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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1401713
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-05-25 
確定日 2023-08-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第7180935号発明「液状飲料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7180935号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7180935号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和4年2月17日(優先権主張 令和3年9月14日)の出願であって、令和4年11月21日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年5月25日に特許異議申立人 伊澤 武登(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1及び2)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
成分A,成分B、成分C及び成分Dを含有する液状の飲料組成物であって、
前記成分Aは水溶性核蛋白であり、
前記成分BはDNAの水溶性塩であり、核蛋白から抽出され、
前記核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNAの水溶性塩(成分B1)と、
前記核蛋白内のDNAの分子量を酵素反応で低減して得られるDNAの水溶性塩(成分B2)とを含み、
前記成分B1と前記成分B2の合計重量に対して前記成分B2が10重量%以上であり、
前記成分CはRNAの水溶性塩であり、
前記成分Dは水分であり、
前記成分A及び前記成分Bの配合比は、
前記成分A100重量部に対して、前記成分Bが20〜300重量部であり、
前記飲料組成物中、前記成分A、B及びCの合計配合量が2〜50重量%である液状の飲料組成物(但し、
前記成分A、B、C及びDの混合物を混合物X、
ニンニクレクチンを含有する混合物を混合物Y1、
メシマコブを含有する混合物を混合物Y2、及び、
ニンニクレクチン及びメシマコブを含有する混合物を混合物Y3としたときに、
前記飲料組成物が、
前記混合物Xと前記混合物Y1とを混合して得られた場合;
前記混合物Xと前記混合物Y2とを混合して得られた場合;並びに、
前記混合物Xと前記混合物Y3とを混合して得られた場合である態様を除く)。
【請求項2】
前記成分A,前記成分B及び前記成分Cを前記成分Dに溶解させる工程を含み、
前記工程が以下の工程1〜4から選ばれる1以上の工程含む請求項1記載の液状の飲料組成物の製造方法:
(工程1)
前記成分A100重量部に対して、
前記成分Cの配合量を50〜500重量部にして、
前記成分A、B及びCをそれぞれ主成分として含む原料を前記成分Dに添加して、攪拌して溶解する工程;
(工程2)
前記成分A、B及びCをそれぞれ主成分として含む原料を、pHの高い又は低い順に、前記成分Dに添加して、攪拌して溶解する工程;
(工程3)
前記成分A、B及びCをそれぞれ主成分として含む原料を混合して、前記成分Dに添加して、前記成分A〜Dの混合液を、温度30〜95℃で溶解する工程;
(工程4)
前記成分A、B及びCをそれぞれ主成分として含む原料を混合して、前記成分Dに添加して、前記A〜Dの混合液を、pH4.0以上で攪拌して溶解する工程。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年5月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)実施例と比較例に対するサポート要件
数々の実施例や製造例が示されているものの、比較例も特許請求の範囲で規定された数値範囲に包含されており、数値限定に特段の技術的意義を見出すことは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)といえどもできない。
特許請求の範囲で規定された数値範囲を充足する比較例1−1〜比較例1−3の「液体状態」がなぜ×になったのか不明であるし、また、実施例の「液体状態」がなぜ○になったのかも不明である。
そうすると、本件特許発明1の構成で、課顆が解決できると認識することは困難であり、サポート要件を満たさない。

(2)本件特許発明2の(工程2)のサポート要件
表2で示された液体状態が○となる効果は、pH調整剤の効果であるとも考えられ、本件特許発明2の(工程2)により奏された効果、すなわち、解決すべき課題が達成されたと認識することができない。
しかも、pHが低い順に添加する実施例は、本件明細書に開示されておらず、当業者といえども本件明細書の記載から解決すべき課題が達成されたと認識することができない。
本件特許発明2の(工程2)は「pHの高い又は低い順に」という全く逆方向の添加を包含する発明であり、逆方向で同じ課題が達成できると認識することはできない。

2 申立理由2(明確性要件)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)成分B1のDNAの分子量
本件特許発明1の「前記核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNAの水溶性塩(成分B1)」とは、如何なる意味として使われているのか不明である。つまり、技術常識どおりの分子量660万なのか、本件特許発明1の実施例で使われたB1成分である「『DNA−Na』((有)バイオケム製)」の「分子量数万くらい」(甲3)を含むのか特定できないから明確性違反である。

