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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1402804
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-05-29 
確定日 2023-09-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第7179664号発明「洗浄料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7179664号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7179664号の請求項1に係る特許についての出願は、平成31年3月29日に特許出願され、令和4年11月18日に特許権の設定登録がされ、同年11月29日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和5年5月29日に、特許異議申立人 竹内 みどり(以下「特許異議申立人」という。)により、請求項1に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。

第2 特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
下記(A)〜(D)を含有する洗浄料組成物。
(A)アシルグリシン塩
(B)アシルアルキル中性アミノ酸塩
(C)両性界面活性剤
(D)マルチトール」

第3 特許異議申立人が申立てた理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証〜甲第8号証を提出して、以下の申立理由1及び2を主張している。

[申立理由1]
本件特許発明1は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲第1〜4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。



甲第1号証:特開2012−102194号公報
甲第2号証:特開2012−180292号公報
甲第3号証:竹原将博、アミノ酸系界面活性剤、油化学、1985年、第34巻第11号、p.964〜972
甲第4号証:野々村美宗、泡の生成メカニズムと応用展開、株式会社シーエムシー出版、2017年4月28日第1刷発行、p.57〜67、p.222〜227
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
なお、申立理由1は、甲1又は甲2を引用例とする理由である。

[申立理由2]
本件特許発明1は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許発明1は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。



具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件発明は、泡質が良好で、泡持ちに優れる洗浄料組成物を提供することを課題とするものであるところ(本件明細書、【0004】)、本件発明における成分(A)〜(C)には多くの化合物が含まれるうえ、各成分の含有量についても一切規定されていないから、本件発明には広範な組成物が包含されるのに対し、本件明細書において上記課題を解決できることを確認したのは、マルチトール10%、ココイルグリシンK19%、ラウロイルメチルアラニンNa1%、コカミドプロピルベタイン2.5%、ココアンホ酢酸Na2.5%を含有する洗浄料組成物だけである(【0030];【表1】中実施例1)。このように本件明細書には、本件発明の課題を解決できることを裏付ける組成がただ1つしか存在しないのであるから、当業者が本件発明に含まれるあらゆる組成物において当該課題を解決できると認識することなどできないことは明らかである。

なお、以下の甲3、甲5〜8は、サポート要件の理由を説明するための証拠として提出されている。

甲第3号証:竹原将博、アミノ酸系界面活性剤、油化学、1985年、第34巻第11号、p.964〜972
甲第5号証:特開2000−204035号公報
甲第6号証:特開2011−157459号公報
甲第7号証:特開2017−210416号公報
甲第8号証:公益社団法人 日本油化学会、油脂・脂質・界面活性剤データブック、丸善出版株式会社、平成24年12月30日発行、p.485〜494
(以下「甲第3号証」等を「甲3」等という。)

第4 当審合議体の判断
当審合議体は、本件特許発明1に係る特許は、特許異議申立人が申立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 甲1〜8の記載事項
(1)甲1の記載事項(以下「・・・」は記載の省略を表し、下線及び枠線は当審合議体が追記した。以下同様。)
(1a)「【請求項1】
以下の成分を含む洗浄液を、フォーマー容器に充填したことを特徴とする水性液体洗浄剤
A)アシルアミノ酸塩
B)高級脂肪酸塩
C)グリセリン
D)糖アルコール
E)カチオン化ヒアルロン酸またはその塩
F)水
【請求項2】
さらに両性界面活性剤を含む洗浄液を、フォーマー容器に充填したことを特徴とする請求項1の水性液体洗浄剤
【請求項3】
アシルアミノ酸塩がアシルグリシン塩である請求項1乃至請求項2の洗浄液を、フォーマー容器に充填したことを特徴とする水性液体洗浄剤
【請求項4】
高級脂肪酸塩の炭素数の平均が12〜16である請求項1乃至請求項3の洗浄液を、フォーマー容器に充填したことを特徴とする水性液体洗浄剤
【請求項5】
ソルビトール、マルチトールから選ばれる1種以上である請求項1乃至請求項4の洗浄液を、フォーマー容器に充填したことを特徴とする水性液体洗浄剤」

