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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 特174条1項  C01B
管理番号 1402814
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-06-26 
確定日 2023-09-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第7197514号発明「非晶質シリカ粉末およびその製造方法、用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7197514号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7197514号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)1月15日(優先権主張 平成30年1月26日(以下、「本件特許出願の優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、令和4年12月19日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜3、5、6に係る特許に対し、令和5年6月26日に特許異議申立人 星 正美(以下、「申立人星」という。)により、特許異議の申立てがされ、請求項1〜6に係る特許に対し、令和5年6月27日に特許異議申立人 福崎 さおり(当審注:性の「崎」は、原文では「たつさき」である。以下、「申立人福崎」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第7197514号の請求項1〜6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
平均粒子径が10μm超50μm以下、250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下であって、以下の方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数が0個であることを特徴とする非晶質シリカ粉末。
[着磁性粒子の測定方法]
1000mLビーカーに非晶質シリカ粉末50gとイオン交換水800gを加えてスラリーを調製する。このスラリーを撹拌装置により、回転数550rpm、5秒間隔で反転させながら、そこに、厚み20μmのゴム製カバーを被せた長さ150mm、直径25mm、磁力12000ガウスの棒磁石を1分間浸漬させ、着磁性粒子を捕捉する。着磁性粒子を捕捉した棒磁石をスラリーから取り出し、空のビーカー上でゴム製カバーを外してイオン交換水でゴム製カバーを洗浄しながら着磁性粒子を脱離させ、着磁性粒子を水中に分散させる。得られた分散液を直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引濾過装置にかけることによりナイロンフィルター上に着磁性粒子を回収する。着磁性粒子を回収したナイロンフィルターをマイクロスコープにセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながらナイロンフィルター上に回収させた着磁性粒子のうち、45μm以上の着磁性粒子の個数を計測する。
【請求項2】
最大粒子径が75μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項3】
10μm以上の粒子の平均球形度が0.80以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項4】
60℃以下の水を用いて非晶質シリカ粉末濃度40質量%以下の水スラリーを調製する工程と、
目開き0.5mm以上15mm以下、磁力14000ガウス以上のスクリーンを垂直方向に10枚以上重ねた磁選ゾーンを有する循環ラインに、前記水スラリーを下から上に0.2cm/s以上5cm/s以下の流速で磁選ゾーンを循環通過させながら非晶質シリカ粉末中に含まれる着磁性粒子を除去する工程と、
容器内の温度を130℃以上300℃以下とし、容器上部に二流体ノズルが設置され、その二流体ノズルの中心部から着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有する水スラリーをフィードすると共に、二流体ノズルの外側から乾燥空気を噴射し、スラリー液滴の噴霧速度が50m/s以上250m/s以下でスラリーを噴霧乾燥させる工程と
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非晶質シリカ粉末の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の非晶質シリカ粉末を含有してなる樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。」

なお、本件発明1の「[着磁性粒子の測定方法]」を、以下、「本件着磁性粒子測定方法」という。

第3 申立理由の概要
1 申立人星の取消理由
申立人星は、証拠として甲第1号証〜甲第3号証(以下、「甲1−1」〜「甲1−3」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1〜3、5、6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1−1(新規性
本件発明1〜3、5、6は、甲1−1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1〜3、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由1−2(進歩性
本件発明1〜3、5、6は、甲1−1に記載された発明、甲1−2及び甲1−3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3、5、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

[証拠方法]
甲1−1:特開2010−42347号公報
甲1−2:特公平3−36761号公報
甲1−3:特開2003−110065号公報

2 申立人福崎の取消理由
申立人福崎は、証拠として甲第1号証〜甲第11号証(以下、「甲2−1」〜「甲2−11」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1〜6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由2−1(進歩性
本件発明1〜3、5、6は、甲2−1〜甲2−11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜3、5、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由2−2(サポート要件)
本件発明1〜6は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)申立理由2−3(新規事項)
令和4年10月14日提出の手続補正書において、請求項1〜6に係る発明について、非晶質シリカ粉末の平均粒径を「7μm以上50μm以下」から「10μm超50μm以下」に限定した補正は、新規事項の追加に該当するから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

[証拠方法]
甲2−1:特開2005−187302号公報
甲2−2:特開2010−285307号公報
甲2−3:特許第5280626号公報
甲2−4:特表2007−524736号公報
甲2−5:特許第7023074号公報
甲2−6:国際公開第02/083792号
甲2−7:特開2004−210965号公報
甲2−8:国際公開第2008/050879号
甲2−9:特開平7−79056号公報
甲2−10:特開2011−200806号公報
甲2−11:特開平10−292118号公報

第4 申立理由1−1(新規性)、申立理由1−2(進歩性)、申立理由2−1(進歩性)について
1 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等
(1)甲1−1(特開2010−42347号公報)
ア 本件特許出願の優先日前に公開された甲1−1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用の樹脂等に添加されるシリカ等の非磁性金属酸化物、水酸化アルミニウム等の非磁性金属水酸化物に混入した磁性金属等の磁性金属異物を除去する方法及び装置の改良に関するものである。」

「【0041】
(1.被処理物)
この場合、被処理物としては、例えば、シリカ、アルミナ等の非磁性金属酸化物;カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の非磁性金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤等、エポキシ樹脂等の半導体封止用樹脂に添加される物質を挙げることができ、これらの原材料に当初から含まれていた磁性金属異物1や、原材料からの製造工程中に非磁性金属異物に混入した鉄粉等の磁性金属異物1の捕捉に使用することができる。
【0042】
本発明においては、これらの被処理物を、分散媒中に分散して懸濁液とする。この場合、この分散媒としては、本発明のおける磁性金属異物を除去するのに要する比較的短時間において被処理物を溶解させないものであれば、特に限定されるものではない。また、この分散媒としては、後に述べる所定の流速を確保することができれば、特に、表面張力や粘度を一定以下のものに制限する必要はない。即ち、本発明においては、スクリーンを使用しないため、特にスクリーンの透過性を考慮して、例えば、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール等の表面張力が比較的小さい液体を使用する必要がなく、例えば、20℃における表面張力が72.75mN/mと、比較的表面張力が高い「水」を、常温で使用することもできる。
【0043】
その結果、入手や取扱いが容易な分散媒を使用して簡易に処理しつつ、磁性金属異物1を充分に除去することができる。また、同様に、被処理物であるシリカ等の粒径についても、スクリーンの透過性を考慮して、制限する必要はない。」

