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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1399967
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-03 
確定日 2023-07-20 
事件の表示 特願2017−231184「蓋付き容器」拒絶査定不服審判事件〔令和1年6月24日出願公開、特開2019−99206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月25日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和3年12月 7日 :原査定の謄本の発送日)
令和4年 3月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出(以下この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるとおりのものである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
なお、本願発明は、原査定の対象である発明のうちの、請求項2を引用する請求項3に係る発明であり、本件補正は請求項の削除を目的とするものである。

「【請求項1】
上端縁に容器軸に交差する径方向の外方に向けて突出する環状のフランジ部が設けられた有底筒状の容器本体と、
前記フランジ部に離脱可能に装着され、前記容器本体の上端開口部を閉塞する蓋体と、を備え、
前記蓋体が、前記容器本体の周壁部内に離脱可能に嵌合された内筒部と、前記フランジ部の外周縁に離脱可能に外嵌された嵌合筒部を有する外筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを接続する環状接続部と、を有し、
前記フランジ部及び前記環状接続部のうちの一方には、前記フランジ部及び前記環状接続部のうちの他方に当接する封止突部が形成されており、
前記外筒部には、径方向の内方に陥没し、前記フランジ部に下方から係止する陥没部が前記容器軸回りの周方向に間隔をあけて複数形成されており、
前記周壁部の内周面のうち前記内筒部との接触部分が、内方に突となる凸面を形成し、
前記内筒部の外周面のうち前記周壁部との接触部分が、外方に突となる凸面を形成し、
前記蓋体が、前記内筒部を周壁とした有底筒状をなしていることを特徴とする蓋付き容器。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項3に係る理由の概要は、次のとおりである。

進歩性)請求項1〜3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2、3に記載された事項及び周知技術(引用文献4〜6参照。)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
1.実願昭49−97308号(実開昭51−25003号)のマイクロフィルム
2.特開2007−186230号公報
3.特開2015−6898号公報
4.特開2011−178427号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2006−213373号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2005−96819号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1
ア 原査定の拒絶の理由において引用した実願昭49−97308号(実開昭51−25003号)のマイクロフィルムには、以下の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様。)。
(ア)「2. 実用新案登録請求の範囲
合成樹脂からなる容器本体(1)の口部上端面(4)若しくはこの口部上端面(4)と接する蓋(5)の内壁上面(7)のいずれか一方に環状突起(3)を一体形成し、容器本体(1)に蓋(5)を被せた際この環状突起(3)を介して容器本体(1)の口部上端面(4)と蓋(5)の内壁上面(7)とが線接触して容器本体(1)内を密閉化することを特徴とする密閉容器。」(明細書第1ページ第4〜第11行)
(イ)「3. 考案の詳細な説明
この考案は合成樹脂容器の改良に関するものでその目的とするところは容器内部と外部との気密を完全にし容器内を完全密閉し容器内の内容物の外部への漏洩を完全に防止することを可能とした密閉容器を提供するにある。」(明細書第1ページ第12〜第17行)
(ウ)「(1)は硬質合成樹脂からなる容器本体で、口部側面にはわずかに外側に突出した環状突出片(2)を形成してなる。(3)はこの容器本体(1)の口部上端面(4)にわずかに突出して一体形成してなる環状突起で、軟質合成樹脂からなる蓋(5)の内部に形成された環状溝(6)の内壁上面(7)と線接触するよう且つ蓋(5)の内壁上面(7)で口部上端面(4)を押圧した際先端がこの蓋(5)の内壁上面(7)に喰い込むよう先端を狭小とし基部を肉厚とした逆V字状の形状としてなる。(8)は前記蓋(5)の外周面内側に形成された環状の係合部で、容器本体(1)に蓋(5)を被着するよう押圧した際容器本体(1)の環状突出片(2)を抱着するよう係合するものである。(9)は前記環状溝(6)を形成する環状の下向き突片で、容器本体(1)の口部内側端面(10)と接触し容器本体(1)内を密閉化するとともに容器本体(1)に蓋(5)をする際のガイドとなるものである。
この考案はこのような構成であるため容器本体(1)に蓋(5)を被せると環状の係合部(8)の抱着力により環状突出片(2)により強く係合すると同時に蓋(5)の内壁上面(7)と環状突起(3)が線接触ししかも蓋(5)の押圧力により突起(3)の先端が内壁上面(7)に喰い込み完全なる密着度を有する。しかもその際突起(3)が硬質合成樹脂で蓋(5)が軟質合成樹脂からなるためより一層その喰い込み力が強くなる。
従ってこの状態においては容器本体(1)が転倒しても容器本体(1)内の内容物は突片(9)と容器本体(1)内側の口部内側端面(10)との接触部(イ)を矢印のように通過しても前記環状突起(3)と蓋(5)の内壁上面(7)との接触部(ロ)は完全なる密の状態であるため通過できず従ってわずかなる環状溝(6)の空白部に留りそれ以上外部に漏洩することは一切ない。また容器本体(1)から蓋(5)を開く際にも前記内容物は環状突起(3)から内側に留っているため外部に漏洩することはなく内部に流れ込む。
よって内容物が容器本体(1)から一切外部に漏れることはないのである。尚この実施例においては環状突起(3)を口部上端面(4)に一個突出形成してなるが、これに限らず口部上端面(4)を幅広にして二個若しくはそれ以上形成してもよいものである。」(明細書第2ページ第10行〜第4ページ第9行)
(エ)「叙上のようにこの考案は容器本体と蓋の接触面である容器本体の口部上端面と蓋の内壁上面のいずれか一方に環状突起を形成し両者の接触を線接触とするものであるため、従来の面接触に比べ著しく接触度が密となり、すなわち環状突起の喰い込み力あるいは押圧力による突起先端の変形により両者の密度が著しく良好となりその結果固体や粉体はもちろん液体や流動体、半流動体等の内容物が一切外部に漏洩することなく容器本体内は完全密閉されしかも蓋を容器本体から取外す際にも外部への一切の漏れが生じないため手の汚れ等がなく食品容器としては著しくすぐれた効果を有する他その構造が極めて簡単で製作容易である等実用的効果は大なるものがある。」(明細書第5ページ第2〜第15行)
(オ)「4.図面の簡単な説明
第1図はこの考案に係る密閉容器の側面図で一部切欠き断面した。
第2図は第1図A部の拡大断面図。第3図は他実施例としての第1図A部の拡大断面図。」(明細書第5ページ第16〜第20行)
(カ)「


