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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1403062
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-14 
確定日 2023-10-16 
事件の表示 特願2016−187127「積層体およびそれを備える包装製品」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月5日出願公開、特開2018−51790〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月26日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。

令和 3年 7月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和 3年 7月16日 :原査定の謄本の送達)
令和 3年10月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 5月19日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 7月 6日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、令和5年7月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
積層体を備える包装製品であって、
前記包装製品は、ラミネートチューブ又はラベル材料であり、
前記積層体においては、少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層(但し、下記の(A)のシーラントフィルムを除き、且つ、下記の(B)のシーラントフィルムを除き、且つ、下記の(C)のシーラントフィルムを除く)が順に積層されており、
前記印刷層が、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物が化石燃料由来成分を含み、かつ、前記接着層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記印刷層のバイオマス度が5%以上25%以下であり、
前記基材層は、バイオマス由来成分を含まない材料により形成されており、
前記基材層は、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、またはポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム、またはこれらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムからなる、包装製品。
(A)(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20〜70質量%、(b)密度0.920〜0.933kg/m3及びMFR0.5〜3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15〜65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα−オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914〜0.937kg/m3及びMFR0.9〜3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15〜65質量%、並びに(d)添加剤0〜20質量%、からなり、ここで、(a)〜(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるシーラントフィルム
(B)(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20〜70質量%、(b)密度0.920〜0.933kg/m3及びMFR0.5〜3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15〜65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα−オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914〜0.937kg/m3及びMFR0.9〜3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15〜65質量%、並びに(d)添加剤0〜20質量%、からなり、ここで、(a)〜(d)の合計は100質量%であるポリエチレン系樹脂組成物よりなる層を少なくとも1層含む多層共押出フィルムであるシーラントフィルムであり、且つ、該シーラントフィルム全体に対する該ポリエチレン系樹脂組成物の配合量は、40質量%以上であるシーラントフィルム
(C)(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20〜70質量%、(b)密度0.920〜0.933kg/m3及びMFR0.5〜3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15〜65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα−オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914〜0.937kg/m3及びMFR0.9〜3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15〜65質量%、並びに(d)添加剤0〜20質量%、からなり、ここで、(a)〜(d)の合計は100質量%であるポリエチレン系樹脂組成物と、任意の樹脂とを、それぞれ溶融混練した樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層共押出フィルムであるシーラントフィルム

第3 拒絶の理由
令和5年5月19日付けで通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。

本件出願の請求項1〜5に係る発明は、下記の引用文献6に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
6 特開2007−76698号公報
1 特開2015−108081号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2014−193985号公報(周知技術を示す文献)
4 特開2011−225851号公報(周知技術を示す文献)
7 特開2013−176951号公報(周知技術を示す文献)
8 特開2014−46674号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術
1 引用文献6
(1)引用文献6に記載された事項
引用文献6には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器本体の口部側にバリアー性を付与するチューブ容器に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チューブ容器のキャップ、口部、肩部自体には、バリア性が付与されていないため、酸素が、チューブ容器の頭部からチューブ容器本体内に容易に侵入してしまい、特に酸素ガスにより酸化や褐変し易い物質を含んでいる場合、内容物が変質してしまうという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、キャップ付きチューブ容器全体のバリア性を向上させ、酸素ガスによる内容物の変色、変質を防止する機能を付加したチューブ容器を提供することである。」
「【0026】
次に、上記の本発明において、上記のような材料を使用して、本発明にかかるチューブ容器を形成する積層材30を製造する方法について説明すると、かかる方法としては、通常の包装材料を製造するときに使用するラミネートする方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。・・・
【0027】
ところで、上記のような積層材30の製造法において、押し出しラミネートする際の接着性樹脂層を構成する押し出し樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポエイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、あるいはそれらを変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、その他等を使用することができる。また、本発明において、ドライラミネートする際の接着剤層を構成する接着剤としては、具体的には、ドライラミネート等において使用される2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エボキシ系接着剤、ゴム系接着剤、その他等を使用することができる。」
「【0030】
本発明に係る袋状体20を構成する内層36として使用するヒートシール性を有する樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを使用することができ、その厚さとしては、30〜200μmが適当である。」
「【実施例1】
【0036】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
(チューブ容器10の製造)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、ポリウレタン系グラビアインキによる印刷層を形成し、絵柄印刷層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
次いで、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚み9μmのアルミニウム箔とを接着剤(2液硬化型のウレタン系接着剤層)を介して積層して、層構成、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/絵柄印刷層/接着剤層/アルミニウム箔(9μm)からなる中間層を作製した。
次いで、前記の中間層に、ロールコート法にてポリウレタン系接着剤(塗布量:4g/m2)を介して、表面樹脂層、および内面樹脂層として、厚さ170μmのコロナ処理された線状低密度ポリエチレンフィルムを両面に積層した。その結果、表面側から裏面側に向かって、層構成、線状低密度ポリエチレン層/接着剤層/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/絵柄印刷層/接着剤層/アルミニウム箔/接着剤層/線状低密度ポリエチレン層の積層構成からなる積層フィルムを、マンドレルを利用して一方の側辺部と他方の側辺部とを重ね合わせて筒状に成形し、重ね合わせ部における積層フィルムの裏面層と表面層とを熱溶着法により溶着することによって筒状成形体を得た。
引き続いて、この筒状成形体の一方に、密度0.918g/cm3、メルトインデックス2g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(品名「カーネル KF280」、メーカー「日本ポリケム株式会社」)を用いて圧縮成形法により肩部から口頚部までを成形して接合することにより、図1に示すような実施例1に係るラミネートチューブ容器を得た。・・・」
「【図3】



