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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1401154
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-24 
確定日 2023-08-08 
事件の表示 特願2019−567693「照明器具のためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月13日国際公開、WO2018/226431、令和 2年 8月 6日国内公表、特表2020−523788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年) 5月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年 6月 7日、2017年 8月23日、2017年 8月28日、2017年 9月 6日、2017年12月 1日、2017年12月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 1月29日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 8月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 1月26日付け:拒絶査定
令和 4年 5月24日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和 4年 5月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和 4年 5月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、令和 3年 8月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜17を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1〜17に補正するものであるところ、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に変更する補正事項を含むものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
ヒートシンクであって、
基板長さを有する基板と、
前記基板の第1表面に配置された少なくとも1つの光源であって、配光領域に光を放射するように構成された少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光源に対応する、前記基板の前記第1表面に配置され又は前記基板に直接に埋め込まれた電子部品と、
前記少なくとも1つの光源の両側において、前記基板の長手方向軸に沿って延在する屈曲部であって、第1角度を有する屈曲部と、
前記屈曲部に隣接する第1端部及び反対側の第2端部を有する第1パネルであって、第1高さを有する第1パネルと を備え、
前記第1高さは、前記基板から前記第2端部までの垂直距離であり、
前記屈曲部から前記第1パネルの前記第2端部までの距離が、前記少なくとも1つの光源から放出される光の配光領域を決定し、
前記第1高さが前記ヒートシンクの機械的剛性に影響し、
前記第1角度及び前記第1高さが、前記基板長さに部分的に基づいて調整され、
前記ヒートシンクの上部放熱表面積が、前記第1高さと、前記基板の第2表面の幅と、前記第1角度とに部分的に基づく、ヒートシンク。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和 3年 8月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ヒートシンクであって、
基板長さを有する基板と、
前記基板の第1表面に配置された少なくとも1つの光源であって、配光領域に光を放射するように構成された少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光源の両側において、前記基板の長手方向軸に沿って延在する屈曲部であって、第1角度を有する屈曲部と、
前記屈曲部に隣接する第1端部及び反対側の第2端部を有する第1パネルであって、第1高さを有する第1パネルと
を備え、
前記第1高さは、前記基板から前記第2端部までの垂直距離であり、
前記屈曲部から前記第1パネルの前記第2端部までの距離が、前記少なくとも1つの光源から放出される光の配光領域を決定し、
前記第1高さが前記ヒートシンクの機械的剛性に影響し、
前記第1角度及び前記第1高さが、前記基板長さに部分的に基づいて調整され、
前記ヒートシンクの上部放熱表面積が、前記第1高さと、前記基板の第2表面の幅と、前記第1角度とに部分的に基づく、ヒートシンク。」

