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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  B01D
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B01D
審判 一部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1400477
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-09-29 
確定日 2023-05-25 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7053079号発明「ガス処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7053079号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。 特許第7053079号の請求項1〜4、7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7053079号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、令和3年11月1日の出願であって、令和4年4月4日にその請求項1〜7に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1及び4に係る特許に対して、同年9月29日に特許異議申立人 奥村 一正(以下、「申立人奥村」という。)により甲第1号証〜甲第17号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、請求項1〜4及び7に係る特許に対して、同年10月5日に特許異議申立人 河井 清悦(以下、「申立人河井」という。)により甲第1号証〜甲第7号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年12月21日付けで当審より取消理由が通知され、令和5年2月2日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年3月10日に申立人河井より意見書(以下、「河井意見書」という。)が提出され、同年3月16日に申立人奥村より意見書(以下、「奥村意見書」という。)が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年2月2日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第7053079号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜7について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃であることを特徴とするVOC濃縮装置。」
と記載されているのを、
「前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにしたことを特徴とするVOC濃縮装置。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜7も同様に訂正する。)。

(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1の記載を請求項2〜7が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1〜7は一群の請求項であり、訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1〜7を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「VOC濃縮装置」を、本件特許明細書の段落【0017】の記載に基づいて、「液状物の発生を防ぐ」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)独立特許要件について
ア 請求項1〜4及び7について
本件特許異議の申立ては本件訂正前の請求項1〜4及び7についてされているので、本件訂正後の1〜4及び7については、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

イ 請求項5及び6について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項5及び6についても同様に訂正するものであるが、請求項5及び6については特許異議の申し立てがされていないので、訂正事項1に係る訂正後の請求項5及び6に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、検討すると、下記第6及び第7に記載したのと同様の理由により、前記訂正後の請求項5及び6に係る発明(下記の「本件発明5」、「本件発明6」)は、 新規性及び進歩性が欠如したものではないし、前記訂正後の請求項5及び6に係る発明について、他に特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではないとする理由もない。
よって、前記訂正後の請求項5及び6に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。

第3 本件発明について
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件訂正により訂正された請求項1〜7に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明7」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハニカムロータを備え、前記ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを前記処理ゾーンに通し、前記処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通し、前記再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出するようにしたガス処理装置において、前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにしたことを特徴とするVOC濃縮装置。
【請求項2】
前記処理ゾーンと前記再生ゾーンの間に、さらに冷却ゾーンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の VOC濃縮装置。
【請求項3】
前記処理対象ガスの一部、外気、前記処理ゾーンを通過したガスのうち少なくとも一つから成るガスを前記冷却ゾーンに通し、前記冷却ゾーンを通過したガスを前記加熱手段に通すようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の VOC濃縮装置。
【請求項4】
前記ハニカムロータの回転数を調整することにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の VOC濃縮装置。
【請求項5】
前記加熱手段を通過したガスの一部をバイパスし、前記再生ゾーンの出口側に通すことにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の VOC濃縮装置。
【請求項6】
前記再生ゾーンの出口側を区画するVゾーンに加熱装置を埋設することにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の VOC濃縮装置。
【請求項7】
前記再生ゾーンの出口側において発生した液状物が前記ハニカムロータへ流出するのを防ぐ防止手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の VOC濃縮装置。」

第4 特許異議申立理由の概要
1 申立人奥村による特許異議申立理由の概要
ここでいう甲第1〜17号証は、下記(5)に記載した、申立人奥村が提出した甲第1〜17号証である。
(1)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明及び甲第4〜17号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(41ページ2行〜43ページ10行)。

(2)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明及び甲第4〜17号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(43ページ11行〜46ページ7行)。

(3)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明及び甲第4〜17号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(46ページ8行〜49ページ1行)。

(4)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(49ページ2行〜17行)。

(5)証拠方法
甲第1号証:特開2008−302277号公報
甲第2号証:特開2001−137640号公報
甲第3号証:特開2002−35529号公報
甲第4号証:特開2007−44595号公報
甲第5号証:特開2008−100187号公報
甲第6号証:特開2009−82797号公報
甲第7号証:特開2010−32178号公報
甲第8号証:特開2011−62687号公報
甲第9号証:特開2011−136304号公報
甲第10号証:特開2011−240243号公報
甲第11号証:特開2012−5922号公報
甲第12号証:特開2012−115833号公報
甲第13号証:特開2012−135761号公報
甲第14号証:特開2012−139670号公報
甲第15号証:特開2012−166155号公報
甲第16号証:特開2014−521号公報
甲第17号証:特開2016−101553号公報

2 申立人河井による特許異議申立理由の概要
ここでいう甲第1〜7号証は、下記(8)に記載した、申立人河井が提出した甲第1〜7号証である。
(1)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である(47ページ9行〜48ページ21行、55ページ21行〜56ページ7行、57ページ2行〜16行)。

(2)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された本件特許の出願日における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(48ページ22行〜51ページ15行)。

(3)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された本件特許の出願日における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(51ページ16行〜55ページ19行)。

(4)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された本件特許の出願日における周知技術に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された本件特許の出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(56ページ8行〜最終行)。

(5)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された本件特許の出願日における周知技術に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された本件特許の出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(57ページ17行〜58ページ13行)。

(6)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(58ページ14行〜最終行)。

(7)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、甲第2号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(59ページ1行〜最終行)。

(8)証拠方法
甲第1号証:特開平8−155252号公報
甲第2号証:特開2009−82797号公報
甲第3号証:特許第4542136号公報
甲第4号証:登録実用新案第3219762号公報
甲第5号証:特許第4979522号公報
甲第6号証:特許第5744488号公報
甲第7号証:特開2001−70733号公報

第5 取消理由の概要
1 本件訂正前の請求項1〜4に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明及び引用文献3〜17に記載された事項に基づいて、又は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用文献
引用文献1:特開2008−302277号公報
引用文献2:特開平8−155252号公報
引用文献3:特開2007−44595号公報
引用文献4:特開2008−100187号公報
引用文献5:特開2009−82797号公報
引用文献6:特開2010−32178号公報
引用文献7:特開2011−62687号公報
引用文献8:特開2011−136304号公報
引用文献9:特開2011−240243号公報
引用文献10:特開2012−5922号公報
引用文献11:特開2012−115833号公報
引用文献12:特開2012−135761号公報
引用文献13:特開2012−139670号公報
引用文献14:特開2012−166155号公報
引用文献15:特開2014−521号公報
引用文献16:特開2016−101553号公報
引用文献17:特開2001−137640号公報
なお、引用文献1及び引用文献3〜17は、順に申立人奥村が提出した、前記第4の1(5)に記載された甲第1、4〜17号証及び甲第2号証であり、引用文献2は、申立人河井が提出した、前記第4の2(8)に記載された甲第1号証である。

第6 取消理由についての当審の判断
1 引用文献の記載事項等
(1)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1には、以下の(ア)〜(キ)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項3】
筒状吸着体をその筒軸まわりに回転させ、吸着部を通過する吸着体に低濃度の揮発性有機溶剤を含むガス中の有機溶剤を吸着させ、脱着部を通過する有機溶剤を吸着した吸着体に脱着用空気を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置と、
圧縮機と、この圧縮機によって圧縮された上記脱着ガスに燃料を混合して燃焼させる燃焼器と、この燃焼器によって発生する燃焼ガスにより駆動するタービンとを有するマイクロガスタービンと、
上記脱着ガスの一部を上記圧縮機に供給するための圧縮機用供給路と、 上記脱着ガスの残部を上記脱着部の上流側に帰還させるための脱着部用帰還路とを備え、
上記脱着部の出口部が、上記筒状吸着体の回転方向において、温度が低い脱着ガスを上記圧縮機用供給路に案内するように区画された第1領域と、温度が高い脱着ガスを上記脱着部用帰還路に案内するように区画された第2領域とに分割されていることを特徴とする有機溶剤含有ガス処理システム。」

(イ)「【0030】
1. 濃縮装置の原理
図1は本発明の有機溶剤含有ガス濃縮装置(以下、濃縮装置と略称する)の原理を示したものである。
【0031】
同図において、大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置1は、中心軸2まわりに回転可能な円筒形のケース3を有しており、このケース3内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着剤4が収納され全体として筒状吸着体を構成している。
【0032】
なお、吸着剤4はVOC含有ガスの成分に応じて活性炭素繊維やゼオライトペーパー等が適宜選択される。
【0033】
筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部1aと脱着部1bが区画されており、吸着剤(吸着体)4がそれら吸着部1aと脱着部1bとを交互に通過するようになっている。
【0034】
上記吸着部1aには、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管5と、濃縮装置1の吸着剤4によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管6が設けられている。
【0035】
また、脱着部1bには、VOCを吸着した吸着剤4に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管7が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっている。
【0036】
脱着出口部1cには、筒状回転体の回転方向において、第1管路8と第2管路9がそれぞれ設けられ、第1管路8は脱着部1bにおける処理初期領域(第1領域)から引き出され、第2管路9は脱着部1bにおける処理後期領域(第2領域)から引き出されている。
・・・
【0043】
次に、脱着出口部1cを複数の領域(本実施形態では第1および第2領域)に分割した場合の風量、脱着出口温度、脱着出口濃度を測定した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

・・・
【0052】
3. 濃縮装置における脱着出口部の構成
次に、脱着出口部1cの具体的な構成を、図3に示すディスクロータ式濃縮装置、図4に示すシリンダ式濃縮装置についてそれぞれ説明する。
【0053】
3-1. ディスクロータ式濃縮装置
図3に示すディスクロータ式濃縮装置10は、ハニカム構造の筒状吸着体11を回転軸12まわりに回転させるように構成されており、VOC含有ガスが筒状吸着体11の一方から導入され、他方から浄化された清浄空気が取り出される。」