(2)引用発明
上記(1)から、引用文献6には、実施例1に着目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、ポリウレタン系グラビアインキによる印刷層を形成し、絵柄印刷層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得て、
次いで、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚み9μmのアルミニウム箔とを接着剤(2液硬化型のウレタン系接着剤層)を介して積層して、層構成が、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/絵柄印刷層/接着剤層/アルミニウム箔(9μm)からなる中間層を作製し、
次いで、前記の中間層に、ロールコート法にてポリウレタン系接着剤(塗布量:4g/m2)を介して、表面樹脂層、および内面樹脂層として、厚さ170μmのコロナ処理された線状低密度ポリエチレンフィルムを両面に積層し、その結果、表面側から裏面側に向かって、層構成が、線状低密度ポリエチレン層/接着剤層/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/絵柄印刷層/接着剤層/アルミニウム箔/接着剤層/線状低密度ポリエチレン層の積層構成からなる積層フィルムを、マンドレルを利用して一方の側辺部と他方の側辺部とを重ね合わせて筒状に成形し、重ね合わせ部における積層フィルムの裏面層と表面層とを熱溶着法により溶着することによって筒状成形体を得て、
引き続いて、この筒状成形体の一方に、密度0.918g/cm3、メルトインデックス2g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(品名「カーネル KF280」、メーカー「日本ポリケム株式会社」)を用いて圧縮成形法により肩部から口頚部までを成形して接合することにより得た、ラミネートチューブ容器。」

2 引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【0094】
溶融押出しラミネーション法により2層を接着する際に設ける接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を用いて溶融押出しラミネーション法により形成される。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。なお、上記したポリエチレン系樹脂としては、上記したバイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用できることは言うまでもない。」

3 引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【請求項8】
ジカルボン酸成分とバイオマス資源由来物質から発酵法により直接製造されたジオールとを原料とするポリエステルポリオールの製造方法であって、該ジオール中の炭素原子数5又は6の環状カルボニル化合物の含有量が100質量ppm以下であるポリエステルポリオールの製造方法。」
「【請求項15】
請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載のポリエステルポリオールの製造方法で製造されたポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを反応させるポリウレタンの製造方法。」
「【0239】
[ポリウレタンの製造]
次に、本発明によるポリウレタンの製造方法について説明する。
本発明においては、炭素原子数5又は6の環状カルボニル化合物の含有量を制御して前述のポリエステルポリオールを製造し、このポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを製造する。この際、必要に応じて鎖延長剤を用いてもよい。」
「【0283】
(8)ポリウレタン成形体・用途
本発明のポリウレタン及びそのポリウレタン溶液は、多様な特性を発現させることができ、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医用材料、人工皮革等に広く用いることができる。以下、その用途[1]〜[11]を挙げるが、本発明のポリウレタン及びポリウレタン溶液の用途は何ら以下のものに限定されるものではない。」
「【0291】
[8]バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム及びガラス繊維サイジングなど。」

