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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1402471
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-10-05 
確定日 2023-09-14 
事件の表示 特願2018− 30806「部品及び電子装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日出願公開、特開2019−145745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年12月20日付け:拒絶理由通知書
令和4年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 7月15日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年10月 5日 :審判請求書の提出
令和5年 4月17日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和5年 6月16日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも一面が金属である放熱部材と、
前記放熱部材の前記一面に固定されている筐体と、
を備え、
前記筐体は樹脂を用いて形成されており、
前記筐体の側壁の前記一面側の面が前記一面に接合されており、
前記一面のうち前記筐体の前記側壁で囲まれている領域の少なくとも一部は、前記筐体で覆われておらず、
前記一面の前記一部には電子部品が固定され、
前記側壁の複数の部分及び前記電子部品を含む第1断面、及び前記第1断面に直交する第2断面のいずれにおいても、前記側壁の前記複数の部分のそれぞれにおいて、前記一面側の面のうち前記一面に接合されている部分の幅は、前記電子部品の幅より狭い、部品。」

第3 拒絶の理由
令和5年4月17日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献3に記載された発明及び引用文献1−2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許第6778388号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献2:特開2016−132131号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2009−278727号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献3の記載
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【0007】
また、上記の発明では、制御基板の発熱対策について独断の構成が採られていないので、燃料ポンプを駆動するスイッチング素子の発熱がCPU回路に直接的に及ぶことになり、CPU回路の熱暴走のおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、燃料ポンプを駆動するスイッチング素子の発熱に伴う弊害を、効果的に防止できるモータ制御装置を提供することを課題とする。」

(2)「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチング素子を搭載した第1回路基板を、その他の半導体素子を搭載した第2回路基板とは別基板としているので、スイッチング素子の発熱が直接的に他の半導体素子に及ぶことがない。そのため、例えば、スイッチング素子のリニア動作時間が長引いても、そのことに伴うスイッチング素子に発熱に起因して、半導体素子の熱暴走を防止することができる。
【0011】
そして、第1回路基板の発熱の弊害は、第1回路基板の熱伝導率の改善と、放熱部材の構成とによって解消される。なお、第1と第2の回路基板は隣接して配置されるので、互いの配線経路が長引くおそれもない。」

(3)「【0062】
続いて、ボンプ制御装置CTLの構造について説明する。図4(a)に示す通り、この装置CTLは、2枚の回路基板10,11が隣接配置されたヒートシンク12と、フィルタ動作用の回路素子を収容する樹脂ケース13と、樹脂ケース13を閉塞して、全体を一体化するケース蓋(不図示)とで構成されている。本実施例では、単一の回路基板ではなく、あえて2枚の回路基板10,11を使用して、全体として図2の回路を実現している。そのため、特に製造コストを増加させることなく、パワーチップPWRの最適な放熱性能を実現することができる。以下、この点を含めて具体的に説明する。
【0063】
<回路基板10,11>回路基板10は、具体的には、ガラスエポキシ基板であって、マイコンMICやOPアンプやダイオードなどの半導体素子と、コンデンサC1,C2,C13以外のコンデンサと、抵抗などが搭載されている。
【0064】
一方、回路基板11は、窒化アルミセラミックス基板であり、パワーチップPWRが搭載されている。詳細に説明すると、窒化アルミセラミックス基板の表裏面には、メタライズ処理によって銅箔層が設けられ、上面側の銅箔層にパワーチップPWRが半田付けされ、下面側の銅箔層がヒートシンク12に接着されている。なお、パワーチップPWRには、5個の接続端子が存在するが(図2)、これら全ては、回路基板10の該当箇所にワイヤ接続されている。
【0065】
回路基板10と回路基板11は、いずれも接着剤によってヒートシンク12に接着されているが、窒化アルミセラミックス基板11の接着剤は、ガラスエポキシ基板10の接着剤より伝熱性に優れる材料が選択される。接着剤の伝熱性を高めるには、例えば、接着剤に伝熱性フィラーを含有させれば良いが、伝熱性フィラーとしては、銀、銅、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属や、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、グラファイトなどの熱伝導率の高いセラミックスが採用される。」