(ウ)「【0067】
4. VOC含有ガス処理システム
4-1. 第一の処理システム 図5は上記濃縮装置を用いたVOC含有ガス処理システムの第一実施形態を示したものである。なお、以下の説明において、図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
・・・
【0075】
上記燃焼装置31の燃焼によって生じた排ガスは熱交換器32に導入され、脱着用空気を加熱するための熱交換に供せられる。
・・・
【0078】
4-2. 第二の処理システム
図6は上記濃縮装置1を用いたVOC含有ガス処理システムの第二実施形態を示したものである。なお、図5と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0079】
なお、図6に示す濃縮装置1の脱着出口部も、表1のパターン3に示した第1領域と第2領域に分割されている。また、説明の便宜上、第1領域からの脱着ガス温度を70℃、第2領域からの脱着ガス温度を160℃とする。
【0080】
処理システム40は、濃縮装置1の第1領域から排出された脱着ガスCを冷却するガスクーラ(冷却装置)33と、このガスクーラ33によって冷却されたVOC含有ガスと燃料とを混合した混合ガスを燃焼させて動力を発生するマイクロガスタービン34と、このマイクロガスタービン34から排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラ35とを備えている。
【0081】
詳しくは、脱着ガスCは圧縮機用供給路としての第1管路8を介してガスクーラ33に供給され、マイクロガスタービン34の稼働に適した温度である40℃まで下げられる。
【0082】
一方、脱着ガスDは脱着部用帰還路としての第2管路9を介して脱着部上流側に戻される。」

(エ)「【0100】
5. 脱着ガスの濃度調整
図9は、脱着入口温度を一定とした場合の、吸着体回転数と濃縮装置の脱着性能との関係を示したものである。
【0101】
同図(a)〜(d)に示すように、吸着体回転数が遅くなるほど脱着出口温度すなわち脱着ガスの温度が高くなることがわかる。」

(オ)「【図3】



(カ)「【図6】



(キ)「【図9】



イ 前記ア(ア)によれば、引用文献1には「有機溶剤含有ガス処理システム」が記載されており、同(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)に記載された第二の処理システム(【図6】)に注目すると、前記「有機溶剤含有ガス処理システム」は、大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置が、中心軸まわりに回転可能な円筒形のケースを有しており、このケース内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着剤が収納され全体として筒状吸着体を構成しているものである。
そして、筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部と脱着部が区画されており、吸着剤(吸着体)がそれら吸着部と脱着部とを交互に通過するようになっているものであり、前記吸着部には、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管と、濃縮装置の吸着剤によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管が設けられているものであり、前記脱着部には、VOCを吸着した吸着剤に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっているものである。
また、脱着出口部には、筒状回転体の回転方向において、第1管路と第2管路がそれぞれ設けられ、第1管路は脱着部における処理初期領域(第1領域)から引き出され、第2管路は脱着部における処理後期領域(第2領域)から引き出されているものであり、脱着出口部を複数の領域(第1および第2領域)に分割した場合の脱着出口温度を測定すると、パターン3として、第1領域の脱着出口温度が73℃、第2領域の脱着出口温度が168℃の温度となるものである。
更に、前記濃縮装置は、ディスクロータ式濃縮装置であって、これは、ハニカム構造の筒状吸着体を回転軸まわりに回転させるように構成されており、VOC含有ガスが筒状吸着体の一方から導入され、他方から浄化された清浄空気が取り出されるものであり、「有機溶剤含有ガス処理システム」の脱着出口部は、前記パターン3に示した第1領域と第2領域に分割されており、前記第1領域から排出された脱着ガスを冷却するガスクーラ(冷却装置)と、このガスクーラによって冷却されたVOC含有ガスと燃料とを混合した混合ガスを燃焼させて動力を発生するマイクロガスタービンと、このマイクロガスタービンから排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラとを備えているものであり、脱着ガスは圧縮機用供給路としての第1管路を介してガスクーラに供給され、マイクロガスタービンの稼働に適した温度である40℃まで下げられるものであり、前記排ガスは熱交換器に導入され、脱着用空気を加熱するための熱交換に供せられるものである。
また、前記ア(エ)、(キ)によれば、前記「有機溶剤含有ガス処理システム」においては、吸着体回転数が遅くなるほど脱着出口温度すなわち脱着ガスの温度が高くなるものである。

ウ 前記イによれば、引用文献1には、
「有機溶剤含有ガス処理システムであって、
当該有機溶剤含有ガス処理システムは、大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置が、中心軸まわりに回転可能な円筒形のケースを有しており、このケース内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着剤が収納され全体として筒状吸着体を構成しているものであり、
筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部と脱着部が区画されており、吸着剤(吸着体)がそれら吸着部と脱着部とを交互に通過するようになっているものであり、前記吸着部には、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管と、濃縮装置の吸着剤によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管が設けられているものであり、
前記脱着部には、VOCを吸着した吸着剤に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっているものであり、
脱着出口部には、筒状回転体の回転方向において、第1管路と第2管路がそれぞれ設けられ、第1管路は脱着部における処理初期領域(第1領域)から引き出され、第2管路は脱着部における処理後期領域(第2領域)から引き出されているものであり、脱着出口部を複数の領域(第1および第2領域)に分割した場合の脱着出口温度を測定すると、パターン3として、第1領域の脱着出口温度が73℃、第2領域の脱着出口温度が168℃の温度となるものであり、
前記濃縮装置は、ディスクロータ式濃縮装置であって、これは、ハニカム構造の筒状吸着体を回転軸まわりに回転させるように構成されており、VOC含有ガスが筒状吸着体の一方から導入され、他方から浄化された清浄空気が取り出されるものであり、
前記有機溶剤含有ガス処理システムの脱着出口部は、前記パターン3に示した第1領域と第2領域に分割されており、
前記有機溶剤含有ガス処理システムは、前記第1領域から排出された脱着ガスを冷却するガスクーラ(冷却装置)と、このガスクーラによって冷却されたVOC含有ガスと燃料とを混合した混合ガスを燃焼させて動力を発生するマイクロガスタービンと、このマイクロガスタービンから排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラとを備え、脱着ガスは圧縮機用供給路としての第1管路を介してガスクーラに供給され、マイクロガスタービンの稼働に適した温度である40℃まで下げられるものであり、前記排ガスは熱交換器に導入され、脱着用空気を加熱するための熱交換に供せられるものであり、
前記有機溶剤含有ガス処理システムにおいては、吸着体回転数が遅くなるほど脱着出口温度すなわち脱着ガスの温度が高くなる、有機溶剤含有ガス処理システム。」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)引用文献2の記載事項
引用文献2は、申立人河井が提出した、前記第4の2(8)に記載された甲第1号証であることは、前記第5の2に記載したとおりであって、その記載事項は、下記第7の2(1)ア(ア)aに記載したとおりである。

(3)引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の記載がある。
「【実施例】
【0023】
以下の実施例および比較例に基づいて本発明の有機溶剤含有ガス処理システムについて詳細に説明する。
[実施例1]
吸着材として平均細孔径7ÅでSi/Al比が70のフォージャサイト型ゼオライトを75重量%含有した波長2.6mm、波高1.5mmのハニカム状吸着素子を製作した。次にこのハニカム状吸着素子の30℃、25℃DPの水分吸着率を測定すると、水分吸着率が極めて低い疎水性ゼオライトを75重量%含有していることで3.0wt%と低い結果であった。次に、このハニカム状吸着素子を溶剤ガス処理システム(図4)に適応して、ハニカム状吸着素子を吸着ゾーンと脱着ゾーンに分けて、吸着ゾーンにN−メチル−2―ピロリドン(以下NMP)が100NCMMの風量で200ppmのガスを通気して吸着除去する操作と、一方で、脱着ゾーンに、吸着ゾーンに通気する風量に対して、1/10の風量の180℃の加熱空気を通気し、NMPを脱着する操作を連続的に行いNMPを97%の除去効率で処理した。その際に濃縮された65℃のNMP含有ガスをクーラーにより25℃まで冷却して凝縮回収した。また、脱着入口側に親水性ゼオライト吸着材を80重量%含有したハニカム状除湿素子を使用して外気の30℃,25℃DP%の水分を除湿し、一方で1/3の140℃加熱空気で脱着をして連続的に除湿を行い、脱着入口空気を10NCMM,60℃、10℃DPとして安定的に供給した。これにより濃縮されたガスの湿度は10NCMM、65℃、19℃DPであった。その際の凝縮液回収量と回収液のNMP濃度を測定した。水分吸着率の低く、触媒活性の低い疎水性ゼオライトを使用している事で濃縮ガスへの水分移行が少なく、また脱着入口湿度を低減していることでNMPと水の回収量は137g/min(表−1)と極めて低く、回収液のNMP濃度も79重量%と高く、回収液の酸分もPH7と良好な結果を得た。」

2 対比・判断
(1)対比
ア 本件発明1と引用1発明とを対比すると、引用1発明における「筒状吸着体」、「吸着部」、「脱着部」、「工場」、「熱交換器」、「ガスクーラ」及び「有機溶剤含有ガス処理システム」は、それぞれ、本件発明1における「ハニカムロータ」、「処理ゾーン」、「再生ゾーン」、「供給先」、「加熱手段」、「後段の装置」及び「VOC濃縮装置」に相当する。
そして、引用1発明において、「筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部と脱着部が区画されており、吸着剤(吸着体)がそれら吸着部と脱着部とを交互に通過するようになっているものであり、前記吸着部には、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管と、濃縮装置の吸着剤によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管が設けられている」ことは、本件発明1において、「ハニカムロータを備え、前記ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを前記処理ゾーンに通し、前記処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出」することに相当し、引用1発明において、「VOCを吸着した吸着剤に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付け」、「脱着ガスは圧縮機用供給路としての第1管路を介してガスクーラに供給され」ることは、本件発明1において、「前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通し、前記再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出する」ことに相当する。
更に、引用1発明において、「脱着出口部には、筒状回転体の回転方向において、第1管路と第2管路がそれぞれ設けられ、第1管路は脱着部における処理初期領域(第1領域)から引き出され、第2管路は脱着部における処理後期領域(第2領域)から引き出されているものであり、脱着出口部を複数の領域(第1および第2領域)に分割した場合の脱着出口温度を測定すると」、「第1領域の脱着出口温度が73℃、第2領域の脱着出口温度が168℃の温度となることは、本件発明1の「ガス処理装置において、前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転する」ことを満たす。

