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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1399404
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-02-21 
確定日 2023-07-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第7125680号発明「複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7125680号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7125680号の請求項1〜6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成26年12月19日に出願した特願2014−257723号の一部を、令和1年9月2日に新たな特許出願とした特願2019−159647号(以下「原出願」という。)の一部を、更に令和3年2月18日に新たな特許出願としたものであって、令和4年8月17日に特許権の設定登録がされ、同年8月25日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜6に係る特許に対し、令和5年2月21日に、特許異議申立人佐藤慎一郎(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
口部と、前記口部の下方に設けられた首部と、前記首部の下方に設けられた肩部と、前記肩部の下方に設けられた胴部と、前記胴部の下方に設けられた底部と、を備える容器本体と、
前記容器本体の外側に、溶着されることなく剥離除去可能に密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体及び前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されており、
前記容器本体は、無色透明であり、
前記プラスチック製部材は、着色されており、かつ前記プラスチック製部材の近赤外線透過率が、近赤外線の波長領域である、800nm〜2500nmの波長領域の全域で50%以上である、複合容器。
【請求項2】
前記プラスチック製部材は、熱収縮性をもつ、請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記プラスチック製部材の厚みは、5μm〜50μmである、請求項1又は2に記載の複合容器。
【請求項4】
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離するための切断線が設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項5】
前記プラスチック製部材の近赤外線透過率が、近赤外線の波長領域の全域で65%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項6】
前記プラスチック製部材の近赤外線透過率が、近赤外線の波長領域の全域で80%以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複合容器。」

第3 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証〜甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」〜「甲5」という。)を提出して、以下の申立理由により請求項1〜6に係る特許を取り消すべきである旨主張する。

1 証拠方法
甲1:特表2008−532816号公報
甲2:特開平11−348184号公報
甲3:特開2007−26698号公報
甲4:特表2004−532147号公報
甲5:付属書2:ラベル(印刷・接着剤等を含む)評価基準、指定PETボトルの自主設計ガイドライン、PETボトルリサイクル推進協議会、平成23年(2011年)3月1日改訂、(7−1)〜(7−7)ページ

2 特許異議申立理由
(1)特許異議申立理由1(サポート要件違反)
本件発明1〜6は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。

(2)特許異議申立理由2−1(進歩性
本件特許の出願日は、原出願の出願日に遡及せず、本件発明1〜6は、原出願の公開公報に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1〜6に係る特許は、同法第29条第2項に違反するから、取り消されるべきものである。

