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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1401721
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-06-08 
確定日 2023-08-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第7188651号発明「ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、及び梱包体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7188651号の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7188651号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし18に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)3月28日(優先権主張 令和3年3月31日)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月5日にその特許権の設定登録(請求項の数18)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年6月8日に特許異議申立人 笠原 佳代子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7、10、13及び15ないし18)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり、
熱機械分析(TMA)により測定される、主配向軸と直交する方向の100℃における熱収縮率(%)をSMD,100℃、主配向軸と直交する方向の130℃における熱収縮率(%)をSMD,130℃、主配向軸の方向の100℃における熱収縮率(%)をSTD,100℃、主配向軸の方向の130℃における熱収縮率(%)をSTD,130℃としたときに、|SMD,100℃−SMD,130℃|≦2.00、かつ|STD,100℃−STD,130℃|≦2.50を満たすことを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
少なくとも片面の尖り度Skuが300以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記尖り度Skuが相対的に小さい表面をa面としたときに、前記a面の顕微ラマン測定により得られる400cm−1付近のバンド半値幅が4.00cm−1以上8.00cm−1以下であることを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
前記尖り度Skuが相対的に小さい表面をa面としたときに、前記a面の表面粗さSa値が50nm以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする2種類の層(A層、B層)を少なくとも有し、前記A層中に占めるプロピレン単位の分率が、97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
示差走査熱量測定(DSC)により測定される2nd Runの融解エンタルピーΔHmから算出される、前記A層の樹脂組成物の結晶化度が、前記B層の樹脂組成物の結晶化度よりも高いことを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
前記A層に含まれるポリプロピレン系樹脂の分子量分布が15≦Mz/Mn≦36を満たすことを特徴とする、請求項5または6に記載のポリプロピレンフィルム。」
「【請求項10】
前記A層、前記B層、およびC層がこの順に位置し、一方の最表層が前記A層、他方の最表層が前記C層であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。」
「【請求項13】
前記C層がヒートシール層であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。」
「【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムと、金属及び/又は無機化合物を合計で50質量%より多く100質量%以下含む層(D層)とを有すること特徴とする、積層体。
【請求項16】
前記尖り度Skuが相対的に小さい表面をa面としたときに、前記D層が前記a面を含むA層の上に積層されていることを特徴とする、請求項15に記載の積層体。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム、及び請求項15または16に記載の積層体の少なくとも一方を有することを特徴とする、包装材。
【請求項18】
請求項17に記載の包装材により内容物が梱包されていることを特徴とする、梱包体。」

第3 申立理由の概要
令和5年6月8日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由(甲第1号証に基づく新規性
本件特許の請請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 証拠方法
甲第1号証:再公表特許WO2017/221781号
甲第2号証:国際公開第2020/137791号
甲第3号証:特公平7−119054号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「積層ポリプロピレンフィルム」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、ポリ塩化ビニリデンをコートしたポリプロピレン系フィルムに匹敵するガスバリア性を有し、低コストで加工性にも優れる、ポリプロピレン系樹脂を用いたポリプロピレンフィルム基材と無機化合物を主たる成分とする薄膜層とを備えた積層ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明の積層ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン系樹脂を用いたポリプロピレンフィルム基材と無機化合物を主たる成分とする薄膜層とを備えた積層ポリプロピレンフィルムであり、積層ポリプロピレンフィルムの150℃における縦方向の熱収縮率が7%以下であり、酸素透過度が150mL/m2/day/MPa以下であることを特徴とする積層ポリプロピレンフィルムである。」

・「【0017】
(酸素透過度)
本発明において、温度23℃、相対湿度65%下における積層ポリプロピレンフィルムの酸素透過度の上限は、150mL/m2/day/MPa以下である必要がある。より好ましくは130mL/m2/day/MPa以下であり、よりさらに好ましくは120mL/m2/day/MPa以下であり、さらにより好ましくは100mL/m2/day/MPa以下であり、特に好ましくは90mL/m2/day/MPa以下である。酸素透過度の上限が150mL/m2/day/MPaを超えると、酸素により劣化する物質や食品の保存性が不良になる。温度23℃、湿度65%下における積層ポリプロピレンフィルムの酸素透過度の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.1mL/m2/day/MPa以上である。また、製造上の点から、0.1mL/m2/day/MPaが下限と考える。
【0018】
(ヘイズ)
本発明の積層ポリプロピレンフィルムのヘイズの上限は、好ましくは6%であり、より好ましくは5%であり、さらに好ましくは4.5%であり、さらにより好ましくは4%であり、特に好ましくは3.5%である。ヘイズの上限が上記範囲であると、透明が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズを6%以下とするには無機薄膜層が透明であることが好ましい。
本発明の積層ポリプロピレンフィルムのヘイズの下限は、現実的値として、好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%であり、特に好ましくは0.4%である。」

