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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02B
管理番号 1402635
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-30 
確定日 2023-09-25 
事件の表示 特願2019− 42908「堰堤及び堰堤の構築方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月10日出願公開、特開2020−143557、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月8日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和4年 8月23日付け:拒絶理由通知
令和4年10月12日 :意見書・手続補正書の提出
令和4年10月24日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年 1月30日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年10月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2及び4に係る発明は、以下の引用文献1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項3及び5に係る発明は、以下の引用文献1〜4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2018−127880号公報
2.特開平08−209704号公報
3.特開2008−025219号公報
4.特開2017−072020号公報
5.特開2018−021303号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2007−051518号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1〜5に係る発明は、それぞれ、令和4年10月12日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1〜5の記載は、以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明5」という。)。

「【請求項1】
河川の流水を通すと共に土石や流木を捕捉する捕捉体を備える堰堤であって、
地山の表面に沿って追随して設けられる型枠部と、
前記型枠部内に構築され、施工位置における河川の地山に堆積した土砂にセメントを加えたソイルセメントを用いて作られた基礎部と、を備え、
前記捕捉体は、前記基礎部に一部が埋設された状態で立設されていることを特徴とする堰堤。
【請求項2】
前記型枠部は、布製であることを特徴とする請求項1に記載の堰堤。
【請求項3】
前記基礎部の一部は、プレキャストコンクリートから構築され、前記プレキャストコンクリートに前記捕捉体が立設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の堰堤。
【請求項4】
河川の流水を通すと共に土石や流木を捕捉する捕捉体を備える堰堤の構築方法であって、
施工位置における河川の地山に堆積した土砂を取り除くステップと、
前記地山に堆積した土砂を取り除いた後、前記地山の表面に沿って型枠部を追随させて設置するステップと、
取り除かれた土砂にセメントを加えてソイルセメントを作るステップと、
前記型枠部内に前記ソイルセメントを打設して基礎部を作るステップと、
前記ソイルセメントの固化前に前記捕捉体の一部を埋設して、前記基礎部に前記捕捉体を立設するステップと、
を有することを特徴とする堰堤の構築方法。
【請求項5】
プレキャストコンクリートに前記捕捉体の一部を予め埋設するステップと、
前記ソイルセメントの固化前に前記捕捉体の一部が埋設された前記プレキャストコンクリートを埋設して、前記ソイルセメントと前記プレキャストコンクリートとを一体化させるステップと、
を有することを特徴とする請求項4に記載の堰堤の構築方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1)「【0001】
本発明は、河川等に設置される堰堤に関する。」

(2)「【0018】
<堰堤の構成>
図1に示すように、堰堤1は、本体2と、捕捉体3とを備えている。堰堤1は、河川に既に設置された既存の本体2に捕捉体3を新たに設置して流木や岩石の捕捉機能を高めたものである。
【0019】
(本体)
図1に示すように、本体2は、その底部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように構築されている。本体2は、例えば、コンクリート又はソイルセメントによって構築されている。なお、本体2において、河川の上流側又は下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にコンクリートやソイルセメントを充填してもよい。・・・
【0020】
(捕捉体)
図1から図5に示すように、捕捉体3は、河川の上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通すものであり、本体2の上流壁部22に設けられている。捕捉体3は、本体2の延在方向、すなわち、河川の幅方向に沿って設けられている。・・・
【0021】
捕捉体3は、本体2の幅方向(河川の幅方向)に沿って延在する1本の梁部31と、この梁部31の延在方向に沿って所定間隔おきに連結された複数の柱部32と、を備えている。
梁部31と柱部32は、例えば、鋼管によって形成されている。柱部32は、第1の脚部32aと、第2の脚部32bとを備えている。
第1の脚部32aは、一端(下端)が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定されている。・・・第2の脚部32bは、一端が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定されている・・・
【0022】
<捕捉体の設置方法>
・・・最初に、本体2の上流壁部22における捕捉体3の設置位置を削孔し、形成した孔にアンカーボルトを埋設し、モルタル等を孔に充填して固定する。
次に、アンカーボルトに第1の脚部32a及び第2の脚部32bの一端に設けられているフランジ部を通し、ナットで固定する。ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる梁部31と柱部32とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながらナットで固定する。・・・」

