Mo、W、Cr、Hf、Al、Ti及びVから選択される1種またはそれ以上の金属原子であり、」とあるのを、 「前記金属化合物は、M−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される金属化合物であり、」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;」とあるのを、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり;」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1において、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRsiは、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;」とあるのを、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)Z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; 」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1において、 「XAは、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基であり;」とあるのを、 「XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり;」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1において、 「αは、1〜9の整数であり; βは、1〜9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;」とあるのを、 「αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり;」と訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1において、 「表面処理剤。」とあるのを、 「真空蒸着用の表面処理剤。」と訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項5において、式(f1)に関して 「式中、dは1〜200の整数である。」とあるのを、 「式中、dは1〜60の整数である。」と訂正し、式(f2)に関して 「eおよびfは、それぞれ独立して、1〜200の整数であり; c、d、eおよびfの和は、10〜200の整数であり;」とあるのを 「eおよびfは、それぞれ独立して、1〜60の整数であり; c、d、eおよびfの和は、10〜60の整数であり;」と訂正し、式(f3)に関して 「gは、2〜100の整数である。」とあるのを、 「gは、2〜20の整数である。」と訂正し、式(f4)に関して 「式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、」とあるのを、 「式中、eは、1以上60以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上59以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、」と訂正し、式(f5)に関して 「式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、」とあるのを、 「式中、fは、1以上60以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上59以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、」と訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項5において、 「請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理剤。」とあるのを、 「請求項1または2に記載の表面処理剤。」と訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項9において、 「請求項6〜8のいずれか1項に記載の表面処理剤。」とあるのを、 「請求項1、2、および5のいずれか1項に記載の表面処理剤。」と訂正する。 ((15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項10において、 「請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面処理剤。」とあるのを、 「請求項1、2、5および9のいずれか1項に記載の表面処理剤。」と訂正する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項11において、 「請求項1〜10のいずれか1項に記載の表面処理剤。」とあるのを、 「請求項1、2、5、9および10のいずれか1項に記載の表面処理剤。」と訂正する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項12において、 「請求項1〜11のいずれか1項に記載の表面処理剤。」とあるのを、 「請求項1、2、5および9〜11のいずれか1項に記載の表面処理剤。」と訂正する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項13において、 「請求項1〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤。」とあるのを、 「請求項1、2、5および9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤。」と訂正する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項15において、 「請求項1〜14のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。」とあるのを、 「請求項1、2、5および9〜13のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。」と訂正する。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項16において、 「請求項1〜14のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層」とあるのを、 「請求項1、2、5および9〜13のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層」と訂正する。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項17において、 「Ta、Nb、Zr、Mo、W、Cr、Hf、Al、Ti及びVから選択される1種またはそれ以上の金属原子」とあるのを、 「Ta、またはNbである金属原子」と訂正する。 (23)訂正事項23 特許請求の範囲の請求項17において、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;」とあるのを、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり;」と訂正する。 (24)訂正事項24 特許請求の範囲の請求項17において、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRsiは、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;」とあるのを、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化5】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)Z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり;」と訂正する。 (25)訂正事項25 特許請求の範囲の請求項17において、 「XAは、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基であり;」とあるのを、 「XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり;」と訂正する。 (26)訂正事項26 特許請求の範囲の請求項17において、 「αは、1〜9の整数であり; βは、1〜9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;」とあるのを、 「αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり;」と訂正する。 (27)訂正事項27 特許請求の範囲の請求項22において、 「Ta、Nb、Zr、Mo、W、Cr、Hf、Al、Ti及びVから選択される1種またはそれ以上の金属原子」とあるのを、 「Ta、またはNbである金属原子」と訂正する。 (28)訂正事項28 特許請求の範囲の請求項22において、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;」とあるのを、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり;」と訂正する。 (29)訂正事項29 特許請求の範囲の請求項22において、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRsiは、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;」とあるのを、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化7】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水八解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z3−O−(CH2)z2−(式中、z1は0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である) または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; RC1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”、−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; 」と訂正する。 (30)訂正事項30 特許請求の範囲の請求項22において、 「XAは、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基であり;」とあるのを、 「XAは、それぞれ独立して、単結合、C1−20アルキレン基、または−R5l−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O―(CH2)U5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53) 2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基 C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり;」と訂正する。 (31)訂正事項31 特許請求の範囲の請求項22において、 「αは、1〜9の整数であり; βは、1〜9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;」とあるのを、 「αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり;」と訂正する。 (32)訂正事項32 特許請求の範囲の請求項22において、 「前記含フッ素シラン化合物および前記金属原子を含む金属化合物を含む表面処理剤」とあるのを、 「前記含フッ素シラン化合物およびM−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される前記金属原子を含む金属化合物を含む表面処理剤」と訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1〜22のうち、請求項1、17及び22は独立請求項である。 そして、訂正前の請求項2〜16、20及び21は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1〜6によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、訂正前の請求項18〜21は、請求項17を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項22〜26によって記載が訂正される請求項17に連動して訂正されるものである。 ここで、請求項20及び21は、請求項1及び17を引用しているから、訂正前の請求項1〜21に対応する訂正後の請求項1〜21は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 したがって、本件訂正は、一群の請求項ごと、及び、請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「金属化合物」について、「金属化合物に含まれる金属原子は、Ta、Nb、Zr、Mo、W、Cr、Hf、Al、Ti及びVから選択される1種またはそれ以上の金属原子」とされていたものを、その金属化合物の構造及び含まれる金属原子の種類を限定し、 「前記金属化合物は、M−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される金属化合物であり、」 と訂正するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1の金属化合物の構造及び含まれる金属原子の種類を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項2〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」ともいう。)の 「【0244】 本明細書において、金属化合物に含まれる金属原子とは、B、Si、Ge、Sb、As、Te等の半金属も包含する。 【0245】 上記金属化合物に含まれる金属原子は、周期表の3族〜11族の遷移金属原子、および12〜15族の典型金属原子から選択される1種またはそれ以上の金属原子である。上記金属原子は、好ましくは周期表の3族〜11族の遷移金属原子、および12〜15族の典型金属原子(ただし、Siを除く)から選択される1種またはそれ以上の金属原子、より好ましくは3族〜11族の遷移金属原子、さらに好ましくは3〜7族の遷移金属原子、さらにより好ましくは4〜6族の遷移金属原子である。表面処理剤がこのような金属原子を含むことにより、該表面処理剤から形成される表面処理層中に上記金属原子を存在せしめることができ、これにより表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性を向上させることができる。 【0246】 一の態様において、上記金属原子は、Ta、Nb、Zr、Mo、W、Cr、Hf、Al、TiおよびVから選択される1種またはそれ以上の原子である。かかる金属種を用いることにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができる。 【0247】 好ましい態様において、上記金属原子は、Ta、Nb、W、Mo、CrまたはVである。かかる金属種を用いることにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができる。 【0248】 さらに好ましい態様において、上記金属原子は、Taである。金属原子としてタンタルを採用することにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができる。 【0249】 好ましい態様において、上記金属化合物は、M−R(式中、Mは、金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される金属化合物である。金属化合物を、金属と加水分解性基とが結合した化合物とすることにより、より効率的に金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。 【0250】 上記加水分解性基とは、上記含フッ素シランに関する加水分解性基と同様に、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、金属原子から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、ハロゲン(これら式中、Rmは、置換または非置換のC1−4アルキル基を示す)などが挙げられる。」 との記載において、「金属化合物」が「M−R(式中、Mは、金属原子であり、Rは加水分解性基である)」の場合の「Rは加水分解性基」を、「−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、ハロゲン(これら式中、Rmは、置換または非置換のC1−4アルキル基を示す)」の場合であって、かつ、「M」の金属原子の種類が「Ta」又は「Nb」の場合に該当する。 してみると、訂正事項1は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項1の「含フッ素シラン化合物」を表す「後記式(1)または(2): 【化1】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり;」の「RF」について、訂正前に「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;」とあったものを、「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり;」とするものであって、「2価のフルオロポリエーテル基」の構造を限定するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、請求項1の「2価のフルオロポリエーテル基」の構造を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項2は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、訂正前の請求項2〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、本件明細書の段落「【0028】 RFは、好ましくは、式: −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3RFa6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中: RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、 a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子または塩素原子である場合、a、b、c、eおよびfの少なくとも1つは、1以上である。] で表される基である。 【0029】 RFaは、好ましくは、水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子または塩素原子である場合、a、b、c、eおよびfの少なくとも1つは、1以上である。 ・・・ 【0031】 a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下または30以下であってもよい。」との記載における「RF」の「式」について、「RFa」が「フッ素原子」であり、「a、b、c、d、eおよびfの和」が「5以上」、「60以下」の場合に該当するものである。 してみると、訂正事項2は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項1の「含フッ素シラン化合物」を表す「後記式(1)または(2): 【化1】 」の「RSi」について、訂正前に「RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を含 む1価の基であり;」とあったものを、 「Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)Z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり;」とするものであって、「各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基」である「RSi」の構造をさらに限定するものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、請求項1の「RSi」の構造を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項3は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、訂正前の請求項2〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、本件明細書の段落「【0055】 好ましい態様において、RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、または(S4): 【化6】 で表される基である。 