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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1401637
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-07-25 
確定日 2023-08-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第7007982号発明「コロイダルシリカ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7007982号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第7007982号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜9に係る特許についての出願は、平成30年4月4日に出願され、令和4年1月12日に特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、その全請求項に係る特許に対し、令和4年7月25日に特許異議申立人である田村奈緒美により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件における以降の手続の経緯は、次のとおりである。 令和4年10月11日付け:取消理由通知書
同年12月12日 :意見書(特許権者)の提出
同年12月27日付け:審尋
令和5年 2月 6日 :回答書(特許異議申立人)の提出
同年 3月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 5月31日 :意見書(特許権者)の提出

第2 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
透過型電子顕微鏡写真に基づいて求めた算術平均粒子径が100nm以下であるシリカ粒子と分散媒とアミンを含み、前記シリカ粒子の真密度が1.90g/cm3以上であり、pHが9.0以上であり、Al濃度が500ppm(質量基準)以下であり、前記アミンのH+付加物のpKaが7.5以下であるコロイダルシリカ。
【請求項2】
前記アミンが、水酸基及びエーテル結合を含有しない化合物である請求項1に記載のコロイダルシリカ。
【請求項3】
前記分散媒が、水、又は水とアルコール系溶媒の混合溶媒である請求項1または2に記載のコロイダルシリカ。
【請求項4】
前記シリカ粒子が表面処理されている請求項1〜3のいずれかに記載のコロイダルシリカ。
【請求項5】
透過型電子顕微鏡写真に基づいて求めた前記シリカ粒子の粒子径の変動係数が、20%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のコロイダルシリカ。
【請求項6】
Na濃度が200ppm(質量基準)以下であり、Fe濃度が50ppm(質量基準)以下である請求項1〜5のいずれかに記載のコロイダルシリカ。
【請求項7】
Na濃度が5ppm(質量基準)以下であり、K濃度が5ppm(質量基準)以下である請求項1〜6のいずれかに記載のコロイダルシリカ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のコロイダルシリカを限外濾過膜で濾過し、続いて陽イオン交換樹脂で処理した後、前記コロイダルシリカの溶媒とは異なる有機溶媒に置換することを特徴とするシリカ粒子有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項9】
前記有機溶媒は、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エステル系溶媒から選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の製造方法。」

第3 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が特許権者に通知した、令和5年3月29日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)新規性欠如
本件発明1〜3、5〜7は、本件特許出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1〜3、5〜7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)進歩性欠如
本件発明1〜9は、本件特許出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 証拠一覧
(甲第1号証)特開2009−263484号公報
(甲第2号証)特開平1−234319号公報
(甲第3号証)特開2011−173779号公報
(甲第4号証)特開2007−153732号公報
(甲第5号証)特開2014−9145号公報
(甲第6号証)特開2001−2411号公報
(甲第7号証)特開2005−60217号公報
(甲第8号証)特開2007−277025号公報
(甲第9号証)特開2010−83744号公報
(甲第10号証)特開2016−84243号公報
(甲第11号証)特開2014−208585号公報
「甲第1号証」〜「甲第11号証」は、以下「甲1」〜「甲11」という。
なお、主たる証拠は、甲1であり、甲2〜5はシリカ粒子の真密度、甲6〜10はコロイダルシリカにおける不純物についての技術常識、甲11は、シリカ粒子の表面処理についての周知技術を示すためのものである。

第4 各証拠について
上記第3の取消理由通知書(決定の予告)では甲1〜11を提示したが、特許異議申立書では、さらに甲第12号証から甲第16号証も提示されていることから、ここであわせて記載することとする。
(甲第12号証)特開平2−243508号公報
(甲第13号証)国際公開第2005/010966号
(甲第14号証)特開2009−161371号公報
(甲第15号証)特開2015−193485号公報
(甲第16号証)特開平8−169709号公報
「甲第12号証」〜「甲第16号証」は、以下「甲12」〜「甲16」という。