(1b)「【0001】
本発明は、泡が細かく弾力があり、使用すると、つっぱり感のない使用感の優れた泡状洗浄料に関する。特に洗顔用に最適である。
・・・
【0004】
本発明の目的はフォーマー容器に充填することによって、使用時にきめ細かく、弾力のある泡を生成し、且つ保存時に固形物が生成したり増粘等がない洗浄液を得ることである。
・・・
【0006】
まず、アシルアミノ酸塩について説明する。
アシルアミノ酸塩のアシル基は、炭素数8〜22の脂肪酸が良好に使用でき、単一のアシル基、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸等から誘導されるアシル基、又はそれらの混合物でも良い。
また、アシルアミノ酸塩を構成するアミノ酸としてはグリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられ、D−体、L−体、及びDL−体の別を問わず使用できる。さらに、N−長鎖アシルアミノ酸の対塩基はナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルチニン、オキシリジン等を挙げることができる、上記の構成成分を各々一種又は二種以上を目的に応じて適宜選択して用いることができる。
このなかでも、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム等が最適である。
配合量は、アシルアミノ酸塩の種類や製剤の用途によって変化するが、1〜20%、好ましくは3〜12%が適当である。
【0007】
高級脂肪酸塩であるが、脂肪酸としては飽和、不飽和もしくは直鎖、分岐いずれの脂肪酸も用いることができるが、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などの単一脂肪酸の他、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の混合脂肪酸が挙げられる。この中で脂肪酸として炭素数の平均が12〜16が好ましい。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパンジオールなどのアルカノールアミン、リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられ、この中で無機塩基およびトリエタノールアミン塩が好ましく、特に起泡性等の観点から水酸化カリウムが好ましい。これらはあらかじめ中和物として配合してもよいし、別々に配合して中和しても構わない。
配合量は、脂肪酸や塩基の種類や製剤の用途によって変化するが、0.1〜10%、好ましくは0.2〜3%が適当である。
【0008】
グリセリンは配合量としては3〜30%、好ましくは5〜20%が適当である。
糖アルコールは、キシリトール、アラビトール、リビトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、キシロビトール、マルチトール、ラクチトール、還元澱粉加水分解物等から選択される1種または2種以上で、特にソルビトールやマルチトールが本発明には適当であり、配合量としては、グリセリンの配合量や製剤の目的等によって変化はあるが3〜20%、好ましくは5〜15%である。
・・・
【0010】
水は配合原料を溶解するのに必要なもので、粘度の調節にも必要である。配合量としては30〜80%好ましくは35〜70%が適当である。
このほか、両性界面活性剤、例えば、カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤も配合するとよいが、本発明者らが鋭意検討した結果、ベタイン型のカルボン酸型両性界面活性剤が有効なことがわかった。
【0011】
さらに、グリセリン、糖アルコール以外の多価アルコール、例えば、酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、酸化プロピレン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、
アシルアミノ酸以外の陰イオン界面活性剤、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、
非イオン界面活性剤、例えば、エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤
等を配合し任意の使用感を持つ製剤を得る。」

(1c)「【実施例】
【0017】
以下の表1と表2に実施例と比較例を記すがこれに限定されるものではない。数値は重量部を表す。また、その作成方法はそれぞれ計量し、撹拌溶解したのち、KOHでpH8.0に調整した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
なお、表1及び表2の注の原料は以下の商品を用いた。
注1)ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム水溶液は、味の素株式会社製、商品名『アミライトGCK−12K』
注2)1%ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム水溶液は、キューピー株式会社製、商品名『ヒアロベール』
注3)ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム水溶液は、味の素株式会社製、商品名『アミライトGCS−12K』
注4)2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインは、川研ファインケミカル株式会社製、商品名『ソフダノリンCL』
注5)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインは、花王株式会社製、商品名『アンヒトール20BS』
【0021】
また表1の官能評価は女性10名に実施例1を基準として比較例1〜4を以下の基準で評価し、平均を表1の下部に記載した。
3:実施例1よりかなり良好
2:実施例1より良好
1:実施例1より少し良好
0:実施例1と同等
−1:実施例1より少し悪い
−2:実施例1より悪い
−3:実施例1かなり悪い
【0022】
実施例2〜5もフォーマー容器に充填されて使用させる水性液体洗浄剤としての機能、すなわち、低温や保存によって固形物が生成したり、粘度が高くなることがない製剤が得られ、泡の弾力性や泡立ちのよさ、使用後のツッパリ感もない優れた製剤が得られた。」

(2)甲2の記載事項
(2a)「【請求項1】
(A)N−アシルグリシン塩、(B)20℃で液体の1価の高級アルコール、(C)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の非イオン界面活性剤ならびに(D)二糖および3価以上の多価アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の水酸基含有化合物を含有してなる半固体状洗浄剤。
・・・
【請求項4】
(A)N−アシルグリシン塩が、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムおよび/またはN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウムである請求項1〜3のいずれかに記載の半固体状洗浄剤。
【請求項5】
(D)水酸基含有化合物が、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、スクロース、ラクトース、グリセリンおよびジグリセリンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の半固体状洗浄剤。」

(2b)「【0004】
これまで、N−アシルアミノ酸塩を含有し、温度安定性が改善された洗浄剤として、N−アシルアミノ酸アルカリ塩とベタイン系両性界面活性剤と水と有機酸とを含有する弱酸性皮膚洗浄剤(例えば、特許文献1などを参照)、N−長鎖アシル酸性アミノ酸および/またはその塩と多価アルコールと非イオン性界面活性剤と2価以上のカチオンおよび1価以上のアニオンからなる塩と水とを含有する低温安定クリーム状洗浄剤(例えば、特許文献2などを参照)などが開発されている。しかしながら、これらの洗浄剤では、温度安定性が、ある程度向上されているものの、いまだ十分な温度安定性が確保されていない。また、これらの洗浄剤は、泡立ち感も不十分である。
・・・
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、高い温度安定性を示し、良好な泡立ち感が得られ、洗浄後に良好な肌状態を与える半固体状洗浄剤を提供することを課題とする。」