【0056】 上記式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基である。 ・・・ 【0062】 n1は、(SiR11n1R123−n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2〜3、さらに好ましくは3である。 【0063】 上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)である。かかるC1−20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1−20アルキレン基は、好ましくはC1−10アルキレン基、より好ましくはC1−6アルキレン基、さらに好ましくはC1−3アルキレン基である。 ・・・ 【0066】 上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1−20アルキル基である。かかるC1−20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。 ・・・ 【0068】 上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数である。 ・・・ 【0070】 上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR11n1R123−n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。 【0071】 上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基である。」との記載において、「Rsi」の「式」が(S1)、(S3)又は(S4)の場合に該当し、 式(S1)において、R11が各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり、n1が3であり、X11が単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)の場合に該当し、 式(S3)において、同「【0076】 上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR21p1R22q1R23r1である。 ・・・ 【0080】 上記Z1は、好ましくは、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)である。かかるC1−6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、およびC2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。 ・・・ 【0114】 上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基である。 ・・・ 【0123】 一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21p1R22q1R23r1)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、さらに好ましくは3である。」において、p1が0、q1が3、r1が0の場合に該当し、 同「【0124】 上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基である。 ・・・ 【0127】 上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。 ・・・ 【0129】 上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1k1Rb1l1Rc1m1)単位において、3である。 【0130】 一の態様において、k1は、(SiRa1k1Rb1l1Rc1m1)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。」との記載における、k1が2〜3、l1が0〜1、m1が0〜1の場合に該当し、 式(S4)において、同「【0152】 上記Z3は、好ましくは、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)である。かかるC1−6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、およびC2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。 ・・・ 【0155】 上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基である。 ・・・ 【0161】 n2は、(SiR34n2R353−n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2〜3、さらに好ましくは3である。 ・・・ 【0178】 上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR34n2R353−n2である。かかる−Z3−SiR34n2R353−n2は、上記R32’における記載と同意義である。 【0179】 上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。 ・・・ 【0188】 好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2または3、好ましくは3であり、n2は、2または3、好ましくは3である。」との記載における、k2が0、l2が2〜3、m2が0〜1であり、Re1のn2が3、Z3がC1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)の場合に該当するものである。 してみると、訂正事項3は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、請求項1の「含フッ素シラン化合物」を表す「後記式(1)または(2): 【化1】 」の「XA」について、訂正前に「XAは、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基であり;」とあったものを、「XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり;」とするものであって、「2〜10価の有機基」である「XA」の構造をさらに限定するものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、請求項1の「XA」の構造を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項4は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、訂正前の請求項2〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、本件明細書の段落 「 」との記載において、「XA」が単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52−の場合に該当し、かつ、「R51」、「X53」及び「R52」について、本件明細書に記載されたとおりの特定がなされたものである。 してみると、訂正事項4は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、請求項1の「含フッ素シラン化合物」を表す「後記式(1)または(2): 【化1】 」のα、β及びγについて、訂正前に「αは、1〜9の整数であり; βは、1〜9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;」とあったものを、本件明細書の「【0201】 一の態様において、XAは、単結合または2価の有機基であり、αは1であり、βは1である。 【0202】 一の態様において、XAは、単結合または2価の有機基であり、γは1である。」との記載に基いて、「αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり;」と限定するものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事項5は、前記α、β及びγを本件明細書の記載に基いて限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項5は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、訂正前の請求項2〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、請求項1の「表面処理剤」を、本件明細書の「【0275】 本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。」との記載に基いて、「真空蒸着用の表面処理剤」と限定するものであるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事項6は、前記表面処理剤の用途を本件明細書の記載に基いて限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、訂正前の請求項2〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 (7)訂正事項7、8、11〜13、19 訂正事項7、8、11〜13及び19は、請求項3、4、6〜8及び14を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (8)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、記載をまとめると、請求項5の式(f1)〜(f5)について、訂正前に「 」とあったものを、「 」とするものであって、a〜fの数値範囲を限定するものであるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、請求項1のa〜fの数値範囲を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項9は、訂正前の請求項5を直接又は間接的に引用する請求項6〜16、20及び21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、訂正前の請求項6〜16、20及び21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項9は、前記訂正事項2により、請求項1の「RF」を、 「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり;」と訂正して、a〜fの取り得る数値範囲が限定されたのに合わせて、例えば、式(f1)である「−(OC3F6)d−」において、dが1〜200であったものを1〜60とするように、式(f1)〜(f5)におけるa〜fの値が取り得る数値範囲の一部を削除するものであるから、訂正事項9は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 (9)訂正事項10、14〜18、20〜21 訂正事項10、14〜18及び20〜21は、請求項3、4、6〜8及び14が削除されたことに伴い、引用する請求項を整合させることにより、削除された請求項を引用しているという不明瞭な状態を解消するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (10)訂正事項22 訂正事項22は、訂正前の請求項17の「Ta、Nb、Zr、Mo、W、Cr、Hf、Al、Ti及びVから選択される1種またはそれ以上の金属原子」を、「Ta、またはNbである金属原子」に限定するものであるから、訂正事項22は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事22は、請求項17の「金属原子」の種類を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、訂正事項22は、訂正前の請求項17を直接又は間接的に引用する請求項18〜21の記載についても同様に訂正するものであるが、前記アの理由から明らかなように、訂正事項22は、訂正前の請求項18〜21との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 してみると、訂正事項22は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 (11)訂正事項23 訂正事項23は、訂正前の請求項17について、実質的に、前記訂正事項2と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(2)で検討したのと同じ理由により、訂正事項23は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (12)訂正事項24 訂正事項24は、訂正前の請求項17について、実質的に、前記訂正事項3と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(3)で検討したのと同じ理由により、訂正事項24は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (13)訂正事項25 訂正事項25は、訂正前の請求項17について、実質的に、前記訂正事項4と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(4)で検討したのと同じ理由により、訂正事項25は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (14)訂正事項26 訂正事項26は、訂正前の請求項17について、実質的に、前記訂正事項5と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(5)で検討したのと同じ理由により、訂正事項26は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (15)訂正事項27 訂正事項27は、訂正前の請求項22について、実質的に、前記訂正事項22と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(10)で検討したのと同じ理由により、訂正事項27は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (16)訂正事項28 訂正事項28は、訂正前の請求項22について、実質的に、前記訂正事項2と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(2)で検討したのと同じ理由により、訂正事項28は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (17)訂正事項29 訂正事項29は、訂正前の請求項22について、実質的に、前記訂正事項3と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(3)で検討したのと同じ理由により、訂正事項29は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (18)訂正事項30 訂正事項30は、訂正前の請求項22について、実質的に、前記訂正事項4と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(4)で検討したのと同じ理由により、訂正事項30は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (19)訂正事項31 訂正事項31は、訂正前の請求項22について、実質的に、前記訂正事項5と同一の訂正をしようとするものである。 そうすると、前記(5)で検討したのと同じ理由により、訂正事項31は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (20)訂正事項32 ア 訂正の目的について 訂正事項32は、訂正前の請求項22の「金属化合物」について、その構造を「M−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される前記金属原子を含む金属化合物」と限定するものであるから、訂正事項32は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アの理由から明らかなように、訂正事項32は、請求項22の「金属化合物」の金属原子の種類及び構造を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項32は、訂正前の請求項22の金属原子の種類が「Ta、またはNb」であるとともに、本件明細書の段落 「【0249】 好ましい態様において、上記金属化合物は、M−R(式中、Mは、金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される金属化合物である。金属化合物を、金属と加水分解性基とが結合した化合物とすることにより、より効率的に金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。 【0250】 上記加水分解性基とは、上記含フッ素シランに関する加水分解性基と同様に、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、金属原子から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、ハロゲン(これら式中、Rmは、置換または非置換のC1−4アルキル基を示す)などが挙げられる。」との記載において、「金属化合物」が「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される前記金属原子を含む金属化合物」の場合に該当する。 してみると、訂正事項32は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。 4 特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること 本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1〜22に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜21〕、22について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件特許の請求項1〜22に係る発明(以下、項番により「本件訂正発明1」等ともいい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 含フッ素シラン化合物および金属化合物を含む表面処理剤であって、 前記金属化合物は、M−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される金属化合物であり、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化1】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)Z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、真空蒸着用の表面処理剤。 【請求項2】 Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−16パーフルオロアルキル基であり、 Rf2は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6パーフルオロアルキレン基である、 請求項1に記載の表面処理剤。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 RFは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5): −(OC3F6)d−(f1) [式中、dは1〜60の整数である。]、 −(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f−(f2) [式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜30の整数であり eおよびfは、それぞれ独立して、1〜60の整数であり; c、d、eおよびfの和は、10〜60の整数であり; 添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、 −(R6−R7)g−(f3) [式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり; R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり; gは、2〜20の整数である。]、 −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f−(f4) [式中、eは、1以上60以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上59以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f−(f5) [式中、fは、1以上60以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上59以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される基である、請求項1または2に記載の表面処理剤。