2 補正の適否
本件補正は、「前記少なくとも1つの光源に対応する、前記基板の前記第1表面に配置され又は前記基板に直接に埋め込まれた電子部品」という発明特定事項を直列的に付加する補正であり、補正前の請求項における発明特定事項の一つ以上を、概念的に、より下位の発明特定事項とする補正であって、補正前発明と補正後発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題も相違しないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の限定的減縮を目的とする補正に該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2012−134305号公報(平成24年 7月12日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、光源として複数の固体発光素子を用いた発光装置、及びこの発光装置を用いた照明装置に関する。」
「【0026】
本発明の第1の実施形態に係る発光装置について、図1(a)乃至(c)を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、光源である固体発光素子としての発光ダイオード(以下、LED)2と、このLED2を実装するための実装基板(以下、基板)3と、を備える。また、発光装置1は、LED2を被覆する封止部材4と、LED2とワイヤ5によって電気的に接続されるリードフレーム6と、を備える。リードフレーム6は、基板3の裏面側に配置されている。基板3は、LED2が載置されて、封止部材4で被覆される部分が平坦面から成る実装面31と、ワイヤ5を表面側から裏面側へと挿通させるためのワイヤ通し孔32と、を有している。」
「【0029】
基板3には、金属板又はアルミニウム板から形成された平坦な板が好適に用いられ、LED2が実装される部分の近傍に、ワイヤ通し孔32が設けられている。ここでいう、「平坦」とは、一般的なガラスエポキシ製の配線基板上に敷設される配線パターンの厚みよりも凹凸が小さい面であり、凹凸幅が略75μm以下である面を含むものとする。基板3の厚みは1mm、その形状は□5mmの矩形形状であることが好ましい。なお、基板3の材質上記の限りではなく、例えば、ステンレスやスチール等の導電部材、アルミナセラミック、又は窒化アルミ等の絶縁材であってもよい。また、基板3の形状も、LED2及び封止部材4等の搭載部材を覆うように搭載できるサイズ及び形状であればよく、厚みは、取り扱い時に撓み等の変形を生じない強度を有する程度であればよい。ワイヤ通し孔32は、LED2の陽極及び陰極に接続される夫々のワイヤ5を挿通するため、LED2を挟むように2箇所設けられる。」
「【0038】
ここで、本実施形態に係る発光装置1の変形例について、図2乃至図4を参照して説明する。図2(a)(b)に示す変形例は、リードフレーム6に電極部61が延設され、この電極部61直上の基板3に貫通孔33が設けられると共に、この貫通孔33に電源線接続用ピン51が挿入されているものである。貫通孔33の直下は絶縁シート7が除去され、電源線接続用ピン51は、半田52を介してリードフレーム6の電極部61に接続される。また、電源線接続用ピン51は、基板3の表面から突出していて、コネクタ付きの配線(不図示)を差し込むことにより、導通接続が可能となっている。貫通孔33内の電源線接続用ピン51の周辺は、シリコーン樹脂等の絶縁性樹脂材料34が充填され、給電端子として基板3に対する絶縁性が確保されている。この構成によれば、電源への接続が容易となり、発光装置1の製造効率を向上させることができる。」
「【0057】
次に、本発明の第7の実施形態に係る発光装置について、図10を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、基板3が、実装面31の周囲を取り囲む延設部37を有するものである。この延設部37は、実装面31と同様に高反射処理が施されている。単一のLED2を用いた発光装置1では、延設部37は、LED2及び波長変換部材8の四方を取り囲むように設けられてもよいし、二方のみに設けられてもよい。この場合、他の構成は、上記第1の実施形態と同様である。一方、アレイ状に配列された多数のLED2を用いた発光装置1では、LED2列の両側部に沿って延設部37が設けられ、この場合、上記第6の実施形態で示した構成と同様である(図9参照)。
【0058】
この構成によれば、基板3の面積が大きくなるので、LED2からの熱が広がる面積も大きくなり、LED2の温度を更に効果的に下げることができ、発光装置1の放熱性が向上する。また、LED2、封止部材4、又は波長変換部材8(拡散部材8a)から出射された光のうち、基板3側へ向かう光成分が、延設部37で反射されて、発光装置1の光導出方向へ向かうので、発光装置1を組み込んだ照明装置の光出射効率が向上する。
【0059】
次に、本発明の第8の実施形態に係る発光装置について、図11(a)(b)を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、上述した延設部37の外周が、LED2側に向かって折り曲げられ、屈曲延設部37aとして構成されているものである。屈曲延設部37aは、例えば、実装面31に対して略45°程度に折れ曲がるように構成されている。また、この屈曲延設部37aもまた、実装面31と同様に高反射処理が施されている。
【0060】
単一のLED2を用いた発光装置1では、屈曲延設部37aは、LED2及び波長変換部材8の四方を取り囲むように設けられてもよいし、二方のみに設けられてもよい。この場合、他の構成は、上記第1の実施形態と同様である。一方、アレイ状に配列された多数のLED2を用いた発光装置1では、LED2列の両側部に沿って屈曲延設部37aが設けられ、この場合、図11(b)に示した構成となる。なお、同図に示す構成では、上記第1の実施形態の変形例(図2(a)(b)参照)と同様に、電源線接続用ピン51を備える。
【0061】
この構成によれば、上記第7の実施形態の効果に加えて、LED2から出射された光が、屈曲延設部37aで反射されて、発光装置1の前方光軸方向に出射されるので、発光装置1を搭載した照明装置の光出射効率が向上する。」

「【図2】



「【図11】


【図11】より、屈曲延設部37aを除いた基板3の水平部分は長方形であり、長辺と短辺を有しているといえる。
また、屈曲延設部37aは基板3の長辺に沿ってLED2の両側に設けられるといえる。