(2)重量%
本件特許の発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載されたような重量%を求める式の根拠が不明である。百歩譲って、特許権者の所有する試料が上記数式を満たすとしても、成分Aは様々な会社から販売されており、あらゆる会社から販売されている成分Aが上記数式を満たすという根拠が分からない。
当業者は、この手法とは別の手法により求めた成分Aの重量%と本件特許明細書の記載の手法により求めた成分Aの重量%が異なるとき、何れを採用するのか分からず、特許請求の範囲に記載の発明を明確に理解することができない。
よって、本件の請求項1及び請求項2は明確性を欠く。

3 申立理由3(実施可能要件
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

上記2(2)で指摘した点で、本件明細書の記載も根拠不明な手法により重量%を求めるものであり、実施可能要件を満たさない。

4 申立理由4(甲第1号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、特許異議申立人は、進歩性違反として、第1の理由及び第2の理由を挙げているが、いずれも、甲第1号証を主引用発明とする理由であることから、まとめて申立理由4とする。

5 証拠方法
甲第1号証:FORDAYS、「ナチュラル DNコラーゲン」(瓶のロゴマークは「NATURAL DNA COLLAGEN」と記してある。)の商品紹介サイト、インターネットアーカイブ、収録日2019年1月23日、URL:https://web.archive.org/web/20190123213341/https:/kakusan-drink.jp/
甲第2号証:Biochem.Corporation、健康食品原料、DNA−Na(デオキシリボ核酸ナトリウム)、インターネットアーカイブ、収録日2019年4月2日、URL:https://web.archive.org/web/20190402132213/http://www.biochem-jp.com/health/218/
甲第3号証:Biochem.Corporation、受託製造事例、DNA−Na(F)、インターネットアーカイブ、収録日2019年3月9日、URL:https://web.archive.org/web/20190309045729/http://www.biochem-jp.com/case/230/
甲第4号証:特開2005−130802号公報
甲第5号証:須藤慶太、「核酸を含む健康食品素材の開発と機能性研究」、Medical Sciecne Digest,Vol. 45 (1)、2019、p. 58〜63
甲第6号証:特開2005−245394号公報
甲第7号証:厚生労働省、「食品別の規格基準について」、URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/jigyousya/shokuhin_kikaku/index.html
甲第8号証:厚生労働省、「清涼飲料水」、URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000832226.pdf
甲第9号証:Biochem.Corporation、健康食品原料、RNA(酵母リボ核酸)、インターネットアーカイブ、収録日2021年5月18日、 URL:https://web.archive.org/web/20210518020637/http://www.biochem-jp.com/health/224/
甲第10号証:Biochem.Corporation、受託製造事例、水溶性ヌクレオプロテイン(水溶性白子核タンパク)、インターネットアーカイブ、収録日2019年3月9日、URL:https://web.archive.org/web/20190309034701/http://www.biochem-jp.com/case/234/
甲第11号証:Biochem.Corporation、受託製造事例、RNA(W)、インターネットアーカイブ、収録日2019年3月9日、URL: https://web.archive.org/web/20190309030159/http://www.biochem-jp.com/case/232/
甲第12号証:運営会社WDB株式会社、研究ネット、「研究用語辞典 RNA精製とは」、最終更新日2023年4月17日、URL:https://www.wdb.com/kenq/dictionary/rna-purification#:~:text=DNA%E3%82%84RNA%E3%81%AF%E9%85%B8%E6%80%A7,%E6%BA%B6%E3%81%91%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(当審注:「#:」と「:text」の間の「~」は上付き半角の「〜」である。)
甲第13号証:西則雄、「プロタミンの抗菌性について」、高分子、38巻、3月号、1989年、p. 217
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
他方、本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0001】ないし【0013】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題は、「水溶性核蛋白、DNAの水溶性塩、RNAの水溶性塩を全て含有する液状飲料組成物」を提供することであり、本件特許発明2の解決しようとする課題は「水溶性核蛋白、DNAの水溶性塩、RNAの水溶性塩を全て含有する液状飲料組成物の製造方法」を提供することである(以下、総称して、「発明の課題」という。)。
そして、発明の詳細な説明の【0014】、【0018】、【0042】、【0044】、【0052】、【0066】、【0072】、【0079】及び【0088】には本件特許発明1及び2に対応する記載がある。
また、発明の詳細な説明の【0078】には「成分A及びBの配合比は、本発明1の液状性の観点から、より好ましくは、
成分A100重量部に対して、
成分Bが、20〜300重量部、好ましくは25〜250重量部、より好ましくは30〜200重量部、更に好ましくは35〜150重量部、更に好ましくは40〜130重量部、更に好ましくは50〜120重量部、である。」と記載され、同【0084】には「本発明1の液状性及び栄養バランスの観点から、
本発明1中、成分A〜Cの合計の配合量は、好ましくは2〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%、更に好ましくは4〜15重量%、更に好ましくは5〜12重量%、更に好ましくは6〜10重量%である。」と記載されている。
さらに、発明の詳細な説明の【0107】ないし【0127】には、「成分A,成分B、成分C及び成分Dを含有する液状の飲料組成物であって、
前記成分Aは水溶性核蛋白であり、
前記成分BはDNAの水溶性塩であり、
前記成分CはRNAの水溶性塩であり、
前記成分Dは水分であり、
前記成分A及び前記成分Bの配合比は、
前記成分A100重量部に対して、前記成分Bが20〜300重量部であり、
前記飲料組成物中、前記成分A、B及びCの合計配合量が2〜50重量%である」という事項を有する実施例において、浮遊物及び沈殿物が認められずに透明であることを確認する記載がある。
そうすると、当業者は、「成分A,成分B、成分C及び成分Dを含有する液状の飲料組成物であって、
前記成分Aは水溶性核蛋白であり、
前記成分BはDNAの水溶性塩であり、
前記成分CはRNAの水溶性塩であり、
前記成分Dは水分であり、
前記成分A及び前記成分Bの配合比は、
前記成分A100重量部に対して、前記成分Bが20〜300重量部であり、
前記飲料組成物中、前記成分A、B及びCの合計配合量が2〜50重量%である液状の飲料組成物」及び該「飲料組成物」の「製造方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1は、当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる「飲料組成物」をさらに限定したものであり、本件特許発明2は、当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる「飲料組成物」の「製造方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由1における主張について検討する。