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。
「本体2と、流木や岩石の捕捉を行う捕捉体3とを備えている、堰堤1であって、
本体2は、その底部が地盤に埋設され、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように、ソイルセメントによって構築されており、
本体2において、河川の上流側又は下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にソイルセメントを充填したものでもよく、
捕捉体3は、
河川の上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通すもので、
本体2の上流壁部22に、本体2の延在方向、すなわち、河川の幅方向に沿って設けられ、
本体2の幅方向(河川の幅方向)に沿って延在する1本の梁部31と、この梁部31の延在方向に沿って所定間隔おきに連結された複数の柱部32と、を備え、柱部32は、第1の脚部32aと、第2の脚部32bとを備え、
第1の脚部32aは、一端(下端)が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定され、第2の脚部32bは、一端が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定されたものであって、
以下のように設置されたものである、
・最初に、本体2の上流壁部22における捕捉体3の設置位置を削孔し、形成した孔にアンカーボルトを埋設し、モルタル等を孔に充填して固定し、
・次に、アンカーボルトに第1の脚部32a及び第2の脚部32bの一端に設けられているフランジ部を通し、ナットで固定し、
・ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる梁部31と柱部32とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながらナットで固定する、
堰堤1。」

また、引用文献1には、次の方法の発明(以下、「引用発明1B」という。)も記載されていると認められる。

「本体2と、流木や岩石の捕捉を行う捕捉体3とを備えている、堰堤1の、
本体2の構築、及び、捕捉体3の設置方法であって、
本体2を、その底部が地盤に埋設され、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように、ソイルセメントによって構築し、
また本体2において、河川の上流側又は下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にソイルセメントを充填してもよく、
捕捉体3は、
河川の上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通すもので、
本体2の上流壁部22に、本体2の延在方向、すなわち、河川の幅方向に沿って設けられ、
本体2の幅方向(河川の幅方向)に沿って延在する1本の梁部31と、この梁部31の延在方向に沿って所定間隔おきに連結された複数の柱部32と、を備え、柱部32は、第1の脚部32aと、第2の脚部32bとを備え、
第1の脚部32aは、一端(下端)が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定され、第2の脚部32bは、一端が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定されるものであって、
以下のように設置する、
・最初に、本体2の上流壁部22における捕捉体3の設置位置を削孔し、形成した孔にアンカーボルトを埋設し、モルタル等を孔に充填して固定し、
・次に、アンカーボルトに第1の脚部32a及び第2の脚部32bの一端に設けられているフランジ部を通し、ナットで固定し、
・ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる梁部31と柱部32とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながらナットで固定する、
方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本本発明は、盛り立て高さが高くかつ安定した急勾配の盛土を造成するための方法に関するものである。」

(2)「【0010】本発明の好ましい例において、盛土本体部と補強領域の間に介在させるフィルタ層は、降雨等による盛土本体部からの間隙水の排水を促すと共に、前記盛土本体部の法面の部分的な変形を吸収して、補強領域への局部的な圧力負荷の増大を緩和する作用を発揮する。また、フィルタ層の表面に敷設する防水シートは、低強度・高変形性モルタルの打設の際にこのセメントがフィルタ層へ流出して前記排水機能等が低下しないようにするものである。
【0011】
【実施例】図1は、本発明に係る盛土の造成方法の第一の実施例を工程順に示すものである。すなわちこの実施例の方法においては、まず基礎地盤又は岩盤1を整地した後、・・・第1層目の無補強の盛土本体部21を盛り立てると共に、前記法面2a1に沿って礫あるいは小粒径の砕石等の排水材を適当な厚さに配することによって、フィルタ層31を形成する。盛土本体部21の盛り立てにおいては、例えば現地の地山を切土することによって発生した一般土を盛土材料として、・・・フィルタ層31は、その下端部が基礎地盤又は岩盤1に形成された排水層(図示省略)に連続したものとなっており、このフィルタ層31 の外側には、後述する補強領域61を形成するための、図中一点鎖線で示す打設空間S1 が設定される。
【0012】次に、図1(ロ)に示すように、打設空間S1 の端部となる位置、すなわち盛土本体部21 の法面2a1から適宜離れた位置に型枠4を組み立て、フィルタ層31 の表面に防水シート51を敷設する。・・・
【0013】次に、図1(ハ)に示すように、型枠4の堰板41と防水シート51 によって画成された打設空間S1に、セメント、ベントナイト、砂及び水を適宜割合で混合させた低強度・高変形性モルタル6’を打設する。・・・第1層目の補強領域61 が形成される。
【0014】第1層目の盛土本体部21 及び補強領域61が造成されたら、造成工事をその上層に移し、再び図1(イ)からの一連の工程を繰り返して行う。・・・以下、n層まで同様の工程を順次繰り返して行うことにより、図2に盛土の造成完了状態を示すように、高さH=n・ΔHであって、無補強の盛土材料からなる盛土本体部2と、その法面表層部に形成されたフィルタ層3及び補強領域6とを有する盛土が造成される。」

