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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1401252
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-13 
確定日 2023-08-10 
事件の表示 特願2021−534493「運転操作管理システム、管理サーバ、端末装置および運転操作管理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月28日国際公開、WO2021/014622〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)7月24日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 8月31日 :手続補正書の提出
令和3年12月 8日付け:拒絶理由通知書
令和4年 2月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 5月 2日付け:拒絶査定
令和4年 7月13日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年7月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成4年7月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「列車の運転士の状態を示す情報である運転士情報を蓄積する運転士情報蓄積部と、
前記列車の運行状態の情報である移動体情報を取得する移動体情報取得部と、
前記運転士の運転操作を受け付ける運転操作受付部と、
前記運転士情報と、前記移動体情報または前記運転操作受付部で受け付けられた運転操作を示す操作情報の少なくとも1つとを取得して関連付け、運行情報として蓄積させる運行情報管理部と、
前記運行情報を蓄積する運行情報蓄積部と、
前記運行情報蓄積部に蓄積されている前記運行情報に基づいて、前記運転士の運転状態により、ヒューマンエラーが発生する可能性を予測して判定するための判定ロジックを設定する判定ロジック設定部と、
前記判定ロジックを蓄積する判定ロジック蓄積部と、
前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックを用いて、前記運転士の運転状態を判定する判定部と、
を備え、
前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックの情報が、異なる前記列車において共有される、
ことを特徴とする運転操作管理システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年2月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「列車の運転士の状態を示す情報である運転士情報を蓄積する運転士情報蓄積部と、
前記列車の運行状態の情報である移動体情報を取得する移動体情報取得部と、
前記運転士の運転操作を受け付ける運転操作受付部と、
前記運転士情報と、前記移動体情報または前記運転操作受付部で受け付けられた運転操作を示す操作情報の少なくとも1つとを取得して関連付け、運行情報として蓄積させる運行情報管理部と、
前記運行情報を蓄積する運行情報蓄積部と、
前記運行情報蓄積部に蓄積されている前記運行情報に基づいて、前記運転士の運転状態により、ヒューマンエラーが発生する可能性を予測して判定するための判定ロジックを設定する判定ロジック設定部と、
前記判定ロジックを蓄積する判定ロジック蓄積部と、
前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックを用いて、前記運転士の運転状態を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする運転操作管理システム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である判定ロジック蓄積部に蓄積されている判定ロジックについて、「前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックの情報が、異なる前記列車において共有される」との限定を付加する補正事項を含むものである。
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0032】の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正であるから、特許法第17条の2第3項に違反するものではなく、また、同第4項に違反するものでもない。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献
ア 原査定の拒絶の理由で引用された特開2012−118951号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審において付した。)
「【0001】
この発明は、車載装置および運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両事故の低減を目的として、居眠り運転や脇見運転あるいは漫然運転といった運転者の危険運転状態を推定し、運転者に対して所定の情報を報知する技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の技術では、運転開始から所定時間(たとえば、5分間)における操舵角の変化や車速等をモニタし、これらの情報から運転者の基本運転パターンを作成する。そして、特許文献1に記載の技術では、その後の運転者の運転パターンを基本運転パターンと比較することによって運転者の居眠り運転状態を推定する。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術には、運転者に対して適切なタイミングで報知を行うことが困難であるという問題があった。これは、運転開始から所定時間内に運転者の危険運転状態が発生した場合に、運転者に対して危険を報知することができないためである。
【0006】
また、運転開始からの所定時間内において取得することができる情報量には限りがあり、運転者の特性を十分に反映した基本運転パターンが作成されないおそれがあるためでもある。適切な基本運転パターンを作成することができなければ、運転者に対して適切な報知を行うことが困難である。
【0007】
本願は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、運転者に対して適切な報知を行うことができる車載装置および運転支援システムを提供することを目的とする。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0009】
本願によれば、特定手段が、運転者を特定し、運転特性取得手段が、特定手段によって特定された運転者の過去の運転履歴に基づく運転特性情報を取得し、運転状況取得手段が、現在の運転状況に関する運転状況情報を取得し、推定手段が、運転特性取得手段によって取得された運転特性情報および運転状況取得手段によって取得された運転状況情報に基づいて運転者の状態を推定し、制御手段が、推定手段によって推定された運転者の状態に基づき、運転者へ報知する内容を変更することとした。したがって、運転者に対して適切な報知を行うことができる。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車載装置および運転支援システムの実施例を詳細に説明する。まず、実施例の詳細な説明に先立ち、本発明に係る運転支援手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る運転支援手法の概要を示す図である。なお、図1には、車両の運転者が運転者Aである場合について示している。
【0012】
図1に示すように、本発明に係る運転支援手法では、運転者の過去の運転履歴に基づく運転特性と、かかる運転者の現在の運転状況とに基づいて運転者の状態を推定することで、運転者に合った最適なタイミングで報知を行うことを可能とする。
【0013】
具体的には、まず、車両の運転者を特定する(図1の(1)参照)。運転者の特定手法としては、たとえば、指紋センサや静脈センサなどを用いた生体認証を利用することができる。なお、生体認証に限らず、所有者を特定するID情報が記憶された車両キーによる認証やパスワード認証などを用いることもできる。
【0014】
つづいて、本発明に係る運転支援手法では、特定した運転者に対応する運転特性情報を所定のデータベースから取得する(図1の(2)参照)。図1では、車両の運転者が運転者Aであるため、運転特性情報(運転者A)が取得される。ここで、運転特性情報とは、車両運転に関する運転者の傾向や癖などを示す情報であり、後述する運転履歴情報から抽出される。なお、データベースは、車載装置が有することとしてもよいし、所定の管理装置が有することとしてもよい。
【0015】
このように、本発明に係る運転支援手法では、運転者の運転開始前における過去の運転履歴に基づく運転特性情報を取得することとした。したがって、運転者に対応する運転特性情報を車両の走行前に取得することができる。
【0016】
つづいて、本発明に係る運転支援手法では、車両の走行中において現在の運転状況を取得する(図1の(3)参照)。ここで、現在の運転状況とは、車両の走行状態を示す車両情報や運転時における運転者の生理情報を含む情報である。車両情報としては、たとえば、操舵パターンや車速などがあり、生理情報としては、たとえば、心拍数や心拍揺らぎあるいは視線などがある。そして、かかる運転状況を蓄積したものが運転履歴情報となる。
【0017】
つづいて、本発明に係る運転支援手法では、現在の運転状況および運転者Aの運転特性情報に基づいて運転者Aの状態を推定する(図1の(4)参照)。たとえば、本発明に係る運転支援手法では、運転者Aの現在の心拍数と、運転者Aの運転特性情報に含まれる基準心拍数との差に基づいて運転者Aの眠気レベルを推定する。
【0018】
なお、このとき用いられる基準心拍数は、運転者A特有の値である。したがって、かかる基準心拍数を用いることで、運転者Aに適合した眠気レベルの推定結果を得ることができる。
【0019】
つづいて、本発明に係る運転支援手法では、推定した運転者Aの状態に基づいて報知器を制御する(図1の(5)参照)。たとえば、本発明に係る運転支援手法では、眠気レベルが所定レベル以上となった場合に、所定の報知器に対して所定の情報を報知させる。なお、報知器としては、たとえば、インジケータ、スピーカ、座席振動装置などがある。
【0020】
このように、本発明に係る運転支援手法では、運転者を特定したうえで、特定した運転者に対応する運転特性情報を取得する。また、本発明に係る運転支援手法では、現在の運転状況を取得し、運転特性情報および運転状況に基づいて運転者の状態を推定する。そして、本発明に係る運転支援手法では、推定した運転者の状態に基づいて運転者へ報知する内容を変更することとした。すなわち、本発明に係る運転支援手法では、運転者固有の運転特性と、かかる運転者の現在の運転状況とに基づいて推定された運転者の状態に基づいて運転者へ放置する内容を変更することとしたため、運転者に対して適切な報知を行うことができる。
【0021】
なお、ここでは、運転者ごとの運転特性情報が所定のデータベースに予め記憶されている場合について説明したが、運転特性情報は、運転者を特定するたびに、運転履歴情報から抽出するようにしてもよい。
【0022】
ところで、運転者にとっての最適な報知タイミングは、常に同じであるとは限らない。たとえば、運転者にとっての最適な報知タイミングは、運転者の生活リズムあるいは車両の周辺状況などによって変化し得る。そこで、たとえば、運転者の前日の睡眠時間がわずかである場合や車両周辺が混雑している場合などには、通常よりも早めのタイミングで報知を行うこととしてもよい。なお、かかる点の詳細については、実施例において後述することとする。
【0023】
以下では、本発明に係る運転支援手法を適用した車載装置および運転支援システムについての実施例を詳細に説明する。なお、以下では、運転履歴情報および運転特性情報を管理センターが保有する場合について説明する。
