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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1401697
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-04-25 
確定日 2023-08-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第7169458号発明「電子制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7169458号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7169458号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜11に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)8月14日(優先権主張令和元年9月26日)を国際出願日とする出願であって、令和4年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同年11月10日にその特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1〜11に係る特許に対し、令和5年4月25日に特許異議申立人藤江桂子(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜11に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、本件特許の請求項1〜11に記載された発明を、「本件特許発明1」〜「本件特許発明11」という。)

「【請求項1】
電源端子を有するコネクタと、
内層導体を有し、前記電源端子を介して入力される入力電力を所定の出力電力に変換する電力変換回路が設けられた第1基板と、
内層導体を有し、制御回路が設けられた第2基板と、を備え、
前記第1基板の内層導体の厚みは、前記第2基板の内層導体の厚みよりも厚い
電子制御装置。

【請求項2】
前記第1基板は、前記電源端子が接続される端子接続部を有し、
前記第2基板は、前記コネクタと前記第1基板との間に配置され、前記電源端子の干渉を避ける干渉回避部を有する
請求項1に記載の電子制御装置。

【請求項3】
前記第1基板が取り付けられる基板取付部と、
前記コネクタが取り付けられるコネクタ取付部と、を備え、
前記コネクタを前記コネクタ取付部に取り付けると、前記電源端子が前記端子接続部に接続される
請求項2に記載の電子制御装置。

【請求項4】
前記コネクタは、前記第2基板に接続される複数の制御用端子及び複数の通信用端子を有し、
前記複数の制御用端子の前記第2基板に接続される端部は、所定の方向に沿って並んでおり、
前記複数の通信用端子の前記第2基板に接続される端部は、前記所定の方向に沿って並んでおり、
前記複数の制御用端子の前記第2基板に接続される端部と前記複数の通信用端子の前記第2基板に接続される端部は、前記所定の方向に一直線に並んでいる
請求項1に記載の電子制御装置。

【請求項5】
前記複数の通信用端子における前記第2基板と接続される側とは反対側の端部は、前記所定の方向とは異なる特定の方向に沿って並んでいる
請求項4に記載の電子制御装置。

【請求項6】
前記第1基板の内層導体は、銅により形成されている
請求項1に記載の電子制御装置。

【請求項7】
前記第2基板の内層導体は、銅により形成されている
請求項6に記載の電子制御装置。

【請求項8】
前記第1基板は、熱硬化性樹脂を含有させて硬化させた硬化層と、前記内層導体とを積層させて形成されている
請求項1に記載の電子制御装置。

【請求項9】
前記第2基板は、熱硬化性樹脂を含有させて硬化させた硬化層と、前記内層導体とを積層させて形成されている
請求項8に記載の電子制御装置。

【請求項10】
前記第1基板の内層導体の厚みは、前記第2基板の内層導体の厚みの1.7〜2.3倍である
請求項1に記載の電子制御装置。

【請求項11】
前記第1基板は、前記内層導体を複数有しており、
前記第1基板の全ての内層導体が、前記第2基板の内層導体の厚みよりも厚い
請求項1に記載の電子制御装置。」

第3 申立理由の概要
本件特許発明1〜11は、甲第1号証(以下、「甲1」という。)に記載された発明に、甲第2〜12号証(以下、「甲2」等という。)に記載された発明を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、拒絶されるべきものである。(特許異議申立書第20頁「(4−3)理由(甲1〜12による進歩性違反)」)

(証拠方法)
甲1: 特開2017−189033号公報
甲2: 特開2016−225656号公報
甲3: 特開2008−263755号公報
甲4: 特開2003−029292号公報
甲5: 特開2016−171664号公報
甲6: 特開2016−032389号公報
甲7: 特開2019−103233号公報
甲8: 特開2001−007456号公報
甲9: 特開2017−120989号公報
甲10: 特開2020−025448号公報
甲11: 再公表特許WO2010/131524号
甲12: 特開2002−017975号公報

