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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1402671
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-03-06 
確定日 2023-09-26 
事件の表示 特願2020−511714「多芯ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日国際公開、WO2019/194033、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)3月26日(優先権主張 平成30年4月4日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 1月29日 :手続補正書の提出
令和3年10月20日 :手続補正書の提出
令和4年 8月16日付け:拒絶理由通知書
令和4年10月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年11月30日付け:拒絶査定
令和5年 3月 6日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1−8に係る発明は、以下の引用文献1−3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2015−072774号公報
2.特開2002−304917号公報
3.特開2003−297154号公報

第3 本願発明
本願請求項1−8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明8」という。)は、令和4年10月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1−8は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数本の二芯平行電線を有し、前記複数本の二芯平行電線が互いに撚り合わされている多芯ケーブルであって、
前記二芯平行電線は、
前記二芯平行電線の長さ方向に対して平行に配置された二本の導体と、
前記二本の導体の周囲を覆う絶縁層と、
前記絶縁層に縦添えされる状態で前記絶縁層の周囲を覆う第1のシールドテープと、
前記第1のシールドテープの内側に配置されるドレイン線と、
前記第1のシールドテープを覆う外被と、を備え、
前記絶縁層は、前記絶縁層の断面において前記二本の導体が並ぶ方向を左右方向とし、この左右方向に対する垂直方向を上下方向とするとき、前記二本の導体の上下に、左右方向に延びる第1平坦部と、前記第1平坦部に対向する第2平坦部と、を有し、前記二本の導体の左右に、第1半円周部と、前記第1半円周部に対向する第2半円周部と、を有し、
前記絶縁層の前記二芯平行電線の長さ方向に垂直な断面は、短軸の長さの1.7倍以上2.2倍以下を長軸の長さとする長円形状であり、前記長円形状における外形線と長軸の垂直二等分線との交点を含む部分である前記第1平坦部に溝を有し、
前記ドレイン線は、その一部が、前記絶縁層よりも前記第1のシールドテープ側に突出するように前記溝に保持されており、
前記導体の断面積は0.16mm2以下であって、
前記二芯平行電線の撚り合わせの撚りピッチは150mm以上225mm以下である、多芯ケーブル。
【請求項2】
前記溝は、前記ドレイン線の外径または厚みの0.5倍より大きく0.9倍以下の深さを有する、請求項1に記載の多芯ケーブル。
【請求項3】
前記ドレイン線は、断面が円形であり、
前記溝は、前記ドレイン線の側面に沿う円弧上の底面を有する、請求項1又は請求項2に記載の多芯ケーブル。
【請求項4】
断面において、前記第1のシールドテープは前記溝を有する面に対向する側の前記絶縁層の側面において二本の導体の中心同士の間隔の0.7倍から1.3倍の長さで重複している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項5】
前記二芯平行電線の外周にはドレイン線に対応する部分に膨らみを有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項6】
前記第1のシールドテープは、巻き付け開始位置から巻き付け終了位置までの領域を覆う重なり部を有し、
前記重なり部は前記第2平坦部に配置される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項7】
他のドレイン線が前記第2平坦部に形成された溝に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項8】
前記導体は銅線であり、
前記ドレイン線は錫めっき銅線である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。」

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、2本の絶縁電線が平行に並列された2心平行ケーブルを複数本一括して撚り合わせ、外被を施してなる多心ケーブルにおいて、単位時間に多く製造できる2心平行ケーブルを使用して、多心ケーブル内での2心平行ケーブルの配列を安定化し、且つ全ての2心平行ケーブルの減衰特性を良好に保つことにある。」

イ 「【発明の効果】
【0010】
本発明の多心ケーブルは、2本の絶縁電線が平行に並列された2心平行ケーブルのシースが樹脂を押出被覆したものであるため、単位時間当たり生産性が良い。また、本発明の多心ケーブルでは、セカントモジュラスが200MPa以上400MPa以下の樹脂を用いているため、多心ケーブル内での2心平行ケーブルの配列を安定化し、且つ全ての2心平行ケーブルの減衰特性を良好に保つことができる。」

ウ 「【0013】
コア集合体10は、2心平行ケーブル11が複数本一括して撚り合わされて集合したものである。なお、本例では、8本の2心平行ケーブル11からなる多心ケーブル1を挙げて説明するが、2心平行ケーブル11の数はこれに限ったものではなく、2以上であればよい。また、2心平行ケーブル11の構成については後述する。」

