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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61C |
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管理番号 | 1400168 |
総通号数 | 20 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-07-26 |
確定日 | 2023-07-20 |
事件の表示 | 特願2019−181299「歯科用ハンドピース」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021− 53258〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、令和元年10月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年11月18日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 1月20日 :意見書、手続補正書の提出 令和 4年 5月 6日付け:拒絶査定 令和 4年 7月26日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 4年 8月18日 :手続補正書(方式)の提出 令和 4年12月13日 :特許請求の範囲の請求項1の記載について 当審より請求人への問合せ 令和 5年 1月 4日 :請求人より前記問合せに対する見解の提出 (応対記録を参照) 第2 令和 4年 7月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 4年 7月26日にされた手続補正(令和 4年 8月18日に提出された手続補正書(方式)により補正されている。以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1) 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所であり、当審が付与した。)。 「【請求項1】 利用者が保持する本体部と、前記本体部と連接するヘッド部とで構成された歯科用ハンドピースであって、 前記ヘッド部には、 施術対象部位を施術する切削工具を保持するとともに、回転駆動する駆動部の回転に基づいて回転し、前記切削工具を回転させる工具回転機構が備えられ、 前記工具回転機構の回転速度は、前記駆動部の回転速度の少なくとも5.5倍以上であり、 前記本体部には、 前記駆動部の回転が伝達される第1回転軸と、前記第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、前記第2回転軸の回転が伝達される第3回転軸とが備えられ、 前記第1回転軸と前記第2回転軸との間には、前記第1回転軸の回転を前記第2回転軸へ伝達する第1歯車機構が備えられ、 前記第2回転軸と前記第3回転軸との間には、前記第2回転軸の回転を前記第3回転軸へ伝達する第2歯車機構が備えられ、 前記第3回転軸と前記工具回転機構との間には、前記第3回転軸の回転を前記工具回転機構へ伝達する第3歯車機構が備えられ、 前記第1歯車機構は、 前記第2回転軸の回転速度が、第1回転軸に伝達された前記駆動部の回転速度の1.64〜4.50倍となるように、前記駆動部の回転を前記第2回転軸へ伝達し、 前記第2歯車機構は、 前記第3回転軸の回転速度が、前記第2回転軸の回転速度の1.00〜2.43倍となるように、前記駆動部の回転を前記第3回転軸へ伝達し、 前記第3歯車機構は、 前記工具回転機構の回転速度が、前記第3回転軸の回転速度の0.80〜2.00倍となるように、前記駆動部の回転を前記工具回転機構へ伝達し、前記切削工具を回転させ、 前記第2歯車機構は、 回転を伝達する側の内歯車と、回転が伝達される側の前記内歯車よりも径小である外歯車とで構成され、 前記外歯車は、回転軸方向が前記内歯車の回転軸方向に対して所定角度で傾斜し、 前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された 歯科用ハンドピース。」 (2) 本件補正前の、令和 4年 1月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 利用者が保持する本体部と、前記本体部と連接するヘッド部とで構成された歯科用ハンドピースであって、 前記ヘッド部には、 施術対象部位を施術する切削工具を保持するとともに、回転駆動する駆動部の回転に基づいて回転し、前記切削工具を回転させる工具回転機構が備えられ、 前記工具回転機構の回転速度は、前記駆動部の回転速度の少なくとも5.5倍以上であり、 前記本体部には、 前記駆動部の回転が伝達される第1回転軸と、前記第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、前記第2回転軸の回転が伝達される第3回転軸とが備えられ、 