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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J
管理番号 1400374
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-04 
確定日 2023-08-08 
事件の表示 特願2021−547371「車両におけるバッテリの所望の出発温度」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月20日国際公開、WO2020/167324、令和4年2月28日国内公表、特表2022−516577、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)2月21日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2019年2月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和4年1月12日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和4年6月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和5年1月4日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
1.原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の概要は以下のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1ないし20に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1ないし6、8ないし13及び15ないし19に対し 引用文献1
請求項7、14及び20に対し 引用文献1及び引用文献2

引用文献1.国際公開第2013/38492号
引用文献2.特開2017−117614号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし請求項18に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は、令和5年1月4日の手続補正により適法に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項18に記載されたとおりものであるところ、本願発明1は、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「乗り物内のバッテリの温度を管理するためのシステムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合されたメモリであって、前記メモリは、前記プロセッサに命令を提供するように構成され、前記命令は、実行されたとき、前記プロセッサに、
トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定させ、少なくとも前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力させることであって、前記トリップ情報は、トリップ持続時間またはトリップ計画を含む、出力させることと、
温度制御システムを使用して前記バッテリの前記温度を前記所望の出発温度の方にもっていき、前記バッテリが前記所望の出発温度になると前記乗り物に前記トリップを開始させることを行わせるメモリと
を備える、システム。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定に引用された引用文献1(国際公開第2013/38492号)には、「車両の制御装置および制御方法」に関して、次の記載事項及び図示事項がある(下線部は当審が付した。以下同様。)。

ア 「[0001] 本発明は、車両の制御装置および制御方法に関し、特に、エンジン関連部品と蓄電装置とのうちの少なくともいずれか一方を暖機する技術に関する。」

イ 「[0006] 本発明の目的は、エネルギ効率を向上することである。」

ウ 「[0028] 図1を参照して、ハイブリッド車には、エンジン100と、第1モータジェネレータ110と、第2モータジェネレータ120と、動力分割機構130と、減速機140と、バッテリ150とが搭載される。なお、本実施の形態において説明されるハイブリッド車は、航続距離拡張機能を備えた電気自動車であってもよい。
[0029] エンジン100、第1モータジェネレータ110、第2モータジェネレータ120、バッテリ150は、ECU(Electronic Control Unit)170により制御される。ECU170は複数のECUに分割するようにしてもよい。」

エ 「[0044] バッテリ150は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。バッテリ150の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ150には、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120の他、車両の外部の電源から供給される電力が充電される。なお、バッテリ150の代わりにもしくは加えてキャパシタを用いるようにしてもよい。
[0045] バッテリ150の充電電力は、バッテリ150の温度に応じて定められる上限値以下に制限される。上限値は、バッテリ150の温度をパラメータとして有するマップから算出される。バッテリ150の温度は温度センサ152により検出され、温度を表す信号がECU170に入力される。
[0046] ハイブリッド車には、さらに、ナビゲーションシステム180が搭載される。利用者は、ナビゲーションシステム180に目的地および出発時刻を登録することが可能である。携帯電話、スマートフォンなどの携帯情報端末を用いて車外からナビゲーションシステム180に目的地および出発時刻が登録されてもよい。その他、ナビゲーションシステム180には、路面の勾配、標高、道路の長さ、各地点における過去の運転条件(車速、加速度、減速度、舵角、バッテリ150の充放電電力など)の種々の情報が記憶される。」

オ 「[0059] 本実施の形態においては、外部電源402から供給された電力は、バッテリ150の充電以外にも、バッテリ150の暖機またはエンジン100の暖機のために用いられる。一例として、ECU170は、第2モータジェネレータ120のみを駆動して車両が走行することが可能な距離(以下、EV(Electric Vehicle)走行範囲とも記載する)と、車両の現在地または出発地点から目的地までの距離とに応じて、外部から電力が供給されている間に、外部から供給された電力を用いて、エンジン関連部品とバッテリ150とのうちの少なくともいずれか一方を加熱する。」