エ 「【0019】
次に、本発明の主たる特徴である2心平行ケーブル11について説明する。
2心平行ケーブル11は、2本の絶縁電線が平行に(つまり撚らずに)並列されたケーブルであり、対信号線又はコア電線とも呼ばれる。各絶縁電線は、信号導体11aが絶縁体11bで被覆された電線である。信号導体11aは、軟銅又は錫メッキ軟銅線で、例えば、AWG24〜33相当の単線又は撚り線が用いられる。絶縁体11bは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂が用いられる。絶縁電線の径は0.55〜1.70mmである。
【0020】
そして、2心平行ケーブル11は、2本の絶縁電線と共にドレイン線11cを並列した状態でその外側に金属テープ(シールドテープ)11dが縦添えされ、さらにそのシールドテープ11dの外側に被覆11eが施されてなる。ここで、2本の絶縁電線は平行に密着して並列されており、それにドレイン線11cを添わせている。ドレイン線11cは1本で図示しているが、2心平行ケーブルの絶縁電線の並列面の反対側にもう1本追加し、合計2本としてもよい。
【0021】
2心平行ケーブル11は、概略的には、長辺と短辺を有する長円状、楕円状、めがね状などの外形断面で形成されるが、ドレイン線11cの位置がやや突出した形状となってもよい。また、2心平行ケーブル11は、その外径断面に依らず、基本的に被覆11eの厚みはどの位置でも一定とし、例えば0.05〜0.30mmの厚みの被覆11eが用いられる。
【0022】
そして、このような2心平行ケーブル11をコア集合体10として撚り合せることになるが、撚り合わせる本数に制限はなく、例えば2〜24対程度で撚り合される。撚り合せのピッチは、例えば100mm〜500mmピッチで、ほぼ円形となるように撚り合される。このような撚り合わせにより、ほぼ円形になるようにコア集合体10が形成されるが、何らかの対策を施さないと、ケーブル化後の形状・配列は不確定であり不安定なものとなる。」

オ 【図1】「



カ 上記エ【0019】には「信号導体11aは、」「AWG24〜33相当の単線又は撚り線が用いられる。」と記載される。AWGが電線の規格であって、AWG24の電線の導体の断面積が、0.2047mm2であり、AWG33の電線の導体の断面積が、0.02554mm2であることは、当業者であれば、技術常識であるといえるから、引用文献1には、「信号導体11aは、断面積が0.02554mm2〜0.2047mm2の単線又は撚り線が用いられる」ことが記載されているに等しい。

キ 上記オ【図1】の記載、上記エ【0020】の「2本の絶縁電線は平行に密着して並列されており、それにドレイン線11cを添わせている。」との記載、及び、上記エ【0021】の「ドレイン線11cの位置がやや突出した形状となってもよい。」との記載から、は、「ドレイン線11cは、その一部が、絶縁体11bよりもシールドテープ11d側に突出するように2つの絶縁体11bの間に添わせている」ことが記載されていると認められる。

ク 上記エ【0019】の記載から、上記オ【図1】において、符号「11a」、「11b」が付されたものが、それぞれ「信号導体」、「絶縁体」であると認められる。そうすると、引用文献1には、「絶縁体11bは、前記絶縁体11bの断面において2本の信号導体11aが並ぶ方向を左右方向とするとき、前記2本の信号導体11aの左右に、第1半円周部と、前記第1半円周部に対向する第2半円周部と、を有」することが記載されていると認められる。

(2)引用発明
上記(1)から引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「2心平行ケーブル11が複数本撚り合わされてなる多心ケーブル1であって、
2心平行ケーブル11は、2本の絶縁電線が平行に並列されたケーブルであり、
各絶縁電線は、信号導体11aが絶縁体11bで被覆された電線であり、
信号導体11aは、断面積が0.02554mm2〜0.2047mm2の単線又は撚り線が用いられ、
2心平行ケーブル11は、2本の絶縁電線と共にドレイン線11cを並列した状態でその外側にシールドテープ11dが縦添えされ、
さらにそのシールドテープ11dの外側に被覆11eが施されてなり、
絶縁体11bは、前記絶縁体11bの断面において2本の信号導体11aが並ぶ方向を左右方向とするとき、前記2本の信号導体11aの左右に、第1半円周部と、前記第1半円周部に対向する第2半円周部と、を有し、
ドレイン線11cは、その一部が、絶縁体11bよりもシールドテープ11d側に突出するように2つの絶縁体11bの間に添わせていて、
2心平行ケーブル11を撚り合され、撚り合せのピッチは、100mm〜500mmピッチで、撚り合される、
多心ケーブル1。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0013】【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この実施の形態におけるシールドケーブルの概略構成図を示したものである。図1において、シールドケーブル10は、長手方向に平行に配設された導体12a、12bに絶縁体14が同一平面内で一括して押出成形被覆されてなる信号線16aと信号線16bとの間の絶縁体14表面に形成された溝状のドレイン線配設溝20にドレイン線18が配設され、これらの外周にシールド導体22とシース24とが順に被覆された構成になっている。
【0014】上記において絶縁体14は、押出成形機に備えられた成型ダイスなどにより、略めがね形状に一体的に形成されたもので、導体12a、12bの間の絶縁体14を挟んで長手方向両側の絶縁体14表面に形成された溝の一方が、ドレイン線18を配設するためのドレイン線配設溝20とされている。」

