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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1402658
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-02-21 
確定日 2023-10-17 
事件の表示 特願2018− 5261「電線及びケーブル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月25日出願公開、特開2019−125489、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年1月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 5月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 7月29日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月14日付け:拒絶理由通知書
令和4年 4月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 5月17日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月21日 :意見書の提出
令和4年11月22日付け:拒絶査定
令和5年 2月21日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年11月22日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1〜4に係る発明は、以下の引用文献1,2,5に記載された発明に基づいて、本願請求項5に係る発明は、以下の引用文献1〜3,5に記載された発明に基づいて、本願請求項6〜9に係る発明は、以下の引用文献1〜5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2001−93341号公報
引用文献2:特開平2−148615号公報
引用文献3:国際公開第2017/209299号
引用文献4:特開2017−162644号公報
引用文献5:特開2015−70718号公報

第3 本願発明
本願請求項1〜8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明8」という。)は、令和5年2月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1,5はそれぞれ次のとおりの発明である。

「【請求項1】
繰り返し屈曲する電線であって、
軟銅線、銀メッキ軟銅線、硬銅線、錫メッキ軟銅線、銅合金線、錫メッキ銅合金線、及び錫入り銅合金線の何れかからなる複数の導体素線により形成されている導体と、
前記導体の外周に設けられている絶縁層と、
前記導体の外周に設けられ前記導体と前記絶縁層との間に介在し前記導体と前記絶縁層とを接触させないための介在部と、
を有し、
前記介在部は、前記導体の外周に巻き付けられたテープであり、
前記導体と前記絶縁層との間には、中空部が設けられており、
断面視において前記導体の中心と前記中空部の中心とを一致させた際に、前記テープと前記絶縁層とが接触しない
電線。」

「【請求項5】
軟銅線、銀メッキ軟銅線、硬銅線、錫メッキ軟銅線、銅合金線、錫メッキ銅合金線、及び錫入り銅合金線の何れかからなる複数の導体素線により形成されている第1導体と、前記第1導体の外周に設けられている第1絶縁層と、前記第1導体の外周に設けられ前記第1導体と前記第1絶縁層との間に介在し前記導体と前記絶縁層とを接触させないための介在部と、を有し、繰り返し屈曲する複数の第1電線と、
前記複数の第1電線の外周に設けられているシースと、
を有し、
前記介在部は、前記導体の外周に巻き付けられたテープであり、
前記第1導体と前記第1絶縁層との間には、中空部が設けられており、
断面視において前記第1導体の中心と前記中空部の中心とを一致させた際に、前記テープと前記第1絶縁層とが接触しない
ケーブル。」

なお、本願発明2〜4は本願発明1を、本願発明6〜8は本願発明5を、それぞれ減縮した発明である。

第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。

「【0022】つまり本発明では従来の絶縁電線を以下のごとく改善したものである。
【0023】(1)絶縁被覆材内の導体を絶縁被覆材の最大弾性押び以下の範囲内で延長させることにより導体を絶縁被覆材内で弛ませ、それにより導体へ作用する張力を弾性伸びの大きな絶縁被覆材に全て若しくは大部分を分担させるようにした。
【0024】(2)上記(1)を達成させるため、絶縁被覆材の内径を導体外径より最大で10%程度大きくし、それにより導体が絶縁被覆材内を自由に滑る構造とした。
【0025】これらの改善により絶縁電線内の導体は作用する繰り返し引張応力が著しく低減される。また、従来繰り返し曲げ応力と引張応力が複合作用するハンディ型ビデオカメラやノート型パソコンのモニタの配線に用いられる絶縁電線の導体は概ね曲げ応力のみが作用するようになる。
【0026】これらの効果により本発明の耐疲労絶縁電線は耐疲労特性が顕著に向上するのである。
【0027】
【発明の実施の形態】次に、本発明の耐疲労絶縁電線の第1実施例について説明する。
【0028】図1は本発明の耐疲労絶縁電線の第1実施例を示した横断面図である。
【0029】図1において10は7本の銅合金線から成る撚線導体、11は塩化ビニル樹脂混和物から成る絶縁被覆材である。
【0030】即ち、本発明の第1実施例の耐疲労絶縁電線の第1の特徴は、7本の銅合金線から成る撚線導体10の上にその撚線導体10の撚線外径より大きい外径を有する絶縁被覆材11を設けたことにある。本発明の第1実施例の耐疲労絶縁電線の第2の特徴は、7本の銅合金線から成る撚線導体10の長さを絶縁被覆材11の長さより若干長くしたことにある。
【0031】このように構成することにより本発明の第1実施例の耐疲労絶縁電線は繰り返しの屈曲を受けたときに撚線導体10のルーズ化が可能となり、それにより耐疲労特性を顕著に改善することができる。」