イ 上記アの記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されている。

a 固体発光素子を用いた発光装置であること(【0001】)。

b 発光装置1は、光源である固体発光素子としての発光ダイオード(以下、「LED」という。)2と、このLED2を実装するための実装基板(以下、「基板」という。)3と、LED2とワイヤ5によって電気的に接続されるリードフレーム6と、を備え、基板3はLED2が載置された平坦面から成る実装面31を有すること(【0026】、【図2】(a))、

c 基板3には、金属板又はアルミニウム板から形成された平坦な板が用いられること(【0029】、【図2】(a))。

d 基板3に設けられた貫通孔33に電源線接続用ピン51が挿入されており、電源線接続用ピン51は、半田52を介してリードフレーム6の電極部61に接続されるとともに、コネクタ付きの配線を差し込むことにより、導通接続が可能となっていること(【0038】、【図2】(a))。

e 基板3が、実装面31の周囲を取り囲む延設部37を有することで、LED2の温度を更に効果的に下げることができ、発光装置1の放熱性が向上すること(【0057】、【0058】)。

f 延設部37の外周が、LED2側に向かって実装面31に対して略45°程度に折り曲げられ、屈曲延設部37aとして構成されることで、LED2から出射された光が、屈曲延設部37aで反射されて、発光装置1の前方光軸方向に出射されること(【0059】、【0061】)。

g 屈曲延設部37aを除いた基板3の水平部分は長方形であり、長辺と短辺を有していること(【図11】)。

h 屈曲延設部37aは基板3の長辺に沿ってLED2の両側に設けられること(【0060】、【図11】)。

ウ 上記イから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「固体発光素子を用いた発光装置について、
発光装置は、光源である固体発光素子としてのLEDと、このLEDを実装するための基板と、LEDとワイヤによって電気的に接続されるリードフレームと、を備え、
基板はLEDが載置された平坦面から成る実装面を有し、
基板には金属板又はアルミニウム板から形成された平坦な板が用いられ、
基板に貫通孔が設けられると共に、この貫通孔に電源線接続用ピンが挿入されており、電源線接続用ピンは、半田を介してリードフレームの電極部に接続されるとともに、コネクタ付きの配線を差し込むことにより、導通接続が可能となっており、
基板が、実装面の周囲を取り囲む延設部を有することで、LEDの温度を更に効果的に下げることができ、発光装置の放熱性が向上し、
延設部の外周が、LED側に向かって実装面に対して略45°程度に折り曲げられ、屈曲延設部として構成されることで、LEDから出射された光が、屈曲延設部で反射されて、発光装置の前方光軸方向に出射され、
屈曲延設部を除いた基板の水平部分は長方形であり、長辺と短辺を有しており、
屈曲延設部は基板の長辺に沿ってLEDの両側に設けられる、発光装置。」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本願明細書の【0007】に「従来、線状MCPCBは、発生した熱を放散するためにヒートシンクに結合され」と記載されていることから、ヒートシンクは、発生した熱を放散するための部材、すなわち放熱性を備える部材であるといえる。
ここで、引用発明は、「基板には金属板又はアルミニウム板から形成された平坦な板が用いられ」ており、金属板あるいはアルミニウム板は放熱性の高い材料として一般的によく知られている。また引用発明は、「基板が、実装面の周囲を取り囲む延設部を有することで、LEDの温度を更に効果的に下げることができ、発光装置の放熱性が向上」するものである。
そうすると、引用発明の基板は、LEDの温度を効果的に下げる放熱性を備えるから、ヒートシンクであるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、ヒートシンクである点で一致する。

(イ)引用発明は、「基板の屈曲延設部以外の水平部分は長方形であり、長辺と短辺を有している」ものである。
ここで、基板の長辺方向あるいは短辺方向の長さは、本件補正発明の「基板長さ」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「基板長さを有する基板」を備える点で一致する。

(ウ)引用発明は、「光源である固体発光素子としてのLEDと、このLEDを実装するための基板」を備え、「LEDから出射された光が、屈曲延設部で反射されて、発光装置の前方光軸方向に出射され」るものである。
ここで、LEDが配置される側の基板面は、本件補正発明の「基板の第1表面」に相当する。また、前記基板面に配置された「LED」は、本件補正発明の「少なくとも1つの光源」に相当する。
また、引用発明では、LEDから出射された光が発光装置の前方光軸方向に出射しており、前記光が出射する領域は、本件補正発明の「配光領域」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記基板の第1表面に配置された少なくとも1つの光源であって、配光領域に光を放射するように構成された少なくとも1つの光源」を備える点で一致する。