4 引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
ジカルボン酸および脂肪族ジオールを反応させポリエステルポリオールを製造する工程と、該ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネート化合物を反応させる工程とを少なくとも含むポリウレタンの製造方法であって、該ジカルボン酸がバイオマス資源から誘導された少なくとも一つの成分を含み、該ジカルボン酸中の有機酸の含有量がジカルボン酸に対して0ppm超1000ppm以下であり、該有機酸の25℃におけるpKa値が3.7以下であることを特徴とする、バイオマス資源由来ポリウレタンの製造方法。」
「【0438】
<ポリウレタン成形体・用途>
本発明で製造されるポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができ、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医用材料、人工皮革等に広く用いることができる。」
「【0447】
本発明で製造されるポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォームおよびガラス繊維サイジングなどに使用可能である。」

5 引用文献7
引用文献7には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも植物由来の基材フィルムと植物由来のシーラントフィルムとからなる積層フィルムに関し、更に詳しくは、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、高いバイオマス度を示す積層フィルムに関する。」
「【0039】
・・・本発明の更なる態様において、基材フィルム上またはシーラントフィルムと基材フィルムとの間の任意の位置に、文字、図形、記号、絵柄等の印刷層を設けてもよい。
上記で使用する接着剤や印刷インキとして、植物由来樹脂を含むものを使用することにより、バイオマス度をさらに高めることもできる。また、基材として紙を用いた場合にも、バイオマス度の高い積層体を得ることができる。」

6 引用文献8
引用文献8には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来ポリエチレン系樹脂を含んでなるシーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋に関し、更に詳しくは、高いバイオマス度を示しながらも、隣接する層と高いラミネート強度を示し、且つ、滑り性に優れたシーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋に関する。」
「【0049】
・・・本発明の更なる態様において、基材フィルム上またはシーラントフィルムと基材フィルムとの間に、文字、図形、記号、絵柄等の印刷層を設けてもよい。
上記で使用する接着剤や印刷インキとして、植物由来樹脂を含むものを使用することにより、バイオマス度をさらに高めることもできる。」

7 周知技術
(1)印刷層の印刷インキに植物由来樹脂を含むものを使用することについて
引用文献7の【0001】、【0039】の記載、引用文献8の【0001】、【0049】の記載から、次の事項は、周知技術(以下「周知技術3」ともいう。)であるといえる。
「包装材の積層体のバイオマス度をさらに高めるため、印刷層の印刷インキとして植物由来樹脂を含むものを使用すること。」

(2)バイオマス由来のポリウレタンについて
ポリウレタンが、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物であること及び化石燃料由来成分を含むイソシアネート化合物は技術常識であること、並びに引用文献3の【請求項8】、【請求項15】、【0239】、【0283】、【0291】の記載、引用文献4の【請求項1】、【0438】、【0447】の記載から、次の事項は、周知技術(以下「周知技術4」ともいう。)であるといえる。
「インキに含まれる植物由来樹脂のバインダーとして、バイオマス由来成分を含むポリオールと、化石燃料由来成分を含むイソシアネート化合物とを硬化させたポリウレタンを用いること。」

(3)接着樹脂層にバイオマスポリエチレン系樹脂を用いること
引用文献1の【0094】の記載から、次の事項は、周知技術(以下「周知技術5」ともいう。)であるといえる。
「接着樹脂層として、バイオマスポリエチレン系樹脂を用いること。」