(キ)「


イ 上記アの指摘事項及び図示事項から、以下の事項が分かる。
(ア)上記ア(イ)、第2図より、蓋(5)には環状の下向き突片(9)と蓋(5)の外周を接続する部分が設けられている。
(イ)環状の下向き突片(9)と口部内側端面(10)の接触部(イ)に関して、第2図より、接触部(イ)における口部内側端面(10)の形状は断面視で内側に面取りされているといえる。
ウ 引用発明
以上より、密閉容器について、被着時の態様に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「合成樹脂からなる容器本体(1)の口部上端面(4)若しくはこの口部上端面(4)と接する蓋(5)の内壁上面(7)のいずれか一方に環状突起(3)を一体形成し、容器本体(1)に蓋(5)を被せた際この環状突起(3)を介して容器本体(1)の口部上端面(4)と蓋(5)の内壁上面(7)とが線接触して容器本体(1)内を密閉化し、
蓋(5)の外周面内側には環状の係合部(8)が形成され、環状の係合部(8)は、容器本体(1)に蓋(5)を被着するよう押圧した際、容器本体(1)の環状突出片(2)を抱着するよう係合するものであり、
蓋(5)は、環状溝(6)を形成する環状の下向き突片(9)を有し、下向き突片(9)は、容器本体(1)の口部内側端面(10)と接触部(イ)において接触し容器本体(1)内を密閉化するとともに容器本体(1)に蓋(5)をする際のガイドとなるものであり、
蓋(5)には環状の下向き突片(9)と蓋(5)の外周を接続する部分が設けられ、
接触部(イ)における環状の下向き突片(9)と接触する口部内側端面(10)の形状は断面視で内側に面取りされている、
密閉容器。」