(エ)引用発明の「電源線接続用ピン」は基板に設けられた貫通孔に挿入されていることから、基板に直接埋め込まれているといえる。また、「電源線接続用ピン」はリードフレームを介してLEDに電気を供給するものであるから、LEDに対応する電子部品である。
そうすると、引用発明の「電源線接続用ピン」は、本件補正発明の「電子部品」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つの光源に対応する、前記基板に直接に埋め込まれた電子部品」を備える点で一致する。

(オ)引用発明の「屈曲延設部」は「長辺に沿ってLEDの両側に設けられる」ものであるから、屈曲延設部を形成する基板の折り曲げ箇所も同様に長辺に沿ってLEDの両側に設けられるといえる。そうすると、上記折り曲げ箇所は、「少なくとも1つの光源の両側において、前記基板の長手方向軸に沿って延在する」点で、本件補正発明の「屈曲部」と一致する。
また、引用発明は、「延設部の外周が、LEDに向かって実装面に対して略45°程度に折り曲げられ、屈曲延設部」を構成するものであるから、上記折り曲げ箇所は角度を有し、前記角度は本件補正発明の「第1角度」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「折り曲げ箇所」は、本件補正発明の「屈曲部」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つの光源の両側において、前記基板の長手方向軸に沿って延在する屈曲部であって、第1角度を有する屈曲部」を備える点で一致する。

(カ)引用発明の「屈曲延設部」は、基板を折り曲げて形成することから、折り曲げ箇所に隣接している端部を備え、また、前記端部とは反対側にも端部を備えるといえる。そうすると、引用発明の「屈曲延設部」は、前記折り曲げ箇所に隣接している端部及び前記端部とは反対側の端部を備える点で、本件補正発明の「屈曲部に隣接する第1端部及び反対側の第2端部」を有する「第1パネル」に相当する。
また、引用発明では、前記折り曲げ箇所に隣接している端部とは反対側の端部は、基板の「LEDが載置された平坦面から成る実装面」に対して垂直方向に離れた位置に存在する。そうすると、引用発明は、「実装面」と「折り曲げ箇所に隣接している端部とは反対側の端部」との間に、実装面に対して垂直方向に所定の距離を有しているといえ、前記距離は、本件補正発明の「前記基板から前記第2端部までの垂直距離」である「第1高さ」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記屈曲部に隣接する第1端部及び反対側の第2端部を有する第1パネルであって、第1高さを有する第1パネル」を備え、「前記第1高さは、前記基板から前記第2端部までの垂直距離」である点で一致する。

(キ)上記(ウ)に示したとおり、引用発明は「LEDから出射された光が、屈曲延設部で反射されて、発光装置の前方光軸方向に出射」されていることから、前記光が出射する領域は、本件補正発明の「配光領域」に相当する。
また「屈曲延設部」が光を反射することで発光装置の前方光軸方向に光を出射しているから、「屈曲延設部」の大きさに応じて光が出射する領域が変化するといえる。そして、「屈曲延設部」の大きさは、「折り曲げ箇所」に隣接している端部から前記端部とは反対側の端部までの距離により決定するといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記屈曲部から前記第1パネルの前記第2端部までの距離が、前記少なくとも1つの光源から放出される光の配光領域を決定」している点で一致する。

(ク)上記(ア)に示したとおり、引用発明の基板はLEDの温度を効果的に下げる機能を備えているものであるから、前記基板の表面積が放熱に関係することは自明である。
また、引用発明のLEDを配置していない基板面は、本件補正発明の「基板の第2表面」に相当する。そうすると、LEDを配置していない基板面の「屈曲延設部を除いた基板の水平部分」の幅は、本件補正発明の「前記基板の第2表面の幅」に相当するといえる。
加えて、引用発明の基板は、屈曲延設部が略45°程度に折り曲げられていることから、基板の表面積は、上述したLEDを配置していない基板面の「屈曲延設部を除いた基板の水平部分」の幅と、上記(カ)に示した「実装面」と「折り曲げ箇所に隣接している端部とは反対側の端部」との実装面に対する垂直方向の距離と、上記(オ)に示した「折り曲げ箇所」が有する角度に基づき算出できる。
そうすると、引用発明の基板の表面積は、本件補正発明の「上部放熱表面積」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記ヒートシンクの上部放熱表面積が、前記第1高さと、前記基板の第2表面の幅と、前記第1角度とに部分的に基づく」点で一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「ヒートシンクであって、
基板長さを有する基板と、
前記基板の第1表面に配置された少なくとも1つの光源であって、配光領域に光を放射するように構成された少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光源に対応する、前記基板に直接に埋め込まれた電子部品と、
前記少なくとも1つの光源の両側において、前記基板の長手方向軸に沿って延在する屈曲部であって、第1角度を有する屈曲部と、
前記屈曲部に隣接する第1端部及び反対側の第2端部を有する第1パネルであって、第1高さを有する第1パネルと、
を備え、
前記第1高さは、前記基板から前記第2端部までの垂直距離であり、
前記屈曲部から前記第1パネルの前記第2端部までの距離が、前記少なくとも1つの光源から放出される光の配光領域を決定し、
前記ヒートシンクの上部放熱表面積が、前記第1高さと、前記基板の第2表面の幅と、前記第1角度とに部分的に基づく、ヒートシンク。」

