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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1400056
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-23 
確定日 2023-07-20 
事件の表示 特願2019−199901「調査システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月21日出願公開、特開2020− 76773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月1日(パリ条約による優先権主張2018年11月9日、英国)の外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和2年 1月27日 :翻訳文の提出
令和3年 1月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 3月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月17日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年10月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月 9日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月15日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 7月13日付け:前置報告書
同年 9月 5日 :上申書の提出
令和5年 2月17日付け:拒絶理由通知書
同年 4月19日 :意見書、手続補正書の提出

なお、令和5年2月17日付けで当審において通知した拒絶理由を、以下「当審拒絶理由」といい、これに対して、同年4月19日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年4月19日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
エミッタであって、前記エミッタは複数のパルスを出力するように適合され、前記複数のパルスは第1の時間パターンに構成される、エミッタと、
前記複数のパルスを1光子単位で受信しデジタル出力パターンを生成するように適合された受信器と、
前記第1の時間パターンと前記デジタル出力パターンとの間の相関をとって、相関があるパターンを出力するように適合された相関器と
を備え、
エンコーダをさらに備え、前記エンコーダは、量子情報を用いて前記複数のパルスを符号化するように適合され、
前記量子情報を復号するように適合されたデコーダをさらに備える調査システム。」


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち、本件補正前の請求項1に係る発明に対する理由1(新規性の欠如)及び理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

新規性の欠如
本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献3に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
進歩性の欠如
本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献3に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献3.Qiang Wang et al.,"Pseudorandom modulation quantum secured lidar", Optik, 2015年11月, Vol.126, No.22, pp.3344-3348(主たる引用文献)
引用文献4.特開2013−13068号公報(技術常識を示す文献)
引用文献5.特表2017−506045号公報(技術常識を示す文献)
引用文献6.特開2002−372578号公報(技術常識を示す文献)