(2) 引用文献2
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2007−186230号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、蓋の開閉が容易で、被せた蓋がトラブル等で外れ難く、優れた密閉性を発揮できかつ保持し易い包装用容器の提供を目的とする。」
(イ)「【0017】
本発明の包装用容器は、容器嵌合面と蓋嵌合面のいずれか一方もしくは両方に、当接する相手側の嵌合面に向けて膨出する、断面が緩やかな曲線状の曲面膨出部を周設し、閉蓋時に、曲面膨出部と相手方の嵌合面とが当接して弾性変形による面接触をする構成としたので、蓋と容器本体の寸法に多少の誤差を生じたとしても、閉蓋時に曲面膨出部が容易に弾性変形することによってこの誤差を補償できるので、良好な開閉性が得られる。
また、断面が緩やかな曲線状の曲面膨出部を周設し、閉蓋時に、曲面膨出部と相手方の嵌合面とが当接して弾性変形による面接触をする構成としたので、蓋と容器本体の寸法に多少の誤差を生じたとしても、十分な嵌合強度が得られ、隙間が生じ難くなり、優れた密閉性を得ることができる。
また、断面が緩やかな曲線状の曲面膨出部を周設するので、小さい凸条等を設ける場合に比べて成形用金型の設計が容易となり、生産性が蓋の開閉適性で不合格になる率が減少し、容器の生産性を向上させることができる。
また、断面が緩やかな曲線状の曲面膨出部を周設し、曲面膨出部の弾性変形によって容器嵌合面と蓋嵌合面とを面接触させる構造なので、蓋の開閉時に引っかかりがなくスムーズに行える。」
(ウ)「【0019】
本実施形態の包装用容器10は、熱可塑性樹脂シートの成形体からなり、開口部13を外側に向け屈曲させて形成された段部14と、段部14の先端側を上側に向けて立ち上げて形成された容器嵌合部15と、容器嵌合部15の先端側を外側に向けて折り曲げて形成されたフランジ部16とを有する容器本体11と、熱可塑性シートの成形体からなり、周縁部に設けられた断面略凵字状又は略U字状をなす蓋嵌合部17と、蓋嵌合部17の先端側を外側に向けて折り曲げて形成された鍔部18とを有する蓋12とを有し、容器本体11の開口部13に蓋12を着脱自在に嵌合可能であり、閉蓋時、容器嵌合部15内面の容器嵌合面19に蓋嵌合部17外面の蓋嵌合面21が互いに当接し、蓋嵌合面21に、容器嵌合面19に当接するように外側に向けて膨出する、断面が緩やかな曲線状の曲面膨出部20を周設し、閉蓋時、曲面膨出部20が容器嵌合面19に当接して弾性変形による面接触をする構成になっている。」
(エ)「【0037】
図5は、本発明の包装用容器の第2実施形態を示す図である。本実施形態の包装用容器10は、前述した第1実施形態の包装用容器と同様の構成要素を備えているが、容器嵌合面19側に曲面膨出部24を形成し、蓋嵌合面21は平坦な面に形成した点で異なっている。
本実施形態の包装用容器10についても、前述した第1実施形態の包装用容器10とほぼ同様の効果を得ることができる。」
(オ)「


(カ)「


イ 以上より、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「容器嵌合面19と蓋嵌合面21の一方もしくは両方に、曲面膨出部20と曲部膨出部24を設ける包装用容器。」

(3) 引用文献3
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2015−6898号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0027】
図1〜図3に示すように、本体部30は、硬質合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)によって平板状に形成され、蓋体20の中央部を構成すると共に、内側側壁31を有している。当該内側側壁31は、平板状に形成された本体部30の外周縁において略垂直に立設されており、本体部30と一体に成形されている。ここで、本体部30は、平板状に形成された部分に対して略垂直を為す内側側壁31を硬質合成樹脂により一体成型している為、蓋体20の剛性を高めている。尚、図1〜図3に示すように、本体部30における平板状に形成されている部分には、所定の凹凸加工が形成されており、当該凹凸加工を施すことにより、蓋体20の剛性を高めている。」
(イ)「


イ 以上より、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「本体部30と一体に成形された内側側壁31を有する密閉容器。」

(4) 引用文献4
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2011−178427号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0018】
図3に示すように、側板5の上下方向中間部内面に係合突部7を所定の間隔をおいて周方向へ複数形成すると共に、側板5の1つの角部8の下端に板状の摘み部9を突設する。」
(イ)「


(ウ)「


イ 以上より、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「側板5の上下方向中間部内面に係合突部7を所定の間隔をおいて周方向へ複数形成すること。」