「【実施例】
【0064】
(1.実施例)
次に、本発明の除去装置10による磁性金属異物1の除去方法の実施例について説明すると、表面磁束密度が1.4Tの円筒形状の磁石12にポリイミドフィルム((株)寺岡製作所製、カプトン(登録商標)フィルムテープNo.652S(#25))を巻きつけたものを、内径が磁石12の直径よりも4mm大きいテフロン(登録商標)から成る磁石ホルダー14内に収納し、図1に示す除去装置10を構成した。この場合、流路14の厚みは2mmである。なお、磁石12としては、8個の円筒状の磁石が円筒状のケースに収められ、ケース表面の磁束密度が1.4Tになる箇所が7箇所ある磁石ユニット(NEOMAXエンジニアリング社製マグネットバーφ24.3×185mm)を使用した。
【0065】
そして、平均粒径が29.3μmの溶融球状シリカ(電気化学工業株式会社製)を被処理物として、これに分散媒として常温の水を加えて、シェーカー(ヤマト科学社製SA−31)にて攪拌し、シリカスラリーを得た。この場合、シリカの水への分散濃度は、42.9質量%であった。このシリカスラリー4.96Lを、ホッパー18に充填し、チューブポンプ(アズワン社製チューブポンプ7553−80 ヘッド7518−12)により、磁石ホルダー14の流路14Aに導入口22を介して下方から上方に向けて供給した。
・・・
【0069】
上記実施例1〜10について、流路14Aを通過したシリカスラリーを回収して、乾燥機にて水分率が0.04%になるまで乾燥させてシリカ粉末を得て、各実施例において得られたシリカ粉末に含有されていた磁性金属異物1の個数及び粒径を顕微鏡観察により測定した結果を、次の表1に示す。なお、表1において、比較例として、本発明の除去方法を経ていない未処理のシリカについて、磁性金属異物1の個数及び粒径を測定した結果も示す。
【0070】
【表1】

【0071】
この表1に示すように、いずれの実施例においても、75μmを超える大きさの磁性金属異物については、1個も発見されず、ほぼ完全に除去することができた。また、1巡のみさせた実施例1〜3については、45μm以上の大きさの磁性金属異物も発見されず、ほぼ完全に除去することができることが確認された。特に、シリカスラリーの流量を0.4L/minに設定した実施例1及び実施例5については、1巡させた場合であっても、5巡させた場合であっても、45μm以上の磁性金属異物は、全く発見されなかった。このことから、被処理物であるシリカが分散された懸濁液2であるシリカスラリーの流量を、0.4L/minに設定すれば、より望ましく、磁性金属異物の個数を確実に低減させることができることが確認できた。」

イ 甲1−1に記載された発明
上記アにおける【0065】、【0069】、【0071】の記載によれば、甲1−1には、以下の発明(以下、「甲1−1発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均粒径が29.3μmの溶融球状シリカ(電気化学工業株式会社製)を被処理物として、これに分散媒として常温の水を加えて、シェーカー(ヤマト科学社製SA−31)にて攪拌し、シリカスラリーを得て、このシリカスラリー4.96Lを、ホッパー18に充填し、チューブポンプ(アズワン社製チューブポンプ7553−80 ヘッド7518−12)により、磁石ホルダー14の流路14Aに導入口22を介して下方から上方に向けて供給し、流路14Aを通過したシリカスラリーを回収して、乾燥機にて水分率が0.04%になるまで乾燥させて得たシリカ粉末であって、
顕微鏡観察により測定した結果、45μm以上の大きさの磁性金属異物が発見されないシリカ粉末。」

(2)甲1−2(特公平3−36761号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲1−2には、以下の記載がある。
「〔従来技術およびその問題点〕
溶融した球状シリカはIC封止材を初め、種々のプラスチツクの高充填材、硝子原料など各種用途への利用が広がりつつある。」(1ページ左欄10〜13行)

「得られた溶融シリカは、光解折型粒度分布計により粒度分布および平均粒度(D50)を求めた。また、走査型電子顕微鏡(SEM)により溶融シリカの粒子形状を確認すると共に、溶融の程度を調べた。その結果を第2表に示す。なお、第1、2表のNo.1は比較例に相当する。」(3ページ左欄13〜14行、右欄10行〜13行)



」(3ページ)

(3)甲1−3(特開2003−110065号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲1−3には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2〜10μmおよび20〜50μmの粒度域に極大値を示す多峰性の頻度粒度分布を有し、平均粒径5〜35μm、最大粒径60μm以下であり、かつ(d99/最頻径)が2.2以下であることを特徴とする球状無機質粉末。
【請求項2】 BET法により測定した比表面積SBと粒度分布により計算した理論比表面積SCとの比(SB/SC)が2.5以下であることを特徴とする請求項1記載の球状無機質粉末。
【請求項3】 50nm未満の粒子を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載の球状無機質粉末。
【請求項4】 d75未満の粒子径を持つ粒子の平均球形度が0.90以上、d75以上の粒子径を持つ粒子の平均球形度が0.85以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の球状無機質粉末。
【請求項5】 球状無機質粉末が非晶質シリカであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の球状無機質粉末。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、球状無機質粉末およびこれを充填した樹脂組成物に関する。詳しくは、半導体チップを樹脂組成物で封止する際、そのパッケージ形態が超薄型であっても、流動性、充填性、成形性に優れる半導体封止材料を得るための球状無機質粉末および樹脂組成物に関する。」

「【0005】パッケージの吸水率を低減させて半田耐熱性を改善するためには、半導体封止材料中のフィラー充填率を高めることが有効である。この技術を超薄型パッケージに適用するにはフィラー粒径を最大60μm以下に調整することが必要となるが、この場合、最大粒径を70〜150μmとした従来のフィラーに比べて粒度分布が狭くなるので流動性と成形性が低下し、逆にフィラーの充填率を下げることを余儀なくされるという問題がある。」

「【0016】本発明で重要なことは、球状無機質粉末の最大粒径を60μm以下と規定したなかで、さらに(d99/最頻径)を2.2以下としたことである。最大粒径が60μmを越えると超薄型パッケージ成型時に充填不良(未充填、ボイド)や成形不具合(チップ損傷、ワイヤースイープ、ワイヤー切断、ダイシフト、金型ゲート詰まり)が起こりやすくなり、超薄型パッケージ用途へは適用でき難くなる。最大粒径60μm以下の制約があるなかで、(d99/最頻径)を2.2以下をとすることによって、半導体封止材料の流動性の低下を最小限に抑えることが可能となり、またバリ特性も著しく向上するので、成形性を損なうことなく高充填を達成することができる。」

「【0040】実施例1〜7 比較例1〜9
天然珪石を粉砕、その粉砕物をLPGと酸素との燃焼により形成される高温火炎中に供給し、溶融・球状化処理を行って、球状非晶質シリカ粉末を得た。火炎形成条件、原料粒度、原料供給量、分級条件などを調整して表1、表2に示される16種の粉体A〜Pを製造した。・・・」

「【0045】
【表1】



(4)甲2−1(特開2005−187302号公報)
ア 本件特許出願の優先日前に公開された甲2−1には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度非磁性金属酸化物粉末及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、IC封止材用樹脂の充填材、基板、電子材料や半導体製造装置、封止材の原料用途等に適する金属等の異物の含有量が極めて低位にある高純度非磁性金属酸化物粉末及びその製造方法に関する。特に、半導体封止用樹脂組成物に添加するのに有用な高純度非磁性金属酸化物粉末に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの高純度シリカは不純物濃度が低いにもかかわらず、多くの異物粒子を含んでおり、封止材用フィラーとして用いた場合、導電性の異物粒子がワイヤー間に詰まり、電気的なショートを発生させる問題があった。また粒度分布が狭いシリカ粒子集合体であっても、10μm以上の異物粒子は質量から見ると極わずかであるのに個数単位でみると無視できないほど多く含まれている。
【0005】
半導体デバイスのワイヤーは年々狭ピッチ化が進み、現状では15μm程度まで狭まっている。そのため、半導体デバイスの封止工程の歩留まりを上げるためにも、粗大粒子の削減が求められており、とりわけ10μm以上の導電性の粒子を除去することが望まれている。」