【図1】「



3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】図1ないしは図3を参照するに、この実施の形態に係わる伝送ケーブル1は、一対の信号線3がほぼ平行にされ、且つ押出成形により絶縁製の同一のシース樹脂5によって一括被覆固定され2芯のペアケーブル7が構成されている。このように一対の信号線3が一括に押出成形されることにより2芯のペアケーブル7の等長管理が確実に行われるので、対内スキュー及び対間スキューが低減されることになる。
【0015】さらに、上記のペアケーブル7にはドレイン線9が一対の信号線3の間に位置するようにシース樹脂5の表面に添って設けられ、上記のドレイン線9とペアケーブル7の外側からアルミニウムテープなどの導電テープ11によりテープ巻きが行われてシールドされる。
【0016】なお、ペアケーブル7のシース樹脂5の外形形状は図1ないしは図3に示されているように種々に変化せしめても構わず、図1ないしは図3の形状以外の他の形状であっても構わない。
【0017】図1の実施の形態の伝送ケーブル1ではペアケーブル7のシース樹脂5の表面に一対の信号線3の間に位置してドレイン線配設用の溝部13が設けられている。なお、図1では2つの溝部13が設けられているが、この溝部13は少なくとも1つ設けられていればよい。
【0018】上記の溝部13を設ける理由としては、ドレイン線9が信号線3に影響を与えるようなシース樹脂5への食い込みを抑えるためには、伝送ケーブル1内でドレイン線9が移動しないようにする必要がある。したがって、ドレイン線9が上記の溝部13の部分に埋め込まれて導電テープ11によりテープ巻きされることにより、ドレイン線9の移動が少なくなる。また、ドレイン線9の位置が溝部13の部分に決まることによりグランド(GND)面が均一化されるので伝送特性も向上することとなる。
【0019】なお、図1の実施の形態では、上記の溝部13の深さB及び開口広がり幅Cがドレイン線9の直径Aより大きく形成されている。これによりドレイン線9が信号線3に影響を与えるようなシース樹脂5への食い込みが少ないので特定インピーダンスの確保が可能となる。また、導電テープ11のシールド内におけるドレイン線9の移動もより一層少なくなるのでグランド面も常に均一に確保される。」

【図1】「



【図2】「



第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「複数本」の「2心平行ケーブル11」は、本願発明1の「複数本の二芯平行電線」に相当する。

イ 引用発明の「2心平行ケーブル11が複数本撚り合わされてなる多心ケーブル1」は、本願発明1の「複数本の二芯平行電線が互いに撚り合わされている多芯ケーブル」に相当する。

ウ 引用発明において、「2心平行ケーブル11は、2本の絶縁電線が平行に並列され」、さらに、「各絶縁電線は、信号導体11aが絶縁体11bで被覆された電線」であるから、引用発明の「2心平行ケーブル11」は、「2本の」「信号導体11aが平行に」配置されているといえる。そして、この「平行」が、2本の信号導体11aの長さ方向に対することであることも明らかである。そして、引用発明の「信号導体11a」が本願発明1の「導体」に相当しているから、引用発明においても、二芯平行電線は、二芯平行電線の長さ方向に対して平行に配置された二本の導体を備えているといえる。

エ 引用発明は、「信号導体11aが絶縁体11bで被覆され」るから、引用発明の「絶縁体11b」は「信号導体11a」の周囲を覆っているといえる。引用発明の「絶縁体1b」は本願発明1の「絶縁層」に相当し、上記ウで検討したように、引用発明では、信号導体11aが2本あることを考慮すれば、引用発明の「二芯平行電線は、」「二本の導体の周囲を覆う絶縁層を備えているといえる。