カ 「[0062] さらに、ECU170は、エンジン関連部品またはバッテリ150を加熱するか否かを、EV走行範囲と目的地までの距離とに加えて、目的地までの走行パターンに応じて決定する。
[0063] 一例として、ECU170は、目的地までの走行パターンから、エンジン関連部品を加熱せずに、目的地に到着する前にエンジン100から発せられる熱によりエンジン100の暖機が完了するか否かを判断する。EV走行範囲より目的地までの距離が長く、かつ目的地に到着する前にエンジン100の暖機が完了しない場合において、外部から電力が供給されている間に外部から供給された電力を用いてエンジン関連部品が加熱される。
[0064] 同様に、ECU170は、目的地までの走行パターンから、バッテリ150を加熱せずに、目的地に到着する前にバッテリ150から発せられる熱によりバッテリ150の暖機が完了するか否かを判断する。EV走行範囲より目的地までの距離が長く、かつ目的地に到着する前にバッテリ150の暖機が完了しない場合において、外部から電力が供給されている間に外部から供給された電力を用いてバッテリ150が加熱される。
[0065] また、ECU170は、バッテリ150を加熱するか否かを、EV走行範囲と目的地までの距離とに加えて、さらに、バッテリ150を加熱するために消費される電力と、バッテリ150を加熱することによる回生電力の増大量とに応じて決定する。
[0066] 一例として、EV走行範囲より目的地までの距離が短く、かつ加熱するために消費される電力よりも、回生電力の増大量が大きいと、外部から供給された電力を用いて外部から電力が供給されている間にバッテリ150が加熱される。」

キ 「[0070] バッテリ150の加熱は、たとえば、バッテリ150からの放電によって実現される。一例として、第2モータジェネレータ120のU相コイルおよびV相コイルのみに電流を流すように第2インバータ220を制御することにより、バッテリ150から電力が放電され、バッテリ150の内部抵抗によってバッテリ150自体が発熱する。その後、残存容量が所望の値(たとえば100%)になるまでバッテリ150が再び充電される。
[0071] 目的地までの走行パターンは、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件(車速、加速度、減速度、舵角、バッテリ150の充放電電力など)の種々の情報を含む。これらの情報に基づき、車両の走行パワーが予測される。予測された走行パワーが前述したエンジン始動しきい値以上となる時間、すなわち、エンジン100が運転される時間が予測される。エンジン100が運転される時間および予測された走行パワーに基づき、エンジン100の冷却水の温度の推移が予測される。冷却水の予測温度がしきい値以上になる時刻が、目的地への予測到着時刻よりも早いと、目的地に到着する前にエンジン100から発せられる熱によりエンジン100の暖機が完了すると判断される。目的地に到着する前にエンジン100から発せられる熱によりエンジン100の暖機が完了するか否かを判断する方法はこれに限定されない。
[0072] また、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件(車速、加速度、減速度、舵角、バッテリ150の充放電電力など)の種々の情報から、バッテリ150からの放電電力および放電時間が予測される。予測された放電電力および放電時間から、バッテリ150の温度の推移が予測される。バッテリ150の予測温度がしきい値以上になる時刻が、目的地への到着予測時刻よりも早いと、バッテリ150から発せられる熱によりバッテリ150の暖機が完了すると判断される。目的地に到着する前にバッテリ150から発せられる熱によりバッテリ150の暖機が完了するか否かを判断する方法はこれに限定されない。」