「【0027】
封止用フィラーは、樹脂配合時及び/又は半導体封止時の流動特性が必要であるため、球状であることが好ましい。また、封止樹脂厚は薄型化の傾向があり、それに対応すべく平均粒径は0.1〜10μmであることが好ましい。封止樹脂厚はさらに薄型化が進むと思われるので、フィラーの平均粒径は特に0.1〜5μmが望ましい。最大粒径はワイヤー間でフィラーが詰まってしまわないようにできるだけ小さくすることが望ましい。即ち、平均粒径の3倍以下であることが好ましい。従って、平均粒径が0.1〜5μmである場合、最大粒径は15μm以下であることが好ましい。但し、粒度分布を極端に狭くすることは樹脂配合時の流動性の面で望ましくない。微粒側にある程度分布を有することが望ましく、最大粒径は平均粒径の1.5〜3倍、且つ粒子の変動係数(Cv)が15〜50%の範囲であることが好ましい。さらに、今後、ワイヤーのピッチがより狭くなることが予測され、この要請からも、最大粒径は平均粒径の1.5〜3倍であることが、ワイヤーのピッチが15μmより狭くなることが予測されることから、最大粒径は平均粒径の1.5〜2倍にすることがより望ましい。なお、粒子の変動係数(Cv)は粒径のバラツキを表す指標であり、標準偏差(σ)と平均粒径(d)から下記式(I)で表される。」

「【0056】
異物粒子の含有量が極めて少ない高純度非磁性金属酸化物粉末の中で球状シリカ粉末の場合、封止材用フィラーとして使用されることが多い。当該用途では、狭い隙間に流し込むアンダーフィル、ワイヤー間が狭ピッチのデバイスで使用されるオーバーコート材等で使用されることが多い。該非磁性金属酸化物粉末の最大粒径をできるだけ小さくすると同時に樹脂配合時の粘度が低く、隙間浸透性に優れることが望ましい。一般に樹脂配合時のチキソ比が低いほど侵入性が良いと考えられる。

「【0088】
実施例1
1]非磁性金属酸化物の調製
1)エマルションの調製
JIS3号水ガラス(25℃での粘度が350cpとまで濃縮したもの)20kg、イソパラフィン系炭化水素油(商品名:アイソゾール400、日本石油化学工業社製)7.5kg及びソルビタンモノオレート(商品名:レオドールSP−O10、花王社製)0.18kgを混合し、攪拌機で攪拌混合した後、乳化機を用いて乳化させてエマルションを作成した。
【0089】
2)凝固・不純物抽出・洗浄処理
28質量%の硫酸水溶液575gを室温で攪拌しながら、これに上記で作成したエマルション415gを添加した。添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続けた。次いで攪拌下に62質量%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌しながら100℃に加熱し、その温度で30分間保持した。この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上相)とシリカゲル粒子が分散した水相(下相)とに分離した。
【0090】
オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子をヌッチェで濾過し、0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水で、洗液のpHが4以上になるまで繰り返した。その後十分吸引して、脱水し、湿潤状の高純度球状シリカゲルを得た。
【0091】
3)乾燥
得られた湿潤状の高純度球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、高純度乾燥球状シリカゲル粉末100gを得た。得られた高純度乾燥球状シリカゲル粉末は比表面積530m2/g、水分0.8質量%であった。
【0092】
2]解砕・異物粒子の除去
この高純度乾燥球状シリカゲル粉末を、ターボスクリーナー(ターボ工業製)を用い、ポリエステル製目開き27μmのスクリーンで解砕し、スクリーン下の排出口に8000ガウスの格子状マグネットを5段設置し、あらかじめ異物粒子を除去した。なお、格子状マグネットは表面をテフロン樹脂で被覆したものを用いた。
【0093】
異物粒子を除去した乾燥シリカ粒子を石英製坩堝(20リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成した。
【0094】
焼成後、得られたシリカ粉末をポリエステル製目開き33μmスクリーンで再度解砕し、シリカ濃度が10質量%となるようにエタノール(表面張力:22.27×10-3N/m(20℃))に分散させ、ポリエステル製目開き24μmスクリーンで処理し、スクリーンを通過させたスラリーに12000ガウスのマグネット棒を入れ、10分間掻き混ぜた。マグネット処理したスラリーをクリーンルーム内でヌッチェを用いて脱液し、120℃で20時間乾燥させた。乾燥時はサンプルの入れた容器に蓋をかぶせ、エタノールが蒸発するために十分な隙間を保ちつつ、異物が混入しないように、窒素気流下で乾燥させた。
【0095】
得られたシリカ粉末について、平均粒径、最大粒径、比表面積、異物粒子(粒径10μm以上)及びチキソ比を測定した。平均粒径4.0μm、最大粒径11μm及び真比重2.20であった。また、BET法で測定した比表面積は0.7m2/gで理論批評面積の1.0倍であった。さらに、SEM写真で真球度が0.9以上である粒子の含有率が99%以上であり、表面の平滑性も良好な球状シリカ粉末であることが確認された。なお、異物粒子(粒径10μm以上)は1個/gであった。その結果を表1にまとめた。
【0096】
粒径はベックマンコールター社製LS−130(レーザー回折散乱方式)を用いて測定した。平均粒径はメディアン値である。
【0097】
最大粒径は標準篩を用い、メッシュ下が100.00%を示したメッシュの開口大きさで示した。
【0098】
異物粒子の測定は、12000ガウスのマグネット(ダイカ社製)を用いて行った。即ち、サンプル1gをエタノール水溶液(10質量%)20mlに分散させ、ステンレス製カバー付きマグネットをスラリーへ浸漬し、10分間攪拌した。その後、マグネットをカバーごと引上げ、超純水100mlが入ったテフロンビーカー中にマグネットをカバーごと浸漬した。超純水に浸漬させた状態でカバーからマグネットを抜き取り、カバーに付着した異物粒子を超純水で洗い流した。次いで、異物粒子が洗い込まれた超純水をポリエステル製の目開き10μmスクリーンでろ過し、スクリーン上に残存する異物粒子を光学顕微鏡でカウントした。」

イ 甲2−1に記載された発明
上記アにおける【0095】、【0098】の記載によれば、甲2−1には、以下の発明(以下、「甲2−1発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均粒径4.0μm、最大粒径11μmであり、以下の方法で測定した異物粒子(粒径10μm以上)が1個/gであるシリカ粉末。
[異物粒子の測定方法]
12000ガウスのマグネット(ダイカ社製)を用いて行った。即ち、サンプル1gをエタノール水溶液(10質量%)20mlに分散させ、ステンレス製カバー付きマグネットをスラリーへ浸漬し、10分間攪拌した。その後、マグネットをカバーごと引上げ、超純水100mlが入ったテフロンビーカー中にマグネットをカバーごと浸漬した。超純水に浸漬させた状態でカバーからマグネットを抜き取り、カバーに付着した異物粒子を超純水で洗い流した。次いで、異物粒子が洗い込まれた超純水をポリエステル製の目開き10μmスクリーンでろ過し、スクリーン上に残存する異物粒子を光学顕微鏡でカウントした、シリカ粉末。」