【実施例】
【0024】
まず、本実施例に係る運転支援システムの構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施例に係る運転支援システムの構成を示す図である。
【0025】
図2に示したように、本実施例に係る運転支援システムは、車両100に搭載された車載装置10と、管理センター内に設置された管理装置20と、運転者が所持する携帯端末装置30とを含む。
【0026】
車載装置10は、たとえば、カーナビゲーション装置である。かかる車載装置10は、一般的なナビゲーション機能に加え、運転者の状態を推定する機能(状態推定機能)や報知器を制御する機能(報知制御機能)を実装する。
【0027】
また、車載装置10は、無線WAN(Wide Area Network)や無線LAN(Local Area Network)といった通信ネットワークを介して管理装置20と接続する。また、車載装置10は、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信によって携帯端末装置30と接続する。
【0028】
なお、ここでは、車載装置10がカーナビゲーション装置であるものとして説明するが、車載装置10は、必ずしもナビゲーション機能を有する必要はない。たとえば、車載装置10は、管理装置20や携帯端末装置30との通信機能や表示機能といった基本的な機能のみを実装し、携帯端末装置30と連携することで多機能化するDA(Display Audio)であってもよいし、専用装置であってもよい。
【0029】
管理装置20は、たとえば、パーソナルコンピュータやサーバ装置といった一般的なコンピュータ装置である。かかる管理装置20は、運転履歴DB200aおよび運転特性DB200bを含んだデータベース200を備える。運転履歴DB200aは、運転者ごとの運転履歴情報を格納するデータベースである。また、運転特性DB200bは、運転者ごとの運転特性情報を格納するデータベースである。
【0030】
携帯端末装置30は、携帯電話やPHS(Personal Handy-phone System)あるいはPDA(Personal Digital Assistant)といった携帯端末装置である。かかる携帯端末装置30は、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信機能を搭載する。
【0031】
また、運転者の家庭には、睡眠計測装置40が設置されている。かかる睡眠計測装置40は、運転者の睡眠時間を計測し記憶する装置である。携帯端末装置30は、近距離無線通信によって睡眠計測装置40と接続し、睡眠計測装置40から運転者の前日の睡眠時間を取得する。また、携帯端末装置30は、近距離無線通信によって車載装置10と接続し、睡眠計測装置40から取得した運転者の前日の睡眠時間を車載装置10へ送信する。
【0032】
次に、本実施例に係る車載装置10および管理装置20の構成について図3を用いて説明する。図3は、車載装置10および管理装置20の構成を示すブロック図である。なお、図3では、車載装置10および管理装置20の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0033】
図3に示すように、車載装置10は、制御部11および記憶部12を備える。また、制御部11は、運転特性取得部11aと、運転状況取得部11bと、状態レベル推定部11cと、報知制御部11dと、周辺環境取得部11eと、生活情報取得部11fとを備える。また、記憶部12は、運転特性情報12aを記憶する。
【0034】
管理装置20は、制御部21および記憶部22を備える。また、制御部21は、送信処理部21aと、運転特性抽出部21bと、履歴更新部21cとを備える。また、記憶部22は、運転特性情報22aと、運転履歴情報22bとを記憶する。
【0035】
なお、車両100には、指紋センサ100a、生理センサ群100b、運転操作センサ群100c、報知器群100dおよび周辺環境センサ群100eが設置されている。これらセンサ群および報知器群については、制御部11の各処理部の説明と併せて後述することとする。
【0036】
制御部11は、車載装置10全体を制御する制御部である。運転特性取得部11aは、運転者の指紋情報をキーとしてかかる運転者の運転特性情報を管理装置20から取得する処理部である。
【0037】
具体的には、運転特性取得部11aは、指紋センサ100aから運転者の指紋情報を取得し、取得した指紋情報を通信ネットワーク経由で管理装置20へ送信する。そして、運転特性取得部11aは、運転者に対応する運転特性情報22aを管理装置20から取得し、運転特性情報12aとして記憶部12に記憶する。
【0038】
なお、ここでは、指紋センサ100aを用いることとしたが、これに限らず、たとえば、静脈センサを用いて静脈情報を採取してもよいし、顔認証装置を用いて顔の特徴情報を採取してもよい。このように、生体情報を用いることで、車両器キーの貸し借りによる誤認証あるいは不正認証などを防止することができる。ただし、運転者の特定手法は、生体認証に限らず、パスワード認証などの生体認証以外の認証手法を用いてもよい。
【0039】
ここで、運転履歴情報および運転特性情報について図4を用いて説明する。図4は、運転特性抽出処理の一例を示す図である。まず、運転履歴情報22bについて説明する。
【0040】
運転履歴情報22bは、運転者の運転開始前における過去の運転履歴である。具体的には、運転履歴情報22bは、生理情報および車両情報を各運転者の指紋情報と関連付けた情報である。生理情報とは、運転時における運転者のバイタルサインや動作に関する情報を含んだ情報である。バイタルサインとしては、たとえば、心拍数データ、脳波データ、体温データなどがあり、動作に関する情報としては、顔向きデータや視線データなどがある。
【0041】
車両情報とは、運転者による車両100および他の車両の操作に関する情報である。車両情報には、たとえば、操舵データや車速データ、加速度データ、ヨー角データ、車両位置の左右への変動を示す車両ふらつき度データなどが含まれる。
【0042】
なお、運転履歴情報22bに含まれる各データは、車両100に搭載された生理センサ群100bおよび運転操作センサ群100cによって検出され、車載装置10から管理装置20へ送信され、履歴更新部21cによって運転履歴情報22bとして蓄積される。
【0043】
つづいて、運転特性情報について説明する。運転特性情報の抽出は、管理装置20の制御部21が備える運転特性抽出部21bによって行われる。具体的には、運転特性抽出部21bは、運転履歴情報22bとして蓄積された各データを平均化することによって基準データを作成し、運転特性情報22aとして記憶する。
【0044】
たとえば、運転特性抽出部21bは、蓄積された心拍数データを平均化することによって基準心拍数データを作成する。同様に、運転特性抽出部21bは、蓄積された顔向きデータを平均化することによって基準顔向きデータを作成し、蓄積された操舵データから基準操舵データを作成し、蓄積された車速データから基準車速データを作成する。
【0045】
また、運転特性抽出部21bは、作成した各基準データを運転者の指紋情報と関連付けて運転特性情報22aとして記憶部22に記憶する。このように、運転特性情報22aは、運転特性抽出部21bによって運転履歴情報22bから抽出される情報である。すなわち、運転特性情報22aは、運転者固有の基準データである。
【0046】
なお、ここでは、運転履歴情報22bとして蓄積されたデータを平均化することによって基準データを作成することとしたが、基準データを作成する方法は、これに限ったものではない。
【0047】
図3に戻り、車載装置10の制御部11についての説明を続ける。運転状況取得部11bは、生理センサ群100bによって検出された生理情報および運転操作センサ群100cによって検出された車両情報を運転状況情報として取得する処理部である。
【0048】
生理センサ群100bおよび運転操作センサ群100cについて説明する。生理センサ群100bは、運転者の生理情報を検出する各種のセンサを含む。たとえば、運転者の心拍数を計測する心拍計、運転者の脳波を計測する脳波計、運転者の体温を計測する体温計、運転者の視線や顔向きを検出するカメラなどが生理センサ群100bとして車両100に搭載される。なお、心拍計および体温計は、たとえば、ハンドルに搭載することができる。
【0049】
また、運転操作センサ群100cは、車両情報を検出する各種のセンサを含む。たとえば、操舵角を検出する操舵角センサ、車速を検出する車速センサ、車両100の加速度を検出する加速度センサなどが運転操作センサ群100cとして車両100に搭載される。
【0050】
運転状況取得部11bは、生理センサ群100bおよび運転操作センサ群100cから取得した運転状況情報を状態レベル推定部11cへ渡す処理も併せて行う。また、運転状況取得部11bは、取得した運転状況情報を管理装置20へ送信する処理も併せて行う。なお、運転状況取得部11bは、運転状況情報の管理装置20への送信を、運転状況情報を取得するごとに行ってもよいし、一定時間ごとあるいは一定量ごとに行ってもよい。
【0051】
状態レベル推定部11cは、運転状況取得部11bから運転状況情報を受け取ると、受け取った運転状況情報と、記憶部12に記憶された運転特性情報12aとに基づいて運転者の状態レベルを推定する処理部である。
【0052】
ここで、状態レベル推定部11cによる状態レベル推定処理について図5を用いて説明する。図5は、状態レベル推定処理の一例を示す図である。なお、図5では、状態レベル推定処理の一例として、心拍数データを用いて運転者の眠気レベルを推定する推定処理について説明するが、状態レベル推定処理はこれに限ったものではない。
【0053】
図5に示す基準心拍数は、基準心拍数データとして運転特性情報12aに含まれる情報である。すなわち、基準心拍数は、運転者ごとに異なる。
【0054】
状態レベル推定部11cは、運転状況情報に含まれる心拍数すなわち現在の心拍数が、基準心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α1からかかる心拍数α1よりもβ1だけ少ない心拍数α2の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定する。
【0055】
また、状態レベル推定部11cは、現在の心拍数が、心拍数α2からかかる心拍数α2よりもβ1だけ少ない心拍数α3の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル2であると推定する。また、状態レベル推定部11cは、現在の心拍数が、心拍数α3からかかる心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α4の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル3であると推定する。また、状態レベル推定部11cは、現在の心拍数データが、心拍数α4よりも少ない場合に、運転者の眠気レベルがレベル4であると推定する。
【0056】
たとえば、図5では、時間t1における心拍数が心拍数α1〜α2の範囲内にある。このため、状態レベル推定部11cは、時間t1における運転者の眠気レベルをレベル1と推定する。同様に、状態レベル推定部11cは、時間t2における運転者の眠気レベルをレベル2と推定し、時間t3における運転者の眠気レベルをレベル3と推定し、時間t4における運転者の眠気レベルをレベル4と推定する。また、状態レベル推定部11cは、時間t0において運転者の眠気レベルをレベル0と推定する。
【0057】
このように、状態レベル推定部11cは、運転者固有の基準心拍数を用いて運転者の眠気レベルを推定するため、一般的な基準心拍数を用いる場合と比較して、運転者の眠気レベルを適切に推定することができる。
【0058】
なお、図5では、説明を容易にするために、眠気レベル1〜3の範囲幅β1を一定としたが、かかる範囲幅はそれぞれ異なってもよい。また、車載装置10では、状態レベル推定部11cによって推定された状態レベルを図示しないディスプレイへ表示することとしてもよい。
【0059】
状態レベル推定部11cは、運転者の状態レベルを推定すると、推定した状態レベルを報知制御部11dへ渡す。
【0060】