ク 「[0078] 図5を参照して、ECU170が実行する処理について説明する。以下に説明する処理は、ハードウェアにより実行してもよく、ソフトウェアにより実行してもよく、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実行してもよい。
[0079] ステップ(以下ステップをSと略す)100にて、目的地と出発時刻とが取得される。S102にて、外部電源402から電力が供給中であるか否かが判断される。たとえば、電圧センサ182によって検出される電圧がしきい値以上であると、外部電源402から電力が供給中であると判断される。外部電源402から電力が供給中であると(S102にてYES)、S104にて、EV走行範囲よりも、目的地までの距離が短いか否かが判断される。
[0080] EV走行範囲よりも、目的地までの距離が短いと(S104にてYES)、S106にて、バッテリ150を加熱するために消費される電力が、バッテリ150を加熱することによる回生電力の増大量よりも大きいか否かが判断される。
[0081] 加熱するために消費される電力よりも、回生電力の増大量が大きいと(S106にてNO)、S108にて、外部から供給された電力を用いて、外部から電力が供給されている間にバッテリ150が加熱される。すなわち、出発前にバッテリ150が事前に暖機される。
[0082] 一方、EV走行範囲よりも、目的地までの距離が長いと(S104にてNO)、S110にて、バッテリ150を加熱することによって、EV走行範囲よりも、目的地までの距離が短くなるか否かが判断される。すなわち、バッテリ150を加熱することによって、EV走行範囲が伸びるか否かが判断される。EV走行範囲が伸びるか否かは、一例として、加熱後のバッテリ150の予測温度(たとえば所定の温度)での充電電力の上限値と、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件などを含む情報とから予測される。回生電力が増大した場合、EV走行範囲が伸びると判断される。回生電力の増大量から、EV走行範囲の拡大距離が予測される。
[0083] バッテリ150を加熱することによって、EV走行範囲よりも、目的地までの距離が短くなる場合(S110にてYES)、S108にて、外部から供給された電力を用いて、外部から電力が供給されている間にバッテリ150が加熱される。すなわち、出発前にバッテリ150が事前に暖機される。
[0084] バッテリ150を加熱しても、EV走行範囲より目的地までの距離が長いと(S110にてNO)、S112にて、エンジン関連部品を加熱せずに、目的地に到着する前にエンジン100から発せられる熱によりエンジン100の暖機が完了するか否かが判断される。目的地に到着する前にエンジン100の暖機が完了しない場合(S112にてNO)、S114にて、外部から電力が供給されている間に、外部から供給された電力を用いてエンジン関連部品が加熱される。すなわち、出発前にエンジン関連部品が事前に暖機される。
[0085] さらに、S116にて、バッテリ150を暖機せずに、目的地に到着する前にバッテリ150から発せられる熱によりバッテリ150の暖機が完了するか否かが判断される。目的地に到着する前にバッテリ150の暖機が完了しない場合(S116にてNO)、S118にて、外部から電力が供給されている間に、外部から供給された電力を用いてバッテリ150が加熱される。すなわち、出発前にバッテリ150が事前に暖機される。」

ケ 「図3



コ 「図5



(2)引用発明1
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「車両のバッテリ150を暖機する制御装置であって、
EV走行範囲と目的地までの距離に加えて、目的地までの走行パターンに応じて、前記車両の、前記バッテリ150を加熱するか否かを決定し、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件の種々の情報からバッテリ150の温度の推移を予測させることと、
外部から供給された電力を用いてバッテリ150を加熱することと
を備える、制御装置。」

2.引用文献2
原査定に引用された引用文献2(特開2017−117614号公報)には、「バッテリ暖機装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。

サ 「【0001】
本発明は、バッテリ暖機装置に係り、詳しくは、電気自動車において外部電源によるバッテリの充電とともにバッテリの暖機を行うバッテリ暖機制御技術に関する。」

シ 「【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電気自動車において、電費を抑えつつ車両の始動予定時刻までにバッテリの充電及び暖機を完了させることができるバッテリ暖機装置を提供することにある。」

ス 「【0025】
暖機制御部30bは、高電圧バッテリ12の充電開始時にPTCヒータ13及びウォータポンプ15を作動させて高電圧バッテリ12の暖機を開始し、当該高電圧バッテリ12のバッテリ温度が所定の作動温度範囲内に入ったときに暖機を終了させる機能を有している。」