第4 各甲号証に記載された事項
1 甲1
(1)甲1に記載された事項
甲1には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同様。)
ア.明細書
「【0008】
以下、本発明による駆動装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図8に示す。
図1に示すように、駆動装置1は、運転者によるステアリング操作を補助するための電動パワーステアリング装置108に適用される。駆動装置1は、回転電機としてのモータ部110と、モータ部110の駆動制御に係るコントローラ部20とが一体に形成される。図1では、コントローラ部20を「ECU」と記載した。
(中略)
【0030】
図2、図4および図5に示すように、駆動部品であるSW素子301〜306、401〜406、電流検出素子311〜313、411〜413、リレー32、33、42、43、チョークコイル35、45、および、コンデンサ36、46が、第1基板21に実装される。また、図2、図4および図6に示すように、制御部品であるマイコン51、52および集積回路56、57が、第2基板22に実装される。駆動部品は、コイル111〜113、121〜123に流れるモータ電流と同等の比較的大きな電流が流れる電子部品であり、制御部品は、モータ電流が流れない部品である、と捉えることもできる。
また、第1基板21には、回転センサ60が実装される。
【0031】
回路図中の白抜きの三角形は、各端子と基板21、22との接続箇所を示す。本実施形態では、電源端子751、761、グランド端子752、762、および、内部信号端子717は、それぞれ、第1基板21および第2基板22に接続される。一方、トルク信号端子771、781、および、車両信号端子772、782は、第2基板22と接続され、第1基板21とは接続されない。端子接続の詳細については、後述する。
(中略)
【0036】
フレーム部材18のコントローラ部20側の端面181には、基板固定部185、186が立設される。第1基板固定部185には、第1基板21が載せ置かれ、ねじ195により固定される。第2基板固定部186は、端面181からの高さが第1基板固定部185より高くなるように形成される。第2基板固定部186は、第1基板21の図示しない孔部に挿通される。第2基板固定部186には、第2基板22が載せ置かれ、ねじ196により固定される。基板21、22とフレーム部材18とは、ねじ以外にて固定してもよい。
(中略)
【0039】
コントローラ部20は、各種電子部品が実装される基板21、22、および、コネクタユニット70等を有する。
第1基板21および第2基板22は、フレーム部材18の端面181に対して略水平に設けられる。本実施形態では、モータ部110側から、第1基板21、第2基板22の順に配置される。ここで、第1基板21のモータ部110側の面を第1面211、モータ部110と反対側の面を第2面212とし、第2基板22のモータ部110側の面を第1面221、モータ部110と反対側の面を第2面222とする(図5および図6参照)
(中略)
【0045】
図4および図6に示すように、第2基板22の第1面221には集積回路56、57が実装され、第2面222にはマイコン51、52が実装される。
すなわち、本実施形態では、モータ電流が通電される駆動部品が第1基板21に実装され、制御部品が第2基板22に実装される。換言すると、第1基板21をパワー基板、第2基板22を制御基板とし、基板を分けることでパワー部と制御部とが分離されている。これにより、制御基板である第2基板22には、ノイズ源となり得る大電流が流れないので、制御部品におけるノイズの影響が低減される。
【0046】
第1基板21の第2面212には、ばね端子26が設けられる。第2基板22の第2面222には、ばね端子27が設けられる。図4〜図6では、説明のため、ばね端子26、27については、断面形状がわかるように記載した。ばね端子26、27の詳細は、後述する。
(中略)
【0048】
図3および図4に示すように、コネクタユニット70は、カバー部71、給電コネクタ75、76、および、信号コネクタ77、78を有する。本実施形態では、コネクタ75〜78が「コネクタ」に対応する。
カバー部71は、略有底筒状に形成され、筒部711、および、コネクタ形成部715を有する。筒部711の先端部712は、モータケース17の筒部171に形成される溝部172に挿入され、接着剤等で固定される。
【0049】
コネクタ形成部715のモータ部110と反対側には、給電コネクタ75、76、および、信号コネクタ77、78が形成される。コネクタ75〜78は、モータシルエット内に配置される。本実施形態のコネクタ75〜78は、間口がモータ部110と反対側に開口しており、ハーネス等が軸方向に挿入される。
【0050】
図2〜図4に示すように、第1給電コネクタ75は、第1バッテリ39およびグランドとの接続に用いられる。第1給電コネクタ75には、第1電源端子751および第1グランド端子752が設けられる。第2給電コネクタ76は、第2バッテリ49およびグランドとの接続に用いられる。第2給電コネクタ76には、第2電源端子761および第2グランド端子762が形設けられる。
【0051】
第1信号コネクタ77および第2信号コネクタ78は、トルクセンサ103および図示しないCAN(Controller Area Network)との接続に用いられる。
第1信号コネクタ77には、トルクセンサ103からの信号の入力に用いられる第1トルク信号端子771、および、CANからの信号の入力に用いられる第1車両信号端子772が設けられる。第2信号コネクタ78には、トルクセンサ103からの信号の入力に用いられる第2トルク信号端子781、および、CANからの信号の入力に用いられる第2車両信号端子782が設けられる。
給電コネクタ75、76、および、信号コネクタ77、78の間口をそれぞれ複数設けることで、接続される一部の配線が外れたり、断線したりした場合にも、モータ部110の駆動を継続可能である。
(中略)
【0055】
接続端子と基板21、22との接続を、図8に基づいて説明する。図8では、接続端子として、給電コネクタ75、76の電源端子751、761を例示した。また、電源端子751、761と基板21、22との接続の詳細は同様であるので、以下、電源端子751を中心に説明する。
電源端子751は、軸方向に投影したとき基板21、22が重複する領域にて、モータ部110側に、真っ直ぐに延びて形成される。電源端子751は、第1基板21に形成される接続端子挿通孔215、および、第2基板22に形成される接続端子挿通孔225に挿通される。これにより、電源端子751は、基板21、22を貫通する。なお、電源端子751は、コネクタ形成部715から遠い側の基板である第1基板21を貫通していなくてもよい。
【0056】
第1基板21の接続端子挿通孔215の外側には、ばね端子26が形成される。第2基板22の接続端子挿通孔225の外側には、ばね端子27が形成される。ばね端子26、27は、銅等の導電性の材料にて、挿通される端子に応じた大きさに形成される。ばね端子26は、挿通部261、および、基板接続部265を有する。また、ばね端子27は、挿通部271、および、基板接続部275を有する。
【0057】
挿通部261は、第1基板21の第2面212から立ち上がって形成される。基板接続部265は、第2面212にて、挿通される端子に応じた第1基板21の配線パターンと電気的に接続される。
挿通部271は、第2基板22の第2面222から立ち上がって形成される。基板接続部275は、第2面222にて、挿通される端子に応じた第2基板22に配線パターンと電気的に接続される。
【0058】
挿通部261、271には、電源端子751が挿通される。挿通部261、271は、電源端子751が挿通されることで、弾性変形しつつ、電源端子751と当接する。これにより、電源端子751は、基板21、22と電気的に接続される。
本実施形態では、電源端子751は、ばね端子26、27に挿通されることで、基板21、22に対して垂直に配置される。ここで、「垂直」とは、基板21、22と電源端子751とがなす角度が90度であることに限らず、設計誤差や、ばね端子26、27の弾性変形に伴う傾き程度は許容されるものとする。
【0059】
1つの電源端子751は、基板21、22のそれぞれに設けられるばね端子26、27に挿通されることで、基板21、22と接続される。これにより、接続端子は、同一の信号を基板21、22に伝達可能である。また、接続端子とばね端子26、27とは、ばね端子26、27の弾性変形により当接することで、電気的に接続される。これにより、はんだ付け等の接続端子と基板21、22とを接続するための工程を省略することができる。
図8中に図示していない電源端子751、761以外の接続端子であるグランド端子752、762および内部信号端子717も同様に、基板21、22のそれぞれに設けられるばね端子26、27に挿通されることで、基板21、22と電気的に接続される(図4参照)。
【0060】
図4に示すように、第2基板22には、トルク信号端子771、781、および、車両信号端子772、782が挿通される図示しない端子挿通孔が形成され、この端子挿通孔の外側であって、第2面222側には、ばね端子27が形成される。信号端子771、772、781、782は、ばね端子27に挿通されることで、第2基板22と電気的に接続される。これにより、第2基板22に実装されるマイコン51、52および集積回路56、57は、信号端子771、772、781、782から伝達される信号を利用可能である。
【0061】
本実施形態の駆動装置1は、電動パワーステアリング装置108に設けられる。電動パワーステアリング装置108は、車両の基本機能の1つである「曲がる」機能を司る装置であるため、冗長構成とすることで、一部に異常が生じた場合であっても操舵のアシストを継続できるようにしている。一方、居住スペースの拡大や燃費向上の面から、駆動装置1には小型化が求められる。
【0062】
そこで本実施形態では、回路の冗長化にあたり、複数の基板21、22を設ける構成において、配線スペースの増大を防ぐべく、複数の基板21、22をモータシルエット内にて、モータ部10の軸線を延長した仮想線に対して垂直に重複させて積層している。ここでいう「垂直」とは、厳密に垂直であることに限らず、組み付け誤差程度は許容されるものとする。また、重複領域にて接続端子が基板21、22を貫き、各基板21、22と電気的に接続する構造としている。接続端子が基板21、22を貫通することで、最もコネクタ75〜78側に設けられる第2基板22以外の基板である第1基板21と接続している、と捉えることもできる。
これにより、冗長化に伴う配線スペースの増大を防ぐことができる。
また、接続端子を略真っ直ぐに形成し、複数の基板21、22を貫く構造とすることで、端子を短くすることができる。これにより、配線のインピーダンスを低減することができる。
(中略)
【0069】
それぞれの基板21、22には、ばね端子26、27が設けられる。本実施形態では、ばね端子26が第1基板21に設けられ、ばね端子27が第2基板22に設けられる。
ばね端子26は、挿通部261および基板接続部265を有する。挿通部261は、端子が挿通されることで弾性変形可能であって、当該端子と当接する。基板接続部265は、第1基板21と電気的に接続している。
ばね端子27は、挿通部271および基板接続部275を有する。挿通部271は、端子が挿通されることで弾性変形可能であって、当該端子と当接する。基板接続部275は、第2基板22と電気的に接続している。
【0070】
電源端子751、761、グランド端子752、762、および、内部信号端子717は、それぞれの基板21、22に設けられるばね端子26、27に挿通された状態で当該ばね端子と当接しており、複数の基板21、22と電気的に接続している。
これにより、接続端子をばね端子に挿通することで、接続端子と複数の基板21、22とを容易に接続可能である。また、はんだ付け等、接続端子と基板21、22とを電気的に接続するための工程を省略することができる。
【0071】
最もモータ部110側に設けられる基板である第1基板21には、モータ部110の回転を検出する回転センサ60が設けられる。本実施形態では、回転センサ60は、それぞれ、モータ部110の回転角度を検出する複数のセンサ部61、62を有する。複数のセンサ部61、62は、第1基板21のモータ部110側の面である第1面211に設けられる。これにより、モータ部110の回転を適切に検出することができる。」

イ.図面

「【図3】


【図4】


【図5】


【図6】



(2)甲1発明
ア.上記段落0008によると、甲1には、電動パワーステアリングに用いられる駆動装置1が記載されているといえる。
イ.上記段落0050、0055の記載、及び、図3、4によると、上記駆動装置1には、給電コネクタ75、76を有する電源端子751、761が設けられているといえる。
ウ.上記段落0030、0045の記載によると、上記駆動装置1は、モータ電流が通電される駆動部品が実装されたパワー基板である第1基板21を備えているといえる。そして、上記段落0055の記載、及び、図4によると、第1基板21は、上記電源端子751、761を介して電力を入力するものであるから、第1基板21は、モータ電流が通電される駆動部品が実装されたパワー基板であって、電源端子751、761を介して電力が入力される基板であると解される。
よって、上記駆動装置1は、電源端子751、761を介して電力が入力される第1基板21を備えているといえる。
エ.上記段落0030、0045の記載によると、上記駆動装置1には、制御部品が実装された制御基板である第2基板22が設けられているといえる。
オ.以上によると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「 電源端子751、761を有する給電コネクタ75、76と、
モータ電流が通電される駆動部品が実装されたパワー基板であって、上記電源端子751、761を介して電力が入力される第1基板21と、
制御部品が実装された制御基板である第2基板22と、を備えた
駆動装置1」

