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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1403141
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-24 
確定日 2023-10-23 
事件の表示 特願2018−53336「袋及び袋の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和1年9月26日出願公開、特開2019−163080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月20日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年10月 1日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月 7日付け:拒絶査定
令和4年 3月24日 :審判請求書の提出
令和5年 4月 5日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和5年 6月 5日 :意見書、手続補正書の提出

第2 令和5年6月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項11の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「シーラントフィルム及び少なくとも1つのプラスチックフィルムを含む積層体であって、
前記プラスチックフィルム上には、透明性を有する無機材料からなる透明蒸着層が形成されており、
前記シーラントフィルムには、前記シーラントフィルムと前記プラスチックフィルムとの間に位置し、ポリウレタンを含む接着剤層が接しており、
前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む単一の層からなる未延伸フィルムであり、
前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂は、α−オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、
前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い、積層体。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年11月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項11の記載は次のとおりである。
「シーラントフィルム及び少なくとも1つのプラスチックフィルムを含む積層体であって、
前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む層を備える未延伸フィルムであり、
前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂は、α−オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、
前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い、積層体。」

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項11に「前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む層を備える未延伸フィルムであり」とあるのを「前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む単一の層からなる未延伸フィルムであり」と限定する補正をするとともに、「前記プラスチックフィルム上には、透明性を有する無機材料からなる透明蒸着層が形成されており、
前記シーラントフィルムには、前記シーラントフィルムと前記プラスチックフィルムとの間に位置し、ポリウレタンを含む接着剤層が接しており、」という限定を付加するものであって、補正前の請求項11に記載された発明と補正後の請求項11に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項11に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用発明
(ア) 令和5年4月5日付け拒絶理由通知書で引用された特許第6277485号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付与したものである。他の文献についても同様。)。
a「【請求項1】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)55〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10〜30重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、プロピレン・エチレン共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が75%〜90%重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであることを特徴とするポリプロピレン系フィルム。」
b「【請求項5】
単層または2層以上のフィルムが積層された基材層の片面にヒートシール層として請求項1から4のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルムが積層された積層体。」
c「【背景技術】
【0002】
従来、120℃〜135℃の高温でレトルト殺菌されるレトルト包装用のシーラントフィルムとしては、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする無延伸フィルム(以下CPPと称す)が使用されてきた。その主たる使用方法は、ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム(以下PETと称す)、ナイロン延伸フィルム(以下ONと称す)、アルミニウム箔(以下Al箔と称す)と貼合わせ、PET/ON/Al箔/CPP、PET/Al箔/ON/CPP またはPET/Al箔/CPP構成の積層体とした後、製袋して使用されるというものである。」
d「【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、耐低温衝撃性に優れ、さらに耐ユズ肌性にも優れた、大型のレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびそれを用いた積層体を提供することにある。」
e「【0047】
本発明のポリプロピレン系フィルムは冷却固化の後に延伸を行うこともできるが、好ましくは実質的に延伸を行わない無延伸フィルムであることが好ましい。実質的に延伸を行わない無延伸フィルムの方が、引き裂き強さに優れ、かつ、ヒートシールする際のヒートシール温度を過度に高める必要がない(比較的低温でヒートシールできる)ことから好ましい。また、本発明において、無延伸フィルムとは、押出キャストフィルムのことであるが、実際の製膜工程においては、フィルムの長手方向または幅方向に若干配向したフィルムとなる場合もあるため、本発明における無延伸フィルムの複屈折率(フィルムの長手方向と幅方向の屈折率の差)は0.005以下であることが、ヒートシール性と熱寸法安定性の点で好ましい。尚、複屈折率(Δn)は、コンペンセーター法を用い、サンプルのリターデーションR(nm)を測定し、該測定部のフィルムの厚みd(nm)より、Δn=R/dとして求めることができる。」
f「【0049】
本発明のポリプロピレン系フィルムは、単独で包装用のフィルムとして使用することもできるが、一般のAl箔を含むレトルト食品包装袋用のシーラントフィルムとして好ましく使用できる。」
g「【0055】
また、本発明は上述したポリプロピレン系フィルムを用いた積層体に関する。本発明に係る積層体は、特に単層または2層以上の透明なフィルムとアルミニウム箔とが積層された基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルム(以下本フィルムと記載)を積層してなるものである。また、単層または2層以上の透明なフィルムからなる基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルムが積層された積層体である。これらの代表的な構成は、PET/AL箔/本フィルム、PET/ON/AL箔/本フィルム、PET/AL箔/ON/本フィルム、ON/本フィルムである。」
h「【0056】
かかる積層体の製造方法は、積層体の構成フィルムに接着剤を用いて貼合わせる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて本フィルムと基材層の貼合わせには直接ポリプロピレン系樹脂を押出してラミネートする方法も採用できる。
これら積層体は本フィルムをシール層(袋の内面)として、平袋、スタンディングパウチなどに製袋加工され使用される。」
i「【0064】
(6)耐低温衝撃性
厚さ12μmのPETフィルムと厚さ15μmのONフィルムと厚さ9μmのAL箔と本発明のフィルムとをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/AL箔/接着剤/本発明のフィルム
この積層体2枚を本発明のフィルムが袋の内面になるようにして、富士インパルス社製CA−450−10型ヒートシーラーを使用し、加熱時間1.4秒(シール温度:約220℃)、冷却時間3.0秒で、製袋サイズ150mm×285mmのスタンディングパウチを作成した。この袋に濃度0.1%の食塩水1000cm3を充填した後、135℃で30分レトルト処理する。レトルト処理後の袋を0℃の冷蔵庫で保管した後、55cmの高さから平らな床面に落下させ(n数20個)、破袋に至るまでの回数を記録する。本評価法ではn数20個の平均値で15回以上を耐低温衝撃性良好とした。」

