• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1401168
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-31 
確定日 2023-08-08 
事件の表示 特願2020−520095「表示処理方法および電子デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月18日国際公開、WO2019/071594、令和 2年12月17日国内公表、特表2020−537244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)10月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年10月9日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和2年 6月 4日 :手続補正書の提出
令和3年 5月18日付け:拒絶理由通知書
令和3年 8月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 1月27日付け:拒絶査定
令和4年 5月31日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年11月11日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和5年 2月14日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
令和5年2月14日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
電子デバイスに適用される表示処理方法であって、前記方法は、前記電子デバイスによって、第1の位置関係に基づいて第1の画面上に第1の表示オブジェクトおよび第2の表示オブジェクトを表示するステップと、
前記第1の表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さが前記第1の画面上で前記第1の表示オブジェクトの第1の幅より大きいと判定したことに応答して、前記第1の画面を表示することを停止するステップと、
第2の位置関係に基づいて第2の画面上に前記第1の表示オブジェクトおよび前記第2の表示オブジェクトを表示するステップであって、前記第2の位置関係は、前記第1の位置関係とは異なり、前記第2の位置関係に対応する前記第1の表示オブジェクトの第2の幅は、前記第1の幅より大きい、ステップと、
前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように、または前記表示対象文字列の代わりの、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップと、
を含み、
前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは言語タイプが異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む、
表示処理方法。」

第3 拒絶の理由
令和4年11月11日の当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:中国特許出願公開第105930034号明細書
引用文献4:特表2012−511218号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。訳は当審訳。以下同じ。)。




[当審訳]
「【0058】本開示の実施例が提供する技術的解決手段は、端末装置に関し、例えばスマートフォン、タブレットコンピュータ、ノートパソコン又はデスクトップパソコンを含むことができる。」




[当審訳]
「【0067】次に、ボタンの数及び最大長に応じてダイアログボックス内のボタンの配置をどのように設定するかについて説明する。図2は別の例示的な実施例に示されるダイアログボックスの表示方法のフローチャートであり、該方法は以下のステップを含むことができる:
【0068】ステップS21では、表示ダイアログボックスの操作を検出する。
【0069】ステップS22において、予め設定された操作と表示対象のダイアログボックスとの対応関係に基づき、該操作に対応する表示対象のダイアログボックスを決定する。
【0070】各種の操作と表示対象のダイアログボックスとの対応関係を予め設定することができる。例えば、ページにおける“削除”オプションを選択する操作に対応する表示対象のダイアログボックスはダイアログボックス1である。「全選択」を示す長押しタッチ操作に対応する表示すべきダイアログボックスは、ダイアログボックス2である。」




[当審訳]
「【0071】ステップS23では、決定された表示対象のダイアログにおけるボタンの数xと、各ボタンにおける表示対象の文字列の最大長を取得する。
【0072】この最大長は、表示ダイアログの各ボタンにおける表示文字列の長さをそれぞれ取得し、各表示文字列の長さを比較することにより得られる。
【0073】表示される文字列の長さはシステムが選択した言語に応じて変化する可能性があり、例えば、1つの単語が中国語と英語で表示される場合、長さが異なる可能性がある。
【0074】ステップS24において、取得したボタンの数xがプリセット数以下であるか否かを判断する;そうであれば、ステップS25を実行する;そうでなければ、ステップS29を実行する。【0075】該プリセット数は、ダイアログボックスの長さ、ボタンに表示される文字列の長さ、及び視覚効果等の要素に基づいて決定することができる。ボタンの数が多い場合、横に並んだボタンを収容するのに十分なスペースがダイアログボックスにないことがある。また、横に並べても各ボタンの長さが短いため、ボタン内の文字列を完全に表示することができない場合がある。ボタンの数が少ない場合には、ボタン中の文字列の長さに応じてボタンの配列を決定する必要もある。プリセット数は通常2個又は3個である。」