セ 「【0026】
ここで図2には、本実施形態のECU30により実行される高電圧バッテリ12に対する充電及び暖機制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下、同フローチャートに沿って説明する。
【0027】
まず、ECU30は外部電源が接続されたときに、当該制御ルーチンをスタートする。そして、ステップS1において、ECU30は、始動時刻設定部31にて設定された始動予定時刻の情報を取得する。
【0028】
続いて、ECU30はステップS2において、例えばECU30が備えるタイマより現在時刻を、高電圧バッテリ12からSOC及びバッテリ温度を、ウォータポンプ15から温水温度を、外気温度センサ32から外気温度を、それぞれ取得する。
【0029】
次のステップS3において、ECU30の充電制御部30aは、このとき接続されている外部電源20からの電力供給により、高電圧バッテリ12を満充電(例えばSOC100%)とするのに要する充電時間を算出する。
【0030】
さらにステップS4において、ECU30の充電制御部30aは、ステップS3にて算出した充電時間に基づき、始動予定時刻にて充電が完了するための充電開始時刻(充電条件)を算出する。
【0031】
そして、ステップS5において、ECU30の充電制御部30aは、現在時刻が充電開始時刻に到達したか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である間は、当該ステップS5の判別を繰り返し、当該判別結果が真(Yes)となると次のステップS6に進む。
【0032】
ステップS6では、ECU30の暖機制御部30bがPTCヒータ13及びウォータポンプ15を作動させる。これによりPTCヒータ13により加熱された温水がウォータポンプ15の作動により温水回路14を循環し、高電圧バッテリ12の暖機が開始される。
【0033】
続いて、ステップS7では、ECU30の充電制御部30aが充電器19を制御して外部電源20から高電圧バッテリ12への充電を開始させる。
【0034】
ステップS8において、ECU30の暖機制御部30bは、バッテリ温度が作動温度範囲の下限値である作動温度下限値以上であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である間は、当該ステップS8の判別を繰り返し、当該判別結果が真(Yes)となると次のステップS9に進む。
【0035】
ステップS9において、ECU30の暖機制御部30bは、PTCヒータ13及びウォータポンプ15を停止させることで、暖機を終了させる。
【0036】
ステップS10において、ECU30の暖機制御部30bは、バッテリ温度が上昇しているか否かを判別する。つまり、PTCヒータ13による暖機がなくとも、高電圧バッテリ12が充電による発熱によりバッテリ温度が上昇しているか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち外気温度が低く充電による発熱だけではバッテリ温度が低下する場合等には、ステップS6に戻り、再度PTCヒータ13及びウォータポンプ15を作動させる。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち高電圧バッテリ12が充電による発熱により作動温度範囲を維持できる場合には、ステップS11に進む。
【0037】
ステップS11において、ECU30の充電制御部30aは、高電圧バッテリ12のSOCが100%、即ち満充電となったか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である間は、当該ステップS11の判別を繰り返し、当該判別結果が真(Yes)となると充電は完了したものとして、当該ルーチンを終了する。
【0038】
なお、ECU30の暖機制御部30bは、始動予定時刻から実際の始動時(キーオン時)までに時間がある場合においても、バッテリ温度が作動温度下限値を下回った場合には再度暖機を行うことで、バッテリ温度を作動温度範囲内に維持してもよい。」