(イ) 上記記載を総合し、特に上記(ア)iに記載された積層体構成に着目すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「単層または2層以上のフィルムが積層された基材層の片面にヒートシール層としてポリプロピレン系フィルムが積層された積層体であって、
ポロプロピレン系フィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)55〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10〜30重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、プロピレン・エチレン共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が75%〜90%重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであり、
前記積層体は、厚さ12μmのPETフィルムと厚さ15μmのONフィルムと厚さ9μmのAL箔と前記ポリプロピレン系フィルムとをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせた、次の構成である積層体。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/AL箔/接着剤/ポリプロピレン系フィルム」

イ 周知技術
(ア) 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2012−218782号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などを収容する包装袋において、食品などの内容物を収容した状態で、電子レンジで加熱調理できると共に、内容物から発生する蒸気の圧力で蒸気抜きができる包装袋に関する。」
b「【0036】
図9は、本発明の本体フィルム31の一例を示す断面図である。本体フィルム31は基材層52とシーラント層54を積層した積層フィルムから構成される。基材層52は、シート状またはフィルム状のものであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリイミドなど)、あるいはこれらの高分子の共重合物など、通常包装材料として用いられる耐熱性プラスチックフィルムまたはシートが使用できる。」
c「【0038】
また本体フィルムのガスバリア性を向上させるために、基材層52とシーラント層54との間に、中間層53としてアルミニウム箔を積層したり、基材層52として、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどの無機酸化物を20〜100nm程度の厚さに蒸着した透明蒸着フィルムを用いることもできる。この透明蒸着フィルムに用いる基材は、延伸されたポリエステルフィルムが使用される。」
d「【0041】
基材層52とシーラント層54、または基材層52と中間層53、中間層53とシーラント層54との貼り合わせは、例えば二液反応型のポリウレタン樹脂系接着剤を使用してドライラミネート法などの公知のラミネート方法を用いて貼りあわせ積層することができる。」
e「