なお、甲2−1発明の「[異物粒子の測定方法]」を、以下、「甲2−1異物粒子測定方法」という。

(5)甲2−2(特開2010−285307号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−2には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質シリカ質粉末およびその製造方法、用途に関する。

「【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非晶質シリカ質粉末は、平均粒子径が5μm以上60μm以下、最大粒子径が75μm以下、相対密度が85%以上であり、粒子径30μm以上75μm以下の粒子における、粒子内部に粒子径の30%以下の径の空隙を含有する粒子の割合が10%以上であることが必要である。これらの特性値は、難燃性を高め、かつ、ワイヤー流れ量を小さくするために非常に重要な因子であり、このように設計された非晶質シリカ質粉末はこれまでに存在しない。平均粒子径が5μm未満である場合、5μm未満の比較的細かい粒子が多数存在することを意味し、樹脂に充填した際に、樹脂組成物の粘度が著しく増加してしまうため、ワイヤー流れ量が大きくなる問題が発生する。一方、平均粒子径が60μmを超える場合及び/又は最大粒子径が75μmを超える場合、粒子径が60μmを超える比較的粗い粒子ばかりが存在することや、75μmを超える粗大粒子が存在することを意味し、樹脂に充填した際に、樹脂組成物の粘度は低くなるものの、封止時に半導体素子の表面を傷つけてしまう問題や、細線化した金ワイヤーに衝突しやすく、ワイヤー流れが顕著となる問題が発生する。好ましい平均粒子径は7μm以上50μm以下、より好ましくは9μm以上40μm以下である。また、最大粒子径は70μm以下であることが好ましい。」

「【0022】
本発明の非晶質シリカ質粉末において、平均粒子径、最大粒子径、相対密度、粒子径30μm以上75μm以下の粒子における粒子内部に空隙を含有する割合の増減方法についても、本発明の製造方法の項で後述するが、その一例を示すと、以下のとおりである。すなわち、平均粒子径を調整するためには、シリカ質原料粉末の平均粒子径を調整すればよく、最大粒子径を調整するためには、非晶質シリカ質粉末を篩う際の篩網の目開きを調整すればよい。シリカ質粉末の相対密度、空隙を含有する粒子の割合を調整するためには、シリカ質原料粉末中のAl2O3含有率を調整する、及び/又は、シリカ質原料粉末を火炎中に噴射して溶融、非晶質化する際の熱量、粒子融着指数を調整すればよい。」

(6)甲2−3(特許第5280626号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−3には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粉末等の非磁性金属酸化物粒子における着磁性粒子の個数測定方法に関する。」

「【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非磁性金属酸化物粉末中における着磁性異物粒子の数を精度よく測定することができる。例えば、非磁性金属酸化物粉末50g当り、粒径45μm以上の着磁性異物粒子の個数が50個以下であっても精度よく測定することができる。従って、得られた非磁性金属酸化物粉末が、所定の異物レベルを達成したものであることを容易に確認することができる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
本発明の方法で使用される磁性体は、磁石にゴム性被膜を密着して被着されたものである。
磁性体は、好ましくは、棒状の形態のものが好適である。断面の形状は、矩形のものでも、円形又は楕円形のものでもよい。後述するスラリー中において、付着できる有意な表面積を提供できるものであれば、特に形状は問われない。通常、磁石は、円盤状の磁石を複数、所定の間隔でスペーサを介して円筒状に配置し、その外表面を、先端が閉じた円筒状のカバーを被せた構造のものが使用される。
磁石は、着磁性粒子の異物粒子を効率良く付着できる程度の磁力を有すればよい。例えば、8000〜12000ガウス、好ましくは、10000〜12000ガウスの磁力を有するものが好適である。」

「【0023】
実施例1(シリカ粉末における着磁性粒子個数の計測)
(1)スラリーの調製
シリカ粉末I(電気化学工業(株)製FB−74)から、試料50gを電子天秤により秤量し、1000mL容器(ビーカー)に入れ、水800mLを加えて攪拌し、スラリーAを調製した。スラリーAを3分間超音波分散にかけ、着磁性粒子及びシリカ粉末を均一に分散させた。スラリーAにおけるシリカ粉末試料の濃度は、5.8質量%であった。
なお、シリカ粉末Iは、シリカ原料を粉砕し、粒度調整した後、火炎により、球状とし、冷却し、回収したものである。この技術に関する特許文献は多数存在する。基本的な製造方法については、例えば、特許第3606908号明細書などの文献を参照されたい。
(2)磁石
磁石として、図1に示す構造の棒磁石を準備した。この棒磁石は、直径25mm、長さ150mmの円筒状カバー(1)の内部に、図示されるような配置で、厚み20mmの円盤状磁石片(2)が、厚み1mmのスペーサ(3)を介して固定されている。円筒状カバーは、SUS316製であった。磁力は、10000ガウスであった。
【0024】
(3)ゴム性被膜
使用したゴム性被膜は、ラテックス(天然ゴム)からなり、長さ180mm、直径25mmの袋状のゴム性被膜であった。
(4)磁性体の準備
ゴム性被膜を棒磁石に密着して被覆した。この際、まず、袋状のゴム性被膜の内部に脱イオン水を8割ほど注入し、ゴム性被膜を円筒状に膨らませて安定化し、その中に棒磁石を先端から110mm挿入した。内部の脱イオン水を除去した後、ゴム性被膜を被着した状態で、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)で棒磁石に被着したゴム性被膜の厚みを測定した。被着時のゴム性被膜の厚みは、0.02mmであった。このようにゴム性被膜を被着した棒磁石を、単に被着棒磁石という。
【0025】
(5)操作手順
被着棒磁石を、スラリーA中に挿入し、撹拌装置により、回転数550ppmで、5秒間隔で逆回転するようにした。撹拌を、1分間継続した。温度は、室温、即ち、25℃であった。
着磁性粒子の付着した被着棒磁石をスラリーAから取り出し、空のビーカーに移し、そこで、エタノールでゴム性被膜を洗浄した後、別のビーカーに移し、そこで、ゴム性被膜と、磁性体との間に脱イオン水を注入し、ゴム性被膜を脱着した。容器内で、脱イオン水の入ったゴム性被膜の表面を脱イオン水を洗浄して、着磁性粒子を脱離させ、ゴム性被膜を取り出し、次いで、更に脱イオン水を追加して注入し、全体として、500mLの分散液aとした。また残ったスラリーAは保管した。
得られた分散液aを、直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引ろ過装置により、そのナイロンフィルター上に着磁性粒子を収集した。
得られた、ナイロンフィルターを、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)にセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながら、ナイロンフィルター上に収集された着磁性粒子の個数を計測した。
【0026】
マイクロスコープにより測定した着磁性粒子の個数は、30個であった。
【0027】
(6)着磁物の回収確認
残ったスラリーAは再度(5)の手順に従い、残存している着磁物の回収を試みた。しかしながら、回収された着磁粒子の個数は0個であった。更に残ったスラリーAを同様にして繰り返し3回回収を試みたが、回収された着磁物はいずれも0個であった。
【0028】
(1)〜(5)の手順で同一のシリカ粉末Iを9回測定した。その結果、回収された異物個数は27、28、31、30、34、28、26、32、28個であった。それぞれ9回の測定後、(6)の手順で4回残ったスラリーの残留着磁物を確認したが、いずれも0個であった。残ったスラリーAからの回収(個数)を以下の表1に示す。
【0029】
実施例2
シリカ粉末II(電気化学工業(株)製FB−35)を用い、(1)〜(5)の手順で10回測定した。その結果、回収された異物個数は18、17、17、20、20、20、19、21、18、17個であった。それぞれ10回の測定後、(6)の手順で4回残ったスラリーの残留着磁物を確認したが、いずれも0個であった。残ったスラリーAからの回収(個数)を以下の表1に示す。
【0030】
【表1】