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献3に記載された事項、引用発明の認定
(1) 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由に引用された前記引用文献3には、以下の事項が記載されている。日本語訳は、当合議体が作成した。また、下線は当合議体において付したものであり、以下同様である。
ア Introduction
「1. Introduction
With the rapid development of quantum mechanics, quantum communication [1,2], imaging technologies [3-5] and optical ranging [6,7] have been greatly enhanced in recent years, which become hot issues in the field of lidar. The quantum nature of light has been more and more widely applied in many fields, such as super sensitivity laser positioning [8-10], quantum interference [11], quantum radar [12-16] and so on. The quantum entanglement can not only improve the accuracy [17], but also guarantee the security [18] of distance measurement. However, the primary drawbacks of these schemes are the difficulties of creating the requisite entanglement and the sensitivity to loss [19]. Relative to the entangled photons, it is relatively easy to produce a single photon by attenuating laser pulse. Therefore, quantum security detection techniques based on single photon have attracted increasing attention. Malik et al. presented a quantum-secured imaging (QSI) system based on single photon quantum key distribution (QKD) protocol, in which they used a photon’s position to image an object, while using the polarization of the photon for security [3]. Their proof-of-principle experiment demonstrated the excellent antiattack ability of their scheme. Later, they reported a scheme of secure quantum lidar (SQL) [20] which used the same protocol as QSI for security. However, no further reports have been found since then.
In this paper, we present a new SQL system, called pseudorandom modulation quantum secured lidar (PMQSL) first. This lidar system ingeniously combines the classic random modulation method with the protocol of QKD, which makes the system possess not only good ranging accuracy and resolution, but also secured ranging. Here we use one electro-optic modulator (EOM) to control the position of the photon for ranging the distance of the target, while the polarization of the photon is governed by another EOM for security. The measurement of the distance of the target is secure against an attack through calculating statistical errors of the polarization of the photon. It is shown that we can get the range accuracy of centimeter level when there are no jammers, whereas the signal-to-noise ratio (SNR) and range accuracy will be descended in the presence of jammers. The observed range accuracy is then compared with the simulation value, which turns out they are in good agreement with each other. Finally, the proof-of-principle experimental results are shown and analyzed, which indicates that the system has a better ranging and anti-attack ability.」
(1. 序論
量子力学の急速な発展に伴い、量子通信[1,2]、イメージング技術[3-5]及び光学測距[6,7]が近年大幅に向上しており、ライダーの分野ではホットな問題となっている。光の量子的性質は、超高感度レーザー位置決め[8-10]、量子干渉[11]、量子レーダー[12-16]などの多くの分野でますます広く適用されている。量子もつれは、距離測定の精度を向上させることができるだけでなく[17]、距離測定の安全性を保証することができる[18]。しかしながら、これらのスキームの主な欠点は、必要なもつれを作り出すことの困難性及び損失に対する感受性である[19]。もつれた光子に対して、レーザーパルスを減衰させることによって単一の光子を生成することは比較的容易である。したがって、単一光子に基づく量子セキュリティ検出技術が注目を集めている。Malikらは、単一光子量子鍵配送(QKD)プロトコルに基づく量子保護イメージング(QSI)システムを提示し、このシステムでは、光子の偏光をセキュリティのために使用しながら、光子の位置を使用してオブジェクトをイメージングした[3]。それらの原理証明実験は、それらのスキームの優れた耐攻撃能力を実証した。その後、彼らは、セキュリティのためにQSIと同じプロトコルを使用したセキュア量子ライダー(SQL)のスキームを報告した[20]。しかしながら、それ以来、さらなる報告は見出されていない。
この論文では、最初に、擬似ランダム変調量子セキュアライダー(PMQSL)と呼ばれる新しいSQLシステムを提示する。このライダーシステムは、古典的なランダム変調方法をQKDのプロトコルと巧妙に組み合わせ、これにより、システムは、良好な測距精度及び分解能だけでなく、安全な測距も有するようになる。ここでは、一つの電気光学変調器(EOM)を使用して、ターゲットの距離を測距するために光子の位置を制御し、光子の偏光は、セキュリティのために別のEOMによって支配される。ターゲットの距離の測定は、光子の偏光の統計誤差を計算することによって攻撃に対して安全である。妨害物が存在しない場合にはセンチメートルレベルの距離精度を得ることができるが、妨害物が存在する場合には信号対雑音比(SNR)及び距離精度が低下することが示されている。そして、観測された距離精度とシミュレーション値とを比較すると、両者は良く一致していることが分かる。最後に、原理証明実験結果が示され、分析され、これは、システムがより良好な測距及び耐攻撃能力を有することを示す。)