前記第1回転軸と前記第2回転軸との間には、前記第1回転軸の回転を前記第2回転軸へ伝達する第1歯車機構が備えられ、 前記第2回転軸と前記第3回転軸との間には、前記第2回転軸の回転を前記第3回転軸へ伝達する第2歯車機構が備えられ、 前記第3回転軸と前記工具回転機構との間には、前記第3回転軸の回転を前記工具回転機構へ伝達する第3歯車機構が備えられ、 前記第1歯車機構は、 前記第2回転軸の回転速度が、第1回転軸に伝達された前記駆動部の回転速度の1.64〜4.50倍となるように、前記駆動部の回転を前記第2回転軸へ伝達し、 前記第2歯車機構は、 前記第3回転軸の回転速度が、前記第2回転軸の回転速度の1.00〜2.43倍となるように、前記駆動部の回転を前記第3回転軸へ伝達し、 前記第3歯車機構は、 前記工具回転機構の回転速度が、前記第3回転軸の回転速度の0.80〜2.00倍となるように、前記駆動部の回転を前記工具回転機構へ伝達し、前記切削工具を回転させ、 前記第2歯車機構は、 回転を伝達する側の内歯車と、回転が伝達される側の前記内歯車よりも径小である外歯車とで構成され、 前記外歯車は、回転軸方向が前記内歯車の回転軸方向に対して所定角度で傾斜し、 前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部から基端側且つ径外側に突出するように、略楕円体状に構成された 歯科用ハンドピース。」 2 本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部から基端側且つ径外側に突出するように、略楕円体状に構成された」を「前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された」とすることにより、「外歯車の歯」が「基端側且つ径外側に突出」する「略円筒状の円筒部」の箇所を該円筒部の「基端部」と特定する限定を付加するとともに、「略楕円体状に構成された」「外歯車の歯」が「基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような」略楕円体状であると特定する限定を付加したものである。よって、本件補正は、特許請求の範囲を減縮するものである。さらに、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか)について、以下、検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)のとおりである。 (2) 引用文献の記載 ア 引用文献1 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である特開平10−24052号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(「…」は省略を表し、下線は当審が付与した。以下同様である。)。 a 「【0002】 【従来の技術】図4は、従来の歯科用マイクロモータハンドピースの一例を説明するための分解外観図で、図中、1はマイクロモータ(図示せず)を内装したモータ部、2は該電動機の電源線等を内装したホース、3はマイクロモータの回転軸を回転の自在に内装したガイド部、4はガイド部3に連結される回転軸(図示せず)を回転自在に内装したシャンク部、5はチャック機構を具備した回転機構が内装されているヘッド部で、前記モータ部1に内装されたマイクロモータの回転は、ガイド3内の回転軸,シャンク部4内の回転軸及びヘッド部5の駆動軸6を通してヘッド部5内の前記回転機構に伝達される。該回転機構は、前述のように、チャック機構を有し、該チャック機構にて切削バー7等を着脱自在に保持し、モータ部1内のマイクロモータにて該切削バー7を回転して、歯牙の切削等を行っている。」 b 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】上述のように、歯科用マイクロモータハンドピースにおいては、切削バー7を高速回転させて歯牙の切削等を行っている。しかしタービンに比べると、その切削性は落ちる。それは、マイクロモータハンドピースの回転数がタービンの回転数に比べて低いためである。そのため、最近では、増速ギヤー等を用いて、切削バーを20万〜30万の回転数(rpm)で高速回転させることが提案されている。」 c 「【0007】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例を説明するための要部(ヘッド部)断面構成図で、図中、5はヘッド部、6は駆動軸、7は切削バーで、これらヘッド部5,駆動軸6及び切削バー7は、図4に示した従来技術に対応して示してある。」 d 「【0013】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、マイクロモータハンドピースにおいて、…従って、過度に加熱されたヘッド部が患者の唇等に触れることによって、患者が急激に動いたりする心配がなく、また、患者が火傷等する心配もなく、ドクターは安心して治療に専念することができる。」 