[当審訳]
「【0076】ステップS25において、ボタンの第1の長さを取得し、第1の長さは、ボタンがダイアログボックスに横方向に配列されるときに各ボタンが有する長さである。
【0077】ボタンは、デフォルト設定としてダイアログボックス内に横方向に配置することができる。本発明の別の実施例において、予め設定されたダイアログボックスの長さ及びボタンの数に基づき、該第1の長さを取得することができる。通常、美観のために、複数のボタンの長さは同じであるので、最も簡単には、ダイアログボックスの長さをボタンの数xで割って、第1の長さの値を得ることができる。
【0078】ステップS26において、最大長が第1の長さより大きいか否かを判断する;そうであれば、ステップS27を実行する;そうでなければ、ステップS28を実行する。
【0079】該ステップは、ボタンが、最大長の表示対象の文字列を完全に表示できるか否かを判断するためのものである。」





[当審訳]
「【0080】ステップS27では、設定ダイアログにおけるボタンの配置を縦にして、最大長以上の第2の長さに設定して、ステップS210に進む。
【0081】ボタンが横方向に配列され、最大長の表示対象の文字列を完全に表示できない場合、ボタンを縦方向に配列する必要があり、且つ、ボタンは最大長の表示対象の文字列を完全に表示するために十分な長さを有する必要がある。図3に示すように、表示されるダイアログのテーマは、「削除」を決定することである。ダイアログボックスは、ユーザが選択できる3つのボタンを含む。図3は、ダイアログボックスにおける3つのボタンA、B、Cを縦に並べた効果図である。なお、ボタンCにおける文字列の長さは最大で15文字である。ボタンA、B、Cは、この最大長以上の第2の長さを有する。3つのボタンA、B、Cは横方向に配列することができず、明らかに、横方向に配列する場合、ボタンの長さはその中の文字列を完全に表示するには不十分である。」




[当審訳]
「【0082】ステップS28では、ダイアログのボタンの配置を横にしてステップS210に進む。
【0083】表示対象の文字列の最大長が小さく、ボタンを横方向に配列する場合の長さが表示対象の文字列を完全に表示するのに十分であれば、デフォルトの横方向配列方式を用いる。図4は、ダイアログボックス3つのボタンA、B、Cを横方向に配列した効果図である。
【0084】ステップS29では、ダイアログボックス内のボタンの配置を縦方向に設定し、最大長以上の第2の長さに設定してステップS210に進む。
【0085】ボタンの数が多く、横並びに不便である場合には、ボタンを直接配置する並びは縦並びとする。図5はダイアログボックスにおける5つのボタンA、B、C、D、Eを縦方向に配列した効果図である。
【0086】ステップS210において、設定された配列方式に基づいてダイアログボックスを表示する。」

「【図2】



「【図3】



「【図4】



ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。

ア 上記【0078】の「ステップS26において、最大長が第1の長さより大きいか否かを判断する;そうであれば、ステップS27を実行する;」との記載、上記【0080】の「ステップS27では、設定ダイアログにおけるボタンの配置を縦にして、最大長以上の第2の長さに設定して、ステップS210に進む。」との記載、上記【0081】の「ボタンが横方向に配列され、最大長の表示対象の文字列を完全に表示できない場合、ボタンを縦方向に配列する必要があり、且つ、ボタンは最大長の表示対象の文字列を完全に表示するために十分な長さを有する必要がある。図3に示すように、表示されるダイアログのテーマは、「削除」を決定することである。ダイアログボックスは、ユーザが選択できる3つのボタンを含む。図3は、ダイアログボックスにおける3つのボタンA、B、Cを縦に並べた効果図である。」との記載、上記【0086】の「ステップS210において、設定された配列方式に基づいてダイアログボックスを表示する。」との記載及び上記【図3】の記載から、「最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうであれば、最大長以上の第2の長さに設定し、縦の配列方式に基づいて、第2の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示する」ことが記載されていると認められる。

イ 上記【0078】の「ステップS26において、最大長が第1の長さより大きいか否かを判断する;・・・(中略)・・・;そうでなければ、ステップS28を実行する。」との記載、上記【0082】の「ステップS28では、ダイアログのボタンの配置を横にしてステップS210に進む。」との記載、上記【0083】の「表示対象の文字列の最大長が小さく、ボタンを横方向に配列する場合の長さが表示対象の文字列を完全に表示するのに十分であれば、デフォルトの横方向配列方式を用いる。図4は、ダイアログボックス3つのボタンA、B、Cを横方向に配列した効果図である。」との記載、上記【0086】の「ステップS210において、設定された配列方式に基づいてダイアログボックスを表示する。」との記載及び上記【図4】の記載から、「最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうでなければ、横の配列方式に基づいて、第1の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示する」ことが記載されていると認められる。