イ The working principle of PMQSL
「2. The working principle of PMQSL
The principle of the PMQSL system is depicted in Fig. 1. The laser is pulse-position modulated by an electro-optic modulator (EOM1). These pulses are further randomly modulated to create the horizontal, diagonal, vertical, and anti-diagonal (|H>, |D>, |V>, and |A>) polarization states of the photon through a polarization modulated model. The polarization modulated model shown in the red solid box includes a polarizer, another electro-optic modulator (EOM2) and a quarter wave plate (λ/4). Passing through an attenuator, pulses with one detected photon on average are obtained and incident on the target through optical transmitting system. The signals from a pseudorandom generator are used as the reference signals and the trigger signals of the EOMs. Photons with different polarizations reflected from the target are collected by the receiving system and detected using four avalanche photodiodes (APDs) possessing single photon detectable sensitivity. A narrowband filter is used to get rid of the background noise. The photon counter with threshold value discriminating circuit is used to judge the output electric pulses of the APDs. If the output of the APD is higher than the threshold, it is then regarded as code 1, otherwise code 0 is registered. A time controller is adopted to adjust the time period between adjacent codes of the modulation sequence. Simultaneously, the time controller is used to trigger the photon counter to record the echo signals.
Taking the 7th order M sequence for example, trigger signals of two electro-optic modulators are shown in Fig. 2. Fig. 2(a) expresses the trigger signal of EOM1, in which ‘1’ represents transmitting signal pulse and ‘0’ no signal pulse. Fig. 2(b) shows the trigger signal of EOM2 which is re-edited according to the same sequence as Fig. 2(a) using other software. Here ‘0’ represents none operations for EOM2, whereas random numbers ‘1’, ‘2’, ‘3’ and ‘4’ with equal probabilities correspond to the operations of horizontal, diagonal, vertical, and anti-diagonal polarization, respectively. EOM1 and EOM2 change synchronously.
The distance of the target can be extracted through the crosscorrelation operation between the reference sequence and received sequence. The error rate (see Section 3.2) of polarizations is obtained through comparing the received codes with the reference codes. If the eavesdropper actively jams our system, he must affect the quantum states of ranging photons and introduce statistical errors, which will reveal his jamming activity.」
(2. PMQSLの動作原理
PMQSLシステムの原理を図1に示す。レーザーは、電気光学変調器(EOM1)によってパルス位置変調される。これらのパルスは更にランダムに変調され、偏光変調モデルを介して光子の水平、対角、垂直及び逆対角(|H>、|D>、|V>及び|A>)偏光状態を生成する。赤色の実線のボックスに示される偏光変調モデルは、偏光子、別の電気光学変調器(EOM2)及び四分の一波長板(λ/4)を含む。減衰器を通過すると、平均して一つの検出された光子を有するパルスが得られ、光伝送システムを介してターゲットに入射する。擬似ランダム発生器からの信号は、EOMの基準信号及びトリガー信号として使用される。ターゲットから反射された異なる偏光を有する光子は、受信システムによって収集され、単一光子検出可能感度を有する四つのアバランシェフォトダイオード(APD)を使用して検出される。バックグランドノイズを除去するために狭帯域フィルターが使用される。閾値付き光子計数器判別回路は、前記APDの出力電気パルスを判断するのに用いられる。前記APDの出力が閾値よりも高い場合、コード1とみなされ、そうでない場合、コード0が登録される。時間コントローラは、変調シーケンスの隣接するコード間の時間期間を調整するために採用される。同時に、時間コントローラは、エコー信号を記録するために光子カウンタをトリガーするために使用される。
例えば、七段のM系列を例にとると、二つの電気光学変調器のトリガー信号が図2に示される。図2(a)は、EOM1のトリガー信号を表し、「1」は送信信号パルスを表し、「0」は無信号パルスを表す。図2(b)は、他のソフトウェアを用いて図2(a)と同じシーケンスに従って再編成されたEOM2のトリガー信号を示す。ここで、「0」は、EOM2に対して何も演算しないことを表し、一方、等しい確率を有する乱数「1」、「2」、「3」及び「4」は、それぞれ、水平、対角、垂直及び逆対角偏光の演算に対応する。EOM1とEOM2は同期して変化する。
ターゲットの距離は、基準シーケンスと受信シーケンスとの間の相互相関演算を通じて抽出することができる。偏光の誤り率(セクション3.2参照)は、受信コードを基準コードと比較することによって得られる。盗聴者が本発明のシステムを能動的に妨害する場合、盗聴者は、測距光子の量子状態に影響を及ぼし、統計的誤差を導入しなければならず、これにより、盗聴者の妨害活動が明らかになる。)
「Fig.1


「Fig.2



(2) 引用発明の認定
ア Fig.1及び前記(1)イの記載から、PMQSLシステムが、レーザー、電気光学変調器(EOM1)、偏光子、電気光学変調器(EOM2)、四分の一波長板(λ/4)、擬似ランダム発生器、単一光子検出可能感度を有する四つのアバランシェフォトダイオード(APD)、閾値付き光子計数器判別回路及び計算機から構成されていることが読み取れる。

イ 前記(1)イの「擬似ランダム発生器からの信号は、EOMの基準信号及びトリガー信号として使用される。」との記載と、「例えば、七段のM系列を例にとると、二つの電気光学変調器のトリガー信号が図2に示される。」との記載から、疑似ランダム発生器からの信号が、七段のM系列信号であることが読み取れる。
また、図2のタイトルが「Modulation sequence of EOM1 and EOM2」となっており、前記(1)イには、「図2(a)は、EOM1のトリガー信号を表し」と記載されているから、疑似ランダム発生器からの信号は、変調シーケンスであることが読み取れる。