e 「【図1】 」 f 「【図4】 」 (イ) 上記(ア)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「マイクロモータを内装したモータ部1と、前記マイクロモータの回転軸を回転の自在に内装したガイド部3と、前記ガイド部3に連結される回転軸を回転自在に内装したシャンク部4と、チャック機構を具備した回転機構が内装されているヘッド部5とで構成された歯科用マイクロモータハンドピースであって、 前記モータ部1に内装されたマイクロモータの回転は、前記ガイド3内の回転軸、前記シャンク部4内の回転軸及び前記ヘッド部5の駆動軸6を通して前記ヘッド部5内の前記回転機構に伝達され、 前記ヘッド部5には、歯牙の切削等を行う切削バー7を着脱自在に保持するチャック機構を具備し、前記モータ部1内のマイクロモータにて該切削バー7を回転する回転機構が内装され、 マイクロモータハンドピースの回転数がタービンの回転数に比べて低いため、増速ギヤー等を用いて、切削バー7を20万〜30万の回転数(rpm)で高速回転させる 歯科用マイクロモータハンドピース。」 イ 引用文献2 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である特開2011−217954号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 a 「【0025】 [全体構成] 図1、図2、及び図3に示すように、本発明の実施の形態に係る医科歯科用ハンドピース(以下、「ハンドピース」という。)1はコントラアングル型ハンドピースである。ハンドピース1は、図の左側に表されたヘッド2と図の右側に表されたグリップ3を有する。ヘッド2は、種々の切削工具50が着脱自在に装着される部位である。グリップ3は、ハンドピース1を使用して医科治療又は歯科治療を行う術者(歯科医、歯科衛生士)に把持される逆「へ」の字形状の部位で、接続部側外筒部4と該接続部側外筒部4の先端側に連接されたヘッド部側外筒部5を有する。」 b 「【0026】 ヘッド2は、中空筒状のハウジング10を有する。ハウジング10の上部開口は着脱自在なキャップ11で塞がれている。ハウジング10の内側には、ヘッド中心軸9を中心に切削工具50を保持するチャック機構付のロータ12と、ロータ12を回転可能に支持するベアリング13,14が収容されている。ロータ12は、円筒形をしており、その下部外周面に、ヘッド中心軸9を中心とする円周に沿って多数の歯(ギア)を配置した傘歯車(以下、「ロータギア」という。)15が一体的に形成されている。 【0027】 ヘッド2は、ハウジング10と一体的に形成されて接続部側に向かって伸びる連結部16を備えており、この連結部16にグリップ3が着脱自在に連結されている。」 c 「【0029】 [第1の回転伝達部100] 第1の回転伝達部100は、第1の回転軸101を有する。第1の回転軸101は、グリップ3の接続部側中心軸6に沿って配置された第1のシャフト102を有する。第1のシャフト102は、2つの中空シャフト部−接続部側シャフト部103と該接続部側シャフト部103の先端側に外装されたヘッド部側シャフト部104−を有する。」 d 「【0030】 ヘッド部側シャフト部104の先端側は径方向外側に拡大して形成された第1フランジ部111と、該フランジ部111の外周端部をヘッド部側に伸ばして形成された第2フランジ部112を有し、該第2フランジ部112の後端側に内歯車(以下、「ドライブギア」という。)113が形成されている。」 e 「【0031】 [第2の回転伝達部200] 第2の回転伝達部200は、中空の管状部材からなる第2の回転軸201を有する。第2の回転軸201は、ヘッド部側位置決め部材24のヘッド部側内腔27に、ヘッド部側軸受202と接続部側軸受203を介して、回転自在に支持されている。図示するように、ヘッド部側位置決め部材24に形成されている接続部側内腔26とヘッド部側内腔27は、それらの中心軸が、同一平面(図2の横断面)上で所定の角度α3をもって交差するように形成されている。第2の回転軸201はまた、接続部側が径方向外側に向けて拡大して大径部204が形成され、さらに、大径部204の外周に外歯車(以下、「ピニオンギア」という。)205が形成されており、また、ヘッド部側が径方向外側に向けて拡大して大径部206が形成され、さらに、大径部206のヘッド部側に傘歯車(以下、「中間ドライブギア」という。)207が形成されている。図3に示すように、ピニオンギア205は、ヘッド部側中心軸7を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯208を有し、この歯208がドライブギア113の歯114と噛み合うようにしてある。また、図4に示すように、中間ドライブギア207は、ヘッド部側中心軸7を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯209を有する。」 f 「【0032】 [第3の回転伝達部300] 第3の回転伝達部300は、中空の管状部材からなる第3の回転軸301を有する。第3の回転軸301は、その中心軸をヘッド部側中心軸8に一致させてヘッド連結部16の内腔17に収容されており、ヘッド部側軸受302と接続部側軸受303により、ヘッド部側中心軸8を中心に回転可能に支持されている。