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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1403453
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-11-25 
確定日 2023-10-31 
事件の表示 特願2018−205804「回路基板及び多層回路基板」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月 7日出願公開、特開2020− 72197、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 5月26日付け:拒絶理由通知書
令和4年 8月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 9月22日付け:拒絶査定
令和4年11月25日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年9月22日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1,4,5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願請求項2,3に係る発明は、以下の引用文献1,3に記載された発明に基づいて、本願請求項6に係る発明は、以下の引用文献1,4に記載された発明に基づいて、本願請求項7,8に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2018−140544号公報
引用文献2:特開2006−120947号公報
引用文献3:国際公開第2018/061727号
引用文献4:特開平6−112610号公報

第3 本願発明
本願請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明5」という。)は、令和4年11月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の回路基板を積層した多層回路基板であって、
前記複数の回路基板が、ポリイミド層を含む絶縁性基材層と、前記絶縁性基材層の少なくとも片面に形成された導体回路層と、前記導体回路層を被覆する接着層を備えた接着層付き回路基板を含み、
前記絶縁性基材層が、下記の式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.009未満であり、
前記接着層は、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性ポリイミドを有しており、
前記接着性ポリイミドは、前記テトラカルボン酸残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を合計で90モル部以上含有し、
前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有するとともに、下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有することを特徴とする多層回路基板。
【化1】

[一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを表す。]
【化2】

[上記式において、Zは−C6H4−、−(CH2)n−又は−CH2−CH(−O−C(=O)−CH3)−CH2−を示すが、nは1〜20の整数を示す。]
【化3】

[式(B1)〜(B7)において、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−COO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−NH−若しくは−CONH−から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0〜4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。]」

なお、本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。

「【0028】
[金属張積層板]
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着層と、接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を備えており、いわゆる3層金属張積層板である。3層金属張積層板は、接着層が、絶縁樹脂層の片面又は両面に設けられていればよく、金属層は、接着層を介して絶縁樹脂層の片面又は両面に設けられていればよい。つまり、本実施の形態の金属張積層板は、片面金属張積層板でもよいし、両面金属張積層板でもよい。本実施の形態の金属張積層板の金属層をエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCを製造することができる。
【0029】
<絶縁樹脂層>
絶縁樹脂層としては、電気的絶縁性を有する樹脂により構成されるものであれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。絶縁樹脂層を構成するポリイミド層は、単層でも複数層でもよいが、非熱可塑性ポリイミド層を含むことが好ましい。ここで、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×108Pa以上であるポリイミドをいう。」

「【0036】
絶縁樹脂層は、例えば回路基板に適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)は、0.02以下、より好ましくは0.0005以上0.01以下の範囲内、更に好ましくは0.001以上0.008以下の範囲内がよい。絶縁樹脂層の10GHzにおける誘電正接が0.02を超えると、FPC等の回路基板に使用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。一方、絶縁樹脂層の10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮している。
【0037】
絶縁樹脂層は、例えば回路基板の絶縁層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、絶縁層全体として、10GHzにおける誘電率が4.0以下であることが好ましい。絶縁樹脂層の10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、FPC等の回路基板に使用した際に、絶縁樹脂層の誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。」

「【0039】
<接着層>
接着層は、テトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドを含むものであり、熱可塑性ポリイミドからなることが好ましい。ここで、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×107Pa未満であるポリイミドをいう。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを意味し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを意味する。
【0040】
(テトラカルボン酸残基)
接着層を形成する熱可塑性ポリイミドは、は、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「テトラカルボン酸残基(1)、「テトラカルボン酸残基(2)」と記すことがある)を、合計で90モル部以上含有することが好ましい。本発明では、テトラカルボン酸残基(1)及び/又は(2)を、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して合計で90モル部以上含有させることによって、接着層を形成する熱可塑性ポリイミドに溶剤可溶性を付与するとともに、熱可塑性ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすく好ましい。テトラカルボン酸残基(1)及び/又は(2)の合計が90モル部未満では、熱可塑性ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向になる。
【0041】
【化4】

【0042】
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを示す。
【0043】
【化5】

【0044】
上記式において、Zは−C6H4−、−(CH2)n−又は−CH2−CH(−O−C(=O)−CH3)−CH2−を示すが、nは1〜20の整数を示す。

「【0048】
(ジアミン残基)
接着層を形成する熱可塑性ポリイミドは、ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるダイマー酸型ジアミン残基を50モル部以上、例えば50モル部以上99モル部以下の範囲内、好ましくは80モル部以上、例えば80モル部以上99モル部以下の範囲内で含有する。ダイマー酸型ジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着層の誘電特性を改善させるとともに、接着層に必要な柔軟性を確保することができる。ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミン残基が50モル部未満であると、絶縁樹脂層と金属層との間に介在する接着層として十分な接着性が得られないことがあり、また金属張積層板の反りが生じることがある。
【0049】
ここで、ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(−COOH)が、1級のアミノメチル基(−CH2−NH2)又はアミノ基(−NH2)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11〜22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20〜54の他の重合脂肪酸を含有する。本発明では、ダイマー酸は分子蒸留によってダイマー酸含有量を90重量%以上にまで高めたものを使用することが好ましい。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。」