イ 前記アによれば、本件発明1と引用1発明とは、
「ハニカムロータを備え、前記ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを前記処理ゾーンに通し、前記処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通し、前記再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出するようにしたガス処理装置において、前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転する、VOC濃縮装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:本件発明1は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるのに対して、引用1発明は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるか否かが明らかでない点。

(2)判断
ア 始めに、前記(1)イの相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、処理対象ガスが高湿度である場合や再生循環により再生ガスが高湿度となる場合等、再生出口ガスが高湿度となる条件では、再生出口温度が低いと再生出口側のケーシング内で高湿度の水分が結露して凝縮することがある。これは、VOC濃縮装置に限らず、デシカント除湿機やその他のガス処理装置においても生じ得ることである。VOC濃縮装置の場合、水溶性の高沸点のVOCが処理対象ガスに含まれると、再生出口側で生じた凝縮水に、再生出口側で濃縮脱着された水溶性の高沸点のVOCが溶解し、再生出口ガスの温度変化に応じて乾燥と凝縮を繰り返し、高沸点のVOCが濃縮され、茶褐色から黒色のタール状の液状物が生じることがある。また、水分によらずとも、凝縮しやすいVOCが処理対象ガスに含まれている場合には、再生出口側で濃縮脱着された凝縮しやすいVOCが凝縮し、タール状の液状物になることも考えられる。
【0007】
タール状の液状物の発生によって、再生出口側のケーシングが汚染され、液状物が流れ出すことにより、ハニカムロータや周辺部材も汚染されると、見た目が悪く、装置を清掃する手間やコストがかかり、装置の腐食にもつながり、ハニカムロータや部材の交換が必要となる。また、タール状の液状物がハニカムロータに流れ込むと、性能の低下、圧力損失の上昇につながる。さらに、タール状の液状物の蓄積が進行すれば、VOC濃縮装置からの発火・焼損にもつながる虞がある。
・・・
【0010】
上記の実情に鑑み、発明者はVOC濃縮装置やデシカント除湿機等のガス処理装置において、再生出口側に発生した液状物の分析を行い、その根本的な発生原因を追究し、鋭意検討を行った。その結果、液状物の発生の原因となる凝縮水の発生を抑制すれば、液状物の発生もなくなるということを突き止め、本発明に至った。本発明は簡単な方法で、再生出口側における液状物の発生を防止することのできるガス処理装置を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス処理装置は上記の如く構成したので、液状物の発生を簡単な方法で、かつコストをかけずに防ぐことができる。これにより、ハニカムロータの性能を長期に渡り安定的に維持することができ、ガス処理装置の部材やハニカムロータの交換頻度が減り、コスト低減につながる。」

イ 前記アの記載によれば、本件発明は、「VOC濃縮装置」において液状物の発生の原因となる凝縮水の発生を抑制することで、「液状物の発生を防ぐ」ものといえるが、技術常識からみて、凝縮水が発生するか否かは、再生ゾーンを通過したガスの温度のみならず、前記再生ゾーンを通過する前のガスの絶対湿度等にも左右されるものである。そして、引用1発明における再生ゾーンを通過したガスの湿度等は明らかでないから、引用1発明が、「パターン3として、第1領域の脱着出口温度が73℃」となっており、本件発明1の「ガス処理装置において、前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転する」ことを満たすとしても、このことから直ちに、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるということはできないので、前記相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1が引用1発明であるとはいえないのであり、更に本件発明4について検討しても事情は同じである。

ウ 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、引用文献2〜3には、「VOC濃縮装置」において「液状物の発生を防ぐようにした」ことは記載も示唆もされていないし、引用文献4〜17の記載(摘記は省略した。)をみても事情は同じであるから、引用1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するには至らない。
してみれば、本件発明1は、引用1発明及び引用文献2〜17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、本件発明2〜4について検討しても事情は同じである。

(3)奥村意見書及び河井意見書について
ア 申立人奥村の奥村意見書における取消理由についての主張は、概略、以下のとおりである。
(ア)VOCがキシレン、エチルベンゼン、トルエン、ブチルベンゼンの場合、これらはそもそも60℃以上にしなくても液状化しない溶剤であるから、VOCとしてこれらの物質を対象にした場合、再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにしたことは、技術的に特別な意味を持たず、格別な効果を奏しないので、本件発明1は引用1発明であるか、引用1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(2ページ下から3行〜4ページ下から2行)。

(イ)VOCがNMP又はテトラデカンの場合、これらの液状化しやすい溶剤を液状化させずに処理する場合、飽和蒸気圧の観点からシステム内で最も高濃度となる脱着出口ガスラインを所定温度以上で運転することは当業者にとって当然であり、再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにしたことは、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所が発行する「労働安全衛生総合研究所 技術指針(1955−)」中に規定される「ユーザーのための工場防爆設備ガイド(番号TR−No.44)」の記載からみて、技術的に特別な意味を持たず、格別な効果を奏しない(4ページ最終行〜8ページ最終行)。

イ そこで、前記アの主張について検討すると、前記アの主張は、総じて、本件発明が、再生ゾーンを通過したガスにおけるVOC自体の液化を防ぐものであることを前提として、再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにしたことは技術的な意味を持たないことをいうものと解される。
ところが、本件発明は、「VOC濃縮装置」において液状物の発生の原因となる凝縮水の発生を抑制することで、「液状物の発生を防ぐ」ものといえることは、前記(2)イに記載したとおりであって、VOC自体の液化を防ぐものとはいえないから、前記主張は液状物についての誤解に基づくものであり、前提において誤っている。
また、仮に、本件発明がVOC自体の液状化を防ぐものであるとしても、前記(2)アの本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、ハニカムロータの性能を長期に渡り安定的に維持することができ、ガス処理装置の部材やハニカムロータの交換頻度が減り、コスト低減につながる、という格別な効果を奏するものであるし、「ユーザーのための工場防爆設備ガイド(番号TR−No.44)」に、「VOC濃縮装置」において液状物の発生を抑制することが記載も示唆もされるものでもないので、本件発明が、技術的に特別な意味を持たず、格別な効果を奏しないということはできない。
したがって、前記アの主張はいずれも採用できない。

ウ 申立人河井の河井意見書における取消理由等についての主張は、概略、以下のとおりである。
(ア)本件発明は「VOC濃縮装置」という物の発明であり、「VOC濃縮装置」の再生ゾーンを通過したガスの温度を60〜120℃とすることは、本件特許の出願の出願日当時の周知技術であり、「液状物の発生を防ぐ」、との発明特定事項は、物の発明である「VOC濃縮装置」の構成、用途を特定したものでなく、作用に過ぎないから、本件発明1〜4は新規性進歩性を欠く(2ページ1行〜下から4行)。

(イ)「VOC濃縮装置」の再生ゾーンを通過したガスの温度を60〜120℃とすることは、本件特許の出願の出願日当時の周知技術であったのに、「VOC濃縮装置」において再生ゾーンを通過したガスの温度を60〜120℃とする運転が実施できなくなることは、パブリック・ドメインが浸食されて公益に反することとなるから、本件発明1の特許性は肯定されるべきではない。(2ページ下から3行〜3ページ11行)。

(ウ)本件発明は、再生出口側における液状物の発生を防止することのできるガス処理装置を提供することを課題とするものであるが、申立人河井が提出した甲第3号証(段落【0039】、【図3】、下記第7の2(3)ア(ア))には、「VOC濃縮装置」において「再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転」した場合であっても、凝縮の可能性があることが記載されているから、当業者は、本件発明1により前記課題を解決できると認識することができないので、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。

エ そこで、以下、前記ウの主張について検討する。
(ア)始めに、前記ウ(ア)の主張について検討すると、本件発明1の「前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにした」との発明特定事項は、「VOC濃縮装置」の運転の態様を特定することで、物の発明である「VOC濃縮装置」の構成を特定するものといえるから、物の発明である「VOC濃縮装置」の構成、用途を特定したものでなく、作用にすぎないということはできない。
そして、本件発明1〜4が引用1発明であるとはいえず、引用1発明及び引用文献2〜17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、前記(2)イ、ウに記載したとおりであるから、前記ウ(ア)の主張は採用できない。

(イ)次に、前記ウ(イ)の主張について検討すると、本件発明1の「前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにした」との発明特定事項は、再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して、液状物の発生を防ぐ運転の態様をいうものであって、単に、再生ゾーンを通過したガスの温度を60〜120℃とする運転の態様をいうものではないから、本件発明1は、単に、再生ゾーンを通過したガスの温度を60〜120℃とする運転の実施を妨げるものではない。
すると、「VOC濃縮装置」の再生ゾーンを通過したガスの温度を60〜120℃とすることが、本件特許の出願の出願日当時の周知技術であったとしても、本件発明1によりパブリック・ドメインが浸食されて公益に反することとなるものではないから、前記ウ(イ)の主張も採用できない。

(ウ)最後に、前記ア(ウ)の主張は、本件訂正により生じた取消理由についていうものではなく、また、申立人河井は、サポート要件についての特許異議申立理由を申し立てていないから、検討する必要はないのであるが、念のため検討すると、本件発明1は、「液状物の発生を防ぐようにした」との発明特定事項により、再生出口側における液状物の発生を防止することのできるガス処理装置を提供する、という課題を解決することができるから、当業者は、本件発明1の発明特定事項により前記課題を解決できると認識することができる。
してみれば、申立人河井が提出した甲第3号証に記載された事項に関わらず、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するから、前記ウ(ウ)の主張も採用できない。

