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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1403200
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-26 
確定日 2023-10-16 
事件の表示 特願2017−176099「袋」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月1日出願公開、特開2018−167906〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月13日(優先権主張 平成29年3月29日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月18日付け:拒絶理由通知書
令和3年 8月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年10月26日付け:拒絶理由通知書
令和3年12月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和4年 3月 4日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 5月26日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年5月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、以下(1)の令和3年12月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下(2)の記載にする補正を含むものである。なお、下線部は、補正箇所である。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
蒸気抜き機構を有する袋であって、
前記袋を構成する積層体は、第1基材、第2基材及びシーラント層をこの順で少なくとも含み、
前記第1基材と前記第2基材のうち、一方が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、他方が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下であり、
前記シーラント層は、単層であり、
前記シーラント層は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含み、
前記ポリプロピレンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上である、袋。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
蒸気抜き機構を有する袋であって、
前記袋を構成する積層体は、第1基材、第2基材及びシーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)をこの順で少なくとも含み、
前記第1基材と前記第2基材のうち、一方が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、他方が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、
前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下であり、
前記シーラント層は、単層であり、
前記シーラント層は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含み、
前記ポリプロピレンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上である、袋。
(イ)次のポリマ(a)70〜90重量%、ポリマ(b)2〜10重量%、ポリマ(c)2〜10重量%およびポリマ(d)3〜20重量%からなるフィルム(但し、ポリマの全重量を100重量%とする)であって、該フィルムのヘイズが8〜30%であることを特徴とするポリプロピレン系フィルム、を含むシーラント層
ポリマ(a):第1工程で不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(a1成分)を生成し、ついで第2工程で気相中での重合によりエチレン・プロピレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体であって、a2成分の含有量が15〜25重量%であり(但し、a1成分とa2成分の合計を100重量%とする)、かつa2成分の極限粘度([η]a2)とa1成分の極限粘度([η]a1)の比([η]a2/[η]a1)が0.8〜1.5であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
ポリマ(b):密度が0.91〜0.97g/cm3、かつメルトフローレートが5〜30g/1O分のエチレン系重合体
ポリマ(c):密度が0.86〜0.90g/cm3、かつメルトフローレートが0.3〜5g/1O分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体
ポリマ(d):分子量が異なる2種以上のプロピレン系重合体からなり、分子量の最も高い成分(d1成分)の極限粘度([η]d1)が5dl/g以上、1Odl/g未満であり、ポリマ(d)全体の極限粘度([η]d)の2倍以上であるプロピレン系重合体
(ロ)プロピレン・エチレンブロック共重合体が96〜99Wt%であり、高密度ポリエチレンが1〜4Wt%からなるフイルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体が次の(a)〜(c)に規定する特性を有することを特徴とするレトルト用ポリプロピレン系フイルム、を含むシーラント層
(a)融点が157〜164℃であること
(b)キシレン可溶分量が16〜25%であること
(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること」