「【0052】
また、接着層を形成する熱可塑性ポリイミドは、下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン成分100モル部に対して、合計で1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有することが好ましく、1モル部以上20モル部以下の範囲内で含有することがより好ましい。一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。ジアミン(B1)〜ジアミン(B7)の合計量が全ジアミン成分の100モル部に対して50モル部を超えると、ポリイミドの溶剤溶解性が低くなることがあり、1モル部未満であるとポリイミドの柔軟性が不足し、高温での加工性が低下することがある。
【0053】
【化6】



「【0117】
[誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定]
誘電率及び誘電正接は、空洞共振器摂動法誘電率評価装置(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)及びスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用いて、周波数10GHzにおける樹脂シート(又は絶縁樹脂層に樹脂シートが積層した絶縁層)の誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した樹脂シート(又は絶縁樹脂層に樹脂シートが積層した絶縁層)は、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。」

「【0127】
(合成例18)
<絶縁樹脂層用のポリイミドフィルムの調製>
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、2.196gのDDA(0.0041モル)、16.367gのm - TB(0.0771モル)及び212.5gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、4.776gのBPDA(0.0162モル)及び14.161gのPMDA(0.0649モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液P(粘度;26,000cps)を調製した。
【0128】
銅箔(表面粗度Rz;2.1μm)にポリアミド酸溶液Pを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、金属張積層体Pを調製した。金属張積層体Pについて、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムP(CTE;20ppm/K、Dk;2.95、Df;0.0041)を調製した。」

(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着層と、接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を備える金属張積層板の金属層をエッチングするなどして配線回路加工することによって製造される、片面FPCであって、
絶縁樹脂層はポリイミドによって構成され、ポリイミド層が絶縁樹脂層を構成し、
絶縁樹脂層は、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.02以下であり、10GHzにおける誘電率が4.0以下であり、
接着層は、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有するポリイミドを含むものであり、熱可塑性ポリイミドからなり、
接着層を形成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を、合計で90モル部以上含有し、

一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを示し、

上記式において、Zは−C6H4−、−(CH2)n−又は−CH2−CH(−O−C(=O)−CH3)−CH2−を示すが、nは1〜20の整数を示し、
接着層を形成する熱可塑性ポリイミドは、ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるダイマー酸型ジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有し、ここで、ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が、1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるジアミンを意味し、
接着層を形成する熱可塑性ポリイミドは、下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン成分100モル部に対して、合計で1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有し、

絶縁樹脂層用のポリイミドフィルムとして、CTE;20ppm/K、Dk;2.95、Df;0.0041のポリイミドフィルムPを調製した、片面FPC。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
「【0043】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る接着層付き回路基板100は、コア基板として用いられるものであり、回路基板10と、接着層20とから構成されている。より詳しくは、回路基板10は、絶縁板である積層板12と、積層板12の両面(両主面)上に形成された所定形状を有する導体回路14とから構成されており、両面とも、それらの導体回路14の表面14a上、及び積層板12の表面12a上に接着層20が形成されている。なお、回路基板10には、公知の方法によって、基準穴等が設けられていてもよい。」

「【図1】



3 引用文献3
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には、次の記載がある。
「[0008] すなわち、本発明の第1の観点のポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方に熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層を有するポリイミドフィルムである。
そして、本発明の第1の観点のポリイミドフィルムは、下記の条件(a-i)〜(a-iv)を満たすことを特徴とする。
(a-i)前記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドはテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものであって、
前記テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、
3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(BPDA残基)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)から誘導されるテトラカルボン酸残基(TAHQ残基)の少なくとも1種並びにピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(PMDA残基)及び2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(NTCDA残基)の少なくとも1種の合計が80モル部以上であり、
前記BPDA残基及び前記TAHQ残基の少なくとも1種と、前記PMDA残基及び前記NTCDA残基の少なくとも1種とのモル比{(BPDA残基+TAHQ残基)/(PMDA残基+NTCDA残基)}が0.6〜1.3の範囲内にあること。
(a-ii)前記熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドはテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものであって、前記ジアミン残基の100モル部に対して、
下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が70モル部以上であること。
(a-iii)熱膨張係数が10ppm/K〜30ppm/Kの範囲内であること。
(a-iv)10GHzにおける誘電正接(Df)が0.004以下であること。」