(イ) 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2014−227190号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、喫食用容器を兼ねた包装袋、詳しくは、充填物が包装袋に入った状態で電子レンジ等により加熱調理することができ、加熱調理後、上記包装袋を充填物の表面より上の位置で切り取り易くし、調理された充填物を、他の食器等に移し替えることなく、食器として使用可能な喫食容器を兼ねた包装袋に関する。」
b「【0021】
次に本発明に係る包装袋1に使用する積層体について図2を参照しながら説明する。
図2に示すように包装袋1に使用する積層体20は、例えば、基材層21、中間層23、熱接着性樹脂層24が順に積層されている。基材層21の中間層23に積層される面には印刷層22が形成されている。基材層21、中間層23又は熱接着性樹脂層24のうち、少なくとも1層以上が直線開封性を有している。」
c「【0022】
積層体20の基材層21としては、包装袋1を構成する基本素材となることから、機械的、物理的、化学的等に優れた性質を有する合成樹脂製フィルムを用いることができ、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のフィルムや出発原料を植物由来とする例えばポリ乳酸系の二軸延伸フィルム等を用いることができる。あるいは、上記のフィルムにポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂組成物を塗布してガスバリア層を設けたもの、あるいは、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物を蒸着して蒸着層を設けたものを用いることができる。また、これらのフィルムとしては、一軸方向ないし二軸方向に延伸したフィルムが使用できる。直線開封性の観点から縦一軸方向延伸したフィルムが好ましい。また、基材層21を構成するフィルムの厚さとしては、基本素材としての強度、剛性などについて必要最低限に保持され得る厚さであればよいのであって、コストなどを勘案して決めればよいが、通常、9〜50μm程度である。直線開封性を有する基材を具体的に例示すると、東レ(株)製のトレファンBO YTシリーズ、電気化学工業(株)製のカラリヤン、東京インキ(株)製のハイブロン、ノーブレン、出光ユニテック(株)製のユニアスロン、ユニチカ(株)製のエンブレムNC、エンブレットPCが挙げられる。」
d「【0023】
また、中間層23としては、剛性やガスバリアー性等が包装条件、輸送条件、内容物の保護機能条件により要求される場合に設けるものであり、上記基材層に用いられるフィルム、上記ガスバリア層又は蒸着層を設けた上記フィルム等が使用できる。また、これらのフィルム等を一種以上組み合わせて積層したものでもよい。」
e「【0030】
〔実施例3〕
基材層21として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に酸化アルミニウムを蒸着した透明蒸着フィルム(VMPET)、中間層23として厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ON)、熱接着性樹脂層24として、オレフィン系樹脂組成物を熱溶融押出しすることによりシートに成形し、さらに縦一軸延伸することにより得られた厚さ60μmの縦一軸延伸フィルム(OF:延伸フィルム)を用い、透明蒸着フィルムの蒸着面と二軸延伸ナイロンフィルムの一方の面および二軸延伸ナイロンフィルムの他方の面と縦一軸延伸フィルムを順に2液硬化型ウレタン接着剤を用いてドライラミネーション法(DL)により積層し、VMPET/DL/ON/DL/OFなる構成の積層体20を得た。」
f「



(ウ) 周知技術1
上記(ア)a〜c及び(イ)a〜eに記載したとおり、食品を収容する包装袋に用いられる積層体において、基材層に酸化アルミニウムからなる透明蒸着層を形成することは周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。

(エ) 周知技術2
上記(ア)dに記載したとおり、食品を収容する包装袋に用いられる積層体において、層間を貼り合わせるための接着剤としてポリウレタン樹脂系接着剤を用いることは周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。

(3) 引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)」、「低密度のポリエチレン系重合体(c)」は、それぞれ本件補正発明の「プロピレン・エチレンブロック共重合体からな」る「第1の熱可塑性樹脂」、「α−オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含」む「第2の熱可塑性樹脂」に相当する。
そして、引用発明の「単層または2層以上のフィルムが積層された基材層の片面にヒートシール層として」「積層された」「ポリプロピレン系フィルム」は、その機能からみて、本件補正発明の「シーラントフィルム」に相当する。
そうすると、引用発明の「ポリプロピレン系フィルム」が「プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)55〜84重量%、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b)3〜15重量%、および低密度のポリエチレン系重合体(c)10〜30重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜した」ものであることと、本件補正発明の「前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む単一の層からなる未延伸フィルムであり、」「前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、」「前記第2の熱可塑性樹脂は、α−オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、」「前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い」こととは、「前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む単一の層からなるフィルムであり、」「前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、」「前記第2の熱可塑性樹脂は、α−オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、」「前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い」限りで一致する。
また、引用発明の基材層に係る「厚さ12μmのPETフィルムと厚さ15μmのONフィルムと厚さ9μmのAL箔と」を「ウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ」たものは、本件補正発明の「少なくとも1つのプラスチックフィルム」に相当する。
そして、引用発明の「厚さ12μmのPETフィルムと厚さ15μmのONフィルムと厚さ9μmのAL箔と前記ポリプロピレン系フィルムとをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ」ており、その「構成」が「PET/接着剤/ON/接着剤/AL箔/接着剤/ポリプロピレン系フィルム」である「積層体」と、本件補正発明の「シーラントフィルム及び少なくとも1つのプラスチックフィルムを含」み、「前記プラスチックフィルム上には、透明性を有する無機材料からなる透明蒸着層が形成されており、」「前記シーラントフィルムには、前記シーラントフィルムと前記プラスチックフィルムとの間に位置し、ポリウレタンを含む接着剤層が接して」いる「積層体」とは、「シーラントフィルム及び少なくとも1つのプラスチックフィルムを含」み、「前記プラスチックフィルム上には、」「無機材料からなる」「層が形成されており、」「前記シーラントフィルムには、前記シーラントフィルムと前記プラスチックフィルムとの間に位置し、」「ウレタンを含む接着剤層が接して」いる「積層体」、という限りにおいて一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「シーラントフィルム及び少なくとも1つのプラスチックフィルムを含む積層体であって、
前記プラスチックフィルム上には、無機材料からなる層が形成されており、
前記シーラントフィルムには、前記シーラントフィルムと前記プラスチックフィルムとの間に位置し、ウレタンを含む接着剤層が接しており、
前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む単一の層からなるフィルムであり、
前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂は、α−オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、
前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い、積層体。」