(エ)したがって、申立人河井の前記ウの主張もいずれも採用できない。

3 小括
よって、本件発明1〜4が、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献3〜17に記載された事項に基づいて、又は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、前記第5の取消理由は理由がない。

第7 特許異議申立理由についての当審の判断
1 申立人奥村による特許異議申立理由について
ここでいう甲第1〜17号証は、前記第4の1(5)に記載した、申立人奥村が提出した甲第1〜17号証である。
(1)甲第1号証を主引用例とした場合について
本件発明1〜4が、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献3〜17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、前記第6の3に記載したとおりである。
そして、引用文献1及び引用文献3〜17は、順に申立人奥村が提出した、前記第4の1(5)に記載された甲第1、4〜17号証及び甲第2号証であることは、前記第5の2に記載したとおりである。
そうすると、前記第6の2(2)イ、ウに記載したのと同様の理由により、本件発明1及び4が甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1及び4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4〜17号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立人奥村による前記第4の1(1)及び(4)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

(2)甲第2号証を主引用例とした場合について
ア 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
(ア)甲第2号証には、以下のa〜cの記載がある。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】ガスの吸着ローターを有するとともに、前記吸着ローターを吸着ゾーンと脱着ゾーンとに分割し、前記脱着ゾーンの周縁に前記脱着ゾーンに流れる再生空気より流れの速い空気流を流し、前記脱着ゾーンに流れる再生空気を前記脱着ゾーン以外に流れないようにしたガス処理装置。」

b「【0022】
【実施例】以下本発明の実施例1について図に沿って詳細に説明する。図1は本発明のガス処理装置の分解斜視図である。
【0023】1は吸着ローターであり、例えば疎水性ゼオライトを担持したセラミック紙をハニカム状に形成したもの或いは活性炭紙をハニカム状に形成した有機溶剤蒸気の吸着ローターであり、ケーシング2内に回転可能に保持されている。そしてケーシング2は、前側セパレータ3及び後側セパレータ(後述する)により吸着ゾーン4と脱着ゾーン5とに分割されている。
【0024】この吸着ローター1としては、有機溶剤蒸気の吸着ローター以外には例えば親水性ゼオライトを担持したセラミック紙をハニカム状に形成したもの或いはセラミック紙にシリカゲルを合成した湿気の吸着ローターである。
【0025】また、吸着ローター1はギヤドモータ6、駆動ベルト7により矢印の方向に回転駆動されるよう構成されている。10は脱着用ヒーターであり、脱着ゾーン5と連通している。9は脱着用ブロアであり、脱着ゾーン5の出口側に吸い込み口が連通している。これによって脱着用ヒーター10で加熱された空気が脱着ゾーン5を通過する。
【0026】11は処理空気用ブロアであり、有機溶剤蒸気や湿気を含む処理空気を送るものである。また12はセパレータ用ブロアであり、前側セパレータ3に高速空気流を発生させるものである。
・・・
【0031】本発明のガス処理装置は以上のように溝成され、以下その動作について説明する。先ず、脱着用ブロア9、処理空気用ブロア11、ギヤドモータ6、セパレータ用ブロア12及び脱着用ヒーター10に通電する。
【0032】これによって、有機溶剤蒸気や湿気を含む処理空気が処理空気用ブロア11によって吸着ゾーン4へ送られ、処理空気中の有機溶剤蒸気や湿気が吸着ローター1に吸着される。また脱着用ヒーター10によって加熱された空気が脱着ゾーン5を通過し、吸着された有機溶剤蒸気が脱着され、脱着用ブロア9によって燃焼処理装置や触媒処理装置(図示せず)へ送られ、無害化処理が行われる。
【0033】吸着された湿気が脱着された場合は、脱着用ブロア9によって大気へ放出される。
【0034】ここでセパレータ用ブロア12によって前側セパレータ3と吸着ローター1との間に高速空気流が形成されているため、前側セパレータ3は吸着ローター1に対して非接触状態であるが、吸着ゾーン4を出た空気と脱着ゾーン5へ入る空気とが混合することは殆どない。
【0035】前側セパレータ3の吐出しノズル13を出た高速空気は吸着ローター1を通過して後側セパレータ14内の吸い込みノズル16から吸い込まれ、セパレータ用ブロア12の吸い込み口へ戻る。この時、後側セパレータ14に設けられたシール部材16によって吸着ローター1と後側セパレータ14との間はシールされ、吸着ゾーン4に入る空気と脱着ゾーン5から出た空気及び吐出しノズル13を出た空気とが混合することはない。
【0036】また脱着ゾーン5を出た空気は脱着のためにエネルギーが奪われ、温度が下がる。従って、シール部材16は再生空気の温度で損傷を受けることはない。
【0037】例えば、脱着ゾーン5に入る空気の温度が300℃であったとすると脱着ゾーン5から出る空気の温度は90℃程度まで下がっており、シリコンゴムやフッ素系ゴム等の耐熱性ゴムを用いると十分な耐熱性を確保することができる。」

c「【図1】



(イ)前記(ア)aによれば、甲第2号証には「ガス処理装置」が記載されており、同b、cの記載によれば、前記「ガス処理装置」は、疎水性ゼオライトを担持したセラミック紙をハニカム状に形成したもの或いは活性炭紙をハニカム状に形成した有機溶剤蒸気の吸着ローターを備え、前記吸着ローターは、ケーシング内に回転可能に保持されており、前記ケーシングは、前側セパレータ及び後側セパレータにより吸着ゾーンと脱着ゾーンとに分割されており、前記吸着ローターはギヤドモータ、駆動ベルトにより回転駆動されるよう構成されているものである。
また、前記「ガス処理装置」は、脱着ゾーンと連通している脱着用ヒーター、脱着ゾーンの出口側に吸い込み口が連通している脱着用ブロアを備え、これによって脱着用ヒーターで加熱された空気が脱着ゾーンを通過するものであり、更に有機溶剤蒸気や湿気を含む処理空気を送る処理空気用ブロア、前側セパレータに高速空気流を発生させるセパレータ用ブロアを備えるものである。
そして、前記「ガス処理装置」は、先ず、脱着用ブロア、処理空気用ブロア、ギヤドモータ、セパレータ用ブロア及び脱着用ヒーターに通電し、これによって、有機溶剤蒸気や湿気を含む処理空気が処理空気用ブロアによって吸着ゾーンへ送られ、処理空気中の有機溶剤蒸気や湿気が吸着ローターに吸着されるものであり、また、脱着用ヒーターによって加熱された空気が脱着ゾーンを通過し、吸着された有機溶剤蒸気が脱着され、脱着用ブロアによって燃焼処理装置や触媒処理装置へ送られ、無害化処理が行われるものである。
ここで、セパレータ用ブロアによって前側セパレータと吸着ローターとの間に高速空気流が形成されているため、前側セパレータは吸着ローターに対して非接触状態であるが、吸着ゾーンを出た空気と脱着ゾーンへ入る空気とが混合することは殆どないものであり、前側セパレータの吐出しノズルを出た高速空気は吸着ローターを通過して後側セパレータ内の吸い込みノズルから吸い込まれ、セパレータ用ブロアの吸い込み口へ戻るのであるが、この時、後側セパレータに設けられたシール部材によって吸着ローターと後側セパレータとの間はシールされ、吸着ゾーンに入る空気と脱着ゾーンから出た空気及び吐出しノズルを出た空気とが混合することはないものである。
また、脱着ゾーンを出た空気は脱着のためにエネルギーが奪われ、温度が下がるので、シール部材は再生空気の温度で損傷を受けることはないのであり、脱着ゾーンに入る空気の温度が300℃であったとすると、脱着ゾーンから出る空気の温度は90℃程度まで下がっており、シリコンゴムやフッ素系ゴム等の耐熱性ゴムを用いると十分な耐熱性を確保することができるものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第2号証には、
「ガス処理装置であって、
当該ガス処理装置は、疎水性ゼオライトを担持したセラミック紙をハニカム状に形成したもの或いは活性炭紙をハニカム状に形成した有機溶剤蒸気の吸着ローターを備え、前記吸着ローターは、ケーシング内に回転可能に保持されており、前記ケーシングは、前側セパレータ及び後側セパレータにより吸着ゾーンと脱着ゾーンとに分割されており、前記吸着ローターはギヤドモータ、駆動ベルトにより回転駆動されるよう構成されているものであり、
前記ガス処理装置は、脱着ゾーンと連通している脱着用ヒーター、脱着ゾーンの出口側に吸い込み口が連通している脱着用ブロアを備え、これによって脱着用ヒーターで加熱された空気が脱着ゾーンを通過するものであり、更に有機溶剤蒸気や湿気を含む処理空気を送る処理空気用ブロア、前側セパレータに高速空気流を発生させるセパレータ用ブロアを備えるものであり、
前記ガス処理装置は、先ず、脱着用ブロア、処理空気用ブロア、ギヤドモータ、セパレータ用ブロア及び脱着用ヒーターに通電し、これによって、有機溶剤蒸気や湿気を含む処理空気が処理空気用ブロアによって吸着ゾーンへ送られ、処理空気中の有機溶剤蒸気や湿気が吸着ローターに吸着されるものであり、また、脱着用ヒーターによって加熱された空気が脱着ゾーンを通過し、吸着された有機溶剤蒸気が脱着され、脱着用ブロアによって燃焼処理装置や触媒処理装置へ送られ、無害化処理が行われるものであり、
セパレータ用ブロアによって前側セパレータと吸着ローターとの間に高速空気流が形成されているため、前側セパレータは吸着ローターに対して非接触状態であるが、吸着ゾーンを出た空気と脱着ゾーンへ入る空気とが混合することは殆どないものであり、前側セパレータの吐出しノズルを出た高速空気は吸着ローターを通過して後側セパレータ内の吸い込みノズルから吸い込まれ、セパレータ用ブロアの吸い込み口へ戻るのであるが、この時、後側セパレータに設けられたシール部材によって吸着ローターと後側セパレータとの間はシールされ、吸着ゾーンに入る空気と脱着ゾーンから出た空気及び吐出しノズルを出た空気とが混合することはないものであり、
脱着ゾーンを出た空気は脱着のためにエネルギーが奪われ、温度が下がるので、シール部材は再生空気の温度で損傷を受けることはないのであり、脱着ゾーンに入る空気の温度が300℃であったとすると、脱着ゾーンから出る空気の温度は90℃程度まで下がっており、シリコンゴムやフッ素系ゴム等の耐熱性ゴムを用いると十分な耐熱性を確保することができるものである、ガス処理装置。」の発明(以下、「奥村甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)対比
前記第6の2(1)アと同様にして本件発明1と奥村甲2発明とを対比すると、本件発明1と奥村甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1’:本件発明1は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるのに対して、奥村甲2発明は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるか否かが明らかでない点。