(2c)「【0013】
(A)成分であるN−アシルグリシン塩は、本発明の半固体状洗浄剤では、優れた洗浄効果と洗浄後の皮膚にしっとりとした感触を与えるために用いられる。
【0014】
N−アシルグリシン塩のアシル基は、飽和または不飽和の直鎖アシル基であってもよく、飽和または不飽和の分岐アシル基であってもよい。アシル基の炭素数は、洗浄後の皮膚にしっとりとした感触を与える観点から、好ましくは8〜22である。アシル基としては、例えば、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、ベヘニル基、ヤシ油脂肪酸由来のアシル基(以下、「ヤシ油脂肪酸アシル基」という)、パーム油脂肪酸由来のアシル基(以下、「パーム油脂肪酸アシル基」という)などが挙げられる。
【0015】
N−アシルグリシン塩としては、例えば、N−オクタノイルグリシングリシン塩、N−デカノイルグリシン塩、N−ラウロイルグリシン塩、N−ミリストイルグリシン塩、N−パルミトイルグリシン塩、N−ステアロイルグリシン塩、N−イソステアロイルグリシン塩、N−オレオイルグリシン塩、N−リノレオイルグリシン塩、N−ベヘニルグリシン塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシン塩、N−パーム油脂肪酸アシルグリシン塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。これらのN−アシルグリシン塩のなかでは、本発明の半固体状洗浄剤の使用時の泡質および温度安定性を向上させる観点から、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシン塩が好ましい。
【0016】
塩としては、例えば、無機塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。無機塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。有機アミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。塩基性アミノ酸塩としては、例えば、アルギニン塩、リジン塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明の半固体状洗浄剤の使用時の泡質を向上させる観点から、アルカリ金属塩が好ましい。
【0017】
前記N−アシルグリシン塩の具体例としては、N−オクタノイルグリシンナトリウム、N−オクタノイルグリシンカリウム、N−オクタノイルグリシンマグネシウム、N−オクタノイルグリシンカルシウム、N−オクタノイルグリシンアンモニウム、N−オクタノイルグリシンアルミニウム、N−オクタノイルグリシン亜鉛、N−オクタノイルグリシンモノエタノールアミン、N−オクタノイルグリシンジエタノールアミン、N−オクタノイルグリシントリエタノールアミン、N−オクタノイルグリシンアルギニン、N−オクタノイルグリシンリジンなどのN−オクタノイルグリシン塩;N−デカノイルグリシンナトリウム、N−デカノイルグリシンカリウム、N−デカノイルグリシンマグネシウム、N−デカノイルグリシンカルシウム、N−デカノイルグリシンアンモニウム、N−デカノイルグリシンアルミニウム、N−デカノイルグリシン亜鉛、N−デカノイルグリシンモノエタノールアミン、N−デカノイルグリシンジエタノールアミン、N−デカノイルグリシントリエタノールアミン、N−デカノイルグリシンアルギニン、N−デカノイルグリシンリジンなどのN−デカノイルグリシン塩;N−ラウロイルグリシンナトリウム、N−ラウロイルグリシンカリウム、N−ラウロイルグリシンマグネシウム、N−ラウロイルグリシンカルシウム、N−ラウロイルグリシンアンモニウム、N−ラウロイルグリシンアルミニウム、N−ラウロイルグリシン亜鉛、N−ラウロイルグリシンモノエタノールアミン、N−ラウロイルグリシンジエタノールアミン、N−ラウロイルグリシントリエタノールアミン、N−ラウロイルグリシンアルギニン、N−ラウロイルグリシンリジンなどのN−ラウロイルグリシン塩;N−ミリストイルグリシンナトリウム、N−ミリストイルグリシンカリウム、N−ミリストイルグリシンマグネシウム、N−ミリストイルグリシンカルシウム、N−ミリストイルグリシンアンモニウム、N−ミリストイルグリシンアルミニウム、N−ミリストイルグリシン亜鉛、N−ミリストイルグリシンモノエタノールアミン、N−ミリストイルグリシンジエタノールアミン、N−ミリストイルグリシントリエタノールアミン、N−ミリストイルグリシンアルギニン、N−ミリストイルグリシンリジンなどのN−ミリストイルグリシン塩;N−パルミトイルグリシンナトリウム、N−パルミトイルグリシンカリウム、N−パルミトイルグリシンマグネシウム、N−パルミトイルグリシンカルシウム、N−パルミトイルグリシンアンモニウム、N−パルミトイルグリシンアルミニウム、N−パルミトイルグリシン亜鉛、N−パルミトイルグリシンモノエタノールアミン、N−パルミトイルグリシンジエタノールアミン、N−パルミトイルグリシントリエタノールアミン、N−パルミトイルグリシンアルギニン、N−パルミトイルグリシンリジンなどのN−パルミトイルグリシン塩;N−ステアロイルグリシンナトリウム、N−ステアロイルグリシンカリウム、N−ステアロイルグリシンマグネシウム、N−ステアロイルグリシンカルシウム、N−ステアロイルグリシンアンモニウム、N−ステアロイルグリシンアルミニウム、N−ステアロイルグリシン亜鉛、N−ステアロイルグリシンモノエタノールアミン、N−ステアロイルグリシンジエタノールアミン、N−ステアロイルグリシントリエタノールアミン、