第5 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「絵柄印刷層」は本願発明1の「印刷層」に相当し、同様に、「積層フィルム」は「積層体」に相当する。
引用発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は本願発明1の「ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、またはポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム、またはこれらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムからなる」「基材層」に相当する。
引用発明の「中間層」と「裏面側」の「線状低密度ポリエチレン層」の間に形成される「ポリウレタン系接着剤(塗布量:4g/m2)」からなる「接着剤層」は、本願発明1の「接着層」に相当する。
引用発明の少なくとも「裏面側」の「線状低密度ポリエチレン層」は、積層フィルムの側辺部の重ね合わせ部が熱溶着法により溶着されるから、本願発明1の「シーラント層」に相当する。
引用発明の「積層フィルム」が「層構成が、線状低密度ポリエチレン層/接着剤層/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/絵柄印刷層/接着剤層/アルミニウム箔/接着剤層/線状低密度ポリエチレン層の積層構成からなる」ことは、本願発明1の「積層体」が「少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層」「が順に積層されて」いることに相当する。
引用発明の「ラミネートチューブ容器」は本願発明1の「包装製品」及び「ラミネートチューブ又はラベル材料」に相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
積層体を備える包装製品であって、
前記包装製品は、ラミネートチューブ又はラベル材料であり、
前記積層体においては、少なくとも、基材層、印刷層、接着層、およびシーラント層が順に積層されており、
前記基材層は、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、またはポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム、またはこれらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムからなる、包装製品。
[相違点1]
本願発明1は、「前記印刷層」が「着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物が化石燃料由来成分を含み」、「前記印刷層のバイオマス度が5%以上25%以下である」のに対して、引用発明は、「絵柄印刷層」が「ポリウレタン系グラビアインキによる」ものであり、また、バイオマス度が不明である点。
[相違点2]
本願発明1は、「前記接着層」が「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含」むのに対して、引用発明は、「中間層」と「裏面側」の「線状低密度ポリエチレン層」の間に形成される「接着剤層」が「ポリウレタン系接着剤」である点。
[相違点3]
本願発明1は、「前記基材層」が「バイオマス由来成分を含まない材料により 形成されて」いるのに対して、引用発明は、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」がそのようなものであるか不明である点。
[相違点4]
本願発明1は、「シーラント層」が、(A)「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20〜70質量%、(b)密度0.920〜0.933kg/m3及びMFR0.5〜3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15〜65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα−オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914〜0.937kg/m3及びMFR0.9〜3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15〜65質量%、並びに(d)添加剤0〜20質量%、からなり、ここで、(a)〜(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるシーラントフィルム」の「シーラントフィルムを除き」、且つ、(B)「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20〜70質量%、(b)密度0.920〜0.933kg/m3及びMFR0.5〜3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15〜65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα−オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914〜0.937kg/m3及びMFR0.9〜3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15〜65質量%、並びに(d)添加剤0〜20質量%、からなり、ここで、(a)〜(d)の合計は100質量%であるポリエチレン系樹脂組成物よりなる層を少なくとも1層含む多層共押出フィルムであるシーラントフィルムであり、且つ、該シー
ラントフィルム全体に対する該ポリエチレン系樹脂組成物の配合量は、40質量%以上であるシーラントフィルム」の「シーラントフィルムを除き」、且つ、(C)「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20〜70質量%、(b)密度0.920〜0.933kg/m3及びMFR0.5〜3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15〜65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα−オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914〜0.937kg/m3及びMFR0.9〜3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15〜65質量%、並びに(d)添加剤0〜20質量%、からなり、ここで、(a)〜(d)の合計は100質量%であるポリエチレン系樹脂組成物と、任意の樹脂とを、それぞれ溶融混練した樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層共押出フィルムであるシーラントフィルム」の「シーラントフィルムを除く」のに対して、引用発明は、「裏面側」の「線状低密度ポリエチレン層」がそのように特定されていない点。

第6 判断
1 相違点1について
着色剤を含む印刷層は例示するまでもなく周知である。
また、包装材の積層体のバイオマス度を高めるため、印刷層の印刷インキとして植物由来樹脂を含むものを使用することは周知の技術である(周知技術3)。
そして、包装製品における化石燃料の使用量の削減とそれに伴うコストの増加に鑑み、印刷層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれとするかは、当業者が適宜決め得ることであり、引用発明の「絵柄印刷層」における「ポリウレタン系グラビアインキ」のポリウレタン成分として、周知のポリウレタン系樹脂(周知技術4)を採用して、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物が化石燃料由来成分を含むものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
その際、ポリイソシアネート化合物のバイオマス由来の成分の割合を適宜調整して、バイオマス度を5%以上25%以下とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。