「【図1】



イ 甲2−3に記載された発明
(ア)上記アの【0023】〜【0028】の実施例1の記載によれば、シリカ粉末における着磁性粒子の個数の測定方法は、以下のとおりのものである。
シリカ粉末の試料50gを1000mL容器(ビーカー)に入れ、水800mLを加えて攪拌し、スラリーAを調製する。直径25mm、長さ150mmのSUS316製の円筒状カバーの内部に、厚み20mmの円盤状磁石片が、厚み1mmのスペーサを介して固定されており、磁力が10000ガウスである棒磁石に、被着時の厚みが0.02mmであるゴム性被膜を密着して被覆した被着棒磁石を、スラリーA中に挿入し、撹拌装置により、回転数550ppmで、5秒間隔で逆回転し、撹拌を、1分間継続する。着磁性粒子の付着した被着棒磁石をスラリーAから取り出し、空のビーカーに移し、そこで、エタノールでゴム性被膜を洗浄した後、別のビーカーに移し、そこで、ゴム性被膜と、磁性体との間に脱イオン水を注入し、ゴム性被膜を脱着し、容器内で、脱イオン水の入ったゴム性被膜の表面を脱イオン水を洗浄して、着磁性粒子を脱離させ、ゴム性被膜を取り出し、次いで、更に脱イオン水を追加して注入し、全体として、500mLの分散液aとする。得られた分散液aを、直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引ろ過装置により、そのナイロンフィルター上に着磁性粒子を収集する。得られた、ナイロンフィルターを、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)にセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながら、ナイロンフィルター上に収集された着磁性粒子の個数を計測する。
そして、上記測定方法で測定したシリカ粉末I(電気化学工業(株)製FB−74)の着磁性粒子の個数は、27〜34個である。

(イ)上記アの【0029】の実施例2の記載によれば、上記(ア)の測定方法で測定したシリカ粉末II(電気化学工業(株)製FB−35)の着磁性粒子の個数は、17〜21個である。

(ウ)以上によれば、甲2−3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の方法で測定した着磁性粒子の個数が、27〜34個であるシリカ粉末I(電気化学工業(株)製FB−74)。
[着磁性粒子の測定方法]
シリカ粉末の試料50gを1000mL容器(ビーカー)に入れ、水800mLを加えて攪拌し、スラリーAを調製する。直径25mm、長さ150mmのSUS316製の円筒状カバーの内部に、厚み20mmの円盤状磁石片が、厚み1mmのスペーサを介して固定されており、磁力が10000ガウスである棒磁石に、被着時の厚みが0.02mmであるゴム性被膜を密着して被覆した被着棒磁石を、スラリーA中に挿入し、撹拌装置により、回転数550ppmで、5秒間隔で逆回転し、撹拌を、1分間継続する。着磁性粒子の付着した被着棒磁石をスラリーAから取り出し、空のビーカーに移し、そこで、エタノールでゴム性被膜を洗浄した後、別のビーカーに移し、そこで、ゴム性被膜と、磁性体との間に脱イオン水を注入し、ゴム性被膜を脱着し、容器内で、脱イオン水の入ったゴム性被膜の表面を脱イオン水を洗浄して、着磁性粒子を脱離させ、ゴム性被膜を取り出し、次いで、更に脱イオン水を追加して注入し、全体として、500mLの分散液aとする。得られた分散液aを、直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引ろ過装置により、そのナイロンフィルター上に着磁性粒子を収集する。得られた、ナイロンフィルターを、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)にセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながら、ナイロンフィルター上に収集された着磁性粒子の個数を計測する。」(以下、「甲2−3A発明」という。)

「以下の方法で測定した着磁性粒子の個数が17〜21個であるシリカ粉末II(電気化学工業(株)製FB−35)。
[着磁性粒子の測定方法]
シリカ粉末の試料50gを1000mL容器(ビーカー)に入れ、水800mLを加えて攪拌し、スラリーAを調製する。直径25mm、長さ150mmのSUS316製の円筒状カバーの内部に、厚み20mmの円盤状磁石片が、厚み1mmのスペーサを介して固定されており、磁力が10000ガウスである棒磁石に、被着時の厚みが0.02mmであるゴム性被膜を密着して被覆した被着棒磁石を、スラリーA中に挿入し、撹拌装置により、回転数550ppmで、5秒間隔で逆回転し、撹拌を、1分間継続する。着磁性粒子の付着した被着棒磁石をスラリーAから取り出し、空のビーカーに移し、そこで、エタノールでゴム性被膜を洗浄した後、別のビーカーに移し、そこで、ゴム性被膜と、磁性体との間に脱イオン水を注入し、ゴム性被膜を脱着し、容器内で、脱イオン水の入ったゴム性被膜の表面を脱イオン水を洗浄して、着磁性粒子を脱離させ、ゴム性被膜を取り出し、次いで、更に脱イオン水を追加して注入し、全体として、500mLの分散液aとする。得られた分散液aを、直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引ろ過装置により、そのナイロンフィルター上に着磁性粒子を収集する。得られた、ナイロンフィルターを、マイクロスコープ(Hirox製KH−3000モデル)にセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながら、ナイロンフィルター上に収集された着磁性粒子の個数を計測する。」(以下、「甲2−3B発明」という。)

なお、甲2−3A発明及び甲2−3B発明の「[着磁性粒子の測定方法]」を、以下、「甲2−3着磁性粒子測定方法」という。

(7)甲2−4(特表2007−524736号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−4には、以下の記載がある。
「【0062】
実施例1及び2、比較例1〜4
・・・各試験組成物は、電気化学工業(株)からFB−74として市販の平均粒径30.4μm表面積及び1.6m2/gの溶融シリカ65.2重量部・・・」

「【0065】
・・・溶融シリカはFB74(球状、平均粒径31.5μm)とFS20(不規則形状、平均粒径5.6μm)の80/20重量/重量の混合物であり、いずれも電気化学工業(株)から入手した。」

(8)甲2−5(特許第7023074号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−5には、以下の記載がある。
「【0027】
(B)成分として使用可能な市販品として、例えば、S140(マイクロン社製、平均粒子径:25μm)、SC30(マイクロン社製、平均粒子径:30μm)、FB−74(電気化学工業社製、平均粒子径:30μm)、などが挙げられる。」