ソ 「【0039】
図3には、上述の制御に基づいて高電圧バッテリ12の充電及び暖機を行ったときの高電圧バッテリ12のバッテリ温度、高電圧バッテリ12の放熱量、SOC、温水回路14の温水温度、PTCヒータ13の電力消費量、及びPTCヒータ13の作動状態、それぞれの推移を示すタイムチャートが示されており、同図に基づき説明する。
【0040】
図3のタイムチャートは充電器19に外部電源20が接続された時点からスタートしている。ECU30は外部電源20が接続され、始動予定時刻t3が設定されると(S1)、各情報に基づき充電時間を算出し、充電開始時刻t1を算出する。つまり、充電時間は充電開始時刻t1から始動予定時刻t3の期間に相当する。
【0041】
ECU30の充電制御部30aは充電開始時刻t1から外部電源20による充電を開始し、暖機制御部30bはこれと同時にPTCヒータ13及びウォータポンプ15を作動(ON状態)させることで暖機を開始する。これにより高電圧バッテリ12のSOCが上昇し始めるとともに、温水回路14の温水温度が上昇し始めることでバッテリ温度も上昇し始める。
【0042】
充電が開始されることで、充電による高電圧バッテリ12自身による発熱量も徐々に上昇する。PTCヒータ13における電力消費量は、暖機開始時に最大となり温水温度が上昇するにつれて減少する。
【0043】
そして、高電圧バッテリのバッテリ温度が作動温度下限値に達した時点t2で、暖機制御部30bはPTCヒータ13及びウォータポンプ15を停止(OFF状態)して暖機を終了する。このように暖機を終了しても高電圧バッテリ12は充電によりバッテリが発熱し、バッテリ温度は徐々に上昇し温水温度も高温域で維持される。またバッテリ温度が作動温度範囲に入ったことで充電効率が向上しSOCの上昇率が高まる。
【0044】
そして、始動予定時刻t3にて高電圧バッテリ12のSOCは100%に到達し、充電が完了する。ここで、高電圧バッテリ12の充電では、バッテリ電圧が所定の電圧値に達するまでは定電流充電を行い、バッテリ電圧が所定の電圧値以上となった以後は定電圧充電を行ってもよい。この場合、図3に示されるように、定電圧充電への移行後から充電完了時に向かってバッテリ放熱量は徐々に低下する。
【0045】
このように、ECU30は外部電源20による高電圧バッテリ12の充電の開始と同時に高電圧バッテリ12の暖機を開始することで、バッテリ温度を速やかに作動温度範囲まで上昇させ、バッテリ性能を十分に発揮できる効率のよい充電を早い段階で行うことができる。これにより、高効率で短時間の充電を行うことできる。
【0046】
また、高電圧バッテリ12を作動温度範囲まで上昇させた後はPTCヒータ13による暖機を停止し、高電圧バッテリ12自身の発熱により作動温度範囲を維持できることからPTCヒータ13により消費される電力を最小限に抑えることができる。そして、始動予定時刻に、バッテリ温度は作動温度範囲内にあり、SOCも満充電であることから、始動直後から車両1の性能を十分に発揮することができる。
【0047】
以上のことから本実施形態に係るバッテリ暖機装置によれば、電気自動車において、電費を抑えつつ車両1の始動開始までに高電圧バッテリ12の充電及び暖機を完了させることができる。」

タ 「【図2】



チ 「【図3】



(2)引用発明2
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「電気自動車において、電費を抑えつつ車両1の始動開始までに高電圧バッテリ12の充電及び高電圧バッテリ12のバッテリ温度を作動温度範囲まで上昇させる暖機を完了させること。」