ウ Fig.1及び前記(1)イの記載から、疑似ランダム発生器からの信号と、閾値付き光子計数器判別回路からの信号が、計算機に入力されていることが読み取れる。

エ 前記(1)の記載事項及び前記ア〜ウの認定事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「古典的なランダム変調方法を単一光子量子鍵配送(QKD)プロトコルと組み合わせた、擬似ランダム変調量子セキュアライダー(PMQSL)システムであって、(前記(1)ア)
PMQSLシステムは、レーザー、電気光学変調器(EOM1)、偏光子、電気光学変調器(EOM2)、四分の一波長板(λ/4)、擬似ランダム発生器、単一光子検出可能感度を有する四つのアバランシェフォトダイオード(APD)、閾値付き光子計数器判別回路及び計算機から構成され、(前記(2)ア)
レーザーは、電気光学変調器(EOM1)によってパルス位置変調され、これらのパルスは更にランダムに変調され、偏光変調モデルを介して光子の水平、対角、垂直及び逆対角(|H>、|D>、|V>及び|A>)偏光状態を生成し、偏光変調モデルは、偏光子、電気光学変調器(EOM2)及び四分の一波長板(λ/4)を含み、(前記(1)イ)
擬似ランダム発生器からの信号は、七段のM系列の変調シーケンスであり、EOM1の基準信号及びトリガー信号として使用され、(前記(1)イ、前記(2)イ)
ターゲットから反射された異なる偏光を有する光子は、受信システムによって収集され、単一光子検出可能感度を有する四つのアバランシェフォトダイオード(APD)を使用して検出され、(前記(1)イ)
閾値付き光子計数器判別回路は、前記APDの出力電気パルスを判断するのに用いられ、前記APDの出力が閾値よりも高い場合、コード1とみなされ、そうでない場合、コード0が登録され、(前記(1)イ)
疑似ランダム発生器からの信号と、閾値付き光子計数器判別回路からの信号は、計算機に入力され、(前記(2)ウ)
ターゲットの距離は、基準シーケンスと受信シーケンスとの間の相互相関演算を通じて抽出することができる、(前記(1)イ)
擬似ランダム変調量子セキュアライダー(PMQSL)システム。」

2 引用文献4、5に記載された事項及び技術常識Aの認定
(1) 引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由に引用された前記引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「【0050】
図3はさらなる実施形態に従う量子通信システムを示す。図3のシステムは図2のそれに似ている。しかしながら、図3のシステムは、システムが量子鍵配布(QKD)に基づく量子通信での使用に適することを可能にするエンコーダ301及びデコーダ303をさらに具備する。単一光子送信機101はエンコーダ301を具備する。エンコーダは、単一光子または弱い光のパルスへの符号化情報に用いられた任意のタイプのエンコーダでもよい。例えばエンコーダは、干渉計を具備する位相エンコーダでもよいし、または、それは偏光エンコーダでもよい。他のタイプのエンコーダは可能である。複数の単一光子検出器が複数の量子信号に関する複数の検出ユニットとして使用される場合、任意のタイプのQKD量子通信プロトコルを用いることができる。」
「【0059】
再生成されたマスタークロックは、デコーダ303から出てくる複数の単一光子信号に同期される両方のゲート制御された単一光子検出器205と305を駆動するために使用される。単一光子検出器205及び305は、デコーダからの複数の単一光子を検出し、またこの情報は送信機と受信機との間の鍵を形成するために用いられる。」
「【図3】