(5) 引用文献5
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2006−213373号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0022】
一方、蓋材20では、上面に円形状に蓋材主凹部21が形成され、該蓋材主凹部21の内側であって蓋材主凹部21の底部に比較的深底の蓋材内側凹部22が形成されている。上記蓋材主凹部21と蓋材内側凹部22とは、環状の蓋材段部23によって連なっている。また、蓋材内側凹部22の底部内側には、上方に膨らんだ円錐台形状の蓋材突部24が形成されている。
また、蓋材20の外周縁は、下方に伸長する蓋材外周縁片25が形成されており、該蓋材外周縁片25の内面に、周方向に間隔をおいて複数の係合突部26が設けられている。また、蓋材外周縁片25の下端部は、下方に向かうに従って大径となるテーパ形状に形成されている。」
(イ)「【0023】
上記容器本体1に対する蓋材20を被せる際には、図3に示すように、蓋材20の蓋材外周縁片25を容器本体1の開口部外周縁10の外側に嵌める。この際には、蓋材外周縁片25のテーパ形状により容易に嵌め込みを行うことができる。さらに嵌め込みを押し進めることで、容器本体1の係合突部11が蓋材20の係合突部26を越えて蓋材側に位置して係合突部26に係合する。これにより、容器本体1と蓋材20とが強固に係合する。この際に、開口部外周縁上面14と蓋材20との内面が重ね合わされ、その内側では、蓋材20の内面との間で空隙が生じ、容器本体1と蓋材20とが過度に密着することがない。また、容器本体1の折り返し部12の外面と蓋材外周縁片25の内面とは、係合鍔部11で離隔されて接触しないようにされており、容器本体1と蓋材20との過度な密着がこれによっても防止される。
容器本体1に嵌めた蓋材20を取り外す際には、両者を離すように移動させると、係合鍔部11が係合突部26を越えて外側に位置するに至り、両者を容易に外すことができる。この際に、係合突部26が、全周に亘るものではなく、間隔をおいて複数で形成されていることから、取り外し作業を比較的容易に行うことができる。」
(ウ)「


(エ)「


イ 以上より、引用文献5には、次の事項(以下「引用文献5に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「蓋材外周縁片25の内面に、周方向に間隔をおいて複数の係合突部26が設けられていること。」

(6) 引用文献6
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2005−96819号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0011】
図1に示すように、この容器は、段ボールをプレス成形した容器本体1と、この容器に被せるプラスチック製の蓋2とから構成される円盤状のものである。容器本体1及び蓋2の外周には、フランジ3,4が設けられ、蓋2のフランジ4の内周面には、突条5が周方向に断続的に形成されている。」
(イ)「【0012】
また、図1及び図2に示すように、蓋2のフランジ4には、内径が小さい小径部6と、内径が大きい大径部7とが周方向に交互に形成されている。なお、蓋2の周方向における小径部6及び大径部7の配置は、特に限定されるものではない。」
(ウ)「【0013】
上記のような蓋付き容器では、図3及び図4に実線で示すように、容器本体1のフランジ3の外径が小さい場合に、容器本体1に蓋2を被せると、小径部6の突条5が容器本体1のフランジ3に係合するので、容器本体1と蓋2とが確実に嵌合する。」
(エ)「


イ 以上より、引用文献6には、次の事項(以下「引用文献6に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「蓋2のフランジ4の内周面には、突条5が周方向に断続的に形成されていること。」