(3)特許異議申立理由2−2(進歩性
本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明2、3は、甲1に記載された発明及び甲2〜甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明4〜6は、甲1に記載された発明及び甲2〜甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項1〜6に係る特許は、同法第29条第2項に違反するから、取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。
「【0021】
オーバーモールドされた容器を作る方法
工程の一実施形態が図1に示されている。図1は、オーバーモールドされた熱可塑性容器20を作るための工程10のステップを示す。最初にオーバーモールドを施すことができる適切なプリフォーム12が提供される。次に、射出成形を使用してオーバーモールド材料14でプリフォーム12がオーバーモールドされ、オーバーモールドされたプリフォーム16が形成される。次にオーバーモールドされたプリフォーム16が、例えば、延伸ブロー成形を使用してブロー成形される。」
「【0029】
好ましい実施形態においては、そのプリフォームは開いた上端およびネック仕上げを有している円筒形の射出成形されたプリフォームを含む。一実施形態においては、そのプリフォームはテーパ付きのショルダー形成部分と、ほぼ一様な厚さの中間の円筒状部分と、ベース形成部分とをさらに含む。各種の実施形態において、そのプリフォームは非晶質であり、実質的に透明である。」
「【0033】
本明細書で使用される用語「エラストマーのオーバーモールド材料」は、プリフォームおよびブロー成形工程と両立する条件においてオーバーモールドすることができる熱可塑性エラストマーを含んでいる組成を指す。好ましい実施形態においては、オーバーモールド材料はブロー成形工程と両立する温度および圧力において処理されるように選択され、そのオーバーモールド材料はプリフォームに適合して伸びることができ、結果のブロー成形された容器の形状を取るように選択される。エラストマーのオーバーモールド材料の層は、粗い表面を通じての機械的インターロック、またはエラストマー内の官能基による機械的接合によって下地の熱可塑性ポリマー構造に分離可能に固定される。」
「【0039】
オプションの実施形態においては、オーバーモールド材料は1つまたは複数の添加剤を含むことができる。可能な添加剤の例としては、当業者であれば周知のような、顔料および他の着色剤、紫外線遮断剤、潤滑剤またはスリップ剤、加工助剤、酸化防止剤、抗菌性添加剤および熱安定剤、およびそれらの組合せがある。・・・」
「【0042】
ブロー成形
一般に本発明の実施形態はブロー成形で作ることができる。ブロー成形の各種の方法が周知のものである。好ましい実施形態においては、ブロー成形工程は、当業者であれば周知のように、プリフォーム再加熱延伸ブロー成形工程を含む。
【0043】
一実施形態においては、オーバーモールドされたプリフォームがブロー成形装置内に配置され、装置はネック仕上げを行う上部金型部と、容器の側壁の形状を形成する内部キャビティを有する中央金型部と、容器ベースの外側に向かって窪んでいるドーム部分を形成する上面を有する下部金型部とを有する。好ましい実施形態においては、そのベース材料はPET共重合体である。従来の再加熱延伸ブロー成形工程に従って、射出成形プリフォームが最初に延伸および配向に適している温度(例えば、80〜130℃)まで再加熱されて、ブロー成形用金型内に配置され、次に、開かれた上端内に軸方向の延伸ロッドが挿入され、そして下方に向かって動かされてプリフォームを軸方向に延伸させる。その後に続いて、または同時に、膨張気体がプリフォームの内部に導入されてショルダーを半径方向に膨張させ、側壁およびベース形成部分を外側に向かって金型部の内面と接触するように膨張させる。結果のブロー成形された容器は、外ネジおよび最下端のネックフランジが付いている、プリフォームと同じネック仕上げを有する。ボトルの残りの部分は膨張するが、その程度は物によって異なる。通常、オーバーモールド材料はベースのプリフォームと一緒に比例的に膨張および延伸する。」
「【0048】
オーバーモールドされた容器の他の実施形態が図5A〜図5Bに示されている。容器70は熱可塑性ポリマーの本体52を含み、本体は口56を定義しているネジ付きのネック仕上げ54と、ネジ付きのネック仕上げの下にあるキャッピングフランジ58と、キャッピングフランジから延びているテーパ付きの部分60と、テーパ付きの部分の下に延びている本体部分62と、容器の底にあるベース64と、を備える。容器70は、部分62および部分60を覆い、キャッピングフランジ58の下で終端しているオーバーモールド層72を含む。その容器を製品(例えば、飲料)で満たした後、栓68が容器70の口56を封止する。」
「【0058】
例1:Affinity(商標)PF1140Gでオーバーモールドされた500mlのPETボトル
・・・
【0059】
オーバーモールド材料は、Affinity(商標)PF1140G樹脂(エチレン系の熱可塑性プラストマー)(ダウケミカル社)であった。オーバーモールドのステップにおいて、PETのプリフォームがキャビティ内に搬送されて配置され、次に、オーバーモールド材料が212℃のバレル温度においてPETプリフォーム上に射出成形された。いくつかのボトルのオーバーモールドに先立って、Affinity PF1140Gに赤色および銀色の着色剤を添加することによって赤色および銀色のオーバーモールドされたボトルが作られた。」

【図1】


【図5A】


【図5B】


イ 認定事項
(ア)【0021】、【0048】の記載及び図1、5A及び5B等によれば、プリフォームはブロー成形後に本体52になり、プリフォームにオーバーモールドされたオーバーモールド材料はブロー成形後にオーバーモールド層72になると認められるところ、本体52は実質的に透明であると認められ(【0029】)、オーバーモールド層72は、本体52のテーパ付きの部分60と本体部分62を覆い(【0048】)、本体52に分離可能に固定されると認められ(【0033】)、本体52及びオーバーモールド層72は、ブロー成形により一緒に膨張及び伸張されていると認められ(【0043】)、オーバーモールド層72は着色されていると認められる(【0039】、【0059】)。