(2) 引用文献5に記載された事項
当審拒絶理由に引用された前記引用文献5には、以下の事項が記載されている。
「【0026】
非定常の基準フレームに対する効率的な量子鍵配送を可能にする例示的なシステムは、次に、図1を参照して記述される。このシステムは、送信側デバイス10、ラベル付けされた端末A、および、受信側デバイス10、ラベル付けされた端末Bを備える。実施形態にしたがって、端末Aは、たとえば、携帯電話またはスマート・フォン、ラップトップ、ノートブック、タブレット・コンピュータ、その他のモバイル・デバイスを備える。端末Bは、固定ノード、たとえば、セルラ・システムの基地局または、ローカル・ネットワーク・システム、または、マシン・タイプ端末を備えることができる。
【0027】
図1において、ラジオ周波数(RF)無線リンク19が、デバイス10および20の間で、提供される。両方のデバイスは、無線通信のための通信サブシステム、無線リンク16の通信を容易にするために、それぞれ、たとえば、適切な無電装置15 および2、を備えている。デバイスの間での無線チャネルが、また、光リンクを介してなど、他の技術に基づいて、提供することができることに留意する。
【0028】
デバイス10と20の間の鍵の配送は、デバイス10からデバイス20への、光学リンク17をわたる光子の送信に基づいている。実施形態にしたがって、単一光子が送信される。光子を生成し放射するための装置は、単一光子を放射する光学エンコーダー12と、受信側デバイスに光子を方向付けるのを可能にするビーム・コントローラ13と、単一光子を放射するために必要な電気パルスを生成するコントロール・エレクトロニクス14と、(量子)乱数発生器11と、これらのコンポーネントをコントロールするための、プロセッサ装置18と、を備えることができる。光学符号化のための装置12は、適切な光源から放射された光パルスを確率的に変換するのに適していることができる。たとえば、3つの光源を、3つの可能な偏光において、偏光された単一光子を生成するために使用することができる。各々の光源は、1つの偏光に対応している。
【0029】
端末20は、端末10から光学ビームを受信することができるレシーバ21を備えることができる。単一光子を検出することができる光学デコーダ22を、提供することができる。検出器出力およびそれらの時間トレース記録の処理に適応したコントロール・エレクトロニクス24、無線通信のための通信サブシステム25、および、上記のコンポーネントをコントロールするためのコンピュータまたはプロセッサ26も、また、示される。」
「【図1】



(3) 技術常識Aの認定
引用文献4の前記(1)の摘記箇所の記載、及び、引用文献5の前記(2)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は技術常識であると認める(以下「技術常識A」という。)。

<技術常識A>
「量子鍵配布(QKD)に基づく量子通信において、光信号の符号化を行う装置をエンコーダーと呼び、復号化を行う装置をデコーダーと呼ぶこと。」

3 引用文献6に記載された事項、技術常識Bの認定
(1) 引用文献6に記載された事項
当審拒絶理由に引用された前記引用文献6には、以下の事項が記載されている。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】また、超音波の分野で既に行われている相関関数による手法がある。この方法は、受信信号波形と送信信号波形を高速にサンプリングし、時系列データとして記憶する。次に、受信波形と送信波形の相互相関関数を求め、その関数値が最大となる遅延時間を伝播時間とする方法である。例えば、これを光りによる距離計に応用すると、1GHzでサンプリングした受信波形と1GHzでサンプリングした送信波形の相互相関関数を求め、その関数値が最大となる遅延時間をを求めることになる。この場合の関数値も1nsecごとに得られが、最大となる近傍の関数値を2次曲線の近似関数等で表わし、その近似関数が最大値となる時刻を求めることにより、サンプリング時間間隔より小さい分解能を得ることができる。しかし、この手法そのままで、光または電波式の距離計を製作すると、非常に高速なAD変換器、容量の大きなメモリーと計算量が非常に多い相互相関演算が要求される。」
「【0007】
【実施例】図1は、本発明の実施例の形態図であり、符号1は、距離計本体であり、内部に電気回路を、表面に距離表示器を有している。符号2は、送信部であり、電波ならアンテナ、光ならレーザ光送信装置、超音波であれば超音波送信部の働きを行う。符号3は、受信信号受信部であり、電波ならアンテナ、光なら受光素子、超音波なら超音波受信部の働きを行う。
【0008】図2は、相関計算の計算過程を示すものであり、時間τの相関値は、受信波形とτ時間遅延した参照波(送信波形)との積の積分計算値である。必要なτの範囲の相関関数は、τを毎回Δτ増加しながら多くの関数値を求めることで達成される。光や電波の場合、幸いなことに高速であるため、複数回数の信号を発信して計測することが可能である。例えば、1MHzの周期で発信すると、0.01秒間で、1万回発信できる。図2では、複数回発信し、毎回Δτ遅延時間増加した遅延波と受信との積の積分計算で相関関数を求める様子を示している。
【0009】図3は、ディジタル信号であるM系列信号を送信信号とした場合の例である。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