【相違点1】
本件補正発明は、第1高さがヒートシンクの機械的剛性に影響するものであるのに対して、引用発明においては、「実装面」と「折り曲げ箇所に隣接している端部とは反対側の端部」との実装面に対する垂直方向の距離が発光装置の機械的剛性に影響するか明らかでない点。

【相違点2】
本件補正発明では、第1角度及び第1高さが、基板長さに部分的に基づいて調整されるのに対して、引用発明には、これらについて特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記(3)ア(カ)に示したように、引用発明は、「実装面」と「折り曲げ箇所に隣接している端部とは反対側の端部」との間に、実装面に対して垂直方向に所定の距離を有しているから、引用発明は屈曲延設部を有することで実装面に対して垂直方向に高さが増加しているといえる。
また、機械的剛性には、軸剛性(伸び剛性)、曲げ剛性、せん断剛性、ねじり剛性がある。
ここで、曲げ剛性に着目すると、引用発明は屈曲延設部を有することで実装面に対する垂直方向への高さが増加しているところ、屈曲延設部を有する部材において曲げ方向に対する屈曲延設部の高さが変化すると曲げ剛性が影響を受けることは技術常識である。
そうすると、引用発明において、「実装面」と「折り曲げ箇所に隣接している端部とは反対側の端部」との間に存在する、実装面に対する垂直方向への距離が、実装面の垂直方向に対する機械的剛性に影響することは自明である。
加えて、本願明細書の【0033】に「さらに、システム100の機械的剛性は屈曲部130の高さ410に基づくことができ、その際、高さ410を増すと、MCPCB110の長さに沿って機械的剛性を増大させることができる。」と記載されていることから、引用発明においても、実装面に対する垂直方向の距離が機械的剛性に影響しているといえる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

イ 相違点2について
ヒートシンクにおいて、各部の寸法や形状が相互に影響を与えることにより、重量、強度、コスト、放熱性などの特性が変化することは自明であり、所望する特性を実現するために、相互に作用する影響を考慮しながら各部の寸法や形状を調整することは、通常行われている設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明においても、基板の長辺方向あるいは短辺方向の長さに基づいて、屈曲延設部の角度を調整することは、発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば容易になし得た事項といえる。

ウ 請求人の主張について
令和 4年 5月24日に提出された審判請求書において、請求人は以下の主張を行っている。
「引用文献1には、光源に対応する電子部品を、基板の第1表面に配置し、又は基板に直接に埋め込むことに関して、何ら開示又は示唆していない。」
上記主張について検討すると、上記(3)ア(エ)に示したとおり、引用発明の「電源線接続用ピン」は、本件補正発明の「電子部品」に相当する。
そうすると、請求人の上記主張は採用できない。

(5)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和 4年 5月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜17に係る発明は、令和 3年 8月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1〜17に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1〜4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2012−134305号公報
引用文献2.特開平5−11718号公報
引用文献3.特開2007−220663号公報
引用文献4.特開2012−39122号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記少なくとも1つの光源に対応する、前記基板の前記第1表面に配置され又は前記基板に直接に埋め込まれた電子部品」という発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀧内 健夫
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-02-28 
結審通知日 2023-03-02 
審決日 2023-03-17 
出願番号 P2019-567693
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀧内 健夫
特許庁審判官 柴垣 俊男
棚田 一也
発明の名称 照明器具のためのシステム及び方法  
代理人 柴田 沙希子  

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