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 前記式(S1)で表される基は、下記式(S1−b) 【化3】 [式中、R11、R12、R13、X11、n1およびtは、上記式(S1)の記載と同意義である] で表される基である、請求項1、2、および5のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項10】 アルコールをさらに含有する、請求項1、2、5および9のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項11】 含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1、2、5、9および10のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項12】 さらに溶媒を含む、請求項1、2、5および9〜11のいずれか1項に記載の表面処理剤。 [請求項13】 防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として使用される、請求項1、2、5および9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 請求項1、2、5および9〜13のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。 [請求項16】 基材と、該基材上に、請求項1、2、5および9〜13のいずれか1項に記載の表面処 理剤より形成された層とを含む物品。 【請求項17】 基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、 Ta、またはNbである金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2) : 【化4】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oqーであり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいCl−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化5】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、Xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Zl−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整であり; m2は、各出 においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、C1−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2− −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2O)−CH2CH2−Si(R53) 2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi (OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)us−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2−、 (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RSiβおよびRSiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、 物品。 【請求項18】 前記金属原子は、表面処理層中に、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および金属原子の合計量に対して、0.03〜3at%含まれる、請求項17に記載の物品。 【請求項19】 前記金属原子は、Taである、請求項17または18に記載の物品。 【請求項20】 前記基材は、ガラス基材である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の物品。 【請求項21】 光学部材である、請求項16〜20のいずれか1項に記載の物品。 【請求項22】 基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品の製造方法であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、Ta、またはNbである金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化6】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF2Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化7】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水八解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z3−O−(CH2)z2−(式中、z1は0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である) または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; RC1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、C1−20アルキレン基、または−R5l−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O―(CH2)U5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53) 2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基 C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であり、 前記基材上に、前記含フッ素シラン化合物およびM−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される前記金属原子を含む金属化合物を含む表面処理剤を用いて、前記含フッ素シラン化合物および前記金属原子を含む金属化合物を蒸着させて、表面処理層を形成することを含む方法。」 第4 取消理由について 1 取消理由の概要 (1)取消理由1(新規性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜9、11〜14、16、17、20〜22に係る発明は、後記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(新規性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜6、8、10、12、13、16〜18、20に係る発明は、後記の甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(新規性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜7、9、11〜17、20〜22に係る発明は、後記の甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)取消理由4(進歩性) 本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜22に係る発明は、後記の甲第1〜甲第4号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)取消理由5(サポート要件) 本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 申立人が特許異議申立書に添付した甲第1号証〜甲第4号証(以下「甲1」〜「甲4」ともいう。)は、いずれも、本件特許の優先日より前に公知となったものである。 甲第1号証:特開2016−20407号公報 甲第2号証:特表2007−513239号公報 甲第3号証:国際公開第2016/190047号 甲第4号証:国際公開第2019/088116号 第5 当審の判断 1 取消理由1〜4(新規性及び進歩性)について (1)甲号証に記載された事項 ア 甲1には次の記載がある。 「【請求項2】 (A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物を基材表面に塗布し、前記有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を硬化させて皮膜を形成する工程を含む、硬化皮膜の製造方法。 ・・・ 【請求項8】 (A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物。 ・・・ 【請求項10】 (A)有機ケイ素化合物が、−CgF2gO−で表される単位(式中gは単位毎に独立に1〜6の整数である)を10〜200個有するフルオロオキシアルキレン基を有し、且つ、少なくとも1の末端に後記式(1) 【化8】 (1) (式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3である) で示される基を少なくとも1つ有する、請求項8または9記載の組成物。 【請求項11】 (A)有機ケイ素化合物が、後記一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項10記載の組成物。 【化9】 (3) 【化10】 (4) [前記式(3)及び(4)において、Rfは−CgF2gO−単位を10〜200個有する2価の(ポリ)フルオロオキシアルキレン基(gは前記の通り)であり、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF3基、−CF2H基もしくは−CFH2基である1価のフッ素含有基であり、R1、X、aは前記の通りであり、eは0または1であり、e=0のとき、b=1であり、α=0であり、及びc=1であり、e=1のとき、bは1〜7の整数であり、αは0または1であり、且つ、α=0の時c=1であり、α=1の時cは1〜3の整数であり、Qは単結合、又は、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有してよい、置換又は非置換の、炭素数2〜12の二価の有機基であり、Zは、シルアルキレン構造またはシルフェニレン構造を有してよい2〜8価のオルガノシロキサン残基、あるいは2価のオルガノシルアルキレン残基またはオルガノシルフェニレン残基であり、fは1〜10の整数であり、Wは−CjH2j−R5tSi−または−CjH2j−R5tC−で示される(c+1)価の基であり、前記式中、jは2〜10の整数であり、tは0〜2の整数であり、R5は炭素数1〜12のアルキル基である] 【化11】 (5) 【化12】 (6) [前記式(5)及び(6)において、Rfは−CgF2gO−単位を10〜200個有する2価の(ポリ)フルオロオキシアルキレン基(gは前記の通り)であり、Q、R1、X、及びaは前記の通りであり、Q’は炭素原子、又は炭素数2〜12の3価炭化水素基であり、Q’が炭素原子のとき、kは0であり、nは2であり、及びmは1であり、Q’が3価炭化水素基のとき、kは0または1であり、kが0のとき、nは1であり、及びmは2〜10の整数であり、kが1のとき、nは1〜3の整数であり、及びmは1〜10の整数であり、Yはフェニレン基または、(n+1)価の、R8sSiまたはR6sCであり、sは0〜2の整数であり、R8は炭素数1〜12のアルキル基であり、R6は炭素数1〜12のアルキル基、ヒドロキシル基、またはR73SiO−であり、R7は互いに独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基であり、f’は0〜10の整数であり、Bは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子であり、但しBが水素原子であるときmは2以上である] ・・・ 【請求項13】 さらに後記式(8) 【化13】 (8) (式中、Rf及びAは前記の通りである)で表される(ポリ)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを含有する、請求項11または12記載の組成物。 【請求項14】 さらに溶剤を含む、請求項8〜13のいずれか1項記載の組成物。 【請求項15】 請求項8〜14のいずれか1項記載の組成物を硬化して成る硬化皮膜。 【請求項16】 請求項15記載の硬化皮膜を有する物品。 【請求項17】 請求項15記載の硬化皮膜で被覆されたタッチパネル。 ・・・ 【請求項19】 請求項15記載の硬化皮膜で被覆された強化ガラス。 ・・・ 【0001】 本発明は、フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物の硬化方法、及び含フッ素硬化皮膜の製造方法に関する。詳細には、硬化開始後短時間で優れた撥水性を発現できる硬化方法に関する。また本発明は、フルオロオキシアルキレン及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を含む組成物、並びに該組成物の硬化物で表面処理された物品に関する。 ・・・ 【0022】 本発明の方法は、フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び又はその部分加水分解物を硬化するための触媒としてジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種を使用することを特徴とする。ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物の使用により、錫化合物の存在下で硬化する場合と同等に優れた撥水性を基材表面に付与することができる。 ・・・ 【0048】 前記式(3)及び(4)で表される有機ケイ素化合物として、後記に示す化合物も好適である。 ・・・ 【化25】 【化26】 ・・・ 【0052】 前記式(5)及び(6)で表される化合物として後記のものが挙げられる。 【化30】 ・・・ 【化33】 ・・・ 【化36】 ・・・ 【0062】 本発明の組成物はさらに溶剤を含んでよい。溶剤は、例えば、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m−キシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド、1,3トリフルオロメチルベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)が挙げられる。中でも、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特にはエチルパーフルオロブチルエーテルやデカフルオロペンタンがより好ましい。前記溶剤は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。・・・【0064】 組成物を基材に塗工する方法は従来公知の方法に従えばよい。例えば刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法が使用でき、中でもディップ塗工が好ましい。硬化皮膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1nm〜100nm、特に3〜30nmである。 ・・・ 【0067】 本発明の硬化物または硬化皮膜で表面処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明は、これらの基材表面に撥水撥油性、耐薬品性、離型性、低動摩擦性、及び防汚性を付与することができる。特には光学物品、フィルム、ガラス、石英基板、及び反射防止膜が挙げられる。硬化皮膜の基材に対する密着性が悪い場合は、基材表面にプライマー層としてSiO2層を設けるか、基材表面を予め真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、またはアルカリ処理することによって、密着性を向上することができる。 ・・・ 【0070】 実施例及び比較例で使用した成分を以下に記載する。 (A)有機ケイ素化合物1: 【化43】 (A)有機ケイ素化合物2: 【化44】 ・・・ 【0072】 [実施例1] 前記(A)有機ケイ素化合物1 100質量部に対し0.4質量部となるように前記ジルコニウム含有化合物1を添加し混合した。該混合物をフッ素系溶媒(ノナフルオロブチルエチルエーテル、商品名:Novec7200、住友3M社製)に溶解させ、濃度20質量%を有する溶液を得た。Novec7200をさらに加えて溶液濃度0.5質量%を有する表面処理剤を調製した。 ・・・ 【0074】 [実施例3] ジルコニウム含有化合物1をアルミニウム含有化合物1に替えた他は実施例1を繰返し、溶液濃度0.5質量%を有する表面処理剤を調製した。 ・・・ 【0076】 [実施例5] 有機ケイ素化合物1を有機ケイ素化合物2に替えた他は実施例1を繰返し、溶液濃度0.5質量%を有する表面処理剤を得た。 ・・・ 【0080】 [水接触角の測定] 強化ガラス(コーニング社製 Gorilla II)に、前記実施例、比較例及び参考例で得た各表面処理剤をDip塗工した。塗工条件は、引き上げ速度200mm/min、浸漬時間30秒であった。塗工直後の強化ガラスを25℃、相対湿度50%下におき、塗工直後から5分おきに30分間、塗工面の水に対する接触角を測定した。また、前記強化ガラスを25℃、相対湿度50%下で24時間放置したのちに、塗工面の水に対する接触角を測定した。水接触角の測定は接触角計DropMaster(協和界面科学社製)を用いて行った。液滴の量は2μlであった。結果を表1に示す。 【0081】 【表1】 」 イ 甲2には、次の記載がある。 「【請求項1】 (a)(i)式 (T’k’−Q’)y−Rf−Q−Tk(I) (式中、Rfは1価または2価のポリフルオロポリエーテル基であり、QおよびQ’は独立して化学結合、2価有機連結基または3価有機連結基であり、TおよびT’はそれぞれ独立して−NCOまたはイソシアネート反応性基を表し、k’は0〜約10の整数であり、kは1〜約10の整数であり、yは0または1である) の弗素化ポリエーテル化合物と、 (ii)式T”−Q”−SiY3-xRx(II) (式中、T”は−NCOまたはイソシアネート反応性基であり、Q”は有機2価連結基であり、Rは炭素原子1〜4のアルキル基であり、Yは加水分解性基であり、xは0、1または2であり、T、T’またはT”の少なくとも1つは−NCOである) のシラン化合物と の反応生成物を含む加水分解性パーフルオロポリエーテルイソシアネート誘導シランまたはその混合物、 (b)周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、少なくとも2個の加水分解性基を有する化合物および (c)任意に、周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、2個または3個の加水分解性基、C3〜C20炭化水素基、反応性官能基またはそれらの混合物を有する化合物 の混合物を含む組成物。 ・・・ 【請求項22】 基材を処理する方法であって、請求項1に記載の組成物を前記基材の表面の少なくとも一部に被着させる工程を含む方法。 ・・・ 【技術分野】 【0001】 本発明は、硬い表面および柔らかい表面などの基材を処理して、これらの表面を撥水撥油性ならびに耐汚染性および耐埃性にするためのコーティング組成物および方法に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 本発明は、特にアルカリ製品に対する優れた機械的耐磨耗性および耐薬品性と合わせて基材上の耐汚染性および耐埃性に加えて改善された撥水撥油性を提供する、1官能性および2官能性のパーフルオロポリエーテルイソシアネート誘導シランおよびアルコキシシランを含む新規コーティング組成物を提供する。 ・・・ 【0033】 組成物の成分(b)は式(IV)(R’)qM(Y’)p-qによる化合物を含む。式中、R’は非加水分解性基を表し、Mは、好ましくはSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、PおよびSnからなる群から選択された原子価p+qの元素を表し、pはMの原子価に応じて2、3または4であり、qは0、1または2であり、Y’は加水分解性基を表す。 ・・・ 【0038】 好ましい成分(b)には、MがTi、Zr、SiおよびAlである化合物が挙げられる。成分(b)の代表的な例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、テトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトライソプロピルオルトチタネート、テトラ−n−プロピルオルトチタネート、テトラエチルジルコネート、テトライソプロピルジルコネートおよびテトラn−プロピルジルコネートなどが挙げられる。より好ましい化合物には、Si、TiおよびZrのC1〜C4アルコキシ誘導体が挙げられる。特に好ましい成分(b)には、テトラエトキシシランおよびメチルトリエトキシシランが挙げられる。成分(b)の単一化合物または混合物を用いてもよい。 