(4)「【0071】
<樹脂ケース13>
樹脂ケース13は、箱状に形成されたケース本体部13Aの一端に、接続端子14を内包するコネクタ部13Bが連設されて構成されている。この実施例では、接続端子14は、バッテリ電圧の入力端子、指令信号SGの入力端子、異常信号ERの出力端子、ブラシモータMへの出力端子(+)、ブラシモータMへの出力端子(−)、及びグランド端子の合計6本が配置されている(図2参照)。
【0072】
ケース本体部13Aの底面には、フィルタ動作用の回路素子を配置する係止部が設けられると共に、回路基板10,11から上方に延びる接続端子20(図4(d))を通過させる通過穴が形成されている。また、回路基板10,11の放熱性を考慮して、回路基板10,11の上方位置には開放穴が形成されている。
【0073】
図4(c)は、樹脂ケース13の平面視を示す概略図であり、フィルムコンデンサC13と、電解コンデンサC1と、電解コンデンサC2とが、略L字状に配置されている。また、大型の電解コンデンサC2に近接して、チョークコイルL3が配置され、チョークコイルL3に隣接してコイルL1,L2が配置されている。なお、ケース本体部13Aの底面に設けられた開放穴に対応して、ヒートシンク12の上面に回路基板10,11が配置されている。」

(5)【図4】「



ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。
上記(4)【0071】の「樹脂ケース13は、箱状に形成されたケース本体部13A」との記載及び上記(5)【図4】(a)の記載から、引用文献1には、「樹脂ケース13は、箱状に形成されたケース本体部13Aを有すること」が記載されていると認められる。

2 引用発明
上記1からみて、引用文献3には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「2枚の回路基板10、11が隣接配置されたヒートシンク12と、
フィルタ動作用の回路素子を収容する樹脂ケース13と、で構成されており、
回路基板10は、半導体素子と、コンデンサと、抵抗などが搭載されており、
回路基板11は、パワーチップPWRが搭載されており、
回路基板10と回路基板11は、いずれも接着剤によってヒートシンク12に接着されており、
樹脂ケース13は、箱状に形成されたケース本体部13Aを有し、
ケース本体部13Aの底面には、回路基板10、11の放熱性を考慮して、回路基板10、11の上方位置には開放穴が形成されており、
ケース本体部13Aの底面に設けられた開放穴に対応して、ヒートシンク12の上面に回路基板10、11が配置されている、装置CTL。」

3 引用文献1の記載、周知技術
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(訳は当審訳。)。

(1)「Heat sink 14 is preferably formed of metal, but it should be understood that heat sink could be formed of any other material with a thermal conductivity that allows for an adequate transfer of heat from housing 12 to the exterior environment.」(4欄42−46行)
(当審訳:ヒートシンク14は、好ましくは金属から形成されるが、ヒートシンクは、ハウジング12から外部環境への熱の適切な伝達を可能にする熱伝導性を有する任意の他の材料から形成され得ることを理解されるべきである。)

(2)したがって、「ヒートシンクの材料を金属とする」技術は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。