ア 申立理由1の(1)について
「液状の飲料」とは、発明の詳細な説明の【0008】によると「溶解性が不安定であり、不溶物が沈殿又は浮遊したり、流動性のないゲル状態になったり」しない「飲料」を意味するものであるところ、本件特許発明1は「液状の飲料組成物」と特定されている。
そうすると、仮に、比較例1−1ないし1−3の「液体状態」がなぜ「×」になったのか不明であり、実施例の「液体状態」がなぜ「○」になったのか不明であるとしても、本件特許発明1が当業者が発明の課題を解決できると認識できるものであることは明らかである。
したがって、特許異議申立人の申立理由1の(1)の主張は採用できない。

イ 申立理由1の(2)について
本件特許発明2は請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1を製造する方法の発明であるから、本件特許発明1が当業者が発明の課題を解決できると認識できるものである以上、本件特許発明2も当業者が発明の課題を解決できると認識できるものであることは明らかである。
また、「pH調整剤」を添加しない場合や、pHが低い順に各成分を添加した場合には、発明の課題を解決できないとする証拠が示されている訳でもない。
したがって、特許異議申立人の申立理由1の(2)の主張は採用できない。

(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。

2 申立理由2(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1及び2の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由2における主張について検討する。

ア 申立理由2の(1)の主張について
本件特許の請求項1の「前記核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNAの水溶性塩(成分B1)」という記載における「DNAの水溶性塩(成分B1)」は、文字どおり、「核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出された」ものを意味することは明らかである。
したがって、特許異議申立人の申立理由2の(1)の主張は採用できない。