【0039】 組成物中の成分(c)は、一実施形態において成分(b)に似ている化合物であって、式(V)R”M(Y”)’3-x(V)(式中、R”はC3〜C20炭化水素基であり、Mは上で定義された元素であり、好ましくは、Si、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、SnおよびZnからなる群から選択され、Y”は加水分解性基であり、xは0または1である)の化合物を含む。化合物(c)中の好ましい元素MはSiである。加水分解性基は成分(b)について上で定義されたものと同じである。 ・・・ 【0058】 本発明の組成物は、典型的には1種以上の有機溶媒を含む。用いられる有機溶媒または有機溶媒のブレンドは、成分(a)、(b)および(c)と(a)、(b)および(c)の部分縮合または完全縮合の結果として生じうるあらゆる部分縮合物または完全縮合物との混合物を溶解させることができなければならない。好ましくは、用いられる有機溶媒または有機溶媒のブレンドは、成分(a)、(b)、(c)および/またはその部分縮合物または完全縮合物の少なくとも0.01%を溶解させることができなければならない。更に、溶媒または溶媒の混合物は、好ましくは、少なくとも0.1重量%、好ましくは1重量%の水に対する溶解度および少なくとも0.01重量%、好ましくは0.1重量%の酸触媒または塩基触媒に対する溶解度を有する。有機溶媒または有機溶媒の混合物がこれらの基準を満たさない場合、弗素化重縮合物、溶媒、水および触媒の均質混合物を得ることが可能でない場合がある。 【0059】 適する有機溶媒または溶媒の混合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール(好ましくは1〜6個の炭素原子を含む)、アセトンまたはメチルエチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、蟻酸メチルなどのエステルおよびジエチルエーテルなどのエーテルから選択することが可能である。特に好ましい溶媒には、エタノール、イソプロパノールおよびアセトンが挙げられる。 【0060】 出発化合物および/または部分縮合物または完全縮合物の溶解度を改善するために弗素化溶媒を有機溶媒と組み合わせて用いてもよい。こうした弗素化溶媒は、CF3CH2OHなどの親水性基を更に含まないかぎり、水および酸または塩基に対する溶解度の要件を一般に満たさないのでそれだけで用いるために一般に適さない。 ・・・ 【0063】 本発明の組成物で特に有効なやり方で処理することが可能である適する基材には、成分(a)、(b)および(c)および/またはその部分縮合物または完全縮合物と反応できる基を好ましくは有する硬い表面を有する基材が挙げられる。特に好ましい基材には、セラミック、ガラス、金属、天然石および人工石、熱可塑性材料(ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマーなどのスチレンコポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど)、ペンキ(アクリル樹脂に関するペンキなど)、粉末コーティング(ポリウレタンまたは混成粉末コーティングなど)、イノックス、クロム化スチール、マルモレウム、ビニルおよび木材が挙げられる。種々の物品は、撥水撥油性被膜を物品上に提供するために本発明のフルオロケミカル溶液で有効に処理することが可能である。例には、セラミックタイル、バスタブまたはトイレット、ガラスシャワーパネル、建築ガラス、車両の種々の部品(ミラーまたはウィンドスクリーンなど)、ガラスおよびセラミック陶磁器材料またはエナメル陶磁器材料が挙げられる。 ・・・ 【0071】 【表1】 ・・・ 【0073】 被覆方法 第1の工程において、基材(オランダ国のスフィンクス(Sphinx)から入手できる白色衛生タイル)を洗浄し、アセトンで脱脂した。洗浄後、それぞれの実施例において与えられた溶媒混合物中の弗素化ポリエーテルシランを約20ml/分でスプレー塗布により基材上に被着させた。基材を被覆前に室温で保った。あるいは、基材を被覆前に予熱した。被覆されたサンプルを室温で乾燥させるか、または120℃で30分にわたり強制空気炉で乾燥させた。その後、乾燥布地を用いて過剰の製品を除去した。 ・・・ 【0076】 調製2:HFPO−オリゴマーエステル/APD/NCO−シラン;1/1/2 スターラー、加熱マントル、温度計およびコンデンサが装着された100mL三口丸底フラスコにHFPO−オリゴマージエステル(12.3g、0.01モル)およびAPD(0.9g、0.01モル)を投入した。反応を窒素下で行った。混合物の温度を40℃に上げ、16時間にわたり保持した。その後、NCO−シラン(5.0g、0.02モル)をTEH1滴(約0.05g)に加えて添加し、得られた混合物を80℃で一晩加熱した。標準IR技術を用いて反応の残留イソシアネートを検査した。粘性の液体を得た。この粘性液を酢酸エチル中で固形物50%に希釈した。 ・・・ 【0085】 実施例9 上述した被覆方法を用いる直前に添加剤を混合することにより表2の配合物を調製した。 【0086】 実施例10〜19ならびにC2およびC2 実施例9の手順に従い、表2に記載された成分および重量を用いて、更なる実施例を調製した。タイル上への塗布を実施例9によって行った。 【0089】 【表3】 【0090】 【表4】 【0091】 表3に記載した接触角は、本発明の組成物が高い撥水撥油性を与えることを示している。更に、本発明の組成物は、高い機械的耐摩耗性および酸とアルカリへの特に良好な耐薬品性を提供する。」 ウ 甲3には、次の記載がある。 「[0001] 本発明は、表面処理層を有する物品、特に含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる表面処理層を有する物品の製造方法に関する。 ・・・ [0011] 本発明によれば、CVD法を利用して、ケイ素酸化物層を形成し、その上に表面処理層を形成することにより、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、優れた摩擦耐久性および汗耐久性を有する表面処理層を有して成る物品を製造することができる。 ・・・ [0180] 本発明で用いられる表面処理剤は、溶媒で希釈されていてもよい。このような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、パーフルオロヘキサン、CF3CF2CHCl2、CF3CH2CF2CH3、CF3CHFCHFC2F5、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン((ゼオローラH(商品名)等)、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、CF3CH2OCF2CHF2、C6F13CH=CH2、キシレンヘキサフルオリド、パーフルオロベンゼン、メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン、トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、HCF2CF2CH2OH、メチルトリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロ酢酸およびCF3O(CF2CF2O)m(CF2O)nCF2CF3[式中、mおよびnは、それぞれ独立して0以上1000以下の整数であり、mまたはnを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、但しmおよびnの和は1以上である。]、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,2−トリクロロ―3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンからなる群から選択される溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。 [0181] 本発明で用いられる表面処理剤は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物に加え、他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロポリエーテル化合物(以下、「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒などが挙げられる。 ・・・ [0197] 前記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。 [0198] 触媒は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、表面処理層の形成を促進する。 ・・・ [0210] 膜形成は、膜中で表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。 ・・・ [0222] 本発明によって得られる物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材としては、例えば、後記の光学部材が挙げられる:例えば、陰極線管(CRT:例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの;眼鏡などのレンズ;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。 ・・・ [0239] 実施例1 ・ケイ素酸化物層の形成 基材として、化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)を準備した。基材の表面を、H2SO4/H2O2/H2O(1:1:5)の混合溶液で洗浄し、ケイ素源としてSiH4ガスを、酸素源としてN2Oガスを用いて、東京エレクトロン製TriasCVD装置にて、プラズマCVDを行い、基材表面にケイ素酸化物(SiO)層を形成した。 ・・・ [0242] ・表面処理材の調製 後記式(平均組成)で示される含フッ素化合物を、濃度20wt%になるようにハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE7200)に溶解させて表面処理剤を調製した。 CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3 (m=21、Mn=3980) *mの値は19F−NMRから測定された値であり、MnはGPCから測定された値である。 [0243] ・表面処理層の形成 前記で得られたケイ素酸化物層を、加速電圧1000V、加速電流500mA、圧力2×10−2PaでO2イオンクリーニングに付した。次いで、前記で調製した表面処理剤を、ケイ素酸化物層上に真空蒸着した。真空蒸着の処理条件は、圧力3.0×10−3Paとし、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり、表面処理剤2mg(即ち、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を0.4mg含有)を蒸着させた。その後、蒸着膜付き化学強化ガラスを、温度20℃および湿度65%の雰囲気下で24時間静置し、基材上にケイ素酸化物と表面処理層を有する物品を得た。 ・・・ 請求の範囲 [請求項1] 基材と、 該基材上に位置するケイ素酸化物層と、 該ケイ素酸化物層上に形成された表面処理層と を有して成る物品の製造方法であって、 化学気相成長法を用いて、ケイ素酸化物層を形成すること、および 得られたケイ素酸化物層上に、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤を用いて、表面処理層を形成すること を含む製造方法。 ・・・ [請求項7] 含フッ素シラン化合物が、後記一般式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2): [式中: PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC4F8)a−(OC3F6)b−(OC2F4)c−(OCF2)d− (式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。) で表される基であり; Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し; R1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し; R2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し; R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し; R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し; nは、(−SiR1nR23−n)単位毎に独立して、0〜3の整数であり; ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR2が存在し; X1は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し; X2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し; tは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜10の整数であり; αは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; α’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; X5は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し; βは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; β’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; X7は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し; γは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; γ’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; Raは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z−SiR71pR72qR73rを表し; Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し; R71は、各出現においてそれぞれ独立して、Ra’を表し; Ra’は、Raと同意義であり; Ra中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり; R72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し; R73は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し; pは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; rは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; ただし、−Z−SiR71pR72qR73r毎において、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR72が存在し; Rbは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し; Rcは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し; kは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜3の整数であり; lは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜2の整数であり; mは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜2の整数であり; ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3であり; X9は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し; δは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; δ’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり; Rdは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z2−CR81p2R82q2R83r2を表し; Z2は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し; R81は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd’を表し; Rd’は、Rdと同意義であり; Rd中、Z2基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個であり; R82は、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し; Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し; R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し; R86は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し; n2は、(−Y−SiR85n2R863−n2)単位毎に独立して、0〜3の整数を表し; R83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し; p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し; Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し; k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり; ただし、式(D1)および(D2)において、少なくとも1つのR85が存在する。] で表される1種またはそれ以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。 ・・・ [請求項10] 表面処理剤が、含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。 ・・・ [請求項18] 基材が、ガラス基材であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造方法 。[請求項19] 物品が光学部材である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法。 [請求項20] 請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法により得られた物品。」 エ 甲4には、次の記載がある。 「請求の範囲 [請求項1] パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および溶剤を含み、 パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物および溶剤の合計量100質量部に対する、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の割合が、30〜99質量部の範囲にある、表面処理組成物。 ・・・ [0004] このような表面処理組成物から得られる層(以下、「表面処理層」と称することがある)には良好な表面物性を有することとともに、さらに、その表面物性のばらつきが少ないことが求められる。 本発明の目的は、表面の物性(例えば、摩擦耐久性)のばらつきの少ない表面処理層を提供することにある。 ・・・ [0265] 前記表面処理組成物は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。 ・・・ [0280] 層形成は、層中で本発明の表面処理組成物が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本発明の表面処理組成物を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本発明の表面処理組成物の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本発明の表面処理組成物をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本発明の表面処理組成物を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。」 (2)甲号証に記載された発明について ア 甲1に記載された発明 (ア)甲1(前記(1)ア参照。)