4 引用文献2の記載、周知技術
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0006】
そこで、本発明は、金属と樹脂といった、異種材料と金属材料との接合技術において、接合後に高度な気密性を当該界面に付与する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明(1)の異種材料接合金属材料は、異種材料と接合した際に当該異種材料と金属材料との界面において、レーザースキャニング加工時に相互に略平行となる複数の溝部を有する接合部が形成された気密性を有する異種材料接合金属材料であって、前記接合部は、前記金属材料の表面に形成された前記溝部に対して垂直方向に切断した断面視において、前記溝部における溝幅をW、溝深さをH、レーザースキャニング加工時に形成される前記溝部面積をA、及び、レーザースキャニング加工時に前記溝部の両側辺の面上に形成されるバリからなる凸部面積をB、Cとした場合、面積比が、
(A+B+C)/(W×H)≧1.00
となる関係を有する異種材料接合金属材料である。
また、本発明(2)は、前記接合部の前記面積比が、1.00以上、1.80以下であることを特徴とする、前記発明(1)の異種材料接合金属材料である。
また、本発明(3)は、前記金属材料の表面に形成された前記溝部に対して上方から見た上面視において、前記複数の溝部の各々は、前記金属材料の表面上で周状に形成されており、前記周状に形成された前記溝部の始点と終点とが重なり合う閉じた形状であることを特徴とする、前記発明(1)又は(2)に記載の異種材料接合金属材料である。
また、本発明(4)は、前記異種材料が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はプラスチックアロイである、前記発明(1)〜(3)のいずれか一項記載の異種材料接合金属材料である。
また、本発明(5)は、前記金属材料が、鉄、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金又はステンレス鋼である、前記発明(1)〜(4)のいずれか一項記載の異種材料接合金属材料である。
また、本発明(6)は、異種材料同士を接合した際に当該異種材料同士の界面において、レーザースキャニング加工時に相互に略平行となる複数の溝部を有する接合部が形成された気密性を有する異種材料接合材料であって、前記接合部は、前記金属材料の表面に形成された前記溝部に対して垂直方向に切断した断面視において、前記溝部における溝幅をW、溝深さをH、レーザースキャニング加工時に形成される前記溝部面積をA、及び、レーザースキャニング加工時に前記溝部の両側辺の面上に形成されるバリからなる凸部面積をB、Cとした場合、面積比が、
(A+B+C)/(W×H)≧1.00
となる関係を有する異種材料接合材料である。
また、本発明(7)は、前記発明(1)〜(5)のいずれか一項記載の異種材料接合金属材料又は前記発明(6)記載の異種材料接合材料と、前記接合部を介して前記異種材料接合金属材料又は前記異種材料と接合した異種材料と、を有する複合成形体である。」

(2)「【0013】
次に、「接合部」は、図1(a)の金属表面に対して、レーザー光を照射して、金属表面を溝掘加工及び溶融させ再凝固させる条件にて加工することにより形成される。例えば、ある走査方向(一方向)についてレーザースキャニング加工された後、同じ走査方向のレーザースキャニング操作が複数回(2回以上)繰り返されることにより形成される。或いは、ある走査方向についてレーザースキャニング加工された後、前記走査方向とクロスする別の走査方向についてレーザースキャニング加工されるというクロスハッチング操作が複数回(2回以上)繰り返されることにより形成される。但し、一セットとして実行される必要は必ずしも無く、一方向での回数と別方向での回数が異なっていてもよい。」

(3)「【0015】
レーザースキャニング加工後は、図1(b)に示されるように「接合部」(凹凸部)が形成される。「接合部」は、凹部と凸部から成る。凹部は、「溝部」ともいい、凸部は、「バリ」ともいう。好適には、マクロ的に見た場合に凸部(バリ)及び溝部の少なくとも一部がブリッジ形状又はオーバーハング形状をなしているとよい。ここで、「ブリッジ形状」とは、生成された凸部の頂上同士が溶融してつながりアーチ状になり下部に孔があいている形状のものを指す。尚、凸部の全てがブリッジ形状をなしておらず、一部の凸部がオーバーハングしてきのこ状・杉の木状になっていても、或いは、オーバーハングしていない単なる凸状であってもよい。」

