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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1401695
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-04-24 
確定日 2023-09-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第7169551号発明「離型用二軸配向ポリエステルフィルムロール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7169551号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7169551号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、
2019年(平成31年) 3月 6日(優先権主張 平成30年 3月12日)を国際出願日とする特許出願であって、
令和 4年11月 2日にその特許権の設定登録(請求項の数 3)がされ、
令和 4年11月11日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 5年 4月24日に 笠原 佳代子 (以下、「特許異議申立人」という。)が全請求項に係る特許に対して特許異議申立てを行ったものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
フィルム幅が400mm以上であり、フィルム長手方向10,000mを連続測定した厚みの平均値に対するばらつきσ値(σMD)が0.15μm以下であり、
一方のフィルム表面の中心線粗さSRa(A)が1nm以上15nm未満であり、他方のフィルム表面の中心線粗さSRa(B)が20nm以上40nm以下であり、
前記SRa(A)が1nm以上15nm未満であるフィルム表面を構成する層(A層)が、溶融比抵抗が1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下のポリエステル樹脂を含有しており、
離型用二軸配向ポリエステルフィルムが積層セラミックコンデンサの成型用部材として用いられることを特徴とする離型用二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項2】
離型用二軸配向ポリエステルフィルムが3層以上の層構成を有する、請求項1に記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項3】
離型用二軸配向ポリエステルフィルムが自動車用積層セラミックコンデンサの成型用部材として用いられる、請求項1または2に記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルムロール。

第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
令和 5年 4月24日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。

申立理由(甲第1号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 証拠方法
甲第1号証:特開2014−133373号公報
甲第2号証:特開2006−181994号公報
甲第3号証:特開2002−40249号公報

証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」等という。

第4 当審の判断
当審は以下に述べるように、申立理由によって本件特許を取り消すことはできないと判断する。

1 証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には「離型用二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法」」に関し、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
3層からなるポリエステルフィルムであって表層(A層)、中間層(B層)、表層(C層)を有し、
A層は、体積平均粒子径(dA)が0.1μm以上1.0μm以下であるモース硬度が7以下の無機粒子及び/又は有機粒子をA層の重量に対し0.05重量%以上1.0重量%以下含有し、厚みが3.0μm以上8.0μm以下の層であって、
B層は、ケイ素元素を含有し、
C層は、体積平均粒子径(dC)0.2μm以上1.0μm以下の無機粒子及び/又は有機粒子をC層の重量に対し0.03重量%以上1.0重量%未満含有する、厚み0.5μm以上2.0μm以下の層であり、かつ、層全体の厚みが20μm以上40μm以下であることを特徴とする離型用二軸配向ポリエステルフィルム。」

「【請求項6】
AおよびC層表面の中心線粗さSRa(A)が3nm以上50nm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
積層セラミックスコンデンサーを製造する工程においてグリーンシート成形の支持に用いられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。」

「【0038】
さらに、フィルムの長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから求めた、最大厚みと最小厚みの差である厚み斑は2μm以下が好ましく、さらに、好ましくは1.4μm以下である。従来から、フィルムの厚み斑を少なくすることはフィルムを製造する上での課題であったが、本発明の離型用フィルム、特に薄膜セラミックスコンデンサー製造に適用される離型フィルムへ適用するには長手方向の厚み斑を前記範囲とすることが、グリーンシートの厚さを薄くする際にコンデンサーの静電容量にばらつきを生じさせないため、好ましい。」

「【0091】
(12)長手方向の厚み斑
安立電気製フィルム厚み連続測定器を用いて、長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから、最大厚みと最小厚みの差を厚み斑(μm)として測定する。測定条件は下記のとおり。なお、本装置に制限されるものでなく、他のフィルム厚み測定装置でも可能であり、少なくとも長手方向15mのフィルム厚みの最大値と最小値の差を厚み斑とすることによって得られる。
構成: K−306C 広範囲電子マイクロメータ、K−310Cレコーダー、フィルム送り装置。
フィルム幅: 45mm、測定長: 15m、フィルム送り速度: 3m/分
検出器: 3R ルビー端子、測定力: 15 ± 5g。」