1 甲1について
(1)記載事項
(甲1ア)「【0009】
特許文献5に記載のコロイダルシリカは、その製造において、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩またはこれらの混合物を添加する工程があり、製品にはそれらが不純物として残存している。特許文献6に記載のコロイダルシリカはその製造において、水溶性のアルミニウム塩を添加する工程があり、製品にはそれらが不純物として残存している。特許文献7に記載のコロイダルシリカはアルコキシシランをシリカ源とするので高純度で好ましいが、反応系にアンモニアと大量のアルコールを必要とし、これらの成分の除去や価格など不利な一面がある。同様に特許文献8はアルコキシシランをシリカ源とするので高純度で好ましく、非球状のシリカ粒子も得られているが、粒子形状の制御などの技術面で深く検討がなされていない。
【0010】
・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、半導体ウエハ表面に生じる過剰エッチングを抑制し、かつ高い研磨速度を維持しつつ、良好な面粗さが得られる半導体ウエハの平面およびエッジ部分の鏡面研磨用コロイダルシリカおよびその製造方法を提供することにある。」

(甲1イ)「【0013】
即ち、本発明の第一の発明は、テトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシランの加水分解により得られた活性珪酸水溶液と、特定の窒素含有塩基性化合物によって製造されるコロイダルシリカであって、非球状のシリカ粒子を含有する半導体ウエハ研磨用コロイダルシリカである。窒素含有塩基性化合物はエチレンジアミン、ジエチレンジアミン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ピペリジン、モルホリン、アルギニンおよびヒドラジンのいずれか1種類以上である。更に水酸化第四アンモニウムを含有することが好ましく、水酸化第四アンモニウムとしては水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムまたは水酸化コリン(別名、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム)であることが好ましい。また、コロイダルシリカの溶液全体に対してアルカリ金属濃度が1ppm以下であることが好ましい。上記の成分を含有し、25℃におけるpHが8.5〜11.0の範囲にあることが好ましい。更にこのpHは、窒素含有塩基性化合物と強酸、または弱酸と水酸化第四アンモニウムの組み合わせによる緩衝溶液を形成し、25℃においてpH8.5〜11.0の間で緩衝作用を有することが好ましい。
この研磨用コロイダルシリカの非球状のシリカ粒子は、透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の長径/短径比が1.2〜20であって、長径/短径比の平均値が3〜15である非球状の異形粒子群シリカ粒子であることが好ましい。透過型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子の平均短径は5〜30nmであることが好ましい。この半導体ウエハ研磨用コロイダルシリカは、コロイド溶液全体に対してシリカ濃度が2〜50重量%の水分散液であることが好ましい。」

(甲1ウ)「【0016】
上述のように、窒素含有塩基性化合物が金属研磨において有用な薬剤であることは、多くの特許文献に記載されている。一方、テトラアルコキシシランの加水分解により得られた活性珪酸水溶液を用いて非球状のコロイダルシリカを得ることは特許文献8に記載されていて公知の技術である。しかしながら、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ピペリジン、モルホリン、アルギニンおよびヒドラジンといった特定の窒素含有塩基性化合物を用いてテトラアルコキシシランの加水分解を行い非球状のシリカ粒子を得るという技術は本発明によって始めて明らかになるものである。
【0017】
エチレンジアミンは酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が9.9程度の強いアルカリであり、1%水溶液のpHは11.8程度である。エチレンジアミンとしては、無水エチレンジアミンとエチレンジアミン一水和物があり、エチレンジアミン一水和物が危険性が少なく好ましい。ジエチレンジアミンは別名ピペラジンであり、ヘキサヒドロピラジンまたはジエチレンイミンとも呼ばれる。無水ジエチレンジアミンとジエチレンジアミン六水和物があり、ジエチレンジアミン六水和物が使用しやすい。ジエチレンジアミンはpKaが9.8程度の強いアルカリであり、1%水溶液のpHは11.5程度である。イミダゾールはpKaが6.9程度の弱アルカリで、1%水溶液のpHは10.2程度である。2−メチルイミダゾールはpKaが7.8程度の弱アルカリで、1%水溶液のpHは10.7程度である。4−メチルイミダゾールも同様に使用できる。ピペリジンは別名ヘキサヒドロピリジンまたはペンタメチレンイミンである。ピペリジンはpKaが11.1程度の強いアルカリであり、1%水溶液のpHは12.3程度である。モルホリンはpKaが8.4程度のやや弱いアルカリで、1%水溶液のpHは10.8程度である。アルギニンはアミノ酸のひとつで別名5−グアニジノ−2−アミノペンタン酸で、pKaが12.5程度のアルカリであるが、カルボキシ基を有するため1%水溶液のpHは10.5程度である。D−、L−、DL−アルギニンのいずれでもよく、L−アルギニンが安価で好ましい。ヒドラジンには無水ヒドラジンとヒドラジン一水和物(水加ヒドラジンまたは抱水ヒドラジンとも呼ばれる)があり、ヒドラジン一水和物がより安全で好ましい。ヒドラジンは強力な還元剤ではあるが、塩基としてはpKaが8.1程度の弱アルカリで、1%水溶液のpHは9.9程度である。
いずれの窒素含有塩基性化合物も、アルカリ金属を含まないことが好ましい。また、アルギニン以外のいずれの窒素含有塩基性化合物も、刺激性、毒性、腐食性が強く、10%程度の濃度の水溶液として使用することが好ましい。」