N−ステアロイルグリシンアルギニン、N−ステアロイルグリシンリジンなどのN−ステアロイルグリシン塩;N−イソステアロイルグリシンナトリウム、N−イソステアロイルグリシンカリウム、N−イソステアロイルグリシンマグネシウム、N−イソステアロイルグリシンカルシウム、N−イソステアロイルグリシンアンモニウム、N−イソステアロイルグリシンアルミニウム、N−イソステアロイルグリシン亜鉛、N−イソステアロイルグリシンモノエタノールアミン、N−イソステアロイルグリシンジエタノールアミン、N−イソステアロイルグリシントリエタノールアミン、N−イソステアロイルグリシンアルギニン、N−イソステアロイルグリシンリジンなどのN−イソステアロイルグリシン塩;N−オレオイルグリシンナトリウム、N−オレオイルグリシンカリウム、N−オレオイルグリシンマグネシウム、N−オレオイルグリシンカルシウム、N−オレオイルグリシンアンモニウム、N−オレオイルグリシンアルミニウム、N−オレオイルグリシン亜鉛、N−オレオイルグリシンモノエタノールアミン、N−オレオイルグリシンジエタノールアミン、N−オレオイルグリシントリエタノールアミン、N−オレオイルグリシンアルギニン、N−オレオイルグリシンリジンなどのN−オレオイルグリシン塩;N−リノレオイルグリシンナトリウム、N−リノレオイルグリシンカリウム、N−リノレオイルグリシンマグネシウム、N−リノレオイルグリシンカルシウム、N−リノレオイルグリシンアンモニウム、N−リノレオイルグリシンアルミニウム、N−リノレオイルグリシン亜鉛、N−リノレオイルグリシンモノエタノールアミン、N−リノレオイルグリシンジエタノールアミン、N−リノレオイルグリシントリエタノールアミン、N−リノレオイルグリシンアルギニン、N−リノレオイルグリシンリジンなどのN−リノレオイルグリシン塩;N−ベヘニルグリシンナトリウム、N−ベヘニルグリシンカリウム、N−ベヘニルグリシンマグネシウム、N−ベヘニルグリシンカルシウム、N−ベヘニルグリシンアンモニウム、N−ベヘニルグリシンアルミニウム、N−ベヘニルグリシン亜鉛、N−ベヘニルグリシンモノエタノールアミン、N−ベヘニルグリシンジエタノールアミン、N−ベヘニルグリシントリエタノールアミン、N−ベヘニルグリシンアルギニン、N−ベヘニルグリシンリジンなどのN−ベヘニルグリシン塩;N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンマグネシウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカルシウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンアンモニウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンアルミニウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシン亜鉛、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンモノエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンジエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンアルギニン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンリジンなどのN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシン塩;N−パーム油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンマグネシウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンカルシウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンアンモニウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンアルミニウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシン亜鉛、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンモノエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンジエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンアルギニン、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンリジンなどのN−パーム油脂肪酸アシルグリシン塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでは、本発明の半固体状洗浄剤の使用時の泡質および温度安定性を向上させる観点から、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムおよび/またはN−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウムが好ましい。
・・・
【0036】
本発明の半固体状洗浄剤には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、保湿剤、油成分、殺菌剤、制汗剤、清涼剤、パール化剤、スクラブ剤、香料、水などが含まれていてもよい。」