【相違点1】
「プラスチックフィルム」上に形成される層について、本件補正発明は、「透明性を有する無機材料からなる透明蒸着層」であるのに対して、引用発明では、「ウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ」て形成された「AL箔」である点。

【相違点2】
「シーラントフィルム」に「接して」いる「接着剤層」について、本件補正発明は、「ポリウレタンを含む接着剤層」であるのに対して、引用発明では、「ウレタン系接着剤」からなる層であり、ポリウレタンを含む点が特定されていない点。

【相違点3】
「シーラントフィルム」について、本件補正発明は「未延伸フィルム」であるのに対して、引用発明の「ポリプロピレン系フィルム」が未延伸であるのか不明な点。

(4) 判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記周知技術1は、当該技術分野において適宜採用されるものであり、引用発明の「ウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ」て形成された「AL箔」を、酸化アルミニウムからなる「透明蒸着層」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
引用発明の「ウレタン系接着剤」からなる層を、上記周知技術2として示したとおり、「ポリウレタンを含む接着剤層」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 相違点3について
未延伸のシーラントフィルムは一般的であり(上記(2)ア(ア)c)、甲1にはシーラントフィルムであるポリプロピレン系フィルムが未延伸フィルムであることが好ましい点が示唆されている(上記(2)ア(ア)e)。
これらを踏まえれば、引用発明の「ヒートシール層」である「ポリプロピレン系フィルム」を「未延伸フィルム」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

エ 本件補正発明の効果について
上述した相違点1〜3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1〜2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1〜2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年6月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項11に係る発明は、令和3年11月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項11に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 当審の拒絶の理由
令和5年4月5日付けで当審が通知した拒絶理由のうち引用文献4(特許第6277485号公報)を主引例とする進歩性について理由は、次のとおりのものである。
請求項11に係る発明は、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)引用文献の記載及び引用発明
当審の拒絶の理由で引用された引用文献4の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、「前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む層を備える未延伸フィルムであり」と特定されているのに対し、本件補正発明は、「前記シーラントフィルムは、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂を含む単一の層からなる未延伸フィルムであり」と特定されているとともに、「前記プラスチックフィルム上には、透明性を有する無機材料からなる透明蒸着層が形成されており、
前記シーラントフィルムには、前記シーラントフィルムと前記プラスチックフィルムとの間に位置し、ポリウレタンを含む接着剤層が接しており、」という限定を付加したものである。
そうしてみると、本願発明と引用発明とは、上述した相違点3でのみ相違し、本願発明は、上記第2[理由]2(4)ウに記載したとおり、引用発明に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-08-23 
結審通知日 2023-08-25 
審決日 2023-09-05 
出願番号 P2018-053336
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (B65D)
P 1 8・ 572- WZ (B65D)
P 1 8・ 56- WZ (B65D)
P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 森本 哲也
藤井 眞吾
発明の名称 袋及び袋の製造方法  
代理人 中村 行孝  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 岡村 和郎  
代理人 宮嶋 学  

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