図3に戻り、車載装置10の制御部11についての説明を続ける。報知制御部11dは、状態レベル推定部11cから運転者の状態レベルを受け取ると、受け取った状態レベルに基づいて報知器群100dを制御する処理部である。
【0061】
ここで、報知制御部11dによる報知制御処理について説明する。まず、報知制御処理の処理対象となる報知器群100dについて説明する。報知器群100dは、運転者に対して所定の情報を報知する各種の報知器を含む。たとえば、報知器群100dには、インジケータやスピーカ、座席振動装置などが含まれる。なお、座席振動装置は、運転席内部に設けられた振動装置である。
【0062】
つづいて、報知制御部11dによる報知制御処理について図6を用いて説明する。図6は、報知制御処理の一例を示す図である。
【0063】
図6に示すように、報知制御部11dは、運転者の眠気レベルがレベル1である場合には、インジケータを点灯させる。また、報知制御部11dは、眠気レベルがレベル2である場合には、スピーカを制御し、「休憩しませんか?」といった音声案内を出力させる。
【0064】
また、報知制御部11dは、眠気レベルがレベル3である場合には、スピーカを制御し、警報音を出力する。ここで出力される警報音は、音量が比較的小さい弱警報音であるものとする。また、報知制御部11dは、眠気レベルがレベル4である場合には、座席振動装置を振動させる。ここでの座席振動装置による振動は、振動の程度が比較的弱い弱振動であるものとする。
【0065】
このように、車載装置10では、報知制御部11dが、状態レベル推定部11cによって推定された運転者の状態レベルに従って報知器群100dを制御し、報知器群100dが、運転者に対して所定の情報を報知する。これにより、居眠り運転や脇見運転あるいは漫然運転といった危険運転状態が原因となって起こる車両事故を未然に防ぐことができる。
【0066】
なお、図6に示した眠気レベルおよび報知器の組合せは、あくまでも一例であり、他の組合せであっても構わない。また、複数の報知器を同時に動作させることとしてもよい。
【0067】
図3に戻り、車載装置10の制御部11についての説明を続ける。周辺環境取得部11eは、周辺環境センサ群100eから車両100の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得する処理部である。
【0068】
周辺環境センサ群100eは、車両100の周辺環境情報を検出する各種のセンサを含む。たとえば、前方車両との車間距離を計測するミリ波レーダ、後方車両との車間距離を計測するミリ波レーダ、車線幅を計測するためのカメラなどが周辺環境センサ群100eとして含まれる。なお、ミリ波レーダに代えて、レーザレーダや超音波レーダなどを用いることとしてもよい。
【0069】
周辺環境取得部11eは、周辺環境センサ群100eから周辺環境情報を取得すると、取得した周辺環境情報を報知制御部11dへ渡す。
【0070】
生活情報取得部11fは、携帯端末装置30から運転者の前日の睡眠時間を生活情報として取得する。また、生活情報取得部11fは、取得した生活情報を状態レベル推定部11cへ渡す処理も併せて行う。
【0071】
記憶部12は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部であり、運転特性情報12aを記憶する。かかる運転特性情報12aは、運転特性取得部11aによって管理装置20から取得される情報である。
【0072】
つづいて、管理装置20について説明する。管理装置20の制御部21は、管理装置20全体を制御する制御部であり、送信処理部21a、運転特性抽出部21bおよび履歴更新部21cを備える。
【0073】
送信処理部21aは、車載装置10から指紋情報を受け取ると、受け取った指紋情報と関連付けられた運転特性情報22aを記憶部22から取り出し、通信ネットワークを介して車載装置10へ送信する処理部である。
【0074】
運転特性抽出部21bは、運転履歴情報22bから運転特性情報22aを抽出する処理部である。かかる運転特性抽出部21bによる運転特性抽出処理については、図4を用いて既に説明したため、ここでの説明は省略する。
【0075】
履歴更新部21cは、車載装置10から運転状況情報および指紋情報を受け取ると、受け取った指紋情報と関連付けられた運転履歴情報22bに対して運転状況情報を追加する処理部である。
【0076】
記憶部22は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部であり、運転特性情報22aおよび運転履歴情報22bを記憶する。ここで、記憶部22は、図2に示したデータベース200に相当し、運転特性情報22aは、運転特性DB200bに相当し、運転履歴情報22bは、運転履歴DB200aに相当する。
【0077】
ところで、運転者にとって最適な報知タイミングは、常に同じであるとは限らない。たとえば、運転者が寝不足である場合には、居眠り運転などの危険運転状態への推移が早くなることが予想される。そこで、運転者の前日の睡眠時間に基づいて報知タイミングを早めることとしてもよい。
【0078】
以下では、運転者の前日の睡眠時間に基づき、運転者への所定の情報の報知タイミングを早める場合の例について図7を用いて説明する。図7は、状態レベル推定処理の他の一例を示す図である。なお、図7の(A)は状態レベル推定処理の他の一例の概要を、図7の(B)は推定条件「シビア」を用いた状態推定処理の一例を、それぞれ示している。
【0079】
図7の(A)に示すように、状態レベル推定部11cは、運転者の状態レベルを推定する場合に用いる推定条件として、「ノーマル」および「シビア」の2つの推定条件を備える。状態レベル推定部11cは、生活情報取得部11fから通知される生活情報に応じてこれら2つの推定条件から1つの推定条件を選択する。
【0080】
具体的には、状態レベル推定部11cは、生活情報として通知された運転者の前日の睡眠時間が6時間以上である場合には推定条件「ノーマル」を選択し、6時間未満である場合には推定条件「シビア」を選択する。
【0081】
推定条件「シビア」が選択されると、推定条件「ノーマル」が選択された場合(図5に示した場合)よりも早いタイミングで睡眠レベルが推定される。この結果、推定条件「ノーマル」が選択された場合と比較して早いタイミングで運転者への報知が行われることとなる。
【0082】
たとえば、図7の(B)に示すように、状態レベル推定部11cは、運転状況情報に含まれる心拍数データが、基準心拍数よりもβ2だけ少ない心拍数α1’からかかる心拍数α1’よりもβ2だけすくない心拍数α2’の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定する。
【0083】
ここで、β2は、β1よりも小さい値である。したがって、推定条件「シビア」が選択された場合には、推定条件「ノーマル」が選択された場合と比較して、レベル1以上の眠気レベルが推定されるタイミングが早まる。たとえば、時間t0における眠気レベルは、推定条件「ノーマル」選択時には眠気レベル0と推定されたが(図5参照)、推定条件「シビア」が選択された場合には眠気レベル1と推定される。
【0084】
この結果、推定条件「ノーマル」選択時には時間t1において点灯されるインジケータが、時間t1よりも早い時間t0において点灯されることとなる。すなわち、車載装置10は、推定条件「シビア」を選択することで、通常よりも早いタイミングで運転者への報知を開始することができる。
【0085】
このように、状態レベル推定部11cは、生活情報に基づいて推定条件を変更することとしたため、運転者の生活リズムに合ったより適切なタイミングで報知を行うことができる。特に、生活情報として運転者の前日の睡眠時間を用いることで、居眠り運転による車両事故をより適切に防止することができる。
・・・(中略)・・・
【0099】
次に、本実施例に係る車載装置10の具体的動作について図9を用いて説明する。図9は、車載装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、図9においては、報知制御処理が1回だけ行われる場合の処理手順について示している。
【0100】
図9に示すように、車載装置10では、運転特性取得部11aが、指紋情報要求条件を満たすか否かを判定する(ステップS101)。ここで、指紋情報要求条件とは、運転者に対して指紋情報の取得を要求するか否かの決定に用いる条件である。
【0101】
たとえば、運転特性取得部11aは、エンジンが始動した場合、シートベルトの取り外し操作がなされた場合、一時停止状態が所定時間以上継続した場合、運転席の座席位置が変更された場合に、指紋情報要求条件を満たしたと判定する。なお、運転席に体重計が設置されている場合には、一定量以上の体重変化があった場合に、指紋情報要求条件を満たしたと判定することとしてもよい。
【0102】
ステップS101において指紋情報要求条件を満たすと判定すると(ステップS101,Yes)、運転特性取得部11aは、指紋センサ100aを起動させて指紋情報の要求を行うとともに、指紋センサ100aから運転者の指紋情報を取得する(ステップS102)。つづいて、運転特性取得部11aは、取得した指紋情報を管理装置20へ送信するとともに、運転者に対応する運転特性情報を管理装置20から取得する(ステップS103)。
【0103】
ステップS103の処理を終えた場合、あるいは、ステップS101において指紋情報要求条件を満たさない場合(ステップS101,No)、運転状況取得部11bは、生理センサ群100bおよび運転操作センサ群100cから生理情報および車両情報を運転状況情報として取得する(ステップS104)。
【0104】
つづいて、状態レベル推定部11cは、運転状況情報および運転特性情報12aに基づいて運転者の状態レベルを推定する(ステップS105)。そして、報知制御部11dは、状態レベルがレベル1以上であるか否かを判定し(ステップS106)、レベル1以上であるならば(ステップS106,Yes)、状態レベルに対応する報知制御を行い(ステップS107)、処理を終了する。なお、状態レベルがレベル1未満である場合には(ステップS106,No)、ステップS104へ戻り、運転状況情報を取得する。
【0105】
上述してきたように、本実施例では、運転特性取得部が、運転者を特定するとともに、特定した運転者の運転開始前における過去の運転履歴に基づく運転特性情報を取得し、運転状況取得部が、現在の運転状況に関する運転状況情報を取得し、状態レベル推定部が、運転特性情報および運転状況情報に基づいて運転者の状態を推定する。また、本実施例では、報知制御部が、推定された運転者の状態に基づき、運転者に対して所定の情報を報知する報知器の制御を行うこととした。したがって、本実施例によれば、運転者に対して適切な報知を行うことができる。
【0106】
また、本実施例では、各運転者の運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを車載装置10ごとに管理するのではなく、管理装置20で一括管理することとした。このため、運転者は、乗車する車両に関係なく、自分の運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを利用することができる。これは、運転者がカーシェアリング用の車両やレンタカーを運転する場合に特に有効である。
【0107】
なお、上述した実施例では、各種のセンサや報知器が車両100に搭載されている場合について説明したが、これに限らず、車載装置10が、これらセンサや報知器の一部または全部を備えることとしてもよい。
・・・(中略)・・・
【0124】
また、上述した実施例では、運転者の前日の睡眠時間を生活情報として用いる場合の例について説明したが、運転者の直近の数日間の睡眠時間を生活情報として用いることとしてもよい。また、生活情報は、睡眠時間に限ったものではなく、たとえば、食事時間や消費カロリーなどであってもよい。
【0125】
また、上述した実施例では、運転状況情報のみを運転履歴情報22bとして蓄積する場合の例について説明したが、これに限らず、生活情報や周辺環境情報といったその他の情報を運転履歴情報として蓄積してもよい。
【0126】
以上のように、本発明に係る車載装置および運転支援システムは、運転者に対して適切な報知を行いたい場合に有効であり、特に、居眠り運転、脇見運転、漫然運転といったヒューマンエラーによる車両事故を防止する技術への適用が考えられる。」
















