• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1403117
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-15 
確定日 2023-09-29 
事件の表示 特願2020− 39219「敏感肌用化粧水」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020−152717〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月6日(優先日 平成31年3月12日)の出願であって、令和3年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年9月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月9日付けで拒絶査定がされ、令和4年2月15日に拒絶査定不服審判請求がされると同時に手続補正書(以下「本件補正」ともいう。)が提出され、同年3月10日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 令和4年2月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年2月15日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
敏感肌用化粧水であって、
(A)塩化マグネシウム、
(B)システインまたはその塩、
(C)ピルビン酸またはその塩、および
(D)シアノコバラミン
を含む、角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善するための化粧水。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
敏感肌用化粧水であって、
(A)塩化マグネシウム、
(B)システインまたはその塩、
(C)ピルビン酸またはその塩、および
(D)シアノコバラミン
を含む、角層水分量を維持または増加させるための敏感肌用化粧水。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「角層水分量を維持または増加させるための敏感肌用」との特定事項の、「敏感肌用」との用途の内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表平10−512253号公報(平成10年11月24日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア1) 「【特許請求の範囲】
1. 局所的使用のための組成物を製造もしくは生成するための、最初の継代においてヒト表皮ケラチン細胞の接種物の少なくとも一つのクローン増殖を含むが、生きた滋養基質を含まない、ヒト表皮ケラチン細胞の接種物の生存可能な、それ自身上および水性媒体における、in vitro培養に適した組成物を含む複合栄養培地の使用。
2. 栄養培地の成分が、動物由来もしくは細胞由来のあらゆる生物学的抽出物を除外して、皮膚に関して生物学的適合性、バイオミメテックおよび生物学的利用可能性を備えたことを特徴とする、請求項1記載の使用。
3. 複合栄養培地が、アミノ酸類、一つ以上のビタミン類、一つ以上の細胞成長因子類および一つ以上の無機塩類を含むことを特徴とする、請求項1記載の使用。
4. 複合栄養培地が、成分の濃度をmg/lで示した以下の組成、
L-アラニン 9.2
L-アルギニンHCL 421.4
L-アスパラギン(無水) 14.2
L-アスパラギン酸 4.0
L-システインHCL.H2O 42.0
L-グルタミン酸 14.8
L-グルタミン 1754.4
グリシン 7.6
L-ヒスチジンHCL.H2O 50.0
L-イソロイシン 6.0
L-ロイシン 131.2
L-リシンHCl 54.0
L-メチオニン 13.5
L-フェニルアラニン 10.0
L-プロリン 34.6
L-セリン 26.1
L-スレオニン 24.0
L-トリプトファン 9.3
L-チロシン 2Na 2H2O 11.7
L-バリン 70.3
ビタミン類および細胞成長因子
d-ビオチン 0.02
葉酸 0.80
ニコチンアミド 0.04
Ca D-パントテン酸塩 0.30
ピリドキシンHCl 0.06
リボフラビン 0.04
チアミンHCl 0.30
ビタミンB12 0.41
i-イノシトール 18.0
ブトレシン 2HCl 0.20
ピルビン酸ナトリウム 55.0
チミジン 0.73
アデニン(HCl) 24.0
DL-リポ酸 0.20
無機化合物
塩化ナトリウム 6800.0
KCl 112.0
Na2HPO4 284.0
CuSO4・5H2O 0.003
酢酸ナトリウム 300.0(無水)
D-グルコース 1080.0
HEPES(ピペラジン)6600.0
ホスホリルエタノールアミン 0.06768
エタノールアミン 0.04684
硫酸ナトリウム 3.4
炭酸水素ナトリウム 1160.0
FeSO4・7H2O 1.39
MgCl2・6H2O 120.0
CaCl2・2H2O 13.0〜22.05
ZnSO4・7H2O 0.144
(NH4)6MO7O24・4H2O 0.00120
Na2SiO3・5H2O 0.142
MnCl2・4H2O 0.00002
SnCl2・2H2O 0.00011
NH4VO3 0.00057
を備えていることを特徴とする、請求項1記載の使用。
5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載された少なくとも一つの栄養培地が均一に分散した、人体の表面部と生物学的適合性を備えた相を含む局所的使用用組成物。
6. 複合栄養培地を含む水性連続相を備えた二相形態、特に水性ゲルまたは油中水型エマルション形態をとることを特徴とする、請求項5記載の組成物。
7. 油性連続相を備え、不連続相が複合栄養培地を含む、特にエマルション形態の、二相形態をとることを特徴とする、請求項5記載の組成物。
8. 請求項5ないし7のいずれか一項に記載の組成物を含む化粧ベース。
9. 複合栄養培地が、活性体、もしくは付形剤であって特に他の活性体を増強する付形剤を構成することを特徴とする、請求項8記載の化粧ベースを含む化粧調製物。」

(ア2)「本願発明に係る複合栄養培地は、アミノ酸類、一つ以上のビタミン類、一つ以上の細胞成長因子類および一つ以上の無機塩類を含む。
局所的使用のための本願発明の組成物は、人体の表面部と生物学的適合性を有する相を含み、その相では、少なくとも上記栄養培地が均一に分布している。
本願発明に係る組成物において、栄養試薬が分布された生物学的適合性を備えた相が、前記組成物の付形剤(excipient)、もしくはその一つの成分を構成することができる。
本願発明に係る栄養培地に存在する全ての化合物が水溶性であるので、局所的使用のための組成物を得るために、以下の二つの製剤方法を用いることができる。
1)本願発明に係る栄養培地を含んだ水性連続相:
−ポリサッカリドもしくはセルロースエーテル型の非イオン性水溶性ポリマー(高イオン強度の培地と適合するポリマー)で補助された水性ゲルの形態;
−乳化されたシステムの形態(高イオン強度に耐える界面活性剤を用いた油中水型エマルション);
−化粧用漿液の形態。
2)油性連続相、本願発明に係る栄養培地を含む不連続相:
−不連続相のイオン強度が、エマルションの不安定性を必然的に伴うという理解に基づいて、乳化された形態:しかしながら、より安定性の優れたラメラ(lamellar)もしくは円筒形相(cylindrical phases)、あるいは使用の直前に単に振るだけで再乳化される二相システムを調製することもできる。
−カプセル化:
*脂質相に分散されたポリサッカリド型の堅いカプセル、
*不連続相に分散された、ゼラチン型の柔らかいカプセル。
カプセル化輸送試薬としてのリポソームの使用は、水性連続相のリポソームゲルの形態をとることが考えられる。
本願発明に係る組成物は、化粧ベースとして提供することができる。栄養供給は、表皮細胞の存続、完全性およびバランスの維持の改善に対して顕著に有利である。特に、皮膚の主要な本質的性質が永続的ベース(a long-lasting basis)に維持されること、ダメージに対する耐性が増大すること、並びに、適切であれば、バランス状態への復帰を促進することを可能にする。
本願発明の他の主題は、土記のベースを含む化粧調製物であり、複合栄養培地が、ある活性体(an active principle)、もしくは増強可能な他の活性体の存在下における付形剤を構成する。」(10頁11行〜11頁16行)