・「【0020】
(熱収縮率)
本発明に用いるポリプロピレンフィルム基材は、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成された延伸フィルムであって、150℃での縦方向の熱収縮率の上限は、好ましくは10%であり、より好ましくは9%であり、さらに好ましくは7%であり、特に好ましくは5%である。従来のポリプロピレンフィルムでは、縦方向の150℃熱収縮率は11%以上である。ポリプロピレンフィルム基材の熱収縮率を10%以下とすることで、本発明の積層ポリプロピレンフィルムの150℃における縦方向の熱収縮率を7%以下とすることができる。
また、本発明に用いるポリプロピレンフィルム基材は、ポリプロピレン樹脂を主体として構成された延伸フィルムであって、150℃での横方向の熱収縮率が15%以下であることが好ましく、より好ましくは9%であり、さらに好ましくは7%であり、特に好ましくは7%である。従来のポリプロピレンフィルムでは、横方向の150℃熱収縮率は16%以上である。ポリプロピレンフィルム基材の熱収縮率を10%以下とすることで、本発明の積層ポリプロピレンフィルムの150℃における横方向の熱収縮率を7%以下とすることができる。
ここで、縦方向とは、フィルムの流れ方向(長さ方向と言うこともある)であり、横方向とは、フィルムの流れ方向に垂直な方向(幅方向と言うこともある)である。」

・「【0025】
(ヤング率)
本発明に用いるポリプロピレンフィルム基材が二軸延伸フィルムである場合、縦方向のヤング率(23℃)の下限は、好ましくは2GPaであり、より好ましくは2.1GPaであり、さらに好ましくは2.2GPaであり、特に好ましくは2.3GPaであり、最も好ましくは2.4GPaである。縦方向のヤング率の上限は、好ましくは4GPaであり、より好ましくは3.7GPaであり、さらに好ましくは3.5GPaであり、特に好ましくは3.4GPaであり、最も好ましくは3.3GPaである。縦方向のヤング率が上記範囲であると、現実的な製造が容易であり、また、縦−横バランスが良化することがある。」

・「【0038】
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明のポリプロピレンフィルム基材に使用されるポリプロピレン系樹脂は特に制約はなく、例えば、プロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα―オレフィンとの共重合体、さらにこれらの混合物を用いることができる。
フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂としては、実質的にコモノマーを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、コモノマーを含む場合であっても、コモノマー量は0.5モル%以下であることが好ましい。コモノマー量の上限は、好ましくは0.3モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。なお、結晶性を著しく低下させない範囲内において、微量であればコモノマーが含まれていてもよい。
フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーのみから得られるプロピレン単独重合体であることがより好ましく、プロピレン単独重合体であっても、頭−頭結合のような異種結合を含まないことが最も好ましい。
【0039】
(ポリプロピレン系樹脂の立体規則性)
フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂の立体規則性の指標である13C−NMRで測定されるメソペンタッド分率の下限は96%であるのが好ましい。メソペンタッド分率の下限は、好ましくは96.5%であり、より好ましくは97%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率がより低くなることがある。メソペンタッド分率の上限は好ましくは99.8%であり、より好ましくは99.6%であり、さらに好ましくは99.5%である。上記範囲であると現実的な製造が容易となることがある。
【0040】
フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂のメソ平均連鎖長の下限は、好ましくは100であり、より好ましくは120であり、さらに好ましくは130である。上記範囲であると、結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。メソ平均連鎖長の上限は、現実的な面から、好ましくは5000である。
【0041】
フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の下限は、現実的な面から、好ましくは0.1質量%である。キシレン可溶分の上限は好ましくは7質量%であり、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。」