(甲1エ)「【0047】
(実施例1)
シリカ濃度4.49モル/リットル、酸濃度0.01モル/リットルおよび水濃度18.38モル/リットルの組成で、溶剤を使用しないでテトラメトキシシランの加水分解を行った。加水分解は、具体的には以下に記載した操作を行った。
予め、46gの脱イオン水に35%塩酸0.2gを加えて希塩酸液を作製した。テトラメトキシシラン(試薬特級、換算SiO2濃度39重量%)96gを容器に採取し、攪拌下に前記希塩酸液を加えた。当初二液は分離して混ざらなかったが、数分後に加水分解が始まり急激な発熱とともに透明な均一液となった。そのまま30分攪拌を続け加水分解を完結させて加水分解液を得た後、116gの脱イオン水を加えて希釈して活性珪酸の重合を抑制した。別の容器に742gの脱イオン水を採取し、前記の加水分解液を加えて全量を1000gとし、16時間攪拌して熟成させた。こうしてシリカ濃度3.7重量%(約0.6モル/リットル)でpH2.6の活性珪酸水溶液を得た。
窒素含有塩基性化合物の水溶液を次のようにして作製した。無水エチレンジアミン液を脱イオン水で希釈して10重量%水溶液を作製した。ジエチレンジアミン(ピペラジン)6水和物結晶を脱イオン水に溶解して8重量%水溶液を作製した。イミダゾール結晶を脱イオン水に溶解して10重量%水溶液を作製した。2−メチルイミダゾール結晶を脱イオン水に溶解して10重量%水溶液を作製した。ピペリジン液を脱イオン水で希釈して10重量%水溶液を作製した。モルホリン液を脱イオン水で希釈して10重量%水溶液を作製した。L(+)−アルギニン結晶を脱イオン水に溶解して10重量%水溶液を作製した。ヒドラジン一水和物液を脱イオン水で希釈して5重量%水溶液を作製した。上記の窒素含有塩基性化合物は全て試薬を用いた。
水酸化第四アンモニウムには市販の25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液と35%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を希釈せずにそのまま使用した。
シリカ濃度3.7重量%でpH2.6の活性珪酸水溶液50gに対して、窒素含有塩基性化合物の水溶液をそれぞれ表1に記載した量で加えた後、25℃でpHを測定した。pHの値を表1に記載した。次いで、攪拌下に加熱して100℃に1時間保ってコロイド粒子を形成させた後、放冷して25℃でpHを測定した。pHの値を表1に記載した。得られたコロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では、窒素含有塩基性化合物の種類によらず全て似た形状をしており、短径が約5〜7nmで、長径/短径比が5〜20の不規則に連結した非球状シリカの異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が10〜15であった。代表例としてジエチレンジアミンを用いたコロイダルシリカのTEM写真を図1に示した。
【0048】