(イ)判断
前記(ア)の相違点1’について検討すると、前記相違点1’は、前記第6の2(1)イの相違点1と同じものであって、奥村甲2発明における再生ゾーンを通過する前のガス中の絶対湿度等が明らかでないことは、引用1発明と同様である。
すると、前記第6の2(2)イ、ウに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が奥村甲2発明であるとはいえないし、本件発明1は、奥村甲2発明及び甲第4〜17号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、申立人奥村による前記第4の1(2)の特許異議申立理由も理由がない。

(3)甲第3号証を主引用例とした場合について
ア 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
(ア)甲第3号証には、以下のa〜cの記載がある。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】通気孔の深さ方向に一部にゼオライトを有し残りの部分に活性炭を有するハニカムローターを備え、前記ハニカムローターを回転させる駆動手段を設けるとともに、ハニカムローターの一部を被処理空気を流す吸着ゾーンとし、他の一部を脱着空気を流す脱着ゾーンとし、前記脱着ゾーンに前記ハニカムローターのゼオライトを有する側から脱着空気を流すようにしたことを特徴とするガス濃縮装置。」

b「【0012】
【実施例】以下本発明のガス濃縮装置の実施例について図に沿って詳細に説明する。図1は本発明のガス濃縮装置の概略図である。
【0013】図1において1はハニカムローターであり、活性炭部2とゼオライト部3より構成されている。つまり活性炭部2は繊維状活性炭を抄紙して作られた活性炭紙をハニカム状に構成したものである。
・・・
【0016】4はギヤドモーターであり、このギヤドモーターの回転出力はベルト5を介してハニカムローター1を回転駆動する。
【0017】6は脱着ゾーン、7は吸着ゾーンである。このそれぞれのゾーンはシール部材によって仕切られているが、この構造は実用新案登録第2512614号や実用新案登録第2536860号公報で一般に知られているため、説明を省略する。
【0018】脱着ゾーン6にはヒーター8で例えば180℃に加熱された空気が送られ、吸着ゾーン7には有機溶剤蒸気を含む被処理空気が通される。ここで被処理空気は、シクロヘキサンとイソ・プロピル・アルコール(以下IPAと略す)を含む場合を例にとって説明する。
【0019】被処理空気がハニカムローター1を通過する際に、先ずゼオライト部3を通過する。すると被処理空気中のIPAがゼオライトに吸着され、シクロヘキサンと空気との混合気体が活性炭部2に入り、ここを通過する。活性炭部2を通過する際に空気中のシクロヘキサンが活性炭2に吸着される。
【0020】ハニカムローター1はギヤドモーター4の駆動力でベルト5を介して回転されているため、ハニカムローター1の有機溶剤蒸気を吸着した部分は脱着ゾーン6へと移動する。
【0021】脱着ゾーン6にはヒーター8で180℃に加熱された脱着空気が送られ、この高温の空気によって先ずゼオライト部3でゼオライトに吸着したIPAが脱着する。この脱着に伴って脱着空気の温度が110℃程度まで下がり、活性炭部2に入る。
【0022】活性炭部2の活性炭にはシクロヘキサンが吸着しており、シクロヘキサンの沸点は81℃であるので、110℃の脱着空気によってもシクロヘキサンは脱着する。」

c「【図1】



(イ)前記(ア)aによれば、甲第3号証には「ガス濃縮装置」が記載されており、同b、cの記載によれば、前記「ガス濃縮装置」は、活性炭部とゼオライト部より構成されているハニカムローター、その回転出力がベルトを介してハニカムローターを回転駆動するギヤドモーター、シール部材によって仕切られている脱着ゾーン、吸着ゾーンを備え、脱着ゾーンにはヒーターで例えば180℃に加熱された空気が送られ、吸着ゾーンには有機溶剤蒸気、すなわちシクロヘキサンとイソ・プロピル・アルコール(IPA)を含む被処理空気が通されるものである。
そして、前記「ガス濃縮装置」は、被処理空気がハニカムローターを通過する際に、先ずゼオライト部を通過して、被処理空気中のIPAがゼオライトに吸着されるものであり、次に、シクロヘキサンと空気との混合気体が活性炭部に入り、ここを通過して、空気中のシクロヘキサンが活性炭に吸着されるものである。
また、ハニカムローターはギヤドモーターの駆動力でベルトを介して回転されているため、ハニカムローターの有機溶剤蒸気を吸着した部分は脱着ゾーンへと移動し、脱着ゾーンにはヒーターで180℃に加熱された脱着空気が送られ、この高温の空気によって先ずゼオライト部でゼオライトに吸着したIPAが脱着し、この脱着に伴って脱着空気の温度が110℃程度まで下がり、活性炭部に入るものであり、活性炭部の活性炭にはシクロヘキサンが吸着しており、シクロヘキサンの沸点は81℃であるので、110℃の脱着空気によってもシクロヘキサンは脱着するものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第3号証には、
「ガス濃縮装置であって、
当該ガス濃縮装置は、活性炭部とゼオライト部より構成されているハニカムローター、その回転出力がベルトを介してハニカムローターを回転駆動するギヤドモーター、シール部材によって仕切られている脱着ゾーン、吸着ゾーンを備え、脱着ゾーンにはヒーターで例えば180℃に加熱された空気が送られ、吸着ゾーンには有機溶剤蒸気、すなわちシクロヘキサンとイソ・プロピル・アルコール(IPA)を含む被処理空気が通されるものであり、
前記ガス濃縮装置は、被処理空気がハニカムローターを通過する際に、先ずゼオライト部を通過して、被処理空気中のIPAがゼオライトに吸着されるものであり、次に、シクロヘキサンと空気との混合気体が活性炭部に入り、ここを通過して、空気中のシクロヘキサンが活性炭に吸着されるものであり、
ハニカムローターはギヤドモーターの駆動力でベルトを介して回転されているため、ハニカムローターの有機溶剤蒸気を吸着した部分は脱着ゾーンへと移動し、脱着ゾーンにはヒーターで180℃に加熱された脱着空気が送られ、この高温の空気によって先ずゼオライト部でゼオライトに吸着したIPAが脱着し、この脱着に伴って脱着空気の温度が110℃程度まで下がり、活性炭部に入るものであり、活性炭部の活性炭にはシクロヘキサンが吸着しており、シクロヘキサンの沸点は81℃であるので、110℃の脱着空気によってもシクロヘキサンは脱着するものである、ガス濃縮装置。」の発明(以下、「奥村甲3発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)対比
前記第6の2(1)アと同様にして本件発明1と奥村甲3発明とを対比すると、本件発明1と奥村甲3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1”:本件発明1は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるのに対して、奥村甲3発明は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるか否かが明らかでない点。

(イ)判断
前記(ア)の相違点1”について検討すると、前記相違点1”は、前記第6の2(1)イの相違点1と同じものであって、奥村甲3発明における再生ゾーンを通過する前のガス中の絶対湿度等が明らかでないことは、引用1発明と同様である。
すると、前記第6の2(2)イ、ウに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が奥村甲3発明であるとはいえないし、本件発明1は、奥村甲3発明及び甲第4〜17号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、申立人奥村による前記第4の1(3)の特許異議申立理由も理由がない。

(4)小括
よって、申立人奥村の特許異議申立理由はいずれも理由がない。

2 申立人河井による特許異議申立理由について
ここでいう甲第1〜7号証は、前記第4の2(8)に記載した、申立人河井が提出した甲第1〜7号証である。
(1)甲第1号証を主引用例とした場合について
ア 甲各号証の記載事項等
(ア)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
a 甲第1号証には、以下の(a)〜(c)の記載がある。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 吸着ゾーン、再生ゾーンおよび冷却ゾーンに分割されたハニカムロータを有する濃縮式脱臭装置における再生効率を高める方法において、再生ゾーンを円周方向に複数個の再生ゾーンに分割し、各再生ゾーンに再生用加熱空気を流すことを特徴とする方法。」