「[0043](ジアミン残基)
第1、第2又は第3の実施の形態において、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
[0044] [化7]

[0045] 式(A1)において、連結基Xは単結合若しくは−COO−から選ばれる2価の基を示し、Yは独立に水素、炭素数1〜3の1価の炭化水素基、若しくはアルコキシ基を示し、nは0〜2の整数を示し、p及びqは独立して0〜4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の連結基A、複数の置換基Y、さらに整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(A1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば−NR3R4(ここで、R3,R4は、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
[0046] 一般式(A1)で表されるジアミン化合物(以下、「ジアミン(A1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン(A1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ガス透過性が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。ここで、連結基Xとしては、単結合が好ましい。
[0047] ジアミン(A1)としては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン(p−PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート(APAB)等を挙げることができる。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。
「【0032】以上の方法で得られた基材もしくはこの得られた基材と金属からなるフレキシブル両面金属積層板は、(1)図1のように金属箔1上にポリイミドワニスを直接塗布後、溶媒除去しポリイミド層2を形成した基材と金属箔1を加熱圧着して得られるフレキシブル両面金属積層板、(2)図2のように金属箔1上にポリイミドワニスを直接塗布後、溶媒除去した基材のポリイミド層2の面同士を加熱圧着して得られるフレキシブル両面金属積層板、(3)図3のように金属箔1上にポリアミック酸ワニス4を直接塗布した上に、さらにポリイミドワニスを直接塗布ボリイミド層2を形成後、ポリイミドワニス層の溶媒除去とポリアミック酸ワニス層のイミド化反応およびポリアミック酸ワニス層の溶媒除去した基材と金属箔1を加熱圧着して得られるフレキシブル両面金属積層板、(4)図4のように金属箔上にポリアミック酸ワニス4を直接塗布した上に、さらにポリイミドワニスを直接塗布ポリイミド層2を形成後、ポリイミドワニス層の溶媒除去とポリアミック酸ワニス層のイミド化反応およびポリアミック酸ワニス層の溶媒除去した基材のポリイミド面同士を加熱圧着して得られるフレキシブル両面金属積層板、(5)図5のように金属箔上にポリアミック酸ワニス4を直接塗布した上に、さらにポリイミドワニスを直接塗布後、ポリイミドワニス層の溶媒除去とポリアミック酸ワニス層のイミド化反応およびポリアミック酸ワニス層の溶媒除去した基材と金属箔上にポリイミドワニスを直接塗布後、溶媒除去した基材のイミド層2の面同士を加熱圧着して得られるフレキシブル両面金属積層板、のいずれかの構成からなるものが主要な実施の形態であるが、勿論これに限定されるものではない。」

「【図4】



第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「片面FPC」は、フレキシブル回路基板の一種であって、本願発明1の「複数の回路基板を積層した多層回路基板」と、「回路基板」である点で共通する。

(イ)引用発明の「絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着層と、接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を備える金属張積層板の金属層をエッチングするなどして配線回路加工」された「片面FPC」は、「絶縁樹脂層」と、「配線回路加工」により「エッチング」された「接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層」と、「絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着層」とを「備える」といえる。
そして、引用発明の「絶縁樹脂層」は、「ポリイミドによって構成され」るとともに、「ポリイミド層が絶縁樹脂層を構成」するから、本願発明1の「ポリイミド層を含む絶縁性基材層」に相当する。
また、引用発明の「金属層」と、本願発明1の「前記絶縁性基材層の少なくとも片面に形成された導体回路層」とは、「導体回路層」である点で共通し、引用発明の「接着層」と、本願発明1の「前記導体回路層を被覆する接着層」とは、「接着層」である点で共通する。
以上の点について、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「片面FPC」が、「絶縁樹脂層」と、「配線回路加工」により「エッチング」された「接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層」と、「絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着層」とを「備える」ことと、本願発明1の
「前記複数の回路基板が、ポリイミド層を含む絶縁性基材層と、前記絶縁性基材層の少なくとも片面に形成された導体回路層と、前記導体回路層を被覆する接着層を備えた接着層付き回路基板を含」む
こととは、
「前記回路基板が、ポリイミド層を含む絶縁性基材層と、導体回路層と、接着層とを備える」
ことである点で共通する。