【0049】
(実施例2)
実施例1と同様の方法でテトラメトキシシランの加水分解を行い、シリカ濃度3.7重量%でpH2.6の活性珪酸水溶液を得た。攪拌下、活性珪酸水溶液500gに64gの10重量%モルホリン水溶液を加えてpHを9.0とした後、攪拌下に加熱して100℃に1時間保ってコロイド粒子を形成させた。次いで、100℃を維持したまま、活性珪酸水溶液2600gと10重量%モルホリン水溶液40gを4時間かけて同時添加して、シリカ粒子の成長を行った。添加終了後、100℃で1時間加熱を続け熟成を行い、放冷した。
得られたコロイダルシリカは、水分の蒸発によりシリカ濃度が5.6重量%であって、25℃でのpHが9.0であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では短径が約18nmで、長径/短径比が1.2〜7の不規則に連結した非球状シリカの異形粒子群よりなり、長径/短径比の平均値が3であった。TEM写真を図2に示した。また、BET法比表面積による粒子径は16nmであった。
【0050】
(実施例3)
上記実施例2で得られたコロイダルシリカの濃縮を行った。分画分子量6,000の中空糸型限外濾過膜(旭化成(株)製マイクローザUFモジュールSIP−1013)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度22.1重量%まで濃縮し、コロイダルシリカ約520gを回収した。このコロイダルシリカは25℃でのpHが8.6であった。また、コロイダルシリカのアルカリ金属濃度は1ppm以下であった。」

(2)甲1に記載された発明
上記(甲1エ)の「窒素含有塩基性化合物の水溶液をそれぞれ表1に記載した量で加えた後、・・・コロイド粒子を形成させた後、放冷して25℃でpHを測定した。pHの値を表1に記載した。」の記載において、上記表1を参照すると、窒素含有塩基性化合物として「10%イミダゾールと35%水酸化テトラエチルアンモニウム」を用いること、そして、その時のコロイダルシリカのpHが「9.5」であることが記載されている。
そうすると、甲1に記載された発明を、実施例1の記載に基づいて認定すると、以下のとおりである。
「テトラメトキシシランを加水分解して得られる活性珪酸水溶液に対して、10%イミダゾールと35%水酸化テトラエチルアンモニウムの水溶液を加えた後、攪拌下に加熱して形成させた、pHが9.5のコロイダルシリカであって、
コロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察で、短径が約5〜7nmで、長径/短径比が5〜20の不規則に連結した非球状シリカの異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が10〜15である、コロイダルシリカ」(以下「甲1発明」という。)

2 甲2について
(甲2ア)「〔実施例〕
以下、実施例に基づいて、本発明方法を具体的に説明する。
実施例1
アンモニア性アルコール水溶液中でテトラメトキシシランを加水分解して得た平均粒径が0.2μmの単分散球状シリカ粒子を含む固形分1.00wt%以下のゾルを、固形分濃度が28.4wt%になるように加熱濃縮し、これを原料ゾル(粘度5cps:B型粘度計、60r.p.m.)とし、回転ディスク式のスプレードライヤーに10kg/hrの速度で供給してディスク回転数25000r.p.m.および乾燥空気温度150℃の条件で噴霧造粒して平均粒径が10μmの球状粒子を得た。これをアルミナ製の焼成るつぼに入れ、シリコニット型電気炉内で空気中1100℃の条件で、4時間加熱焼成して球状シリカを得た。得られた球状シリカは欠けやクランクが全くない球状であり、その比表面積および真比重を測定したところ、比表面積は1.50m2/g、真比重は通常の溶融シリカの真比重と同じ2.21であり、この球状シリカが内部欠陥のない、完全球状体であると認められる。
実施例2
原料ゾルの固形分濃度を44.2wt%(粘度は275cps:B型粘度計、60r.p.m.)としたことおよびディスク回転数を18000r.p.m.として得られる球状粒子の平均粒径を26μmとしたこと以外は実施例1と同様にした。得られた球状シリカは欠けやクランクが全くない球状であり、その比表面積は1.12m2/g、真比重は2.21であり、内部欠陥のない、完全球状体であった。」(3ページ左下欄10行〜4ページ左上欄2行)