(b)「【0004】この濃縮のメカニズムを図7、図8に示す。図7は、従来例の濃縮式脱臭装置の概略斜視図であり、図8は、従来例の方法の模式フロー図である。図7において、濃縮装置の構造体であるハニカムロータ1は、駆動モータ5によって矢印Aで示す反時計方向に連続的に一定速度で回転される。ハニカムロータ1は、VOCを吸着する吸着ゾーン2、吸着したVOCを脱着してハニカムロータの吸着能力を回復させる再生ゾーン3、並びに再生ゾーンで加熱されたハニカムロータを冷却する冷却ゾーン4に分割されている。また、各ゾーンは相互にガスのリーク(漏れ)が生じないようにシール構造(図示せず)が施されている。
【0005】ハニカムロータの部分は、その回転により吸着ゾーン2、再生ゾーン3、並びに冷却ゾーン4の順で連続的に移動させられる。対象となる処理ガスは、矢印Bで示す方向に、吸着ゾーンを通されて、このガスに含まれるVOCはハニカムロータに配置された吸着体に吸着され、清浄(浄化)ガスとなり、大気に放出される。VOCを吸着したハニカムロータの部分は再生ゾーンに入り、この再生ゾーンでは、処理ガスの量と比べると少量である、加熱ヒータ6で加熱された加熱空気がハニカムロータの部分に通されて、ハニカムロータに吸着したVOCが脱着されて濃縮ガスとなる。
・・・
【0015】(実施例1)図1は、本発明の方法の実施例1の模式フロー図である。なお、実施例1を含む以下の各実施例において、従来例で用いられている部材と同様な機能および構成を持つ部材は、同一の符号を付してある。
【0016】図1において、再生ゾーン3は、円周方向に複数のゾーンに分割され、例えば、この実施例では、2分割されている。そして、2分割された再生ゾーンは相互にリークがないようにシールされている。説明の便宜上、分割された再生ゾーンのうち、吸着ゾーンに隣接する片方に3aの符号を付し、冷却ゾーンに隣接する他方に3bの符号を付すことにする。この実施例1においては、加熱ヒータ6で所定の温度に加熱された再生用加熱空気は、連続的に、最初に、吸着ゾーンに隣接する再生ゾーン3aを通され、次いで、再生ゾーン3aを通す加熱空気の方向とは反対方向に冷却ゾーンに隣接する再生ゾーン3bを通される。これによって、ハニカムロータの厚み方向の温度分布が均一化され、再生効率の向上が図られる。
・・・
【0020】次に、本発明の効果を確認するために、従来例と本発明を比較検討する。従来例の濃縮方法(図7、図8)では、再生用加熱空気量が濃縮倍率で決められるため、特に濃縮倍率が高くなると十分な熱量が得られず、VOCを吸着したハニカムロータが完全に再生されず、この結果、吸着効率が当然低下する。例えば、再生用加熱空気の温度が160°Cの場合、濃縮倍率が高くなると、再生用加熱空気量が減少し、再生ゾーンの出口の温度は約40°C前後まで低下する。VOCの物性にもよるが、再生空気温度が60°C以下になると、脱着現象はあまり期待されず、ハニカムロータの再生ゾーンの下流側ではVOCは脱着されずに残留し、当然この領域では吸着機能が失われる。」

(c)「【図1】



b 前記a(a)の記載によれば、甲第1号証には「濃縮式脱臭装置」が記載されており、同(b)、(c)の記載によれば、前記「濃縮式脱臭装置」のハニカムロータは、駆動モータによって連続的に一定速度で回転されるものであって、VOCを吸着する吸着ゾーン、吸着したVOCを脱着してハニカムロータの吸着能力を回復させる再生ゾーン、並びに再生ゾーンで加熱されたハニカムロータを冷却する冷却ゾーンに分割されているものであり、ハニカムロータの部分は、その回転により吸着ゾーン、再生ゾーン、並びに冷却ゾーンの順で連続的に移動させられ、対象となる処理ガスは、吸着ゾーンを通されて、このガスに含まれるVOCはハニカムロータに配置された吸着体に吸着され、清浄(浄化)ガスとなり、大気に放出されるものであり、VOCを吸着したハニカムロータの部分は再生ゾーンに入り、この再生ゾーンでは、処理ガスの量と比べると少量である、加熱ヒータで加熱された加熱空気がハニカムロータの部分に通されて、ハニカムロータに吸着したVOCが脱着されて濃縮ガスとなるものである。
そして、前記「濃縮式脱臭装置」の再生ゾーンは、円周方向に複数のゾーンに分割され、例えば2分割されているものであり、加熱ヒータで所定の温度に加熱された再生用加熱空気は、連続的に、最初に、吸着ゾーンに隣接する再生ゾーンを通され、次いで、再生ゾーンを通す加熱空気の方向とは反対方向に冷却ゾーンに隣接する再生ゾーンを通されるものであり、これによって、ハニカムロータの厚み方向の温度分布が均一化され、再生効率の向上が図られるものである。
更に、前記「濃縮式脱臭装置」において再生用加熱空気の温度が160℃の場合、濃縮倍率が高くなると、再生用加熱空気量が減少し、再生ゾーンの出口の温度は約40℃前後まで低下するものであり、再生空気温度が60℃以下になると、脱着現象はあまり期待されず、ハニカムロータの再生ゾーンの下流側ではVOCは脱着されずに残留し、当然この領域では吸着機能が失われるものである。

c 前記bによれば、甲第1号証には、
「濃縮式脱臭装置であって、
前記濃縮式脱臭装置のハニカムロータは、駆動モータによって連続的に一定速度で回転されるものであって、VOCを吸着する吸着ゾーン、吸着したVOCを脱着してハニカムロータの吸着能力を回復させる再生ゾーン、並びに再生ゾーンで加熱されたハニカムロータを冷却する冷却ゾーンに分割されているものであり、
ハニカムロータの部分は、その回転により吸着ゾーン、再生ゾーン、並びに冷却ゾーンの順で連続的に移動させられるものであり、対象となる処理ガスは、吸着ゾーンを通されて、このガスに含まれるVOCはハニカムロータに配置された吸着体に吸着され、清浄(浄化)ガスとなり、大気に放出されるものであり、VOCを吸着したハニカムロータの部分は再生ゾーンに入り、この再生ゾーンでは、処理ガスの量と比べると少量である、加熱ヒータで加熱された加熱空気がハニカムロータの部分に通されて、ハニカムロータに吸着したVOCが脱着されて濃縮ガスとなるものであり、
前記濃縮式脱臭装置の再生ゾーンは、円周方向に複数のゾーンに分割され、例えば2分割されているものであり、加熱ヒータで所定の温度に加熱された再生用加熱空気は、連続的に、最初に、吸着ゾーンに隣接する再生ゾーンを通され、次いで、再生ゾーンを通す加熱空気の方向とは反対方向に冷却ゾーンに隣接する再生ゾーンを通されるものであり、これによって、ハニカムロータの厚み方向の温度分布が均一化され、再生効率の向上が図られるものであり、
更に、前記濃縮式脱臭装置において再生用加熱空気の温度が160℃の場合、濃縮倍率が高くなると、再生用加熱空気量が減少し、再生ゾーンの出口の温度は約40℃前後まで低下するものであり、再生空気温度が60℃以下になると、脱着現象はあまり期待されず、ハニカムロータの再生ゾーンの下流側ではVOCは脱着されずに残留し、当然この領域では吸着機能が失われるものである、濃縮式脱臭装置。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の記載がある。
「【0028】(VOC処理モード)
図2は、VOC処理モードを説明するための図である。コントローラ41は、VOC処理モードおよび高温再生モードを備える。以下、VOC処理モードのコントローラ41が動作する際の各ガスの流れ等について説明する。VOC処理モードは、大風量・低濃度の処理対象ガスを小風量・高濃度の濃縮ガスに変換するためのものである。
【0029】
処理対象ガスは、処理ゾーン22に送られる。処理対象ガスは、塗装工程等で発生する排ガスであり、低濃度のVOCを含む。処理対象ガスについて、温度は例えば20℃〜30℃であり、風量は大風量である。処理ゾーン22では、処理対象ガスが、ロータ2を通過し、含有するVOCがロータ2に吸着されて清浄ガスとなる。清浄ガスの温度は、例えば30℃〜35℃となる。清浄ガスは、第1ファン21により大気中や工場内へ送られる。処理ゾーン22でVOCを吸着したロータ2の部位は、ロータ2の回転により再生ゾーン23に移行する。
【0030】
処理対象ガスよりも小風量の第1加熱ガスが、再生ゾーン23に送られる。第1加熱ガスの温度である再生温度は、180℃〜250℃であり、処理対象ガス中のVOCの沸点よりも高い。コントローラ41は、第1センサ55により第1加熱ガスの温度を監視する。
【0031】
再生ゾーン23では、第1加熱ガスが、処理ゾーン22でVOCを吸着したロータ2の部位を通過し、該部位からVOCを離脱して濃縮ガスとなる。濃縮ガスのVOCの濃度は、処理対象ガスのVOCの濃度よりも高くなる。濃縮ガスの温度は、例えば50℃以上となる。・・・」

イ 対比・判断
(ア)対比
前記第6の2(1)アと同様にして本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1''':本件発明1は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるのに対して、甲1発明は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるか否かが明らかでない点。

(イ)判断
前記(ア)の相違点1'''について検討すると、前記相違点1'''は、前記第6の2(1)イの相違点1と同じものであって、甲1発明における再生ゾーンを通過する前のガス中の絶対湿度等が明らかでないことは、引用1発明と同様である。
すると、前記第6の2(2)イに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明であるとはいえないのであり、更に本件発明2〜3について検討しても事情は同じである。
次に、前記相違点1'''の容易想到性について検討すると、甲第4号証にも、「VOC濃縮装置」において「液状物の発生を防ぐようにした」ことは記載も示唆もされていないし、甲第5〜7号証の記載(摘記は省略した。)をみても事情は同じであるから、甲1発明において、前記相違点1'''に係る本件発明1の発明特定事項を有するには至らないので、本件発明1は、甲1発明及び甲第4〜7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、更に本件発明4及び7について検討しても事情は同じである。
したがって、本件発明1〜3は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明4及び7が、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証、甲第5号証及び甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、申立人河井による前記第4の2(1)の特許異議申立理由、及び、同(6)、(7)のうち甲第1号証を主引用例とした場合についての特許異議申立理由はいずれも理由がない。