2 引用発明
上記1からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。「ダイアログボックスの表示方法であって、
端末装置に関し、スマートフォンを含み、
決定された表示対象のダイアログにおけるボタンの数と、各ボタンにおける表示対象の文字列の最大長を取得し、
表示される文字列の長さはシステムが選択した言語に応じて変化する可能性があり、例えば、1つの単語が中国語と英語で表示される場合、長さが異なる可能性があり、
ボタンの第1の長さを取得し、第1の長さは、ボタンがダイアログボックスに横方向に配列されるときに各ボタンが有する長さであり、
最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうであれば、最大長以上の第2の長さに設定し、縦の配列方式に基づいて、第2の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示し、
最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうでなければ、横の配列方式に基づいて、第1の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示する、
ダイアログボックスの表示方法。」

3 引用文献4の記載
引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ式電話のハンドセット装置に関し、より詳細には、ディスプレイに適合するようにテキストストリングの長さを変更するように構成された移動体ハンドセット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話およびPDAなどの移動体ハンドセットは、ユーザにとってこれまで以上に有用な情報ツールになりつつある。移動体ハンドセットはまた、絶えずサイズが減少している。表示画面が小さくなると、一度に大量の情報を閲覧することが困難になるため、これらの2つのトレンドは、互いに緊張関係にある。SMS(simple message service)のテキストストリングであっても、ディスプレイ上に適合しないことがあり、ユーザはこのような短いメッセージを読むためにスクロールする必要がある。」

「【0014】
本明細書で使用される場合、用語「ハンドセット」および「ハンドヘルド装置」は、セルラ式電話、PDA(携帯情報端末)、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、無線電子メール受信器(例えば、Blackberry(登録商標)およびTreo(登録商標)装置)、マルチメディアインターネットで使用可能なセルラ式電話(例えば、iPhone(登録商標))、およびプログラム可能なプロセッサおよびメモリを含む同様のパーソナル電子装置のうちのいずれか1つ、またはすべてを指す。好ましい態様では、移動体ハンドセットは、セルラ式電話ネットワークを介して通信できるセルラ式ハンドヘルド装置(例えば、携帯電話)である。しかし、セルラ式電話の通話機能は、すべての態様で必要なものではない。さらに、無線データ通信は、セルラ式電話ネットワークに代えて、無線データネットワーク(例えば、WiFiネットワーク)に接続されるハンドヘルド装置により達成することができる。」