(3)「【0018】・・・このため、補強領域6を、盛土法面全体を安定させるのに十分な強度を有すると共に盛土材料と同等の変形性を有する低強度・高変形性モルタル6’で形成しているのである。このため、低強度・高変形性モルタル6’としては、先に述べたようなセメントにベントナイト、砂及び水を混合したもののほか、盛土本体部2の盛土材料の特性等に応じて、例えば現地の地山を切土して盛土材料として用いられる一般土の一部を混合したソイルセメントや、・・・が好適に用いられる。」

(4)したがって、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「盛土本体部の法面に沿って形成されたフィルタ層の表面に、セメントがフィルタ層へ流出して前記排水機能等が低下しないように敷設される防水シートと、
防水シートによって画成された打設空間にソイルセメントを打設することで形成された補強領域と、を備えた盛土。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、盛土工法用遮水シート、盛土構造、及び、盛土工法に関し、特に、地山と盛土との界面に配置される盛土工法用遮水シート、この盛土工法用遮水シートを用いた盛土構造、及び、盛土工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軟弱地盤や急傾斜地等の、盛土工法として、軽量盛土工法が知られている。この軽量盛土工法においては、軽量性、流動性を有する軽量盛土材料により盛土部が形成される。盛土部と地山の界面には、排水や盛土部への水の侵入防止のための構造が必要とされる(特許文献1参照)。そのため、盛土部と地山の界面に遮水シートを配置することがある。しかしながら、遮水シートの表面は、一般的に摩擦係数が低く、遮水シートと盛土側の材料との間で滑りが生じて、軽量盛土材料により界面に沿った下方向への荷重が大きくなってしまうという問題があった。」

(2)「【0018】
本発明に係る盛土構造10は、急傾斜地や軟弱地盤などにおいて盛土を行う際に用いられる構造である。
【0019】
図1に示されるように、地山12には急傾斜の斜面14が構成されている。斜面14の表面は、盛土工法用遮水シート20で覆われている。盛土工法用遮水シート20は、図2に示されるように、地山12側から、地山側保護シート22、遮水シート24、及び、不織布シート26が、この順に積層されて構成されている。」

(3)「【0025】
図1に示されるように、盛土工法用遮水シート20の外側には、盛土部30が構成されている。盛土部30を構成する材料としては、気泡混合モルタル、気泡混合コンクリートなどの軽量盛土材料を用いることができる。盛土部30の地山12と逆側には、擁壁16が形成されており、盛土部30は、擁壁16と地山12の間に形成されている。盛土部30の上面は、上面遮水シート18で覆われている。」

(4)「【0030】
本実施形態の盛土工法用遮水シート20によれば、盛土部30側に不織布シート26が備えられているので、不織布シート26の繊維が軽量盛土材料と絡み合った状態となり、盛土部30と不織布シート26とを強固に接着させることができる。また、不織布シート26の摩擦係数は遮水シート24よりも大きいので、盛土部30との間の摩擦を大きくすることができ、不織布シート26が軽量盛土材料から剥離された場合でも、盛土部30による斜面14に沿った下方向の荷重を小さくすることができる。」

(5)したがって、引用文献3には、次の技術事項(以下、「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「排水や盛土部への水の侵入防止のために地山の斜面の表面を覆う盛土工法用遮水シートと、
盛土工法用遮水シートの外側に構成される盛土部と、を備えた盛土構造。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、河川に設けられた堰堤の近傍に、岩石や流木等を捕捉する捕捉体を設ける捕捉体の設置方法及び堰堤構造物に関する。」

(2)「【0002】
河川の山間部等においては、台風や大雨等による土砂災害を防止するため、堰堤が設置される(例えば、特許文献1参照)。堰堤は、水を通過させつつも土石流に含まれる岩石や流木が通過することを抑えるものであり、その壁部にて土石流の勢いを弱めると共に、岩石や流木を堰き止める働きをしている。近年では、水の通過を遮ることなく、岩石や流木だけを捕捉するため、堰堤の一部に鋼管等で枠状に構築された捕捉体を設けた、いわゆる透過型堰堤が構築されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
近年、土砂災害による被害を抑えるため、捕捉体が設けられていない既存の堰堤についても水通し部に捕捉体を新たに設置する試みがなされている。」

