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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60W 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60W |
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管理番号 | 1403550 |
総通号数 | 23 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-02-28 |
確定日 | 2023-10-24 |
事件の表示 | 特願2020−566341「運転支援方法及び運転支援装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月23日国際公開、WO2020/148561、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年1月15日を国際出願日とする出願であって、令和4年6月17日付け(発送日:令和4年6月28日)で拒絶理由が通知され、令和4年8月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年11月22日付け(発送日:令和4年11月29日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和5年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は以下のとおりである。 (1)(進歩性)この出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1ないし3、及び、6ないし11に対して:引用文献1及び2 ・請求項4に対して:引用文献1ないし3 ・請求項5に対して:引用文献1ないし4 <引用文献一覧> 1.特開2013−184563号公報 2.特開2016−143137号公報 3.特開2008−217079号公報 4.特開2008−174023号公報 (2)(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ・請求項1ないし11 第3 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和5年2月28日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 自車両が走行する第1車線において前記自車両の前方の第1障害物の位置を検出し、 前記第1車線に隣接する対向車線である第2車線において前記自車両の前方の第2障害物の位置を検出し、 対向車両の走行領域を推定し、推定した前記走行領域に基づいて、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の位置を基準にして前記第1障害物の手前側に決定した停車位置で停車した場合に、前記自車両が前記対向車両の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判定し、 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に前記対向車両の走行領域に干渉する可能性がある場合には、前記自車両の停車位置として前記第2障害物を基準に前記第2障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定し、 前記決定した停車位置への前記自車両の停車を支援する、 ことを特徴とする運転支援方法。 【請求項2】 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側でなく、又は前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性が無い場合には、前記自車両の停車位置として前記第1障害物を基準に、前記第1障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援方法。 【請求項3】 前記対向車両の走行領域を推定し、 推定した前記走行領域と前記第1障害物の手前で停車した場合の前記自車両の占有領域とが重複するか否かに応じて、前記自車両が前記対向車両の走行領域に干渉する可能性を判断する、 ことを特徴とする請求項2に記載の運転支援方法。 【請求項4】 前記対向車両の大きさを判断し、 前記対向車両の前記大きさが閾値を超える場合には前記対向車両の前記大きさが閾値を超えない場合よりも、前記第2障害物から前記自車両の進行方向で手前側に前記停車位置を設定する、 ことを特徴とする請求項2又は3に記載の運転支援方法。 