「【0022】
ストリング変換(ブロック118)は、図3で示すように、一連の規則ベースの変換を順次適用することにより達成することができる。図2で示すオペレーションと同様に、ストリング変換エンジンは、ブロック101で、テキストストリングを変換するためにテキストレンダリングエンジンにより活動化されうる。ブロック102で、ストリング変換エンジンは、ディスプレイで利用可能なピクセル/キャラクタの数を決定し、ブロック103で、テキストストリング20を表示するために必要なピクセル/キャラクタの数を決定し、図2で示されたブロック115を参照して上記で述べたように、判断ブロック115aで、変換することなくストリングを表示するためのスペースが十分あるかどうか判定することができる。テキストストリング(元の、または変換された)に対する表示領域が十分である場合(すなわち、判断ブロック115a=「はい」)、ブロック105で、テキストストリングは、表示するためにテキストレンダリングエンジンへと返される。テキストストリングが、表示領域内に適合しない場合(すなわち、判断ブロック115a=「いいえ」)、ストリング変換エンジンは、ブロック120で、フォントサイズを減らす第1のオペレーションを実施することができる。ブロック120で、フォントサイズを減少させるオペレーションは任意選択のものであるが、それは、いくつかの移動体装置では、フォントサイズは静的なもの(すなわち、変更できない)であるが、移動体装置の他のモデルは、様々なフォントサイズを実施することが可能なためである。ブロック120で、フォントサイズを変更するプロセスは、フォントのピクセルサイズを減少させる、またはフォントをより小さなフォントに変更する、あるいはその両方を含むことができる。例えば、様々な実施形態では、ブロック120で、フォントサイズは、フォントを固定幅から可変幅に変更することにより、またはフォントを普通幅(regular−width)から細幅(narrow−width)に変更することにより、あるいはその両方により減少させることができる。フォントサイズの変換は、テキストストリングに対してフォント変換規則を適用することにより達成することができる。フォント変換規則が適用された後、判定ブロック115bで、ストリング変換エンジンは、変換されたストリングを表示するのに必要なピクセルまたはキャラクタの数を、ブロック102で決定されたディスプレイ中で利用可能なピクセルまたはキャラクタの数と比較することにより、変換されたストリングを表示するための余地が十分にあるかどうかを判定するプロセスを繰り返すことができる。変換されたストリングを表示するためのスペースが十分にある場合(すなわち、判定ブロック115b=「はい」)、さらに変換する必要がなくなり、ブロック105で、変換されたテキストストリングは、表示するためにテキストレンダリングエンジンに返される。
【0023】
変換されたストリングが、ディスプレイ内に適合しない場合(すなわち、判定ブロック115b=「いいえ」)、ブロック125で、ストリング変換エンジンは、キャラクタ間隔を減らすことができる(すなわち、表示されるストリング中のキャラクタ間の間隔)。キャラクタ間隔を減らすことは、カーニングを狭くすることとして植字技術で知られたものにより達成することができる。ブロック125で、キャラクタ間隔を減らすオペレーションは任意選択であるが、それは、いくつかの移動体装置では、動的なキャラクタ間隔調整が可能ではない、または適切ではない(例えば、フォント変換することにより、キャラクタ間の間隔が少なすぎる場合)可能性があるからである。キャラクタ間隔を減少させることは、テキストストリングにキャラクタ間隔変換規則を適用することにより達成することができる。キャラクタ間隔規則が適用された後、ストリング変換エンジンは再度、判定ブロック115cで、変換されたストリングを表示するのに必要なピクセルまたはキャラクタの数を、ブロック102で決定されたディスプレイで利用可能なピクセルまたはキャラクタの数と比較することにより、変換されたストリングを表示するための余地が十分にあるかどうかを判定することができる。変換されたストリングを表示するためのスペースが十分にある場合(すなわち、判定ブロック115c=「はい」)、さらに変換する必要がなくなり、変換されたテキストストリングは、ブロック105で、表示するためにテキストレンダリングエンジンに返される。
【0024】
変換されたストリングが、なお、ディスプレイ内に適合しない場合(すなわち、判定ブロック115c=「いいえ」)、ブロック130で、ストリング変換エンジンは、ストリングから不要な単語を削除するなど、さらなる変換を実施することができる。不要な単語とは、ストリングの意味を変えることなく削除できる単語のことである。例えば、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、残りの単語を理解する読者の能力に影響を与えることなく、文章または句から削除することができる。例示的なテキストストリング20「the quick brown fox jumps over the lazy dog」に冠詞を削除する変換規則を適用すると、短縮されたテキストストリング「quick brown fox jumps over lazy dog」が得られる。不要な単語を削除するための例示的なプロセスおよび規則は、図4を参照して以下でより詳細に論ずる。不要な単語がテキストストリングから削除されると、判定ブロック115dで、ストリング変換エンジンは再度、変換されたストリングを表示するのに必要なピクセルまたはキャラクタの数を、ブロック102で決定されたディスプレイ中で利用可能なピクセルまたはキャラクタの数と比較することにより、変換されたストリングを表示するための余地が十分にあるかどうかを判定することができる。変換されたストリングを表示するためのスペースが十分にある場合(すなわち、判定ブロック115d=「はい」)、さらに変換する必要がなくなり、ブロック105で、変換されたテキストストリングは、表示するためにテキストレンダリングエンジンに返される。
【0025】
変換されたストリングが、ディスプレイ内に適合しない場合(すなわち、判定ブロック115d=「いいえ」)、ブロック135で、ストリング変換エンジンは、テキストストリングから不要な文字を削除するなど、さらなる変換を行うことができる。不要な文字とは、読者に対して単語の意味を変えることなく削除できる文字のことである。この変換オペレーションは、一般的な単語を、大部分の読者が理解する標準の略語で置き換えることを含むことができる。例えば、大部分のユーザは、「avg」を「average(平均の)」略語として、また「bldg」を「building(建物)」の略語として理解するはずである。このオペレーションはまた、一般に、略記されない単語に対して略語を作成するように、単語に対して略語規則を適用することができる。例えば、大部分のユーザは、例示的なテキストストリング20の文脈内で、「ovr」を「over」の略語として理解するはずである。このオペレーションはまた、単語中で後ろに付く文字を、このような文字なしに単語を理解できることが多いので、削除または置き換えることもできる。例えば、単語の最後から2番目の文字が母音であり、かつ単語が4個以上のキャラクタ長さである場合、その母音を削除して理解可能な単語を得ることもできる。この例示的な変換規則を、(前の変換で「quick brown fox jumps over lazy dog」と読んだ後に)例示的なテキストストリング20に適用することは、ストリングを「quik brwn fox jmps ovr lzy dog」へとさらに変換することになる。13文字だけストリングを短縮したにも関わらず、変換されたストリングは、元のテキストストリング20と同じ意味を有するものとして、多くのユーザにより容易に理解されよう。単語から不要な文字を削除するための例示的なプロセスおよび規則は、図5を参照して、以下でより詳細に論ずる。不要な文字が削除された後、判定ブロック115eで、ストリング変換エンジンは再度、変換されたストリングを表示するのに必要なピクセルまたはキャラクタの数を、ブロック102で決定されたディスプレイで利用可能なピクセルまたはキャラクタの数と比較することにより、新たに変換されたストリングを表示するための余地が十分にあるかどうかを判定することができる。変換されたストリングを表示するためのスペースが十分にある場合(すなわち、判定ブロック115e=「はい」)、さらに変換する必要がなくなり、ブロック105で、変換されたテキストストリングは、表示するためにテキストレンダリングエンジンに返される。」