(3)「【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、既設の堰堤に手を加えることなく、捕捉体を効果的に設置でき、工事にかかるコストや時間を抑えることができる捕捉体の設置方法及び堰堤構造物を提供することを目的とする。」

(4)「【0025】
(堰堤)
図1に示すように、堰堤2は、その底部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように構築されている。堰堤2は、例えば、コンクリート又はソイルセメントによって構築されている。なお、堰堤2において、河川の上流側又は下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にコンクリートやソイルセメントを充填してもよい。」

(5)「【0031】
<捕捉体の設置方法>
次に、既存の堰堤2の近傍に捕捉体3を設けて堰堤構造物1を構築する際の捕捉体3の設置方法について説明する。
既存の堰堤2の上流側に堆積した土砂Sを堰堤2の延在方向に沿って掘削し、掘削した穴にコンクリートを打設する。打設したコンクリートが固化するまでに捕捉体3を形成する柱部32の下端部をコンクリートに埋設し、コンクリートが固化するまで養生する。コンクリートが固化することにより、柱部32はコンクリートに一体化され、土砂Sに固定される。固化したコンクリートは、基礎部33となって捕捉体3の一部を形成する。
ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる梁部31と柱部32とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながら柱部32の下端部を固化する前のコンクリートに埋設する。なお、捕捉体3が小さくてすむ場合には、予め工場等で梁部31、柱部32、基礎部33を一体に形成してトラック等で施工現場まで運搬し、土砂Sに埋設してもよい。」

5 引用文献5について
原査定において周知技術として引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、地盤改良用又は土木構造物構築用の流動化ソイルセメントの製造方法に関するものである。」

(2)「【0030】
本加水工程では、初めに万遍なく混ざるように、現地土砂をミキサーや混ぜ棒等で空練りする。また、現地土砂とは、治山工事や砂防工事などの施工現場等において、掘削等で発生する現地発生土砂や、自然堆積した状態の現地地層のそのままの土砂等を指している。このような現地土砂を治山工事や砂防工事などに有効活用することで、骨材費の削減及び発生土砂の処分費の削減により、工事費のコストダウンを図ることができるとともに、材料の搬入・搬出の時間を削減して工期を短縮することができるからである。」

6 引用文献6について
原査定において周知技術として引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、型枠を用いて砂防ダムや擁壁などの土木構造物を構築する施工方法および土木構造物、ならびに型枠成形方法および型枠成形用装置に関する。」

(2)「【0013】
かかる硬質材料としては、いわゆる超硬練りコンクリートであり、例えばクラッシャランを用いてなるセメント混合物や、INSEM工法、CSG工法などに使用される砂防ソイルセメントなどを使用することができる。特に、砂防ソイルセメントは、施工現場で採取した玉石や砂礫を含む現地発生土砂を利用し、これにセメント、セメントミルク及びモルタルの少なくとも何れかを配合して製造するものであり、運送費や建設残土の処理を軽減し、工期の短縮化とコストの低減を果たすとの効果が得られる。依って砂防ソイルセメントを使用すれば、施工性や経済性に関して一層の向上を図ることができる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1Aとを対比する。

ア 引用発明1Aの「流木や岩石の捕捉」における「流木や岩石」は、本願発明1の「土石や流木を捕捉」における「土石や流木」に相当し、
引用発明1Aの、「流木や岩石の捕捉を行」い、「河川の上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通すものであ」る「捕捉体3」は、本願発明1の、「河川の流水を通すと共に土石や流木を捕捉する捕捉体」に相当する。
そして、引用発明1Aの、「流木や岩石の捕捉を行う捕捉体3とを備えている、堰堤1」は、本願発明1の、「河川の流水を通すと共に土石や流木を捕捉する捕捉体を備える堰堤」に相当する。

イ 引用発明1Aの堰堤1における「本体2」は、本願発明1の堰堤における「基礎部」に相当し、
引用発明1Aにおいて、捕捉体3は、
「 本体2の上流壁部22に、本体2の延在方向、すなわち、河川の幅方向に沿って設けられ、
本体2の幅方向(河川の幅方向)に沿って延在する1本の梁部31と、この梁部31の延在方向に沿って所定間隔おきに連結された複数の柱部32と、を備え、柱部32は、第1の脚部32aと、第2の脚部32bとを備え、
第1の脚部32aは、一端(下端)が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定され、第2の脚部32bは、一端が本体2の上流壁部22にアンカーボルト及びナットによって固定されたものであって、
以下のように設置されたものである、
・最初に、本体2の上流壁部22における捕捉体3の設置位置を削孔し、形成した孔にアンカーボルトを埋設し、モルタル等を孔に充填して固定し、
・次に、アンカーボルトに第1の脚部32a及び第2の脚部32bの一端に設けられているフランジ部を通し、ナットで固定し、
・ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる梁部31と柱部32とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながらナットで固定する」ことと、
本願発明1において、「捕捉体は、基礎部に一部が埋設された状態で立設されている」こととは、
「捕捉体は、基礎部に設けられている」点で共通する。