【請求項5】 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であって、且つ前記自車両が前記第1障害物の手前の第2停車位置に停車した場合に前記対向車両の走行領域に干渉する可能性があっても、車線幅方向で前記第2車線から離れるように前記第2停車位置を横方向に移動して定めた第3停車位置に停車した場合の前記自車両が前記対向車両の走行領域に干渉しない場合には、前記自車両の停車位置を前記第3停車位置に決定する、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の運転支援方法。 【請求項6】 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で前方である場合に、前記第1障害物の位置の手前に前記自車両の停車位置を決定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の運転支援方法。 【請求項7】 自車両が走行する第1車線において前記自車両の前方の第1障害物の位置を検出し、前記第1車線に隣接する対向車線である第2車線において前記自車両の前方の第2障害物の位置を検出するセンサと、 対向車両の走行領域を推定し、推定した前記走行領域に基づいて、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の位置を基準にして前記第1障害物の手前側に決定した停車位置で停車した場合に、前記自車両が対向車両の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判定し、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性がある場合には、前記自車両の停車位置として前記第2障害物を基準に前記第2障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定するコントローラと、 前記決定した停車位置に基づいて運転支援を行う走行制御装置と、 を備えることを特徴とする運転支援装置。 【請求項8】 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側でなく、又は前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性が無い場合には、前記自車両の停車位置として前記第1障害物を基準に、前記第1障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定することを特徴とする請求項7に記載の運転支援装置。 【請求項9】 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性が無い場合には、前記自車両の進行方向で前記第1障害物よりも手前且つ前記第2障害物よりも前方の位置に停車位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援方法。 【請求項10】 前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性が無い場合には、前記自車両の進行方向で前記第1障害物よりも手前且つ前記第2障害物よりも前方の位置に停車位置を決定することを特徴とする請求項8に記載の運転支援装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。 (1)「【0012】 車両のフロント部にはステレオカメラ7が取り付けられており、ステレオカメラ7は自車両から自車前方にある先行車、障害物、対向車などの位置、相対速度、幅や道路幅を演算する。このとき、ステレオカメラ7に代えてレーザレンジファインダやCCDカメラなどを用いて距離計測を行うようにしてもよい。」 (2)【0015】 まず、ステップS11では、ステレオカメラ7により自車前方の所定の範囲を検索し、道路の中心から左側に相当する、自車前方の自車走行路の道路幅を検出する(道路幅検出部)。具体的には、道路の中心から左側の所定範囲を検索し、自車走行路の道路幅を検出する。 【0016】 自車線上を検索した結果、ステップS12に進み、自車走行路上にある障害物を検出する(障害物検出部)。ステップS12で障害物が自車線上にあると判断した場合、ステップS13へ進む。 【0017】 ステップS13では、自車走行側(左側)における自車が走行可能な仮想左側車線Wl(y)、すなわち自車走行側仮想車線を演算する(自車走行側仮想車線演算部)。具体的は、図5および6に示すように、道路幅と、障害物の位置および幅と、自車速度とに基づいて、仮想左側車線Wl(y)を演算(算出)する。なお、仮想線とは、仮想車線とは、道路幅、障害物の位置および幅、対向車の位置、幅および速度、自車速度等に基づいて演算される自車が走行可能な領域の右端と左端の線をいい、ここでは、左側の仮想線である仮想左側車線Wl(y)を演算する。」 (3)「【0024】 次に、ステップS15では、ステレオカメラ7により自車前方の道路の中心から右側の所定範囲を検索し、道路の中心から右側に相当する自車前方の対向車走行路の道路幅を検出する(道路幅検出部)。さらに、ステレオカメラ7により、自車走行路上にある対向車を検出する(対向車検出部)。対向車線上を検索した結果、ステップS16で対向車があると判断した場合、ステップS17へ進む。 