(9)甲2−6(国際公開第02/083792号)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−6には、以下の記載がある。
「シリカ−7:表面処理球状シリカ 平均粒径12μm、円形度0.90、粒径1μm以下のシリカ粒子3重量%(電気化学工業社製、FB−35エポキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 SH6040)処理品)」(明細書10ページ17〜20行)

(10)甲2−7(特開2004−210965号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−7には、以下の記載がある。
「【0029】
・・・
(8)無機充填材
・電気化学工業社製・「FB−35」(溶融シリカ、平均粒径11μm)」

(11)甲2−8(国際公開第2008/050879号)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−8には、以下の記載がある。
「フィラーとして、電気化学工業(株)製の球状溶融シリカFB−60(平均粒径21μm)及びFB−35(平均粒径12μm)、(株)アドマテックス製の球状溶融シリカSO−C3(平均粒径0.9μm)及びSO−C2(平均粒径0.5μm)を使用した。」(明細書10ページ最下行〜11ページ3行)

(12)甲2−9(特開平7−79056号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−9には、以下の記載がある。
「【0055】サンプルBは約50容量%の同様のBNTサンプルと、更に10容量%のDenka FB−35溶融非晶質シリカとを含んでいた。FB−35シリカは細孔のない密な粒子であり、平均粒径は約10μであり、85%は29μ未満、15%は4μ未満である。・・・」

(13)甲2−10(特開2011−200806号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−10には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子製造装置、粒子製造方法および半導体封止用樹脂組成物の製造方法に関するものである。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、無機粒子の凝集を抑制しつつ、確実に、無機粒子の表面に処理液を付着させることができる粒子製造装置、粒子製造方法および半導体封止用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。」

「【0087】
具体的には、処理後の無機粒子全体に対し、処理の際に形成される粒径が150μm以上の無機粒子の凝集塊の占める割合を、1wt%以下、特に、0.5wt%以下とすることができる。」

「【実施例】
【0093】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
<原材料>
無機粒子:溶融シリカ(平均粒径33μm)を使用した。」

「【0104】
[評価]
実施例1〜3および比較例1に対し、それぞれ、測定器(ホソカワミクロン(株)製パウダーテスター、振幅1mm、振動数3000VPM、時間60秒、使用篩の目開き:150μm、サンプル量:6g/回)を用い、処理後のシリカ全体に対し、粒径が150μm以上のシリカの凝集塊の占める割合を求めた。
【0105】
実施例1:0.1wt%
実施例2:0.5wt%
実施例3:0.6wt%
比較例1:1.1wt%」

(14)甲2−11(特開平10−292118号公報)
本件特許出願の優先日前に公開された甲2−11には、以下の記載がある。
「【0037】尚、表1の樹脂A〜D、カップリング剤、無機イオン交換体A〜B、難燃剤A〜Gとして、次に示すものを用いた。
・・・
また、無機充填材A〜Eは、次のF1〜F10の充填材を混合することによって調製した。
・F1:球状非晶質シリカ(電気化学工業社製品番「FB−74」)を空気分級して得られた平均粒径17μmのシリカ粉
・・・」

2 申立理由1−1(新規性)、申立理由1−2(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1−1発明とを対比する。
(ア)甲1−1発明の「シリカ粉末」は、「平均粒径が29.3μmの溶融球状シリカ(電気化学工業株式会社製)を被処理物として、これに分散媒として常温の水を加えて、シェーカー(ヤマト科学社製SA−31)にて攪拌し、シリカスラリーを得て、このシリカスラリー4.96Lを、ホッパー18に充填し、チューブポンプ(アズワン社製チューブポンプ7553−80 ヘッド7518−12)により、磁石ホルダー14の流路14Aに導入口22を介して下方から上方に向けて供給し、流路14Aを通過したシリカスラリーを回収して、乾燥機にて水分率が0.04%になるまで乾燥させて得た」ものであるから、平均粒径は、10μm超50μm以下の範囲に入っているといえる。
したがって、本件発明1と甲1−1発明とは、「平均粒子径が10μm超50μm以下」である点で共通する。

(イ)甲1−1発明の「磁性金属異物」は、本件発明1の「着磁性粒子」に対応する。

(ウ)以上から、本件発明1と甲1−1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「平均粒子径が10μm超50μm以下であるシリカ粉末。」

<相違点>
相違点1−1:本件発明1は、「250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下」であるのに対し、甲1−1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点1−2:本件発明1は、本件着磁性粒子測定方法で測定した「45μm以上の着磁性粒子の個数が0個」であるのに対し、甲1−1発明は、「顕微鏡観察により測定した結果、45μm以上の大きさの磁性金属異物が発見されない」点。
相違点1−3:本件発明1は、「非晶質」であるのに対し、甲1−1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1−1について
新規性について
本件発明1の「250μm以上の乾式篩残存率」について、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0018】には、「なお本明細書において「250μm以上の乾式篩残存率」とは、粒径250μm以上の粒子であって、目開き250μmの乾式篩を通らずに残る粒子(すなわち篩上)の比率のことを言う。乾式篩残存率が高いことは、凝集粒子が多く含まれることを意味しており、250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%を超えると、樹脂に充填し、半導体封止材として用いた際に、樹脂中の非晶質シリカの分散性が低下するため、半導体封止材の粘度が上昇し、ワイヤ流れ量が増加する。」と記載されている。
また、本件明細書の【0032】には、「着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させるにあたっては、凝集粒子の発生を低減させる方法が好ましい。」と記載されている。
以上の記載によれば、本件発明1の「非晶質シリカ粉末」は、着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させることにより発生した粒径250μm以上の凝集粒子であって、目開き250μmの乾式篩を通らずに残る凝集粒子(すなわち篩上)の比率が5.0質量%以下であるといえる。
一方、甲1−1発明の「シリカ粉末」は、「溶融球状シリカ(電気化学工業株式会社製)を被処理物として、これに分散媒として常温の水を加えて、シェーカー(ヤマト科学社製SA−31)にて攪拌し、シリカスラリーを得て、このシリカスラリー4.96Lを、ホッパー18に充填し、チューブポンプ(アズワン社製チューブポンプ7553−80 ヘッド7518−12)により、磁石ホルダー14の流路14Aに導入口22を介して下方から上方に向けて供給し、流路14Aを通過したシリカスラリーを回収して、乾燥機にて水分率が0.04%になるまで乾燥させて得た」ものであり、磁性金属異物を除去したシリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させているといえるから、本件発明1の「非晶質シリカ粉末」と同様に、凝集粒子が発生しているといえる。
しかし、甲1−1には、磁性金属異物を除去したシリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させることにより発生した凝集粒子について何ら記載されておらず、凝集粒子の粒径も明らかでない。
そうすると、甲1−1発明において、磁性金属異物を除去したシリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させることにより発生した粒径250μm以上の凝集粒子であって、目開き250μmの乾式篩を通らずに残る凝集粒子(すなわち篩上)の比率、すなわち、250μm以上の乾式篩残存率は不明である。
また、甲1−1発明において、250μm以上の乾式篩残存率が、5.0質量%以下であることは、本件特許出願の優先日前において技術常識であったともいえない。
したがって、甲1−1発明は、相違点1−1に係る本件発明1の構成を有しているとはいえないから、相違点1−1は実質的な相違点である。

b 申立人星の主張について
(a)申立人星は、特許異議申立書の11ページ18行〜最下行において、甲1−1で使用されている平均粒径が29.3μmの溶融球状シリカは市販品であり、かかる市販品では、粒度分布が狭く制御されていることが一般的であり、平均粒径が29.3μmであれば、250μm以上の粗大粒子が含まれることはなく、そして、平均粒径が30μm程度の溶融球状シリカであれば、250μm以上の粗大粒子が含まれないことは甲1−2(表1の試料No.2)、甲1−3(実施例1)からも確認できるから、甲1−1のシリカは、相違点1−1に係る構成を満足する蓋然性が高い旨主張している。