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「シーラント層」を「シーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)」、「(イ)次のポリマ・・・を含むシーラント層・・・(ロ)・・・を含むシーラント層・・・(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること」(「・・・」は省略を示す。以下同様。)と補正するものであり、本件補正前の「シーラント層」から(イ)及び(ロ)で特定されるシーラント層を除外するという限定を付加するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された特開2006−143223号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様。)。
a「【0009】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋とすることにより、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐熱性、耐ピンホール性、耐水性に優れるとともに、水分を吸収しにくいフィルムであるので、本発明の電子レンジ加熱用包装袋に水分や油分や糖分を多く含み胡椒や挽き肉のように粒状のものを含む内容物を収納して、業務用の電子レンジのように高出力の電子レンジで加熱され、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱された場合でも、積層フィルムが水分を吸収しにくく且つ耐熱性が優れるので、積層体が部分的に溶融して包装袋に穴があくのを防止することができる。また、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐屈曲ピンホール性が優れるので、包装袋のしわになった箇所にてピンホールが発生するのを防止することができる。」
b「【0013】
以下、図面を引用して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の電子レンジ加熱用包装袋の第1実施形態にて使用する積層体の構成を示す断面図、図2は本発明の電子レンジ加熱用包装袋の第2実施形態にて使用する積層体の構成を示す断面図、図3は本発明の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の1実施例を示す斜視図、図4は本発明の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の他の実施例を示す斜視図であって、2は周縁熱接着部、3は襞周縁熱接着部、4は蒸気排出用熱接着部、5は開口、6は切欠、10, 10' は積層体、11は2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、12はポリブチレンテレフタレート系フィルム、13は熱接着性樹脂層、14は接着層をそれぞれ表す。
【0014】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋に使用する第1実施形態の積層体10の構成は、図1に示すように、外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からなる。第1実施形態の積層体にて包装袋を作製することにより、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐熱性、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性に優れるとともに、水分を吸収しにくい低吸湿性であるため、この包装袋に水分や油分や糖分を多く含み、胡椒や挽き肉のように粒状のものを含む内容物を収納して、業務用の電子レンジのように高出力の電子レンジで加熱され、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱された場合でも、包装袋を構成する積層体に穴があくのを防止することができるとともに、包装袋のしわの部分にてピンホールが発生するのを防止することができる。」
c「【0016】
本発明の第1、第2実施形態の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の1実施例は、図3に示すように、表裏2枚の積層体10,10'を重ね合わせて周縁を周縁熱接着部2にて熱接着して形成され、包装袋を構成する表裏いずれか一方の積層体10,10'に包装袋の長辺に直交方向に所定巾を有する襞部が形成され、襞部の長手方向の中央部に襞周縁熱接着部3から内方に突出する蒸気排出用熱接着部4が形成されるとともに蒸気排出用熱接着部4の内部に開口5が形成され、包装袋の周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された構成である。」
d「【実施例1】
【0022】
厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔テックバリアTZ(三菱樹脂)〕と15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして3層構成の積層体を作製し、この積層体を使用して図3に示す形状のパウチ(長さ170mm、幅120mm、襞高さ25mm)を作製し、このパウチにドミグラソースハンバーグを100g充填し、500W電子レンジで2分間加熱した結果、n=10で10袋とも穴あきは発生しなかった。」
e「【図1】


f「【図3】


(イ)引用発明
以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔テックバリアTZ(三菱樹脂)〕と15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして3層構成の積層体を作製し、