【0025】 ステップS17では、図6に示すように、推定される自車と対向車のすれ違い位置Ytを演算する。自車速度Va、対向車の相対速度VRb、対向車の車間距離Ybより、すれ違い位置Ytは下記の式で演算する。 Yt=(Yb*Va)/VRb 【0026】 次に、ステップS18へ進む。ステップS18ではステップS15の対向車線上を検索した結果より、対向車線上に障害物を検出し、障害物があると判断した場合、ステップS19へ進む。 【0027】 ステップS19では図9で示すように、ステップS17で演算したすれ違い位置Ytが障害物近傍に位置する場合、すなわち、すれ違い位置Ytが障害物の位置Yroと重なると判断する。ここで、障害物近傍とは障害物の距離Yoを基準とする障害物すれ違い下限距離Yloと障害物すれ違い上限距離Yhiの間の範囲であり、障害物すれ違い下限距離Yloと障害物すれ違い上限距離Yhiは障害物すれ違い範囲下部offset1と障害物すれ違い範囲上部offset2より下記の式で表せる。 Ylo=Yo?offset1 Yhi=Yo+offset2 【0028】 障害物すれ違い範囲下部offset1と障害物すれ違い範囲上部offset2は特定の固定値でもよく、自車と障害物の相対速度、または自車と対向車の相対速度に対して単調増加関数の関係式から演算してもよい。 【0029】 ステップS19で、すれ違い位置Ytが障害物の位置Yroと重なると判断した場合には、ステップS20へ進む。ステップS20では、図9で示すような仮想右側車線Wr(y)を演算する。障害物の位置および幅と、自車速度と、対向車の位置、幅、および速度と、に基づいて、対向車走行側における自車が走行可能な対向車走行側仮想車線を演算する(対向車走行側仮想車線演算部)。 【0030】 より具体的には、図9に示すように、対向車幅Wb、自車走行路の右側車線(路肩)と対向車との間の幅Wbr、障害物の幅Wo、自車走行路の右側車線(路肩)と障害物との間の幅Worより、仮想右側車線Wr(y)は下記の式で演算する。ここで、Wb+Wbrが、本発明にいう対向車の走行路幅に相当するものである。すなわち、対向車は、自車走行路の右側車線と対向車との間の幅Wbrを維持して、障害物をすり抜けると推定されるので、仮想右側車線Wr(y)は以下のように演算される。 Wr(y)=Wo+Wor+Wb+Wbr 【0031】 一方、ステップS19において、ステップS17で演算したすれ違い位置Ytが障害物近傍に位置しないと判断した場合には、ステップS21へ進む。 ステップS21では、図10で示すような仮想右側車線Wr(y)を下記の式で演算する。 Wo+Wor>Wb+Wbrの場合 WR(y)=Wo+Wor Wo+Wor≦Wb+Wbrの場合 WR(y)=Wb+Wbr 【0032】 一方、ステップSS18において、対向車線上に障害物がないと判断した場合、ステップS22へ進む。 ステップS22では図11で示すような仮想右側車線Wr(y)を下記の式で演算する。 Wr(y)=Wb+Wbr 【0033】 一方、ステップS16において、対向車がないと判断した場合、ステップS23へ進む。 さらに、ステップS23では、ステップS15の対向車線上を検索した結果より、対向車線上に障害物があるかを判断し、障害物がある(対向車がない)と判断した場合、ステップS24へ進む。 【0034】 ステップS24では図12で示すような仮想右側車線Wr(y)を下記の式で演算する。 Wr(y)=Wo+Wor 【0035】 一方、ステップS23において、対向車線上に障害物がないと判断した場合、ステップS25へ進む。ステップS25では図13で示すような仮想右側車線Wr(y)を下記の式で演算する。 Wr(y)=0 【0036】 次に、ステップS26へ進む。ステップS26では、ステップS11とステップS15で検出した自車前方の自車走行路の道路幅W(y)と、ステップS13とステップS14で演算した仮想左側車線Wl(y)と、ステップS20、ステップS21、ステップS22、ステップS24、ステップS25で演算した仮想右側車線Wr(y)より仮想自車両通過幅(道幅残量)w(y)を下記の式で演算する。すなわち、ここでは、自車走行側仮想車線と対向車走行側仮想車線に基づき、自車走行路の道幅残量を演算する(道幅残量演算部)。 w(y)=W(y)−Wl(y)−Wr(y)」 (4)「【0044】 ステップ28で要求加速度を演算し、さらに、自車が通過することができる限界位置がある場合、には、さらに以下のフローに進む。図3は、自車が通過することができる限界位置を演算するためのフローチャートであり、ステップ28に続くフローチャートである。ステップS29では、仮想自車両通過幅w(y)が自車両幅Waに所定の余裕αを持たせた値Wa+αより小さいかどうかを判断する。ここで、仮想自車両通過幅w(y)が、自車両幅Waに所定の余裕αを持たせた値Wa+αより小さい場合、自車の走行を停止させることが望ましく、ステップS30へ進む。 【0045】 ステップS30では、図15で示すような通過可能限界位置Ysを演算する。図15において、通過可能限界位置Ysは、w4<(Wa+α)<w5の関係を満たす位置であるため、通過可能限界位置Ysは下記の式から演算できる。 