第3の回転軸301はまた、接続部側を径方向外側に拡大して大径部304が形成され、さらに大径部304の外周に歯車(以下、「中間ドライブギア」という。)305が形成されており、ヘッド部側を径方向外側に拡大して大径部306が形成され、さらに大径部306の外周に歯車(以下、「フロントギア」という。)307が形成されている。図4に示すように、中間ドライブギア305は、ヘッド部側中心軸8を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯308を有し、この歯308が中間ドライブギア207の歯209と噛み合うようにしてある。また、図2に示すように、フロントギア307は、ヘッド部側中心軸8を中心とする円周に沿って等ピッチに配置された多数の歯309を有し、この歯309がロータギア15と噛み合うようにしてある。」 g 「【0041】 ハンドピース1の使用時、その接続部側に、モータを内蔵した駆動部(図示せず)が矢印方向から連結され、モータの駆動軸が第1の回転軸101を構成する接続部側シャフト部103の端部に連結される。このとき、接続部側シャフト部103はヘリカルスプリング109によって接続部側に付勢されているので、モータの駆動軸に確実に圧接して連結される。したがって、駆動部のモータの回転は、第1の回転軸101、第2の回転軸201、第3の回転軸301を介してロータ12に伝達され、そこに装着された切削工具50を回転する。」 h 「【0042】 モータの回転数に対する切削工具50の回転数の比率(増速率)は、複数の歯車機構を構成しているギアの歯数に依存する。実施の形態では、ドライブギア113の歯数が“23”、ピニオンギア205の歯数が“5”、中間ドライブギア207の歯数が“11”、中間ドライブギア305の歯数が“8”、フロントギア307の歯数が“11”、ロータギア15の歯数が“12”に設計されている。したがって、モータの回転数は、第1の回転軸101から第2の回転軸201に回転を伝達する第1の歯車機構(ドライブギア113とピニオンギア205)1000で増加し、さらに、第2の回転軸201から第3の回転軸301に回転を伝達する第2の歯車機構(中間ドライブギア207,305)2000で更に増加し、そして、第3の回転軸301からロータ12に回転を伝達する第3の歯車機構(フロントギア307とロータギヤ15)3000で減少し、全体として、モータの回転数は4.15倍増速される。例えば、モータの回転数が40,000rpmの場合、回転数は第1の歯車機構1000で132,000rpmに増加し、第2の歯車機構2000で185,000rpmに増加し、最後に、第3の歯車機構3000で166,000rpmに調整される。…それ故、ヘッド2の小型化が図れ、歯牙切削時において人体の奥歯に治療工具50が届かない問題を解消できる使いやすいハンドピース1を提供できる。」 i 「【0050】 [歯車機構の特徴3] 図4に示すように、第2の歯車機構2000を構成する一方の中間ドライブギア207の第3のピッチ円錐230は、その頂点231が該中間ドライブギア207の接続部側にあって、第2の回転軸201の中心軸7上にある。また、第2の歯車機構2000を構成する他方の中間ドライブギア305の第4のピッチ円錐330も、その頂点331が同軸(中心軸29)上にあって上記第3のピッチ円錐230の頂点231と同じ位置にある。さらに、第4のピッチ円錐330が第3のピッチ円錐230に内接しており、第4のピッチ円錐330の底円332が第3のピッチ円錐230の底円232に内接している。そして、2つの中間ドライブギア207,305の歯面(特に、他方のドライブギアと噛み合う部分)は、頂点231,331から伸びる線の延長上に形成されている。したがって、第2の歯車機構2000を構成する2つのギア(中間ドライブギア207,305)はそれらの歯面が極めて良好に噛み合い、一方の中間ドライブギア207から他方の中間ドライブギア305に力が効率よく伝達される。」 j 「【0051】 なお、第2の回転軸201の中心軸7と第3の回転軸301の中心軸8(ヘッド部側中心軸8)の交角である軸角度α4は、90度以上で180度未満の範囲で設定される。実施の形態では、軸角度α4は約160度の鈍角に設定されている。」 k 「【0053】 図示しないが、同様に、第2の歯車機構2000、第3の歯車機構3000についても、それらを構成する従動側のギアの歯面を外側に凸状に突出した曲面とし、駆動側のギアの歯面をそれに対応する凹状曲面としてもよい。なお、従動側ギアの凸状歯面はインボリュート歯形であってもよい。」 l 「【図2】 」 m 「【図4】 」 (イ) 上記(ア)から、次の点が理解できる。 a 上記(ア)a及びhより、切削工具又は治療工具50は、歯牙を切削する。 b 上記(ア)hより、ドライブギア113の歯数が23、ピニオンギア205の歯数が5であることから、第1の回転軸101から第2の回転軸201に回転を伝達する第1の歯車機構(ドライブギア113とピニオンギア205)1000は、前記第2の回転軸201の回転数が、第1の回転軸101に伝達された駆動部の回転数の4.60(=23/5)倍となるように、前記駆動部の回転を前記第2の回転軸201へ伝達する。 