2 甲2
(1)甲2に記載された事項
甲2には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両には、特許文献1に開示されているような、直流電圧を交流電圧に変換する電子機器であるインバータ装置が搭載されている。インバータ装置は、パワー素子が実装された第1金属板(第1導電層)と、制御素子が実装された第2金属板(第2導電層)とを有する。制御素子は、パワー素子のスイッチング動作を制御する
(中略)
【0018】
以下、電子機器を具体化した一実施形態を図1にしたがって説明する。本実施形態の電子機器は、例えば、車載用のインバータ装置である。
図1に示すように、電子機器10は、放熱部材20と、パワー素子11aが電気的に接合された第1導電層としての第1金属板11と、二つの制御素子12a,12bが電気的に接合された第2導電層としての第2金属板12とを備えている。パワー素子11aはMOSFETであり、第1金属板11に対してベアチップ実装されている。各制御素子12a,12bは、例えばチップ抵抗やコンデンサ等である。放熱部材20は、例えば、内部に冷却水が流れる冷却水流路を有するアルミニウム製の筐体である。第1金属板11及び第2金属板12は、平板状の銅板である。第1金属板11の厚さH1は、第2金属板12の厚さH2よりも厚くなっており、第1金属板11は第2金属板12よりも大電流が流れる。
【0019】
電子機器10は、第1金属板11と第2金属板12との間においてパワー素子11aが埋め込まれる樹脂層13を備えている。樹脂層13は、ガラス繊維等の熱伝導率の良好なフィラーを含むエポキシ樹脂からなる。第1金属板11、樹脂層13及び第2金属板12は、放熱部材20に対して近い方からこの順序で積層されている。よって、第1金属板11は、第2金属板12よりも放熱部材20寄りに配置されている。パワー素子11aと一方の制御素子12aとは、第1金属板11、樹脂層13及び第2金属板12が積層される積層方向において、その一部分が重なっている。パワー素子11aは、樹脂層13に埋め込まれるようにして第1金属板11と樹脂層13との間に配置されている。
【0020】
放熱部材20と第1金属板11との間には、高熱伝導絶縁層14が介在されている。高熱伝導絶縁層14は、ガラス繊維等の熱伝導率の良好なフィラーを含むエポキシ樹脂からなる。高熱伝導絶縁層14を形成するエポキシ樹脂に混入されたフィラーの量は、樹脂層13を形成するエポキシ樹脂に混入されたフィラーの量よりも多くなっている。よって、高熱伝導絶縁層14は、樹脂層13よりも熱伝導率が高くなっている。
【0021】
パワー素子11aと第2金属板12とは、板状の二つの導電部材15によって電気的に接続されている。各導電部材15は、樹脂層13の内部を通過し、パワー素子11aにおける第2金属板12側の平面111aに対して垂直方向に立設して延びる平板状である。よって、各導電部材15は、その厚み方向がパワー素子11aの平面111aに沿う方向となるように配置されている。各導電部材15は、パワー素子11aと制御素子12a,12bとの間を流れる電流経路を形成している。そして、各制御素子12a,12bとパワー素子11aとの間で、第2金属板12及び各導電部材15を介した電流の流れが生じることで、パワー素子11aのスイッチング動作が行われる。よって、制御素子12a,12bは、パワー素子11aのスイッチング動作を制御する。
【0022】
電子機器10は、制御素子12a,12bよりも発熱量の少ない発熱素子16aを有する第3金属板16を備えている。第3金属板16は、平板状の銅板である。第3金属板16は、第2金属板12における第1金属板11とは反対側に積層されている。第2金属板12と第3金属板16との間には絶縁層17が介在されている。絶縁層17は、ガラス繊維等の熱伝導率の良好なフィラーを含むエポキシ樹脂からなる。樹脂層13及び絶縁層17の熱伝導率は同じである。制御素子12a,12bは、絶縁層17に埋め込まれるようにして第2金属板12と絶縁層17との間に配置されている。
【0023】
電子機器10は、第3金属板16、絶縁層17、第2金属板12及び樹脂層13を積層方向に沿って貫通する貫通孔18を有する。貫通孔18内には、第1金属板11に実装された誘導機器19(例えばリアクトル)が収容されている。誘導機器19は、第1金属板11に電気的に接合されるコイル19a(図1において二点鎖線で示す)と、第1金属板11に熱的に接合されるコア19b(図1において二点鎖線で示す)とを備える。誘導機器19は、第3金属板16の上面(第3金属板16における絶縁層17とは反対側の面)よりも突出していない。」

イ.図面
「【図1】



(2)甲2技術
ア.上記段落0002、0019によると、甲2には、パワー素子11aが実装された第1金属板11と、制御素子12a、12bが実装された第2金属板12とを有する電子機器10が記載されているといえる。
イ.上記段落0019の記載、及び、図1によると、上記電気機器10は、上記第1金属板11と樹脂層13と第2金属板12とが積層されたものであるといえる。
ウ.上記段落0018の記載によると、第1金属板11の厚さは、第2金属板12の厚さより厚くなっており、第1金属板11は第2金属板12よりも大電流が流れるようにされているといえる。
エ.以上によると、甲2には次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

「パワー素子11aが実装された第1金属板11と、樹脂層13と、制御素子12a、12bが実装された第2金属板12とが積層された電子機器10において、第1金属板11の厚さは、第2金属板12の厚さより厚くなっており、第1金属板11は第2金属板12よりも大電流が流れるようにされていること。」

3 甲3
(1)甲3に記載された事項
甲3には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工装置の電源装置等に用いられるスイッチング電源装置に関するものである。
(中略)
【0020】
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1による昇圧チョッパ回路と高周波インバータ回路を有するスイッチング電源装置の構造を示し、図2にその回路図を示す。図2では特に入力電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路を示しているが、入力電圧を降圧する降圧チョッパ回路や昇降圧する昇降圧チョッパ回路でもよい。
【0021】
図1に示すように、スイッチング電源装置は、チョッパ回路を構成するダイオードD11とスイッチング素子S51およびデカップリングコンデンサC1と、高周波インバータ回路を構成する4つのスイッチング素子S11,S21,S31,S41が同一の多層プリント基板1上に配置された構造となっている。また、図2に示すように、制御回路71による制御信号がチョッパ信号発生回路72およびインバータ信号発生回路73に信号を与え、各々のスイッチング素子S11,S21,S31,S41およびS51が駆動される。なお、制御回路71、チョッパ信号発生回路72およびインバータ信号発生回路73は、多層プリント基板1上に配置されても良いが、別基板で構成されたものであっても良い。また、図2中では出力制御用の出力フィードバック信号やチョッパ回路の過電圧検出回路等を省略しているが、適宜これらの回路は実装されている。
【0022】
入力電源配線LA1とLB1はそれぞれ正側電位とグランド側電位を結ぶ接続線を示し、配線LC1とLD1はインバータ回路の出力線を示す。これらの接続線には、例えばケーブル線あるいは銅ブスバーが使用される。
【0023】
多層プリント基板1は、図3に示すように銅箔パターン21と22、22と23および23と24のそれぞれの間に絶縁部材20を挟み込んだ積層構造となっており、入力電源配線LA1とLB1、インバータ電源パターンXとY、およびインバータ出力配線LC1とLD1を各層のパターンに設けた構造となっている。特に、インバータ電源パターンXとYを上下層でパターン化し、インバータ電源パターンXとYの電流が上下層折り返しで流れるようにパターンを構成することが望ましい。このような構造にすると、主回路の電流ループの面積を小さくできるため、配線インダクタンスに起因するスイッチング素子へのサージ電圧や異常発振を抑制することができる。」

イ.図面
「【図3】



(2)甲3技術
ア.上記段落0001、0021によると、甲3には、チョッパ回路を構成するダイオードD11、スイッチング素子S51、デカップリングコンデンサC1と、高周波インバータ回路を構成するスイッチング素子S11、S21、S31、S41とが、同一の多層プリント基板1に配置されたスイッチング電源装置が記載されているといえる。
イ.上記段落0023の記載、及び,図3によると、上記多層プリント基板1は、入力電源配線LA1とLB1、インバータ電源パターンXとY、インバータ出力配線LC1とLD1を各層のパターンに設けた構造であるといえる。
ウ.以上によると、甲3には次の技術(以下,「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

「チョッパ回路を構成するダイオードD1、スイッチング素子S51、デカップリングコンデンサC1と、高周波インバータ回路を構成するスイッチング素子S11、S21、S31、S41とが、同一の多層プリント基板1に配置されたスイッチング電源装置において、上記多層プリント基板は、入力電源配線LA1とLB1、インバータ電源パターンXとY、インバータ出力配線LC1とLD1を各層のパターンに設けた構造であること。」