「【0036】
図5を参照すると、ストリング変換エンジンが、不要な文字を削除するオペレーション(例えば、図3のブロック135)を実施するとき、ブロック182で、このオペレーションは、解析するためにテキストストリングの第1の単語を選択することができる。このオペレーションは、テキストストリングを変換するために他のオペレーションが使用された後に実施できるので、このオペレーションは、変換されたストリング中の見出し語に実質的にマッチする第1の単語を選択することができる。ブロック185で、オペレーションは、テーブル参照プロセスで、選択された単語を使用して、略語辞書に照会することができる。参照プロセスは、判定ブロック160で、選択された単語が、略語辞書における見出し語と実質的にマッチするかどうかを判定するが、それは、その単語に対する一般的な略語が存在することを示している。照会プロセスの詳細は、データ構造の詳細に依存しており、したがって、図6Bを参照して以下でさらに十分に論ずる。選択された単語が、略語辞書における見出し語と実質的にマッチする場合(すなわち、判定ブロック160=「はい」)、ブロック188で、オペレーションは、単語を、辞書中で実質的にマッチした単語にリンクした、またはそれに対応した略語で置き換えることができ、また判定ブロック170で、解析すべき他の単語がストリング中にあるかどうかを判定することができる。」

「【図3】



「【図5】



「【図6B】



したがって、引用文献4には、
「用語「ハンドセット」および「ハンドヘルド装置」は、マルチメディアインターネットで使用可能なセルラ式電話(例えば、iPhone(登録商標))を指し、
変換することなくストリングを表示するためのスペースが十分あるかどうか判定し、
テキストストリングが、表示領域内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、フォントサイズを減らす第1のオペレーションを実施し、
変換されたストリングが、ディスプレイ内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、キャラクタ間隔を減らし、
変換されたストリングが、なお、ディスプレイ内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、ストリングから不要な単語を削除するなど、さらなる変換を実施し、
変換されたストリングが、ディスプレイ内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、テキストストリングから不要な文字を削除するなど、さらなる変換を行い、不要な文字とは、読者に対して単語の意味を変えることなく削除できる文字のことであり、この変換オペレーションは、一般的な単語を、大部分の読者が理解する標準の略語で置き換える」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