2 引用発明との対比
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「容器本体(1)」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮して対比すると、本願発明の「容器本体」に相当し、以下同様に、
「口部上端面(4)」は、「上端縁」に、
「蓋(5)」は、「蓋体」に、
「環状突起(3)」は、「封止突部」に、
「環状突出片(2)」は、「フランジ部」に、
「環状の下向き突片(9)」は、「内筒部」に、
「口部内側端面(10)」は、「周壁部」に、
それぞれ相当する。
イ 引用発明の「環状の係合部(8)」を有する「蓋(5)の外周」は、環状であり、筒状をなすといえるから、本願発明の「外筒部」に相当する。
ウ 引用発明の「環状の下向き突片(9)と蓋(5)の外周を接続する部分」は、蓋(5)における相互の位置関係からみて、本願発明の「前記内筒部と前記外筒部とを接続する環状接続部」に相当する。
エ 引用発明の「密閉容器」は、「容器本体(1)に蓋(5)を被せた際この環状突起(3)を介して容器本体(1)の口部上端面(4)と蓋(5)の内壁上面(7)とが線接触して容器本体(1)内を密閉化」されるものなので、本願発明の「蓋付き容器」に相当する。
オ 引用発明の「容器本体(1)の環状突出片(2)」を備える態様は、引用文献1の第1図、第2図をみると容器本体の軸に交差する径方向の外方に向けて突出しているといえ、本願発明の「環状のフランジ部」が「上端縁に容器軸に交差する径方向の外方に向けて突出する」態様に相当する。
カ 引用発明は、「環状突起(3)」や、「環状突出片(2)」を備えるから、その形状は環状をなすもので、当該態様の「容器本体」は、筒状をなすといえ、また、「密閉容器」が有底であることは明らかであるから、引用発明の「容器本体」は、本願発明の「有底筒状の容器本体」に相当する。
また、引用発明の「蓋(5)」は、第2図をみると、本願発明の「前記蓋体が、前記内筒部を周壁とした有底筒状をなしていること」と、「前記蓋体が、前記有底筒状をなしていること」の限りで一致する。
キ 引用発明の「蓋(5)は、外周面内側に形成された環状の係合部(8)を有し、環状の係合部(8)は、容器本体(1)に蓋(5)を被着するよう押圧した際、容器本体(1)の環状突出片(2)を抱着するよう係合するものであ」る。また、第2図も併せみると蓋(5)と容器本体(1)との係合を解除できるものである。
すると、引用発明の「蓋(5)」は、本願発明の「蓋体」が「前記フランジ部に離脱可能に装着され」るとともに、「前記容器本体の上端開口部を閉塞する」態様に相当する。
ク 引用発明の「蓋(5)」の「環状の下向き突片(9)」及び「環状の係合部(8)」はそれぞれ、「容器本体(1)」の「口部内壁端面(10)」及び「環状突出片(2)」と係合するものであり、第2図も併せてみると蓋(5)と容器本体(1)との係合を解除できるものである。また、引用文献1の第2図をみると「環状の係合部(8)」は、「容器本体(1)」の外側から係合し、環状の筒状をなす「外周面内側」と環状突出片(2)とが接触しているといえる。
そして、上記「ア」、「キ」も踏まえると、引用発明の「蓋(5)」は、本願発明の「前記蓋体が、前記容器本体の周壁部内に離脱可能に嵌合された内筒部と、前記フランジ部の外周縁に離脱可能に外嵌された環状筒部を有する外筒部」の態様を備えるものである。
ケ 引用発明は、「合成樹脂からなる容器本体(1)の口部上端面(4)若しくはこの口部上端面(4)と接する蓋(5)の内壁上面(7)のいずれか一方に環状突起(3)を一体形成し、容器本体(1)に蓋(5)を被せた際この環状突起(3)を介して容器本体(1)の口部上端面(4)と蓋(5)の内壁上面(7)とが線接触して容器本体(1)内を密閉化」するもので、第2図の配置関係をみると、「環状突起(3)」は、「環状の下向き突片(9)と環状の係合部(8)を接続する部分」に当接するものである。そうすると、引用発明は、本願発明の「前記フランジ部及び前記環状接続部のうちの一方には、前記フランジ部及び前記環状接続部のうちの他方に当接する封止突部が形成されて」いる態様を備えるものである。
コ 引用発明の「環状の係合部(8)」は引用文献1の第2図をみると、「環状突出片(2)」を下方から係合しているといえ、またその形状は環状をなすものであるから、蓋(5)の周方向に形成されているといえる。そのため、引用発明の「環状の係合部(8)」は、本願発明の「前記外筒部には、径方向の内方に陥没し、前記フランジ部に下方から係止する陥没部が前記容器軸回りの周方向に間隔をあけて複数形成されて」いることと、「前記外筒部には、前記フランジ部に下方から係止する部分が前記容器軸回りの周方向に形成されて」いる限りで一致する。
サ 引用発明の「接触部(イ)における環状の下向き突片(9)と接触する口部内側端面(10)の形状は断面視で内側に面取りされている」ことに関し、引用文献1の第2図をみると、接触部(イ)において環状の下向き突片(9)と接触する口部内側端面(10)の形状は、断面視で曲線となっていることから、曲面を形成しているといえる。また、接触部(イ)における環状の下向き突片(9)と接触する口部内側端面(10)は、容器本体(1)の内側に向かって突であるといえるから、引用発明の「口部内側端面(10)」は、本願発明の「前記周壁部の内周面のうち前記内筒部との接触部分が、内方に突となる凸面を形成し」ている態様を備えるものである。