c 上記(ア)hより、中間ドライブギア207の歯数が11、中間ドライブギア305の歯数が8であることから、第2の回転軸201から第3の回転軸301に回転を伝達する第2の歯車機構(中間ドライブギア207、305)2000は、前記第3の回転軸301の回転数が、前記第2の回転軸201の回転数の1.375(=11/8)倍となるように、前記駆動部の回転を前記第3の回転軸301へ伝達する。 d 上記(ア)hより、フロントギア307の歯数が11、ロータギア15の歯数が12であることから、第3の回転軸301からロータ12に回転を伝達する第3の歯車機構(フロントギア307とロータギヤ15)3000は、前記ロータ12の回転数が、前記第3の回転軸301の回転数の0.917(=11/12)倍となるように、前記駆動部の回転を前記ロータ12へ伝達する。 e 上記(ア)g及びlより、モータを内蔵した駆動部が上記(1)lの矢印方向から連結され、モータの駆動軸が第1の回転軸101を構成する接続部側シャフト部103の端部に連結され、前記接続部側シャフト部103は前記モータの駆動軸に確実に圧接して連結されるから、第1の回転軸101は、駆動部のモータの駆動軸と同じ回転数で回転する。この点と上記b、c及びdを考慮すると、ロータ12の回転数は、前記駆動部の回転数の5.80(=4.60×1.375×0.917)倍となる。 f 上記(ア)i及びmより、中間ドライブギア207は内歯車であり、中間ドライブギア305は中間ドライブギア207よりも径小の外歯車である。 g 上記(ア)e、f、i、l及びmより、中間ドライブギア207の回転軸方向は、第2の回転軸201の中心軸7と一致し、中間ドライブギア305の回転軸方向は、第3の回転軸301の中心軸8と一致する。そして、上記(ア)jより、中間ドライブギア305は、回転軸方向(第3の回転軸301の中心軸8)が中間ドライブギア207の回転軸方向(第2の回転軸201の中心軸7)に対して所定の軸角度α4で傾斜する。 h 上記(ア)f、l及びmより、中間ドライブギア305の歯308は、略円筒状の大径部304の基端部において、基端側且つ径外側に突出して構成されている。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)を総合すると、引用文献2には、術者に把持されるグリップ3と、前記グリップ3と連結するヘッド2とで構成され、前記ヘッド2には、歯牙を切削する切削工具50を保持するとともに、回転駆動する駆動部の回転に基づいて回転し、前記切削工具50を回転させるロータ12が備えられた医科歯科用ハンドピース1において、前記切削工具50の回転数を、前記駆動部の回転数より増速する機構として、次のもの(以下「引用文献2増速機構」という。)が記載されている。 「前記ロータ12の回転数は、前記駆動部の回転数の5.80倍であり、 前記グリップ3には、 前記駆動部の回転が伝達される第1の回転軸101と、前記第1の回転軸101の回転が伝達される第2の回転軸201と、前記第2の回転軸201の回転が伝達される第3の回転軸301とが備えられ、 前記第1の回転軸101と前記第2の回転軸201との間には、前記第1の回転軸101の回転を前記第2の回転軸201へ伝達する第1の歯車機構1000が備えられ、 前記第2の回転軸201と前記第3の回転軸301との間には、前記第2の回転軸201の回転を前記第3の回転軸301へ伝達する第2の歯車機構2000が備えられ、 前記第3の回転軸301と前記ロータ12との間には、前記第3の回転軸301の回転を前記ロータ12へ伝達する第3の歯車機構3000が備えられ、 前記第2の歯車機構2000は、 回転を伝達する側の内歯車である中間ドライブギア207と、回転が伝達される側の前記中間ドライブギア207よりも径小の外歯車である中間ドライブギア305とで構成され、 前記中間ドライブギア305は、回転軸方向が前記中間ドライブギア207の回転軸方向に対して所定の軸角度α4で傾斜し、 前記中間ドライブギア305の歯308は、略円筒状の大径部304の基端部において、基端側且つ径外側に突出して構成された機構。」 (3) 対比 ア 本件補正発明と引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「モータ部1」、「ガイド部3」及び「シャンク部4」は本件補正発明の「本体部」に相当し、以下同様に「ヘッド部5」は「ヘッド部」に、「歯科用マイクロモータハンドピース」は「歯科用ハンドピース」に、「切削バー7」は「切削工具」に、「マイクロモータ」は「駆動部」に、「回転機構」は「工具回転機構」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「歯牙の切削等を行う」は本件補正発明の「施術対象部位を施術する」に相当し、以下同様に「切削バー7を着脱自在に保持するチャック機構を具備し」は「切削工具を保持するとともに」に相当する。 さらに、引用発明では、「モータ部1に内装されたマイクロモータの回転は、ガイド3内の回転軸、シャンク部4内の回転軸及びヘッド部5の駆動軸6を通して前記ヘッド部5内の回転機構に伝達され」るから、前記「ヘッド部5」は、「マイクロモータの回転」が「ヘッド部5内の回転機構に伝達され」るように、「モータ部1」、「ガイド3」及び「シャンク部4」と連接している。