イ 申立理由2の(2)の主張について
発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】に記載された計算手法における「濃度XA」は「成分A含有組成物中」の成分Aの濃度であって、「飲料組成物中」の成分Aの配合量ではない。
また、発明の詳細な説明の【0045】ないし【0048】に記載された計算手法における「濃度XB」は「成分B含有組成物中」の成分Bの濃度であって、「飲料組成物中」の成分Bの配合量ではない。
すなわち、発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載された計算手法は、本件特許発明1及び2の発明特定事項とは直接は関係がなく、これらの計算手法の根拠が不明だとしても、本件特許発明1及び2が明確でないということにはならない。
また、仮に、発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載された計算手法が、本件特許発明1及び2の発明特定事項と何らかの関係があったとしても、当業者は発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載された計算手法で計算することは明らかであるから、これらの計算手法の根拠が不明だとしても、本件特許発明1及び2が明確でないということにはならない。
したがって、特許異議申立人の申立理由2の(2)の主張は採用できない。

(4)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。

3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件特許発明1は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。また、本件特許発明2は物を生産する発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。

(2)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明の【0017】ないし【0106】には、本件特許発明1及び2の各発明特定事項について、その技術的意義を含め具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0107】ないし【0127】には、本件特許発明1及び2の実施例について、具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえ、また、本件特許発明2の使用をし、それにより生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1及び2に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由3における主張について検討する。
上記2(2)のとおり、発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載された計算手法は、本件特許発明1及び2の発明特定事項とは直接は関係がなく、これらの計算手法の根拠が不明だとしても、本件特許発明1及び2が実施可能でないということにはならない。
また、仮に、発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載された計算手法が、本件特許発明1及び2の発明特定事項と何らかの関係があったとしても、当業者は発明の詳細な説明の【0032】ないし【0035】及び【0045】ないし【0048】に記載された計算手法で計算することは明らかであるから、これらの計算手法の根拠が不明だとしても、本件特許発明1及び2が実施可能でないということにはならない。
したがって、特許異議申立人の申立理由3における主張は採用できない。

(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。

4 申立理由4(甲1に基づく進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「ナチュラル DN コラーゲン」に関して、おおむね次の記載がある。

・「





」(第1ないし5ページ)

イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1発明」及び「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「核酸(DNA・RNA)・核タンパク質を水溶化して配合した清涼飲料水であって、DNA含有サケ白子抽出物をベースにRNA含有酵母抽出物などを配合した清涼飲料水。」

<甲1製法発明>
「甲1発明の製造方法。」

(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「清涼飲料水」に含まれる成分からみて、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「成分A,成分B、成分C及び成分Dを含有する液状の飲料組成物であって、
前記成分Aは水溶性核蛋白であり、
前記成分BはDNAの水溶性塩であり、核蛋白から抽出され、
前記成分CはRNAの水溶性塩であり、
前記成分Dは水分である、液状の飲料組成物(但し、
前記成分A、B、C及びDの混合物を混合物X、
ニンニクレクチンを含有する混合物を混合物Y1、
メシマコブを含有する混合物を混合物Y2、及び、
ニンニクレクチン及びメシマコブを含有する混合物を混合物Y3としたときに、
前記飲料組成物が、
前記混合物Xと前記混合物Y1とを混合して得られた場合;
前記混合物Xと前記混合物Y2とを混合して得られた場合;並びに、
前記混合物Xと前記混合物Y3とを混合して得られた場合である態様を除く)。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては「前記核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNAの水溶性塩(成分B1)と、
前記核蛋白内のDNAの分子量を酵素反応で低減して得られるDNAの水溶性塩(成分B2)とを含み、
前記成分B1と前記成分B2の合計重量に対して前記成分B2が10重量%以上であり」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。

<相違点2>
本件特許発明1においては「前記成分A及び前記成分Bの配合比は、
前記成分A100重量部に対して、前記成分Bが20〜300重量部であり」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。

<相違点3>
本件特許発明1においては「前記飲料組成物中、前記成分A、B及びCの合計配合量が2〜50重量%である」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。