イ 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2007−500196号公報(平成19年1月11日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
(イ1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種もしくはそれ以上の組織培養培地、特に皮膚細胞培養培地を含んでなる化粧用および/もしくは皮膚科学的調製物。
【請求項2】
少なくとも1種の皮膚細胞培養培地が、1種もしくはそれ以上の他の組織培養培地との混合物中に存在することを特徴とする請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
培地もしくはその混合物が、調製物の総質量に基づいて、0.1〜100重量%の量で調製物の水相の成分として存在することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の調製物。
【請求項4】
組織培養培地が、mg/l単位の濃度範囲内で以下の成分:
ビオチン 0.0036 0.0146
CaCl2.2H2O 4.41 116.61
パントテン酸カルシウム 0.25 2.24
塩化コリン 9 13.96
CuSO4.5H2O 0.0002496 0.00125
D-グルコース 1081 3151
FeSO4.7H2O 0.417 1.39
葉酸 0.79 2.65
グリシン 7.51 18.75
イノシトール 12.6 18.02
KCl 111.83 311.8
L-アラニン 4.5 8.91
L-アルギニン.HCl 147.5 210.7
L-アスパラギン 7.5 15.01
L-アスパラギン酸 3.99 6.65
L-システイン.HCl 15.75 42.04
L-グルタミン 365.3 877.2
L-グルタミン酸 7.35 14.71
L-ヒスチジン.HCl.H2O 16.77 31.5
リポ酸 0.11 0.2063
L-イソロイシン 1.968 54.5
L-ロイシン 59 65.6
L-リシン.HCl 18.27 91.25
L-メチオニン 4.475 17.24
L-フェニルアラニン 4.956 35.5
L-プロリン 17.25 34.53
L-セリン 26.25 63.06
L-トレオニン 11.91 53.5
L-チロシン 2.718 38.7
L-バリン 35.13 52.85
MgCl2.6H2O 61 122
Na2HPO4.7H2O 71 536.2
NaCl 6999.5 7599
NaHCO3 1176 2438
ピルビン酸ナトリウム 47 63
ニコチンアミド 0.03663 2.02
ピリドキシンHCl 0.031 0.06171
リボフラビン 0.03764 0.22
チアミンHCl 0.3373 2.17
チミジン 0.37 0.7266
ビタミンB12(コバラミン) 0.68 4.07
を含んでなることを特徴とする請求項1、2もしくは3に記載の調製物。」

(イ2)「【技術分野】
【0001】
本発明は組織培養培地、特に皮膚細胞培養培地、特に含水無血清培地を含んでなる化粧用(cosmetic)もしくは皮膚科学的(dermatological)調製物、ならびにスキンケア、ヘアケアおよびボディケアのための調製物の使用に関する。」

(イ3)「【0009】
角化表皮は、皮膚の防御シールドを形成する。この機能が最適に発揮されるためには、皮膚細胞(ケラチノサイト)はいわゆる表皮分化のプロセスを通過することが必要である。基底層における細胞の分裂後に、ケラチノサイトは皮膚表面に移動し、そしてそれらが死んだ扁平無核角質細胞として角質層(horny layer)(角質層(stratum corneum))を形成するまでこの間に多数の変化を受け、そして最終的にはがれ落ちる。表皮分化の間に、特定の機能を有する種々のタンパク質の形成がある。これらには、とりわけ、ケラチン、インボルクリン、フィラグリンおよびトランスグルタミナーゼが包含される。表皮および角質層の最適な形成には、これらのタンパク質が協調的にそして十分な量で形成されることが必要である。
【0010】
先行技術は、皮膚の障害を補うかもしくは少なくとも減少するのに役立つ多数の化粧品、スキンケア調製物もしくは創傷治癒調製物を開示する。
【0011】
従って、例えば、老化皮膚は、表皮における基底細胞の増殖の刺激によって、表皮を厚くすることおよびそれ故に皮膚を滑らかにすることをもたらす主としてビタミンA誘導体もしくはヒドロキシ酸で美容的に処置される。さらに最近の方法は、乾燥皮膚もしくは老化皮膚に存在しないかもしくは減少した量で存在するタンパク質の標的置換、または乾燥皮膚においてもしくは加齢に伴って支障をきたす代謝プロセスへの間接的介入を、それらを正常化するために含む。ここで挙げることができる例は、しわを減らす目的でのコラーゲン合成の刺激である。さらに、例えば、ラミニン、皮膚細胞の寿命を延ばすための物質およびある種の抽出物は、表皮分化を刺激するために使用される。しかしながら、これらのいくつかは、副作用の高い可能性を有する薬理学的活性物質である。
【0012】
先行技術から既知である調製物のいずれも、ある程度の有害な副作用もしくは少なくとも好ましくない副作用を有することなしに皮膚がそれ自体再生することを可能にしない。非常に多くの場合に、これは標的器官で生物製薬学的有効濃度を達成するために使用されなければならない活性物質の高い濃度のためである。皮膚標的器官で、皮膚防壁は活性物質の皮膚効果を妨げる。皮膚防壁を変えることは皮膚の増加した感受性をもたらし得るので、特に皮膚用製品の場合に、付随する皮膚炎は典型的でないことはない。
【0013】
敏感な皮膚は、ホメオスタシスの調節障害に基づくことが多い。ここで、脂質もしくはメッセンジャーのいずれかは、仮にあったとしても、不十分な量で生産される。これは減少した本来備わっている防御に、そして皮膚の増加した感受性につながる。
【0014】
さらに、例えば熱傷のような皮膚損傷の場合に、皮膚の上層は不可逆的に破壊され、この場合、残存する細胞が最短時間内に健康な組織結合を再生できることが可能にされなければならない。これは適当な条件を必要とする。
【発明の開示】
【0015】
本発明の目的は、必須の無機および/もしくは有機バイオファクターの皮膚への供給を改善することである。従って、本発明の目的は、有害な副作用もしくは好ましくない副作用が生じることなしに皮膚がそれ自体再生できることを可能にする化粧用もしくは皮膚科学的調製物を提供することである。本発明のさらなる目的は、先行技術の質を高めそしてスキンケア、ヘアケアおよびボディケアに、そしてまた皮膚炎および熱傷の処置に用いることができる調製物を提供することである。
【0016】
記載の目的は、メインクレームに対応する化粧用もしくは皮膚科学的調製物により達成される。従属請求項は、本発明の調製物の都合のよい態様に関する。さらに、本発明には、皮膚疾患の処置のためのそしてスキンケア、ヘアケアおよび頭皮ケアのためのそのような調製物の使用が包含される。」