イ 引用文献2の上記記載から次のことがいえる。
(ア)段落【0025】、【図2】の記載によると、引用文献2には、「車両100に搭載された車載装置10と、管理センター内に設置された管理装置20と、運転者が所持する携帯端末装置30とを含む運転支援システム」が記載されている。
(イ)段落【0033】、【0034】の記載によると、引用文献2には、上記(ア)の「車載装置10」は、「制御部11および記憶部12を備え、制御部11は、運転特性取得部11aと、運転状況取得部11bと、状態レベル推定部11cと、報知制御部11dと、生活情報取得部11fとを備え、記憶部12は、運転特性情報12aを記憶し」、上記(ア)の「管理装置20」は、「制御部21および記憶部22を備え、制御部21は、送信処理部21aと、運転特性抽出部21bと、履歴更新部21cとを備え、記憶部22は、運転特性情報22aと、運転履歴情報22bとを記憶」することが記載されている。
(ウ)段落【0035】、【0048】、【0049】の記載によると、引用文献2には、上記(ア)の「車両100」には、「指紋センサ100a、生理センサ群100b、運転操作センサ群100c、報知器群100dが設置され」、「生理センサ群100bは、運転者の心拍数を計測する心拍計、運転者の脳波を計測する脳波計、運転者の体温を計測する体温計、運転者の視線や顔向きを検出するカメラなどの運転者の生理情報を検出する各種のセンサを含み、運転操作センサ群100cは、操舵角を検出する操舵角センサ、車速を検出する車速センサ、車両100の加速度を検出する加速度センサなどの車両情報を検出する各種のセンサを含」むことが記載されている。
(エ)段落【0047】、【0050】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「運転状況取得部11b」は、「生理センサ群100bによって検出された生理情報および運転操作センサ群100cによって検出された車両情報を運転状況情報として取得し、取得した運転状況情報を状態レベル推定部11cへ渡し、また、取得した運転状況情報を、運転状況情報を取得するごと、一定時間ごとあるいは一定量ごとに管理装置20へ送信」することが記載されている。
(オ)段落【0075】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「履歴更新部21c」は、「車載装置10から運転状況情報および指紋情報を受け取ると、受け取った指紋情報と関連付けられた運転履歴情報22bに対して運転状況情報を追加する処理部である」ことが記載されている。ここで、段落【0103】には、上記(イ)の「運転状況取得部11b」は「生理情報および車両情報を運転状況情報として取得する」ことが記載されているから、上記の段落【0075】と合わせると、引用文献2には、「履歴更新部21c」は、「車載装置10から生理情報および車両情報並びに指紋情報を受け取ると、受け取った指紋情報と関連付けられた運転履歴情報22bに対して生理情報および車両情報を追加する処理部である」ことが記載されている。
(カ)段落【0040】〜【0042】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「運転履歴情報22b」は、「運転者の運転開始前における過去の運転履歴である、生理情報および車両情報を各運転者の指紋情報と関連付けた情報」であり、上記「生理情報」は、「生理センサ群100bによって検出された、運転時における運転者の心拍数データ、脳波データ、体温データなどのバイタルサインや、顔向きデータや視線データなどの動作に関する情報を含んだ情報」であり、上記「車両情報」は、「運転者による車両100および他の車両の操作に関する情報であり、運転操作センサ群100cによって検出された、操舵データや車速データ、加速度データ、ヨー角データ、車両位置の左右への変動を示す車両ふらつき度データなどが含まれ」ることが記載されている。
ここで、段落【0047】には、「運転状況取得部11bは生理情報および車両情報を運転状況情報として取得する」ことが記載され、段落【0070】には、「生活情報取得部11fは、運転者の前日の睡眠時間を生活情報として取得する」ことが記載され、段落【0125】には、「運転履歴情報22bは、運転状況情報のみを蓄積するものに限らず、生活情報を蓄積してもよい」ことが記載されているから、上記の【0040】〜【0042】と合わせると、引用文献2には、上記(イ)の「運転履歴情報22b」は、「運転者の運転開始前における過去の運転履歴である、生理情報および車両情報を各運転者の指紋情報と関連付けた情報であり、生理情報および車両情報を取得して蓄積するものに限らず生活情報を蓄積してもよく、生理情報は、生理センサ群100bによって検出された、運転時における運転者の心拍数データ、脳波データ、体温データなどのバイタルサインや、顔向きデータや視線データなどの動作に関する情報を含んだ情報であり、車両情報は、運転者による車両100および他の車両の操作に関する情報であり、運転操作センサ群100cによって検出された、操舵データや車速データ、加速度データ、ヨー角データ、車両位置の左右への変動を示す車両ふらつき度データなどが含まれ、生活情報は、生活情報取得部11fが取得した運転者の前日の睡眠時間である」ことが記載されている。
(キ)段落【0043】〜【0045】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「運転特性抽出部21b」は、「運転履歴情報22bとして蓄積された各データを平均化することによって基準データを作成し、運転特性情報22aとして記憶し、たとえば、蓄積された心拍数データを平均化することによって基準心拍数データを作成し、蓄積された顔向きデータを平均化することによって基準顔向きデータを作成し、蓄積された操舵データから基準操舵データを作成し、蓄積された車速データから基準車速データを作成し、作成した各基準データを運転者の指紋情報と関連付けて運転特性情報22aとして記憶部22に記憶する」ことが記載されている。
(ク)段落【0036】、【0037】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「運転特性取得部11a」は、「指紋センサ100aから運転者の指紋情報を取得し、取得した指紋情報を通信ネットワーク経由で管理装置20へ送信し、運転者の指紋情報をキーとして運転者に対応する運転特性情報22aを管理装置20から取得し、運転特性情報12aとして記憶部12に記憶する」ことが記載されている。
(ケ)段落【0051】〜【0059】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「状態レベル推定部11c」は、「運転状況取得部11bから運転状況情報を受け取ると、受け取った運転状況情報と、記憶部12に記憶された運転特性情報12aとに基づいて運転者の状態レベルを推定するものであり、一例として、運転特性情報12aに含まれる運転者ごとに異なる基準心拍数データを用いて運転者の眠気レベルを推定する処理について、運転状況情報に含まれる心拍数すなわち現在の心拍数が、基準心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α1からかかる心拍数α1よりもβ1だけ少ない心拍数α2の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定し、現在の心拍数が、心拍数α2からかかる心拍数α2よりもβ1だけ少ない心拍数α3の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル2であると推定し、現在の心拍数が、心拍数α3からかかる心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α4の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル3であると推定し、現在の心拍数データが、心拍数α4よりも少ない場合に、運転者の眠気レベルがレベル4であると推定し、運転者の状態レベルを推定すると、推定した状態レベルを報知制御部11dへ渡す」ことが記載されている。
ここで、段落【0079】〜【0083】には、運転者の状態レベルを推定する場合に用いる推定条件として、「ノーマル」および「シビア」の2つの推定条件を備え、生活情報取得部11fから通知される生活情報に応じて、生活情報として通知された運転者の前日の睡眠時間が6時間以上である場合には推定条件「ノーマル」を選択し、6時間未満である場合には推定条件「シビア」を選択し、推定条件「シビア」が選択されると、推定条件「ノーマル」が選択された場合よりも早いタイミングで睡眠レベルが推定され、推定条件「ノーマル」が選択された場合と比較して早いタイミングで運転者への報知が行われ、運転状況情報に含まれる心拍数データが、基準心拍数よりもβ2だけ少ない心拍数α1’からかかる心拍数α1’よりもβ2だけすくない心拍数α2’の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定し、推定条件「シビア」が選択された場合には、推定条件「ノーマル」が選択された場合と比較して、レベル1以上の眠気レベルが推定されるタイミングが早まるように推定することが記載されているから、上記の【0051】〜【0059】と合わせると、引用文献2には、上記(イ)の「状態レベル推定部11c」は、「運転状況取得部11bから運転状況情報を受け取ると、受け取った運転状況情報と、記憶部12に記憶された運転特性情報12aとに基づいて運転者の状態レベルを推定するものであり、運転者の状態レベルを推定する場合に用いる推定条件として、「ノーマル」および「シビア」の2つの推定条件を備え、運転特性情報12aに含まれる運転者ごとに異なる基準心拍数データを用いて運転者の眠気レベルを推定する処理について、生活情報取得部11fから通知される生活情報に応じて、生活情報として通知された運転者の前日の睡眠時間が6時間以上である場合には推定条件「ノーマル」を選択し、6時間未満である場合には推定条件「シビア」を選択し、「ノーマル」の場合、運転状況情報に含まれる心拍数すなわち現在の心拍数が、基準心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α1からかかる心拍数α1よりもβ1だけ少ない心拍数α2の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定し、現在の心拍数が、心拍数α2からかかる心拍数α2よりもβ1だけ少ない心拍数α3の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル2であると推定し、現在の心拍数が、心拍数α3からかかる心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α4の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル3であると推定し、現在の心拍数データが、心拍数α4よりも少ない場合に、運転者の眠気レベルがレベル4であると推定し、推定条件「シビア」が選択された場合、推定条件「ノーマル」が選択された場合よりも早いタイミングで睡眠レベルが推定され、推定条件「ノーマル」が選択された場合と比較して早いタイミングで運転者への報知が行われ、運転状況情報に含まれる心拍数データが、基準心拍数よりもβ2だけ少ない心拍数α1’からかかる心拍数α1’よりもβ2だけすくない心拍数α2’の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定し、運転者の状態レベルを推定すると、推定した状態レベルを報知制御部11dへ渡す」ことが記載されている。
(コ)段落【0060】〜【0065】、【図6】の記載によると、引用文献2には、上記(イ)の「報知制御部11d」は、「状態レベル推定部11cから運転者の状態レベルを受け取ると、受け取った状態レベルに基づいて報知器群100dを制御するものであり、これにより居眠り運転や脇見運転あるいは漫然運転といった危険運転状態が原因となって起こる車両事故を未然に防ぐことができる」ことが記載されている。
(サ)段落【0106】には、上記(イ)の「運転履歴情報22bおよび運転特性情報22a」を、「車載装置10ごとに管理するのではなく、一括管理することとしたため」、「運転者は、乗車する車両に関係なく、自分の運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを利用することができる」ことが記載され、段落【0126】には、「運転支援システム」は、「居眠り運転、脇見運転、漫然運転といったヒューマンエラーによる車両事故を防止する技術への適用が考えられる」ことが記載されているから、引用文献2には、「運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを、車載装置10ごとに管理するのではなく一括管理することとしたため、運転者は、乗車する車両に関係なく、自分の運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを利用することができ、居眠り運転、脇見運転、漫然運転といったヒューマンエラーによる車両事故を防止する技術への適用が考えられる、運転支援システム」が記載されている。