「【0095】
(15)グリーンシートの塗布状態評価
巻き取られたグリーンシートを、繰り出し、離型フィルムから剥がさない状態にて目視で観察し、ピンホールの有無や、シート表面および端部の塗布状態を確認する。なお観察する面積は幅300mm、長さ500mmである。」

「【0104】
[実施例1]
(1)ポリエステルペレットの作成
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸86.5重量部とエチレングリコール37.1重量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02重量部、酢酸マグネシウム0.06重量部、酢酸リチウム0.01重量部、三酸化アンチモン0.0085重量部を添加し、引き続いて、真空下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63のポリエステルペレットを得た。
(ポリエステルBおよびポリエステルCの作成)
上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、体積平均粒径0.2μm、体積形状係数f=0.51、体積平均粒径0.06μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカをそれぞれ添加し、重縮合反応を行い、粒子をポリエステルに対し1重量%含有するシリカ含有マスターペレットを得た(ポリエステルB)、(ポリエステルC)。
なお、ポリエステルBおよびポリエステルCで用いる球状シリカは、エタノールとエチルシリケートとの混合溶液を攪拌しながら、この混合溶液に、エタノール、純水、および塩基性触媒としてアンモニア水からなる混合溶液を添加し、得られた反応液を攪拌して、エチルシリケートの加水分解反応およびこの加水分解生成物の重縮合反応を行なった後に、反応後の攪拌を行い、単分散シリカ粒子を得た。
(ポリエステルD、EおよびポリエステルFの作成)
さらに別に、モノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.51のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1 重量% 含有するマスターペレットを得る(ポリエステルD)。
体積平均粒径0.8μm、0.1μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子含有マスターペレットは、ポリエステルに対しそれぞれ1重量%含有するマスターペレットを同様にして得た(それぞれポリエステルE、ポリエステルF)。
(ポリエステルGの作成)
また、ポリエステルAを製造するにあたりエステル交換後、炭酸ガス法にて作成した体積平均粒径1.1μm、モース硬度3の炭酸カルシウムをポリエステルに対し1重量%添加し炭酸カルシウム含有マスターペレットを得た。:
一方で、下記処方のフィルムを製造した後のフィルムを回収し、ペレット化したものをリサイクル原料Aとした。なお以下に記載する比率は、フィルム全体の重量に対する重量比(重量%)で表す。
ポリエステルA 93.4
ポリエステルD: 0.6
ポリエステルG: 6.0。
(リサイクル原料Bの作成)
上記リサイクル原料Aの処方にて、後述する実施例1の製法にて製膜したポリエステルフィルムを用い、後述する実施例1の工程にて離型層を付与し、グリーンシートを作成、使用後に巻き取ったフィルムを用い、リサイクル原料Bを作成する。
【0105】
まず上記の巻き取ったフィルムを繰り出し、Roll to Rollの装置にて水洗を行う。水洗層中で、回転式の金属製のブラシを用いて、グリーンシートの残渣を掻き落とす。掻き落とし後のフィルムは、吸引器にて水を除去した後、120℃に加熱したオーブンを通過させ水を蒸発させた後に巻き取り、洗浄後のロールを得る。
【0106】
洗浄後のロールを繰り出し、回転刃を有するクラッシャーにて断裁後、スクリーンを通した後に、フレーク貯蔵サイロに貯蔵する。
【0107】
貯蔵サイロ内のフレークを、回収装置上に設置した貯蔵ホッパーに風送する。フレークは、ドラム内に、攪拌翼を有する回転式の円盤上に定量投入し、水平方向に回転させる。円盤はドラム下部に設置した温度計により、フレークの温度が200℃になった時点で押出機のスクリューを起動させる。押出機は単軸であり、スクリューL/Dは35である。シリンダー温度は260℃である。シリンダーに付したベントラインにて真空引きを行い、真空度は1kPa以下とする。溶融したポリマーはスクリーンメッシュからなる目開き300μm、20μm、150μmのフィルターを3枚重ねしたものを使用して、連続的に異物を取り除く。該フィルターは2対有し、異物が詰まった際に切替可能とする。フィルターで濾過したポリマーを口金から吐出し、冷却水をスプレーさせながら、120℃/secの冷却速度にてポリマーを冷却させ、ガットを成形する。ガットを、回転刃を有する切断装置にて切断し、チップ化した後に、脱水後、貯蔵サイロに風送する。ここで得たチップを、リサイクル原料Bとする。
【0108】
(2)リサイクル原料の調合
A層、B層、C層それぞれの層の押出機に供給するポリエステルペレットは、以下の比率にて調合する。なお以下に記載する比率は、おのおのの層を構成するポリエステルペレットに対する重量比(単位:重量%)である。
【0109】
A層
ポリエステルA:87.5
ポリエステルB:12.5
B層
ポリエステルA :40.0
リサイクル原料A :10.0
リサイクル原料B:50.0
C層
ポリエステルA:65.0
ポリエステルC:30.0
ポリエステルD: 5.0。
【0110】
(3)二軸配向ポリエステルフィルムの製造