(2d)「【実施例】
【0041】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1〜14および比較例1〜15)
表1および表2に示される組成となるように各成分を室温下で配合し、混合することにより、洗浄剤を得た。なお、表1および表2において、カッコ内の「E.O.」はオキシエチレン基を示す。また、「E.O.」の前に記載されている数字はオキシエチレン基の付加モル数を示す。
【0043】
なお、表1および表2に記載の主な原料の入手先は、以下のとおりである。
N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム〔味の素(株)製、商品名:アミライト GCS−11〕
N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム〔味の素(株)製、商品名:アミライト GCK−11〕
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アラニンナトリウム〔味の素(株)製、商品名:アミライト ACS−12〕
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム〔味の素(株)製、商品名:アミソフト CK−22〕
ポリオキシエチレンステアリルエーテル(2E.O.)〔日本サーファクタント工業(株)製、商品名:NIKKOL BS−2〕
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)〔日本サーファクタント工業(株)製、商品名:NIKKOL MYS−40V〕
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)〔日本サーファクタント工業(株)製、商品名:NIKKOL HCO−60〕
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)〔花王(株)製、商品名:レオドール TW−S120V〕
【0044】
つぎに、各実施例および各比較例で得られた洗浄剤の製造直後における20℃での状態を以下の評価方法に基づいて評価した。
【0045】
〔洗浄剤の20℃での状態の評価方法〕
各実施例および各比較例で得られた洗浄剤50gを、ポリプロピレン製のチューブ容器(100mL容、吐出口の内径5mm)の内部に注入し、吐出口まで充填した。その後、このチューブ容器の吐出口を下に向けて、20℃の雰囲気中で10秒間保持し、チューブ容器の吐出口からの洗浄剤の垂れ落ちの有無を目視で観察した。
【0046】
このとき、洗浄剤がチューブ容器の吐出口から垂れ落ちない場合、当該洗浄剤の状態を「半固体状」と定義した。また、洗浄剤がチューブ容器の吐出口から垂れ落ちる場合、当該洗浄剤の状態を「液体状」と定義した。なお、本明細書において、「液体状」には、「乳液状」が包含される。これらの結果を表1および表2に併記する。表1および表2において、「○」は洗浄剤の20℃での状態が半固体状であることを示し、「×」は洗浄剤の20℃での状態が液体状であることを示す。
【0047】
表1および表2に示された結果から、各実施例および比較例4〜15それぞれで得られた洗浄剤の20℃での状態は、「半固体状」であることがわかる。また、比較例1〜3それぞれで得られた洗浄剤は、「液体状」であることがわかる。
【0048】
(試験例)
各実施例および各比較例で得られた洗浄剤の温度安定性、起泡時の泡立ち感および洗浄後の肌状態を以下の評価方法に基づいて評価した。これらの結果を表1および表2に併記する。
【0049】
〔温度安定性の評価方法〕
各実施例または各比較例で得られた洗浄剤50gを、ポリプロピレン製のチューブ容器(100mL容、吐出口の内径5mm)の内部に注入し、吐出口まで充填し、5℃の恒温槽、40℃の恒温槽または温度サイクル試験用恒温槽に、4週間保存した。なお、温度サイクル試験用恒温槽は、1日あたり5℃から45℃への昇温(昇温時間:12時間)および45℃から5℃への降温(降温時間:12時間)のサイクルを、それぞれ1回ずつ行なうように設定した。その後、チューブ容器の吐出口を10秒間下に向けて20℃の雰囲気中でチューブ容器の吐出口からの各洗浄剤の垂れ落ちの有無を目視で観察した。また、20℃の雰囲気中で透明ガラス板上に各洗浄剤を吐出し、吐出された各洗浄剤の状態を目視で観察した。
【0050】
つぎに、各温度条件下に保存したときの各洗浄剤の垂れ落ちの有無および状態に基づき、以下の評価基準に従って、各実施例または各比較例で得られた洗浄剤の温度安定性を評価した。なお、表中、「サイクル」は、1日あたり5℃から45℃への昇温(昇温時間:12時間)および45℃から5℃への降温(降温時間:12時間)のサイクルを、それぞれ1回ずつ行なうことを示す。
【0051】
<評価基準>
○:チューブ容器の吐出口から洗浄剤の垂れ落ちがなく、洗浄剤がペースト状の状態を保持している。
△:チューブ容器の吐出口から洗浄剤の僅かな垂れ落ちが認められ、洗浄剤の表面に明らかな流動化が認められる。
×:チューブ容器の吐出口から洗浄剤の垂れ落ちが認められ、洗浄剤の状態が液体状である。
【0052】
〔泡立ち感および肌状態の評価方法〕
官能評価パネル20名に、各実施例および各比較例で得られた洗浄剤を洗顔剤として使用してもらい、起泡時の泡立ち感および洗浄後の肌状態を評価させた。そして、各実施例および各比較例で得られた洗浄剤について、「泡立ち感に優れる」と回答した官能評価パネルの人数および「肌のつっぱり感はなく、しっとりしている」と回答した官能評価パネルの人数を集計した。
【0053】
<泡立ち感の評価基準>
◎:官能評価パネル20名中、16名以上が「泡立ち感に優れる」と回答。
○:官能評価パネル20名中、11〜15名が「泡立ち感に優れる」と回答。
△:官能評価パネル20名中、6〜10名が「泡立ち感に優れる」と回答。
×:官能評価パネル20名中、5名以下が「泡立ち感に優れる」と回答。
【0054】
<肌状態の評価基準>
◎:官能評価パネル20名中、16名以上が「肌のつっぱり感はなく、しっとりしている」と回答。
○:官能評価パネル20名中、11〜15名が「肌のつっぱり感はなく、しっとりしている」と回答。
△:官能評価パネル20名中、6〜10名が「肌のつっぱり感はなく、しっとりしている」と回答。
×:官能評価パネル20名中、5名以下が「肌のつっぱり感はなく、しっとりしている」と回答。
【0055】
【表1】