ウ 上記ア、イから、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、(ア)〜(サ)の記号は、イの(ア)〜(サ)に対応している。

[引用発明]
(ア)車両100に搭載された車載装置10と、管理センター内に設置された管理装置20と、運転者が所持する携帯端末装置30とを含む運転支援システムであって、
(イ)車載装置10は、制御部11および記憶部12を備え、制御部11は、運転特性取得部11aと、運転状況取得部11bと、状態レベル推定部11cと、報知制御部11dと、生活情報取得部11fとを備え、記憶部12は、運転特性情報12aを記憶し、
管理装置20は、制御部21および記憶部22を備え、制御部21は、送信処理部21aと、運転特性抽出部21bと、履歴更新部21cとを備え、記憶部22は、運転特性情報22aと、運転履歴情報22bとを記憶し、
(ウ)車両100には、指紋センサ100a、生理センサ群100b、運転操作センサ群100c、報知器群100dが設置され、
生理センサ群100bは、運転者の心拍数を計測する心拍計、運転者の脳波を計測する脳波計、運転者の体温を計測する体温計、運転者の視線や顔向きを検出するカメラなどの運転者の生理情報を検出する各種のセンサを含み、運転操作センサ群100cは、操舵角を検出する操舵角センサ、車速を検出する車速センサ、車両100の加速度を検出する加速度センサなどの車両情報を検出する各種のセンサを含み、
(エ)運転状況取得部11bは、生理センサ群100bによって検出された生理情報および運転操作センサ群100cによって検出された車両情報を運転状況情報として取得し、
取得した運転状況情報を状態レベル推定部11cへ渡し、また、取得した運転状況情報を、運転状況情報を取得するごと、一定時間ごとあるいは一定量ごとに管理装置20へ送信するものであり、
(オ)履歴更新部21cは、車載装置10から運転状況情報としての生理情報および車両情報と、指紋情報とを受け取ると、受け取った指紋情報と関連付けられた運転履歴情報22bに対して運転状況情報を追加する処理部であり、
(カ)運転履歴情報22bは、運転者の運転開始前における過去の運転履歴である、生理情報および車両情報を各運転者の指紋情報と関連付けた情報であり、生理情報および車両情報を取得して蓄積するものに限らず生活情報を蓄積してもよく、
生理情報は、生理センサ群100bによって検出された、運転時における運転者の心拍数データ、脳波データ、体温データなどのバイタルサインや、顔向きデータや視線データなどの動作に関する情報を含んだ情報であり、
車両情報は、運転者による車両100および他の車両の操作に関する情報であり、運転操作センサ群100cによって検出された、操舵データや車速データ、加速度データ、ヨー角データ、車両位置の左右への変動を示す車両ふらつき度データなどが含まれ、
生活情報は、生活情報取得部11fが取得した運転者の前日の睡眠時間であり、
(キ)運転特性抽出部21bは、運転履歴情報22bとして蓄積された各データを平均化することによって基準データを作成し、運転特性情報22aとして記憶し、たとえば、蓄積された心拍数データを平均化することによって基準心拍数データを作成し、蓄積された顔向きデータを平均化することによって基準顔向きデータを作成し、蓄積された操舵データから基準操舵データを作成し、蓄積された車速データから基準車速データを作成し、作成した各基準データを運転者の指紋情報と関連付けて運転特性情報22aとして記憶部22に記憶し、
(ク)運転特性取得部11aは、指紋センサ100aから運転者の指紋情報を取得し、取得した指紋情報を通信ネットワーク経由で管理装置20へ送信し、運転者の指紋情報をキーとして運転者に対応する運転特性情報22aを管理装置20から取得し、運転特性情報12aとして記憶部12に記憶するものであり、
(ケ)状態レベル推定部11cは、運転状況取得部11bから運転状況情報を受け取ると、受け取った運転状況情報と、記憶部12に記憶された運転特性情報12aとに基づいて運転者の状態レベルを推定するものであり、運転者の状態レベルを推定する場合に用いる推定条件として、「ノーマル」および「シビア」の2つの推定条件を備え、運転特性情報12aに含まれる運転者ごとに異なる基準心拍数データを用いて運転者の眠気レベルを推定する処理について、生活情報取得部11fから通知される生活情報に応じて、生活情報として通知された運転者の前日の睡眠時間が6時間以上である場合には推定条件「ノーマル」を選択し、6時間未満である場合には推定条件「シビア」を選択し、「ノーマル」の場合、運転状況情報に含まれる心拍数すなわち現在の心拍数が、基準心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α1からかかる心拍数α1よりもβ1だけ少ない心拍数α2の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定し、現在の心拍数が、心拍数α2からかかる心拍数α2よりもβ1だけ少ない心拍数α3の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル2であると推定し、現在の心拍数が、心拍数α3からかかる心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α4の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル3であると推定し、現在の心拍数データが、心拍数α4よりも少ない場合に、運転者の眠気レベルがレベル4であると推定し、推定条件「シビア」が選択された場合、推定条件「ノーマル」が選択された場合よりも早いタイミングで睡眠レベルが推定され、推定条件「ノーマル」が選択された場合と比較して早いタイミングで運転者への報知が行われ、運転状況情報に含まれる心拍数データが、基準心拍数よりもβ2だけ少ない心拍数α1’からかかる心拍数α1’よりもβ2だけすくない心拍数α2’の範囲内にある場合に、運転者の眠気レベルがレベル1であると推定し、運転者の状態レベルを推定すると、推定した状態レベルを報知制御部11dへ渡し、
(コ)報知制御部11dは、状態レベル推定部11cから運転者の状態レベルを受け取ると、受け取った状態レベルに基づいて報知器群100dを制御するものであり、これにより居眠り運転や脇見運転あるいは漫然運転といった危険運転状態が原因となって起こる車両事故を未然に防ぐことができ、
(サ)運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを、車載装置10ごとに管理するのではなく一括管理することとしたため、運転者は、乗車する車両に関係なく、自分の運転履歴情報22bおよび運転特性情報22aを利用することができ、
居眠り運転、脇見運転、漫然運転といったヒューマンエラーによる車両事故を防止する技術への適用が考えられる、運転支援システム。