先述の、各層について調合した原料を、ブレンダー内で攪拌した後、A層およびC層の原料は、攪拌後の原料を、A層およびC層用のベント付き二軸押出機に供給し、B層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、B層用の一軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、3μm以上の異物を95% 以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の異種3層用合流ブロックで合流積層し、層A、層B、層Cからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
【0111】
この未延伸積層フィルムに逐次延伸(長手方向、幅方向)を実施した。まず長手方向の延伸を実施し、105℃でテフロン(登録商標)ロールにて搬送した後に、長手方向に120℃で4.0倍延伸して一軸延伸フィルムとした。
【0112】
この一軸延伸フィルムをステンター内で横方向に115℃で4倍延伸し、続いて230℃で熱固定し、その際幅方向に5%弛緩し搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後に巻き取り、厚さ38μmの二軸延伸フィルムの中間製品を得た。なお3日間の24時間連続操業において、破れは発生していない。評価を○とした。この中間製品をスリッターにてスリットし、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。ロールの端部を端部を観察し、耳のずれ方をJIS1級金尺を用いて測定した結果、1mmであり、評価結果◎とした。この二軸延伸フィルムの積層厚みを測定した結果、A層:6.5μm、B層:30.5μm、C層:1.0μmであった。
【0113】
(4)離型層の塗布
次にこの二軸延伸フィルムのロールに、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24−846)を固形分1%に調整した塗布液を塗布/乾燥し、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化した。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)100重量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2重量部を固形分5%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻き取り、離型フィルムを得た。
【0114】
(5)グリーンシートの成型(セラミックススラリーの塗布)
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT−1)100重量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL−1)10重量部、フタル酸ジブチル5重量部とトルエン−エタノール(重量比30:30)60重量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型フィルムの上に乾燥後の厚みが2μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、グリーンシートを得た。
(8)内部電極のパターンの形成
Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール52重量部と、エチルセルロース3重量部と、ベンゾトリアゾール0.4重量部とを、混練し、スラリー化して内部電極層用塗料を得る。内部電極層用塗料を、グリーンシートの上に、スクリーン印刷法によって所定パターンで塗布し、内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを得た。乾燥温度は90℃、乾燥時間は5分である。
(9)グリーンシート積層・剥離
上記の方法により積層したグリーンシートを、積層、剥離し巻き取る。
【0115】
[実施例2〜4]
A層、C層に入れる粒子種を変更した以外は実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。フィルムの巻き取り、離型層の塗布、グリーンシートの成型(セラミックススラリーの塗布)、グリーンシートの巻き取り性についても、実施例1と同様の方法で実施・評価した(以降、実施例、比較例とも同様な加工工程にて実施・評価する)。
【0116】
製膜は破れ無く○、巻き取りもずれ無く◎、スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性ともに○、グリーンシート巻き取り性◎で、良好であった。
【0117】
[実施例5〜8]
実施例1の実施形態にて、A層およびC層各層の厚みを各々変更し、これに合わせ粒子の種類及び添加量を調整して、実施例1と同じ製法にて厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。製膜は破れ無く○、巻き取りも、ずれ無く◎。スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性ともに○、グリーンシート巻き取り性は◎で、良好であった。
【0118】
[実施例9]
実施例4の実施形態にて、全厚みを25μmに調整し二軸延伸フィルムのロールを得た。製膜は破れ無く○、巻き取りも、ずれ無く◎。スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性ともに○、グリーンシート巻き取り性は◎で、良好であった。
[実施例10]
実施例1の実施形態にて、C層に、無機粒子を有するポリエステルBを用い、全厚み38μmの。二軸延伸フィルムのロールを得た。製膜は破れ無く○、巻き取りも、ずれ無く◎。スラリー塗布特性、グリーンシート打ち抜き性ともに○、グリーンシート巻き取り性は◎で、良好であった。」