(4)「【0023】
<用途>
次に、このような接合部を有する金属材料の用途について説明する。この金属材料は、接合部で異種材料と強固に接合し、接合後に当該金属材料と当該異種材料との界面を後工程なくとも高度な気密性を達成できる。したがって、当該金属材料は、高レベルで防水性が求められる分野、例えば、川、プール、スキー場、風呂等での使用が想定される。水分や湿気の侵入が故障に繋がる電気又は電子機器用の部品として用いることが好適である。例えば、内部に樹脂製のボスや保持部材等を備えた、電気・電子機器用筐体として有用である。ここで、電気・電子機器用筐体としては、携帯電話の他に、カメラ、ビデオ一体型カメラ、デジタルカメラ等の携帯用映像電子機器の筐体、ノート型パソコン、ポケットコンピュータ、電卓、電子手帳、PDC、PHS、携帯電話等の携帯用情報あるいは通信端末の筐体、モMD、カセットヘッドホンステレオ、ラジオ等の携帯用音響電子機器の筐体、液晶TV・モニター、電話、ファクシミリ、ハンドスキャナー等の家庭用電化機器の筐体、自動車に適用されるようなモータ・インバータ内の半導体装置を格納する筐体等を挙げることができる。今後は、防水コネクタ等、端子部分から内部への液体・気体を遮断することが必要なニーズが増大することが考えられる。端子部分から水や油が回路内に浸入すると機器が破損するだけでなく、車載部品などの場合は更に大きな影響となる恐れもあるからである。また、バッテリーなどの容器の液漏れ防止や、車載用センサなど過酷な環境で使用される防水部品が最も狙いとなる分野と考えられる。つまり、これまではОリングやポッテイング(樹脂埋めで防水性を確保)などで対応していた用途に、介在部品を使用せずに直接異種材料を強固に接合する分野(コストダウンも含め)がターゲットとされる。気密性確保が必要な用途の難易度としては、IP等級で規定される防水規格から、封止する液体・気体に圧力がかかる用途で使用されるもの(エアバルブ・水道関連のバルブやオイルポンプ)、さらに加圧減圧が繰り返される環境で再利用される圧力容器(ガスボンベ等)という順にニーズが拡大していくと考えられる。」

(5)【図1】「



(6)したがって、「接している二つの面を固定するために接合する」技術は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。

5 周知文献1の記載、周知技術
周知技術が記載されている文献として新たに例示する、実願昭59−101766号(実開昭61−18430号)のマイクロフィルム(以下「周知文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「(ヘ) 実施例
本案の実施例を図面に基づいて説明すると、第1図は本案装置の要部分解斜視図、第2図は本案装置の要部横断面図、第3図は本案装置を備えた室外側空気調和ユニットの正面図で、ユニット本体(10)の底板(11)上にはその略中央箇所に圧縮機(12)が、背面箇所に熱交換器(13)が載置され、且つ圧縮機(12)と熱交換器(13)とは上板(14)と側板(15)と後板(16)とからなる仕切板(17)で区画されている。
そして、仕切板(17)で囲まれた圧縮機室(18)の上方には電装箱(4)が取り付けられており、この電装箱(4)の一面には放熱フィン(2)付きのアルミ製基板(3)を設けてこの基板にインバータ装置のパワートランジスタ(9)が4個取り付けられている。」(3ページ4−17行)

(2)「この電装箱(4)の取り付けにより通風ケース(1)の開放面(5)が基板(3)で塞がれて通風路(8)が区画形成されると共に放熱フィン(2)がこの通風路(8)中に押し込まれた状態となり、電装箱(4)の蓋(26)を取付片(27)に螺子(28)止めした後、前面パネル(22)とを取り付けるとユニット本体(10)が仕上がる。」(4ページ10−15行)

(3)「このようにして、各パワートランジスタ(9)で発生する高熱は各放熱フィン(2)で略均一に放出されてパワートランジスタ(9)の温度上昇が抑えられると共に、電装箱(4)内にも前面パネル(22)の開口(32)から蓋(26)の開口(33)を経て室外空気が導入されてパワートランジスタ(9)と他の電装部品(34)との間を通り、然る後、電装箱(4)の後板(35)の開口(36)を経て排気口(7)から排出されており、電装箱(4)内でもパワートランジスタ(9)と電装部品(34)とが冷却されている。」(5ページ9−17行)

