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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B60C
管理番号 1401712
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-05-23 
確定日 2023-09-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第7178254号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7178254号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第7178254号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年12月20日を出願日とする特許出願であって、令和4年11月16日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年5月23日に特許異議申立人 久門 享(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされたものである。

第2 本件特許発明

本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
タイヤ幅方向に対して傾斜して互いに交差する第1溝と第2溝によって区画されたブロックを複数含むトレッド部を備える空気入りタイヤであって、
前記トレッド部のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有し、
前記ブロックには、複数の第1サイプと複数の第2サイプとを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなり、前記第1サイプと前記第2サイプが交互に配置され、長さが不統一のサイプ群が形成されており、
前記第1サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第1サイプの開口端部では前記第1サイプの中央部に比べて深さが小さく、
前記第2サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第2サイプの開口端部では前記第2サイプの中央部に比べて深さが小さく、且つ前記第1サイプの開口端部に比べても深さが小さく、
タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に前記第2サイプが配置されており、
前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部の深さが一律に設定されている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ブロックは、センターブロック及びクォータブロックの一方、又は、両方のブロックに該当し、
前記センターブロックは、タイヤ赤道と重なる位置に設けられ、又は、前記タイヤ赤道と重なる位置に配置された溝に隣接して設けられ、
前記クォータブロックは、前記センターブロックと、タイヤ幅方向最外側に設けられたショルダーブロック又はショルダーリブとの間に設けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記空気入りタイヤは氷雪路用タイヤである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。」

第3 特許異議申立理由の概要

特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

なお、申立理由1の具体的理由は、おおむね次のとおりである。

明細書の【0058】(【表1】)の実施例4ではドライ操縦安定性能の評価値が98であり、この値は基準となる比較例1の値(100)よりも低いにも関わらず、請求項1には実施例4の範囲にまで及びゴム硬度が規定されている。

2 申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3 証拠方法

・甲第1号証:特開2000−108615号公報
・甲第2号証:特開2017−19502号公報
・甲第3号証:欧州特許第3383671号明細書
・甲第4号証:特開2005−119415号公報
・甲第5号証:特開2013−132983号公報
上記の証拠の表記については、おおむね、特許異議申立書における記載にしたがった。

第4 当審の判断

以下のとおり、当審は、特許異議申立理由はいずれもその理由がないものと判断する。

1 申立理由1(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2) サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「ブロック剛性の最適化を図り、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤを提供すること」(【0006】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の空気入りタイヤは、ブロックを複数含むトレッド部を備える空気入りタイヤであって、前記トレッド部のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有し、前記ブロックには、第1サイプと第2サイプとを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなるサイプ群が形成されており、前記第1サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第1サイプの開口端部では前記第1サイプの中央部に比べて深さが小さく、前記第2サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第2サイプの開口端部では前記第2サイプの中央部に比べて深さが小さく、且つ前記第1サイプの開口端部に比べても深さが小さく、タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に前記第2サイプが配置されており、前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部の深さが一律に設定されている」(【0007】)ことが記載され、「トレッド面のゴム硬度を50度以上と、適度に高く設定することで、ブロック剛性を過度に低下させない。これにより、乾燥路面での操縦安定性能を確保できる。50度以上のゴム硬度を有するトレッド面を使用することで、ブロック剛性が高まり、乾燥路面での操縦安定性能を確保しやすい。さらに、ブロックを倒れにくくすることでエッジ効果が高まり、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる」(【0008】)こと、「サイプの開口端部におけるサイプの深さを、サイプの中央部におけるサイプの深さよりも小さくする。これにより、サイプの開口端部の倒れ込みを抑えて、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能、及び乾燥路面での操縦安定性能を向上させる」(【0009】)こと、「開口端部の深さが相対的に小さい第2サイプをブロックの両端部の各々に配置する。これにより、タイヤ周方向におけるブロックの両端部でのサイプの開口端部の倒れ込みを抑えて、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能、及び乾燥路面での操縦安定性能を向上させる」(【0010】)こと、「ブロックの両端部の各々に配置された第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部におけるサイプの深さを一律に設定することで、エッジ効果を適切に発揮させ、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能を向上させる」(【0011】)こと、の記載があり、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
これらの記載に接した当業者であれば、「ブロックを複数含むトレッド部を備える空気入りタイヤであって、前記トレッド部のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有し、前記ブロックには、第1サイプと第2サイプとを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなるサイプ群が形成されており、前記第1サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第1サイプの開口端部では前記第1サイプの中央部に比べて深さが小さく、前記第2サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第2サイプの開口端部では前記第2サイプの中央部に比べて深さが小さく、且つ前記第1サイプの開口端部に比べても深さが小さく、タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に前記第2サイプが配置されており、前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部の深さが一律に設定されている」との事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし3はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし3はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。