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「車両100」及び「運転者」は、それぞれ移動体とその運転操作を行う操作者(以下「操作者」という。)である点で、本件補正発明の「列車」及び「運転士」と共通する。
引用発明の、移動体の操作者の「心拍数データ、脳波データ、体温データなどのバイタルサイン」である「生理情報」は、移動体の操作者の状態を示す情報である操作者情報である点で、本件補正発明の「列車の運転士の状態を示す情報」と共通する。
本件補正発明の「列車の運行状態の情報である移動体情報」は、列車速度の情報を含むものであり(本願明細書段落【0014】)、このことに照らせば、引用発明の「運転履歴情報22b」の「車両情報」に含まれる「車速データ」と、本件補正発明の「列車の運行状態の情報である移動体情報」とは、いずれも「移動体の運転業務状態の情報」である「移動体情報」である点で共通する。

イ 引用発明の「運転状況取得部11b」は、生理センサ群100bおよび運転操作センサ群100cから取得した運転状況情報を一定時間ごとあるいは一定量ごとに送信するものであるから、操作者情報を含む運転状況情報を蓄積する蓄積手段を有することは明らかである。
よって、引用発明の「運転状況取得部11b」が、生理センサ群100bから取得したバイタルサインを含む運転状況情報を一定時間ごとあるいは一定量ごとに送信するための、操作者情報を含む運転状況情報を蓄積する蓄積手段と、本件補正発明の「列車の運転士の状態を示す情報である運転士情報を蓄積する運転士情報蓄積部」は、「移動体の操作者の状態を示す情報である操作者情報を蓄積する操作者情報蓄積部」である点で共通する。