(イ4)「【0025】
驚くべきことに、皮膚細胞を培養するための皮膚細胞培養培地を含んでなる本発明の化粧用もしくは皮膚科学的調製物は、ヒト皮膚自体の中もしくは上で、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚を使用する機序を活性化できることを示すことが可能であった。これに関して、繊維芽細胞およびケラチノサイト関連増殖培地の混合物を直接もしくは適当な小胞技術において使用し、そして医学的/製薬学的目的および化粧用目的に用いることが可能である。適当な小胞系は、ここで好ましくは、例えばリポソームもしくはシクロデキストリン調製物、および流動体もしくは固体脂質に基づくマイクロエマルジョンもしくはナノエマルジョンのような膜系である。これらの小胞使用の利点は、培地を皮膚防壁にもしくはそれを通ってそれらの表皮もしくは真皮作用部位でもたらすことである。
【0026】
皮膚細胞培養培地および小胞技術、特に化粧用エマルジョン調製物のこの組み合わせは、皮膚の効率のよい処置およびケアを実際に初めて保証する。特定の、特に無血清の、皮膚細胞培養培地の供給のこの相乗的組み合わせ、適当な局所用調製物における導入および皮膚へのこれらの調製物の使用によって、皮膚がそれ自体再生すること、および健全な流動平衡、ホメオスタシスにおいて維持されること、およびまたオートポイエーシスを刺激することを可能にする最適条件が作り出される。」

(イ5)「【0028】
本発明によれば、示す濃度範囲内で以下の成分を含んでなる組織培養培地が特に好ましい:
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

・・・
【0035】
DMEM/ハムF−12(1:1)は、以下の組成を有する(mg/l単位のデータ):
NaCl 6999.5 L-ロイシン 59
KCl 311.8 L-リシンHCl 91.25
Na2HPO4 71 L-メチオニン 17.24
Na2HPO4-H2O 62.5 L-フェニルアラニン35.5
MgSO4-7H2O 100 L-プロリン 17.25
MgCl2-6H2O 61 L-セリン 26.25
CaCl2 116.61 L-トレオニン 53.5
Fe(NO3)3-9H2O 0.05 L-トリプトファン 9
FeSO4-7H2O 0.417 L-チロシン 38.7
CuSO4-5H2O 0.00125 L-バリン 52.85
ZnSO4-7H2O 0.432
D-グルコース 3151 塩化コリン 9
NaHCO3 2438 α-ビオチン 0.00365
ピルビン酸Na 55 葉酸 2.65
フェノールレッド 12.5 D-パントテン酸Ca 2.24
ミオイノシトール 12.6
L-アラニン 4.5 ニコチンアミド 2.02
L-アルギニンHCl 147.5 ピリドキシカル(Pyridoxcal)HCl 2
L-アスパラギン-H2O 7.5 ピリドキシンHCl 0.031
L-アスパラギン酸 6.65 リボフラビン 0.22
L-システインHCl 15.75 チアミンHCl 2.17
L-システイン 24 ビタミンB12 0.68
L-グルタミン 365.3 ヒポキサンチン 2.05
L-グルタミン酸 7.35 チミジン 0.37
グリシン 18.75 リポ酸 0.11
L-ヒスチジンHCl-H2O 31.5 リノール酸 0.042
L-イソロイシン 54.5 プトレシン2HCl 0.081
【0036】
文献引例Barnes D.and Sato G.;Anal.Biochem 102,255[1980]によれば、MCDB153はヒトケラチノサイトを培養するために用いられる。また、最小培地として3.5〜8のpH値を有するPBS、リン酸緩衝食塩水。
【0037】
MCDB153は、以下の組成を有する(mg/l):
NaCl 7599 塩化コリン 13.96
KCl 111.83 プトレシン 0.1611
酢酸ナトリウム-3H2O 500 ビタミン1312 4.07
Na2HPO4-7H2O 536.2 ビオチン 0.0146
MgCl2-6H2O 122 パントテン酸カルシウム 0.258
CaCl2-2H2O 4.411 ニコチンアミド 0.03663
グルコース 1081 ピリドキシンHCl 0.06171
ピルビン酸ナトリウム 55 チアミンHCl 0.3373
NaHCO3 1176 アデニン 24.32
フェノールレッド 1.317 ミオイノシトール 18.02
HEPES 6600 リポ酸 0.2063
チミジン 0.7266
L-アラニン 8.91 葉酸 0.79
L-アルギニンHCl 210.7 リボフラビン 0.03764
L-アスパラギン 15.01
L-アスパラギン酸 3.99 CuSO4-5H2O 0.0002496
L-システインHCl-H2O 42.04 FeSO4-7H2O 1.39
L-グルタミン 877.2 MnSO4-5H2O 0.000241
L-グルタミン酸 14.71 (NH4)6Mo7O24-4H2O 0.001236
グリシン 7.51 NiCl2-6H2O 0.0001188
L-ヒスチジンHCl-H2O 16.77 H2SeO3 0.003869
L-イソロイシン 1.968 Na2SiO3-9H2O 0.1421
L-ロイシン 65.6 SnCl2-2H2O 0.0001128
L-リシンHCl 18.27 NH4VO3 0.000585
L-メチオニン 4.476 ZnSO4-7H2O 0.144
L-フェニルアラニン 4.956
L-プロリン 34.53
L-セリン 63.06
L-トレオニン 11.91
L-トリプトファン 3.06
L-チロシン 2.718
L-バリン 35.13
【0038】
DMEM/ハムF−12(1:1)およびMCDB153倍地の利点は、特に選択されそして単層の培養に適当である化粧用もしくは皮膚科学的調製物において、それらが2次元のそして器官型の皮膚モデル、ならびに皮膚特異的生体機能のインビトロおよびエクスビボ刺激もしくは保存を可能にすることである。
【0039】
組織(特に皮膚)細胞培養培地は、化粧用もしくは皮膚科学的調製物における水相の成分として容易に用いることができ、また、それらが調製物の水相を完全に置換することも可能である。
【0040】
従って、組織培養培地の比率は、化粧用調製物の総質量に基づいて、0.1〜100重量%、好ましくは1〜50重量%、非常に特に好ましくは40重量%である。
【0041】
従って、本発明によれば、100重量%の皮膚細胞培養培地、例えば上記のようなMCDB153からなる水性調製物は、化粧用調製物として用いられる。」