(2) 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「上端縁に容器軸に交差する径方向の外方に向けて突出する環状のフランジ部が設けられた有底筒状の容器本体と、
前記フランジ部に離脱可能に装着され、前記容器本体の上端開口部を閉塞する蓋体と、を備え、
前記蓋体が、前記容器本体の周壁部内に離脱可能に嵌合された内筒部と、前記フランジ部の外周縁に離脱可能に外嵌された嵌合筒部を有する外筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを接続する環状接続部と、を有し、
前記フランジ部及び前記環状接続部のうちの一方には、前記フランジ部及び前記環状接続部のうちの他方に当接する封止突部が形成されており、
前記外筒部には、前記フランジ部に下方から係止する部分が前記容器軸回りの周方向に形成されており、
前記周壁部の内周面のうち前記内筒部との接触部分が、内方に突となる凸面を形成し、
前記蓋体が、前記有底筒状をなしている蓋付き容器。」
[相違点1]
外筒部に、フランジ部に下方から係止する部分が容器軸回りの周方向に形成されることについて、本願発明は、「前記外筒部には、径方向の内方に陥没し、前記フランジ部に下方から係止する陥没部が前記容器軸回りの周方向に間隔をあけて複数形成されて」いるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。
[相違点2]
内方に突となる凸面を形成する周壁部の内周面のうち内筒部との接触部分に関して、本願発明は、「前記内筒部の外周面のうち前記周壁部との接触部分が、外方に突となる凸面を形成し」ているのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。
[相違点3]
蓋体が、有底筒状をなしていることについて、本願発明は、「前記蓋体が、前記内筒部を周壁とした有底筒状をなしている」のに対し、引用発明では、蓋体は、内筒部を周壁とした形状ではない点。

3 判断
以下、相違点について検討する。
(1) 相違点1について
容器本体に蓋体を係止する係止部を設ける際に、部材を陥没させて突部を設けることは、引用文献5(特に、【図2】の係合突部26を参照。)に記載されているように、周知の技術的事項である(以下「周知技術1」という。)。
また、陥没部である係止部を周方向に間隔をあけて複数形成することは、引用文献4(特に、段落【0018】、【図2】〜【図3】参照。)、引用文献5(特に、段落【0022】〜【0023】、【図1】〜【図2】参照。)、引用文献6(特に、段落【0011】〜【0013】、【図3】参照。)に記載されているように、周知の技術的事項である(以下「周知技術2」という。)。
上記事項を勘案すれば、引用発明の蓋(5)において係合部(8)を陥没させて形成すること、及び、係合部(8)を周方向に間隔をあけて複数形成するようにすることは、係止部の形状として、周知技術1、及び周知技術2を引用発明に適用したにすぎず、当業者が容易に想到し得たものである。