(ウ)引用発明は、「絶縁樹脂層はポリイミドによって構成され」るものであり、かつ「絶縁樹脂層用のポリイミドフィルムとして、CTE;20ppm/K、Dk;2.95、Df;0.0041のポリイミドフィルムPを調製した」ものであるから、引用発明の「絶縁樹脂層」の「Dk」、「Df」の値は、それぞれ、「2.95」、「0.0041」であり、ここで、引用文献1の段落【0117】の記載によれば、「Dk」、「Df」は、それぞれ、「スプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)」により測定される「10GHzにおける」誘電率、誘電正接である。
このことに基づいて、本願発明1の「E1=√ε1×Tanδ1」との数式における右辺の「ε1」、「Tanδ1」に、それぞれ、引用発明1の「Dk」の値である「2.95」、「Df」の値である「0.0041」を代入すると、左辺が約0.007となり、本願発明1における「誘電特性を示す指標であるE1値が0.009未満」であることを満足する。
そして、この点について上記(イ)を踏まえると、引用発明において、「絶縁樹脂層」の「スプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)」により測定される、「10GHzにおける」誘電率、誘電正接がそれぞれ「2.95」、「0.0041」であることは、本願発明1の
「前記絶縁性基材層が、下記の式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.009未満であ」る
ことに含まれる。

(エ)引用発明の「接着層」は、「テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有するポリイミドを含むものであり、熱可塑性ポリイミドからな」るものであるから、「テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する」「熱可塑性ポリイミド」を有するといえる。
また、引用発明の「熱可塑性ポリイミド」は、「接着層を形成する」ものであるから、接着性を有するということができ、本願発明1の「接着性ポリイミド」に相当する。
よって、引用発明の「接着層」が「テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有するポリイミドを含むものであり、熱可塑性ポリイミドからな」り、かつ「熱可塑性ポリイミド」が「接着層を形成する」ことは、本願発明1の「前記接着層は、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性ポリイミドを有して」いることに相当する。

(オ)引用発明の「接着層を形成する熱可塑性ポリイミド」は、「テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を、合計で90モル部以上含有」する等のものであるところ、この点が、本願発明1における、「前記テトラカルボン酸残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を合計で90モル部以上含有」すること及び「前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有するとともに、下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有する」こと等に相当することは、明らかである。

イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「回路基板であって、
前記回路基板が、ポリイミド層を含む絶縁性基材層と、導体回路層と、接着層とを備え、
前記絶縁性基材層が、下記の式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.009未満であり、
前記接着層は、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性ポリイミドを有しており、
前記接着性ポリイミドは、前記テトラカルボン酸残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を合計で90モル部以上含有し、
前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有するとともに、下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有することを特徴とする多層回路基板。
【化1】

[一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを表す。]
【化2】

[上記式において、Zは−C6H4−、−(CH2)n−又は−CH2−CH(−O−C(=O)−CH3)−CH2−を示すが、nは1〜20の整数を示す。]
【化3】

[式(B1)〜(B7)において、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−COO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−NH−若しくは−CONH−から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0〜4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。]」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「複数の回路基板を積層した多層回路基板」であるのに対して、引用発明は、「片面FPC」であって、「複数の回路基板を積層した」、「多層」のものであることが特定されるものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記複数の回路基板」が、「接着層付き回路基板」を含む、すなわち、個々の「回路基板」が「接着層付き回路基板」を構成するものであり、ここで、当該「接着層付き回路基板」が備える「導体回路層」、「接着層」が、それぞれ、「前記絶縁性基材層の少なくとも片面に形成された」もの、「前記導体回路層を被覆する」ものであるのに対して、引用発明では、「片面FPC」が「接着層付き回路基板」を構成することは特定されず、また、「片面FPC」が「金属層」及び「接着層」を備えるものの、「金属層」は「絶縁樹脂層」の「少なくとも片面に形成された」ものではなく、「接着層」が「金属層」を「被覆する」ものでもない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
上記第4の2の記載から、引用文献2は、「導体回路14」が「積層板12の両面(両主面)上に形成され」、「導体回路14の表面14a上、及び積層板12の表面12a上に接着層20が形成され」た「接着層付き回路基板100」を開示するものであり、ここで、「接着層20」は、「導体回路14」を被覆する構成であるといえる。
一方、引用発明における「絶縁樹脂層」、「金属層」、及び「接着層」の配置の関係について、「接着層」が「絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層され」、「金属層」が「接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された」ものから、何らかの変更が可能であることについては、引用文献1には、記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明において、引用文献2の上記構成を適用する動機付けがあるとはいえない。
そして、この点は、引用文献3、引用文献4のいずれかの記載事項によって左右されるものではない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜5について
本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明であり、相違点2に係る構成を含むことから、本願発明1と同様に、当業者であっても引用文献1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-10-16 
出願番号 P2018-205804
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 篠塚 隆
特許庁審判官 富澤 哲生
野崎 大進
発明の名称 回路基板及び多層回路基板  
代理人 渡邊 和浩  

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