「【0035】図3はこのような引張りを受けたときの本発明の第1実施例の耐疲労絶縁電線の一状態を示した横断面図である。
【0036】図3において10は7本の銅合金線から成る撚線導体、11は塩化ビニル樹脂混和物から成る絶縁被覆材である。
【0037】図3から分かるように撚線導体10は絶縁被覆材11の中空内に素線がルーズ化しており、その結果素線間には空隙が発生している。これらにより本発明の一実施例の耐疲労絶縁電線はその耐疲労特性を顕著に改善することができる。」

「【図1】



「【図3】



(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「絶縁被覆材の内径を導体外径より最大で10%程度大きくし、それにより導体が絶縁被覆材内を自由に滑る構造とした絶縁電線であって、
7本の銅合金線から成る撚線導体10の上にその撚線導体10の撚線外径より大きい外径を有する絶縁被覆材11を設け、
繰り返しの屈曲を受けたときに撚線導体10のルーズ化が可能となり、それにより耐疲労特性を顕著に改善することができ、
撚線導体10は絶縁被覆材11の中空内に素線がルーズ化し、その結果素線間には空隙が発生する、
絶縁電線。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
「第1図(A)、(B)は本発明に係る難燃性多心電力ケーブルの一例断面図、第2図および第3図は従来の難燃性多心電力ケーブルの一例断面図であって、1は導体、2は押えテープ、2’は内部導電層、3はエチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などの電気特性にすぐれた絶縁体、4は押えテープ、4’は外部導電層、5はしゃへいテープ、6は導電性テープ、6’は導電層、7は金属ラミネートテープ、8は難燃性ポリオレフィン系シース、9は介在物、10はしゃへいテープ5上に施す押えテープである。」(公報3頁右下欄11行〜4頁左上欄2行)





引用文献2の上記記載及び第1図(A)から、導体1の周囲に押えテープ2が配置されていることが理解できる。
よって、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。

「導体1の周囲に押えテープ2を配置した難燃性多心電力ケーブル。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
「[0022] 図1は、本発明の第1実施形態に係る多芯ケーブル1を示す断面図である。図1は、多芯ケーブル1の長手方向に直交する断面を示している。図1に示すように、多芯ケーブル1は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31と、外被40とを有している。本実施形態の多芯ケーブル1の外径は、7mm以上18mm以下、好ましくは、7.5mm以上13mm以下とすることができる。」

「[0044](抑え巻)
多芯ケーブル1は、抑え巻51を有していてもよい。抑え巻51は、2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30を覆っている。抑え巻51は、これらの線の撚り合わされた形状を安定的に維持する。抑え巻51は、外被40の内側に設けられている。
[0045] 抑え巻51として、例えば、紙テープや不織布、ポリエステルなどの樹脂製のテープを用いることができる。また、抑え巻51は、2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30に螺旋状に巻き付けてもよいし、縦添えであっても良い。また、巻き方向は、Z巻きでもS巻きでも良い。また巻き方向は、対撚信号線20や対撚電線30の対撚り方向と同じ方向に巻いてもよいし、反対方向に巻いてもよい。抑え巻51の巻き方向と対撚信号線20および対撚電線30の対撚り方向とを反対にすると、抑え巻51の表面に凹凸が生じにくく、多芯ケーブル1の外径形状が安定し易いので好ましい。」





4 引用文献4
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献5には、図面とともに、次の記載がある。
「【0028】
(複合ケーブル1の説明)
図2(a)は、本実施の形態に係る複合ケーブル1の横断面図、図2(b)は両対撚線と第3電線の撚り方向及びテープ部材の巻方向を説明する図である。
【0029】
図2(a),(b)に示すように、複合ケーブル1は、1対の第1電線2が撚り合されてなる第1対撚線3と、1対の第2電線4が撚り合されてなる第2対撚線5と、第1電線2及び第2電線4よりも外径が大きい一対の第3電線6と、第1対撚線3、第2対撚線5、及び一対の第3電線6が撚り合わされてなる集合体7の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材8と、テープ部材8の外周に被覆されているシース9と、を備えている。」