(b)検討
甲1−2(上記1(2))の第2表のNo.2における溶融シリカは、平均粒径が31μm、96μm以上の粒子が0個であることが記載されており、また、甲1−3(上記1(3))の【0040】、【0045】の【表1】の実施例1における球状非晶質シリカ粉末は、平均粒径が31.9μm、最大粒径が53μmであることが記載されている。
しかし、甲1−2及び甲1−3には、着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させることにより発生した粒径250μm以上の凝集粒子であって、目開き250μmの乾式篩を通らずに残る粒子(すなわち篩上)の比率、すなわち、乾式篩残存率が5.0質量%以下であることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1−2及び甲1−3の記載を参酌しても、甲1−1発明が、相違点1−1に係る本件発明1の構成を備えているとはいえない。
したがって、申立人星の上記主張は採用できない。

進歩性について
上記aで検討したとおり、甲1−1発明において、250μm以上の乾式篩残存率は不明である。
また、上記b(b)で検討したとおり、甲1−2及び甲1−3には、乾式篩残存率が5.0質量%以下であることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1−1発明において、甲1−2及び甲1−3に記載された事項を参酌若しくは適用しても、相違点1−1に係る本件発明1の構成は得られない。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1−1発明、甲1−2及び甲1−3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

d 小括
以上から、本件発明1は、甲1−1発明ではないし、甲1−1発明、甲1−2及び甲1−3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2、3、5、6について
本件発明2、3、5、6は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1−1発明ではないし、甲1−1発明、甲1−2及び甲1−3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。

3 申立理由2−1(進歩性)について
(1)甲2−1発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2−1発明とを対比する。
a 甲2−1発明の「シリカ粉末」は、「最大粒径」が「11μmである」ところ、当該「最大粒径」について、甲2−1の【0097】には、「最大粒径は標準篩を用い、メッシュ下が100.00%を示したメッシュの開口大きさで示した」と記載されているから、甲2−1発明の「シリカ粉末」には、粒径が250μm以上の粒子は含まれていない、すなわち、250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下であるといえる。
したがって、本件発明1と甲2−1発明とは、「250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下」である点で共通する。

b 以上から、本件発明1と甲2−1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下であるシリカ粉末。」

<相違点>
相違点2−1:本件発明1は、「平均粒子径が10μm超50μm以下」であるのに対し、甲2−1発明は、「平均粒径が4.0μm」である点。
相違点2−2:本件発明1は、本件着磁性粒子測定方法で測定した「45μm以上の着磁性粒子の個数が0個」であるのに対し、甲2−1発明は、甲2−1異物粒子測定方法で測定した「異物粒子(粒径10μm以上)が1個/g」である点。
相違点2−3:本件発明1は、「非晶質」であるのに対し、甲2−1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。

(イ)相違点についての判断
a 相違点2−1について
甲2−1(上記1(4))の【0005】の「半導体デバイスのワイヤーは年々狭ピッチ化が進み、現状では15μm程度まで狭まっている。そのため、半導体デバイスの封止工程の歩留まりを上げるためにも、粗大粒子の削減が求められており、とりわけ10μm以上の導電性の粒子を除去することが望まれている。」との記載、同【0027】の「封止用フィラーは、樹脂配合時及び/又は半導体封止時の流動特性が必要であるため、球状であることが好ましい。また、封止樹脂厚は薄型化の傾向があり、それに対応すべく平均粒径は0.1〜10μmであることが好ましい。封止樹脂厚はさらに薄型化が進むと思われるので、フィラーの平均粒径は特に0.1〜5μmが望ましい」との記載、及び、同【0056】の「異物粒子の含有量が極めて少ない高純度非磁性金属酸化物粉末の中で球状シリカ粉末の場合、封止材用フィラーとして使用されることが多い」との記載からすると、甲2−1発明において、シリカ粉末の平均粒径を大きくすると、半導体デバイスの封止工程の歩留まりが下がり、封止樹脂厚は薄型化を妨げるといえるから、当該平均粒径を、好ましい範囲である0.1〜10μmよりも大きくすることには、阻害要因があるといえる。そして、このことは、甲2−2〜甲2−11の記載に左右されるものではない。
したがって、甲2−1発明において、相違点2−1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2−1発明、甲2−2〜甲2−11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

イ 本件発明2、3、5、6について
本件発明2、3、5、6は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2−1発明、甲2−2〜甲2−11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

(2)甲2−3A発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2−3A発明とを対比する。
a 甲2−4(上記1(7))、甲2−5(上記1(8))の記載から、甲2−3A発明の「シリカ粉末I(電気化学工業(株)製FB−74)」の平均粒径は、30μm以上31.5μm以下であるといえる。
したがって、本件発明1と甲2−3A発明とは、平均粒子径が30μm以上31.5μm以下である点で共通する。

b 甲2−3A発明の「シリカ粉末I(電気化学工業(株)製FB−74)」は、本件発明1の「シリカ粉末」に対応する。

c 以上から、本件発明1と甲2−3A発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「平均粒子径が30μm以上31.5μmであるシリカ粉末。」

<相違点>
相違点3−1:本件発明1は、「250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下」であるのに対し、甲2−3A発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点3−2:本件発明1は、本件着磁性粒子測定方法で測定した「45μm以上の着磁性粒子の個数が0個」であるのに対し、甲2−3A発明は、甲2−3着磁性粒子測定方法で測定した「着磁性粒子の個数が、27〜34個」である点。
相違点3−3:本件発明1は、「非晶質」であるのに対し、甲2−3A発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。

(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3−2から検討する。
甲2−3の【0014】(上記1(6))の記載によれば、甲2−3A発明の甲2−3着磁性粒子測定方法は、非磁性金属酸化物粉末中における着磁性異物粒子の数を精度よく測定することができ、従って、得られた非磁性金属酸化物粉末が、所定の異物レベルを達成したものであることを容易に確認することができるものである。
そして、同【0027】、【0028】には、甲2−3着磁性粒子測定方法にて回収された異物個数を測定後、同様の手順で4回残ったスラリーの残留着磁物を確認したら、いずれも0個であったことが記載されているものの、この記載は、甲2−3着磁性粒子測定方法を行ったスラリー中に、着磁性粒子が残っていないことを確認するものであって、シリカ粉末において、甲2−3着磁性粒子測定方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数を0個とするものではない。
また、甲2−3の他の箇所にも、シリカ粉末において、甲2−3着磁性粒子測定方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数を0個とすることは、記載も示唆もされていない。
さらに、甲2−1、甲2−2及び甲2−4〜甲2−11には、シリカ粉末において、測定方法に関わらず45μm以上の着磁性粒子の個数を0個とすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2−3A発明において、甲2−1〜甲2−11に記載された事項を適用しても、相違点3−2に係る本件発明1の構成は得られない。
したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2−3A発明、甲2−1〜甲2−11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ 本件発明2、3、5、6について
本件発明2、3、5、6は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2−3A発明、甲2−1〜甲2−11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