この積層体を使用して、表裏2枚の積層体10,10'を重ね合わせて周縁を周縁熱接着部2にて熱接着して形成され、包装袋を構成する表裏いずれか一方の積層体10,10'に包装袋の長辺に直交方向に所定巾を有する襞部が形成され、襞部の長手方向の中央部に襞周縁熱接着部3から内方に突出する蒸気排出用熱接着部4が形成されるとともに蒸気排出用熱接着部4の内部に開口5が形成され、包装袋の周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された形状のパウチ。」

イ 引用文献2の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用した特開2014−15233号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a「【背景技術】
【0002】
液体充填用包材は、ラーメンスープ、うどん・そばつゆ等に代表される液体スープや、醤油、ソース、たれ、ドレッシング等の液体調味料や、みそ、からし、マヨネーズ、ケチャップ等の粘調体物の包装袋として幅広く使用されている。このような液体充填用包材として、種々の形態からなるものが開発、提案されているが、一般的に基材層としては二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、OPET)フィルム、あるいは二軸延伸ナイロン(以下、ONy)フィルムが用いられ、その基材層に蒸着膜を形成、さらにシーラント層としてポリエチレン系樹脂層を積層した包材が広く用いられている。また、液体充填用包材を使用し充填、製袋する方法としては、一般的に、シーラント層が内側になるように折り返して内容物を充填し、折り辺以外の3方をヒートシールしたもの(三方シール包装)、あるいは4方をヒートシールしたもの(四方シール包装)、液体充填用包材の縦の中央部を貼り合せて上下端をヒートシールしたもの(ピロータイプ)が広く用いられる。内容物の充填は袋の成形と同時でもよく、また、一方が開放した状態の袋を作って、内容物を充填した後に開放部をヒートシールする方法も用いることが出来る。」
b「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されたエラストマーをブレンドしOPETフィルムの柔軟性を向上させる方法は、通常のOPETと比較して、一定レベルの耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性の改善は見られるものの、実用上なお十分とは言えず、改善の余地があった。一方、特許文献2〜4で提案された他ポリアミド成分やエラストマーをブレンドしONyフィルムの柔軟性を向上させる方法は、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性の点では優れているものの、保香性については改善しておらず、また、特許文献5で提案された方法は、保香性プライマー組成物のコーティング膜を形成するための煩雑な工程を経なければならず、また保香性の点では優れているものの、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性についての効果が明確でなかった。以上のように、いずれの方法においても、簡便な方法で液体充填用包材に要求される物性を十分に満たすことは出来ていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、液体充填用包材において、基材層としてポリブチレンテレフタレート樹脂、またはポリブチレンテレフタレート樹脂に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を30重量%以下の範囲で配合したポリエステル系樹脂組成物のいずれかからなるOPBT系フィルムを用いることにより、ハイレベルの耐屈曲ピンホール性、および耐衝撃性を持ち、かつ優れた保香性を併せ持つ液体充填用包材を確保出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。」
c「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。
(OPBTフィルムの原料) OPBTフィルムに用いられる原料は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであれば特に限定されるものでは無いが、具体的にはグリコール成分としての1,4−ブタンジオール、又はそのエステル形成性誘導体と、二塩基酸成分としてのテレフタル酸、又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、それらを縮合して得られるホモ、またはコポリマータイプのポリエステルである。最適な機械的強度特性を付与するためには、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBT)系樹脂のうち、融点200〜250℃、IV値1.10〜1.35dl/gの範囲のものが好ましく、さらには融点215〜225℃、IV値1.15〜1.30dl/gの範囲のものが特に好ましい。」
d「【0012】
(PBT系未延伸原反の製造方法)
OPBTフィルムを安定的に製造するには、延伸前未延伸原反の結晶化を極力抑制する必要があり、押出されたポリブチレンテレフタレート系溶融体を冷却して製膜する際、該ポリマーの結晶化温度領域をある速度以上で冷却する、すなわち原反冷却速度が重要な因子となる。その原反冷却速度は200℃/秒以上、好ましくは250℃/秒以上、特に好ましくは350℃/秒以上であり、高い冷却速度で製膜された未延伸原反は極めて低い結晶状態を保っているため、延伸時のバブルの安定性が飛躍的に向上する。さらには高速での製膜も可能になることから、生産性も向上する。冷却速度が200℃/秒未満では、得られた未延伸原反の結晶性が高くなり延伸性が低下するばかりでなく、極端な場合には延伸バブルが破裂し、延伸が継続しない場合がある。」
e「【0015】
(OPBT系フィルムの製造方法)
PBT系未延伸原反は、25℃以下、好ましくは20℃以下の雰囲気温度に保ちつつ延伸ゾーンまで搬送する必要があり、当該温度管理下では滞留時間に関係無く、製膜直後の未延伸原反の結晶性を維持することが出来る。この延伸開始点までの結晶化制御は、前記未延伸原反の製膜技術とともに、PBT系樹脂の二軸延伸を安定して行う上で重要なポイントと言える。
【0016】