の【請求項8】、【請求項10】、【請求項11】、【請求項13】を引用する【請求項14】には「(A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物であって、 (A)有機ケイ素化合物が、−CgF2gO−で表される単位(式中gは単位毎に独立に1〜6の整数である)を10〜200個有するフルオロオキシアルキレン基を有し、且つ、少なくとも1の末端に後記式(1)で示される基を少なくとも1つ有し、 (A)有機ケイ素化合物が、後記一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であり、 さらに後記式(8)で表される(ポリ)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを含有し、 さらに溶剤を含む組成物」(当審注:式(1)などは、前記3(1)に摘記したとおりであり、省略する。以下同様。)が記載されている。 (イ)甲1の【0048】及び【0052】には、前記「ア」の一般式(3)〜(6)の化合物の具体例として【化25】、【化26】、【化30】、【化33】、【化36】が記載され、同【0070】には、実施例として【化44】が記載されている。 (ウ)甲1の【0072】には、「(A)有機ケイ素化合物」に「(B)ジルコニウム含有化合物を添加し混合し」て調製された組成物が、「表面処理剤」であることが記載されており、甲1の【0074】には、ジルコニウム含有化合物に代えてアルミニウム含有化合物を用いることも記載されている。 (エ)甲1の【0064】には、「組成物を基材に塗工する方法」として「蒸着処理」が記載され、同【0067】には、「組成物の硬化被膜で表面処理」すると、「基材表面に撥水撥油性、耐薬品性、離型性、低動摩擦性、及び防汚性を付与することができる」ことが記載されている。 (オ)してみると、甲1には次の発明(以下「甲1A発明」)が記載されているものと認められる。 (甲1A発明) 「(A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物であって、 (A)有機ケイ素化合物が、【化25】、【化26】、【化30】、【化33】、【化36】、【化44】で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、 (ポリ)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを含有し、 さらに溶剤を含む組成物である表面処理剤において、 表面処理剤は蒸着処理により基材に塗工され、 表面処理剤は基材表面に撥水撥油性や防汚性を付与する、表面処理剤。」 (カ)甲1の【0067】には、「紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質の」「基材」と、「硬化被膜」で「基材表面に撥水撥油性、耐薬品性、離型性、低動摩擦性、及び防汚性を付与」した「光学物品、フィルム、ガラス、石英基板、及び反射防止膜」が記載されている。また、同【請求項16】には、「硬化被膜を有する物品」が記載されており、前記「硬化被膜」が前記(甲1A発明)の表面処理剤より形成された層であることを考慮すると、甲1には次の発明(以下「甲1B発明」)が記載されているものと認められる。 (甲1B発明) 「基材と、甲1A発明の表面処理剤より形成された層である硬化被膜を有する物品であって、基材は、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質であり、物品は、光学物品、フィルム、ガラス、石英基板、及び反射防止膜である物品。」 (キ)甲1の【請求項2】には、「(A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物を基材表面に塗布し、前記有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を硬化させて皮膜を形成する工程を含む、硬化皮膜の製造方法」が記載され、同【請求項16】には、「硬化被膜を有する物品」が記載されているから、甲1には、基材と、該基材上に形成された表面処理剤の硬化被膜を有する物品の製造方法も記載されているといえる。 (ク)また、甲1の【0064】には、「組成物を基材に塗工する方法」として「蒸着処理」が記載されているから、甲1には次の発明(以下「甲1C発明」)が記載されているものと認められる。 (甲1C発明) 「基材と、該基材上に形成された表面処理剤の硬化被膜を有する物品の製造方法であって、 表面処理剤は、甲1A発明の表面処理材であり、 蒸着処理により表面処理剤を基材表面に塗布し、有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を硬化させて皮膜を形成する工程を含む方法。」 イ 甲2に記載された発明 (ア)甲2(前記(1)イ参照。)の【請求項1】には「(a)(i)式 (T’k’−Q’)y−Rf−Q−Tk(I)」「の弗素化ポリエーテル化合物と、 (ii)式T”−Q”−SiY3-xRx(II)」「のシラン化合物との反応生成物を含む加水分解性パーフルオロポリエーテルイソシアネート誘導シランまたはその混合物、 (b)周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、少なくとも2個の加水分解性基を有する化合物」「の混合物を含む組成物」が記載されている。 (イ)甲2の【0003】には、本発明の組成物が、「アルカリ製品に対する優れた機械的耐磨耗性および耐薬品性と合わせて基材上の耐汚染性および耐埃性に加えて改善された撥水撥油性を提供する」「コーティング組成物」であることが記載されている。 (ウ)甲2の【0058】には、本発明の組成物が、「典型的には1種以上の有機溶媒を含む」ことが記載され、同【0059】には、「適する有機溶媒または溶媒の混合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール」「から選択することが可能である」ことが記載されている。 (エ)甲2の【0060】には、「出発化合物および/または部分縮合物または完全縮合物の溶解度を改善するために弗素化溶媒を有機溶媒と組み合わせて用いてもよい」ことが記載されている。 (オ)甲2の【0076】には、調整2として、HFPO−オリゴマージエステル(12.3g、0.01モル)とAPD(0.9g、0.01モル)を反応させた後、NCO−シラン(5.0g、0.02モル)を添加して組成物を得たことが記載されている。 そして、同【0071】の表1には、HFPO−オリゴマージエステルがCF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)XCF(CF3)COOCH3(平均分子量1232)であり、APDがNH2CH2CH(OH)CH2OHであり、NCO−シランがOCN(CH2)3Si(OC2H5)3であることが記載されているから、調製2の生成化合物は、CF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)XCF(CF3)CONHCH2CH(OCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)CH2(OCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)と推定される。 ここで、HFPO−オリゴマージエステル:CF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)XCF(CF3)COOCH3の平均分子量は1232であるから、344+166×x=1232より、x≒5.35である。 (カ)甲2の【0089】には、実施例11として、100gエタノール中に、調整2の組成物を0.2gと、Zr(OC2H5)4を0.6gと、HClを0.1gとを混合した組成物が記載されている。 (キ)してみると、甲2には次の発明(以下「甲2A発明」)が記載されているものと認められる。 (甲2A発明) 「(a)弗素化ポリエーテル化合物と、シラン化合物との反応生成物を含む加水分解性パーフルオロポリエーテルイソシアネート誘導シランまたはその混合物、(b)周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、少なくとも2個の加水分解性基を有する化合物、の混合物を含み、アルカリ製品に対する優れた機械的耐磨耗性および耐薬品性と合わせて基材上の耐汚染性および耐埃性に加えて改善された撥水撥油性を提供するコーティング組成物であって、 100gのエタノール中に、(a)としてCF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)XCF(CF3)CONHCH2CH(OCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)CH2(OCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)を0.2gと、(b)としてZr(OC2H5)4を0.6gと、HClを0.1gとを混合したコーティング組成物。[(a)のx≒5.35]」 (ク)甲2の【請求項22】には、「請求項1に記載の組成物を」「基材の表面の少なくとも一部に被着させる工程を含む方法」が記載されており、甲2の【0063】には、本発明の組成物で処理される基材の例として、「ガラス」が挙げられているから、甲2には次の発明(以下「甲2B発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲2B発明) 「基材と、基材の表面に被着させた甲2A発明のコーティング組成物とからなる製品であって、基材はガラスである製品。」 (ケ)甲2の【請求項22】には、「請求項1に記載の組成物を」「基材の表面の少なくとも一部に被着させる工程を含む方法」が記載されており、甲2の【0073】には、本発明の組成物の被覆方法として、「スプレー塗布により基材上に被着させた」ことが記載されているから、甲2には次の発明(以下「甲2C発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲2C発明) 「基材と、基材の表面に被着させた甲2A発明のコーティング組成物とからなる製品を作る方法であって、基材上に甲2A発明のコーティング組成物をスプレー塗布により被着させる方法。」 ウ 甲3に記載された発明 (ア)甲3(前記(1)ウ参照。)の「請求の範囲」の[請求項1]には、「表面処理層」は、「含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤」を用いて形成されることが記載されている。 (イ)甲3の[0242]には、「表面処理剤」は、「CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3(m=21、Mn=3980)」であることが記載されている。 (ウ)甲3の[0180]には、「表面処理剤」が「溶媒」を含んでいてもよいことが記載され、同[0181]には、「表面処理剤」が、フッ素含有シラン化合物に加え、「含フッ素オイル」、「シリコーンオイル」、「触媒」を含んでいてもよいことが記載され、同[0197]には、「触媒」は、「酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等」であり、「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、表面処理層の形成を促進する」ことが記載されている。 (エ)甲3の[0210]には、「表面処理剤」の「膜形成」において、「触媒添加した表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理する」ことが記載されている。 (オ)甲3の[0011]には、甲3の「表面処理剤」が、「撥水性、撥油性、防汚性を有」することが記載されている。 (カ)してみると、甲3には次の発明(以下「甲3A発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲3A発明) 「CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3(m=21、Mn=3980)である含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤であって、 表面処理剤は、溶媒、含フッ素オイル、シリコーンオイル、触媒を含んでいてもよく、 触媒は、酸、塩基、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等であり、 表面処理剤は、膜形成において、触媒添加した表面処理剤を真空蒸着処理するものであり、 撥水性、撥油性、防汚性を有する表面処理剤。」 (キ)甲3の「請求の範囲」の[請求項1]には、「基材と、該基材上に位置するケイ素酸化物層と、該ケイ素酸化物層上に形成された表面処理層とを有して成る物品」が記載されている。ここで、当該「表面処理層」は、甲3A発明の「表面処理層」である。 (ク)甲3の「請求の範囲」の[請求項18]には「基材が、ガラス基材であること」が記載され、同[請求項19]には「物品が光学部材である」ことが記載されている。 (ケ)してみると、甲3には次の発明(以下「甲3B発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲3B発明) 「基材と、該基材上に位置するケイ素酸化物層と、該ケイ素酸化物層上に形成された表面処理層とを有して成る物品であって、 表面処理層は、甲3A発明の表面処理層であり、 基材は、ガラス基材であり、 物品は、光学部材である物品。」 (コ)甲3の「請求の範囲」の[請求項1]には、「基材と、該基材上に位置するケイ素酸化物層と、該ケイ素酸化物層上に形成された表面処理層とを有して成る物品の製造方法であって、」「得られたケイ素酸化物層上に、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤を用いて、表面処理層を形成することを含む製造方法。」が記載されている。ここで、当該「表面処理層」は、甲3A発明の「表面処理層」である。 (サ)甲3の[0210]には、「表面処理剤」の「膜形成」において、「触媒添加した表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理する」ことが記載されている。 (シ)してみると、甲3には次の発明(以下「甲3C発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲3C発明) 「基材と、該基材上に位置するケイ素酸化物層と、該ケイ素酸化物層上に形成された表面処理層とを有して成る物品の製造方法であって、 表面処理層は、甲3A発明の表面処理層であり、 得られたケイ素酸化物層上に、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤を蒸着処理して、表面処理層を形成することを含む製造方法。」 (3)対比・判断 ア 甲1を主たる引用例とした場合 (ア)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲1A発明を対比すると、甲1A発明の「(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」は、金属の化合物であるから、本件訂正発明1の「金属化合物」に相当する。 甲1A発明の【化30】で表される化合物であるフルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物は、本件訂正発明1の「含フッ素シラン化合物」について、「RF1α−XA−RSiβ (1)」の「RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり」、「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式:−(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f−」かつ「RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S4):−CRd1k2Re1l2Rf1m2 (S4)」の場合において、αが1であり、βが1であり、Rf1が−CF3であり、RFが−(OCF2)f−(OC2F4)e−OCF2− (e+f≒44)であり、qが0であり、XAが単結合であり、RSiが式(S4)においてRe1が−C3H6Si(OCH3)3、l2が2、Rf1がOH、m2が1の場合に該当するから、本件訂正発明1の「含フッ素シラン化合物」に相当する。 甲1A発明の「表面処理剤は蒸着処理により基材に塗工され」は、甲1A発明の「表面処理剤」が蒸着処理に使用されることを意味するから、本件訂正発明1の「真空蒸着用の表面処理剤」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「含フッ素シラン化合物および金属化合物を含む表面処理剤であって、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化1】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、真空蒸着用の表面処理剤。」 <相違点1> 金属化合物が、本件訂正発明1は「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」であるのに対し、甲1A発明は「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」であって、TaやNbを含むものではない点。 前記相違点1について検討する。甲1A発明の「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」を添加する技術的な意味について、甲1(前記(1)ア参照。)の【0022】には、「フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び又はその部分加水分解物を硬化するための触媒としてジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種を使用することを特徴とする。ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物の使用により、錫化合物の存在下で硬化する場合と同等に優れた撥水性を基材表面に付与することができる。」と記載され、錫化合物の代替として、ジルコニウム含有化合物やアルミニウム含有化合物が触媒として作用することにより、優れた撥水性が期待できることについての示唆はあるものの、錫、ジルコニウム及びアルミニウムの三者に共通する物性や作用機序などについての説明はなく、ジルコニウム及びアルミニウム以外の金属の化合物を使用することについては記載も示唆もないから、当業者であっても、甲1A発明及び甲1に記載された事項に基いて、金属化合物として、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」を選択することが容易になし得たこととはいえない。 また、甲2(前記(1)イ参照。)には、TaまたはNbが属する周期律表の第III族〜第V族の化合物について、【請求項1】に「弗素化ポリエーテル化合物と」「シラン化合物との反応生成物を含む加水分解性パーフルオロポリエーテルイソシアネート誘導シランまたはその混合物」及び「周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、少なくとも2個の加水分解性基を有する化合物」「の混合物を含む組成物」が記載され、同【0003】には、当該組成物が、「特にアルカリ製品に対する優れた機械的耐磨耗性および耐薬品性と合わせて基材上の耐汚染性および耐埃性に加えて改善された撥水撥油性を提供する」「新規コーティング組成物」であることが記載されている。 しかしながら、甲2には、前記「周期律表の第III族〜第V族の元素」の例として、同【0038】〜【0039】(前記(1)イ参照。)にSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、Znが挙げられ、特に好ましい元素はSiであることが記載されているものの、TaやNbについての例示はない。 加えて、「周期律表の第III族〜第V族の元素」には、周期律表によれば40もの元素が含まれ、甲2ではSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、Znが挙げられていることから、これらが属する13族〜15族(これらを3〜5族と呼ぶこともある。)の元素も含めれば、58もの元素が含まれることになる。 そうすると、甲2にTaやNbが属する「周期律表の第III族〜第V族の元素M」の少なくとも1種の非弗素化化合物を含む改善された撥水撥油性を有するコーティング剤が記載されているとしても、甲1A発明において、「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」を、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、甲3及び甲4には、TaやNbに関連する記載はない。そして、甲4(前記(1)エ参照。)には、「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および溶剤を含」む「表面処理組成物」を「多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットと」し「、真空蒸着に用いることができる」ことが記載されているが、これらの記載によって、前記「容易になし得たこととはいえない」という結論が変わることはない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 よって、本件訂正発明1は甲1A発明ではないし、また、甲1A発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ)本件訂正発明2、5、9〜13、15、16 本件訂正発明2、5、9〜13、15及び16は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明2、5、9〜13、15及び16は甲1A発明ではないし、また、甲1A発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件訂正発明17 本件訂正発明17と甲1B発明を対比すると、前記(ア)と同様の理由により、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、 金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化4】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化5】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、物品。」 <相違点2> 本件訂正発明17は「Ta、またはNbである金属原子」を含むのに対し、甲1B発明は「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」に由来する金属原子、すなわち、ジルコニウム及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むものであるが、Ta又はNbである金属原子を含むものではない点。 前記相違点2について検討すると、前記(ア)と同様の理由により、甲1B発明において、「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」を、Ta又はNbに変更し、Ta又はNbである金属原子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、前記(ア)と同様の理由により、甲1B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて、甲1B発明の「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」を、Ta又はNbに変更し、Ta又はNbである金属原子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 よって、本件訂正発明17は甲1B発明ではないし、また、甲1B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ)本件訂正発明18、19 本件訂正発明18及び19は、本件訂正発明17の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明18及び19は甲1B発明ではないし、また、甲1B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (オ)本件訂正発明20、21 本件訂正発明20及び21は、本件訂正発明1又は本件訂正発明17の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明20及び21は甲1A発明又は甲1B発明ではないし、また、甲1A発明及び甲1〜甲4に記載された事項、又は甲1B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (カ)本件訂正発明22 本件訂正発明22と甲1C発明を対比すると、前記(ア)と同様の理由により、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品の製造方法であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化6】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化7】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であり、 前記基材上に、前記含フッ素シラン化合物及び前記金属原子を含む金属化合物を含む表面処理剤を用いて、前記含フッ素シラン化合物および前記金属原子を含む金属化合物を蒸着させて、表面処理層を形成することを含む方法」 <相違点3> 本件訂正発明22は「Ta、またはNbである金属原子」を含み、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される前記金属原子を含む金属化合物」を含むのに対し、甲1C発明は「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」を含むものであって、Ta又はNbである金属原子」を含み、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される前記金属原子を含む金属化合物」を含むものではない点。 前記相違点3について検討すると、前記(ア)と同様の理由により、甲1C発明において、「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種」を、Ta又はNbである金属原子」を含み、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される前記金属原子を含む金属化合物」に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、前記(ア)と同様の理由により、甲1C発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて、甲1C発明の「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物」を、Ta又はNbである金属原子」を含み、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される前記金属原子を含む金属化合物」に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 よって、本件訂正発明22は甲1C発明ではないし、また、甲1C発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 甲2を主たる引用例とした場合 (ア)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲2A発明を対比すると、甲2A発明の「(b)周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、少なくとも2個の加水分解性基を有する化合物」であって「(b)としてZr(OC2H5)4」は、本件訂正発明1の「金属化合物」と、「金属化合物は、M−R」「[式中:」「Mは、金属原子であり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」である点で共通する。 甲2A発明の「(a)としてCF3CF2CF20(CF(CF3)CF2O)XCF(CF3)CONHCH2CH(OCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)CH2(OCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)」において、「CF3CF2CF20(CF(CF3)CF2O)X−」は、本件訂正発明1において「式(1)」の「RF1」が「CF3CF2CF20(CF(CF3)CF2O)X−」の場合に相当し、「−Si(OC2H5)3」は、本件訂正発明1において「式(1)」の「RSi」が「−Si(OC2H5)3」である場合に該当する。 甲2A発明の「コーティング組成物」は、本件訂正発明1の「表面処理剤」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「含フッ素シラン化合物および金属化合物を含む表面処理剤であって、 前記金属化合物は、M−R [式中: Mは、金属原子であり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される金属化合物であり、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化1】 ・・・(前記ア(ア)の【化1】と同じなので、省略します。)・・・ [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 ・・・(前記ア(ア)の【化2】と同じなので、省略します。)・・・ [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; αは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、表面処理剤。」 <相違点4> 金属化合物のMが、本件訂正発明1は「Ta、またはNb」であるのに対し、甲2A発明は「周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種」とされているものの、具体的には「Zr」である点。 <相違点5> 含フッ素シラン化合物の式において、本件訂正発明1は「XA」が「それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52−・・・」かつ「βは1」であるのに対し、甲2A発明は「XA」が「−CF(CF3)CONHCH2CH(OCONH(CH2)3−CH2(OCONH(CH2)3−」かつ「βは2」である点。 <相違点6> 表面処理剤が、本件訂正発明1は「真空蒸着用の表面処理剤」であるのに対し、甲2A発明は、真空蒸着に用いられるものではない点。 まず、相違点4について検討する。甲2A発明の「周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種」について、甲2(前記(1)イ参照。)の【0038】〜【0039】(前記(1)イ参照。)にはSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、Znが挙げられ、特に好ましい元素はSiであることが記載されているものの、TaやNbについての例示はない。 加えて、「周期律表の第III族〜第V族の元素」には、周期律表によれば40もの元素が含まれ、甲2においてSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、Znが挙げられていることを考慮して、これらが属する13族〜15族(これらを3〜5族と呼ぶこともある。)の元素も含めれば、甲2A発明の「周期律表の第III族〜第V族の元素」には、選択肢として58もの元素が含まれることになる。 そうすると、甲2にTaやNbが属する「周期律表の第III族〜第V族の元素M」の少なくとも1種の非弗素化化合物を含む改善された撥水撥油性を有するコーティング剤が記載されているとしても、甲2A発明において、「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物」を、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、甲1、甲3及び甲4には、TaやNbに関連する記載はない。そして、甲4(前記(1)エ参照。)には、「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および溶剤を含」む「表面処理組成物」を「多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットと」し「、真空蒸着に用いることができる」ことが記載されているが、これらの記載によって、前記「容易になし得たこととはいえない」という結論が変わることはない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 そうすると、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲2A発明ではないし、また、甲2A発明及び甲1〜甲4に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (イ)本件訂正発明2、5、9〜13、15、16 本件訂正発明2、5、9〜13、15及び16は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明2、5、9〜13、15及び16は甲2A発明ではないし、また、甲2A発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件訂正発明17 本件訂正発明17と甲2B発明を対比すると、前記(ア)と同様の理由により、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、 金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化4】 ・・・(前記ア(ウ)の【化4】と同じなので省略します。)・・・ [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化5】 ・・・(前記ア(ウ)の【化5】と同じなので省略します。)・・・ [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; αは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、物品。」 <相違点7> 本件訂正発明17は「Ta、またはNbである金属原子」を含むのに対し、のに対し、甲2B発明は「周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種」を含むとされているものの、具体的には「Zr」である点。 <相違点8> 含フッ素シラン化合物の式において、本件訂正発明17は「XA」が「それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52−・・・」かつ「βは1」であるのに対し、甲2B発明は「XA」が「−CF(CF3)CONHCH2CH(OCONH(CH2)3−CH2(OCONH(CH2)3−」かつ「βは2」である点。 まず、相違点7について検討すると、前記(ア)と同様の理由により、甲2B発明において、「Zr」を、Ta又はNbに変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、前記(ア)と同様の理由により、甲2B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて、甲2B発明の「Zr」を、Ta又はNbに変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 そうすると、前記相違点8について検討するまでもなく、本件訂正発明17は甲2B発明ではないし、また、甲2B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ)本件訂正発明18、19 本件訂正発明18及び19は、本件訂正発明17の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明18及び19は甲2B発明ではないし、また、甲2B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (オ)本件訂正発明20、21 本件訂正発明20及び21は、本件訂正発明1又は本件訂正発明17の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明20及び21は甲2A発明又は甲2B発明ではないし、また、甲2A発明及び甲1〜甲4に記載された事項、又は甲2B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (カ)本件訂正発明22 本件訂正発明22と甲2C発明を対比すると、前記(ア)と同様の理由により、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品の製造方法であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化6】 ・・・(前記ア(カ)の【化6】と同じなので省略します。)・・・ [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化7】 ・・・(前記ア(カ)の【化7】と同じなので省略します。)・・・ [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; αは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であり、 前記基材上に、前記含フッ素シラン化合物及びM−R [式中: Mは、金属原子であり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される前記金属原子を含む金属化合物を含む表面処理剤を用いて、表面処理層を形成することを含む方法」 <相違点9> 金属化合物に含まれる金属元素Mが、本件訂正発明22は「Ta、またはNb」であるのに対し、甲2C発明は「周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種」とされているものの、具体的には「Zr」である点。 <相違点10> 含フッ素シラン化合物の式において、本件訂正発明22は「XA」が「それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52−・・・」かつ「βは1」であるのに対し、甲2C発明は「XA」が「−CF(CF3)CONHCH2CH(OCONH(CH2)3−CH2(OCONH(CH2)3−」かつ「βは2」である点。 <相違点11> 表面処理層の形成が、本件訂正発明22は「前記含フッ素シラン化合物および前記金属原子を含む金属化合物を蒸着させて」形成されるのに対し、甲2C発明は定かでない点。 まず、相違点9について検討すると、前記(ア)と同様の理由により、甲2C発明において、「Zr」を、Ta又はNbに変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、前記(ア)と同様の理由により、甲2C発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて、甲2C発明の「Zr」を、Ta又はNbに変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 そうすると、前記相違点10及び11について検討するまでもなく、本件訂正発明22は甲2C発明ではないし、また、甲2C発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 甲3を主たる引用例とした場合 (ア)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲3A発明を対比すると、甲3A発明の「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等」は、金属元素であるから、本件訂正発明1の「金属化合物」と「金属原子を含む」点で共通する。 甲3A発明の「CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3(m=21、Mn=3980)である含フッ素シラン化合物」は、本件訂正発明1の「含フッ素シラン化合物」について、「RF1α−XA−RSiβ (1)」の「RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり」、「RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式:−(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f−」かつ「RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S3):−SiRa1k1Rb1l1Rc1m1 (S3)」の場合において、αが1であり、βが1であり、Rf1がCF3CF2CF2−であり、RFが−(OC3F6)22であり、qが1であり、「XA」が−C3H6−であり、「RSi」が式(S3)においてRa1が−C3H6Si(OCH3)3、k1が3、l1が0、m1が0の場合に該当するから、本件訂正発明1の「含フッ素シラン化合物」に相当する。 甲3A発明の「表面処理剤は、膜形成において、触媒添加した表面処理剤を真空蒸着処理するものであり」は、甲3A発明の「表面処理剤」が蒸着処理に使用されることを意味するから、本件訂正発明1の「真空蒸着用の表面処理剤」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「含フッ素シラン化合物および金属原子を含む表面処理剤であって、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化1】 ・・・(前記ア(ア)の【化1】と同じなので省略します。)・・・ [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 ・・・(前記ア(ア)の【化2】と同じなので省略します。)・・・ [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、真空蒸着用の表面処理剤。」 <相違点12> 本件訂正発明1は、「金属化合物」を含むものであり、「金属化合物は、M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」であるのに対し、甲3A発明は「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」であって、TaやNbではない点。 前記相違点12について検討する。甲3A発明の「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」は触媒として添加されるものであるが、甲3(前記(1)ウ参照。)