(4)第1図「



(5)第2図「



(6)ここで、周知文献1に記載されている事項について検討する。

(7)上記(1)の「この電装箱(4)の一面には放熱フィン(2)付きのアルミ製基板(3)を設けてこの基板にインバータ装置のパワートランジスタ(9)が4個取り付けられている」との記載及び上記(5)第2図の記載(特に、アルミ製基板(3)と、後板(35)、取付片(27)及びパワートランジスタ(9)との接合部分に着目。)から、横断面に着目すると、周知文献1には、「電装箱(4)の後板(35)及び取付片(27)とパワートランジスタ(9)とを含む横断面において、電装箱(4)の後板(35)及び取付片(27)の、放熱フィン(2)付きのアルミ製基板(3)に接合されている部分の幅は、パワートランジスタ(9)の幅より狭い」ことが記載されていると認められる。

(8)上記(1)の「この電装箱(4)の一面には放熱フィン(2)付きのアルミ製基板(3)を設けてこの基板にインバータ装置のパワートランジスタ(9)が4個取り付けられている」との記載、上記(4)第1図の記載及び上記(5)第2図の記載から、横断面に直交する縦断面に着目すると、周知文献1には、「電装箱(4)の後板(35)と4個のパワートランジスタ(9)とを含む縦断面において、電装箱(4)の後板(35)の、放熱フィン(2)付きのアルミ製基板(3)に接合されている部分の幅は、4個のパワートランジスタ(9)の幅より狭い」ことが記載されていることは、当業者から見れば明らかである。

(9)上記(4)第1図の記載及び上記(5)第2図の記載から、電装箱(4)の後板(35)及び取付片(27)は、いずれも、電装箱(4)の筐体の側壁であるといえる。また、パワートランジスタ(9)は、電子部品であるといえる。さらに、放熱フィン(2)付きのアルミ製基板(3)は、放熱部材であるといえる。

(10)したがって、「筐体の側壁の複数の部分及び電子部品を含む第1断面、及び第1断面に直交する第2断面のいずれにおいても、側壁の複数の部分のそれぞれにおいて、放熱部材の一面に接合されている部分の幅は、電子部品の幅より狭い」技術は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

1 引用発明の「ヒートシンク12」は、本願発明の「放熱部材」に相当する。また、引用発明の「ヒートシンク12の」「上面」は、本願発明の「一面」に相当する。

2 引用発明の「樹脂ケース13」は、「フィルタ動作用の回路素子を収容」し、「箱状に形成されたケース本体部13Aを有」するから、本願発明の「筐体」に相当する。また、引用発明において、樹脂ケース13がヒートシンク12の上面に固定されていることは明らかである。
したがって、上記1を踏まえると、引用発明の「樹脂ケース13」は、本願発明の「前記放熱部材の」「一面に固定されている」「筐体」と一致する。

3 引用発明の「樹脂ケース13」が樹脂を用いて形成されていることは明らかである。
したがって、上記2を踏まえると、引用発明の「樹脂ケース13が樹脂を用いて形成されている」構成は、本願発明の「前記筐体は樹脂を用いて形成されて」いる構成と一致する。

4 引用発明の「ケース本体部13A」は、樹脂ケース13の側壁であるといえるから、上記2を踏まえると、本願発明の「筐体の」「側壁」に相当する。また、引用発明の「ケース本体部13Aの底面」は、ケース本体部13Aにおけるヒートシンク12の上面側の面であるといえるから、上記1−2を踏まえると、本願発明の「前記筐体の側壁の前記一面側の面」に相当する。また、引用発明において、ケース本体部13Aの底面がヒートシンク12の上面と接していることは、明らかである。
したがって、上記1−2を踏まえると、引用発明の「ケース本体部13Aの底面が、ヒートシンク12の上面と接している」構成は、本願発明の「前記筐体の側壁の前記一面側の面が前記一面に接合されて」いる構成と、「前記筐体の側壁の前記一面側の面が前記一面に接している」構成である点で共通する。