・・・
【0059】
これらの結果から、各実施例で得られた洗浄剤は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分とが併用されているため、半固体状であり、高い温度安定性を示し、良好な泡立ち感が得られ、洗浄後に良好な肌状態を与えることがわかる。」

(3)甲3の記載事項
(3a)「



(p.966、右欄下から第4行〜p.967、左欄第6行)

(3b)「


(p.967、左欄、図−2)

(3c)「


(p.967、右欄、図−3)

(3d)



(p.967、右欄、表−4)

(4)甲4の記載事項
(4a)「


(p.61、第9行〜最終行及び図3)

(4b)「

」(p.223、第19行〜第23行)

(4c)「


(p.225、第10行〜第16行)

(5)甲5の記載事項
(5a)「【0020】
N−アシルアミノ酸のアシル化部分(RCO−)の炭素数については、10から18が好ましく、より好ましくは12〜14である。炭素数が10未満であると製剤の粘度が下がり泡立ちも低下し、炭素数が18を越えると、製剤の硬度が上がり泡立ちも低下する。また、直鎖、分岐及び飽和、不飽和に関わらず使用することができるが、直鎖の方が泡立ちの点で好ましく、飽和の方が製剤の安定性の点で好ましい。特に好ましいのは、炭素数が12の直鎖アシル基及びこれを主成分とするヤシ油脂肪酸アシル基である。」

(6)甲6の記載事項
(6a)「【0012】
N−アシルアミノ酸型界面活性剤としては、そのアシル基は炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のアシル残基を有するものが用いられ、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エライジン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の単位組成の脂肪酸のアシル残基が挙げられ、その他にヤシ脂肪酸、パーム油脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸あるいは合成により得られる脂肪酸(分岐脂肪酸を含む)によるアシル残基であってもよい。アシル残基は起泡性、泡のクリーミィ性の点で、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヤシ油脂肪酸、オレイン酸等の、炭素数12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸残基、又はその混合物が好ましい。そしてこれに結合するアミノカルボン酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン酸、ホモシステイン酸等の酸性アミノ酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ザルコシン、β−アラニン、γーアミノ酪酸、ε−アミノカプロン酸、セリン、ホモセリン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、シスチン、システイン、メチオニン等の中性アミノ酸等が挙げられるが、起泡性、入手しやすさの点で酸性アミノ酸が好適である。これらのアシルアミノカルボン酸は、光学活性及びラセミ体のいずれも用いることができる。」

(7)甲7の記載事項
(7a)「【0009】
N−アシルアミノ酸又はその塩のアシル基は、泡立ち等を向上させる観点から炭素数8〜18の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数8〜16の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものがより好ましく、炭素数8〜14の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものがさらに好ましい。このような脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これら脂肪酸のなかでも、泡質や保存安定性を向上させる観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸から選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、ラウリン酸がより好ましい。また、N−アシルアミノ酸のアシル基は、上記の脂肪酸の混合脂肪酸を由来としたもの、例えば、ヤシ油、パーム核油などを原料にして得られた脂肪酸由来のものであってもよい。なかでも、ヤシ油脂肪酸やパーム核脂肪酸を由来としたものが好ましく、ヤシ油脂肪酸を由来としたものがより好ましい。」

(8)甲8の記載事項
(8a)「


(p.492、右上欄、表15・12)

(8b)「


(p.495、中段、表15・15)

2 引用発明
(1)甲1について
甲1は、A)〜F)で示される成分を含む洗浄液を、フォーマー容器に充填した水性液体洗浄剤に係る発明を開示するものであるところ(摘記(1a))、該発明に対応し、その具体例を示した実施例4又は実施例5の記載から(摘記(1c))、それらの実施例に係る発明として、次の発明(実施例4に係る発明(以下「甲1−1発明」という。)、実施例5に係る発明(以下「甲1−2発明」という。)が記載されているといえる。

甲1−1発明:
「ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム水溶液20.0重量部、ミリスチン酸カリウム1.0重量部、パルミチン酸カリウム1.0重量部、グリセリン5.0重量部、1.3ブチレングリコール5.0重量部、70%ソルビトール水溶液10.0重量部、75%マルチトール水溶液10.0重量部、1%ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム水溶液(0.15%パラオキシ安息香酸メチル含有)0.10重量部、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン5.0重量部、精製水39.90重量部、3%コンキオリン加水分解水溶液3.0重量部をそれぞれ含む洗浄液をフォーマー容器に充填した水性液体洗浄剤。」

甲1−2発明:
「ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム水溶液15.0重量部、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム水溶液10.0重量部、ミリスチン酸カリウム0.1重量部、パルミチン酸カリウム0.1重量部、グリセリン10.0重量部、1.3ブチレングリコール5.0重量部、70%ソルビトール水溶液5.0重量部、75%マルチトール水溶液5.0重量部、1%ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム水溶液(0.15%パラオキシ安息香酸メチル含有)0.05重量部、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液5.0重量部、精製水39.75重量部、3%コンキオリン加水分解水溶液5.0重量部をそれぞれ含む洗浄液をフォーマー容器に充填した水性液体洗浄剤。」

(2)甲2について
甲2は、(A)〜(D)で示される成分を含有してなる半固体状洗浄剤に係る発明を開示するものであるところ(摘記(2a))、該発明に対応し、その具体例を示した実施例9の記載から(摘記(2d))、実施例9に係る発明として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

甲2発明:
「N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム10.0質量%、オクチルドデカノール4.0質量%、モノステアリン酸グリセリル2.0質量%、マルチトール15.0質量%、ラウリン酸アミドプロピルベタイン15.0質量%、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド3.0質量%、ワセリン5.0質量%、精製水残部をそれぞれ含む半固体状洗浄剤。」