二軸延伸法は、特に限定される訳では無く、例えばチューブラー方式、あるいはテンター方式で縦横同時、または逐次二軸延伸する方式等から適宜選択される。得られたOPBTフィルムの周方向の物性バランスの点で、チューブラー法による同時二軸延伸法が特に好ましい。図1はチューブラー法同時二軸延伸装置の概略図である。延伸ゾーンに導かれた未延伸原反1は、一対の低速ニップロール2間に挿通された後、中に空気を圧入しながら延伸用ヒーター3で加熱するとともに、延伸終了点に冷却ショルダーエアーリング4よりエアーを吹き付けることにより、チューブラー法によるMD、およびTD同時二軸延伸フィルム7を得た。延伸倍率は、延伸安定性や得られたOPBTフィルムの強度物性、透明性、および厚み均一性を考慮すると、MD、およびTDそれぞれ2.7〜4.5倍の範囲であることが好ましい。延伸倍率が2.7倍未満である場合、得られたOPBTフィルムの引張強度や衝撃強度が不十分となり好ましくない。また4.5倍超の場合、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生するため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない。延伸温度は、40〜80℃の範囲が好ましく、特に好ましくは45〜65℃である。前記の高い冷却速度で製造した未延伸原反は、結晶性が低いため、比較的低温域の延伸温度で安定して延伸可能である。80℃を超える高温延伸では、延伸バブルの揺れが激しくなり、大きな延伸ムラが発生して厚み精度の良好なフィルムは得られない。一方、40℃未満の延伸温度では、低温延伸による過度な延伸配向結晶化が発生し、フィルムの白化等を招き、場合によって延伸バブルが破裂し延伸継続困難となる。このように二軸延伸加工を施すことにより、特に強度物性が飛躍的に向上し、かつ異方性が少ないOPBT系フィルムを得ることが出来る。」
(イ)以上より、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「ポリブチレンテレフタレート系溶融体を原反冷却速度200℃/秒以上で冷却して延伸前未延伸原反を製造し、
延伸前未延伸原反を二軸延伸法により延伸することで製造され、
最適な機械的強度特性を付与するためには、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂のうち、融点200〜250℃、IV値1.10〜1.35dl/gの範囲のものが好ましいOPBTフィルム。」

ウ 引用文献3の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用した国際公開第2006/057378号(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
a「請求の範囲
[1] 次のポリマ(a) 70〜90重量%、ポリマ(b) 2〜10重量%、ポリマ(c) 2〜10重量%およびポリマ(d) 3〜20重量%からなるフィルム(但し、ポリマの全重量を100重量%とする)であって、該フィルムのヘイズが 8〜30%であることを特徴とするポリプロピレン系フイルム。
ポリマ(a):第1工程で不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(al成分)を生成し、ついで第2工程で気相中での重合によりエチレン・プロピレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体であって、a2成分の含有量が15〜25重量%であり(但し、al成分とa2成分の合計を100重量%とする)、かつa2成分の極限粘度([η] a2)とal成分の極限粘度([η] al)の比([η] a2/[η] al)が0.8〜1.5であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
ポリマ(b):密度が0.91〜0.97g/cm3、かつメルトフローレートが5〜30g/10分のエチレン系重合体
ポリマ(c):密度が0.86〜0.90g/cm3、かつメルトフローレートが0.3〜5g/10分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体
ポリマ(d):分子量が異なる2種以上のプロピレン系重合体からなり、分子量の最も高い成分(dl成分)の極限粘度([η] dl)が5dl/g以上、10dl/g未満であり、ポリマ(d)全体の極限粘度([η]d)の2倍以上であるプロピレン系重合体」
(イ)以上より、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「次のポリマ(a) 70〜90重量%、ポリマ(b) 2〜10重量%、ポリマ(c) 2〜10重量%およびポリマ(d) 3〜20重量%からなるフィルム(但し、ポリマの全重量を100重量%とする)であって、該フィルムのヘイズが 8〜30%であるポリプロピレン系フイルム。
ポリマ(a):第1工程で不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(al成分)を生成し、ついで第2工程で気相中での重合によりエチレン・プロピレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体であって、a2成分の含有量が15〜25重量%であり(但し、al成分とa2成分の合計を100重量%とする)、かつa2成分の極限粘度([η] a2)とal成分の極限粘度([η] al)の比([η] a2/[η] al)が0.8〜1.5であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
ポリマ(b):密度が0.91〜0.97g/cm3、かつメルトフローレートが5〜30g/10分のエチレン系重合体
ポリマ(c):密度が0.86〜0.90g/cm3、かつメルトフローレートが0.3〜5g/10分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体
ポリマ(d):分子量が異なる2種以上のプロピレン系重合体からなり、分子量の最も高い成分(dl成分)の極限粘度([η] dl)が5dl/g以上、10dl/g未満であり、ポリマ(d)全体の極限粘度([η]d)の2倍以上であるプロピレン系重合体」