「【0134】
【表1】



イ 甲1に記載された発明
上記アの請求項1、請求項6、請求項7、【0038】及び実施例1を中心にまとめると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「3層からなるポリエステルフィルムであって表層(A層)、中間層(B層)、表層(C層)を有し、各層について調合した原料を、ブレンダー内で撹拌した後、A層およびC層の原料は、撹拌後の原料を、A層およびC層用のベント付き二軸押出機に供給し、B層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、B層用の一軸押出機に供給し、275℃で溶融押出し、3μm以上の異物を95%以上補集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の異種3層用合流ブロックで合流積層し、層A、層B、層Cからなる3層積層とし、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロールに静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得、この未延伸積層フィルムに逐次延伸(長手方向、幅方向)を実施し、厚さ38μmの二軸延伸フィルムの中間製品を得て、この中間製品をスリッターにてスリットし、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得、この二軸延伸フィルムのロールに架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24−846)及び付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)で離型層を形成したものであって、A層の中心線粗さSRaが9nm、C層の中心線粗さSRaが28nmであり、フィルムの長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから求めた、最大厚みと最小厚みの差である厚み斑が1.4μm以下であり、積層セラミックスコンデンサーを製造する工程においてグリーンシート成形の支持に用いられる離型用二軸延伸ポリエステルフィルムのロール。」

(2)甲2に記載された事項
甲2には「積層セラミックシート製造用離型フィルムロールの製造方法」について、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
ポリエステルフィルムの一方の面に、主として硬化型シリコーン樹脂からなる離型層を設けてなる薄層セラミックシート製造用離型フィルムロールの製造方法であって、離型層側の平均表面粗さRa1が0.02μm以下、反離型層側の平均表面粗さRa2が0.005μmを超え0.04μm未満、一方の面と他方の面との高荷重静摩擦係数μSが0.6未満、かつ、下記式(1)で定義する厚みの標準偏差Sが0.16μm未満であるポリエステルフィルムの一方の面に、主として硬化型シリコーン樹脂から構成される塗布液を塗布して離型層を形成し、該離型層を形成した離型フィルムを巻き取る際、張力Tが下記式(2)、巻き始め時の面圧MSが下記式(3)、巻き終わり時の面圧MEが下記式(4)をそれぞれ満足する範囲で巻き取ることを特徴とする薄層セラミックシート製造用離型フィルムロールの製造方法。
厚みの標準偏差S=Σ((流れ方向の厚みの平均値)2/幅方向の厚み測定数)
−(幅方向の厚みの平均値)2 (1)
40N/m<T<150N/m (2)
20N/m<MS<350N/m (3)
20N/m<ME<450N/m (4)」