4 甲4
(1)甲4に記載された事項
甲4には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶駆動用半導体チップを複数搭載した液晶表示装置に関するものである。
(中略)
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の液晶表示装置は、液晶駆動用半導体チップを多層基板表面に実装し、少なくとも、そのチップへの入力配線パターンとそのチップからの出力配線パターンのある多層基板の表面と、液晶パネルの端子と接続される端子を持つ裏面と、その表面と裏面との間に少なくとも1層の中間層を設け、その中間層にその入力配線またはその出力配線またはその両配線の一部を配線パターンとして備え、それぞれの配線をスルーホールを介して接続している多層基板をパネル端子に電気的に接続し、かつ、その複数の多層基板間が導通接続手段により電気的接続されていることを特徴とする。
(中略)
【0294】図101は、図100の電源回路一体COM多層基板608の実装部分を拡大した図である。
【0295】また、図102は、電源回路一体COM多層基板608の断面図である。
【0296】電源回路一体COM多層基板608は、電源一体COM多層基板608上にフェイスダウンボンディングされているCOM側の液晶駆動用半導体チップ4に電源およびCOM側画像信号を供給すると共に、SEG側の液晶駆動用半導体チップ4を実装した多層基板14にも同様に電源とSEG側画像信号を供給する機能を持っている。
【0297】この電源回路一体COM多層基板608の構造を図101、および図102を用いて説明する。電源回路一体COM多層基板608は、セラミックス製の上層基板610、中間基板611、下層基板612による多層構造になっており、液晶駆動用半導体チップ4、および電源回路を構成する各種電子部品609は、公知の方法(例えば、Agペーストを用いて基板に接続する方法、異方性導電接着剤を用いる方法など)により上層基板610に実装されている。なお、図100、図101では各配線パターンの図示は省略している。実装後は、液晶駆動用半導体チップ4および各種電子部品609の周囲、および液晶駆動用半導体チップ4と上層基板610の表面との間の腐食防止、および補強のためにモールドしてある。ただし、図が煩雑になるため、モールドの図示は省略してある。上層基板610の表面には各液晶駆動用半導体チップ4の入力パッドに対応する回路パターン613−1が形成されている。これらの液晶駆動用半導体チップ4の入力パッドに対応する回路パターン613−1は、スルーホール615−1、中間基板611上の回路パターン613−2、スルーホール615−3、下層基板612上の回路パターン613−3、スルーホール615−4を介して、同じ電源回路一体COM多層基板608に各種電子部品609で構成される電源回路の回路パターン613−4に接続されている。なお、ここではスルーホール615−1、中間基板611上の回路パターン613−2、スルーホール615−3、下層基板612上の回路パターン613−3、スルーホール615−4を経由して電源回路の回路パターン613−4に接続しているが、回路パターンのレイアウト上で、液晶駆動用半導体チップ4の入力パッドに対応した回路パターン613−1と電源回路の回路パターン613−4との間を横切る別の回路パターンがあるなどの問題がなければ、液晶駆動用半導体チップ4の入力パッドに対応した回路パターン613−1と電源回路の回路パターン613−4を上層基板610上で直接接続することもできる。また、上層基板610上には各液晶駆動用半導体チップ4の出力パッドに対応する回路パターン613−5がそれぞれ形成されており、この各液晶駆動用半導体チップ4の出力パッドに対応する回路パターン613−5はスルーホール615−2を介し、下層基板612に形成されているパネルとの接続端子614に接続されている。」

イ.図面
「図102



(2)甲4技術
ア.上記段落0019,0297によると、液晶表示装置に用いられる電源回路一体COM多層基板608は、上層基板610、中間基板611、下層基板612による多層構造となっていることが記載されているといえる。
イ.上記段落00297の記載、及び、図102によると、上記電源回路一体COM多層基板608は、中間基板611の回路パターン613−2と下層基板612の回路パターン613−3とは、電源回路の回路パターン613−4に接続されているといえる。
ウ.以上によると、甲4には次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

「上層基板610と中間基板611と下層基板612とによって多層構造となっている電源回路一体COM多層基板608において、中間基板611の回路パターン613−2と下層基板612の回路パターン613−3とは、電源回路の回路パターン613−4に接続されていること。」

5 甲5
(1)甲5に記載された事項
甲5には、次の記載がある。
ア.明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動するインバータ回路が形成されたインバータ基板とインバータ回路を制御する制御回路が形成された制御基板とを筐体に収容して構成される、モータの駆動制御ユニットに関し、詳しくは、モータの駆動制御系統を冗長化させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動制御ユニットには、例えば、モータを駆動源として操舵補助力を発生させる電動パワーステアリングに適用された場合、車両の自動運転や機能安全等の要求から、異常発生時でも電動パワーステアリングの機能を維持するために、モータの駆動制御系統を2つにして冗長化し、2つの巻線組を備えたモータを巻線組毎に個別に駆動制御できるようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなモータの駆動制御ユニットでは、2つのインバータ回路が設けられたインバータ基板と、インバータ回路を個別に駆動する2つの制御系統を備えた制御基板と、が対向した状態で筐体に収容されている。
(中略)
【0042】
図4は、制御基板20の多層構造を模式的に示す展開斜視図である。
制御基板20は、表面側に第1制御回路20Aが位置し、裏面側に第2制御回路20Bが位置するように構成されている。第1制御回路20Aは、制御基板20の表面に電子部品を表面実装し、表面から内側に向けて積層された複数の層で構成されている。また、第2制御回路20Bは、制御基板20の裏面に電子部品を表面実装し、裏面から内側に向けて積層された複数の層で構成されている。そして、第1制御回路20Aと第2制御回路20Bとは、中間の絶縁層Mによって、一部を除き電気的に絶縁されている。このように制御基板20は複数の層を積層した多層基板を形成している。
【0043】
第1制御回路20Aは、電子部品DAが実装される表面から内側に向けて、順に、第1層L1A、第2層L2A、第3層L3A、第4層L4A及び第5層L5Aが積層された第1制御回路層をなしている。
また、第2制御回路20Bは、電子部品DBが実装される裏面から内側に向けて、順に、第1層L1B、第2層L2B、第3層L3B、第4層L4B及び第5層L5Bが積層された第2制御回路層をなしている。なお、第2制御回路層の各層は、第1制御回路層の同じ数字の層と同様であるので、以下、重複する説明を省略する。
【0044】
第1層L1A、第3層L3A及び第5層L5Aは、銅箔等の導電体で形成された導電層である。第2層L2A及び第4層L4Aは、絶縁性を有する樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を主成分として形成された薄板状又はシート状の絶縁層であり、第1層L1Aと第3層L3Aの間、第3層L3Aと第5層L5Aとの間を電気的に絶縁する。
【0045】
第1層L1Aは、電子部品DAを表面実装するための実装パッドであり、第3層L3Aは、第1制御回路20Aにおける配線回路を構成する導電パターンであり、第5層は制御基板20の平面方向に全域に広がるグランド層である。本実施形態において、導電パターンには、第3層L3Aだけでなく、第1層L1Aの実装パッドも含まれるものとする。」

イ.図面
「【図4】



(2)甲5技術
ア.上記段落0001によると、甲5には、モータを駆動するインバータ回路が形成されたインバータ基板とインバータ回路を制御する制御回路が形成された制御基板とを備えるモータの駆動制御ユニットが記載されているといえる。
イ.上記段落0042〜0044の記載、及び、図4によると、上記制御基板20は、複数の導電層L1A、L3A、L5Aを有する多層基板であるといえる。
ウ.以上によると、甲5には次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