ウ 引用文献4
原査定の拒絶の理由の付記で示された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、Bioderma, France, Intensive Regeneration Matrix Concentrate、ID#1270126、Mintel GNPD [online]、2010年1月(掲載時期)、[検索日:2021.10.28]、Internet (2010年1月掲載。以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

(ウ1)「
カテゴリー 【スキンケア製品】>フェイス/ネックケア
・・・
訴求内容
ひきしめ効果 アンチエイジング ツヤを与えてくれる ノンコメドジェニック ビタミン ミネラル強化 低刺激性 保湿性 小シワ対策 敏感肌用 肌のキメを整える 酸化防止作用

成分 パッケージ表示
(審決注:日本語表記で表示)
水・・・塩化マグネシウム・・・ピルビン酸ナトリウム・・・システインHCl・・・シアノコバラミン・・・」(カテゴリー、訴求内容及び成分の欄)

エ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、柴田直樹、ビタミンB12酵素の構造と機能の研究、日本結晶学会誌、2004年、46巻、3号、209〜215頁(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
(エ1)「ビタミンB12はコバラミン関連化合物・・・の1つであるシアノコバラミン・・・の慣用名である.」(209頁「1.はじめに」の欄の1〜3行)

(3)引用文献に記載された発明(引用発明)について
ア 引用文献2に記載された発明
引用文献2に記載された技術は、ヒト表皮ケラチン細胞の接種物の生存可能な、それ自身上および水性媒体における、in vitro培養に適した組成物を含む複合栄養培地及び該複合栄養培地を含む化粧料調製物に関するもので(摘記(ア1))、請求項4、5、6及び8を引用する請求項9に係る発明として、請求項4に記載された複合栄養培地が均一に分散した、水性連続相を備えた二相形態の、人体の表面部と生物学的適合性を備えた相を含む局所的使用用組成物を化粧ベースとして含む化粧調製物である以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる(摘記(ア1))。

「成分の濃度をmg/lで示した以下の組成、
L-アラニン 9.2
L-アルギニンHCL 421.4
L-アスパラギン(無水) 14.2
L-アスパラギン酸 4.0
L-システインHCL.H2O 42.0
L-グルタミン酸 14.8
L-グルタミン 1754.4
グリシン 7.6
L-ヒスチジンHCL.H2O 50.0
L-イソロイシン 6.0
L-ロイシン 131.2
L-リシンHCl 54.0
L-メチオニン 13.5
L-フェニルアラニン 10.0
L-プロリン 34.6
L-セリン 26.1
L-スレオニン 24.0
L-トリプトファン 9.3
L-チロシン 2Na 2H2O 11.7
L-バリン 70.3
ビタミン類および細胞成長因子
d-ビオチン 0.02
葉酸 0.80
ニコチンアミド 0.04
Ca D-パントテン酸塩 0.30
ピリドキシンHCl 0.06
リボフラビン 0.04
チアミンHCl 0.30
ビタミンB12 0.41
i-イノシトール 18.0
ブトレシン 2HCl 0.20
ピルビン酸ナトリウム 55.0
チミジン 0.73
アデニン(HCl) 24.0
DL-リポ酸 0.20
無機化合物
塩化ナトリウム 6800.0
KCl 112.0
Na2HPO4 284.0
CuSO4・5H2O 0.003
酢酸ナトリウム 300.0(無水)
D-グルコース 1080.0
HEPES(ピペラジン)6600.0
ホスホリルエタノールアミン 0.06768
エタノールアミン 0.04684
硫酸ナトリウム 3.4
炭酸水素ナトリウム 1160.0
FeSO4・7H2O 1.39
MgCl2・6H2O 120.0
CaCl2・2H2O 13.0〜22.05
ZnSO4・7H2O 0.144
(NH4)6MO7O24・4H2O 0.00120
Na2SiO3・5H2O 0.142
MnCl2・4H2O 0.00002
SnCl2・2H2O 0.00011
NH4VO3 0.00057
を備えている複合栄養培地が均一に分散した、水性連続相を備えた二相形態の、人体の表面部と生物学的適合性を備えた相を含む局所的使用用組成物を化粧ベースとして含む化粧調製物。」
なお、摘記(ア1)の「(NH4)6MO7O24・4H2O」は、「(NH4)6MO7O24・4H2O」の明らかな誤記であるから、上記のとおり引用発明2を認定する。

イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された技術は、組織培養培地、特に皮膚細胞培養培地、特に含水無血清培地を含んでなる化粧用(cosmetic)もしくは皮膚科学的(dermatological)調製物、ならびにスキンケア、ヘアケアおよびボディケアのための調製物の使用に関するもので(摘記(イ2))、請求項3を引用する請求項4に係る発明として、請求項4に記載された組織培養培地を水相の成分とした調製物の発明が記載され(摘記(イ1))、請求項4に対応する実施例の記載として、水性調製物が化粧用調製物として用いられることが記載されているのであるから(摘記(イ5))、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「 組織培養培地が、mg/l単位の濃度範囲内で以下の成分:
ビオチン 0.0036 0.0146
CaCl2.2H2O 4.41 116.61
パントテン酸カルシウム 0.25 2.24
塩化コリン 9 13.96
CuSO4.5H2O 0.0002496 0.00125
D-グルコース 1081 3151
FeSO4.7H2O 0.417 1.39
葉酸 0.79 2.65
グリシン 7.51 18.75
イノシトール 12.6 18.02
KCl 111.83 311.8
L-アラニン 4.5 8.91
L-アルギニン.HCl 147.5 210.7
L-アスパラギン 7.5 15.01
L-アスパラギン酸 3.99 6.65
L-システイン.HCl 15.75 42.04
L-グルタミン 365.3 877.2
L-グルタミン酸 7.35 14.71
L-ヒスチジン.HCl.H2O 16.77 31.5
リポ酸 0.11 0.2063
L-イソロイシン 1.968 54.5
L-ロイシン 59 65.6
L-リシン.HCl 18.27 91.25
L-メチオニン 4.475 17.24
L-フェニルアラニン 4.956 35.5
L-プロリン 17.25 34.53
L-セリン 26.25 63.06
L-トレオニン 11.91 53.5
L-チロシン 2.718 38.7
L-バリン 35.13 52.85
MgCl2.6H2O 61 122
Na2HPO4.7H2O 71 536.2
NaCl 6999.5 7599
NaHCO3 1176 2438
ピルビン酸ナトリウム 47 63
ニコチンアミド 0.03663 2.02
ピリドキシンHCl 0.031 0.06171
リボフラビン 0.03764 0.22
チアミンHCl 0.3373 2.17
チミジン 0.37 0.7266
ビタミンB12(コバラミン) 0.68 4.07
を含んでなる化粧用水性調製物。」