の[0197]〜[0198]には「前記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。・・・触媒は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、表面処理層の形成を促進する。」と記載され、甲3A発明における「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」の役割は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進するものであれば、遷移金属に限られず、酸や塩基でも良いことが記載されている。そして、遷移金属には、60以上の元素が属することも考慮すれば、甲3A発明及び甲3に記載された事項に基いて、触媒として用いられる「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」の中から「Ta」又は「Nb」を選び、さらに、「Ta」又は「Nb」の化合物として、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」として使用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、甲2(前記(1)イ参照。)には、TaまたはNbが属する周期律表の第III族〜第V族の化合物について、【請求項1】に「弗素化ポリエーテル化合物と」「シラン化合物との反応生成物を含む加水分解性パーフルオロポリエーテルイソシアネート誘導シランまたはその混合物」及び「周期律表の第III族〜第V族の元素Mの少なくとも1種の非弗素化化合物であって、少なくとも2個の加水分解性基を有する化合物」「の混合物を含む組成物」が記載され、同【0003】には、当該組成物が、「特にアルカリ製品に対する優れた機械的耐磨耗性および耐薬品性と合わせて基材上の耐汚染性および耐埃性に加えて改善された撥水撥油性を提供する」「新規コーティング組成物」であることが記載されている。 しかしながら、甲2には、前記「周期律表の第III族〜第V族の元素」の例として、同【0038】〜【0039】(前記(1)イ参照。)にSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、Znが挙げられ、特に好ましい元素はSiであることが記載されているものの、TaやNbについての例示はない。 加えて、「周期律表の第III族〜第V族の元素」には、周期律表によれば40もの元素が含まれ、甲2ではSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、Znが挙げられていることから、これらが属する13族〜15族(これらを3〜5族と呼ぶこともある。)の元素も含めれば、58もの元素が含まれることになる。 そうすると、甲2にTaやNbが属する「周期律表の第III族〜第V族の元素M」の少なくとも1種の非弗素化化合物を含む改善された撥水撥油性を有するコーティング剤が記載されているとしても、甲3A発明において、触媒として用いられる「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される金属化合物」に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、甲1及び甲4には、TaやNbに関連する記載はない。そして、甲4(前記(1)エ参照。)には、「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、および溶剤を含」む「表面処理組成物」を「多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットと」し「、真空蒸着に用いることができる」ことが記載されているが、これらの記載によって、前記「容易になし得たこととはいえない」という結論が変わることはない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 よって、本件訂正発明1は甲3A発明ではないし、また、甲3A発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ)本件訂正発明2、5、9〜13、15、16 本件訂正発明2、5、9〜13、15及び16は、本件訂正発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明2、5、9〜13、15及び16は甲3A発明ではないし、また、甲3A発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件訂正発明17 本件訂正発明17と甲3B発明を対比すると、前記(ア)と同様の理由により、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、 金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化4】 ・・・(前記ア(ウ)の【化4】と同じなので省略します。)・・・ [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化5】 ・・・(前記ア(ウ)の【化6】と同じなので省略します。)・・・ [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、物品。」 <相違点13> 本件訂正発明17は「Ta、またはNbである金属原子」を含むのに対し、甲3B発明は「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を含むものであるが、Ta又はNbを含むものではない点。 前記相違点13について検討すると、前記(ア)と同様の理由により、甲3B発明において、「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を、Ta又はNbに変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、前記(ア)と同様の理由により、甲3B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて、甲3B発明の「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を、Ta又はNbに変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 よって、本件訂正発明17は甲3B発明ではないし、また、甲3B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ)本件訂正発明18、19 本件訂正発明18及び19は、本件訂正発明17の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明18及び19は甲3B発明ではないし、また、甲3B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (オ)本件訂正発明20、21 本件訂正発明20及び21は、本件訂正発明1又は本件訂正発明17の特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)と同じ理由により、本件訂正発明20及び21は甲3A発明又は甲3B発明ではないし、また、甲3A発明及び甲1〜甲4に記載された事項、又は甲3B発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (カ)本件訂正発明22 本件訂正発明22と甲3C発明を対比すると、前記(ア)と同様の理由により、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品の製造方法であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化6】 ・・・(前記ア(カ)の【化6】と同じなので省略します。)・・・ [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; Rsiは、各出現においてそれぞれ独立して、後記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化7】 ・・・(前記ア(カ)の【化7】と同じなので省略します。)・・・ [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; mlは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2Z)z8”(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、Cl−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2− −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RsiβおよびRsiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であり、 前記基材上に、前記含フッ素シラン化合物及び前記金属原子を含む表面処理剤を用いて、前記含フッ素シラン化合物および前記金属原子を蒸着させて、表面処理層を形成することを含む方法」 <相違点14> 本件訂正発明22は「Ta、またはNbである金属原子」を含み、「M−R[式中:Mは、Ta、またはNbであり、Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。]で表される」「金属原子を含む金属化合物」を含むのに対し、甲1C発明は「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を含むものであって、Ta又はNbを含むものではない点。 前記相違点14について検討すると、前記(ア)と同様の理由により、甲3C発明において、「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を、Ta又はNbを含有する化合物に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、前記(ア)と同様の理由により、甲3C発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて、甲3C発明の「遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)」を、Ta又はNbを含有する化合物に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、金属化合物に含まれる金属元素をTa又はNbとしたことによる効果は、各甲号証から予測できないものである。 よって、本件訂正発明22は甲3C発明ではないし、また、甲3C発明及び甲1〜甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 2 取消理由5(サポート要件)について (1)サポート要件の観点 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件訂正発明の解決しようとする課題 本件訂正発明の課題は、本件明細書の段落【0005】に記載されるように、「摩擦耐久性、耐薬品性がより高い表面処理層を有する物品を提供すること」であると認められる。 (3)特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載 ア 本件訂正発明 本件訂正発明1〜22は、前記第3に記載したとおりのものである。 イ 発明の詳細な説明 本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0013】 (含フッ素シラン化合物) 前記含フッ素シラン化合物は、フッ素を含み、防汚性を有する表面処理層を形成することができる化合物である。 【0014】 一の態様において、前記含フッ素シラン化合物は、後記式(1)または(2): 【化5】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基であり; αは、1〜9の整数であり; βは、1〜9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1〜9の整数である。]で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である。 ・・・ 【0196】 前記式(1)および(2)において、XAは、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RF1およびRF2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該XAは、式(1)および(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。 ・・・ 【0243】 前記金属化合物は、金属単体、金属原子と他の原子との化合物、例えば反応性基が結合した化合物、塩、他の有機金属化合物等が挙げられる。 【0244】 本明細書において、金属化合物に含まれる金属原子とは、B、Si、Ge、Sb、As、Te等の半金属も包含する。 ・・・ 【0247】 好ましい態様において、前記金属原子は、Ta、Nb、W、Mo、CrまたはVである。かかる金属種を用いることにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができる。 【0248】 さらに好ましい態様において、前記金属原子は、Taである。金属原子としてタンタルを採用することにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができる。 【0249】 好ましい態様において、前記金属化合物は、M−R(式中、Mは、金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される金属化合物である。金属化合物を、金属と加水分解性基とが結合した化合物とすることにより、より効率的に金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。 ・・・ 【0251】 好ましい態様において、上記加水分解性基とは、−ORmであり、好ましくはメトキシまたはエトキシである。加水分解性基としてアルコキシ基を用いることにより、より効率的に金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。 ・・・ 【0316】 (表面処理剤の調製) 表面処理剤1〜4 後記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を、20質量%になるようにHFE7200を用いて希釈した溶液4gに対し、Ta(OCH2CH3)5(高純度化学研究所製)を、それぞれ、0.21g、0.12gおよび0.025gを添加して、表面処理剤1〜3を調製した。また、前記化合物を、20質量%になるようにHFE7200を用いて希釈して、比較例の表面処理剤4を調製した。 ・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物 CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)23CF2CF2CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3 【0317】 表面処理剤5および6 前記で調製した表面処理剤1に、それぞれ、iso−プロパノール(東京化成工業製)を0.21g、CF3CF2CH2OH(ダイキン工業製)を0.21g加え、表面処理剤5および6を調製した。 【0318】 (表面処理層の形成) 前記で調製した表面処理剤1〜6を、それぞれ厚さ0.5mm、71.5mm×149.0mmの化学強化、表面研磨を実施してあるゴリラガラス3(コーニング社製)上に真空蒸着した。具体的には、表面処理剤1〜6(0.05g)を、それぞれ真空蒸着装置内の抵抗加熱ボートに充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10−3Pa以下に排気した。次いで、前記ゴリラガラス3上に5nmの二酸化ケイ素膜を形成し、抵抗加熱ボートを昇温することで、化学強化ガラス上に成膜を行った。次に蒸着膜付き化学強化ガラスを、温度150℃の雰囲気下で30分静置し、その後室温まで放冷させ、基材上に表面処理層を形成し、実施例1〜5(表面処理剤1〜3、5および6)および比較例1(表面処理剤4)の表面処理層付きガラス基体を得た。 【0319】 <評価> 前記で得られた表面処理層付きガラス基体について、それぞれ、次のように水接触角の測定、アルカリ試験、および摩擦耐久性の評価を行った。 ・・・ 【0321】 【表1】 ・・・ 【0324】 【表2】 ・・・ 【0327】 【表3】 【0328】 前記の分析結果から、Taを含む実施例の表面処理層は、Taを含まない比較例の表面処理層と比較して、アルカリ浸漬試験および摩擦耐久試験の両方において、より良好な結果となることが確認された。」 ウ 本件訂正発明における含フッ素シラン化合物及び金属化合物の意味 (ア)含フッ素シラン化合物について 本件明細書の【0196】には、【0014】の「下記式(1)または(2): 」について、前記式(1)または(2)のRF1およびRF2は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部であり、RSiは、基材との結合能を提供する部であり、XAは、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部と、基材との結合能を提供する部とのリンカーと解されることが記載されている。 (イ)金属化合物について 本件明細書の【0243】〜【0251】には、金属化合物として、M−R(式中、Mは、金属原子であり、Rは加水分解性基である。)が記載され、金属原子は、Ta、Nb、W、Mo、CrまたはVが好ましく、さらに好ましい態様において、上記金属原子は、Taであり、金属原子としてタンタルを採用することにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができること、及び、加水分解性基とは、−ORmであり、好ましくはメトキシまたはエトキシであり、加水分解性基としてアルコキシ基を用いることにより、より効率的に金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができることが記載されている。 (ウ)実施例について 本件明細書の【0316】には、含フッ素シラン化合物として「CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)23CF2CF2CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)]3」を用い、金属化合物として「Ta(OCH2CH3)5」を用いた場合に、含フッ素シラン化合物と金属化合物を併用した実施例1〜5(表面処理剤1〜3、5および6)の表面処理層は、比較例1(表面処理剤4)の表面処理層と比較して、アルカリ浸漬試験および摩擦耐久試験の両方において、より良好な結果となることが確認されたことが記載されている。 そして、これらの実施例で用いられた含フッ素シラン化合物は、前記式(1)において、αが1かつβが1であり、RF1がRFとして−(OC3F6)−の繰り返しを23個有するフルオロポリエーテルであり、XAが−CF2CF2CONHCH2−であり、RSiがCH2CH2CH2Si(OCH3)という加水分解性基が結合したSi原子が3つ存在するものである。 また、これらの実施例で用いられた金属化合物は、金属元素がTaであり、加水分解性基がエトキシのものである。 (4)サポート要件についての判断 前記(3)ウで述べたとおり、本件明細書における含フッ素シラン化合物において、式(1)又は(2)のRF1およびRF2は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部であり、RSiは、基材との結合能を提供する部であり、XAは、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部と、基材との結合能を提供する部とのリンカーと解されるものである。 また、本件明細書における金属化合物において、金属原子としてTaを採用することにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性がより向上することが期待できるものである。そして、NbはTaと同じ第5族元素であり、Taと同じく、5つのエトキシ基を有する「Nb(OCH2CH3)5」の形態を取り得るものである。 さらに、実施例において、式(1)又は(2)のαが1かつβが1であり、RF1がRFとして−(OC3F6)−の繰り返しを23個有するフルオロポリエーテルであり、XAが−CF2CF2CONHCH2−であり、RSiがCH2CH2CH2Si(OCH3)という加水分解性基が結合したSi原子が3つ存在する含フッ素シラン化合物と、金属元素がTaであり、加水分解性基がエトキシのものである金属化合物を併用した表面処理層は、アルカリ浸漬試験および摩擦耐久試験で良好な結果となることが確認されている。 