「【0053】
(3)厚みの標準偏差Sの測定
離型コートする前のフィルムを製膜する際、逐次2軸延伸し熱固定後のフィルムの厚みをβ線厚み計で幅方向10ヵ所と、それぞれの幅方向10ヵ所の流れ方向1ヵ所/1000mごとにフィルムの厚みを流れ方向に6000m測定し、以下のように計算した。
S=Σ((流れ方向の厚みの平均値)2/10)−(幅方向の厚みの平均値)2」

「【0064】
<ポリエステルフィルムの製造>
(製造例6−ポリエステルフィルムA)
PET(4)、(5)を真空乾燥し、別個の溶融押出し機により290℃で溶融し、4μmの粒子が95%除去できるフィルターを用いて溶融PETをろ過し、フィードブロック内で合流して積層し、Tダイから押し出し、静電荷により表面温度が30℃のキャスティングドラムに密着させ、未延伸フィルムを得た。層比率は各押出し機の吐出量計算でPET(4):(5)=50%:50%となるように、また、PET(5)が離型層側になるように調整した。
【0065】
この未延伸PETシートを、加熱されたロール群とIRヒーターで100℃に加熱し長手方向に3.5倍に延伸し、ついで、この一軸延伸フィルムの端部をクリップで把持して130℃で加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍延伸した。さらに、210℃にて5秒間熱処理して、厚み31μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、前記製膜工程において、キャスティング工程はクラス1000以下、延伸工程はクラス5000以下のクリーンな環境下で行った。」

「【0076】
実施例1
厚みの標準偏差S=0.12μmのポリエステルフィルムAを使用し、離型フィルムロールを作成し、巻き張力=70N/m、巻きはじめ面圧力300N/m、巻き終わり面圧力320N/mでスリットした。
【0077】
実施例2
厚みの標準偏差S=0.12μmのポリエステルフィルムBを使用し、離型フィルムロールを作成し、巻きはじめ張力=70N/m、巻きはじめ面圧力300N/m、巻き終わり面圧力350N/mでスリットした。
【0078】
実施例3
厚みの標準偏差S=0.11μmのポリエステルフィルムCを使用し、離型フィルムロールを作成し、巻き張力=70N/m、巻きはじめ面圧力300N/m、巻き終わり面圧力350N/mでスリットした。
【0079】
実施例4
厚みの標準偏差S=0.06μmのポリエステルフィルムDを使用し、離型フィルムロールを作成し、巻き張力=100N/m、巻きはじめ面圧力300N/m、巻き終わり面圧力350N/mでスリットした。」

「【0090】
【表1】




(3)甲3に記載された事項
甲3には、「偏光フィルム貼り合わせ用ポリエステルフィルムについて、次の事項が記載されている。

「【0037】(1)厚みむら
フィルムシックネステスタKG601Aおよび電子マイクロメータK306(アイリツ株式会社製)を用い、フィルムの幅方向の中央部からフィルムの幅、長手方向に50mm幅、25cm長にサンプリングしたフィルムを連続的に厚みを測定した。フィルムの搬送速度は、50mm/minとした。厚みむらは、通常の偏光板の最大寸法が50×130cmの観点から測定長17cmでの厚みの最大値T(max)と最小値T(min)の差を平均値T(ave)で除して、100を乗じることにより求めた。
【0038】(2)厚み変動の標準偏差
厚み測定点を標本点として統計処理計算して求めた。」

「【0057】



(4)検討
ア 本件特許発明1についての対比・検討
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「積層セラミックスコンデンサーを製造する工程においてグリーンシート成形の支持に用いられる離型用二軸延伸ポリエステルフィルムのロール」は、本件特許発明1における「積層セラミックコンデンサの成形用部品として用いられる」「離型用二軸配向ポリエステルフィルム」に相当する。
甲1発明における「3層からなるポリエステルフィルムであって表層(A層)、中間層(B層)、表層(C層)」の「A層の中心線粗さSRaが9nm、C層の中心線粗さSRaが28nm」である構成は、本件特許発明1における「一方のフィルム表面の中心線粗さSRa(A)が1nm以上15nm未満であり、他方のフィルム表面の中心線粗さSRa(B)が20nm以上40nm以下であり」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