エ 引用文献4の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用した特開平10−158463号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
a「【請求項1】プロピレン・エチレンブロック共重合体が96〜99Wt%であり、高密度ポリエチレンが1〜4Wt%からなるフイルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体が次の(a)〜(c)に規定する特性を有することを特徴とするレトルト用ポリプロピレン系フイルム。
(a)融点が157〜164℃であること。
(b)キシレン可溶分量が16〜25%であること。
(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること。」
(イ)以上より、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「プロピレン・エチレンブロック共重合体が96〜99Wt%であり、高密度ポリエチレンが1〜4Wt%からなるフイルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体が次の(a)〜(c)に規定する特性を有するレトルト用ポリプロピレン系フイルム。
(a)融点が157〜164℃であること。
(b)キシレン可溶分量が16〜25%であること。
(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること。」

オ 引用文献5の記載事項
(ア)当審で新たに引用する国際公開第2017/038349号(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
a「請求の範囲
[請求項1]プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)70〜85重量%、低密度ポリエチレン系重合体(b)15〜30重量%を含む樹脂組成物からなるフィルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が、(a)100重量%に対して75〜85重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.7〜2.0dl/gであり、可溶部の極限粘度([η]EP)が3.0〜3.4dl/gであり、低密度ポリエチレン系重合体(b)の密度が0.900〜0.930g/cm3であり、メルトフローレートが1〜10g/10分であるレトルト包装用ポリプロピレン系シーラントフィルム。」
b「技術分野
[0001]本発明はレトルト包装用ポリプロピレン系シーラントフィルムおよびそれを用いた積層体に関し、詳しくは特に耐低温衝撃性や耐ユズ肌発生性に優れ、シール強度、耐ブロッキング性や耐屈曲白化性にも優れた大型のレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるレトルト包装用ポリプロピレン系シーラントフィルムおよびその積層体に関する。」
c「[0059] [実施例1]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)、低密度ポリエチレン系重合体(b)は次のものを使用した。
[0060] プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)
20℃キシレン不溶部の含有量が80重量%、その極限粘度([η]H)が1.90dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が20重量%、その極限粘度([η]EP)が3.20dl/g、230℃でのMFRが2.3g/10分であり、酸化防止剤として“Sumilizer”GP300ppm及び“Sumilizer”GS750ppmを含有したプロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットを使用した。
[0061] 低密度ポリエチレン系重合体(b)
密度0.919g/cm3で、MFR2.0g/10分、共重合成分が1−ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレン(以下、L−LDPEと称すことがある。)((株)プライムポリマー製2022L)を使用した。
[0062] 前記(a)80重量%、(b)20重量%を、ペレット状態でブレンダーにより混合して押出機に供給し、溶融混練してフィルターで濾過し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後片面をコロナ放電処理して厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、特に耐低温衝撃性、耐ユズ肌発生性に優れたものであり、また、シール強度、耐ブロッキング性、耐屈曲白化性に優れ、業務用の大型のレトルト用途にも十分な性能を有するものであった。」
(イ)以上より、引用文献5には、次の事項(以下「引用文献5に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)80重量%、低密度ポリエチレン系重合体(b)20重量%を含む樹脂組成物からなるフィルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は、20℃キシレン不溶部の割合が、(a)100重量%に対して75〜85重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.7〜2.0dl/gであり、可溶部の極限粘度([η]EP)が3.0〜3.4dl/gであり、低密度ポリエチレン系重合体(b)の密度が0.900〜0.930g/cm3であり、メルトフローレートが1〜10g/10分であるレトルト包装用ポリプロピレン系シーラントフィルム。」

カ 引用文献6の記載事項
(ア)当審で新たに引用する特開2012−172124号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
a「【請求項1】