イ 判断
相違点1について検討する。
甲1には、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項、特に「前記成分B1と前記成分B2の合計重量に対して前記成分B2が10重量%以上」という発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、相違点1に関して、特許異議申立書において、次のとおり主張する。なお、摘記に際し、空白行は省略した。

・「仮に、(要件1D)で規定されるDNAが「分子量数万くらい」を含むのであれば、甲1発明のDNAは「水溶化できるぐらいの高分子核酸(ポリヌクレオチド)が含まれたサケ白子抽出物をミックスしたもの」だから、相違点1は一致点となる。
また、仮に、(要件1D)のとおり、「核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNA」であるとするなら、甲6の要約の欄や[0008]に、「魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素処理する工程」により得た「高分子量二本鎖DNA塩抽出・精製方法」の発明が記載されている。甲6の[0003]に「そしてこれらの核酸の有する作用に鑑み、健康食品、化粧品、医薬品等の原料として、核酸の用途が拡大している。」と記載がある。
そうすると、甲1発明において、白子を原料とする「(SME1)高純度の高分子型核酸」又は「(SME2)高分子型核酸」のいずれか一方に、甲6の「DNAが分解しない条件下」で得た「高分子量二本鎖DNA」を採用することで本件発明1のように構成することに困難性はない。」(当審注:「(要件1D)」は「前記核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNAの水溶性塩(成分B1)と」という本件特許発明1の発明特定事項のことである。)(特許異議申立書第16ページ第3ないし18行)

・「本件発明1は、配合量の関係により奏される効果にサポートが無い。本件発明1の(要件1G)、(要件1J)及び(要件1K)の技術的意義は不明又は技術的意義が無いと言わざるを得ない。よって、サポートがない数値限定は単なる設計的事項といえる。・・・(略)・・・よって、甲1発明において、相違点2に示した本件発明1の配合とすることは、水溶性や健康ドリンクとしての機能を追い求めるため、審査基準でいうところの「実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮」に過ぎず、進歩性を有さない。」(当審注:「(要件1G)」、「(要件1J)」及び「(要件1K)」はそれぞれ「前記成分B1と前記成分B2の合計重量に対して前記成分B2が10重量%以上であり」、「前記成分A100重量部に対して、前記成分Bが20〜300重量部であり」及び「前記飲料組成物中、前記成分A、B及びCの合計配合量が2〜50重量%である液状の飲料組成物」という本件特許発明1の発明特定事項のことである。)(特許異議申立書第17ページ第18行ないし第18ページ第2行)

そこで、上記主張について検討する。
仮に、特許異議申立人が主張するように、甲1発明に甲6に記載された事項を適用して、「前記核蛋白内のDNAの分子量のまま抽出されたDNAの水溶性塩(成分B1)と、前記核蛋白内のDNAの分子量を酵素反応で低減して得られるDNAの水溶性塩(成分B2)とを含」むという本件特許発明1の発明特定事項を想到できたとしても、「成分B1」及び「成分2」に関する記載のない甲1から認定した甲1発明において、「成分B1」と「成分B2」に着目し、「成分B1と成分B2の合計重量に対する成分B2の比」をどのようにするかは、甲1及び6を含め、いずれの証拠にも記載されていない。
そうすると、甲1発明において、「成分B1と成分B2の合計重量に対する成分B2の比」を「10重量%以上」とすることは、単なる設計的事項であるとはいえないし、当業者の通常の創作能力の発揮であるともいえない。
したがって、甲1発明において、「前記成分B1と前記成分B2の合計重量に対して前記成分B2が10重量%以上であり」という本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
なお、上記1のとおり、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであるから、「配合量の関係により奏される効果にサポートが無い。」とはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

エ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の製造方法の発明に相当するものであるが、本件特許発明1が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるといえない以上、本件特許発明2は甲1発明の製造方法である甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(4)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。

第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-08-21 
出願番号 P2022-022531
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 植前 充司
特許庁審判官 加藤 友也
三上 晶子
登録日 2022-11-21 
登録番号 7180935
権利者 プラス・レイ株式会社
発明の名称 液状飲料組成物  
代理人 柴 大介  

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