ウ 引用文献4に記載された発明
引用文献4に記載された技術は、スキンケア製品の商品情報であり、カテゴリーとして、フェイス/ネックケアのスキンケア製品であることが記載され、訴求内容として、ひきしめ効果 アンチエイジング ツヤを与えてくれる ノンコメドジェニック ビタミン ミネラル強化 低刺激性 保湿性 小シワ対策 敏感肌用 肌のキメを整える 酸化防止作用が記載され、成分として、水、塩化マグネシウム、ピルビン酸ナトリウム、システイン塩酸塩、及びシアノコバラミンが含有されていることが記載されているのであるから(摘記(ウ1))、以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているといえる。

「成分として、水、塩化マグネシウム、ピルビン酸ナトリウム、システイン塩酸塩、及びシアノコバラミンが含有し、ひきしめ効果、アンチエイジング、ツヤを与えてくれる、ノンコメドジェニック、ビタミン、ミネラル強化、低刺激性、保湿性、小シワ対策、敏感肌用、肌のキメを整える、及び酸化防止作用を有したフェイス及びネックケアのスキンケア製品。」


(4)引用発明との対比
ア−1 本件補正発明と引用発明2とを対比する。
まず、引用発明2が化粧料ベースとなる複合培養培地に「MgCl2・6H2O 120.0」「mg/l」含有していることは、最終的な化粧調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(A)塩化マグネシウム」を含有していることに相当する。
次に、引用発明2が「L-システインHCL.H2O 42.0」「mg/l」含有していることは、最終的な化粧調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(B)システインまたはその塩」を含有していることに相当する。
さらに、引用発明2が「ピルビン酸ナトリウム 55.0」「mg/l」含有していることは、最終的な化粧調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(C)ピルビン酸またはその塩」を含有していることに相当する。
また、引用発明2が「ビタミンB12 0.41」「mg/l」含有していることは、ビタミンB12はコバラミン関連化合物の1つであるシアノコバラミンの慣用名であることは技術常識であり(引用文献3摘記(エ1))、最終的な化粧調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(D)シアノコバラミン」を含有していることに相当する。
そして、引用発明2の「水性連続相を備えた二相形態の、人体の表面部と生物学的適合性を備えた相を含む局所的使用用組成物を化粧ベースとして含む化粧調製物」は、水性連続相を備えていることから、本件補正発明の「敏感肌用化粧水」及び「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善するための化粧水」との対比において、両者は、少なくとも化粧水として調製されていることにかわりはないから「化粧水」において共通するものといえる。

イ−1 以上のことから、本件補正発明と引用発明2とは、
「 化粧水であって、
(A)塩化マグネシウム、
(B)システインまたはその塩、
(C)ピルビン酸またはその塩、および
(D)シアノコバラミン
を含む、化粧水。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。

相違点1:「化粧水」の用途について、本件補正発明は、「敏感肌用」であって、「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善するための」と特定されているのに対して、引用発明2は、人体の表面部と生物学的適合性を備えた相を含む局所的使用用組成物を化粧ベースとして含むことは特定されているものの、そのような用途の特定がされていない点。

ウ−1 相違点1の判断
以下、相違点1について検討する。
(ア)引用文献2には、摘記(ア2)に、引用発明2の複合栄養培地に存在する全ての化合物が水溶性であるので、局所的使用のための組成物を得るために、引用発明2に係る栄養培地を含んだ水性連続相化粧用漿液の形態で調製することもできること、引用発明2に係る組成物は、化粧ベースとして提供することができること、栄養供給は、表皮細胞の存続、完全性およびバランスの維持の改善に対して顕著に有利であること、特に、皮膚の主要な本質的性質が永続的ベースに維持されること、ダメージに対する耐性が増大すること、並びに、適切であれば、バランス状態への復帰を促進することを可能にすることが記載されている。

引用文献2には、複合栄養培地に存在する全ての化合物が水溶性であるので、局所的使用のための組成物を得るために、引用発明2に係る栄養培地を含んだ水性連続相化粧用漿液の形態で調製した引用発明2において、表皮細胞のバランスの維持の改善に対して顕著に有利であること、ダメージに対する耐性が増大すること、バランス状態への復帰を促進することの記載がある以上、表皮細胞のバランス状態が崩れた状態である敏感肌の状態を通常のバランス状態に改善することも用途として記載されているに等しいといえる。
また、「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善」するとの特定事項は、皮膚の表皮細胞である角層の水分バランスが崩れることで、ダメージが生じること及びバランス状態に戻すことで肌の状態が改善することは自明の技術的事項であり、引用発明2において、少なくとも表皮細胞の水分バランスを維持又はバランス状態に戻すことにより肌を改善することは、本件補正発明の角層のバランス状態が崩れた状態である敏感肌の状態を角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善することにほかならないといえる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

(イ)本件補正発明を用途発明として捉えて検討する。
公知の組成物に対して、用途発明として新規性進歩性が生じるためには、新たな技術的知見を発見し、その新たな知見を新たな用途の拡大に結びつけることを要件とする。
(A)〜(D)の4成分を含む化粧水が表皮細胞のバランスの維持の改善に対して顕著に有利であること、ダメージに対する耐性が増大すること、バランス状態への復帰を促進することがすでに引用文献2において知見されている点や、引用発明2が表皮細胞のバランス状態が崩れた状態である敏感肌をも対象としていることが明らかである点を考慮すると、本件補正発明によって、新たな技術的知見の発見も、新たな用途の拡大も生じておらず、仮に、本件補正発明によって、上記(A)〜(D)の4成分を含む化粧水が、角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善することが新たな知見であったとしても、少なくとも新たな用途の拡大は生じておらず、いずれにしても本件補正発明は用途発明として、引用発明2に対して新規性進歩性を有しているとはいえない。

(ウ)さらに、相違点1に関して、仮に相違点1が実質的な相違点である場合について検討しておく。
引用文献2には、上記(ア)に述べたとおり、引用発明2に係る栄養培地を含んだ水性連続相化粧用漿液の形態で調製することもできること、引用発明2に係る組成物は、化粧ベースとして提供することができること、栄養供給は、表皮細胞の存続、完全性およびバランスの維持の改善に対して顕著に有利であること、特に、皮膚の主要な本質的性質が永続的ベースに維持されること、ダメージに対する耐性が増大すること、並びに、適切であれば、バランス状態への復帰を促進することを可能にすることが記載されており、表皮細胞や皮膚のバランス状態に水分量が関係していることは自明であるから、引用発明2の化粧水を、表皮細胞のバランス状態が崩れた状態である、敏感肌に適用し、表皮細胞である「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善」するとの特定をすることは当業者が容易になし得る技術的事項である。