「【図2】



5 引用文献5
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献5には、図面とともに、次の記載がある。
「【0047】
<6.ハーネスの構成>
次に、ハーネス100の構成について説明する。
ハーネス100は、上記構成の電気ケーブル1とケーブル固定金具50とを組み合わせることにより、固定金具付き電気ケーブルとして得られるものである。具体的には、次のようにして電気ケーブル1とケーブル固定金具50とを組み付ける。
すなわち、上記図1に示すように、ケーブル固定金具50の第1の筒部51の孔に電気ケーブル1の電線部2(電線5)を挿入する。このとき、ケーブル固定金具50の第1の筒部51に対しては、第1の筒部51a側から電線部2を挿入して、第3の筒部51b側に電線部2を引き出す。電気ケーブル1における電線部2と保護部3の長さは事前に調整され、これによって電線部2は第3の筒部51bから所定寸法だけ引き出された状態となる。
【0048】
このように第1の筒部51に電線部2(電線5)を挿入した状態では、第1の筒部51の内径D3を電線部2の外径D2よりも若干大きく設定しておくことにより、両者の間に適度な隙間が確保されることが望ましい。その理由は主に2つある。一つは、第1の筒部51に電線部2を挿入しやくなるためである。もう一つは、上述した隙間の介在により、第1の筒部51の中心軸方向に電線部2が自由に移動(スライド)できるようになり、これによって電気ケーブル1が屈曲したときに電線部2に加わる負荷が軽減されるからである。」

「【図1】



第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「絶縁電線」は、「繰り返しの屈曲を受け」るものであるから、後述する相違点を除き、本願発明1の「繰り返し屈曲する電線」に相当する。
また、引用発明の「絶縁電線」は、「撚線導体10」と「絶縁被覆材11」とを有するといえる。

(イ)引用発明の「撚線導体10」は、「7本の銅合金線から成る」ものであるから、「銅合金線」からなる複数の導体素線により形成されているといえるものであり、本願発明1の「導体」に相当する。
また、引用発明の「銅合金線」は、本願発明1の「軟銅線、銀メッキ軟銅線、硬銅線、錫メッキ軟銅線、銅合金線、錫メッキ銅合金線、及び錫入り銅合金線の何れか」に含まれる。

(ウ)引用発明の「絶縁被覆材11」は、「7本の銅合金線から成る撚線導体10の上に」「設け」たものであるから、「撚線導体10」の外周に設けられているといえるものであり、本願発明1の「絶縁層」に相当する。

(エ)引用発明は、「絶縁被覆材の内径を導体外径より最大で10%程度大きくし」たものであるから、「撚線導体10」と「絶縁被覆材11」との間には、本願発明1の「中空部」に相当する部分が設けられていることが明らかである。

イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「繰り返し屈曲する電線であって、
軟銅線、銀メッキ軟銅線、硬銅線、錫メッキ軟銅線、銅合金線、錫メッキ銅合金線、及び錫入り銅合金線の何れかからなる複数の導体素線により形成されている導体と、
前記導体の外周に設けられている絶縁層と、
を有し、
前記導体と前記絶縁層との間には、中空部が設けられている
電線。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の「電線」は、「前記導体の外周に設けられ前記導体と前記絶縁層との間に介在し前記導体と前記絶縁層とを接触させないための介在部」であって、「前記導体の外周に巻き付けられたテープであ」る「介在部」を有するものであるのに対して、引用発明の「絶縁電線」は、これを有するものではない点。

(相違点2)
本願発明1の「電線」は、「断面視において前記導体の中心と前記中空部の中心とを一致させた際に、前記テープと前記絶縁層とが接触しない」ものであるに対して、引用発明の「絶縁電線」は、そのような構成を有するものではない点。

(2)判断
そこで、まず相違点1について先に検討する。
引用発明は、「撚線導体10は絶縁被覆材11の中空内に素線がルーズ化し、その結果素線間には空隙が発生する」との構成により、引用文献1の段落【0037】に記載されているように、「耐疲労特性を顕著に改善することができる」効果が得られるものであるが、引用発明において、「テープ」が「複数の導体素線により形成されている導体」の「外周に巻き付けられた」構成とした場合、「素線がルーズ化」することが妨げられて、上記効果が得られなくなるものと解される。
そうすると、引用発明において、「導体1の周囲に押えテープ2を配置した」構成を含む引用文献2に記載の発明を適用することには、阻害要因があるといえる。
また、この点は、引用文献3〜5のいずれかの記載事項によって左右されるものではない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1〜5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜8について
本願発明2〜4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明1の「電線」と同様の構成を備える「第1電線」を含む「ケーブル」の発明であることから、本願発明5と引用発明とを対比した場合の相違点には、少なくとも、相違点1と同様の相違点が含まれるものとなる。そして、当該相違点についての判断は、上記1(2)と同様である。
本願発明6〜8は、本願発明5を減縮した発明である。
以上のことから、本願発明2〜8も、本願発明1と同様に、当業者であっても引用文献1〜5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-09-25 
出願番号 P2018-005261
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山澤 宏
特許庁審判官 野崎 大進
富澤 哲生
発明の名称 電線及びケーブル  

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