(2)甲第2号証を主引用例とした場合について
ア 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
(ア)甲第2号証には、以下のa〜cの記載がある。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材を使用して、吸着操作時に低濃度の揮発性有機溶剤を含むガス中の有機溶剤を吸着させ、脱着操作時に有機溶剤を吸着した該吸着材に加熱流体を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置からなる有機溶剤含有ガス処理システムであって、濃縮装置から排出される濃縮された脱着ガスの流路に吸着体を配置することを特徴とする有機溶剤含有ガス処理システム。」

b「【0007】
図2は、一般的な吸着濃縮装置を用いた有機溶剤処理システムを示したものである。
【0008】
吸着濃縮装置60により得られた脱着ガスを燃焼装置61にて酸化分解処理して清浄空気として排出するシステムである。吸着濃縮処理を行なうことで燃焼時に使用される燃料使用量を低減でき、経済的に有機溶剤含有ガスを処理できるシステムとなる。
・・・
【0015】
本発明における濃縮装置の原理を図4に示す。大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置1は、中心軸2まわりに回転可能な円筒形のケース3を有しており、このケース3内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着材4が収納されて全体として筒状吸着体を構成している。
【0016】
筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部1aと脱着部1bが区画されており、吸着材(吸着体)4がそれら吸着部1aと脱着部1bとを交互に通過するようになっている。
【0017】
上記吸着部1aには、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管5と、濃縮装置1の吸着材4によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管6が設けられている。
【0018】
また、脱着部1bには、VOCを吸着した吸着材4に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管7が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっている。」

c「【図2】



(イ)前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には、吸着材を使用して、吸着操作時に低濃度の揮発性有機溶剤を含むガス中の有機溶剤を吸着させ、脱着操作時に有機溶剤を吸着した該吸着材に加熱流体を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置からなる「有機溶剤含有ガス処理システム」であって、濃縮装置から排出される濃縮された脱着ガスの流路に吸着体を配置する「有機溶剤含有ガス処理システム」が記載されている。
そして、前記(ア)bの記載によれば、前記「有機溶剤含有ガス処理システム」は、吸着濃縮装置により得られた脱着ガスを燃焼装置にて酸化分解処理して清浄空気として排出するシステムであって、大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置は、中心軸まわりに回転可能な円筒形のケースを有しており、このケース内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着材が収納されて全体として筒状吸着体を構成しているものであり、筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部と脱着部が区画されており、吸着材(吸着体)がそれら吸着部と脱着部とを交互に通過するようになっているものである。
また、吸着部には、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管と、濃縮装置の吸着材によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管が設けられているものであり、脱着部には、VOCを吸着した吸着材に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっているものであり、前記(ア)cの記載によれば、濃縮された脱着ガスの温度が90℃であることが看取されるものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第2号証には、
「吸着材を使用して、吸着操作時に低濃度の揮発性有機溶剤を含むガス中の有機溶剤を吸着させ、脱着操作時に有機溶剤を吸着した該吸着材に加熱流体を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置からなる有機溶剤含有ガス処理システムであって、濃縮装置から排出される濃縮された脱着ガスの流路に吸着体を配置する有機溶剤含有ガス処理システムであり、
前記有機溶剤含有ガス処理システムは、吸着濃縮装置により得られた脱着ガスを燃焼装置にて酸化分解処理して清浄空気として排出するシステムであって、大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置は、中心軸まわりに回転可能な円筒形のケースを有しており、このケース内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着材が収納されて全体として筒状吸着体を構成しているものであり、筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部と脱着部が区画されており、吸着材(吸着体)がそれら吸着部と脱着部とを交互に通過するようになっているものであり、
吸着部には、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管と、濃縮装置の吸着材によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管が設けられているものであり、脱着部には、VOCを吸着した吸着材に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっているものであり、濃縮された脱着ガスの温度が90℃である、有機溶剤含有ガス処理システム。」の発明(以下、「河井甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)対比
前記第6の2(1)アと同様にして本件発明1と河井甲2発明とを対比すると、本件発明1と河井甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1'''':本件発明1は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるのに対して、河井甲2発明は、「液状物の発生を防ぐようにした」ものであるか否かが明らかでない点。

(イ)判断
始めに、前記(ア)の相違点1''''が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記相違点1''''は、前記第6の2(1)イの相違点1と同じものであって、河井甲2発明における再生ゾーンを通過する前のガス中の絶対湿度等が明らかでないことは、引用1発明と同様であるから、前記第6の2(2)イに記載したのと同様の理由により、前記相違点1''''は実質的な相違点である。
次に、前記相違点1''''の容易想到性について検討すると、前記(1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、本件発明1は、河井甲2発明及び甲第4〜7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、更に本件発明2〜4及び7について検討しても事情は同じである。
したがって、本件発明1〜4及び7は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証〜甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、申立人河井による前記第4の2(2)の特許異議申立理由、及び、同(4)〜(7)のうち甲第2号証を主引用例とした場合についての特許異議申立理由もいずれも理由がない。

(3)甲第3号証を主引用例とした場合について
ア 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
(ア)甲第3号証には、以下のa〜gの記載がある。
a「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項8】
回転ベッド収着システムであって、
プロセス流体の流れと、
再生流体の流れと、
前記プロセス流体の流れおよび前記再生流体の流れとは分離して閉ループで再循環する第1の分離流体の流れと、
前記プロセス流体の流れ、前記再生流体の流れ、および前記第1の分離流体の流れとは分離して閉ループで再循環する第2の分離流体の流れと、
前記プロセス流体の流れ、前記再生流体の流れ、前記第1の分離流体の流れ、および前記第2の分離流体の流れの各々が通過する再生可能な収着剤材料の回転収着剤塊と、を含む回転ベッド収着システムにおいて、
所定の体積の前記収着剤塊が、動作サイクルで、前記プロセス流体の流れを通過させ、前記プロセス流体の流れに戻る前に、前記第1の分離流体の流れ、前記第2の分離流体の流れ、前記再生流体の流れ、前記第2の分離流体の流れ、および前記第1の分離流体の流れを順次通過させることを特徴とする回転ベッド収着システム。」

b「【0002】
プロセス流体の流れまたは収着流体の流れとも呼ばれる一方の流体の流れから収着物を収集して、収着物をより濃縮した形態で、脱着流体の流れまたは再生流体の流れとも呼ばれる第2の流体の流れまで移動させるために、回転ベッド収着システムが長年にわたって使用されてきた。除去された収着物は、一般的に、水蒸気、揮発性有機化合物(「VOCs」)、窒素酸化物(「NOx」)等を含む。」

c「【0019】
図1は、本発明による回転ベッド収着システム10の第1の好ましい実施形態を示している。このシステムは、再生可能な収着剤材料を含むかまたはそれでコーティングされた従来の構造の回転ディスク型多孔質塊11を含み、この回転ディスク型多孔質塊は、動作サイクルにおいて、第1の領域1、第2の領域2、第3の領域3、および第4の領域4を順次通過する。収着剤塊11は、既知のロータ機構(図示せず)によって、収着剤塊11の軸線を中心として、矢印Aで示した方向に回転される。
【0020】
収着物(例えば水蒸気)を伴うプロセス流体の流れ12は、収着剤塊11の第1の領域1を通過し、ここで、収着物は収着剤塊11の上に収着する(すなわち取着する)。収着剤塊から出るプロセス流体の流れは、収着剤塊に入るプロセス流体の流れと比較して収着物濃度が低下している。ファン、送風機、または他の流体移動装置13を必要に応じて使用して、プロセス流体の流れを配管(図示せず)に流すことができる。
【0021】
再生流体の流れ14は、プロセス流体の流れ12の流動方向とは反対方向に収着剤塊11の第3の領域3を通過する。収着剤塊11に収集されたプロセス流体の流れからの収着物は、再生流体の流れの中に放出される。再生流体の流れ14が収着剤塊11を通過する前に、再生流体の流れ14を加熱するように、加熱器15を設けることができる。プロセス流体の流れと同様に、ファン、送風機、または他の流体移動装置16を使用して、再生流体の流れを流すことができる。

d「【0038】
凝縮または凍結に関する設計基準
この設計基準の決定において、任意の2つの隣接する領域の接点における凝縮または凍結の可能性があるかどうかという問題が生じる。境界における凍結生成の影響は破壊的なものである場合がある。凍結物がディスク面に凍り付くことがあり、氷の蓄積により、ディスク面が損傷することがある。凝縮の影響はそれほど破壊的なものではないが、多種類の乾燥剤、特にシリカゲルに長期にわたって水が衝突することにより、著しい劣化の影響が生じることがあり、最終的には、性能の低下または損失が生じることになる。分離方法に関連してまたは分離方法のあるいは、上記の決定を用いて、凝縮生成または凍結生成を防止することができる。
【0039】
さらに除湿するために冷気を必要とする以下に説明する冷凍室用途において、湿った周囲空気のみが再生に利用可能である。図3では、プロセス流体の流れは800SFPM(標準フィート/分)(240標準メートル毎分)の速度で領域1を通過し、再生流体の流れは250SFPM(75標準メートル毎分)の速度で領域2を通過する。図3に見られるように、領域1の温度状態と領域2の湿度状態とから、領域1と2の境界は凝縮生成および氷生成の可能性が明らかである。具体的には、再生出口空気は76.2°F(約24.6℃)の露点(137グレイン/ポンド)を有し、温度が0°F(約−18℃)のプロセス入口空気の隣に位置する。上記の状態において、漏れまたは伝導からの局所冷却により、凍結がすぐに生じる可能性がある。
【0040】
図4は、分離ループが、図3に示したシステムに付加されている4領域型システムを示している。また、図4では、領域1はプロセス流体の流れを表しており、領域3は再生流体の流れを表しており、領域2と4は分離ループの分離流体の流れを表している。この場合にも、領域1と4の温度状態および湿度状態は、図4の破線矢印で示したように、凍結の可能性が領域1と4の境界に沿ってまだ存在するような状態である。
【0041】
したがって、図5に示したように、追加の分離ループがシステムに付加される。図5では、領域1はプロセス流体の流れを表しており、領域4は再生流体の流れを表しており、領域2と5は一方の分離ループの分離流体の流れを表しており、領域3と6は他方の分離ループの分離流体の流れを表している。ここで、領域6から出る分離流体の流れの露点は、領域1から出るプロセス流体の流れの温度よりも低いので、凍結または凝縮の可能性が排除されている。」