(エ)上記(ア)又は(ウ)で述べた引用文献2の記載からすれば、実施例1〜実施例3で示されたような4成分を含むことによる角層水分量の改善という本件補正発明の奏する効果は、引用発明2並びに引用文献2に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識から予測できない、かつ顕著なものということはできない。

エ−1 したがって、本件補正発明は、引用文献2に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、本件補正発明は、引用発明2並びに引用文献2に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ア−2 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
まず、引用発明1が調製物となる組織培養培地に「MgCl2.6H2O 61〜122」「mg/l」含有していることは、最終的な化粧用水性調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(A)塩化マグネシウム」を含有していることに相当する。
次に、引用発明1が「L-システイン.HCl 15.75〜42.04」「mg/l」含有していることは、最終的な化粧用水性調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(B)システインまたはその塩」を含有していることに相当する。
さらに、引用発明1が「ピルビン酸ナトリウム 47〜63」「mg/l」含有していることは、最終的な化粧用水性調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(C)ピルビン酸またはその塩」を含有していることに相当する。
また、引用発明1が「ビタミンB12(コバラミン) 0.68〜4.07」「mg/l」含有していることは、ビタミンB12はコバラミン関連化合物の1つであるシアノコバラミンの慣用名であることは技術常識であり(引用文献3摘記(エ1))、最終的な化粧用水性調製物に含有していることになるから、本件補正発明の「(D)シアノコバラミン」を含有していることに相当する。
そして、引用発明1の「化粧用水性調製物」は、水相を有した水性調製物であるから、本件補正発明の「敏感肌用化粧水」及び「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善するための化粧水」との対比において、両者は、少なくとも化粧水として調製されていることにかわりはないから「化粧水」において共通するものといえる。

イ−2 以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは、
「 化粧水であって、
(A)塩化マグネシウム、
(B)システインまたはその塩、
(C)ピルビン酸またはその塩、および
(D)シアノコバラミン
を含む、化粧水。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。

相違点2:「化粧水」の用途について、本件補正発明は、「敏感肌用」であって、「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善するための」と特定されているのに対して、引用発明1は、そのような用途の特定がされていない点。

ウ−2 相違点2の判断
以下、相違点2について検討する。
(ア)引用文献1には、摘記(イ3)に、以下の記載がある。
・角化表皮は、皮膚の防御シールドを形成し、この機能が最適に発揮されるためには、皮膚細胞(ケラチノサイト)はいわゆる表皮分化のプロセスを通過することが必要で、基底層における細胞の分裂後に、ケラチノサイトは皮膚表面に移動し、死んだ扁平無核角質細胞として角質層を形成するまでこの間に多数の変化を受け、最終的にはがれ落ちるという表皮分化の間に、特定の機能を有する種々のタンパク質の形成があり、表皮および角質層の最適な形成には、これらのタンパク質が協調的に、十分な量で形成されることが必要であること。
・皮膚の障害を補うかもしくは少なくとも減少するのに役立つ多数の化粧品、スキンケア調製物が開示されていること。
・先行技術から既知である調製物のいずれも、ある程度の有害な副作用もしくは少なくとも好ましくない副作用を有することなしに皮膚がそれ自体再生することを可能にしないし、非常に多くの場合に、これは標的器官で生物製薬学的有効濃度を達成するために使用されなければならない活性物質の高い濃度のため、皮膚標的器官で、皮膚防壁は活性物質の皮膚効果を妨げる。皮膚防壁を変えることは皮膚の増加した感受性をもたらし得るので、特に皮膚用製品の場合に、付随する皮膚炎は典型的でないことはないこと。
・敏感な皮膚は、ホメオスタシスの調節障害に基づくことが多く、脂質もしくはメッセンジャーのいずれかは、仮にあったとしても、不十分な量で生産され、これは減少した本来備わっている防御に、そして皮膚の増加した感受性につながること。
・引用発明1に関する目的が、有害な副作用もしくは好ましくない副作用が生じることなしに皮膚がそれ自体再生できることを可能にする化粧用もしくは皮膚科学的調製物を提供することで、先行技術の質を高め、スキンケア等、皮膚炎等の処置に用いることができる調製物を提供することであること。
(【0009】〜【0015】)
また、摘記(イ4)には、以下の記載がある。
・皮膚細胞を培養するための皮膚細胞培養培地を含んでなる引用発明1に関する化粧用もしくは皮膚科学的調製物は、ヒト皮膚自体の中もしくは上で、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚を使用する機序を活性化できることを示すこと。
・適当な局所用調製物における導入および皮膚へのこれらの調製物の使用によって、皮膚がそれ自体再生すること、および健全な流動平衡、ホメオスタシスにおいて維持されること、およびまたオートポイエーシスを刺激することを可能にする最適条件が作り出されること。
(【0025】〜【0026】)

引用文献1には、化粧用もしくは皮膚科学的調製物が、ヒト皮膚自体の中もしくは上で、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚を使用する機序を活性化できることを認識した引用発明1において、活性物質の高い濃度の状態で、皮膚防壁変えることで皮膚の増加した感受性が、付随する皮膚炎生じることや、敏感な皮膚が、ホメオスタシスの調節障害に基づくことが多く、皮膚の増加した感受性につながることの記載がある以上、ホメオスタシスの調節障害が生じた敏感な皮膚の状態の改善をすることも用途として記載されているに等しいといえる。
また、皮膚の表皮細胞である角層の水分バランスが崩れることで、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚に調節障害を生じることは自明の技術的事項であるから、引用発明1において、少なくとも角化表皮のホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚に調節障害が生じていることを改善することは、本件補正発明の角層のホメオスタシスおよびオートポイエーシスの調節障害が生じた敏感肌の状態を「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善する」ことにほかならないといえる。
したがって、相違点2は、実質的な相違点とはいえない。

(イ)本件補正発明を用途発明として捉えて検討する。
公知の組成物に対して、用途発明として新規性進歩性が生じるためには、新たな技術的知見を発見し、その新たな知見を新たな用途の拡大に結びつけることを要件とする。
仮に、本件補正発明が、上記(A)〜(D)の4成分を含む化粧水が、角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善することを知見したものであったとしても、(A)〜(D)の4成分を含む化粧水がヒト皮膚自体の中もしくは上で、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚を使用する機序を活性化できることがすでに引用文献1において知見されている点や、引用発明1が角層のホメオスタシスおよびオートポイエーシスの調節障害が生じた状態である敏感肌をも対象としていることが明らかである点を考慮すると、本件補正発明によって、新たな技術的知見の発見も、新たな用途の拡大も生じておらず、仮に、本件補正発明によって、上記(A)〜(D)の4成分を含む化粧水が、角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善することが新たな知見であったとしても、少なくとも新たな用途の拡大は生じておらず、いずれにしても本件補正発明は用途発明として、引用発明1に対して新規性進歩性を有しているとはいえない。