(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体80〜96重量%、(b)炭素数3〜10のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.86〜0.90g/cm3であるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー2〜10重量%、および(c)密度0.94〜0.97g/cm3のポリエチレン系重合体2〜10重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が75〜90重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.8〜2.2dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであって、かつ、[η]H+0.6≦[η]EPであるポリプロピレン系フィルム。」
b「【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関し、さらに詳しくは、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐ユズ肌性、耐ブロッキング性等に優れ、包装袋または包装袋のシーラントとして大型のレトルト用途にも好適に使用できるポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関するものである。」
c「【0068】
[実施例1]ポリマ(a)、(b)、(c)は次のものを使用した。
(1)ポリマ(a)
20℃キシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η]H)が1.91dl/g、20℃キシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であり、酸化防止剤としてSumilizer GP 300ppm及びSumilizer GS 750ppmを含有したプロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットを使用した。
(2)ポリマ(b)
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー(b)として、密度0.87g/cm3、MFR(230℃)5.4g/10分のエチレン・プロピレンランダム共重合体(EPRと略称:三井化学株式会社製タフマーP0280)を使用した。
(3)ポリマ(c)
ポリエチレン系重合体(c)は、密度0.955g/cm3でMFRが16.0g/10分の市販の高密度ポリエチレンを使用した。」
(イ)以上より、引用文献6には、次の事項(以下「引用文献6に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体80〜96重量%、(b)炭素数3〜10のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.87g/cm3、MFR5.4g/10分であるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー2〜10重量%、および(c)密度0.955g/cm3のポリエチレン系重合体2〜10重量%からなる樹脂組成物を溶融製膜したポリプロピレン系フィルムであって、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、20℃キシレン不溶部の割合が82.2重量%で、該不溶部の極限粘度([η]H)が1.91dl/gであり、該可溶部の極限粘度([η]EP)が2.53dl/gであって、かつ、[η]H+0.6≦[η]EPであるポリプロピレン系フィルム。」

(3)本件補正発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「蒸気排出用熱接着部4の内部」に設けられた「開口5」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮して対比すると、本件補正発明の「蒸気抜き機構」に相当し、以下同様に、
「パウチ」は、「袋」に、
「積層体」は、「積層体」に、それぞれ相当する。
・引用発明の「無延伸ポリプロピレンフィルム」と、本件補正発明の「シーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)」を含み、
「前記シーラント層は、単層であり、
前記シーラント層は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含み、
前記ポリプロピレンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上である、」
「(イ)次のポリマ(a)70〜90重量%、ポリマ(b)2〜10重量%、ポリマ(c)2〜10重量%およびポリマ(d)3〜20重量%からなるフィルム(但し、ポリマの全重量を100重量%とする)であって、該フィルムのヘイズが8〜30%であることを特徴とするポリプロピレン系フィルム、を含むシーラント層
ポリマ(a):第1工程で不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(a1成分)を生成し、ついで第2工程で気相中での重合によりエチレン・プロピレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体であって、a2成分の含有量が15〜25重量%であり(但し、a1成分とa2成分の合計を100重量%とする)、かつa2成分の極限粘度([η]a2)とa1成分の極限粘度([η]a1)の比([η]a2/[η]a1)が0.8〜1.5であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
ポリマ(b):密度が0.91〜0.97g/cm3、かつメルトフローレートが5〜30g/1O分のエチレン系重合体
ポリマ(c):密度が0.86〜0.90g/cm3、かつメルトフローレートが0.3〜5g/1O分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体