(イ)図面(特に図5A、5B)によれば、キャンピングフランジ58とテーパ付きの部分60との間には、略円筒状の部分があると認められる。

ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ネジ付きのネック仕上げ54と、ネジ付きのネック仕上げ54の下にあるキャッピングフランジ58と、キャッピングフランジから延びているテーパ付きの部分60と、キャンピングフランジ58とテーパ付きの部分60との間にある略円筒状の部分と、テーパ付きの部分の下に延びている本体部分62と、ベース64と、を備える本体52と、
本体52のテーパ付きの部分60と本体部分62を覆い、本体52に分離可能に固定されるオーバーモールド層72を含み、
本体52及びオーバーモールド層72は、ブロー成形により一緒に膨張及び伸張されており、
本体52は実質的に透明であり、
オーバーモールド層72は着色されている、容器70。」

(2)甲2について
ア 記載事項
甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、延伸ブロー成形により製造される積層プラスチック容器に関すものであり、より詳細には、一次成形品である積層のプリフォームを成形し、このプリフォームを加熱後延伸ブロー成形して製造される積層プラスチック容器に関するものである。」
「【0011】また、プリフォームの加熱は赤外線ヒーターにより行われるため、透明な材料、つまり全光線透過率の高い材料は加熱が早く且つプリフォーム内部まで均一に加熱され易い。一方、不透明な材料、つまり全光線透過率の低い材料は全体として加熱が遅く、プリフォーム外表面は早く加熱されるが内部は加熱されづらい。したがってこの現象を利用することにより、2層プリフォームの外層に透明樹脂または着色された樹脂、内層に外層樹脂より全光線透過率の低い着色された樹脂を用いることにより、さらに加熱温度をそれぞれの樹脂の適性延伸温度に近づけることができる。つまり、この2層プリフォームを一定時間加熱した場合、外層樹脂は内層樹脂より透明であるため加熱が早く比較的高温になるが、内層樹脂は外層樹脂より不透明であるため加熱が遅く比較的低温となる。
【0012】上記に説明したように、延伸適性温度の異なる2種類の材料を用いて2層プリフォームを加熱後、延伸ブロー成形する場合、外層材料は無着色または着色されたプラスチック材料、内層材料は外層材料より一定厚みにおける全光線透過率が低くなるように着色された材料であり、且つ内層材料の延伸適性温度は、外層材料の延伸適性温度より低いプラスチック材料とすることにより、各材料とも良好な延伸がなされ、それぞれの材料の持つ特性を最大限に引き出すことができる。とくに、外層材料にポリエチレンナフタレート樹脂、内層樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた場合、両材料ともに延伸による適切な分子の配向がなされるため、ガスバリア性が向上する。また、ここで用いた内層及び外層の全光線透過率は、JIS K7105に準拠して測定される値である。【0013】そして、用いることのできるプラスチック材料としては、延伸ブロー成形できる材料であれば特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、高ニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。上記材料の延伸適性温度を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】また、外層樹脂及び内層樹脂に添加される着色剤にも特に制限はなく、染料はもちろん、無機系顔料、有機系顔料も使用することができる。染料としては、たとえば塩基性染料、酸性染料、アゾ系、アンソラキノン系、ペリノン系染料等を用いることができる。また、無機系顔料としては、クロム酸塩、モリブデン酸塩、フェロシアン化物、チタン、弁柄等の酸化物、硫化物、硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、金属粉末等を使用することができる。さらに、有機系顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、染付レーキ顔料、縮合多環顔料たとえばアントラキノン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料等を用いることができる。
【0016】以下に本発明の実施例とその比較例を示す。
<実施例1>2色射出成形機により、図1に示す形状のプリフォーム(1)を成形した。用いた材料は、外層が着色剤無添加のポリエチレンナフタレート樹脂、内層が酸化チタンが3%添加されたポリエチレンテレフタレート樹脂であり、各層の厚み比率は外層120%、内層が80%であった。また、各層厚みが0.1mmの時の全光線透過率は外層が85%、内層が10%であった。このプリフォームを赤外線ヒーターにより加熱し、その後延伸ブロー成形を行い、図3に示す内容量350mlの容器(5)を得た。」

【図1】


【図3】


イ 甲2発明
上記アを総合すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「内層と外層とを備え、
内層は酸化チタンで着色されたポリエチレンテレフタレート樹脂であり、
外層は着色剤無添加のポリエチレンナフタレート樹脂であり、
各層の厚み比率は外層120%、内層が80%であり、
各層厚みが0.1mmの時の全光線透過率は外層が85%、内層が10%である、積層プラスチック容器。」