(2) 技術常識Bの認定
引用文献6の前記(1)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は技術常識であると認める(以下「技術常識B」という。)。

<技術常識B>
「相互相関演算により距離を求める技術として、ディジタル信号であるM系列信号を送信信号とし、受信波形とτ時間遅延した参照波(送信波形)との積の積分計算値を用いて、受信波形と送信波形の相互相関関数を求め、その関数値が最大となる遅延時間を伝播時間とすること。」


第5 対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明の「擬似ランダム変調量子セキュアライダー(PMQSL)システム」は、ライダーシステムであり、ライダー(Lidar)とは、一般に、レーザー光を照射して、その反射光の情報を基に対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術のことであるから、対象物の調査を行うシステムであるといえる。
よって、本願発明と引用発明は、「調査システム」の発明である点で一致する。

(2)ア 引用発明においては、レーザーの出力が、擬似ランダム発生器からの変調シーケンス(M系列信号)に基づいて電気光学変調器(EOM1)によりパルス位置変調されるところ、この「パルス位置変調されたレーザーの出力」が、本願発明の「第1の時間パターンに構成される」「複数のパルス」に相当する。

イ 前記アを踏まえると、引用発明の「レーザー」、「電気光学変調器(EOM1)」及び「疑似ランダム発生器」は、本願発明の「第1の時間パターンに構成される」「複数のパルスを出力するように適合され」る、「エミッタ」に相当する。

ウ よって、本願発明と引用発明は、「エミッタであって、前記エミッタは複数のパルスを出力するように適合され、前記複数のパルスは第1の時間パターンに構成される、エミッタ」を備える点で一致する。

(3)ア 引用発明において、ターゲットから反射された異なる偏光を有する光子を、単一光子検出可能感度を有する四つのアバランシェフォトダイオード(APD)を使用して検出することは、パルス位置変調されたレーザー光のターゲットからの反射光を単一光子単位で検出することを意味するから、本願発明の「複数のパルスを1光子単位で受信[する]」ことに相当する。

イ 引用発明の「閾値付き光子計数器判別回路」は、アバランシェフォトダイオード(APD)の出力電気パルスを判断するのに用いられ、前記APDの出力が閾値よりも高い場合、コード1とみなされ、そうでない場合、コード0が登録されるものであるから、閾値付き光子計数器判別回路から計算機に入力される信号は、コード1とコード0から成る信号列であり、「受信シーケンス」であると認められる。
そして、この「コード1とコード0から成る信号列」(受信シーケンス)は、本願発明の「デジタル出力パターン」に相当する。

ウ 引用発明の「アバランシェフォトダイオード(APD)」及び「閾値付き光子計数器判別回路」を有する「受信システム」は、本願発明の「受信器」に相当する。

エ よって、本願発明と引用発明は、「前記複数のパルスを1光子単位で受信しデジタル出力パターンを生成するように適合された受信器」を備える点で一致する。

(4)ア(ア) 引用発明は、古典的なランダム変調方法を単一光子量子鍵配送(QKD)プロトコルと組み合わせたものであり、ターゲットの距離は、基準シーケンスと受信シーケンスとの間の相互相関演算を通じて抽出するものである。