ウ さらに、引用発明の「運転操作センサ群100cによって検出された車両情報を運転状況情報として取得」する「運転状況取得部11b」は、「移動体の運転業務状態の情報である移動体情報を取得する移動体情報取得部」である点で、本件補正発明の「前記列車の運行状態の情報である移動体情報を取得する移動体情報取得部」とも共通する。

エ 引用発明の「車両情報」に含まれる「操舵データ」は、操舵という運転操作を示す情報であることから、本件補正発明の「運転操作を示す操作情報」に相当する。そして、引用発明の「運転状況取得部11b」は、運転操作を示す操作情報を取得することで運転操作を受け付けることから、「操作者の運転操作を受け付ける運転操作受付部」である点で、本件補正発明の「前記運転士の運転操作を受け付ける運転操作受付部」とも共通する。

オ 引用発明の「運転履歴情報22b」は、操作者情報と移動体情報を各操作者の指紋情報とを関連付けた運転履歴情報であり、当該指紋情報が示す操作者の状態を示す操作者情報と移動体情報とを取得して関連付けて蓄積されるものであって、運転業務中の移動体の搭載機器である車速センサの状態と、運転業務中の操作者の状態に関わる心拍数等の情報と、運転業務中以外の操作者の状態である操作者の前日の睡眠時間の情報を含むことから、本件補正発明の「運行情報」とは、「運転業務情報」である点で共通する。また、引用発明の「管理装置20」の「記憶部22」は、この「運転業務情報」を記憶して蓄積するものであるから、本件補正発明の「運行情報蓄積部」とは「運転業務情報蓄積部」である点で共通する。
そして、引用発明の「履歴更新部21c」は、操作者情報と移動体情報を含む運転状況情報と指紋情報を受け取って、当該指紋情報が示す操作者の状態を示す操作者情報と移動体情報とを取得して関連付け、記憶部の運転履歴情報を更新してこれを蓄積するものであるから、「前記操作者情報と、前記移動体情報または前記運転操作受付部で受け付けられた運転操作を示す操作情報の少なくとも1つとを取得して関連付け、運転業務情報として蓄積させる運転業務情報管理部」である点で、本件補正発明の「前記運転士情報と、前記移動体情報または前記運転操作受付部で受け付けられた運転操作を示す操作情報の少なくとも1つとを取得して関連付け、運行情報として蓄積させる運行情報管理部」と共通する。