3 申立理由1について
(1)甲1を引用例とする理由について
ア 本件特許発明1と甲1−1発明との対比判断について
本件特許発明1と甲1−1発明を対比する。
甲1−1発明の「ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム」は、アシルグリシン酸のカリウム塩であるため、本件特許発明1の「(A)アシルグリシン塩」に相当する。
甲1−1発明の「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン」は、甲1の段落【0010】におけるベタイン型のカルボン酸型両性界面活性剤であるため、本件特許発明1の「(C)両性界面活性剤」に相当する。
甲1−1発明の「マルチトール」は、本件特許発明1の「(D)マルチトール」に相当する。
甲1の段落【0001】には、「本発明は、泡が細かく弾力があり、使用すると、つっぱり感のない使用感の優れた泡状洗浄料に関する。」と記載され(摘記(1a))、また、甲1−1発明の「水性液体洗浄剤」は数種類の化合物を含む組成物であるため、甲1−1発明の「水性液体洗浄剤」は、本件特許発明1の「洗浄料組成物」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1−1発明とは、
「下記(A)、(C)及び(D)を含有する洗浄料組成物。
(A)アシルグリシン塩
(C)両性界面活性剤
(D)マルチトール」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は、「(B)アシルアルキル中性アミノ酸塩」を含むのに対し、甲1−1発明は、かかる成分を含まない点。

上記相違点1について検討する。
甲1には、「A)アシルアミノ酸塩」として例示されているものに「アシルアルキル中性アミノ酸塩」は記載されていない(摘記(1b)の段落【0006】)し、また、甲1には、そのほかに配合してもよいとされるアシルアミノ酸以外の陰イオン界面活性剤としても「アシルアルキル中性アミノ酸塩」は記載されていない(摘記(1b)の段落【0011】)。
そして、甲1−1発明に既に配合されている成分に加えて、「アシルアルキル中性アミノ酸塩」をさらに配合する動機づけもない。
さらに、甲3は、アミノ酸系界面活性剤を紹介したものであって、N−アシルサルコシネートの性質や応用が述べられているだけであり、甲4は、洗浄剤に用いられる気泡剤や増泡剤が紹介されているだけであるため、甲3及び4の記載を考慮しても、甲1−1発明に、さらに「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合することが動機付けられるところはない。
また、甲1の実施例の中に、たまたま甲1の任意成分として示されている成分が甲1−1発明に含まれる結果、本件特許発明1と「アシルアルキル中性アミノ酸塩」以外が一致する水性液体洗浄剤が存在しただけであり、その点からも甲1−1発明において「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合する動機付けはない。
したがって、甲1−1発明に「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

また、甲1−2発明の対比・判断も甲1−1発明と同様であるため、甲1−2発明に「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、N−アシルサルコシン塩は、主にシャンプー、洗顔剤等の洗浄料に使用され、汎用界面活性剤と併用することにより、泡立ち性と泡のきめを相乗的に改良する旨の甲3の記載から、甲1に記載の洗浄剤に「(B)アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合することは想到容易である旨主張している。
しかしながら、甲3には、シャンプーや洗顔剤で使用される汎用界面活性剤としてラウリル硫酸塩が例示されているものの、甲1−1発明(又は甲1−2発明)に配合されている界面活性剤が具体的に挙げられているものでもないから、甲3に記載された技術的事項を甲1−1発明(又は甲1−2発明)に採用する動機付けは存在せず、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、甲1−1発明(又は甲1−2発明)の「ミリスチン酸カリウム」及び「パルミチン酸カリウム」は、甲4を参照すれば、洗浄料組成物に用いられる汎用界面活性剤に相当するから、当業者が、洗浄料組成物に用いられる汎用界面活性剤を含有する甲1に記載の洗浄料組成物において、さらにN−アシルサルコシネートを配合することに強く動機付けられること旨主張する。
しかしながら、甲4には、アニオン界面活性剤について、炭素数12〜18の飽和・不飽和脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩が使用される場合が多いことが記載されている(摘記(4b))ものの、具体的に「ミリスチン酸カリウム」及び「パルミチン酸カリウム」が汎用界面活性剤であることまでは記載されていないため、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

ウ まとめ
よって、効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1−1発明又は甲1−2発明並びに甲3及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲2を引用例とする理由について
ア 本件特許発明1と甲2発明との対比判断について
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム」は、アシルグリシン酸のカリウム塩であるため、本件特許発明1の「(A)アシルグリシン塩」に相当する。
甲2発明の「ラウリン酸アミドプロピルベタイン」は、甲2の段落【0004】におけるベタイン系両性界面活性剤であると認められるため(摘記(2b))、本件特許発明1の「(C)両性界面活性剤」に相当する。
甲2発明の「マルチトール」は、本件特許発明1の「(D)マルチトール」に相当する。
洗浄料とは、一般的に、顔や体や髪等の汚れを落とすことを目的とした製品を意味すること、甲2の段落【0052】には「各実施例および各比較例で得られた洗浄剤を洗顔剤として使用」することが記載されていること(摘記(2d))、及び、甲2発明の「半固体状洗浄剤」は数種類の化合物を含む組成物であることから、甲2発明の「半固体状洗浄剤」は、本件特許発明1の「洗浄料組成物」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、
「下記(A)、(C)及び(D)を含有する洗浄料組成物。
(A)アシルグリシン塩
(C)両性界面活性剤
(D)マルチトール」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
本件特許発明1は、「(B)アシルアルキル中性アミノ酸塩」を含むのに対し、甲2発明は、かかる成分を含まない点。