「インバータ基板と制御基板20とを備えるモータの駆動制御ユニットにおいて、制御基板20は、複数の導電層L1A、L3A、L5Aを有する多層基板であること。」

6 甲6
(1)甲6に記載された事項
甲6には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
本開示は、電力変換装置の制御基板に関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサを含むスイッチIC(Integrated Circuit)のチップと、制御回路ICのチップとが別々に形成され、スイッチICと制御回路ICとがボンディングワイヤで接続された内燃機関用点火装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この内燃機関用点火装置では、制御回路ICは、GND端子の上に導電性材料を介して実装されている。
(中略)
【0013】
図2は、一例によるインバータ4の制御基板400−1の実装図である。図3は、一例による制御基板400−1のグランド電位部430−1を示す図であり、制御基板400−1の内層を概略的に示す断面図である。尚、図3は、図2に示した制御基板400−1の実装図に対して各部の位置関係が若干異なるが、かかる相違は本質的でない。
【0014】
制御基板400−1は、基板本体410−1と、電源生成部421と、温度検出部422と、駆動部424と、過電流検出部426と、グランド電位部430−1とを含む。
【0015】
基板本体410−1は、多層基板である。基板本体410−1は、例えば2層以上の内層を有する。
(中略)
【0021】
グランド電位部430−1は、第1導体部431−1と、第2導体部432−1と、第3導体部433−1とを含む。
【0022】
第1導体部431−1は、電源生成部421のグランド端子GNDから最初の分岐部BR1まで延在する。分岐部とは、電流経路が各部品へと分岐される個所を指す。従って、一方の分岐路が何らかの部品に電気的に接続されないような個所(例えば、図3の個所BR2)は分岐部に当たらない。第1導体部431−1は、好ましくは、可能な限り短く形成される。図3に示す例では、第1導体部431−1は、基板本体410−1に形成される貫通ビアの一部により形成される。尚、以下の説明において、上流とは、電源生成部421のグランド端子GNDに近い側を指し、後流とは、電源生成部421のグランド端子GNDから遠い側を指す。
【0023】
第2導体部432−1は、最初の分岐部BR1で分岐して温度検出部422まで延在する。図3に示す例では、第2導体部432−1は、導体パターン432−1aと、ビア432−1bとを含む。導体パターン432−1aは、基板本体410−1の内層である第1層411に形成される。導体パターン432−1aは、例えば銅のベタパターンであってよい。ビア432−1bは、導体パターン432−1aと温度検出部422との間を電気的に接続する。第2導体部432−1は、最初の分岐部BR1より後流では温度検出部422のみに電気的に接続する。
【0024】
第3導体部433−1は、最初の分岐部BR1で第2導体部432−1とは異なる方向に分岐して駆動部424まで延在する。第2導体部432−1とは異なる方向に分岐とは、第3導体部433−1と第2導体部432−1とは互いに重複する電流経路を有さないことを意味する。換言すると、分岐部BR1は、第1導体部431−1から第2導体部432−1又は第3導体部433−1への分岐部を形成する。図3に示す例では、第3導体部433−1は、導体パターン433−1aと、ビア433−1b、433−1cとを含む。導体パターン433−1aは、基板本体410−1の内層である第2層412に形成される。導体パターン433−1aは、例えば銅のベタパターンであってよい。尚、導体パターン433−1a及び導体パターン432−1aは、それぞれが形成される層(上から何層目か)は任意である。ビア433−1bは、導体パターン433−1aと駆動部424との間を電気的に接続する。ビア433−1cは、導体パターン433−1aと過電流検出部426との間を電気的に接続する。ビア433−1b、433−1cは、導体パターン432−1aとは電気的に絶縁される態様で形成される。」

イ.図面
「【図3】



(2)甲6技術
ア.上記段落0001、0015によると、甲6には、電源変換装置の制御基板400−1であって、上記制御基板400−1は、複数の内層を有する多層基板410−1で構成されていることが記載されているといえる。
イ.上記段落0023、0024の記載、及び、図3によると、上記多層基板410−1は、内層である第1層411と第2層412とに導体パターン432−1a、433−1aが形成されているといえる。
ウ.以上によると、甲6には次の技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

「電源変換装置の制御基板400−1において、上記制御基板400−1は複数の内層を有する多層基板410−1で構成されており、内層である第1層411と第2層412とに導体パターン432−1a、433−1aが形成されていること。」

7 甲7
(1)甲7に記載された事項
甲7には、次の記載がある。
ア.明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料や液体食品材料、あるいはゲル状食品材料、固液混合食品材料など、流動性を有する食品材料にパルスを加えることにより、殺菌等の処理を行うための流動性食品材料パルス処理装置に使用される電源装置、およびその電源装置を用いた流動性食品材料処理装置に関するものである。
(中略)
【0026】
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の流動性食品材料パルス処理装置用電源装置は、
流動性食品材料を連続的に通過させるための流路が電極間に形成されており、前記電極間にパルスを加えて流動性食品材料を処理するようにした流動性食品材料パルス処理装置に使用される電源装置であって、
商用交流を整流して直流としかつ出力電圧を可変とした、サイリスタを備えた整流器と、
前記サイリスタを制御するためのサイリスタ制御部と、
整流器によって得られた直流電流をチョッピングして、高周波矩形パルス電流を発生させるための、スイッチング素子を備えたインバータ回路と、
前記インバータ回路の動作を制御するため、前記スイッチング素子のゲート信号を発生するゲート制御回路と、
前記インバータ回路の出力の高周波矩形パルス電流の電圧を変圧して、前記電極間に加えるべき電圧のパルスを得るための出力トランスと
を有し、
前記サイリスタ制御部の回路がサイリスタ制御基板に形成され、前記インバータ制御回路がインバータ制御基板に形成され、
前記サイリスタ制御基板およびインバータ制御基板が、それぞれ導電層数として少なくとも4層を有しかつ各導電層の間に絶縁層が介在された多層プリント配線板で構成されており、
前記各多層プリント配線板は、その一方の板面を第1面、他方の板面を第2面とし、第1面および第2面にそれぞれ回路パターンの導電層が形成され、第1面と第2面との間に、絶縁層を隔ててグラウンドライン用導電層および電源ライン用導電層が形成されていることを特徴とする。
(中略)
【0050】
一方、インバータ制御部57は、高周波発振器65と、インバータ制御信号発生回路としてのゲート制御回路58と、過電流検出器67と、インターロック回路69とを有している。
高周波発振器65は、例えば60kHz程度以上、700kHz程度以下の高周波信号を発生するためのものであり、水晶振動子などを用いた他励発振器等を使用することができる。
【0051】
ゲート制御回路(インバータ制御信号発生回路)58は、高周波発振器65からの高周波信号を用いて、IGBTなどのスイッチング素子のスイッチング動作を制御するためのインバータ制御信号としてのゲート制御信号S3を発生するためのものである。ここで、ゲート制御回路58は、後に改めて図5を参照して詳細に説明するように、高周波発振器65からの高周波信号の周波数を変換するための周波数変換回路78、およびその周波数変換回路78を制御するための周波数変換制御回路74を備えていて、外部からの操作によってゲート制御信号S3の周波数を調整可能としている。またゲート制御回路(インバータ制御信号発生回路)58は、調整された周波数で連続するゲート制御信号を発生する第1の状態と、その調整された周波数の信号を間引きして休止期間を設けた断続的なゲート制御信号を発生する第2の状態とに切り替えられるように構成されている。さらに、休止期間を設けた断続的ゲート制御信号を発生する第2の状態において、その休止期間の長さを調整可能に構成されている。
(中略)
【0082】
また図6に示す例では、第1面側絶縁層105Aを貫通する貫通孔115Aが形成され、第1面側絶縁層105Aから第2面側絶縁層105Cまでを貫通する貫通孔115Bが形成されている。これらの貫通孔115A、115Bには、抵抗器やキャパシタンス等の回路部品108Bの接続用ピン108Baが挿入されている。
【0083】
上記のようなゲート制御基板101もしくはサイリスタ制御基板102においては、それぞれ導電層数として少なくとも4層を有しかつ各導電層の間に絶縁層が介在された多層プリント配線板で構成されていて、ゲート制御回路58もしくはサイリスタ制御部50の回路を構成する回路パターンの導電層(第1面側導電層106および第2面側導電層107)とは別の層として、第1面と第2面との間に絶縁層を介して電源ライン用導電層110およびグラウンドライン用導電層111が形成されている。したがって回路パターンの導電層に対して電源ラインが離れていること、およびグラウンドラインがノイズに対してシールド効果を発揮することで、ゲート制御回路58もしくはサイリスタ制御部50の回路がノイズを拾うことが抑制される。特に、50kHz程度以上の高いパルス周波数、例えば60kHzでは、従来はノイズの影響のために回路に誤動作が生じたり、暴走したりして、安定した制御を行えなくなり、その結果、食品材料に安定した電圧のパルスを印加し得なくなる事態が発生することから、実用化は困難と思われていたが、本発明の場合は、50kHz程度以上の高いパルス周波数でもノイズの影響を受けにくく、そのため50kHz程度以上の高いパルス周波数での実用化が可能となった。」