(3) 特許異議申立人の主張について
本件特許の発明の課題は、「ブロック剛性の最適化を図り、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤを提供すること」(【0006】)、すなわち、「乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ」、「氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる」ことである。
してみると、乾燥路面での操縦安定性能をおおむね維持できた上で、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させるものであればよいのであって、実施例1ないし4に示される例は何れも、ドライ操縦安定性能、耐ハイドロプレーニング性能を維持しつつ(すなわち、大幅に低下されることなく)、「雪上駆動性能」及び「雪上操縦安定性能」を向上させるものであるといえる。
よって、実施例4における「ドライ操縦安定性能」、「耐ハイドロプレーニング性能」の評点が98であることに依拠する特許異議申立人の主張は、採用することができない。

(4) 申立理由1についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由1は、その理由がない。

2 申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「方向性傾斜溝を備えた乗用車用空気入りラジアル・タイヤ」について、次の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は空気入りタイヤに関するもので、特に、トレッドを中央領域と左右一対の側部領域とにほぼ三等分するように配置され、タイヤ周方向に平行またはほぼ平行に延びる一対の周方向主溝と、タイヤ周方向に間隔を置いて配置され、タイヤ周方向に傾斜した方向に延びトレッド端に開口する多数の方向性傾斜溝と、該周方向主溝と該方向性傾斜溝とによって該中央領域および該側部領域にタイヤ周方向に間隔を置いて形成された多数のブロックとをトレッドに備え、該方向性傾斜溝の溝が延びる部分のトレッド端に遠い側が先に接地して、トレッド端に近い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向が指定されている方向性トレッド・パターンを備えた全天候型空気入りタイヤに関するものである。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記のような従来技術の不具合を解消して、乾燥した路面での操縦安定性能やタイヤ騒音性能などの基本的な要求性能を低下することなく、濡れた路面を走行したときの排水性能および雪上走行時の操縦安定性能に優れた全天候型空気入りタイヤを提供することである。」

「【0018】図1に示す本発明に基づく実施例1のタイヤは、トレッドを中央領域TCと左右一対の側部領域TSとにほぼ三等分するように配置され、タイヤ周方向にほぼ平行に延びる一対の周方向主溝1と、タイヤ周方向に間隔を置いて配置され、タイヤ周方向に傾斜した方向に延びトレッド端TEに開口する多数の方向性傾斜溝2と、周方向主溝1と方向性傾斜溝2とによって中央領域TCおよび側部領域TSにタイヤ周方向に間隔を置いて形成された多数のブロック4、5とをトレッドに備えていて、方向性傾斜溝2の溝が延びる部分のトレッド端TEに遠い側が先に接地して、トレッド端TEに近い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向RDが指定されている方向性トレッド・パターンを備えた全天候型乗用車用空気入りラジアル・タイヤである。方向性傾斜溝2は、左右のトレッド端TEから、左右交互に半ピッチずれて、トレッド中央領域TCまで延び、タイヤ赤道面EPを越えた位置で相対する他方の方向性傾斜溝2に相互に開口している。トレッド側部領域TSに、タイヤ周方向に平行またはほぼ平行に延び、周方向主溝1と比べ幅が狭く、深さが浅い側部周方向溝3が配置され、側部領域TSに形成されたブロック5が内側のブロック51と外側のブロック52とに分割されている。実施例1のタイヤでは、周方向主溝1の幅は8.5mmで深さは9mmであり、側部周方向溝3の幅は3mmで深さは5.5mmである。中央領域TCおよび側部領域TSに形成されたブロック4、5には多数のサイプ7、8が形成されている。トレッド中央領域のブロック4および側部領域の内側のブロック51に形成されたサイプ7は、方向性傾斜溝2が延びる方向に対して交差する方向に延び、側部領域の外側のブロック52に形成されたサイプ8は、方向性傾斜溝2が延びる方向に対して平行またはほぼ平行に延びている。ブロック4、5に形成された多数のサイプ7、8が、ブロック中央部に形成された浅いサイプ9によって連結されている。方向性傾斜溝2の溝深さは9mmであるが、方向性傾斜溝2が、トレッド中央領域TCで相対する他方の方向性傾斜溝2に開口する近傍では、溝深さが5.5mmと浅くなっている。方向性傾斜溝2は、トレッド中央領域TCではタイヤ周方向に40乃至45度の角度で延びていて、一方、トレッド側部領域TSではタイヤ周方向に60乃至80度の角度で延びている。周方向主溝1は、図示のように、周方向に透視可能な程度の振幅でタイヤ周方向に鋸歯状に延び、この鋸歯状波のピッチが方向性傾斜溝の周方向間隔と同じである。左右一対の周方向主溝1の上記鋸歯状波は、方向性傾斜溝2の方向と同じ方向に傾斜して、タイヤ周方向に5度の角度で延びている。側部周方向溝3が周方向主溝1と平行に鋸歯状に延び、側部周方向溝3の溝幅が周方向主溝1の溝幅の35%程度である。
【0019】図2に示す実施例2のタイヤは、中央領域TCおよび側部領域TSのブロック4、5に形成されたサイプ7、8が、直線状ではなくジグザグ状に延びていることを除いて、上記実施例1のタイヤとほぼ同じである。」






イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に【0018】及び【図1】の記載についてまとめると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。

「トレッドを中央領域TCと左右一対の側部領域TSとにほぼ三等分するように配置され、タイヤ周方向にほぼ平行に延びる一対の周方向主溝1と、タイヤ周方向に間隔を置いて配置され、タイヤ周方向に傾斜した方向に延びトレッド端TEに開口する多数の方向性傾斜溝2と、周方向主溝1と方向性傾斜溝2とによって中央領域TCおよび側部領域TSにタイヤ周方向に間隔を置いて形成された多数のブロック4、5とをトレッドに備えていて、方向性傾斜溝2の溝が延びる部分のトレッド端TEに遠い側が先に接地して、トレッド端TEに近い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向RDが指定されている方向性トレッド・パターンを備えた全天候型乗用車用空気入りラジアル・タイヤ。」(以下、「甲1発明」という。)

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「方向性傾斜溝2」は、本件特許発明1の「タイヤ幅方向に対して傾斜して互いに交差する第1溝と第2溝」に相当する。
すると、甲1発明の「周方向主溝1と方向性傾斜溝2とによって中央領域TCおよび側部領域TSにタイヤ周方向に間隔を置いて形成された多数のブロック4、5とをトレッドに備えてい」る「空気入りラジアル・タイヤ」は、本件特許発明1の「タイヤ幅方向に対して傾斜して互いに交差する第1溝と第2溝によって区画されたブロックを複数含むトレッド部を備える」「空気入りタイヤ」に相当する。
してみると、両者は、
「タイヤ幅方向に対して傾斜して互いに交差する第1溝と第2溝によって区画されたブロックを複数含むトレッド部を備える空気入りタイヤ。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1は「前記トレッド部のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有し」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

(相違点2)
空気入りタイヤのトレッド部に備えるブロックに関し、本件特許発明1は「前記ブロックには、複数の第1サイプと複数の第2サイプとを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなり、前記第1サイプと前記第2サイプが交互に配置され、長さが不統一のサイプ群が形成されており、前記第1サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第1サイプの開口端部では前記第1サイプの中央部に比べて深さが小さく、前記第2サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第2サイプの開口端部では前記第2サイプの中央部に比べて深さが小さく、且つ前記第1サイプの開口端部に比べても深さが小さく、タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に前記第2サイプが配置されており、前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部の深さが一律に設定されている」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
甲第1号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1発明において、相違点2に係る本件特許発明1で特定されるような、サイプの深さ条件を満足する2種類のサイプをブロックに特定の配置で設けることを示唆する記載はない。
そして、本件特許発明1は、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、「ブロック剛性の最適化を図り、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤを提供する」との、格別の効果を奏するものである。

この点について、特許異議申立人は、甲第3号証ないし甲第5号証を提示しつつ、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項のようなサイプを設けることは容易である旨主張する。
しかしながら、甲第3号証ないし甲第5号証は何れも、甲第1号証とはそもそもトレッドパターンが異なる(甲第4号証及び甲第5号証においては、「傾斜溝」に相当する溝すらない。)上に、目的も異なるものであるから、甲1発明において、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された技術事項をあわせて適用する動機付けはない。
そして、上記検討のとおり、本件特許発明1は、その特定事項を満たすことにより、全ての証拠に比して、格別の効果を奏するものである。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、何れも、本件特許発明1の発明特定事項を直接又は間接的に引用して特定するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含むものである本件特許発明2及び3また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3) 申立理由2についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。

第5 結語

以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-08-25 
出願番号 P2018-238238
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60C)
P 1 651・ 537- Y (B60C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 磯貝 香苗
特許庁審判官 中村 和正
植前 充司
登録日 2022-11-16 
登録番号 7178254
権利者 TOYO TIRE株式会社
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 弁理士法人ユニアス国際特許事務所  

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