e「【図1】



f「【図3】



g「【図5】



(イ)前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には「回転ベッド収着システム」が記載されており、同c、eの記載によれば、前記「回転ベッド収着システム」は、再生可能な収着剤材料を含むかまたはそれでコーティングされた従来の構造の回転ディスク型多孔質塊を含み、この回転ディスク型多孔質塊は、動作サイクルにおいて、第1の領域、第2の領域、第3の領域、および第4の領域を順次通過するものであり、収着物(例えば水蒸気)を伴うプロセス流体の流れは、収着剤塊の第1の領域を通過し、ここで、収着物は収着剤塊の上に収着する(すなわち取着する)ものであり、収着剤塊から出るプロセス流体の流れは、収着剤塊に入るプロセス流体の流れと比較して収着物濃度が低下しているものである。
また、前記「回転ベッド収着システム」における再生流体の流れは、プロセス流体の流れの流動方向とは反対方向に収着剤塊の第3の領域を通過するものであり、収着剤塊に収集されたプロセス流体の流れからの収着物は、再生流体の流れの中に放出されるものであり、再生流体の流れが収着剤塊を通過する前に、再生流体の流れを加熱するように、加熱器を設けることができるものである。
更に、前記(ア)dの記載によれば、前記「回転ベッド収着システム」は、除湿するために冷気を必要とする冷凍室用途において、凍結物がディスク面に凍り付くことがあり、氷の蓄積により、ディスク面が損傷することがあり、凝縮の影響はそれほど破壊的なものではないが、多種類の乾燥剤、特にシリカゲルに長期にわたって水が衝突することにより、著しい劣化の影響が生じることがあり、最終的には、性能の低下または損失が生じることから、凝縮または凍結に関する設計基準において、分離ループと、追加の分離ループがシステムに付加されるものであり、これにより、分離流体の流れの露点は、プロセス流体の流れの温度よりも低くなるので、凍結または凝縮の可能性が排除されているものであり、同gの記載によれば、このときの収着剤塊を通過した再生流体が、250SFPM、194DegF、81DewPt、163gr/LBであることが看取されるものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第3号証には、
「回転ベッド収着システムであって、
前記回転ベッド収着システムは、再生可能な収着剤材料を含むかまたはそれでコーティングされた従来の構造の回転ディスク型多孔質塊を含み、この回転ディスク型多孔質塊は、動作サイクルにおいて、第1の領域、第2の領域、第3の領域、および第4の領域を順次通過するものであり、収着物(例えば水蒸気)を伴うプロセス流体の流れは、収着剤塊の第1の領域を通過し、ここで、収着物は収着剤塊の上に収着する(すなわち取着する)ものであり、収着剤塊から出るプロセス流体の流れは、収着剤塊に入るプロセス流体の流れと比較して収着物濃度が低下しているものであり、
前記回転ベッド収着システムにおける再生流体の流れは、プロセス流体の流れの流動方向とは反対方向に収着剤塊の第3の領域を通過するものであり、収着剤塊に収集されたプロセス流体の流れからの収着物は、再生流体の流れの中に放出されるものであり、再生流体の流れが収着剤塊を通過する前に、再生流体の流れを加熱するように、加熱器を設けることができるものであり、
前記回転ベッド収着システムは、除湿するために冷気を必要とする冷凍室用途において、凍結物がディスク面に凍り付くことがあり、氷の蓄積により、ディスク面が損傷することがあり、凝縮の影響はそれほど破壊的なものではないが、多種類の乾燥剤、特にシリカゲルに長期にわたって水が衝突することにより、著しい劣化の影響が生じることがあり、最終的には、性能の低下または損失が生じることから、凝縮または凍結に関する設計基準において、分離ループと、追加の分離ループがシステムに付加されるものであり、これにより、分離流体の流れの露点は、プロセス流体の流れの温度よりも低いので、凍結または凝縮の可能性が排除されているものであり、
このときの収着剤塊を通過した再生流体が、250SFPM、194DegF、81DewPt、163gr/LBである、回転ベッド収着システム。」の発明(以下、「河井甲3発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)対比
本件発明1と河井甲3発明とを対比すると、河井甲3発明における「回転ディスク型多孔質塊」、「第1の領域」、「第3の領域」、「加熱器」及び「回転ベッド収着システム」は、それぞれ、本件発明1における「ロータ」、「処理ゾーン」、「再生ゾーン」、「加熱手段」及び「装置」に相当する。
そして、河井甲3発明において、「収着物(例えば水蒸気)を伴うプロセス流体の流れ」が「収着剤塊の第1の領域を通過」することは、本件発明1において、「処理対象ガスを前記処理ゾーンに通」すことに相当し、河井甲3発明において、「再生流体の流れ」が「プロセス流体の流れの流動方向とは反対方向に収着剤塊の第3の領域を通過する」ことは、本件発明1において、「前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通」すことに相当する。
すると、本件発明1と河井甲3発明とは、
「ロータを備え、前記ロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを前記処理ゾーンに通し、前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通す、装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2:本件発明1は、「ロータ」が「ハニカムロータ」であるのに対して、河井甲3発明は、「ロータ」が「ハニカムロータ」であるか否かが明らかでない点。
・相違点3:本件発明1は、「前記処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し」、「前記再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出するようにした」、との発明特定事項を有するのに対して、河井甲3発明が前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。
・相違点4:本件発明1は、「VOC濃縮装置」に係るものであって、「前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにした」ものであるのに対して、河井甲3発明は、「除湿するために冷気を必要とする冷凍室用途」の「回転ベッド収着システム」に係るものであって、「収着剤塊を通過した再生流体が、250SFPM、194DegF、81DewPt、163gr/LBである」点。

(イ)判断
事案に鑑み、前記(ア)の相違点4から検討すると、河井甲3発明に係る「回転ベッド収着システム」は、「除湿するために冷気を必要とする冷凍室用途」のものであって、「凍結物がディスク面に凍り付くことがあり、氷の蓄積により、ディスク面が損傷することがあり、凝縮の影響はそれほど破壊的なものではないが、多種類の乾燥剤、特にシリカゲルに長期にわたって水が衝突することにより、著しい劣化の影響が生じることがあり、最終的には、性能の低下または損失が生じる」のを、「分離ループと、追加の分離ループ」を「システムに付加」することで、「分離流体の流れの露点がプロセス流体の流れの温度よりも低くなるので、凍結または凝縮の可能性が排除される」ものであるから、「回転ベッド収着システム」において水蒸気を除去することを想定したものといえる。
そして、そのような河井甲3発明を「VOC濃縮装置」とすることはそもそも想定できない。
また、水蒸気を除去することを想定した河井甲3発明において、「収着剤塊を通過した再生流体が、250SFPM、194DegF、81DewPt、163gr/LB」となっているとしても、このことから、「VOC濃縮装置」において、「前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにした」ことが開示されるものではないし、甲第4〜7号証にも、このことが記載も示唆もされるものではない。
してみれば、前記ア(ア)bに、長年にわたって使用されてきた回転ベッド収着システムにより除去される収着物が、一般的に、揮発性有機化合物(「VOCs」)等を含むことが記載されているとしても、当業者は、水蒸気を除去することを想定した河井甲3発明において、前記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることはできないから、その余の相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、河井甲3発明及び甲第4〜7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、更に本件発明2〜4及び7について検討しても事情は同じである。
したがって、本件発明1〜4及び7は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証〜甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、申立人河井による前記第4の2(3)の特許異議申立理由、及び、同(4)〜(7)のうち甲第3号証を主引用例とした場合についての特許異議申立理由もいずれも理由がない。

(4)小括
よって、申立人河井の特許異議申立理由も、いずれも理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜4、7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1〜4、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムロータを備え、前記ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割し、処理対象ガスを前記処理ゾーンに通し、前記処理ゾーンを通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、前記処理対象ガスの一部及び/又は外気を加熱手段へ通し、前記加熱手段を通過したガスを前記再生ゾーンに通し、前記再生ゾーンを通過したガスを後段の装置、或いは大気放出するようにしたガス処理装置において、前記再生ゾーンを通過したガスの温度が60〜120℃となるように運転して液状物の発生を防ぐようにしたことを特徴とするVOC濃縮装置。
【請求項2】
前記処理ゾーンと前記再生ゾーンの間に、さらに冷却ゾーンを設けたことを特徴とする請求項1に記載のVOC濃縮装置。
【請求項3】
前記処理対象ガスの一部、外気、前記処理ゾーンを通過したガスのうち少なくとも一つから成るガスを前記冷却ゾーンに通し、前記冷却ゾーンを通過したガスを前記加熱手段に通すようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のVOC濃縮装置。
【請求項4】
前記ハニカムロータの回転数を調整することにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【請求項5】
前記加熱手段を通過したガスの一部をバイパスし、前記再生ゾーンの出口側に通すことにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【請求項6】
前記再生ゾーンの出口側を区画するVゾーンに加熱装置を埋設することにより、前記再生ゾーンを通過したガスの温度を調整するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
【請求項7】
前記再生ゾーンの出口側において発生した液状物が前記ハニカムロータへ流出するのを防ぐ防止手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のVOC濃縮装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-05-11 
出願番号 P2021-178469
審決分類 P 1 652・ 851- YAA (B01D)
P 1 652・ 856- YAA (B01D)
P 1 652・ 113- YAA (B01D)
P 1 652・ 121- YAA (B01D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 金 公彦
松井 裕典
登録日 2022-04-04 
登録番号 7053079
権利者 株式会社西部技研
発明の名称 ガス処理装置  

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