ポリマ(d):分子量が異なる2種以上のプロピレン系重合体からなり、分子量の最も高い成分(d1成分)の極限粘度([η]d1)が5dl/g以上、1Odl/g未満であり、ポリマ(d)全体の極限粘度([η]d)の2倍以上であるプロピレン系重合体
(ロ)プロピレン・エチレンブロック共重合体が96〜99Wt%であり、高密度ポリエチレンが1〜4Wt%からなるフイルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体が次の(a)〜(c)に規定する特性を有することを特徴とするレトルト用ポリプロピレン系フイルム、を含むシーラント層
(a)融点が157〜164℃であること
(b)キシレン可溶分量が16〜25%であること
(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること」とは、「シ―ラント層」の限りで一致する。
・引用発明の「厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔テックバリアTZ(三菱樹脂)〕と15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして」作製した「3層構成の積層体」と、本件補正発明の「第1基材、第2基材及びシーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)をこの順で少なくとも含」み、「前記第1基材と前記第2基材のうち、一方が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、他方が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下であ」る「積層体」とは、「一方の基材と、他方の基材及びシーラント層をこの順で少なくとも含」む「積層体」の限りで一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「蒸気抜き機構を有する袋であって、
前記袋を構成する積層体は、一方の基材と、他方の基材及びシーラント層をこの順で少なくとも含む、袋。」
[相違点1]
シーラント層に関し、
本件補正発明が、「シーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)」を含み、
「前記シーラント層は、単層であり、
前記シーラント層は、ポリプロピレン及びポリエチレンを含み、
前記ポリプロピレンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上である、」
「(イ)次のポリマ(a)70〜90重量%、ポリマ(b)2〜10重量%、ポリマ(c)2〜10重量%およびポリマ(d)3〜20重量%からなるフィルム(但し、ポリマの全重量を100重量%とする)であって、該フィルムのヘイズが8〜30%であることを特徴とするポリプロピレン系フィルム、を含むシーラント層
ポリマ(a):第1工程で不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(a1成分)を生成し、ついで第2工程で気相中での重合によりエチレン・プロピレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体であって、a2成分の含有量が15〜25重量%であり(但し、a1成分とa2成分の合計を100重量%とする)、かつa2成分の極限粘度([η]a2)とa1成分の極限粘度([η]a1)の比([η]a2/[η]a1)が0.8〜1.5であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
ポリマ(b):密度が0.91〜0.97g/cm3、かつメルトフローレートが5〜30g/1O分のエチレン系重合体
ポリマ(c):密度が0.86〜0.90g/cm3、かつメルトフローレートが0.3〜5g/1O分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体
ポリマ(d):分子量が異なる2種以上のプロピレン系重合体からなり、分子量の最も高い成分(d1成分)の極限粘度([η]d1)が5dl/g以上、1Odl/g未満であり、ポリマ(d)全体の極限粘度([η]d)の2倍以上であるプロピレン系重合体
(ロ)プロピレン・エチレンブロック共重合体が96〜99Wt%であり、高密度ポリエチレンが1〜4Wt%からなるフイルムであって、プロピレン・エチレンブロック共重合体が次の(a)〜(c)に規定する特性を有することを特徴とするレトルト用ポリプロピレン系フイルム、を含むシーラント層
(a)融点が157〜164℃であること
(b)キシレン可溶分量が16〜25%であること
(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること」であるのに対し、
引用発明は、「無延伸ポリプロピレンフィルム」である点。

[相違点2]
一方の基材と、他方の基材及びシーラント層をこの順で少なくとも含む積層体に関し、
本件補正発明が「第1基材、第2基材及びシーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)をこの順で少なくとも含」み、「前記第1基材と前記第2基材のうち、一方が、51質量%以上のポリエチレンテレフタレートを含み、他方が、51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含み、前記第1基材及び前記第2基材のうちポリブチレテレフタレートを含む方の基材は、単層構造からなり、且つ、ポリブチレテレフタレートのIV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下であ」る「積層体」であるのに対し、
引用発明は「厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔テックバリアTZ(三菱樹脂)〕と15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして」作製した「3層構成の積層体」である点。

(4)判断