カ 引用発明の「車両事故の原因となり得る居眠り運転や脇見運転あるいは漫然運転等の危険運転状態」に係る「眠気レベル」の「推定」は、操作者毎に行われ、「操作者の運転状態による判定」である点で、本件補正発明の「前記運転士の運転状態により、ヒューマンエラーが発生する可能性を予測して判定する」ことと共通する。
そして、引用発明の、操作者の運転状態による判定は、「運転状況情報」と操作者に対応する「基準心拍数データ等」の「運転特性情報12a」とに基づいて行われるところ、このうち「運転特性情報12a」は、運転業務情報蓄積部(記憶部22)に蓄積されている運転業務情報に基づいて抽出されたものが車載装置の運転特性取得部11aで取得されて車載装置の記憶部12に記憶されることで推定のために設定されることから、「運転業務情報蓄積部に蓄積されている前記運転業務情報に基づいて」「設定」される「操作者の運転状態による判定のための判定情報」である点で、本件補正発明の「運行情報蓄積部に蓄積されている前記運行情報に基づいて」「設定」される「判定ロジック」と共通する。
そうすると、引用発明の車載装置の「運転特性取得部11a」及びその「記憶部12」は、それぞれ、運転業務情報蓄積部に蓄積されている前記運転業務情報に基づいて、前記操作者の運転状態による判定のための判定情報を設定する設定部、及び前記判定情報を蓄積する蓄積部である点で、本件補正発明の「前記運行情報蓄積部に蓄積されている前記運行情報に基づいて、前記運転士の運転状態により、ヒューマンエラーが発生する可能性を予測して判定するための判定ロジックを設定する判定ロジック設定部」及び「前記判定ロジックを蓄積する判定ロジック蓄積部」と共通する。
また、引用発明の「状態レベル推定部11c」は、判定情報を蓄積する蓄積部に蓄積されている判定情報を用いて操作者の運転状態による判定を行うことから、「前記蓄積部に蓄積されている前記判定情報を用いて、前記操作者の運転状態を判定する判定部」である点で、本件補正発明の「前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックを用いて、前記運転士の運転状態を判定する判定部」と共通する。

キ 引用発明の前記判定情報を蓄積する蓄積部に蓄積されている前記判定情報が、乗車する車両に関係なく利用することができるものが蓄積されることと、本件補正発明の「前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックの情報が、異なる移動体において共有される」ことは、前記判定情報を蓄積する蓄積部に蓄積されている前記判定情報が、異なる移動体において共有されるものである点でも共通する。

ク 前記ア〜キによると、本件補正発明と引用発明とは次の一致点、相違点を有する。

<一致点>
移動体の操作者の状態を示す情報である操作者情報を蓄積する操作者情報蓄積部と、
前記移動体の運転業務状態の情報である移動体情報を取得する移動体情報取得部と、
前記操作者の運転操作を受け付ける運転操作受付部と、
前記操作者情報と、前記移動体情報または前記運転操作受付部で受け付けられた運転操作を示す操作情報の少なくとも1つとを取得して関連付け、運転業務情報として蓄積させる運転業務情報管理部と、
前記運転業務情報を蓄積する運転業務情報蓄積部と、
前記運転業務情報蓄積部に蓄積されている前記運転業務情報に基づいて、前記操作者の運転状態による判定のための判定情報を設定する設定部と、
前記判定情報を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている前記判定情報を用いて、前記操作者の運転状態を判定する判定部と、
を備え、
前記判定情報を蓄積する蓄積部に蓄積されている前記判定情報が、異なる移動体において共有される、
運転操作管理システム。

<相違点>
(相違点1)
「移動体」、「操作者」、「運転業務」が、本件補正発明ではそれぞれ「列車」、「運転士」、「運行」であるのに対し、引用発明では「車両」、「運転者」、「運転」である点。
(相違点2)
操作者の運転状態による判定のために設定され、かつ、蓄積されて、異なる移動体において共有される「判定情報」が、本件補正発明では「ヒューマンエラーが発生する可能性を予測して判定するための判定ロジック」であるのに対し、引用発明では、「車両事故の原因となり得る居眠り運転や脇見運転あるいは漫然運転等の危険運転状態」に係る「眠気レベル」の「推定」のための「基準心拍数データ等」の「運転特性情報12a」である点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用発明は、居眠り運転、脇見運転、漫然運転といったヒューマンエラーによる車両事故を防止する技術への適用が考えられる(引用発明(サ))ものである。そして、引用発明が未然に防ぐ対象である居眠り運転等のヒューマンエラーは、車両(乗用車)だけでなく、当然に列車においても起こり得る危険な状態であるから、引用発明の「車両」事故を防止する技術を、「列車」に適用することは当業者が適宜なし得たものである。
そして、引用発明の「「車両」の「運転手」」を「「列車」の「運転士」」とすること、引用発明の「「車両」の「運転」」を「「列車」の「運行」」とすることは、引用発明を「列車」に適用することに伴う設計変更にすぎない。
よって、引用発明の「車両」事故を防止する技術を「列車」に適用し、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

イ 相違点2について
引用発明の「運転特性情報12a」は、運転者ごとに異なる基準心拍数データを含み、眠気レベルの推定に用いられるものであり、眠気の推定において、推定条件が「ノーマル」の場合、引用発明の状態レベル推定部11cは、現在の心拍数と、基準心拍数よりもβ1だけ少ない心拍数α1、心拍数α1よりもβ1だけ少ない心拍数α2、心拍数α2よりもβ1だけ少ない心拍数α3、心拍数α3よりもβ1だけ少ない心拍数α4とを比較することにより、運転者の眠気レベル1〜4を推定し、例えば推定条件が「シビア」の場合は、基準心拍数よりもβ2だけ少ない心拍数α1’と比較することにより運転者の眠気レベルを推定するものである。
このように、引用発明においては、前日の睡眠時間が6時間以上である場合の「ノーマル」と前日の睡眠時間が6時間未満である場合の「シビア」という2つの推定条件により推定を行っている(引用発明(ケ))が、推定条件としてどのような条件を設定しておくかは、推定の対象となる操作者によって決まる設計的事項であり、操作者が個人の運転手の場合と、旅客を輸送するバスの運転手や列車の運転士の場合とでは、操作者に課される注意義務や責任が異なるから、列車の運転士に対して、車両(乗用車)の運転手よりも厳密な、多種の項目の推定を行うことが想定される。
そうすると、引用発明において、基準心拍数だけでなく、判定ロジックそのものを複数設定し、管理、蓄積できるように構成し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

ウ 以上のとおり、上記相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成は、いずれも、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得た事項であり、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成4年7月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜22に係る発明は、令和4年2月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定(令和4年5月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

請求項1〜7、9〜21に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2:特開2012−118951号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2は、前記第2の[理由]2(2)の引用文献2と同じ文献である。そして、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記判定ロジック蓄積部に蓄積されている前記判定ロジックの情報が、異なる前記列車において共有される」との限定事項を削除したものである。
当該限定事項は、本件補正発明と引用発明との一致点に係る構成であるから、本願発明と引用発明は、前記第2の[理由]2(3)の(相違点1)及び(相違点2)において相違する。
そして、本件補正発明は前記第2の[理由]2(4)に示したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-06-12 
結審通知日 2023-06-13 
審決日 2023-06-27 
出願番号 P2021-534493
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 相崎 裕恒
松尾 俊介
発明の名称 運転操作管理システム、管理サーバ、端末装置および運転操作管理方法  
代理人 高村 順  

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