5 引用発明において、「ケース本体部13Aの底面には、回路基板10、11の放熱性を考慮して、回路基板10、11の上方位置には開放穴が形成されて」いるから、ヒートシンク12の上面のうちケース本体部13Aで囲まれている領域の少なくとも一部は、樹脂ケース13で覆われていないといえる。
したがって、上記1−2、4を踏まえると、引用発明の「ヒートシンク12の上面のうちケース本体部13Aで囲まれている領域の少なくとも一部は、樹脂ケース13で覆われていない」構成は、本願発明の「前記一面のうち前記筐体の前記側壁で囲まれている領域の少なくとも一部は、前記筐体で覆われて」いない構成と一致する。

6 引用発明の「回路基板10」及び「回路基板11」は、いずれも、本願発明の「電子部品」に相当する。引用発明において、「回路基板10と回路基板11は、いずれも接着剤によってヒートシンク12に接着されて」いるから、上記第4の1(5)【図4】(a)、(b)の記載も踏まえると、ヒートシンク12の上面の一部には回路基板10と回路基板11が固定されているといえる。
したがって、引用発明の「ヒートシンク12の上面の一部には回路基板10と回路基板11が固定されている」構成は、本願発明の「前記一面の前記一部には電子部品が固定され」る構成と一致する。

7 引用発明において、「ケース本体部13Aの底面には、回路基板10、11の放熱性を考慮して、回路基板10、11の上方位置には開放穴が形成されており」、「ケース本体部13Aの底面に設けられた開放穴に対応して、ヒートシンク12の上面に回路基板10、11が配置されている」から、ケース本体部13Aの底面の複数の部分のそれぞれは、回路基板10、11が配置されていない各端側の部分で、ヒートシンク12の上面と接していることは、明らかである。また、断面図である上記第4の1(5)【図4】(b)の記載を参照すると、ヒートシンク12の上面において、回路基板10、11が配置されていない各端側の部分の幅のほうが、回路基板10、11が配置されている部分の幅より狭いことが明らかである。
したがって、引用文献1には、上記第4の1(5)【図4】(b)の断面で見た場合、ケース本体部13Aの複数の部分のそれぞれにおいて、ヒートシンク12の上面側の面のうちヒートシンク12の上面に接合されている部分の幅は、回路基板10、11の幅より狭いことが記載されているといえるから、引用発明は、本願発明1の「前記側壁の複数の部分及び前記電子部品を含む第1断面、及び前記第1断面に直交する第2断面のいずれにおいても、前記側壁の前記複数の部分のそれぞれにおいて、前記一面側の面のうち前記一面に接合されている部分の幅は、前記電子部品の幅より狭い」構成と、「前記側壁の複数の部分及び前記電子部品を含む第1断面において、前記側壁の前記複数の部分のそれぞれにおいて、前記一面側の面のうち前記一面に接合されている部分の幅は、前記電子部品の幅より狭い」構成である点で共通する。

8 引用発明の「装置CTL」は、後述する相違点を除き、本願発明の「部品」と一致する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「放熱部材と、
前記放熱部材の前記一面に固定されている筐体と、
を備え、
前記筐体は樹脂を用いて形成されており、
前記筐体の側壁の前記一面側の面が前記一面に接しており、
前記一面のうち前記筐体の前記側壁で囲まれている領域の少なくとも一部は、前記筐体で覆われておらず、
前記一面の前記一部には電子部品が固定され、
前記側壁の複数の部分及び前記電子部品を含む第1断面において、前記側壁の前記複数の部分のそれぞれにおいて、前記一面側の面のうち前記一面に接合されている部分の幅は、前記電子部品の幅より狭い、部品。」

(相違点1)
放熱部材において、本願発明では、「少なくとも一面が金属である」のに対し、引用発明では、ヒートシンク12の上面の材料について特定されていない点。

(相違点2)
前記筐体の側壁の前記一面側の面が前記一面に対して、本願発明では、「接合されて」いるのに対し、引用発明では、接合されているのか明確に特定されていない点。