1 引用発明の「スマートフォン」は、本願発明の「電子デバイス」に相当する。また、引用発明の「ダイアログボックスの表示方法」は、スマートフォンに適用可能な表示処理方法であることが明らかであるから、本願発明の「電子デバイスに適用される表示処理方法」に相当する。さらに、本願発明と引用発明は、「前記方法は、前記電子デバイスによって」「ステップと」「を含む、表示処理方法」である点で一致することも明らかである。

2 引用発明の「第1の画面」及び「第2の画面」は、それぞれ、本願発明の「第1の画面」及び「第2の画面」に相当する。

3 引用発明の「ボタンA」及び「ボタンB」は、それぞれ、本願発明の「第1の表示オブジェクト」及び「第2の表示オブジェクト」に相当する。

4 引用発明の「横の配列方式」及び「縦の配列方式」は、本願発明の「第1の位置関係」及び「第2の位置関係」に相当する。

5 上記2−4を踏まえると、引用発明の「横の配列方式に基づいて、第1の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示する」ことは、本願発明の「第1の位置関係に基づいて第1の画面上に第1の表示オブジェクトおよび第2の表示オブジェクトを表示するステップ」に相当する。

6 引用発明の「第1の長さ」は、「ボタンがダイアログボックスに横方向に配列されるときに各ボタンが有する長さであ」ることから、上記2−5を踏まえると、本願発明の「前記第1の画面上で前記第1の表示オブジェクトの第1の幅」に相当する。

7 引用発明の「最大長」は、「各ボタンにおける表示対象の文字列の最大長」であるから、上記3を踏まえると、本願発明の「前記第1の表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さ」に相当する。

8 上記6及び7を踏まえると、引用発明の「最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうであれば」は、本願発明の「前記第1の表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さが前記第1の画面上で前記第1の表示オブジェクトの第1の幅より大きいと判定したことに応答して」に相当する。また、引用発明において、「最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうであれば、最大長以上の第2の長さに設定し、縦の配列方式に基づいて、第2の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示し、最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうでなければ、横の配列方式に基づいて、第1の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示する」ことから、「最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうであれば」、「横の配列方式に基づいて、第1の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示する」ことを停止しているといえる。そうすると、上記5−7を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記第1の表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さが前記第1の画面上で前記第1の表示オブジェクトの第1の幅より大きいと判定したことに応答して、前記第1の画面を表示することを停止するステップ」を備える点で一致する。

9 上記2−4を踏まえると、引用発明の「縦の配列方式に基づいて、第2の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示」することは、本願発明の「第2の位置関係に基づいて第2の画面上に前記第1の表示オブジェクトおよび前記第2の表示オブジェクトを表示するステップ」に相当する。また、引用発明において、縦の配列方式が横の配列方式とは異なることは明らかである。さらに、引用発明の「第2の長さ」は、「最大長以上の第2の長さに設定し、縦の配列方式に基づいて、第2の画面上に、ボタンA及びボタンBを表示し」ていることから、本願発明の「前記第2の位置関係に対応する前記第1の表示オブジェクトの第2の幅」に相当する。加えて、引用発明の「第2の長さ」は、「最大長が第1の長さより大きいか否かを判断し、そうであれば、最大長以上の第2の長さに設定」することから、「第1の長さ」より大きいことは明らかである。そうすると、本願発明と引用発明は、「第2の位置関係に基づいて第2の画面上に前記第1の表示オブジェクトおよび前記第2の表示オブジェクトを表示するステップであって、前記第2の位置関係は、前記第1の位置関係とは異なり、前記第2の位置関係に対応する前記第1の表示オブジェクトの第2の幅は、前記第1の幅より大きい、ステップ」を備える点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電子デバイスに適用される表示処理方法であって、前記方法は、前記電子デバイスによって、第1の位置関係に基づいて第1の画面上に第1の表示オブジェクトおよび第2の表示オブジェクトを表示するステップと、
前記第1の表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さが前記第1の画面上で前記第1の表示オブジェクトの第1の幅より大きいと判定したことに応答して、前記第1の画面を表示することを停止するステップと、
第2の位置関係に基づいて第2の画面上に前記第1の表示オブジェクトおよび前記第2の表示オブジェクトを表示するステップであって、前記第2の位置関係は、前記第1の位置関係とは異なり、前記第2の位置関係に対応する前記第1の表示オブジェクトの第2の幅は、前記第1の幅より大きい、ステップと、
を含む、表示処理方法。」