<一致点>
「一方のフィルム表面の中心線粗さSRa(A)が1nm以上15nm未満であり、他方のフィルム表面の中心線粗さSRa(B)が20nm以上40nm以下であり、離型用二軸配向ポリエステルフィルムが積層セラミックコンデンサの成形用部品として用いられる離型用二軸配向ポリエステルフィルムロール」
<相違点1>
本件特許発明1は、フィルム幅が400mm以上であるとの特定を有するのに対して、甲1発明は、そのような特定を有さない点。
<相違点2>
本件特許発明1は、フィルム長手方向10,000mを連続測定した厚みの平均値に対するばらつきσ値(σMD)が0.15μm以下との特定を有するのに対して、甲1発明は、そのような特定を有さない点。
<相違点3>
本件特許発明1は、SRa(A)が1nm以上15nm未満であるフィルム表面を構成する層(A層)が、溶融比抵抗が1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下のポリエステル樹脂を含有しているとの特定を有するのに対して、甲1発明は、そのような特定を有さない点。

事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明においては、フィルムの長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから求めた、最大厚みと最小厚みの差である厚み斑が1.4μm以下であるが、甲1発明における厚み斑は、測定長がフィルムの長手方向15mであるため、これを「フィルム長手方向10,000mを連続測定した厚みの平均値に対するばらつきσ値(σMD)」の値に換算することはできないし、甲1において、「フィルム長手方向10,000mを連続測定した厚みの平均値に対するばらつきσ値(σMD)」を0.15μm以下とする動機となる記載はない。

この点につき、特許異議申立人は、特許異議申立書(第13頁第18行〜第14頁第20行)において、甲3を提示しつつ、甲1発明のフィルムにおいても相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものであって実質的な相違点ではないとし、仮に実質的な相違点であったとしても、甲2を参酌し、甲1発明において相違点2に係る特定事項とすることは当業者が容易に想到できる旨主張している。
そこで甲2、甲3について順に検討する。

甲2には、ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を設けてなる薄層セラミックシート製造用離型フィルムにおいて、式(1)で定義する厚みの標準偏差Sが0.06μm〜0.12μmのポリエステルフィルムが記載されている。
ここで、甲2の厚みの標準偏差Sは、甲2【0053】から、幅方向の10カ所と、それぞれの幅方向の10カ所の流れ方向/1000mごとにフィルムの厚みを流れ方向に6000m測定し、以下のように計算したものである。
S=Σ((流れ方向の厚みの平均値)2/10)―(幅方向の厚みの平均値)2
これに対し、本件特許発明1の長手方向の厚みむら(σMD)は、本件特許明細書【0050】に記載されているように、製品ロール幅方向中央部について、長手方向10,000mを測定し、巻き返し速度は50m/min、サンプリング周期20msec、すなわち、長手方向に約16mm周期で厚みをサンプリングして、厚み平均値に対する偏差σを求めたものである。
本件特許発明1の厚みむら(σMD)と、甲2に記載の厚みの標準偏差とは、計測評価の対象とするフィルムの長さの点で異なっており、甲2に記載の厚みの標準偏差は、長さ方向において6000m分の厚み情報しか反映されていないものであるから、本件特許発明1の厚みむら(σMD)へ換算することはできない。
また、相違点2に係る厚みむら(σMD)は、サンプリング数に関する特定はないものの、本件明細書の実施例で計測されている厚みむら(σMD)は16mm周期で長手方向10,000mであるからサンプリング数が約6.25×105、これに対し、甲2に記載の厚みの標準偏差は、流れ方向では1000mごとで全長6000mを計測するから流れ方向のサンプリング数は6であって、サンプリング数についても、両者は大きく異なる値である。
さらに、甲2記載の厚みの標準偏差Sは、S=Σ((流れ方向の厚みの平均値)2/10)―(幅方向の厚みの平均値)2で定義される測定値であって、幅方向・流れ方向に対する標準偏差であることから、この点においても、甲2記載の厚みの標準偏差Sは、本件特許発明1の長手方向の厚みムラ(σMD)に換算することはできない。
したがって、甲2の記載事項から、相違点2に係る特定事項を導き出すことはできない。