・「【0056】
さらに、熱収縮率を低下させるためには、上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。オフラインアニール温度の下限は、好ましくは160℃であり、より好ましくは162℃であり、さらに好ましくは163℃である。オフラインアニール温度が上記未満であると、アニールの効果が得られないことがある。オフラインアニール温度の上限は、好ましくは175℃であり、より好ましくは174℃であり、さらに好ましくは173℃である。オフラインアニール温度が上記を超えると、透明性が低下したり、厚みムラがおおきくなったりすることがある。」

・「【0083】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂として、Mw/Mn=7.7、Mz+1/Mn=140、MFR=5.0g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=97.3%であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)PP SA4L」:共重合モノマー量は0モル%;以下「PP−1」と略する)を用いた。
このポリプロピレン系樹脂を、60mm一軸押出機を用いて、250℃でTダイよりシート状に押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向(縦方向)に4.5倍に縦延伸し、次いで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向(横方向)に8.2倍に横延伸し、次いで6.7%のリラックスを掛けながら168℃で熱処理した。その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、ワインダーで巻き取って、本発明の基材として用いる延伸ポリプロピレンフィルムとした。
得られたフィルムの厚みは20μmであった。表1にフィルムを構成するポリプロピレンの特性を、表2に製膜条件をそれぞれ示す。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりであり、熱収縮率は低く、ヤング率は高かった。また、このフィルムの示差走査熱量測定(DSC)で得られたチャートを図2に示す。
蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のAl2O3(純度99.5%)とSiO2(純度99.9%)を用い、電子ビーム蒸着法で、上記延伸ポリプロピレンフィルム上にAl2O3とSiO2を同時に蒸着しAl2O3−SiO2系薄膜層の形成を行った。蒸着材料は、直径40mmの円形の坩堝をカーボン板で2つに仕切り、それぞれに粒状のAl2O3、粒状のSiO2を混合せずに投入した。加熱源として一台の電子銃を用い、Al2O3とSiO2のそれぞれを時分割で電子ビームを照射して加熱し、ポリプロピレンフィルム表面に加熱気化しAl2O3とSiO2とを混合して蒸着させた。その時の電子銃のエミッション電流は205mA、加速電圧は6kV、坩堝に投入された酸化アルミニウムには160mA×6kV相当の、酸化硅素には45mA×6kV相当の電力投入がされた。蒸着時の真空圧は1.1×10−4Paとし、フィルムを支持するロールの温度を23°Cとした。薄膜層の厚みは製膜速度を変更することによって水晶振動子式膜厚計を使い20nmとなるように蒸着し、積層ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルム物性を表3に示す。」

・「【0087】
(実施例5)
実施例1で作製した延伸ポリプロピレンフィルムに、テンター内で、フィルム幅方向両端をクリップで挟み、170℃で5分間の熱処理を施し、本発明の延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られたフィルムの厚みは20μmであった。表1にフィルムを構成するポリプロピレンの特性を、表2に製膜条件をそれぞれ示す。得られたフィルムの物性は、表3に示すとおりであった。
実施例1と同様にして、上記延伸ポリプリピレンフィルムに無機薄膜層を蒸着した。得られたフィルム物性を表3に示す。」

・「【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】



イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例5に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「ポリプロピレン系樹脂として、Mw/Mn=7.7、Mz+1/Mn=140、MFR=5.0g/10分、メソペンタッド分率[mmmm]=97.3%であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)PP SA4L」:共重合モノマー量は0モル%)を用い、60mm一軸押出機を用いて、250℃でTダイよりシート状に押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向(縦方向)に4.5倍に縦延伸し、次いで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向(横方向)に8.2倍に横延伸し、次いで6.7%のリラックスを掛けながら168℃で熱処理し、その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、ワインダーで巻き取った延伸ポリプロピレンフィルムを得、該延伸ポリプロピレンフィルムを、テンター内で、フィルム幅方向両端をクリップで挟み、170℃で5分間の熱処理を施し得られた、厚み20μm、配向方向TD、縦方向のヤング率2.9GPa、縦方向の150℃熱収縮率2.9%、横方向の150℃熱収縮率3.4%である延伸ポリプロピレンフィルム。」