第5 対比・判断
1.本願発明1
本願発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「車両」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「乗り物」に相当し、以下同様に、「バッテリ150」は「バッテリ」に、「制御装置」は「システム」にそれぞれ相当する。
後者の「車両のバッテリ150を暖機する」ことは、所定の温度範囲の温度となるよう、バッテリ150の温度を管理することであるから、前者の「乗り物内のバッテリの温度を管理する」ことに相当する。そうすると、後者の「車両のバッテリ150を暖機する制御装置」は、前者の「乗り物内のバッテリの温度を管理するためのシステム」に相当する。
後者の「EV走行範囲と目的地までの距離に加えて、目的地までの走行パターンに応じて」は、車両のトリップに関連するトリップ情報といえることは明らかであるから、前者の「トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて」とは、「トリップに関連するトリップ情報に基づいて」という限りで一致する。同様に、後者の「前記車両の、前記バッテリ150を加熱するか否かを決定」することは、バッテリ150について温度管理について何らかの決定をさせることであるから、前者の「前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定させ」ることとは、「前記乗り物内の、前記バッテリの温度管理を決定させ」ることという限りで一致する。同様に、後者の「目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件の種々の情報からバッテリ150の温度の推移を予測され」ることは、トリップ情報に基づいたトリップに関連するバッテリ温度の変化を出力することに他ならないから、前者の「少なくとも前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力させることであって、前記トリップ情報は、トリップ持続時間またはトリップ計画を含む、出力させること」とは、「前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力させること」という限りで少なくとも一致する。
後者の「外部から供給された電力を用いてバッテリ150を加熱する」ことは、バッテリ150の温度を制御するシステムにより、所定の温度範囲の温度となるようすることであるから、前者の「温度制御システムを使用して前記バッテリの前記温度を前記所望の出発温度の方にもっていき、前記バッテリが前記所望の出発温度になると前記乗り物に前記トリップを開始させることを行わせるメモリ」とは、「温度制御システムを使用して前記バッテリの前記温度を所望の温度の方にもっていく」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「乗り物内のバッテリの温度を管理するためのシステムであって、
トリップに関連するトリップ情報に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの温度管理を決定させ、前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力させること、
温度制御システムを使用して前記バッテリの前記温度を前記所望の温度の方にもっていく、
システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前者は「プロセッサと、前記プロセッサに結合されたメモリであって、前記メモリは、前記プロセッサに命令を提供するように構成され、前記命令は、実行されたとき、前記プロセッサに、トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定させ、少なくとも前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力させることであって、前記トリップ情報は、トリップ持続時間またはトリップ計画を含む、出力させることと、温度制御システムを使用して前記バッテリの前記温度を前記所望の出発温度の方にもっていき、前記バッテリが前記所望の出発温度になると前記乗り物に前記トリップを開始させることを行わせるメモリ」を備えるのに対し、後者は、「EV走行範囲と目的地までの距離に加えて、目的地までの走行パターンに応じて、前記車両の、前記バッテリ150を加熱するか否かを決定し、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件の種々の情報からバッテリ150の温度の推移が予測され、外部から供給された電力を用いてバッテリ150を加熱する」ものである点。

上記相違点1について検討する。上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、「トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定させること。」(以下、「相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1」という。)を含む。そこで、はじめに引用発明1において、当業者が容易に相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1を容易に想到し得たものであるかを検討する。
引用発明1は、「前記バッテリ150を加熱するか否かを決定」するものであるから、特定の「温度」である「所望の出発温度を決定させる」ものではない。また、引用文献2の段落[0072](第4 引用文献、引用発明等の1.(1)キを参照)の記載事項から、バッテリ150の予測温度がしきい値以上になることである暖機の完了は、目的地への到着予測時刻より早い時間、すなわち出発後になされるものであるから、「前記バッテリ150を加熱するか否かを決定」ことが、出発時の温度といえる「所望の出発温度」を決定させることを示唆するものともいえない。
そして、バッテリ150の予測温度がしきい値以上になることである暖機の完了が出発後になされることが前提である引用発明1において、車両1の始動開始までに高電圧バッテリ12の暖機を完了させる引用発明2を適用する動機も見出せない。仮に引用発明1に引用発明2を適用する動機があるとしても、引用発明1に引用発明2を適用したものは、車両のバッテリの暖機を始動開始までにしきい値以上とする暖機を完了させるものであり、「トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて」、しきい値を決定することは導出できないから、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1とはならない。
してみると、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1は、引用発明1において当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものではなく、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1を含む、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明1において当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものではなく、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。

また、当業者の通常の創作能力の範囲内で、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。

そして、本願発明1は、相違点1にかかる本願発明1の発明特定事項により、例えば「バッテリの寿命を延ばし、および/またはより良好な性能のバッテリを生成する」などの、引用発明1にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。同様に、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし本願発明6
本願発明2ないし本願発明6は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに請求項2ないし請求項6で新たに特定される発明特定事項を備えるものである。
そして、本願発明2ないし本願発明6と引用発明1とは、少なくとも本願発明1の対比・判断で上述した相違点1で相違する。
そうすると、本願発明1の対比・判断で上述した理由と同じく、本願発明2ないし本願発明6は、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえず、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明7ないし本願発明12
本願発明7と引用発明1とを対比すると、両者は実質的に以下の相違点2で相違し、その余の点で一致する。