2 特許異議申立理由についての判断
(1)特許異議申立理由2−2(進歩性
事案に鑑み、まず特許異議申立理由2−2について検討する。

ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「ネジ付きのネック仕上げ54」は、その機能や構造からみて、前者の「口部」に相当し、以下同様に、「テーパ付きの部分60」は「肩部」に、「本体部分62」は「胴部」に、「ベース部64」は「底部」に、「本体52」は「容器本体」に、「オーバーモールド層72」は「プラスチック製部材」に、「容器70」は「複合容器」に、それぞれ相当する。

b 本件特許の明細書の「首部13は、フランジ部17と肩部12との間に位置しており、略均一な径をもつ略円筒形状を有している。」(【0023】)との記載を参照すると、後者の「略円筒状の部分」は、キャンピングフランジ58とテーパ付きの部分60との間にあるから、前者の「首部」に相当する。

c 上記a及びbを踏まえると、後者の「ネジ付きのネック仕上げ54と、ネジ付きのネック仕上げ54の下にあるキャッピングフランジ58と、キャッピングフランジから延びているテーパ付きの部分60と、キャンピングフランジ58とテーパ付きの部分60との間にある略円筒状の部分と、テーパ付きの部分60の下に延びている本体部分62と、ベース64と、を備える本体52」は、前者の「口部と、前記口部の下方に設けられた首部と、前記首部の下方に設けられた肩部と、前記肩部の下方に設けられた胴部と、前記胴部の下方に設けられた底部と、を備える容器本体」に相当する。

d 上記aを踏まえると、後者の「本体52のテーパ付きの部分60と本体部分62を覆い、本体52に分離可能に固定されるオーバーモールド層72」は、前者の「前記容器本体の外側に、溶着されることなく剥離除去可能に密着して設けられたプラスチック製部材」に相当し、後者の「本体52及びオーバーモールド層72は、ブロー成形により一緒に膨張及び伸張されて」いることは、前者の「前記容器本体及び前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されて」いることに相当し、後者の「本体52は実質的に透明であ」ることは、前者の「前記容器本体は、無色透明であ」ることに相当し、後者の「オーバーモールド層72は着色されている」ことは、前者の「前記プラスチック製部材は、着色されて」いることに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「口部と、前記口部の下方に設けられた首部と、前記首部の下方に設けられた肩部と、前記肩部の下方に設けられた胴部と、前記胴部の下方に設けられた底部と、を備える容器本体と、
前記容器本体の外側に、溶着されることなく剥離除去可能に密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体及び前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されており、
前記容器本体は、無色透明であり、
前記プラスチック製部材は、着色されている、複合容器。」

<相違点>
着色されているプラスチック製部材について、本件発明1では、「近赤外線透過率が、近赤外線の波長領域である、800nm〜2500nmの波長領域の全域で50%以上である」のに対し、甲1発明では、そのような構成は特定されていない点。

(イ)相違点についての判断
甲2発明は、「延伸適性温度の異なる2種類の材料を用いて2層プリフォームを加熱後、延伸ブロー成形する場合、外層材料は無着色または着色されたプラスチック材料、内層材料は外層材料より一定厚みにおける全光線透過率が低くなるように着色された材料であり、且つ内層材料の延伸適性温度は、外層材料の延伸適性温度より低いプラスチック材料とすることにより、各材料とも良好な延伸がなされ、それぞれの材料の持つ特性を最大限に引き出すことができる」(【0012】)ものであり、内層(本件発明1の「容器本体」に相当。)を着色すること、特に、無機系顔料である「酸化チタン」を「内層」に添加して着色し「全光線透過率」を低くさせることは、甲2の課題解決手段として必要不可欠の構成の1つであると認められる。
そうすると、仮に、このような甲2発明を、甲1発明に適用するとしても、甲1発明の実質的に透明である本体52において、酸化チタンを添加して着色することが必要となるから、相違点に係る本件発明1の容器本体が透明であることを特定する構成に想到し得ないことは明らかである。
加えて、甲2発明の「全光線透過率」は、説明による定義がない限り可視光線についての透過率として理解すべきものであり、また、甲2全体を参酌しても、甲2発明の「外層」の「近赤外線透過率」は不明であるから、上記述べた仮の適用と同様に、甲2発明を甲1発明に適用しても、上記相違点に係る本件発明1の構成とはならない。
また、上記相違点に係る本件発明1の構成について、甲3〜甲5にも記載も示唆も見いだせない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3〜甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、かつ、更なる限定を加えたものであるから、上記アで説示したのと同様の理由により、甲1発明、甲2発明及び甲3〜甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ まとめ
以上によれば、特許異議申立理由2−2は成り立たない。