オ 引用発明では、「2心平行ケーブル11は、2本の絶縁電線と共にドレイン線11cを並列した状態でその外側にシールドテープ11dが縦添えされ」る。「2本の絶縁電線」は、上記第4の1(1)オ【図1】の記載及び上記エでの検討も併せて考えると、引用発明では、「2本の絶縁電線」すなわち、「2本の」「信号導体11aの周囲を覆」う「絶縁体11b」の周囲を、「絶縁体11b」に縦添えされる状態で覆う「シールドテープ11d」を備えているといえる。引用発明の「シードテープ11d」は、本願発明1の「第1のシールドテープ」に相当するから、引用発明の「二芯平行電線は、」「絶縁層に縦添いされる状態で前記絶縁層の周囲を覆う第1のシールドテープを備え」ているといえる。

カ 上記オで検討したように、引用発明では、「2心平行ケーブル11は、」「ドレイン線11cを並列した状態でその外側にシールドテープ11dが縦添えされ」るから、引用発明の「二芯平行電線は、」「第1のシールドテープの内側に配置されるドレイン線」を備えているといえる。

キ 引用発明の「被覆11e」は、本願発明1の「外被」に相当するから、引用発明の「二芯平行電線は、」「第1のシールドテープを覆う外被」を備えているといえる。

ク 引用発明の「絶縁体11b」、「2本の信号導体11a」は、本願発明1の「絶縁層」、「二本の導体」に相当するから、引用発明の「絶縁層」は、「前記絶縁層の断面において二本の導体が並ぶ方向を左右方向とするとき、前記二本の導体の左右に、第1半円周部と、前記第1半円周部に対向する第2半円周部と、を有し」ている。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「複数本の二芯平行電線を有し、前記複数本の二芯平行電線が互いに撚り合わされている多芯ケーブルであって、
前記二芯平行電線は、
前記二芯平行電線の長さ方向に対して平行に配置された二本の導体と、
前記二本の導体の周囲を覆う絶縁層と、
前記絶縁層に縦添えされる状態で前記絶縁層の周囲を覆う第1のシールドテープと、
前記第1のシールドテープの内側に配置されるドレイン線と、
前記第1のシールドテープを覆う外被と、を備え、
前記絶縁層は、前記絶縁層の断面において二本の導体が並ぶ方向を左右方向とするとき、前記二本の導体の左右に、第1半円周部と、前記第1半円周部に対向する第2半円周部と、を有する、
多芯ケーブル。」

(相違点1)
絶縁層について、本願発明1では、「絶縁層の断面において前記二本の導体が並ぶ方向を左右方向とし、この左右方向に対する垂直方向を上下方向とするとき、前記二本の導体の上下に、左右方向に延びる第1平坦部と、前記第1平坦部に対向する第2平坦部と、を有」するのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

(相違点2)
絶縁層について、本願発明1では、「絶縁層の前記二芯平行電線の長さ方向に垂直な断面は、短軸の長さの1.7倍以上2.2倍以下を長軸の長さとする長円形状であ」るのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

(相違点3)
絶縁層について、本願発明1では、「長円形状における外形線と長軸の垂直二等分線との交点を含む部分である前記第1平坦部に溝を有」するのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

(相違点4)
ドレイン線について、本願発明1では、「その一部が、前記絶縁層よりも前記第1のシールドテープ側に突出するように前記溝に保持されて」いるのに対し、引用発明では、ドレイン線の一部が、絶縁層よりもシールドテープ側に突出するように配置されているものの、ドレイン線が溝に保持されていない点。

(相違点5)
本願発明の「導体の断面積は0.16mm2以下であ」るのに対し、引用発明の「導体」の「断面積が0.02554mm2〜0.2047mm2」である点。

(相違点6)
二芯平行電線の撚り合わせの撚りピッチについて、本願発明では、150mm以上225mm以下であるのに対し、引用発明は、100mm〜500mmとなっている点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点6について先に検討する。
本願発明1での「二芯平行電線の撚り合わせの撚りピッチ」を「150mm以上225mm以下」との規定は、本願明細書の【0051】−【0053】に記載された具体例に基づいて設定されたものであるであるから、撚りピッチの下限値を示す「150mm」、及び、同じく上限値を示す「225mm」は、臨界的意義を有するものである。
二芯平行電線の撚り合わせの撚りピッチの下限値及び上限値を、臨界的意義のある相違点6のように設定することについて、引用文献2−3には、記載も示唆もなく、また、このように設定することが本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2−3に記載された技術的事項から、上記相違点6に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2−8について
本願発明2−8は、本願発明1を減縮した発明である。したがって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
上記第5で説示したとおり、本願発明1−8は、当業者が引用発明及び引用文献2−3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-09-11 
出願番号 P2020-511714
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中野 裕二
特許庁審判官 野崎 大進
篠塚 隆
発明の名称 多芯ケーブル  
代理人 弁理士法人信栄事務所  

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