(2) 相違点2について
引用発明は、「容器本体(1)の口部上端面(4)と蓋(5)の内壁上面(7)とが線接触して容器本体(1)内を密閉化」し、「容器内部と外部との気密を完全にし容器内を完全密閉し容器内の内容物の外部への漏洩を完全に防止すること」を目的とするもので(上記「第4 1(1)(イ)〜(ウ)」)、引用発明における容器本体(1)と蓋(5)との接触部(第2図における接触部(イ))の更なる密閉度を高めることは、当業者にとって自明な課題である。
ゆえに、引用文献2の「容器嵌合面と蓋嵌合面のいずれか一方もしくは両方に、当接する相手側の嵌合面に向けて膨出する、断面が緩やかな曲線状の曲面膨出部を周設し、閉蓋時に、曲面膨出部と相手方の嵌合面とが当接して弾性変形による面接触をする構成とした」との記載(段落【0017】参照)に接した当業者であれば、引用発明における口部内側端部(10)と環状の下向き突片(9)の接触部(イ)において、口部内側端部(10)を凸面形状とするだけでなく、接触部(イ)における環状の下向き突片(9)も凸面形状とするようにすることは、容易に成し得る事項である。
そして、口部内側端部(10)と突片(9)を凸面形状とする際に、両者が凸面部分で接触するように、口部内側端部(10)を容器本体(1)の内側に凸となるようにし、突片(9)を容器本体(1)の外側に凸となるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(3) 相違点3について
引用発明と引用文献3に記載された事項とは、蓋と容器を有する「密閉容器」という同じ技術分野であり、蓋は容器の内周面と当接する部分で係合するという共通の作用、機能を有している。
すると、「外周面内側に形成された環状の係合部(8)を有し、環状の係合部(8)は、容器本体(1)に蓋(5)を被着するよう押圧した際、容器本体(1)の環状突出片(2)を抱着するよう係合する」引用発明における蓋(5)の形状として、同様な係合態様を有する蓋体と容器における引用文献3に記載された事項を参酌し、蓋(5)の突片(9)を周壁とする有底筒状とするようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(4) 相違点についてのまとめ
これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明の上記各相違点に係る構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

4 請求人の主張について
(1)請求人は審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 「引用文献2の図3に示す曲面膨出部20は、容器嵌合部15の傾斜面22に向けて膨出しているものの、傾斜面20に対して下方から係止している。同様に、引用文献2の図5に示す曲面膨出部24は、蓋嵌合部17の傾斜面に向けて膨出しているものの、この傾斜面に対して上方から係止している。そのため、このような曲面膨出部20、24を備える構成において蓋12の中央部分に対して下方の力をかけると、蓋嵌合部17と容器嵌合部15との間の嵌合が緩んでしまう。そのため、引用文献2に記載された包装用容器では、容器本体11に段部14が設けられている。
このように、引用文献2に曲面膨出部20、24が記載されていても、引用文献2に記載された事項を引用文献1に記載された密閉容器に適用すると、引用文献2に記載された段部14を設ける必要が生じる。
したがって、引用文献1に記載された密閉容器において引用文献2に記載された曲面膨出部20、24の形状を適用することは、段部14も形成することとなることから、容易に想到できないものと思料する。」(審判請求書の第5ページ第22行〜第6ページ第11行)
イ 「引用文献2に記載された容器本体11と蓋12との間には、容器嵌合部15及び蓋嵌合部17以外に容器本体11に蓋12を装着するための構造が設けられていない。そして、容器本体11に対する蓋12の装着状態をより強固にするために、上述のように、曲面膨出部20は、傾斜面20に対して下方から係止しており、曲面膨出部24は、蓋嵌合部17の傾斜面に対して上方から係止している。引用文献1に記載された密閉容器には、容器本体1の環状突出片2に対して下方から係止する係合部8が蓋5に設けられている。このことからも、引用文献2に曲面膨出部20、24が記載されていても、引用文献1に記載された密閉容器において、環状突出片2と係合部8とによる係止構造に加えて、引用文献2に記載された曲面膨出部20、24の形状を適用することは容易に想到できないものと思料する。」(審判請求書の第6ページ第13行〜第23行)

(2) 請求人の上記主張について検討する。
上記「第4 1(2)イ」で示したとおり、引用文献2に記載された事項は、曲面膨出部20、24を設け、容器嵌合部15と蓋嵌合部17とを面接触させることで、容器本体と蓋の密閉性を向上させることをいうものである。そのため、引用文献2に記載された事項において、段部14を設けることを前提としているものではない。
また、上記「第4 3(2)相違点2について」で検討したように、引用発明において、引用文献2に記載された事項を参酌し、容器本体(1)と蓋(5)の接触部において一方のみを凸面形状とするのではなく、容器本体(1)と蓋(5)の接触部を両方凸面形状とすることは、当業者が容易に想到したといえることである。
ゆえに、請求人の上記(1)ア及びイに係る主張を採用することはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-04-28 
結審通知日 2023-05-09 
審決日 2023-05-26 
出願番号 P2017-231184
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 武市 匡紘
井上 茂夫
発明の名称 蓋付き容器  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 及川 周  
代理人 山口 洋  
代理人 大浪 一徳  

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