[相違点2]
本願発明7は「トリップに関連するトリップ情報を入力として推定関数に提供し、トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る前記推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定することであって、前記トリップ情報は、トリップ持続時間またはトリップ計画を含む、決定することと、
少なくとも前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力することと、
温度制御システムを使用して、前記バッテリの前記温度を前記所望の出発温度の方にもっていき、前記バッテリが前記所望の出発温度になると前記乗り物に前記トリップを開始させること」であるのに対し、引用発明7は、「EV走行範囲と目的地までの距離に加えて、目的地までの走行パターンに応じて、前記車両の、前記バッテリ150を加熱するか否かを決定し、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件の種々の情報からバッテリ150の温度の推移が予測され、外部から供給された電力を用いてバッテリ150を加熱する」ものである点。

そして、相違点2における「トリップに関連するトリップ情報を入力として推定関数に提供し、トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る前記推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定すること。」は本願発明1の相違点1の検討において述べた相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と同様の事項であり、引用発明1において当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものではなく、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1と同様の事項を含む、相違点2に係る本願発明7の発明特定事項は、引用発明1において当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものではなく、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。

そうすると、本願発明7は、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。同様に、本願発明7は、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

そして、本願発明7の発明特定事項を全て備え、さらに請求項8ないし請求項12で新たに特定される発明特定事項を備える本願発明8ないし本願発明12についても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえず、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明13ないし本願発明18
本願発明13と引用発明1とを対比すると、両者は実質的に少なくとも以下の相違点3で相違する。

[相違点3]
本願発明13は「トリップに関連するトリップ情報を入力として推定関数に提供し、
トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る前記推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定することであって、前記トリップ情報は、トリップ持続時間またはトリップ計画を含む、決定することと、
少なくとも前記トリップ情報に基づいた前記トリップに関連するバッテリ温度の変化を出力することと、
温度制御システムを使用して、前記バッテリの前記温度を前記所望の出発温度の方にもっていき、前記バッテリが前記所望の出発温度になると前記乗り物に前記トリップを開始させること」のに対し、引用発明1は、「EV走行範囲と目的地までの距離に加えて、目的地までの走行パターンに応じて、前記車両の、前記バッテリ150を加熱するか否かを決定し、目的地までの路面の勾配、標高、過去の運転条件の種々の情報からバッテリ150の温度の推移が予測され、外部から供給された電力を用いてバッテリ150を加熱する」ものである点。

そして、相違点3における「トリップに関連するトリップ情報を入力として推定関数に提供し、トリップに関連するトリップ情報を入力として受け取る前記推定関数の出力に少なくとも部分的に基づいて、前記乗り物内の、前記バッテリの所望の出発温度を決定すること。」は本願発明1の相違点1の検討において述べた相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と同様の事項であり、引用発明1において当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものではなく、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項1と同様の事項を含む相違点3に係る本願発明13の発明特定事項は、引用発明1において当業者がその通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たものではなく、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得たものでもない。

そうすると、仮に本願発明13と引用発明1とが相違点3と異なる相違点を備えていたとしても、当該相違点について検討するまでもなく本願発明13は、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。同様に、本願発明13は、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

そして、本願発明13の発明特定事項を全て備え、さらに請求項14ないし請求項18で新たに特定される発明特定事項を備える本願発明14ないし本願発明18についても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえず、引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明18は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-07-27 
出願番号 P2021-547371
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02J)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 水野 治彦
星名 真幸
発明の名称 車両におけるバッテリの所望の出発温度  
代理人 弁理士法人浅村特許事務所  

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