(相違点1)
本願発明では「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように、または前記表示対象文字列の代わりの、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップと、
を含み、
前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは言語タイプが異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む」のに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

第6 判断
1 相違点1について
本願発明の「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように、または前記表示対象文字列の代わりの、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップと、
を含み、
前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは言語タイプが異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む」という事項は、「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップ」及び「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の代わりの、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップと、
を含み、
前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは言語タイプが異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む」という2つの選択肢を有するものとなっている。このような選択肢がある場合、いずれか一の選択肢のみを、その選択肢に係る発明特定事項と仮定したときの本願発明と引用発明とを対比することができるから、「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップ」という前者の選択肢のみに係る発明特定事項と仮定したときの相違点1について以下検討することとする。
引用文献4には、上記第4の3のとおり、「変換することなくストリングを表示するためのスペースが十分あるかどうか判定し、テキストストリングが、表示領域内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、フォントサイズを減らす第1のオペレーションを実施し、変換されたストリングが、ディスプレイ内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、キャラクタ間隔を減らし、変換されたストリングが、なお、ディスプレイ内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、ストリングから不要な単語を削除するなど、さらなる変換を実施」するという技術的事項が記載されている。
また、引用文献4に記載された技術的事項の「マルチメディアインターネットで使用可能なセルラ式電話(例えば、iPhone(登録商標))」は、「スマートフォン」であるといえる。
したがって、引用発明と引用文献4に記載された技術的事項とは、いずれも、スマートフォンの表示技術分野で共通し、「文字列を小さいサイズの表示領域内に表示する」という課題でも共通するものであるから、引用発明に引用文献4に記載された技術的事項を適用する動機づけはあるといえる。
よって、引用発明において、引用文献4に記載された技術的事項を適用し、相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の代わりの、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップと、
を含み、
前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは言語タイプが異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む」という後者の選択肢に係る発明特定事項と仮定したときの相違点1についても以下検討する。
引用文献4には、上記第4の3のとおり、「変換されたストリングが、ディスプレイ内に適合しない場合、ストリング変換エンジンは、テキストストリングから不要な文字を削除するなど、さらなる変換を行い、不要な文字とは、読者に対して単語の意味を変えることなく削除できる文字のことであり、この変換オペレーションは、一般的な単語を、大部分の読者が理解する標準の略語で置き換える」という技術的事項が記載されている。ここで、引用文献4に記載された技術的事項の「不要な文字を削除」した「テキストストリング」及び「標準の略語」は、本願発明の「表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す」「関連コンテンツ」に相当し、また、引用文献4に記載された技術的事項の「標準の略語」は、本願発明の「前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語」に相当する。
さらに、「言語タイプが異なる他の文字列」については、引用発明において、「表示される文字列の長さはシステムが選択した言語に応じて変化する可能性があり、例えば、1つの単語が中国語と英語で表示される場合、長さが異なる可能性があ」ることから、引用発明において、表示対象文字列の代わりに、言語タイプの異なる他の文字列を表示するようにすることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。
加えて、「エモーティコン、または画像」については、文字列の略語(代替)として、エモーティコン又は画像(絵文字、スタンプなど)を用いることは、メッセージ表示(作成)技術における周知技術にすぎない。
そして、引用発明と引用文献4に記載された技術的事項とは、いずれも、スマートフォンの表示技術分野で共通し、「文字列を小さいサイズの表示領域内に表示する」という課題でも共通するものであるから、引用発明に引用文献4に記載された技術的事項を適用する動機づけはあるといえる。
したがって、引用発明において、引用文献4に記載された技術的事項及び上記周知技術を適用し、相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 請求人の主張について