(ウ)相違点2に関して、仮に相違点2が実質的な相違点である場合について検討しておく。
引用文献1には、上記(ア)に述べたとおり、引用発明1に係る化粧用もしくは皮膚科学的調製物が、ヒト皮膚自体の中もしくは上で、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚を使用する機序を活性化できることを認識した引用発明1において、活性物質の高い濃度の状態で、皮膚防壁を変えることで皮膚の増加した感受性が、付随する皮膚炎を生じることや敏感な皮膚が、ホメオスタシスの調節障害に基づくことが多く、皮膚の増加した感受性につながることが記載されており、角層のホメオスタシスおよびオートポイエーシスの調節に水分量が関係していることは自明であるから、引用発明1の化粧水を、角層のホメオスタシスおよびオートポイエーシスの調節障害が生じた状態である敏感肌に適用し、角化表皮である「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善」するとの特定をすることは当業者が容易になし得る技術的事項である。

(エ)上記(ア)又は(ウ)で述べた引用文献1の記載からすれば、実施例1〜実施例3で示されたような4成分を含むことによる角層水分量の改善という本件補正発明の奏する効果は、引用発明1並びに引用文献1に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識から予測できない、かつ顕著なものということはできない。

エ−2 したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、本件補正発明は、引用発明1並びに引用文献1に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ア−3 本件補正発明と引用発明4とを対比する。
まず、引用発明4の「水」を「含有し、ひきしめ効果、アンチエイジング、ツヤを与えてくれる、ノンコメドジェニック、ビタミン、ミネラル強化、低刺激性、保湿性、小シワ対策、敏感肌用、肌のキメを整える、及び酸化防止作用を有したフェイス及びネックケアのスキンケア製品」は、敏感肌用と訴求内容で謳っている以上、敏感肌の改善に一定の寄与をしていることは自明であり、水を含有している化粧料であることは明らかであるから本件補正発明の「敏感肌用化粧水であって、」「敏感肌を改善するための化粧水」であることに相当する。
次に、引用発明4が「塩化マグネシウム」を含有していることは、本件補正発明の「(A)塩化マグネシウム」を含有していることに相当する。
さらに、引用発明4が「システイン塩酸塩」を含有していることは、本件補正発明の「(B)システインまたはその塩」を含有していることに相当する。
また、引用発明4が「ピルビン酸ナトリウム」を含有していることは、本件補正発明の「(C)ピルビン酸またはその塩」を含有していることに相当する。
そして、引用発明4が「シアノコバラミン」を含有していることは、本件補正発明の「(D)シアノコバラミン」を含有していることに相当する。

イ−3 以上のことから、本件補正発明と引用発明4とは、
「 敏感肌用化粧水であって、
(A)塩化マグネシウム、
(B)システインまたはその塩、
(C)ピルビン酸またはその塩、および
(D)シアノコバラミン
を含む、敏感肌を改善するための化粧水。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。

相違点3:「敏感肌用化粧水」の用途の内容について、本件補正発明は、「角層水分量を維持または増加させることにより」と特定されているのに対して、引用発明4は、そのような特定がされていない点。

ウ−3 相違点3の判断
以下、相違点3について検討する。
(ア)引用文献4には、摘記(ウ1)に、引用発明4がスキンケア製品であり、カテゴリーとして、フェイス/ネックケアのスキンケア製品であること、訴求内容として、ツヤを与えてくれる、低刺激性、保湿性、小シワ対策、敏感肌用、肌のキメを整える等の皮膚の表皮層と関連した訴求内容が示され、「敏感肌用」「保湿性」との記載がある。
引用文献4の記載から、引用発明4が、皮膚の表皮層も対象としていることは上記カテゴリーや訴求内容の記載から自明である。角層とは、皮膚の表皮層であって引用発明4の適用箇所であるといえ、敏感肌用であることが特定された上で、保湿性があることも特定されているのであるから、引用発明4において、保湿性とは、少なくとも「角層水分量を維持させること」との特定にほかならないといえる。
したがって、相違点3は、実質的な相違点とはいえない。

(イ)本件補正発明を用途発明として捉えて検討する。
公知の組成物に対して、用途発明として新規性進歩性が生じるためには、新たな技術的知見を発見し、その新たな知見を新たな用途の拡大に結びつけることを要件とする。
仮に、本件補正発明が、上記(A)〜(D)の4成分を含む化粧水が、角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善することを知見したものであったとしても、(A)〜(D)の4成分を含む敏感肌を改善する化粧水がすでに引用文献4において知見されている点や、引用発明4が保湿性を訴求内容としている、つまり肌の水分量を維持することを作用効果として有することが明らかである点を考慮すると、本件補正発明によって、新たな技術的知見の発見も、新たな用途の拡大も生じておらず、本件補正発明は用途発明として、引用発明4に対して新規性進歩性を有しているとはいえない。

(ウ)相違点3に関して、仮に相違点3が実質的な相違点である場合について検討しておく。
引用文献4には、上記(ア)に述べたとおり、引用発明4に係る敏感肌用化粧水が、保湿性を作用効果として有することが記載されており、保湿性が角層の水分量の維持又は増加に関係していることは自明であるから、引用発明4の敏感肌用化粧水を、「角層水分量を維持または増加させることにより」との特定をすることは当業者が容易になし得る技術的事項である。

(エ)上記(ア)又は(ウ)で述べた引用文献4の記載からすれば実施例1〜実施例3で示されたような4成分を含むことによる角層水分量の改善という本件補正発明の奏する効果は、引用発明4並びに引用文献4に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識から予測できない、かつ顕著なものということはできない。