3 甲3について
(甲3ア)「【実施例】
・・・
【0043】
以下において、得られたシリカ粒子の粒度分布は、レーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)で測定した。粒子の観察は走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−7000f)を用いた。平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)によって測定された値である。また、真比重は、ベックマン空気比較式比重計930型で測定した。
【0044】
(実施例1)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール205g、水246g、及び25wt%アンモニア水232gを入れ、攪拌機で混合しながら50℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン267gを200分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.05μmであった。D90/D10の値は1.7であった。
【0045】
(実施例2)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール102g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら33℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.1μmであった。D90/D10の値は1.9であった。
【0046】
(実施例3)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール85.5g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら25℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.4μmであった。D90/D10の値は1.8であった。
【0047】
(実施例4)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール171g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら25℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.7μmであった。D90/D10の値は1.7であった。
【0048】
(実施例5)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール342g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら25℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は1.5μmであった。D90/D10の値は1.7であった。
【0049】
(実施例6〜10)
焼成温度を900℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0050】
(実施例11〜15)
焼成温度を950℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0051】
(実施例16〜20)
焼成温度を1050℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
・・・
【0059】


4 甲4について
(甲4ア)「【0039】
[実施例3]
実施例1で用いたと同じ反応容器に、実施例1で得られたシリカ濃度13.2重量%のコロイダルシリカ293.2gと金属不純物含有量0.1ppb以下の純水2981gとを仕込み、マントルヒーターを用いて反応容器内液温を80℃に保ちながら、金属不純物含有量10ppb以下のテトラメチルシリケート(多摩化学工業株式会社製)1694gと金属不純物含有量10ppb以下の25wt%-TMAH水溶液14.7gとを攪拌下に4時間かけて連続的に供給した。反応終了時において、反応容器内(反応系内)の反応混合物中におけるシリカ(B)に対するTMAH(A)の割合{触媒残存モル比(A/B)}は0.0036であった。」

(甲4イ)「【0053】
[実施例7]
実施例6で用いたと同じ反応容器に、実施例6で得られたシリカ濃度12.2重量%のコロイダルシリカ1410gと、金属不純物含有量0.1ppb以下の純水14598gと、金属不純物含有量10ppb以下のトリエタノールアミン15.49gとを仕込み、マントルヒーターを用いて反応容器内の液温を80℃に保ちながら、金属不純物含有量10ppb以下のテトラメチルシリケート(多摩化学工業株式会社製)6370gを攪拌下に3時間かけて連続的に供給した。反応終了時において、反応容器内(反応系内)の反応混合物中におけるシリカ(B)に対するエタノールアミン(A)の割合{触媒残存モル比(A/B)}は0.00250であった。」

(甲4ウ)「【0056】
[比較例3]
攪拌機、温度計、コンデンサー付き留出管及びオルガノシリケート導入管を備えた5L容量のガラス製反応容器に、539.4gの純水、2,922gのメタノール、及び122.6gの28wt%−アンモニア水溶液を仕込み、次いでこの反応容器内の溶液を23℃に維持しながらこの溶液中に686gのテトラメチルシリケート(多摩化学工業社製)を攪拌下に2時間かけて連続的に供給し、テトラメチルシリケートの加水分解・縮合反応を行った。」

(甲4エ)「【0059】
[SEM平均粒子径、BET比表面積、及び真比重の測定]
上記比較例3、実施例3及び実施例7で得られたコロイダルシリカについて、その粒子像を20万倍の透過型電子顕微鏡及び20万倍の走査型電子顕微鏡で観察すると共に、以下のようにしてそのSEM平均粒子径、BET比表面積、及び真比重を測定し、また、得られたBET比表面積と真比重とから比表面積換算粒子径を求めた。
・・・・
【0064】
【表1】