したがって、引用発明の「ヘッド部5」は、本件補正発明の「ヘッド部」と、「本体部と連接する」点で一致する。 また、引用発明の「回転機構」は、「モータ部1内のマイクロモータにて該切削バー7を回転する」から、本件補正発明の「工具回転機構」と、「回転駆動する駆動部の回転に基づいて回転し、前記切削工具を回転させる」点で一致する。 イ 一致点 したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致している。 「本体部と、前記本体部と連接するヘッド部とで構成された歯科用ハンドピースであって、 前記ヘッド部には、 施術対象部位を施術する切削工具を保持するとともに、回転駆動する駆動部の回転に基づいて回転し、前記切削工具を回転させる工具回転機構が備えられた 歯科用ハンドピース。」 ウ 相違点 また、本件補正発明と引用発明とは、次の(相違点A)〜(相違点D)で相違している。 (相違点A) 本件補正発明の「本体部」は、「利用者が保持する」のに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。 (相違点B) 本件補正発明では、「工具回転機構の回転速度は、駆動部の回転速度の少なくとも5.5倍以上であ」るのに対し、引用発明では、「マイクロモータハンドピースの回転数がタービンの回転数に比べて低いため、増速ギヤー等を用いて、切削バー7を20万〜30万の回転数(rpm)で高速回転させる」ものの、「切削バー7を着脱自在に保持するチャック機構を具備し、モータ部1内のマイクロモータにて該切削バー7を回転する回転機構」の「回転数」が「マイクロモータ」の「回転数」に対してどの程度であるかについて不明である点。 (相違点C) 本件補正発明では、「本体部には、駆動部の回転が伝達される第1回転軸と、前記第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、前記第2回転軸の回転が伝達される第3回転軸とが備えられ、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間には、前記第1回転軸の回転を前記第2回転軸へ伝達する第1歯車機構が備えられ、前記第2回転軸と前記第3回転軸との間には、前記第2回転軸の回転を前記第3回転軸へ伝達する第2歯車機構が備えられ、前記第3回転軸と前記工具回転機構との間には、前記第3回転軸の回転を前記工具回転機構へ伝達する第3歯車機構が備えられ、前記第1歯車機構は、前記第2回転軸の回転速度が、第1回転軸に伝達された前記駆動部の回転速度の1.64〜4.50倍となるように、前記駆動部の回転を前記第2回転軸へ伝達し、前記第2歯車機構は、前記第3回転軸の回転速度が、前記第2回転軸の回転速度の1.00〜2.43倍となるように、前記駆動部の回転を前記第3回転軸へ伝達し、前記第3歯車機構は、前記工具回転機構の回転速度が、前記第3回転軸の回転速度の0.80〜2.00倍となるように、前記駆動部の回転を前記工具回転機構へ伝達し、前記切削工具を回転させ」るのに対し、引用発明では、「マイクロモータハンドピースの回転数がタービンの回転数に比べて低いため、増速ギヤー等を用いて、切削バー7を20万〜30万の回転数(rpm)で高速回転させる」ものの、その具体的な機構について不明である点。 (相違点D) 本件補正発明では、「前記第2歯車機構は、回転を伝達する側の内歯車と、回転が伝達される側の前記内歯車よりも径小である外歯車とで構成され、前記外歯車は、回転軸方向が前記内歯車の回転軸方向に対して所定角度で傾斜し、前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された」のに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。 (4) 判断 ア (相違点A)について 上記(相違点A)について検討する。 上記(2)ア(ア)a及びdによれば、「ドクター」は、引用発明の「歯科用マイクロモータハンドピース」を用いて、「歯牙の切削等」の「治療」を行う。 そして、ドクター等の利用者が歯科用ハンドピースを用いて施術対象部位を施術する際、当該利用者が歯科用ハンドピースを保持することは、本願の出願時の技術常識であるから、引用発明の「歯科用マイクロモータハンドピース」は、利用者が保持する部分を備えることは明らかである。さらに、本体部と、前記本体部と連接するヘッド部とで構成された歯科用ハンドピースにおいて、前記本体部を利用者が保持することは、例えば引用文献2に記載されているように(上記(2)イ(ア)aで摘記したように、ヘッド2と連結するグリップ3は、術者に把持される部位である。)、本願の出願時の技術常識であるから、この点に鑑みれば、引用発明の「歯科用マイクロモータハンドピース」を用いる「ドクター」が、「ヘッド部5」に連接する「シャンク部4」を保持することは、明らかである。 したがって、上記(相違点A)は実質的な相違点ではない。 イ (相違点B)及び(相違点C)について 上記(相違点B)及び(相違点C)について検討する。 引用文献2には、上記(2)イ(ウ)のとおり、引用文献2増速機構が記載されている。