イ.図面
「【図6】



(2)甲7技術
ア.上記段落0001、0026によると、甲7には、流動性食品材料パルス処理装置に使用される電源装置において、サイリスタ制御基板102とゲート制御基板101とを備えることが記載されているといえる。
イ.上記段落0083の記載、及び、図6によると、ゲート制御基板101もしくはサイリスタ制御基板102は、電源ライン用導電層110及びグラウンドライン用導電層111が形成された多層プリント配線板で構成されているといえる。
エ.以上によると、甲7には次の技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。

「流動性食品材料パルス処理装置に使用される電源装置は、サイリスタ制御基板102とゲート制御基板101とを備え、ゲート制御基板101もしくはサイリスタ制御基板102は、電源ライン用導電層110及びグラウンドライン用導電層111が形成された多層プリント配線板で構成されていること。」

8 甲8
(1)甲8に記載された事項
甲8には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は高密度配線を実現する配線回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体特に、集積回路(LSIと略す)の高集積化の進展は著しい。現在LSIは集積度256Mビット、1Gビットなどの試作も終わり、さらに高集積化が計画されており、集積度15Gビットまで製造可能と絶えない開発が続いている。
(中略)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、パソコン、この関連通信機器などにおいては、高信頼性を損なわずさらに、携帯性、軽量化、小型化の強い市場からの課題がある。(中略)・・この発明は、上記点に鑑みなされたもので、さらに配線を高密度化し、小型化、軽量化を可能にした配線回路基板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の配線回路基板は、請求項1に記載されたように、絶縁基板と、この絶縁基板に導電体パターンが設けられた配線回路と、この配線回路に設けられた前記導電体の厚さが比較的薄い配線回路部と、前記配線回路に設けられた前記導電体の厚さが比較的厚い配線回路部とを具備してなることを特徴としている。
(中略)
【0017】次に、図1乃至図3を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。この配線パターンをプリント回路基板の作成に適用した実施形態を説明する。配線回路ユニットを構成するには、その電気回路結線図から配線基板としての配線パターンを設計する。この実施形態では配線結線図は省略している。配線の物理的構造を主として説明する。図1(A)は従来のプリント基板の配線構造の構成を説明するための断面図である。(B)図は、この発明のプリント基板の配線構造の構成を説明するための断面図である。
【0018】すなわち、従来の(A)図では、高集積化されて所要電力が増加するがこの高電流たとえば3A乃至10Aを流す当該配線1の線幅を、低電流の配線2たとえば数ミリアンペアに比較して、太くして構成している状態を示す図である。
【0019】このように、高集積化される毎に線幅を太くする手法では、高密度化されてコンパクトになるのとは、反対の結果となる。パソコンなど装置として構成するには、回路基板3のサイズが大きくなるか、または、基板3の枚数が増加するばかりである。
【0020】そこで、(A)図のように電流容量の大きい配線(3A乃至10A)の線幅を太くするのではなく、(B)図のように、その分、配線4の厚さを厚くし、選択的に線幅を狭くして、回路基板3の高密度配線、回路基板の小型化、軽量化、延いては1ボード化を可能とするものである。(A)図に対して(B)図が小型化された状態を図示したものである。
【0021】即ち、回路基板3例えば絶縁体材料からなるガラスエポキシ樹脂基板3上には、電気回路結線図からデザインされた導電体パターンが形成された配線2,4が設けられている。配線2は上記電気回路結線図中、信号回路のように比較的低電流の数ミリA程度の回路で、たとえば従来通りの線幅の配線(さらに細くしてもよい。)でCPU(中央制御装置)やゲートアレイ回路などが構成され、たとえば電源回路のように比較的大電流(3A乃至10A)を流す配線4は配線の線幅より厚さを厚く構成して電流容量を満足させるように、構成したものである。必要に応じて線幅を狭くしてもよい。
(中略)
【0037】上記実施形態では、単層の配線回路基板について説明したが、多層プリント基板に適用してもよい。図4は多層プリント基板の実施形態を説明するための断面図である。多層プリント基板は、内層配線と表層配線からなる。1層毎に上記実施形態と同様なプロセスで形成できる。図4は4層のプリント基板の実施形態で、配線回路の線幅は、3種類の場合である。4層に跨ってランドスルー31、32が設けられている。
【0038】即ち、ガラスエポキシ樹脂基板33上には、信号回路の配線用として線幅が最も狭い配線34が設けられている。さらに、同一面上には、上記ランドスルー31に電気的に接続された上記配線34と同一厚さのランド35が設けられている。 このランド35の線幅は上記配線34の線幅より広く形成されている。さらにまた、他方のランドスルー32には、上記ランド35より厚さの厚いたとえば基板33上に形成される銅膜の厚さはたとえば18μmであり、さらにその上にスルーホール内壁面上に形成される電解メッキ層は20μm乃至25μmが形成され、このランド36と結線される基板33上のランド36の膜厚は38μm乃至42μmである。
【0039】このランド36の線幅はランド35より広く構成されたとえば電源の配線である。このようにして第1層目のプリント回路が構成されている。この第1層目上には、第2層目の絶縁体層37が成膜されている。この実施形態では、表層である。前記絶縁体層37の表面にも第1層目と同様に信号回路用配線38、39が夫々設けられている。さらに、上記ランドスルー31には、上記配線38、39同じ厚さで線幅は大きい信号回路用ランド40が設けられている。」

イ.図面
「【図1】



(2)甲8技術
ア.上記段落0001、0006、0007、0020、0021の記載、及び、図1によると、配線回路基板において、高密度配線を実現するために、従来通りの配線2で比較的低電流の回路を構成し、また、上記配線2の厚さより厚い配線4で電源回路のように比較的大電流の回路を構成することが記載されているといえる。
イ.上記段落0037によると、多層基板の内層配線と表層配線とにおいて、上記配線を形成することが記載されているといえる。
エ.以上によると、甲8には次の技術(以下、「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。

「高密度配線を実現するために、多層プリント基板の内層配線と表層配線とにおいて、従来通りの厚さの配線2で比較的低電流の回路を構成し、また、上記配線2より厚い配線4で電源回路のように比較的大電流の回路を構成すること。」

9 甲9
(1)甲9に記載された事項
甲9には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナ(PAA:Phased Array Antenna)を含むアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフェーズドアレイアンテナは、素子アンテナ、送受信モジュール、電源制御分配基板、給電基板及びアンテナ筐体を備える。送受信モジュールには電源制御分配基板を介して、各種制御信号と併せて電源供給を行い、電源系統によって大電流を流すことが可能である。従来、大電流が必要な電源系統には電源制御分配基板に対して工夫がなされている。
(中略)
【0016】
図4は、電源制御分配基板6の層構造を示す概略図である。図4に示す電源制御分配基板6は、厚銅層である層L9から層L12で構成されて大電流を流すことが可能な大電流電源系統層30と、大電流を要さない他の電源系統層及び各種制御信号が流れるパターン層であり、大電流電源系統層30を挟持する小電流層31A,31Bとを備える。なお、小電流層31Aは、層L1からL8で構成され、小電流層31Bは、層L13からL20で構成されている。なお、層L1からL20では、隣接する層間は絶縁されている。
【0017】
図4において、大電流を要する大電流電源系統層30は、薄い銅箔層である小電流層31A,31Bよりも厚く形成されており、大電流電源系統層30としては、240μm以上の厚い銅箔層を例示することができる。また、導体損失を低減するために大電流電源系統層30には往路及び復路が各々2層ずつ割り当てられている。これにより、図3の比較例における電源ブス25−1から25−12の使用時と同等の損失で大電流を流すことができる。
【0018】
また、図4に示すように、往路である層L9,L11と復路である層L10,L12とが交互に配置されており、往路と復路とを隣接させることで電磁干渉を抑えることができ、電源ブスを使用したときよりもEMC(Electro Magnetic Compatibility)対処能力を向上させることができる。」

イ.図面
「【図4】



(2)甲9技術
上記段落0001、0016の記載、及び、図4によると、甲9には、以下の技術(以下、「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。

「アンテナ装置の電源制御分配基板6において、大電流を流すことが可能な厚銅層である大電流系統層30と、大電流を要さない電源系統層及び各種制御信号が流れるパターン層である小電流系統層31A、31Bとを備え、大電流系統層30は、小電流系統層31A、31Bよりも厚く形成されていること。」