(イ) ここで、このような古典的なランダム変調方法を用いた相互相関演算により距離を求める技術として、ディジタル信号であるM系列信号を送信信号とし、受信波形とτ時間遅延した参照波(送信波形)との積の積分計算値を用いて、受信波形と送信波形の相互相関関数を求め、その関数値が最大となる遅延時間を伝播時間とすることは、前記第4の3(2)に技術常識Bとして示したとおり、本願優先日前において技術常識である。

(ウ) 前記技術常識Bを踏まえると、引用発明において、疑似ランダム発生器からの信号が、電気光学変調器(EOM1)に出力されるとともに、計算機にも出力されているから、疑似ランダム発生器からの七段のM系列の変調シーケンスは、計算機において、ターゲットの距離を抽出するための基準シーケンスとしても利用されていることは明らかである。
また、前記(3)イにおいて検討したとおり、ターゲットにより反射された信号は、コード1とコード0から成る信号列(受信シーケンス)として計算機に入力される。
そして、基準シーケンスと受信シーケンスとの間の相互相関演算は、計算機において行われていることは明らかである。

イ(ア) ここで、引用発明の「基準シーケンス」は、前記ア(ウ)のとおり、疑似ランダム発生器からの七段のM系列の変調シーケンスが計算機においてターゲットの距離を抽出するために利用されるものであり、「基準シーケンス」と「変調シーケンス」は実質的に同じものであるといえるから、前記(2)の検討を踏まえると、引用発明の「基準シーケンス」は、本願発明の「第1の時間パターン」に相当する。

(イ) また、前記(3)イの検討を踏まえると、引用発明の「受信シーケンス」は、本願発明の「デジタル出力パターン」に相当する。

(ウ) よって、引用発明の「基準シーケンスと受信シーケンスとの間の相互相関演算」を行う「計算機」は、本願発明の「前記第1の時間パターンと前記デジタル出力パターンとの間の相関をとって、相関があるパターンを出力するように適合された相関器」に相当する。

ウ したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1の時間パターンと前記デジタル出力パターンとの間の相関をとって、相関があるパターンを出力するように適合された相関器」を備える点で一致する。

(5)ア 引用発明は、偏光変調モデルを介して光子の水平、対角、垂直及び逆対角(|H>、|D>、|V>及び|A>)偏光状態を生成し、この偏光変調モデルは、偏光子、電気光学変調器(EOM2)及び四分の一波長板(λ/4)を含むものである。

イ 引用発明は、古典的なランダム変調方法を単一光子量子鍵配送(QKD)プロトコルと組み合わせたものであり、当該プロトコルが前記偏光変調モデルにより実現されるものであることは明らかである。
そして、前記「偏光変調モデル」が、単一光子量子鍵配送(QKD)プロトコルに基づいた、光子の水平、対角、垂直及び逆対角(|H>、|D>、|V>及び|A>)偏光状態を生成しているところ、|H>、|D>、|V>、|A>という記号は、単一光子の量子力学的な状態を特に偏光状態に着目して区別したものであり、ヒルベルト空間における状態ベクトル(いわゆるディラックのブラケット記号により表記されたケットベクトル)を意味することは明らかである。
すなわち、引用発明では、量子力学的にみて偏光状態が異なることを表すように各記号を割り当てるという意味で符号化を行っているといえる。
そして、このようなQKDプロトコルによる符号化を行う構成を「エンコーダ」と呼び、復号化を行う構成を「デコーダ」と呼ぶことは、前記第4の2(3)に技術常識Aとして示したとおり、本願優先日前において技術常識である。

ウ よって、前記技術常識Aを踏まえると、引用発明において、電気光学変調器(EOM1)によって変調されたパルスに対して、光子の水平、対角、垂直及び逆対角(|H>、|D>、|V>及び|A>)偏光状態を生成する「偏光変調モデル」は、偏光状態という量子情報を用いて変調パルスを符号化しているといえるから、本願発明の「量子情報を用いて前記複数のパルスを符号化するように適合されるエンコーダ」に相当する。