そして、引用文献2に記載された技術事項の「術者」は本件補正発明の「利用者」に相当し、以下同様に「グリップ3」は「本体部」に、「連結する」は「連接する」に、「ヘッド2」は「ヘッド部」に、「歯牙を切削する」は「施術対象部位を施術する」に、「切削工具50」は「切削工具」に、「ロータ12」は「工具回転機構」に、「医科歯科用ハンドピース1」は「歯科用ハンドピース」に、「回転数」は「回転速度」に、「第1の回転軸101」は「第1回転軸」に、「第2の回転軸201」は「第2回転軸」に、「第3の回転軸301」は「第3回転軸」に、「第1の歯車機構1000」は「第1歯車機構」に、「第2の歯車機構2000」は「第2歯車機構」に、「第3の歯車機構3000」は「第3歯車機構」に、「中間ドライブギア207」は「内歯車」に、「中間ドライブギア305」は「外歯車」に、「所定の軸角度α4」は「所定角度」に、「中間ドライブギア305の歯308」は「外歯車の歯」に、「大径部304」は「円筒部」にそれぞれ相当する。 そして、引用発明と引用文献2に記載された「医科歯科用ハンドピース1」とは、本体部と、前記本体部と連接するヘッド部とで構成され、前記ヘッド部には、施術対象部位を施術する切削工具を保持するとともに、回転駆動する駆動部の回転に基づいて回転し、前記切削工具を回転させる工具回転機構が備えられた歯科用ハンドピースである点で共通する。また、引用発明の「増速ギヤー等」と引用文献2増速機構とは、切削工具を高速回転させるという共通の機能を持つ。 してみると、引用発明の「マイクロモータハンドピースの回転数がタービンの回転数に比べて低いため、増速ギヤー等を用いて、切削バー7を20万〜30万の回転数(rpm)で高速回転させる」ための具体的な構成として、引用文献2増速機構を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。その際、第1歯車機構、第2歯車機構及び第3歯車機構のそれぞれの増速率は、工具回転機構の回転速度を駆動部の回転速度の5.80倍とするために、適宜設定し得た値にすぎず、これらの増速率をそれぞれ本件補正発明のように「1.64〜4.50倍」、「1.00〜2.43倍」及び「0.80〜2.00倍」の範囲とすることは、当業者が通常設定し得た程度のものであって、当業者が格別の創意を要することなく想到し得た程度のことである。(実際、上記(2)イ(ア)hに示すように、引用文献2には「例えば、モータの回転数が40,000rpmの場合、回転数は第1の歯車機構1000で132,000rpmに増加し、…」と記載されており、これによれば、引用文献2には、第1の歯車機構1000の増速率、すなわち、第1の回転軸101に伝達された駆動部の回転数(40,000rpm)に対する第2の回転軸201の回転数(132,000rpm)の比率を3.30(=132000/40000)倍と設定する例が記載されている。また、上記(2)イ(イ)c及びdに示すように、引用文献2には、第2の歯車機構2000の増速率、すなわち、第2の回転軸201の回転数に対する第3の回転軸301の回転数の比率を1.375倍と設定し、第3の歯車機構3000の増速率、すなわち、第3の回転軸301の回転数に対するロータ12の回転数の比率を0.917倍とする例が記載されている。) ウ (相違点D)について 上記(相違点D)について検討する。 本件補正発明の「前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された」との事項に関し、令和 4年12月13日に当審から請求人に対し下記(ア)〜(エ)に示す点の見解を求めたところ、令和 5年 1月4日に請求人から以下の見解が示された。 (ア) 「略円筒状の円筒部の基端部」とはどこを指すのか。 「出願当初明細書の段落[0062]の「詳述すると、ミドルギヤ41は、図9乃至図11に示すように、略円筒状の円筒部41aと、ミドルギヤ歯41bとが備えられ、ミドルギヤ歯41b同士の間にミドルギヤ溝41cが形成されている。」及び段落[0063]の「ミドルギヤ歯41bは、図10に示すように、円筒部41aの外表面から基端側B且つ径外側に突出するように、略楕円体状に形成されている。このように、略楕円体状に形成されたミドルギヤ歯41bは、円筒部41aの外周面に対して、周方向に所定間隔を隔てて、等間隔に複数配置している。」並びに図9及び図10に示すように、 『略円筒状の円筒部41aの基端部』であります 」 (イ) 「基端から基端とは逆方向へ円弧」の「円弧」とはどこを指すのか。 「以下の図9拡大図及び図10で図示します。 」 (ウ) 「略楕円体状」とはどのような形なのか。 「出願当初明細書の段落[0063]の「ミドルギヤ歯41bは、図10に示すように、円筒部41aの外表面から基端側B且つ径外側に突出するように、略楕円体状に形成されている。・・・。」並びに図9に示すように、 ミドルギヤ歯41bの側面視形状が、基端側Bに向かって径外側に大きく膨らんでいる様を特定しています。 」 (エ) 「前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された」当該構成によってどのような作用を奏するのか。 