(2)異議申立理由1(サポート要件)
申立人は、特許異議申立書(5〜7ページ参照。)において、本件発明1の「前記プラスチック製部材の近赤外線透過率が、近赤外線の波長領域である、800nm〜2500nmの波長領域の全域で50%以上である」との事項に関して、発明の詳細な説明の【0036】及び【0065】には、「プラスチック製部材40a」の近赤外線透過率が50%以上であることは記載されているところ、発明の詳細な説明全体では、「プラスチック製部材」について、複合容器の「プラスチック製部材40」と、複合容器にブロー成型される前の複合プリフォームの「プラスチック製部材40a」は、符号「40」、「40a」によって明確に区別されているから、上記【0036】及び【0065】の記載は、複合プリフォームの「プラスチック製部材40a」についてのものであって、複合容器の「プラスチック製部材40」についてものではないから、本件発明1の上記事項は、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。

申立人が主張するように、発明の詳細な説明では、基本的に、複合容器のプラスチック製部材は「プラスチック製部材40」と記載され、複合プリフォームのプラスチック製部材は「プラスチック製部材40a」と記載されているが、プラスチック製部材の材料や性質については、例えば、「またプラスチック製部材40aは、容器本体10(プリフォーム10a)と同一の材料からなっていても良い。」(【0049】)、「またプラスチック製部材40aは、容器本体10(プリフォーム10a)を構成するプラスチック材料よりも保温性又は保冷性の高い材料(熱伝導性の低い材料)を含んでいても良い。」(【0052】)との記載のように、複合容器と複合プリフォームは区別なく扱われている(「容器本体10」は複合容器の構成の一部であり、「プリフォーム10a」は複合プリフォームの構成の一部である。)。
そして、発明の詳細な説明の【0048】の「プラスチック製部材40aは、プラスチック製部材40aの近赤外線透過率が50%以上であることを達成することができれば特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどを含んでなる樹脂材料が挙げられ、これらの中でもポリエチレンまたはポリプロピレンを含んでなることが好ましい。」との記載も勘案すると、複合プリフォームのプラスチック製部材40aの材料を、近赤外線透過率が50%以上である、ポリエチレンやポリプロピレンを含む樹脂材料とすれば、複合容器のプラスチック製部材40であるポリエチレンやポリプロピレンを含む樹脂材料の近赤外線透過率も50%以上となることは、当業者であれば理解できると解するのが相当である。
したがって、本件発明1の上記事項は、発明の詳細な説明に記載されたものであると認められ、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用することはできないから、特許異議申立理由1は成り立たない。


(3)異議申立理由2−1(進歩性
申立人は、特許異議申立書(7ページ参照。)において、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原出願の当初明細書等」という。)の記載は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の記載と大部分共通しており、上記(2)と同様の理由により、本件発明1の「前記プラスチック製部材の近赤外線透過率が、近赤外線の波長領域である、800nm〜2500nmの波長領域の全域で50%以上である」との事項は、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内にあるとは認められないから、本件特許の出願日は原出願の出願日に遡及することはなく、本件特許の現実の出願日である令和3年2月18日であり、本件発明1〜6は、原出願の公開公報である特開2019−217782号公報に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。

しかしながら、原出願の当初明細書等の【0048】、【0049】、【0052】等は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0048】、【0049】、【0052】等と記載が同じであるから、上記(2)で説示したのと同様の理由により、本件発明1の上記事項は、原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内であると認められる。
したがって、申立人の上記主張は、前提において根拠を欠くものであり、採用することはできないから、特許異議申立理由2−1は成り立たない。

第5 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-06-30 
出願番号 P2021-024457
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B65D)
P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 稲葉 大紀
八木 誠
登録日 2022-08-17 
登録番号 7125680
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材  
代理人 高田 泰彦  
代理人 村田 卓久  
代理人 柏 延之  
代理人 中村 行孝  
代理人 宮嶋 学  
代理人 堀田 幸裕  

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