以下、上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
シーラント層として、単層であり、ポリプロピレン及びポリエチレンを含み、ポリプロピレンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含み、プロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、80質量%以上であるシーラントフィルムは、引用文献5及び6に記載されているように周知の技術的事項である(以下「周知技術」という。)。
また、周知技術を示す上記引用文献5及び6に記載されたシーラントフィルムは、本件補正発明における「(イ)」及び「(ロ)」のシーラント層のフィルムとは異なるものである。
そうすると、引用発明における熱接着性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムに替えて、本件補正発明における「(イ)」及び「(ロ)」のシーラント層のフィルムとは異なる、上記周知技術のシーラントフィルムを採用して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
イ 相違点2について
(ア)引用文献2には、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT)フィルムを安定的に製造するには、延伸前未延伸原反の結晶化を極力抑制する必要があり、押出されたポリブチレンテレフタレート系溶融体を冷却して製膜する際、該ポリマーの結晶化温度領域をある速度以上で冷却すること、及び原反冷却速度は200℃/秒以上であり、高い冷却速度で製膜された未延伸原反は極めて低い結晶状態を保つことが記載されている(段落【0012】参照)。ここで、本願の明細書の段落【0062】〜【0068】の記載も参酌すると、引用文献2に記載されたポリブチレンテレフタレート系溶融体を原反冷却速度200℃/秒以上で冷却することで、ポリブチレンテレフタレートの「単層構造」のフィルムを製造することができるといえる。
引用発明において、2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムを製造する際に、引用文献2に記載された事項を参酌し、単層構造のポリブチレンテレフタレートを用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用文献2には、耐屈曲ピンホール性、および耐衝撃性等の機械的強度特性を付与するために、ポリブチレンテレフタレートのIV値として1.10〜1.35dl/gの範囲を採用することが示唆されている(段落【0010】参照)。
引用発明において、電子レンジ加熱用包装袋としては、耐熱性、耐ピンホール製、耐水性及び耐屈曲ピンホール性等が求められており(段落【0009】参照)、耐屈曲ピンホール性を向上させるために、引用文献2に記載された事項のように、ポリブチレンテレフタレートのIV値として1.10〜1.35dl/gの範囲とすることは、当業者が適宜成し得る事項である。
(イ)引用発明において「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」、及び「2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム」が、それぞれ、51質量%以上のポリエチレンテレフタレート及び51質量%以上のポリブチレンテレフタレートを含むようにすることに、格別な困難性はない。
(ウ)よって、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 相違点についてのまとめ
これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年5月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜11に係る発明は、令和3年12月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される「前記第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明についての理由の概要は、次のとおりである。

進歩性)本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術(引用文献3〜4参照。)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
1.特開2006−143223号公報
2.特開2014−015233号公報
3.国際公開第2006/057378号(周知技術を示す文献)
4.特開平10−158463号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1〜4及びその記載事項は「前記第2[理由]2(2)ア〜エ」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、「前記第2[理由]2」で検討した本件補正発明の「シーラント層」から「シーラント層(但し、下記の(イ)のシーラント層を除き、且つ、下記の(ロ)のシーラント層を除く)」、「(イ)次のポリマ・・・を含むシーラント層・・・(ロ)・・・を含むシーラント層・・・(c)MFRが1.0〜3.0g/10分であること」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、「前記第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-08-23 
結審通知日 2023-08-25 
審決日 2023-09-05 
出願番号 P2017-176099
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 572- Z (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 武市 匡紘
藤井 眞吾
発明の名称 袋  
代理人 宮嶋 学  
代理人 岡村 和郎  
代理人 堀田 幸裕  

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