2 相違点2について
引用文献6の【0027】には、接着性樹脂層を構成する押し出し樹脂として、エチレンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンが例示されている。
また、接着樹脂層として、バイオマスポリエチレン系樹脂を用いることは周知の技術である(周知技術5)。
そして、包装製品における化石燃料の使用量の削減とそれに伴うコストの増加に鑑み、印刷層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれとするかは、当業者が適宜決め得ることであり、引用発明の「接着剤層」として、上記例示及び周知技術を参考にして、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。

3 相違点3について
通常、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」として化石燃料由来のものが用いられること、また、引用文献6には、引用発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を化石燃料由来のものでないとする記載がないこととを併せてみて、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は化石燃料由来のものと考えられるから、相違点3は実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点3が実質的なものであるとしてみても、包装製品における化石燃料の使用量の削減とそれに伴うコストの増加に鑑み、印刷層を化石燃料由来の樹脂組成物とバイオマス由来の樹脂組成物のいずれとするかは、当業者が適宜決め得ることであり、引用発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を「バイオマス由来成分を含まない材料により形成」することに格別の困難性はない。

4 相違点4について
引用文献6には、「シーラント層」として、本願発明1における(A)〜(C)のシーラントフィルムは記載されておらず、一方、「本発明に係る袋状体20を構成する内層36として使用するヒートシール性を有する樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを使用することができ」(引用文献6の【0030】)と当該(A)〜(C)のシーラントフィルム以外のものが記載されているから、相違点4は実質的な相違点ではない。

5 効果の予測性
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明、周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

6 請求人の主張について
請求人は、相違点1に関して、令和5年7月6日提出の意見書において、次のように主張をしている。
「引用発明6及び周知技術3のいずれにも、本願発明1が規定する「印刷層が、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物が化石燃料由来成分を含み」という構成は開示されていません。この構成に対して、拒絶理由通知書の認定では、周知技術4が適用されています。
拒絶理由通知書で認定されているように、引用発明6に周知技術3が適用され、更に周知技術4が適用される場合、当業者が本願発明に到達するためには、下記の(A1)、(B1)という2つの段階を経る必要があります。
(A1):引用文献6の発明のポリウレタン印刷層を、バイオマス由来のものに代える。
(B1):バイオマス由来の印刷層として、ポリオールがバイオマス由来成分を含み、イソシアネート化合物が化石燃料由来成分を含むものを採用する。
(A1)、(B1)はそれぞれ独立した段階ではなく、(A1)の段階を経て初めて(B1)の段階に至るという直列の関係にあります。いわゆる「容易の容易」の関係にあります。2つの段階を経て本願発明の構成に想到することは、格別な努力が必要であり、当業者にとって容易であるということはできないと言えます(例えば、平成28年3月30日判決(平成27年(行ケ)第10094号、平成29年3月21日判決(平成28年(行ケ)第10186号において、このような判断がなされています)。
特に、引用文献6において、印刷層は、引用文献6に記載の発明の課題を解決するのに寄与する構成ではなく、段落〔0036〕の実施例1で「ポリウレタン系グラビアインキによる印刷層を形成し」とだけ述べられている構成要素に過ぎません。当業者が、引用文献6の印刷層に着目する動機は乏しく、この点でも、本願発明の特にチューブ容器の進歩性は否定されないと考えます。」
しかしながら、周知技術3は、引用発明における「ポリウレタン系グラビアインキ」のポリウレタン成分として周知技術4のポリウレタン系樹脂を採用することに動機があることを示すために挙げたものであって、請求人が主張するように引用発明に周知技術3を適用し、更に周知技術4を適用したものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

7 小括
よって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、その出願前日本国内または外国において頒布された引用文献6に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-08-22 
結審通知日 2023-08-25 
審決日 2023-09-05 
出願番号 P2016-187127
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 稲葉 大紀
藤井 眞吾
発明の名称 積層体およびそれを備える包装製品  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 宮嶋 学  
代理人 岡村 和郎  
代理人 中村 行孝  

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