ウ 引用発明1Aにおいて、本体2は「ソイルセメントによって構築されており」、また「本体2において、河川の上流側又は下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にソイルセメントを充填した」ことは、本願発明1において、基礎部が「ソイルセメントを用いて作られた」ことに相当する。

エ 上記アないしウより、本願発明1と引用発明1Aとの間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「河川の流水を通すと共に土石や流木を捕捉する捕捉体を備える堰堤であって、
ソイルセメントを用いて作られた基礎部を備え、
前記捕捉体は、前記基礎部に設けられていることを特徴とする堰堤。」

(相違点1)
本願発明1は、「地山の表面に沿って追随して設けられる型枠部」を備え、「基礎部」がその「型枠部内に構築され」るものであるのに対して、引用発明1Aは、本体2は「その底部が地盤に埋設され」るものであり、本願発明1のように、「地山の表面に沿って追随して」設けられる型枠部内に構築されたものではない点。
(相違点2)
本願発明1は、ソイルセメントが、「施工位置における河川の地山に堆積した土砂にセメントを加えた」ものであるのに対して、引用発明1Aはそのような特定を有していない点。
(相違点3)
本願発明1においては、捕捉体が、基礎部に一部が「埋設」された状態で「立設」されているのに対して、引用発明1Aは、捕捉体3の本体への設置について、「埋設」、「立設」との特定を有していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
上記引用文献2技術事項における防水シートは、盛土に設けられるフィルタ層に沿って、補強領域を形成するセメントがフィルタ層へ流出して前記排水機能等が低下しないように敷設するものであって、堰堤に関わるものではない上、地山の表面に沿ってシートを設けるものでもない。
また、上記引用文献3技術事項における盛土工法用遮水シートは、排水や盛土部への水の侵入防止のために、盛土部と地山の界面に配置するもので、地山の表面に沿って設けるものではあるが、堰堤の構築に関するものではない。
また、引用文献5及び6にも、上記第4の5、6で摘記したように、捕捉体を備える堰堤を地山の表面に沿って構築することは記載も示唆もされていない。加えて、引用文献4をみても、上記第4の4(4)で摘記したように、「堰堤2は、その底部が地盤に埋設」されることが記載されるものであって、堰堤を地山の表面に沿って構築することはやはり記載も示唆もされていない。
そして、引用発明1Aは、本願発明1の基礎部に相当する本体2の底部を、地盤に埋設するように構築するものであるところ、「地山の表面に沿って追随して設けられる型枠部」内に構築する動機付けはなく、引用文献2技術事項と引用文献3技術事項あるいは周知技術を引用発明1に適用しても、相違点1に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、引用発明1Aにおいて、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1A、引用文献2技術事項及び引用文献3技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明4及び5について
本願発明4と引用発明1Bとを対比すると、上記1(1)の本願発明1と引用発明1Aとの対比と同様に、少なくとも次の相違点1’で相違する。

(相違点1’)
本願発明4は、「地山に堆積した土砂を取り除いた後、前記地山の表面に沿って型枠部を追随させて設置するステップ」を有し、「前記型枠部内に」ソイルセメントを打設して基礎部を作るのに対して、引用発明1Bは、本体2が「その底部が地盤に埋設され」るものであり、本願発明4のように、「地山の表面に沿って追随して」設置した型枠部内に構築するものではない点。

そして、上記1(2)の検討を踏まえると、引用発明1Bにおいて、相違点1’に係る本願発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本願発明4は、引用発明1B、引用文献2技術事項及び引用文献3技術事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、本願発明5は、本願発明4の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6むすび
以上のとおり、本願発明1、2及び4は、当業者が、引用文献1〜3に記載された発明と、引用文献5及び6に記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものではなく、
また、本願発明3及び5は、当業者が、引用文献1〜4に記載された発明と、引用文献5及び6に記載された周知技術に基づいて、当易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2023-09-07 
出願番号 P2019-042908
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E02B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 前川 慎喜
西田 秀彦
発明の名称 堰堤及び堰堤の構築方法  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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