「本願発明の歯科用ハンドピースは、右図(本審決においては下図)に示すように、口腔内に挿入して治療しやすいように所定角度傾斜しています。 そして、ご指摘のミドルギヤ41と、ベベルギヤ34とが噛合する第2歯車機構10Bは、下図に示すように所定角度傾斜しながら、段落【0129】に記載するように、1.00倍〜2.43倍に増速回転します。 このように、所定角度を持って噛合する歯車機構で増速させるためには、波数が増えて噛み合いにくくなるところ、前記外歯車の歯を、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に形成することで、滑らかに噛合して増速回転することができます。 」 上記見解によれば、本件補正発明において、第2歯車機構の外歯車の歯が、「略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された」とは、第2歯車機構の外歯車の歯が、略円筒状の円筒部の基端部において基端側且つ径外側に突出し、歯面と歯先面との境界線(歯面に垂直方向に見たときの歯先の稜線)が歯幅方向に描いた円弧であり、歯面に垂直方向に見たときの形状が歯幅方向で径外側に膨らんでいる略楕円形状であることを意味する。 そして、上記イのとおり、引用発明の「マイクロモータハンドピースの回転数がタービンの回転数に比べて低いため、増速ギヤー等を用いて、切削バー7を20万〜30万の回転数(rpm)で高速回転させる」ための具体的な構成として、引用文献2増速機構を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。その際、歯車機構において、滑らかに噛合させることは、周知の要請であり、この周知の要請に基づいて、第2歯車機構の外歯車の歯の形状を構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。そして、前記外歯車の歯のうち、内歯車と噛合しない部分の形状は、第2歯車機構の噛み合いに影響を与えるものでなく、滑らかに噛合して増速回転するという作用にも影響するものでなく、適宜なし得た設計事項にすぎない。また、前記外歯車のうち、前記内歯車と噛合する部分の形状は、前記周知の要請に基づいて設計されるところ、当該設計は、当然に、前記外歯車の回転軸方向が前記内歯車の回転軸方向に対して所定角度で傾斜していることや前記内歯車の歯の形状に鑑みてなされるものである。そして、これらの設計によって、前記外歯車の歯の歯面と歯先面との境界線(歯面に垂直方向に見たときの歯先の稜線)を、丸みを帯びた形状すなわち歯幅方向に描いた円弧とし、歯面に垂直方向に見たときの形状を、歯幅方向で径外側に膨らんでいる略楕円形状とすることは、当業者がなし得た設計範囲から逸脱するものではない。 (5) 本件補正発明の効果について さらに、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項の奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (6) 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。したがって、本件補正は、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 4年 7月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 4年 1月20日にされた手続補正により補正された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部の基端部において、基端側且つ径外側に突出し、基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような、略楕円体状に構成された」との特定事項を「前記外歯車の歯は、略円筒状の円筒部から基端側且つ径外側に突出するように、略楕円体状に構成された」とするものであり、「外歯車の歯」が「基端側且つ径外側に突出」する「略円筒状の円筒部」の箇所を該円筒部の「基端部」と特定した限定を削除するとともに、「外歯車の歯」が「略楕円体状に構成された」点について「基端から基端とは逆方向へ円弧を描いたような」と特定した限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を限定したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2023-03-28 |
結審通知日 | 2023-04-04 |
審決日 | 2023-06-08 |
出願番号 | P2019-181299 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61C)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
井上 哲男 角田 貴章 |
発明の名称 | 歯科用ハンドピース |
代理人 | 永田 良昭 |
代理人 | 大田 英司 |
代理人 | 永田 元昭 |
代理人 | 北村 吉章 |
代理人 | 西村 弘 |