(2)甲2に記載された事項
甲2には、「二軸配向ポリプロピレンフィルム」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0084](10)引張試験
JIS K 7127に準拠してフィルムの長手方向および幅方向の引張強度を23℃にて測定した。サンプルは15mm×200mmのサイズにフィルムより切り出し、チャック幅は100mmで、引張試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製デュアルコラム卓上型試験機インストロン5965)にセットした。引張速度200mm/分にて引張試験を行った。得られた歪み−応力カーブより、伸長初期の直線部分の傾きからヤング率を、また、5%伸長時の応力(F5)を求めた。引張破断強度、引張破断伸度は、それぞれ、サンプルが破断した時点での強度と伸度とした。
測定を80℃の恒温槽中で行うことにより、80℃でのヤング率とF5を求めた。なお、測定は、あらかじめ80℃に設定してある恒温槽中にチャックをセットし、サンプルを測定するまで装着してから1分間保持して行った。」

・「[0099](比較例4)
ポリプロピレン原料として、MFR=2.7g/10分、Tc=114.7℃、Tm=163.0℃であるPP−4(住友化学(株)製、FS2012)を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に、145℃で4.5倍延伸し、テンターでの幅方向延伸において、予熱温度170℃、延伸1段目の温度を160℃、延伸2段目の温度を145℃、冷却温度を100℃、熱固定温度を163℃とした。得られたフィルムの厚みは21.2μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高いものであった。
[0100](比較例5)
ポリプロピレン樹脂として、PP−4を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に130℃で5.8倍に延伸した後、テンターにて、予熱温度167℃としてフィルムを加熱し、続いて、延伸温度161℃で幅方向に8.6倍延伸し、その後、弛緩10%をかけながら130℃で熱固定を行い、引き続き、140℃で2段目の熱固定を行った。得られたフィルムの厚みは13.4μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件、表3に物性を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高いものであった。
[0101] [表1]

[0102]
[表2]

[0103]
[表3]



2 申立理由(甲1に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリプロピレン系樹脂を主成分とする、ポリプロピレンフィルム。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「熱機械分析(TMA)により測定される、主配向軸と直交する方向の100℃における熱収縮率(%)をSMD,100℃、主配向軸と直交する方向の130℃における熱収縮率(%)をSMD,130℃、主配向軸の方向の100℃における熱収縮率(%)をSTD,100℃、主配向軸の方向の130℃における熱収縮率(%)をSTD,130℃としたときに、|SMD,100℃−SMD,130℃|≦2.00、かつ|STD,100℃−STD,130℃|≦2.50を満たす」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1及び他の証拠をみても、甲1発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「蒸着時の熱に対して構造安定性に優れ、特に透明蒸着層を積層した際の水蒸気バリア性、酸素バリア性が良好であり、更に加熱殺菌処理時の熱に対しても安定なポリプロピレンフィルムを得ることができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果は、甲1発明の奏する効果とは全く異なるものであり、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「甲第1号証には、例えば、実施例5のポリプロピレンフィルム基材として、厚みが20μm、縦方向のヤング率が2.9GPaのものが記載されており、甲第2号証の記載より、F5値は約55MPaであると推定でき、縦方向の強度Xは、これに厚み20μmを掛けると1100N/mとなる。また、他の実施例についても、厚みが20μmであり、縦方向のヤング率が2.4〜2.6GPaであるため、甲第2号証の記載より、F5値は約39〜45MPaであると推定でき、縦方向の強度Xは、これに厚み20μmを掛けると約780〜900N/mとなる。
従って、実施例1〜7の全てについて、主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下である蓋然性が高く、本件特許発明の構成B『主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり、』について、両者に実質的な相違点はない。」(特許異議申立書第22ページ第4ないし16行)と主張するが、甲1発明の「延伸ポリプロピレンフィルム」と、甲2の比較例5に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムとは、使用しているポリプロピレン樹脂及び製造条件が異なるから、甲1発明の「延伸ポリプロピレンフィルム」において、甲2の記載から本件特許発明1の「F5値」及び「強度X」を推定することはできない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

エ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2ないし7、10、13及び15ないし18について
本件特許発明2ないし7、10、13及び15ないし18は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7、10、13及び15ないし18は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由によっては取り消すことはできない。

第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7、10、13及び15ないし18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-08-07 
出願番号 P2022-538121
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 植前 充司
特許庁審判官 中村 和正
加藤 友也
登録日 2022-12-05 
登録番号 7188651
権利者 東レ株式会社
発明の名称 ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、及び梱包体  

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