10 甲10
(1)甲10に記載された事項
甲10には、次の記載がある。
ア.明細書
「【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する磁石部を含む回転子と、多相の固定子巻線を有する固定子と、固定子巻線に電気的に接続された電力変換器とを備えるアウタロータ型の回転電機が知られている。
(中略)
【0066】
配線モジュール76には、円板状の制御基板67が取り付けられている。制御基板67は、所定の配線パターンが形成されたプリントサーキットボード(PCB)を有しており、そのボード上には各種ICや、マイコン等からなる制御部に相当する制御装置77が実装されている。制御基板67は、ネジ等の固定具により配線モジュール76に固定されている。制御基板67は、その中央部に、回転軸11を挿通させる挿通孔67aを有している。
【0067】
なお、配線モジュール76は、軸方向に互いに対向する、すなわち、その厚み方向において互いに対向する第1面と第2面を有する。第1面は、コンデンサモジュール68に面する。配線モジュール76は、その第2面に、制御基板67を設けている。制御基板67の両面の一方側から他方側に配線モジュール76のバスバー76cが延びる構成となっている。かかる構成において、制御基板67には、バスバー76cとの干渉を回避する切欠が設けられているとよい。例えば、円形状をなす制御基板67の外縁部の一部が切り欠かれているとよい。」

(2)甲10技術
上記段落0001、0002、0066の記載によると、甲10には次の技術(以下、「甲10技術」という。)が記載されていると認められる。

「回転電機の制御基板67において、配線モジュール76のバスバー76cとの干渉を回避するための切欠きを設けること」

11 甲11
(1)甲11に記載された事項
甲11には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
本発明は、回路基板及び回路モジュールに関し、より特定的には、アンテナコイルを備えた回路基板及び回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回路基板としては、例えば、特許文献1に記載のフレキシブルシートが知られている。以下に、図面を参照しながら、該フレキシブルシートについて説明する。図7は、特許文献1に記載のフレキシブルシート500の構成図である。
【0003】
図7に示すようにフレキシブルシート500は、可撓性材料からなる1枚のシートであり、コイルパターン部500a〜500d及び実装部501により構成されている。コイルパターン部500a〜500dにはそれぞれ、コイル導体502a〜502dが設けられている。コイル導体502a〜502dは、アンテナコイルを構成している。
【0004】
また、実装部501には、硬質な回路基板600が実装されている。更に、回路基板600には、アンテナコイルを介して外部機器と信号の送受信を行うための通信機能を含む半導体素子602が実装されている。以上のようなフレキシブルシート500は、図7の点線L1〜L4(点線L3は、回路基板600と重なっているので実線で表記)にて折り曲げられて、コンパクトに折りたたまれた状態で電子機器等に搭載される。そして、フレキシブルシート500は、アンテナコイルを介して、外部機器と非接触で通信を行って、信号のやり取りを行う。
(中略)
【0013】
(回路基板及び回路モジュールの構成)
以下に、本発明の一実施形態に係る回路基板及び回路モジュールの構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板10の外観斜視図である。図2は、図1の回路基板10を備えた回路モジュール100の外観斜視図である。図3は、図1の回路基板10の分解斜視図である。図4は、図2の回路モジュール100が電子機器に搭載されるときの状態を示した図である。以下では、回路基板10の作製時に絶縁体層が積層される方向を積層方向と定義する。そして、積層方向をz軸方向と定義し、回路基板10の長手方向をx軸方向と定義する。また、x軸方向とz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
(中略)
【0022】
次に、基板部12bについて説明する。絶縁体層30(30a〜30c)の基板部層52(52a〜52c)が重ねられることにより構成されている。また、基板部12bには、図1ないし図3に示すように、レジスト膜16(図3では省略)、外部電極18,20,22、配線導体32(32a〜32c)、グランド導体40及びビアホール導体b1,b3,b5〜b9が設けられている。
【0023】
外部電極18は、図2の集積回路102がはんだ等により実装される電極であり、図3に示すように、基板部層52aの表面において長方形状に並ぶように複数設けられている。外部電極20,22はそれぞれ、図2のチップ部品104,106が実装される電極であり、基板部層52aの表面において所定の間隔を空けた状態で2つ並ぶように設けられている。
【0024】
配線導体32a〜32cはそれぞれ、基板部層52a〜52cの表面に設けられている線状導体である。また、配線導体32aは、外部電極18,20,22のいずれかに対して接続されている。ビアホール導体b1は、基板部層52aをz軸方向に貫通しており、配線導体32aと配線導体32bとを接続している。ビアホール導体b6は基板部層52bをz軸方向に貫通しており、配線導体32bと配線導体32cとを接続している。
【0025】
また、ビアホール導体b3は、基板部層52aをz軸方向に貫通しており、配線導体32aとコイル導体36bとを接続している。ビアホール導体b5,b7はそれぞれ、基板部層52b,52cをz軸方向に貫通しており、互いに接続されることにより、配線導体32aとコイル導体36cとを接続している。以上のように、アンテナコイルLは、図3に示すように、配線導体32a〜32c及びビアホール導体b1,b3〜b7を介して、集積回路102及びチップ部品104,106に対して電気的に接続されている。
【0026】
グランド導体40は、基板部層52bの表面の略全面を覆うように設けられ、グランド電位が印加される。グランド導体40は、絶縁体層30よりも硬い材料により作製されているので、絶縁体層30よりも撓みにくい。よって、基板部12bは、グランド導体40が設けられていることにより、基板部12aよりも変形しにくい構造を有している。更に、グランド導体40は、配線導体32bと短絡しないように、配線導体32bの周囲には設けられていない。以上のようなグランド導体40は、基板部層52aをz軸方向に貫通しているビアホール導体b8により配線導体32aに対して接続されている。
【0027】
ビアホール導体b9は、基板部層52aをz軸方向に貫通しており、配線導体32aと配線導体34b(詳細は後述)とを接続している。
(中略)
【0033】
以上のように構成された回路基板10には、図2に示すように、集積回路102、チップ部品104,106がそれぞれ、基板部12bの表面の外部電極18,20,22上に実装される。これにより、集積回路102、チップ部品104,106は、配線導体32a〜32cと電気的に接続される。また、コネクタ108が、基板部12cの表面の外部電極24上に実装される。これにより、コネクタ108は、配線導体34bと電気的に接続される。以上のように、回路基板10、集積回路102、チップ部品104,106及びコネクタ108は、回路モジュール100を構成している。集積回路102は、例えば、アンテナコイルLの送受信信号を処理する回路である。また、チップ部品104,106は、例えば、コンデンサ、コイル又はこれらからなるノイズフィルタである。


イ.図面
「【図3】



(2)甲11技術
ア.上記段落0001、0022、0033によると、アンテナコイルを備えた回路基板10において、チップ部品が実装される複数の外部電極18、20、22と、コネクタが実装される複数の外部電極24とを設けることが記載されているといえる。
イ.上記図3によると、上記複数の外部電極24は所定の方向に並ぶように設けられ、また、上記複数の外部電極18、20、22は、上記所定の方向とは異なる方向に並ぶように設けられていることが見て取れる。
ウ.以上によると、甲11には次の技術(以下、「甲11技術」という。)が記載されていると認められる。

「アンテナコイルを備えた回路基板10において、チップ部品が実装される複数の外部電極18、20、22と、コネクタが実装される複数の外部電極24とを設け、上記複数の外部電極24は所定の方向に並ぶように設けられ、また、上記複数の外部電極18、20、22は、上記所定の方向とは異なる方向に並ぶように設けられていること。」