そうすると、「RF」について、「各出現においてそれぞれ独立して、式:−(OC6F12)a−(OC5Fl0)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f−[式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]で表される2価のフルオロポリエーテル基」であることが特定され、「RSi」について、「水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する」ことが特定され、さらに金属化合物に含まれる金属原子が「Ta、またはNb」であることが特定された本件訂正発明1、17及び11は、所定の「撥水性および表面滑り性」、「基材との結合能」及びより向上した「摩擦耐久性および耐薬品性」を備えたものであることが期待できるから、本件訂正発明1、17及び11は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 また、本件訂正発明1、17を直接または間接的に引用する本件訂正発明2、5、9〜13、15〜21は、本件訂正発明1又は17の構成をすべて含むものであるから、前記したのと同じ理由によりサポート要件を満たすものといえる。 なお、式(1)又は(2)において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部であるRF1およびRF2の構造について、本件明細書の【0033】〜【0034】には「一の態様において、前記繰り返し単位は直鎖状である。前記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩擦耐久性等を向上させることができる。一の態様において、前記繰り返し単位は分枝鎖状である。前記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。」と記載されているが、相対的に動摩擦係数が大きい分枝鎖状のものであっても、前記したとおり、「Ta、またはNb」との併用により、表面処理層の摩擦耐久性及び耐薬品性が向上すると考えられるから、分枝鎖状のものであるからといって、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないとはいえない。 第6 申立人の主張について 1 申立人は、令和4年12月28日付けの意見書において、本件訂正発明の「M−R」なる表記は、1価の金属Mと、1価の有機基Rとが化学結合したものを示していると解されるのに対し、Ta、Nbは1価の金属ではないから、「M−R」との記載は不明確であり、サポート要件違反であるとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、本件明細書の【0249】に「好ましい態様において、上記金属化合物は、M−R(式中、Mは、金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される金属化合物である。・・・」と記載され、同【0255】に「好ましい態様において、上記金属化合物は、Ta(ORm)5であり、好ましくはTa(OCH2CH3)5であり得る。」と記載されていることを考慮すれば、金属原子がTaの場合は、金属Mが5価の金属であることを意味することを理解できるから、「M−R」との記載は不明確ではないし、サポート要件違反でもない。 2 申立人は、同意見書において、本件訂正発明の「Nb」について、たとえ物理的性質や化学的性質が互いに似ているといわれる第5族元素の中でも、TaとNbが反応性部位であるシラン部位との相互作用に関し同等の活性を有することが本件特許の優先日前における当業者の技術常識であるとはいえず、また、Nb化合物がTa化合物と同等に表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性を向上させるかどうかについては記載も示唆もされておらず、本件特許の優先日前における当業者の技術常識であるとはいえないから、Nbを包含している本件訂正発明はサポート要件違反であるとの趣旨の主張をするとともに、Ta及びNbの比重やヤング率を考慮すれば、Nbの場合はTaの場合より耐久性に劣る可能性がある旨の指摘をしている。 しかしながら、Nbが、Taと同じ第5族元素であり、5つのエトキシ基を有する「Nb(OCH2CH3)5」の形態を取り得るものであることを考慮すれば、Taと同様に施用することにより、同様の作用を奏することが期待できる。そして、Nbの場合はTaの場合より耐久性に劣る可能性は、申立人独自の見解であり、具体的な立証がなされていない以上、Nbの場合であっても、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないとはいえないから、サポート要件違反ではない。 3 申立人は、同意見書において、金属化合物の含有量について全く規定されていない本件訂正発明は、サポート要件違反であるとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、金属化合物の含有量については、本件明細書の【0256】に「上記金属化合物は、表面処理剤中、上記含フッ素シラン化合物に対して、モル比で、好ましくは0.1〜10倍、より好ましくは0.2〜5倍、さらに好ましくは0.3〜3倍の量で含まれる。金属化合物の含有割合を上記の範囲とすることにより、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をより向上させることができる。」と記載されている。また、同【0324】の【表2】には、金属化合物を添加した実施例1、2、3の耐摩擦性は、金属化合物を添加しない比較例1よりも良いものの、実施例1、2、3の順に減少することが記載され、同【0316】〜【0318】には、表面処理剤への金属化合物の添加量が、実施例1は0.21g、実施例2は0.12g、実施例3は0.025gであることが記載されている。 これらの結果を参酌すれば、金属化合物を添加したものは、添加しないものよりも耐摩擦性が向上すると考えられるから、金属化合物を添加することが特定された本件訂正発明は、サポート要件違反ではない。 4 申立人は、同意見書において、含フッ素シラン化合物が表面処理層の基板との密着性を確保するためには、含フッ素シラン化合物のケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基の数がある程度必要であるのに、実施例で立証されているケイ素原子が3、加水分解性基の数が9よりも小さい場合については、実施例と同様に優れた摩擦耐久性及び耐薬品性が得られることが理解できないから、本件訂正発明は、サポート要件違反であるとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、本件訂正発明では、ケイ素原子が2以上であることが特定されているから、水酸基又は加水分解性基の数は6以上であることが理解できる。 そして、基材との結合能について、ケイ素原子が3、加水分解性基の数が9の場合に効果が確認されているのであるから、ケイ素原子が2以上、水酸基又は加水分解性基の数は6以上の場合であっても、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないとまではいえないから、サポート要件違反ではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1、2、5、9〜13、15〜22に係る特許を取り消すことはできない。また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件訂正により、請求項3、4、6〜8、14は削除されたため、これらの請求項に対する特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【訂正特許請求の範囲】 【請求項1】 含フッ素シラン化合物および金属化合物を含む表面処理剤であって、 前記金属化合物は、M−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm、−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される金属化合物であり、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化1】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化2】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−X11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; RC1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−0−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、C1−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RSiβおよびRSiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、真空蒸着用の表面処理剤。 【請求項2】 Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−16パーフルオロアルキル基であり、 Rf2は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6パーフルオロアルキレン基である、 請求項1に記載の表面処理剤。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 RFは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5): −(OC3F6)d− (f1) [式中、dは1〜60の整数である。]、 −(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− (f2) [式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜30の整数であり; eおよびfは、それぞれ独立して、1〜60の整数であり; c、d、eおよびfの和は、10〜60の整数であり; 添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、 −(R6−R7)g− (f3) [式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり; R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり; gは、2〜20の整数である。]、 −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− (f4) [式中、eは、1以上60以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上59以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− (f5) [式中、fは、1以上60以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上59以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される基である、請求項1または2に記載の表面処理剤。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 前記式(S1)で表される基は、下記式(S1−b): 【化3】 [式中、R11、R12、R13、X11、n1およびtは、上記式(S1)の記載と同意義である] で表される基である、請求項1、2、および5のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項10】 アルコールをさらに含有する、請求項1、2、5および9のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項11】 含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1、2、5、9および10のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項12】 さらに溶媒を含む、請求項1、2、5および9〜11のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項13】 防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として使用される、請求項1、2、5および9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤。 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 請求項1、2、5および9〜13のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。 【請求項16】 基材と、該基材上に、請求項1、2、5および9〜13のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。 【請求項17】 基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、 Ta、またはNbである金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化4】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化5】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−x11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; RC1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、C1−20アルキレン基、または−R51−X53−R52− [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RSiβおよびRSiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、 物品。 【請求項18】 前記金属原子は、表面処理層中に、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および金属原子の合計量に対して、0.03〜3at%含まれる、請求項17に記載の物品。 【請求項19】 前記金属原子は、Taである、請求項17または18に記載の物品。 【請求項20】 前記基材は、ガラス基材である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の物品。 【請求項21】 光学部材である、請求項16〜20のいずれか1項に記載の物品。 【請求項22】 基材と、該基材上に形成された表面処理層とを含む物品の製造方法であって、 前記表面処理層は、含フッ素シラン化合物から形成され、Ta、またはNbである金属原子を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化6】 [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1−RF−Oq−であり; RF2は、−Rf2p−RF−Oq−であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: −(OC6F12)a−(OC5F10)b−(OC4F8)c−(OC3F6)d−(OC2F4)e−(OCF2)f− [式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜60の整数であって、ただし、a、b、c、d、eおよびfの和は5〜60であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)、(S3)、または(S4): 【化7】 [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; n1は、3であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または−R28−Ox−R29−(式中、R28およびR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1−20アルキレン基であり、xは0または1である。)であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または−x11−SiR113であり; R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のアルキレンオキシ基であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、Z1−SiR223であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z1−O−(CH2)z2−(式中、z1は、0〜6の整数であり、z2は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z3−フェニレン−(CH2)z4−(式中、z3は、0〜6の整数であり、z4は、0〜6の整数である)であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; RC1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR343であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6アルキレン基、−(CH2)z5”−O−(CH2)z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数である)または、−(CH2)z7”−フェニレン−(CH2)z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数である)であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、0であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜1の整数である。] で表される基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合、C1−20アルキレン基、または−R51−X53−R52_ [式中、 R51は、単結合、−(CH2)s5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 s5は、1〜20の整数であり、 R52は、単結合、−(CH2)t5−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、 t5は、1〜20の整数であり、 X53は、 −O−、 −S−、 −C(O)O−、 −CONR54−、 −O−CONR54−、 −Si(R53)2−、 −(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(R53)2−O−Si(R53)2−CH2CH2−Si(R53)2−O−Si(R53)2−、 −O−(CH2)u5−Si(OCH3)2OSi(OCH3)2−、 −CONR54−(CH2)u5−(Si(R53)2O)m5−Si(R53)2−、 −CONR54−(CH2)u5−N(R54)−、または −CONR54−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R53)2− (式中、 R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し、 R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し、 m5は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、 u5は1〜20の整数である。) を表す。] であり; αは、1であり; βは、1であり; γは、1であり; 式(1)および式(2)中、RSiβおよびRSiγ中、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子は2つ以上存在する。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であり、 前記基材上に、前記含フッ素シラン化合物およびM−R [式中: Mは、Ta、またはNbであり、 Rは、−ORm、−OCORm,−O−N=CRm2、−NRm2、−NHRm、またはハロゲンであり、 Rmは、非置換のC1−4アルキル基である。] で表される前記金属原子を含む金属化合物を含む表面処理剤を用いて、前記含フッ素シラン化合物および前記金属原子を含む金属化合物を蒸着させて、表面処理層を形成することを含む方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2023-03-31 |
出願番号 | P2020-107474 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C09K)
P 1 651・ 121- YAA (C09K) P 1 651・ 113- YAA (C09K) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
関根 裕 門前 浩一 |
登録日 | 2021-08-10 |
登録番号 | 6927373 |
権利者 | ダイキン工業株式会社 |
発明の名称 | 表面処理剤 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 式見 真行 |
代理人 | 澤内 千絵 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 吉田 環 |
代理人 | 澤内 千絵 |
代理人 | 吉田 環 |
代理人 | 式見 真行 |