エ−3 したがって、本件補正発明は、引用文献4に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、引用発明4並びに引用文献4に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、引用文献1、2、4の記載からは、敏感な皮膚とホメオスタシスの調節障害の相関関係が理解できても、ホメオスタシスの調節障害を改善して敏感な皮膚の改善という結果が得られることは理解できないことや、敏感肌に使用できること又は敏感肌用であることは理解できても、「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善する」ことの用途については、記載も示唆もない旨主張している。
しかしながら、引用文献2に記載されるように、4成分を含む化粧水が表皮細胞のバランスの維持の改善に対して顕著に有利であること、ダメージに対する耐性が増大すること、バランス状態への復帰を促進することの記載がある以上、表皮細胞のバランス状態が崩れた状態である敏感肌の状態を通常のバランス状態に改善することも用途として記載されているに等しく、表皮細胞のバランス状態ということに、角層の水分含量を維持又は水分量が低下して崩れている状態を増加させて適切な量にすることが含まれていることは自明な技術的事項である。
また、引用文献1に記載されるように、皮膚の増加した感受性が、付随する皮膚炎を生じることや敏感な皮膚が、ホメオスタシスの調節障害に基づくことが多く、皮膚の増加した感受性につながることの記載があり、敏感な皮膚とホメオスタシスの調節障害の相関関係が理解できているのであれば、ホメオスタシスの調節障害を改善すれば敏感な皮膚の改善という結果が得られることは理解できるといえる。
さらに、ホメオスタシスの調節ということに、角層の水分含量を維持又は水分量が低下して崩れている状態を増加させて適切な量にすることが含まれていることは自明な技術的事項である。
そして、引用文献4には、4成分を含む化粧水が、敏感肌用であることや保湿性を有することが明記されているのであるから、敏感肌に使用でき、保湿性を高めて「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善する」ことも理解できるといえる。
したがって、上記審判請求人の主張を採用することはできない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜6に係る発明は、令和3年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載の以下のとおりである(本願発明を再掲)。

「 敏感肌用化粧水であって、
(A)塩化マグネシウム、
(B)システインまたはその塩、
(C)ピルビン酸またはその塩、および
(D)シアノコバラミン
を含む、角層水分量を維持または増加させるための敏感肌用化粧水。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和3年7月28日付け拒絶理由通知書において通知された以下のものを含むと認める。
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・・・
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1〜10
・引用文献等 1
・・・
・請求項 1〜10
・引用文献等 2
・・・
<引用文献等一覧>
1.特表2007−500196号公報
2.特表平10−512253号公報
・・・」

そして、拒絶査定において、以下のとおり理由が示されている。
「この出願については、令和3年7月28日付け拒絶理由通知書に記載した理由1〜2によって拒絶すべきものです。
・・・
備考
●理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項1〜7
・引用文献等2
・・・

・請求項1〜4、6〜7
・引用文献等1
・・・
<引用文献等一覧>
1.特表2007−500196号公報
2.特表平10−512253号公報
3.柴田直樹、ビタミンB12酵素の構造と機能の研究、日本結晶学会誌、2004年、46巻、3号、209〜215頁(新たに引用された文献、参考文献として提示)
・・・」
また、拒絶査定の付記として、上記引用文献4が、新規性欠如、進歩性欠如の理由の根拠となる引用文献として提示されている。

3 当審合議体の判断
当審合議体は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、引用文献3に記載された本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献1に記載された発明であるか、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された本願優先日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないし、引用文献3に記載された本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献2に記載された発明であるか、又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された本願優先日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないと考える。
理由は、以下のとおりである。

4 引用文献及びその記載事項
(1)引用文献1:特表2007−500196号公報(原査定の拒絶査定の理由における引用文献1)
原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献1」には、前記2(2)イのとおりの記載がある。

(2)引用文献2:特表平10−512253号公報(原査定の拒絶査定の理由における引用文献2)
原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献2」には、前記2(2)アのとおりの記載がある。

(3)引用文献3及び4にも、それぞれ、前記2(2)エ及びウの記載がある。

5 引用発明
引用文献1及び2には、それぞれ、前記2(3)イ及びアのとおり、引用発明1及び引用発明2が記載されていると認定できる。

6 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「角層水分量を維持または増加させることにより敏感肌を改善するための」との用途に係る限定事項を削除し、「角層水分量を維持または増加させるための敏感肌用」という特定がされたものであり、用途の特定事項としては、結局敏感肌用という本件補正発明の用途を包含する概念の特定がされたものであるといえる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を「角層水分量を維持または増加させる」ことや「敏感肌用」であることも含めて全て含み、さらに用途をそれに「により敏感肌を改善する」という点において表現上具体化したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3等の本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献2に記載された発明であり、引用発明2並びに引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3等の本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明2及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
同様に、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された技術的事項並びに本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献1に記載された発明であり、引用発明1並びに引用文献1に記載された技術的事項及び引用文献3等の本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1び引用文献1に記載された技術的事項及び引用文献3等の本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 審判請求人の主張について
審判請求人は、意見書2頁において、本願発明は、塩化マグネシウム、システイン塩酸塩、ピルビン酸ナトリウム、シアノコバラミンの4成分の組み合わせを含む化粧水が、角層水分量を改善するという未知の属性を発見し、角層水分量を維持または増加させるという新たな用途への使用に適していることを見出したものであること、引用文献1及び2は、角層水分量について言及されておらず、角層水分量を維持または増加させるという新たな用途に到達できない旨主張している。
しかしながら、前記第2 2(4)で述べたとおり、引用文献2には、複合栄養培地に存在する全ての化合物が水溶性であるので、局所的使用のための組成物を得るために、引用発明2に係る栄養培地を含んだ水性連続相化粧用漿液の形態で調製した引用発明2において、表皮細胞のバランスの維持の改善に対して顕著に有利であること、ダメージに対する耐性が増大すること、バランス状態への復帰を促進することの記載があり、引用文献1には、活性物質の高い濃度の状態で、皮膚防壁変えることで皮膚の増加した感受性が、付随する皮膚炎生じることや敏感な皮膚が、ホメオスタシスの調節障害に基づくことが多く、皮膚の増加した感受性につながることが記載され、化粧用もしくは皮膚科学的調製物が、ヒト皮膚自体の中もしくは上で、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスのために皮膚を使用する機序を活性化できることの記載がある以上、皮膚の表面の角層の水分含有量が、表皮細胞のバランス維持やダメージ耐性、ホメオスタシスおよびオートポイエーシスに関係することは、本願優先日時点の技術常識であるから、角層水分量を維持または増加させるという新たな用途に到達できない旨の上記審判請求人の主張は採用できない。
また、仮に角層水分量を維持または増加させることが、敏感肌の改善に関係するという新たな知見があったとしても、公知の4成分を含む化粧水がすでに、敏感肌を含めて皮膚状態の調節という用途に使用されているのであるから(引用文献1、引用文献2だけでなく、引用文献4でも公知の4成分を含む化粧水が、敏感肌用であって、保湿性及び低刺激性を備えていることが示されている。)、少なくとも新たな用途の拡大を生じているとはいえない。
したがって、上記審判請求人の主張はいずれにしても採用できない。

第4 むすび
請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であり、又は本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同条第1項の規定により、特許を受けることができない。
また、請求項1に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明することができたものであるか、又は、上記引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-07-31 
結審通知日 2023-08-01 
審決日 2023-08-18 
出願番号 P2020-039219
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 木村 敏康
特許庁審判官 宮崎 大輔
瀬良 聡機
発明の名称 敏感肌用化粧水  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