12 甲12
(1)甲12に記載された事項
甲12には、次の記載がある。
ア.明細書
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は給電可能な電源基板等の複数のプリント基板を備えた遊技機に関し、特にプリント基板に形成された導体パターンのうちの接地用のグランドパターンの厚みを厚くして接地効果を高めるようにしたものに関する。
(中略)
【0013】
【課題を解決するための手段】 請求項1の遊技機は、遊技制御の制御内容に応じて夫々独立のプリント基板に構成された複数の制御用基板と、これらの制御用基板に電力を供給する電源基板と、複数の制御用基板および電源基板に、電子部品と導電性材料により形成された導体パターンとを備えた遊技機において、複数の制御用基板および電源基板のうちの少なくとも1つのプリント基板の導体パターンの厚みを、そのプリント基板以外のプリント基板の導体パターンの厚みよりも厚く形成したものである。
(中略)
【0030】これらケース41a,41bの下側で裏機構板30に装着されたケース44の内部には、電源基板45と払出し制御基板46が夫々設けられている。更に、発射手段10の後側に装着されたケース47の内部には、発射制御基板48が設けられている。これら制御基板39〜40,42〜43,45〜46,48は夫々独立のプリント基板で構成されており、電源基板45と発射制御基板48とを除く制御基板39,40,42,43,46には、CPUとROMやRAM等を有する1チップ集積回路からなるマイクロコンピュータ(図示略)が夫々設けられている。
(中略)
【0047】前記実施形態の変更形態について説明する。
1〕図9に示すように、電源基板45Aの表面の導体パターン57Aと裏面の導体パターン58Aの厚みを、電源基板45A以外の制御基板39,40,42,43,46の導体パターンの厚み(例えば、約18μm)よりも厚く(例えば、約35μm)形成するようにしてもよい。
【0048】この場合にも、前記実施形態と同様に、その厚みに応じてグランドパターン57bの容積を充分に大きくでき、グランドパターン57bのインピーダンスを小さくできる為、グランドパターン57bで吸収した静電誘導や電磁誘導等によるノイズの信号線パターン57aへの放射又は流入を効果的に抑制することができ、ノイズ対策を強化することができる。」

(2)甲12技術
ア.上記段落0001、0013によると、制御用基板と電源用基板とを備えた遊技機が記載されているといえる。
イ.上記段落0047、0048の記載によると、上記電源用基板の表面と裏面との導体パターンの厚みを、制御用基板の導体パターンの厚みよりも厚く形成することで、電源用基板のグランドパターンで吸収した静電誘導や電磁誘導等によるノイズの信号線パターンへの放射又は流入を抑制するものであるといえる。
ウ.以上によると、甲12には次の技術(以下、「甲12技術」という。)が記載されていると認められる。

「制御用基板と電源用基板とを備えた遊技機において、電源用基板の表面と裏面との導電パターンの厚みを、制御用基板の導体パターンの厚みよりも厚く形成することで、電源用基板のグランドパターンで吸収した静電誘導や電磁誘導等によるノイズの信号線パターンへの放射又は流入を効果的に抑制すること。」

第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア.甲1発明の「電源端子751、761を有する給電コネクタ75、76」は、本件特許発明1の「電源端子を有するコネクタ」に相当する。
イ.本願出願時の技術常識によると、パワー基板とは、入力された電力を所定の出力電力に変換する電力変換回路が設けられた基板であるところ、甲1発明の「モータ電流が通電される駆動部品が実装されたパワー基板であって、上記電源端子751、761を介して電力が入力される第1基板21」は、モータを駆動するために、入力された電力を所定の電力に変換するための電力変換回路が設けられた基板であると解される。
そうすると、甲1発明の「モータ電流が通電される駆動部品が実装されたパワー基板であって、上記電源端子751、761を介して電力が入力される第1基板21」は、本件特許発明1の「前記電源端子を介して入力される入力電力を所定の出力電力に変換する電力変換回路が設けられた第1基板」に相当する。
ウ.甲1発明の「制御部品が実装された制御基板である第2基板22」は、本件特許1の「制御回路が設けられた第2基板」に相当する。
エ.したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

[一致点]
電源端子を有するコネクタと、
前記電源端子を介して入力される入力電力を所定の出力電力に変換する電力変換回路が設けられた第1基板と、
制御回路が設けられた第2基板と、を備えた
電子制御装置。

[相違点]
(相違点1)
本件特許発明1の「第1基板」は、内層導体を有しているのに対して、甲1発明の第1基板は内層導体を有する点が特定されていない点。

(相違点2)
本件特許発明1の「第2基板」は、内層導体を有しているのに対して、甲1発明の第2基板は内層導体を有する点が特定されていない点。

(相違点3)
本件特許発明1の「前記第1基板の内層導体の厚みは、前記第2基板の内層導体の厚みよりも厚い」のに対して、甲1発明では当該事項が特定されていない点。

(2)相違点についての検討
事案の内容に鑑み、上記相違点1〜3についてまとめて検討する。
甲2技術〜甲9技術に示されているように、所定の回路が設けられた基板に内層導体を設けることは、周知技術であるといえることからすると、甲1発明の第1基板、あるいは、第2基板に内層導体を設けることは、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。(相違点1、2)
ここで、甲2技術、甲8技術、甲9技術は、大電流が流れる厚い内層導体と小電流が流れる薄い内層導体との両方を、一つの基板に設ける技術であるところ、本願出願時の技術常識を参酌しても、甲1発明に上記周知技術を適用して、第1基板と第2基板との両方に内層導体を設けた上で、異なる基板である第1基板と第2基板とのそれぞれに、当該甲2技術、甲8技術、または、甲9技術を部分的に適用して、大電流が流れる厚い内層導体を第1基板に設け、かつ、小電流が流れる薄い内層導体を第2基板に設けるようにする動機付けがあるとはいえない。
また、甲12技術は、遊技機におけるノイズ対策を目的とした基板表面のグランドパターンに関するものであって、電動パワーステアリング装置に用いられる駆動装置に関する甲1発明とは技術分野が異なるものであるから、甲1発明の第1基板及び第2基板に、甲12技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、甲1発明に上記周知技術を適用し、更に甲2技術、甲8技術、甲9技術、または、甲12技術を適用する動機付けは認められない。(相違点3)
加えて、仮に、甲1発明に、甲2技術、甲8技術、甲9技術、または、甲12技術を適用することができるとしても、本件特許発明1の相違点3に係る構成に至るためには、甲1発明に対して上記周知技術を適用して、第1基板及び第2基板の両方に内層導体を設けるように構成した上で、さらに、甲2技術、甲8技術、甲9技術、または、甲12技術に基づいて上記相違点3に係る構成を付加することが必要であるから、当業者といえども容易に発明をすることができたものとはいえない。
そして、甲10技術、甲11技術は、上記相違点3に係る構成に関するものではないことは明らかである。
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2技術〜甲12技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、次の旨を主張している。
「・・電流(電力)を多く供給する導体層の厚みを、電流(電力)の供給量が少ない導体層の厚みよりも厚くすることについては、甲8,9,12にも記載されているように周知の技術である。
(中略)
・・相違点3は、『本件特許発明においては、電力が多く供給される第1基板の内層導体の厚みは、電力の供給量が少ない第2基板の内層導体の厚みに比べて、厚くしたのに対して、甲1発明においてはその点の特定がない点』であることに他ならない。
そうすると、相違点3に係る『電力が多く供給される第1基板の内層導体の厚みは、電力の供給量が少ない第2基板の導体の厚みに比べて、厚くする』構成については、甲1発明に、甲2〜甲4、並びに、甲5〜甲7の周知技術を採用して、第1基板及び第2基板がそれぞれ内層導体を有する構成とした上で、甲8,9,12にも記載されている上記の周知技術を適用し、「電力が多く供給される第1基板の内層導体の厚みは、電力の供給量が少ない第2基板の導体の厚みに比べて、厚くする」構成を導出することは当業者が容易に想到し得たことである。」(特許異議申立書第56頁「a−3−4 相違点3についてのまとめ(小括)」)
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、甲1発明に対して、上記周知技術を適用した上で、甲2技術、甲8技術、甲9技術、または、甲12技術を適用する動機付けはなく、仮に、甲1発明に甲2技術、甲8技術、甲9技術、または、甲12技術を適用することができるとしても、本件特許発明1の相違点3に係る構成に至るためには、甲1発明に対して上記周知技術を適用して、第1基板及び第2基板の両方に内層導体を設けるように構成した上で、さらに、甲2技術、甲8技術、甲9技術、または、甲12技術に基づいて上記相違点3に係る構成を付加することが必要であるから、当業者といえども容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

2 本件特許発明2〜11について
本件特許発明2〜11は、本件特許発明1の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものであるから、上記1で説示したとおり、本件特許発明1が、甲1発明及び甲2技術〜甲12技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない以上、本件特許発明2〜11についても同様に、甲1及び甲2技術〜甲12技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1〜11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-08-22 
出願番号 P2021-548423
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 林 毅
特許庁審判官 脇岡 剛
吉田 美彦
登録日 2022-11-01 
登録番号 7169458
権利者 日立Astemo株式会社
発明の名称 電子制御装置  
代理人 弁理士法人信友国際特許事務所  

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