(3)甲2−3B発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2−3B発明とを対比する。
上記(2)ア(ア)における、本件発明1と甲2−3A発明との対比を参酌すると、本件発明1と甲2−3B発明との間には、少なくとも以下の相違点があるといえる。
相違点3−2’:本件発明1は、本件着磁性粒子測定方法で測定した「45μm以上の着磁性粒子の個数が0個」であるのに対し、甲2−3B発明は、甲2−3着磁性粒子測定方法で測定した「着磁性粒子の個数が、17〜21個」である点。

(イ)相違点3−2’についての判断
上記(2)ア(イ)で検討したとおり、甲2−1〜甲2−11のいずれにも、シリカ粉末において、本件着磁性粒子測定方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数を0個とすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2−3B発明において、甲2−1〜甲2−11に記載された事項を適用しても、相違点3−2’に係る本件発明1の構成は得られない。
したがって、本件発明1は、甲2−3B発明、甲2−1〜甲2−11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ 本件発明2、3、5、6について
本件発明2、3、5、6は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2−3B発明〜甲2−11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1〜3、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立理由1−1、申立理由1−2、申立理由2−1は、理由がない。

第5 申立理由2−2(サポート要件)について
1 申立人福崎の主張
申立人福崎は、特許異議申立書の46ページ9行〜49ページ14行において、本件明細書の【0006】の記載から、本件発明が解決しようとする課題は、「絶縁信頼性が極めて高く、かつ高成形性の非導体封止材を調製することが出来る非晶質シリカ粉末を提供すること」であり、同【0003】、【0004】の記載から、「絶縁信頼性」が低下する根本的な原因は、金属異物、すなわち「着磁性粒子」が残留することであり、同【0020】、【0021】の記載から、課題解決のための根本的な手段は、着磁性粒子(長径45μm以上)をナイロンフィルターで吸引濾過して取り除くことであり、そのため、本件発明1は、課題解決手段の一部として、「ナイロンフィルター(目開き35μm)」を用いることを規定していると考えられるところ、課題解決のためには、着磁性粒子(長径45μm以上)を回収する必要があるにもかかわらず、解決手段の一部である「ナイロンフィルター」の目開きが35μmで、対角線長が49μmであるので、着磁性粒子(長径45μm以上)を回収できない蓋然性が高く、その結果、非晶質シリカ粉末に着磁性粒子が混入したままとなり、短絡の生じる可能性があるので、極めて高い絶縁信頼性を得るという、本件発明の課題を解決できない場合があり、請求項に係る発明が、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えており、また、本件明細書の【0021】では、そこで規定する測定方法ではない条件で測定して45μm以上の着磁性粒子の個数が仮に0個であったとしても、半導体の短絡不良に対する改善効果は不十分と述べているが、上記のとおり、長径45μmの着磁性粒子は、目開き35μmのフィルターを通過してしまい、回収されない蓋然性が高いため、「45μm以上の着磁性粒子の個数が0個である」ことを測定する方法としては不適当であることは明確であり、この点でも、請求項に係る発明が、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているから、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない旨主張している。

2 検討
本件発明1では、「45μm以上の着磁性粒子の個数」を以下の方法で測定した個数と定義している。
「[着磁性粒子の測定方法]
1000mLビーカーに非晶質シリカ粉末50gとイオン交換水800gを加えてスラリーを調製する。このスラリーを撹拌装置により、回転数550rpm、5秒間隔で反転させながら、そこに、厚み20μmのゴム製カバーを被せた長さ150mm、直径25mm、磁力12000ガウスの棒磁石を1分間浸漬させ、着磁性粒子を捕捉する。着磁性粒子を捕捉した棒磁石をスラリーから取り出し、空のビーカー上でゴム製カバーを外してイオン交換水でゴム製カバーを洗浄しながら着磁性粒子を脱離させ、着磁性粒子を水中に分散させる。得られた分散液を直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引濾過装置にかけることによりナイロンフィルター上に着磁性粒子を回収する。着磁性粒子を回収したナイロンフィルターをマイクロスコープにセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながらナイロンフィルター上に回収させた着磁性粒子のうち、45μm以上の着磁性粒子の個数を計測する。」
そして、本件明細書の【0042】〜【0053】の実施例及び比較例の記載から、45μm以上の着磁性粒子の個数が0個であれば、極めて高い絶縁信頼性を得られることが理解できる。
そうすると、本件発明1に特定されている着磁性粒子の測定方法は、「45μm以上の着磁性粒子の個数が0個」であることを測定する方法としては適切であるといえ、また、本件発明1は、極めて高い絶縁信頼性を得るという課題を解決できるものである。
また、本件発明2〜6は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、極めて高い絶縁信頼性を得るという課題を解決できるものである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、申立理由2−2は、理由がない。

第6 申立理由2−3(新規事項)について
1 申立人福崎の主張
申立人福崎は、特許異議申立書の50ページ下から7行〜55ページ下から9行において、令和4年10月14日付でした手続補正により、請求項1において、非晶質シリカ粉末の平均粒子径が「7μm以上50μm以下」から「10μm超50μm以下」に限定されたが(請求項1の記載を引用する請求項2〜6も同様)、補正された事項(非晶質シリカ粉末の平均粒子径を「10um超」とすること)は、「当初明細書等に明示的に記載された事項」または「当初明細書等の記載から自明な事項」ではなく、新たな技術事項を導入するものであるから、令和4年10月14日付でした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨主張している。

2 検討
令和4年10月14日付でした手続補正は、請求項1において、非晶質シリカ粉末の平均粒子径を、「7μm以上50μm以下」から「10μm超50μm以下」に限定するものであるところ、補正後の「10μm超50μm以下」との範囲は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載されている「7μm以上50μm以下」との範囲に含まれていたものであるし、非晶質シリカ粉末の平均粒子径の下限値を「10μm超」とすることで、新たな技術的意義が追加されているともいえない。
したがって、上記手続補正による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入するものではない。
また、請求項1を引用する請求項2〜6についても同様である。
よって、申立人福崎の上記主張は採用できない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に違反してされたものではない。
したがって、申立理由2−3は、理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-09-12 
出願番号 P2019-567012
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C01B)
P 1 651・ 537- Y (C01B)
P 1 651・ 55- Y (C01B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 立木 林
河本 充雄
登録日 2022-12-19 
登録番号 7197514
権利者 デンカ株式会社
発明の名称 非晶質シリカ粉末およびその製造方法、用途  
代理人 アクシス国際弁理士法人  

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