請求人は、令和5年2月14日提出の意見書において、
「1.3 本願請求項に係る発明と引用文献の開示との対比
審判官殿は、本願発明1と引用発明との間には、以下の相違点があるとのご認定です。
(相違点1)
本願発明1は「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトに収まるように、または前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトに収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップ」を含むのに対して、引用発明にはこのような構成について特定されていない点。
審判官殿は、このうち、「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトに収まるように表示するステップ」という選択肢について、引用発明と引用文献4に記載された技術的事項とは、いずれも、携帯端末の表示技術分野で共通し、「文字列を表示オブジェクト内に表示する」という課題でも共通するものであることをもって、上記相違点について、引用文献4に記載の「フォントサイズを減らす」こと、「キャラクタ間隔を減ら」すこと、及び「不要な単語を削除する」ことは、本願発明1の「前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトに収まるように表示する」構成に相当するとのご認定です。
また、「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトに収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、ステップ」という選択肢についても、引用発明と引用文献4に記載された技術的事項とは、いずれも、携帯端末の表示技術分野で共通し、「文字列を表示オブジェクト内に表示する」という課題でも共通するものである、とのご認定です。
引用文献4は、たしかに「携帯端末の表示」に関する技術的事項を記載しているため、引用発明と引用文献4は、技術分野が共通するようにも思われます。しかしながら、引用発明と引用文献4は、課題が共通するものではなく、引用文献4には、本願発明の「第1の表示オブジェクト」に相当する事項は、開示も示唆もされていないと考えます。
引用文献4は、背景技術として「携帯電話およびPDAなどの移動体ハンドセットは、ユーザにとってこれまで以上に有用な情報ツールになりつつある。移動体ハンドセットはまた、絶えずサイズが減少している。表示画面が小さくなると、一度に大量の情報を閲覧することが困難になるため、これらの2つのトレンドは、互いに緊張関係にある。」(段落0002)との開示があります。この記載からも明らかであるように、引用文献4は、単に携帯電話自体のサイズが減少したことに伴って表示画面が小さくなった場合の課題を解決しようとするものです。
引用文献4の出願当時の技術常識に鑑みても、「携帯電話」は、スマートフォンのようなものではありません。よって、「電子デバイスを使用する過程において、言語種他の変更などの理由により、表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さが長くなる場合がある。この場合、図1aを参照すると、表示オブジェクトの幅は、長くなった表示対象文字列の全体を収容できないことがある。」という本願発明が解決しようとする課題は全く開示も示唆もされていません。
引用文献4には、携帯電話の表示画面が2つあることを想定しておらず、本願発明の
「前記第1の表示オブジェクトに対応する表示対象文字列の長さが前記第1の画面上で前記第1の表示オブジェクトの第1の幅より大きいと判定したことに応答して、前記第1の画面を表示することを停止するステップと、
第2の位置関係に基づいて第2の画面上に前記第1の表示オブジェクトおよび前記第2の表示オブジェクトを表示するステップであって、前記第2の位置関係は、前記第1の位置関係とは異なり、前記第2の位置関係に対応する前記第1の表示オブジェクトの第2の幅は、前記第1の幅より大きい、ステップと、」は、開示も示唆もされていません。
引用発明および引用文献4の発明と本願発明の相違点を明らかにすべく、請求項1において、
「前記第1の表示オブジェクトに、前記表示対象文字列の前記長さに応じて、前記表示対象文字列を前記表示対象文字列の全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように、または前記表示対象文字列の代わりの、前記表示対象文字列に関連付けられた関連コンテンツを前記関連コンテンツの全体が前記第1の表示オブジェクトの前記第2の幅に収まるように表示するステップであって、前記関連コンテンツは、前記表示対象文字列と同じもしくは同様の意味を表す、」のように補正いたします。
また、令和4年10月12日提出の上申書の補正案で追加された「前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む」はさらに、段落0117に基づき、「前記関連コンテンツは、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列とは言語タイプが異なる他の文字列、エモーティコン、または画像の少なくとも1つを含み、前記他の文字列は、前記第1の表示オブジェクトに対応する前記表示対象文字列の略語または頭字語を含む」のように補正いたします。
よって、引用文献4には、本願発明の関連コンテンツの構成は開示も示唆もされておりません。
したがって、本願の請求項1に記載の発明は、引用文献1、2、および4に基づいて当業者が容易に想到しうるものではありません。」
と主張する。
しかしながら、上記1及び2のとおりであるから、上記主張を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 ▲吉▼田 耕一
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-03-09 
結審通知日 2023-03-13 
審決日 2023-03-28 
出願番号 P2020-520095
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 中野 裕二
石井 則之
発明の名称 表示処理方法および電子デバイス  
代理人 実広 信哉  
代理人 野村 進  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