5 甲5について
(甲5ア)「【0035】
空隙率とは、中空粒子の体積に占める中空部の体積の割合を表すものである。空隙率が高いほど、粒子中の中空部分が大きい、即ち、外殻が薄いことを意味する。空隙率は、空隙率(vol%)=[1−{(見掛け密度)/(真密度)}]×100で表される。「真密度」は、物質の質量を、空隙等を含まない物質本来の体積で除することにより求められる値であり、「比重」と同義である。通常、シリカ(沈降シリカ)の真密度(比重)は2.2である。」

6 甲6〜10について
甲6〜10には、コロイダルシリカにおける不純物についての周知技術が記載されている。

7 甲11〜13について
甲11〜13には、シリカ粒子の表面処理についての周知技術が記載されている。

8 甲14について
甲14には、球状シリカ微粒子の粒子径の変動係数について記載されている。

9 甲15、16について
甲15、16には、シリカゾルに対して限外濾過膜及びイオン交換樹脂を用いた処理を行い、有機溶媒置換処理を行うことについて記載されている。

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「短径が約5〜7nmで」「長径/短径比の平均値が10〜15である」ことは、長径が最大でも7×15=105nmであることから、短径と長径の長さを踏まえると、算術平均粒子径が100nm以下であるといえる。
そうすると、甲1発明の「透過型電子顕微鏡(TEM)観察で、短径が約5〜7nmで」「長径/短径比の平均値が10〜15である」ことは、本件発明1の「透過型電子顕微鏡写真に基づいて求めた算術平均粒子径が100nm以下」を満たすものである。

イ 甲1発明の「10%イミダゾールと35%水酸化テトラエチルアンモニウム」において、「イミダゾール」はアミンであり、さらに摘記(甲1ウ)にはそのpKaが6.9程度であることが記載されており、これは本件発明1の「H+付加物のpKaが7.5以下」を満たすものである。
また、甲1発明の「水溶液」は「水」が分散媒であり、甲1発明の「コロイド粒子」はシリカ粒子である。
そうすると、甲1発明の「活性珪酸水溶液に対して、10%イミダゾールと35%水酸化テトラエチルアンモニウムの水溶液を加えた後、攪拌下に加熱して形成させた、pHが9.5のコロイダルシリカ」は、本件発明1の「シリカ粒子と分散媒とアミンを含み、pHが9.0以上であり、前記アミンのH+付加物のpKaが7.5以下であるコロイダルシリカ」に相当する。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、
(一致点)「透過型電子顕微鏡写真に基づいて求めた算術平均粒子径が100nm以下であるシリカ粒子と分散媒とアミンを含み、pHが9.0以上であり、前記アミンのH+付加物のpKaが7.5以下であるコロイダルシリカ」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)本件発明1は、「シリカ粒子の真密度が1.90g/cm3以上」であるのに対し、甲1発明におけるシリカ粒子の真密度は明らかでない点。
(相違点2)本件発明1は、「Al濃度が500ppm(質量基準)以下」であるのに対し、甲1発明におけるAl濃度は明らかでない点。

(2)相違点1についての判断
ア 相違点1について検討するに、令和5年5月31日に特許権者から提出された意見書には、下記のとおり、参考資料1として甲1の実施例1の製造方法によって製造されたコロイダルシリカ(甲1発明のコロイダルシリカ)の追試を目的とした実験成績証明書(以下に摘記)が添付されており、該資料によれば、実施例1の追試で得られたシリカ粒子の真密度は、本件発明の範囲外である1.67g/cm3であったとされている。そうすると、甲1発明のシリカ粒子の真密度は1.90g/cm3以上であるとはいえない。