甲3(【0057】【表1】実施例1、2、4、6)には、偏光フィルム貼り合わせ用ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの幅方向の中央部からフィルムの幅、長手方向に、それぞれ、50mm幅、25cmにサンプリングしたフィルムに対し連続的に厚みを測定し、測定長17cmでの厚みの最大値T(max)と最小値T(min)との差を平均値T(ave)で除して100を乗じることにより厚みむらを求めた結果、厚みむらが0.5〜6.4%(0.00296〜2.496μm)、厚みが14.8〜58.9%、標準偏差が0.033〜0.057である二軸延伸ポリエステルフィルムが記載されている。

この点につき、特許異議申立人は特許異議申立書(第12頁下から第9〜11行、第13頁第18〜24行)において、
・甲3から、二軸配向ポリエステルフィルムロールについて、測定長17cmで長手方向の厚みむらが2.496μm以下の場合に、標準偏差は全て0.057μm以下となることが分かる。
・甲1発明は、フィルムの長手方向に15m測定し、記録されたフィルム厚さチャートから求めた、最大厚みと最小厚みの差である厚み斑が1.4μm以下である。
・甲1発明は厚み斑が1.4μm以下であり、これに甲3を参酌すると、標準偏差は0.057μm以下となる蓋然性が高い、
と主張している。

しかしながら、甲3に記載の厚み変動の標準偏差は、フィルムの幅方向、長手方向に、それぞれ50mm幅、25cm長にサンプリングしたフィルムに対して連続的に厚み測定し、ここで、厚みむらは、測定長17cmでの厚み最大値T(max)と最小値T(min)の差を平均値T(ave)で除して、100を乗じることにより求め、そして、厚み測定点を標本点として統計処理計算して求めたことが記載されているが、甲3に記載の厚み変動の標準偏差は、標本点を収集するフィルム全長、すなわち、計測評価の対象とするフィルムの長さが不明である。
このため、甲3に記載の厚み変動の標準偏差を、(相違点2に係る)長手方向10,000mを連続測定した厚みの平均値に対するばらつき(σMD)を概算するための指標とすることはできない。
また、甲3に記載されている厚み変動の標準偏差の例(甲3の実施例1、2、4、6等)は、それぞれ個別のフィルムにおいて、厚み平均値、厚みむら、標準偏差が実測されているものであり、厚みむらが2.496μm以下であれば、標準偏差が0.057μm以下になる、ということが直ちに導き出せるものではない。
よって、甲3の記載事項から、相違点2に係る特定事項を導き出すことはできない。

したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、フィルム長手方向10,000mを連続測定した厚みの平均値に対するばらつきσ値(σMD)が0.15μm以下とすることにより、セラミックグリーンシート成形時の厚みばらつきを低減させるという顕著な効果を有するものである。
よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2ないし3についての対比・判断
本件特許発明2ないし3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)申立理由についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。
したがって、申立理由によって本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。

第4 結語
上記第3のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2023-08-24 
出願番号 P2019-540108
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 植前 充司
特許庁審判官 磯貝 香苗
淺野 美奈
登録日 2022-11-02 
登録番号 7169551
権利者 東レ株式会社
発明の名称 離型用二軸配向ポリエステルフィルムロール  
代理人 伴 俊光  
代理人 細田 浩一  

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