上記相違点2について検討する。
甲2には、「(A)N−アシルグリシン塩」として例示されているものに「アシルアルキル中性アミノ酸塩」は記載されていない(摘記(2c)の段落【0013】〜【0017】)し、また、甲2には、そのほかに配合してもよいとされる成分に「アシルアルキル中性アミノ酸塩」は記載されていない(摘記(2c)の段落【0036】)。
そして、甲2発明に既に配合されている成分に加えて、「アシルアルキル中性アミノ酸塩」をさらに配合する動機づけもない。
さらに、上記3(1)アで述べたとおり、甲3及び4の記載を考慮しても、甲2発明に、さらに「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合することが動機付けられるところはない。
また、甲2の実施例の中に、たまたま甲2の任意成分として示されている成分が甲2発明に含まれる結果、本件特許発明1と「アシルアルキル中性アミノ酸塩」以外が一致する半固体状洗浄剤が存在しただけであり、その点からも甲2発明において「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合する動機付けはない
したがって、甲2発明に「アシルアルキル中性アミノ酸塩」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人の甲3に関する主張は、甲1−1発明(又は甲1−2発明)に対するものと同様であり、上記3(1)イで甲1−1発明(又は甲1−2発明)について述べたように、採用できない。
また、特許異議申立人は、甲2発明の「ラウリン酸アミドプロピルベタイン」は、甲4を参照すれば、洗浄料組成物に用いられる汎用界面活性剤に相当するから、当業者が、洗浄料組成物に用いられる汎用界面活性剤を含有する甲2に記載の洗浄料組成物において、さらにN−アシルサルコシネートを配合することに強く動機付けられる旨主張する。
しかしながら、甲4には、増泡剤として最もよく使用されるベタイン系界面活性剤として、アルキルアミドプロピルベタインが記載されている(摘記(4c))ものの、具体的に「ラウリン酸アミドプロピルベタイン」が汎用界面活性剤であることまでは記載されていないため、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

ウ まとめ
よって、効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲3及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。

4 申立理由2について
(1)サポート要件の判断の前提
以下の観点に立って判断する。
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件特許発明1の課題について
本件の特許請求の範囲及び明細書(特に、段落【0004】)の記載全体を参照して、本件特許発明1の課題は、泡質が良好で、泡持ちに優れる洗浄料組成物を提供することであると認められる。

(3)特許請求の範囲の記載について
前記第2のとおりである。

(4)発明の詳細な説明の記載について
本件の明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】〜【0010】に、(A)アシルグリシン塩の好ましい具体例及び配合量が記載され、段落【0011】〜【0012】に、(B)アシルアルキル中性アミノ酸塩の好ましい具体例及び配合量が記載され、段落【0013】〜【0016】に、(C)両性界面活性剤の好ましい具体例及び配合量が記載され、段落【0017】〜【0018】に、(D)マルチトールの説明及び配合量が記載され、段落【0019】〜【0025】に、ほかに配合してよい成分や洗浄料組成物の剤型、充填容器などが記載されている。
そして、実施例において、本件特許発明1の特定事項に対応した(A)〜(D)成分を含有する実施例1が存在し、実施例1と、(D)成分を含まず、メチルグルセス−20などを含む比較例1〜5とについて、専門パネラーによる評価の結果、実施例1が比較例1〜5に比べて泡質及び泡持ちに優れていたことが示されている。

(5)判断
本件の明細書には、(A)〜(D)成分を含有する洗浄料組成物に関して、本件特許発明1の特定事項に対応した各成分の具体例と好ましい範囲や、任意成分、剤型などに関する説明があり、実施例において、本件特許発明1の特定事項に対応した具体例の記載があり、それらを含有することで、泡質が良好で、泡持ちに優れる洗浄料組成物を提供できることが示されている。
したがって、上記特定事項に対応した説明と具体例を参考に技術常識を考慮すれば、当業者が一定程度課題を解決できると認識できるといえる。

(6)異議申立人の主張の検討
前記第3[申立理由2]に記載されるように、特許異議申立人の主張は、(A)〜(C)成分には多くの化合物が含まれる上、(A)〜(D)成分の含有量も規定されていないのに対し、実施例はただ一つしか存在しないものであるというものである。
しかしながら、本件特許発明1は、(A)〜(D)成分の成分を含有することで、泡質が良好で、泡持ちに優れる洗浄料組成物を提供できる点に技術的思想があるものであり、具体的組成限定に特徴のあるものではないし、上記(5)で述べたとおり、本件明細書の記載から少なくとも課題を解決できる。
また、特許異議申立人が提示した甲3及び5〜8には、アシルアミノ酸塩やスルホベタイン型界面活性剤などが炭素鎖長や分岐の有無で泡立ちが異なることや、界面活性剤の配合量やpHにより気泡性が変化するという技術常識的事項が示されており、それらの事項が仮に技術常識であったとしても、当業者であればこれらの技術常識も勘案して適切な条件で本件特許発明1が一定程度課題を解決できると認識できるといえる。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(7)小括
以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によって、取り消すことができない。
また、ほかに請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-09-11 
出願番号 P2019-065334
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 赤澤 高之
関 美祝
登録日 2022-11-18 
登録番号 7179664
権利者 株式会社ノエビア
発明の名称 洗浄料組成物  

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