イ また、上記第4の2〜5によれば、甲2〜甲5には、一応、真比重(真密度)が1.90g/cm3以上であるシリカが記載されている。しかし、甲2〜甲5に記載されているのは、いずれも、「テトラメトキシシランを加水分解して得られる活性珪酸水溶液に対して、10%イミダゾールと35%水酸化テトラエチルアンモニウムの水溶液を加えた後、攪拌下に加熱して形成させ」るという甲1発明の方法でシリカ粒子を製造したものではないため、甲2〜甲5に1.90g/cm3以上のシリカが記載されているからといって、甲2〜甲5とは異なる方法によって製造された甲1発明におけるシリカ粒子の真密度を1.90g/cm3以上と判断することはできない。実際、上記アで摘記した実験成績証明書を参照しても、甲1発明におけるシリカ粒子の真密度は1.67g/cm3となっており、1.90g/cm3以上ではない。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点である。

ウ さらに、甲1は、上記第4の1(甲1ア)で摘記したとおり、「粒子形状の制御などの技術面で深く検討がなされていない。」との課題を考慮したものであり、上記第4の1(甲1エ)の実施例1の記載においても「得られたコロイダルシリカは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では、窒素含有塩基性化合物の種類によらず全て似た形状をしており、短径が約5〜7nmで、長径/短径比が5〜20の不規則に連結した非球状のシリカの異形粒子群となっており、長径/短径比の平均値が10〜15であった」と記載され、形状に着目しているものの、シリカ粒子の真密度については着目されていない。
そうすると、甲1発明において、真密度について1.90g/cm3以上とする動機があるとはいえず、上記のとおり、甲2〜甲5において、1.90g/cm3以上のシリカが記載されているからといって、甲1発明のシリカ粒子の真密度を、甲2〜甲5の記載を参照して1.90g/cm3以上とすることにはならない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

エ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人(以下、「申立人」という。)は令和5年2月6日に提出の回答書で、証拠として、国際公開第2018/012175号、国際公開第2018/012176号、国際公開第2011/162265号、「ゲル法シリカの特徴と応用」(TOSOH Research & Technology Review Vol.45 (2001)、「カープレックス 湿式シリカ 製品案内」(EVONIC 社)、「多分散シリカ粒子」(COREFRONT 社)を挙げ(なお、同回答書で記載している「カープレックス 湿式シリカ 製品案内」及び「多分散シリカ粒子」については、公知日が不明である)、ゾルゲル法によって製造されたシリカ粒子の真密度は1.90g/cm3以上であるから、同じくゾルゲル法によって製造された甲1発明のコロイダルシリカにおけるシリカ粒子の真密度も1.90g/cm3以上であることを主張している。

(イ)しかしながら、上記国際公開第2018/012175号、国際公開第2018/012176号、国際公開第2011/162265号、、「ゲル法シリカの特徴と応用」(TOSOH Research & Technology Review Vol.45 (2001)、「カープレックス 湿式シリカ 製品案内」(EVONIC 社)、「多分散シリカ粒子」(COREFRONT 社)に記載された製造方法は、甲1発明の「テトラメトキシシランを加水分解して得られる活性珪酸水溶液に対して、10%イミダゾールと35%水酸化テトラエチルアンモニウムの水溶液を加えた後、攪拌下に加熱して形成させ」る方法とは異なるものであるから、これらの追加された証拠をもってしても、甲1発明のコロイダルシリカにおけるシリカ粒子の真密度も1.90g/cm3以上であるとはいえない。

(3)小括
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2〜甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、甲6〜16は、上記第4の6〜9で述べたとおり、シリカ粒子の真密度に関するものではないことから、甲6〜16を参照しても、上記判断は変わらない。

2 本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2〜甲5に記載の事項に基づいて、さらには甲6〜甲16の記載を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 まとめ
よって、取消理由によって、本件発明1〜9に係る特許を取り消すことはできない。

なお、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明の請求項1〜9に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由を含む取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に当該請求項1〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2023-08-03 
出願番号 P2018-072553
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C01B)
P 1 651・ 113- Y (C01B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 増山 淳子
後藤 政博
登録日 2022-01-12 
登録番号 7007982
権利者 株式会社日本触媒
発明の名称 コロイダルシリカ  
代理人 弁理士法人アスフィ国際特許事務所  

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