エ したがって、本願発明と引用発明は、「エンコーダをさらに備え、前記エンコーダは、量子情報を用いて前記複数のパルスを符号化するように適合され[る]」点で一致する。

(6)ア 前記(4)において示したとおり、引用発明の「計算機」において、疑似ランダム発生器からの七段のM系列の変調シーケンスである基準シーケンスと、ターゲットにより反射された信号である受信シーケンスとの相互相関演算を行っているところ、相互相関演算を通じてターゲットの距離を抽出するためには、偏光状態という量子情報を用いて符号化された変調パルスを計算機において復号化していることは明らかである。

イ よって、前記(5)に示した技術常識Aを踏まえると、前記「計算機」は、本願発明の「前記量子情報を復号するように適合されるデコーダ」に相当する。

ウ したがって、本願発明と引用発明は、「前記量子情報を復号するように適合されたデコーダをさらに備える」点で一致する。

(7) 以上のとおり、本願発明と引用発明は、全ての点において一致するから、本願発明は引用文献3に記載された発明である。また、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

2 請求人の主張について
(1) 請求人の主張
ア 請求人は意見書において、概略次の主張をしている。

本願の請求項1は、令和3年8月17日付けの拒絶理由通知において示された「拒絶の理由を発見しない請求項」のうち、請求項17が請求項1に従属する請求項そのままの表現に補正したものである。
したがって、本願発明は、本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

イ また、請求人は上申書において、概略次の主張をしている。

引用例3には、例えば、現請求項1に含まれる受信器は記載されていない。すなわち、引用例3には「前記複数のパルスを一光子単位で受信しデジタル出力パターンを生成するように適合された受信器であって、一又は複数の光子が検出される場合に、前記デジタル出力パターンは、二値であり、かつ一方の値は一定値を示す正の出力である」ことは記載がない。
また、引用例3には「量子情報を用いて前記複数のパルスを符号化するように適合されるエンコーダ」「前記量子情報を復号するように適合されるデコーダ」の記載もない。例えば、引用例3には「パルスを符号化する」記載はない。さらに、引用例3には「量子情報を復号する」する記載もない。

(2) 請求人の主張についての検討
ア 請求人の意見書における主張を検討する。
請求人主張のように、令和3年8月17日付けの拒絶理由通知においては、「請求項(17−19)に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。」と記載されている。
しかしながら、当審拒絶理由は、令和3年8月17日付けで通知した時点では発見しなかったものの、その後の審判手続において発見した拒絶理由に該当し、令和5年2月17日付けで、新たに発見された拒絶理由として通知されたものであり、請求人には、期間を指定して当審拒絶理由について意見書及び手続補正書を提出する機会が与えられている。
要するに、令和3年8月17日付けの拒絶理由通知に記載された事項は、その時点では、本願発明が拒絶理由を有しないということに止まり、その後の審判手続においても、本願発明が拒絶理由を有しないということまでを意味するものではないので、請求人の前記主張は認められない。

イ 請求人の上申書における主張を検討する。
請求人は、要するに、引用発明において、本願発明の「受信器」、「エンコーダ」及び「デコーダ」に相当する構成を備えないと主張しているところ、引用発明において、当該構成を備えることは、前記1の(3)、(5)及び(6)において示したとおりである。
また、引用発明において、閾値付き光子計数器判別回路から計算機に入力される信号が「コード1とコード0から成る信号列」の「受信シーケンス」であることは、前記1(3)において検討したとおりであるから、本願発明の「受信器」に相当する構成が受信するデジタル出力パターン(受信シーケンス)が、二値であり、かつ一方の値は一定値を示す正の出力であることは明らかである。

(3) 小括
したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献3に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するものであるから、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-04-28 
結審通知日 2023-05-09 
審決日 2023-05-29 
出願番号 P2019-199901
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G01S)
P 1 8・ 121- WZ (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱野 隆
濱本 禎広
発明の名称 調査システムおよび方法  
代理人 弁理士法人鈴榮特許綜合事務所  

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