(相違点3)
「前記側壁の前記複数の部分のそれぞれにおいて、前記一面側の面のうち前記一面に接合されている部分の幅は、前記電子部品の幅より狭い」構成について、本願発明では、「前記側壁の複数の部分及び前記電子部品を含む第1断面、及び前記第1断面に直交する第2断面のいずれにおいても」このような構成であるのに対し、引用発明では、上記第4の1(5)【図4】(b)の断面においてはこのような構成であるが、当該断面に直交する上記第4の1(5)【図4】(d)の断面においてもこのような構成であるのか明確に特定されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。
1 相違点1について
上記第4の3に記載のとおり、「ヒートシンクの材料を金属とする」技術は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、ヒートシンク12の上面を金属とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
上記第4の4に記載のとおり、「接している二つの面を固定するために接合する」技術は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
上記第4の1(5)【図4】(b)の断面と直交する断面である上記第4の1(5)【図4】(d)の記載を参酌すると、当該断面において、ケース本体部13Aの底面の複数の部分のそれぞれにおいて、ヒートシンク12の上面側の面のうちヒートシンク12の上面に接合されている部分の幅は、回路基板10、11の幅より狭いか否かが不明である。
しかしながら、電子部品の幅と筐体及び面の接合部分の幅との関係をどのような関係とするかは、用いられる電子部品の種類及び当該接合部分の強度等、必要に応じて、当業者が適宜選択できる設計的事項である。また、筐体と面との接合部分の幅をできるだけ小さくし、面上に電子部品を多く配置できるようにすることは、当業者にとって自明の課題であるといえる。
したがって、引用発明において、上記第4の1(5)【図4】(b)の断面だけではなく、当該断面と直交する上記第4の1(5)【図4】(d)の断面においても、ケース本体部13Aの底面の複数の部分のそれぞれにおいて、ヒートシンク12の上面側の面のうちヒートシンク12の上面に接合されている部分の幅を、回路基板10、11の幅より狭いように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、以下のようにも考えられる。
上記第4の5に記載のとおり、「筐体の側壁の複数の部分及び電子部品を含む第1断面、及び第1断面に直交する第2断面のいずれにおいても、側壁の複数の部分のそれぞれにおいて、放熱部材の一面に接合されている部分の幅は、電子部品の幅より狭い」技術は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4 効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

5 請求人の主張について
令和5年6月16日提出の意見書における主張について、以下検討する。
請求人は、同意見書において、
「(3)理由について
上記補正により、請求項1に係る発明は、「前記側壁の複数の部分及び前記電子部品を含む第1断面、及び前記第1断面に直交する第2断面のいずれにおいても、前記側壁の前記複数の部分のそれぞれにおいて、前記一面側の面のうち前記一面に接合されている部分の幅は、前記電子部品の幅より狭い」という構成1を有しております。このようにすることで、放熱部材の前記一面からの放熱量を多くすることができます。
これに対し、引用文献3である特開2009−278727号公報の段落0072には、「ケース本体部13Aの底面には、フィルタ動作用の回路素子を配置する係止部が設けられると共に、回路基板10,11から上方に延びる接続端子20(図4(d))を通過させる通過穴が形成されている。」との記載があります。図4(d)から、ある断面におけるこの通過穴の大きさを推定することはできます。しかし、この図からは、この断面に直交する断面におけるこの通過穴の大きさについては推定できません。
さらに、図4(d)の右側半分にけるケース本体部13Aの底面の形状を見る限り、当業者は、通過穴は回路基板10,11に合わせた大きさになっている、と推定するはずです。そして、図4(c)を見る限り、ケース本体部13Aの底面の長手方向において、回路基板10,11の幅は当該底面の幅に対して非常に小さいことが読み取れます。
このため、当業者は、引用文献1に基づいても、本願の請求項1に係る上記構成1を導き出すことはできない、と思料いたします。また、引用文献2及び3のいずれにも、上記構成1を示唆する記載はありません。」
と主張する。
しかしながら、本願発明が容易想到であることは上記1−4のとおりであるから、上記主張を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-07-14 
結審通知日 2023-07-18 
審決日 2023-07-31 
出願番号 P2018-030806
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山澤 宏
特許庁審判官 野崎 大進
中野 裕二
発明の名称 部品及び電子装置  
代理人 速水 進治  

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