Ys=((y5?y4)/(w5?w4))*(Wa+α)+y4 【0046】 すなわち、ここでは、通過可能限界位置Ysは、演算された道幅残量が自車両幅Waより小さくなる地点があるときに、この地点の手前の位置(通過可能限界位置Ys)で、ACC制御機能を解除せずに、自車の走行を停止させるために演算される値である。 【0047】 次に、ステップS30で通過可能限界位置Ysを演算した後はステップS31へ進む。ステップS31では図16(a)で示すような通過可能限界位置Ysで停止するよう要求加速度a(y)を演算する。次に、ステップS32へ進む。 【0048】 図4は、通過可能限界位置における車両の走行状態を変更する方法を説明するためのフローチャートであり、ステップ31に続くフローチャートである。演算された道幅残量が自車両幅Waより小さくなる地点があるときに、この地点の手前の位置(通過可能限界位置Ys)で、ACC制御機能を解除せずに自車の走行を停止するような走行制御を行う。具体的には、まず、ステップS32およびステップ33で、各地点において演算された要求加速度(具体的には減速度)が優先加減速度閾値より大きい(減速度が小さい)場合に、各地点において演算された要求加速度のうち、自車に対して最も近距離の地点で演算された要求加速度に基づき、車両走行状態を変更する。」 上記記載事項からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「自車走行路上にある自車前方の障害物の位置を検出し、 道路の中心から右側の対向車線上にある自車前方の障害物の位置を検出し、 仮想左側車線Wl(y)及び仮想右側車線Wr(y)を演算し、演算された仮想左側車線Wl(y)、仮想右側車線Wr(y)及び検出された自車前方の自車走行路の道路幅W(y)に基づいて演算された道幅残量が自車両幅Waより小さくなる地点があるときに、この地点の手前の位置(通過可能限界位置Ys)で、ACC制御機能を解除せずに自車の走行を停止するような走行制御を行う、 車両の走行状態を変更する方法。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0027】 また、図3に示すように、自車両C1と相手車両C2とのすれ違い通行が可能な道路であっても、道路脇に立設された電柱Dによって一部の道幅が狭まり、車両一台分しか通行できない箇所が狭路区間として出現する場合には、電柱Dから所定距離離れたすれ違い可能な地点を退避ポイントとする。この退避ポイントは、道を譲る側の車両が進行する車線側とされる。 【0028】 一方、図4に示すように、自車両C1と相手車両C2とのすれ違い通行が可能な道路において、駐車車両、二輪車等の一時的な障害物Bによって、すれ違いが困難な狭路区間が形成されている場合には、該当する区間に接近したときには障害物Bが移動してすれ違い可能となっている可能性があるため、障害物Bが道路の何れの側に存在するかによって優先順位が決定される。この場合には、障害物Bから所定距離離れた地点が退避ポイントとして設定され、自分の車線側に障害物Bが存在する方が道を譲る。 【0029】 狭路通行制御部50は、自車両の狭路区間通過の優先順位が低い場合、自車両を円滑に退避ポイントに移動させて停車させるための加減速制御及び操舵制御を含む走行制御を実行する。また、自車両の狭路区間通過の優先順位が高い場合には、狭路区間を通過するための加減速制御及び操舵制御を含む走行制御を実行する。」 上記記載事項からみて、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献2記載事項〕 「障害物Bが道路の何れの側に存在するかによって優先順位が決定され、自車両の狭路区間通過の優先順位が低い場合、自車両を円滑に退避ポイントに移動させて停車させるための加減速制御及び操舵制御を含む走行制御を実行すること。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0083】 S736では、道路状況評価点数を確定し、続くS738において道路状況評価点数が送受信機40から車両A及び車両Bへ送信され、処理が終了される。 (運転技量を考慮した優先順位評価処理) 次に、図9に基づき、運転者の運転技量を考慮した優先順位評価処理について説明する。図9は、運転技量を考慮した優先順位評価処理のフローチャートである。 【0084】 運転技量を考慮した優先順位評価処理では、センターから道路状況評価処理にて得られた道路状況評価点数を受け取り、各回避ポイントについて運転手の技量に合わせて再評価が行われる。運転技量を考慮した優先順位評価処理では、S802において、S708において蓄積された回避ポイント(回避ポイント(1)?(5))が取り出される。 【0085】 S804において、車両A停止時評価+車両B通行時評価が行われる。図2の場合、回避ポイント(2)では、車両A停止時評価10066.4+車両B通行時評価8664=18730.4点となる。 【0086】 続くS806では、車両A通行時評価+車両B停止時評価が行われる。図2の場合、車両A通行時評価8756+車両B停止時評価9348=18104点と評価される。 続くS808において、すべての回避ポイントについて評価が終了したか否かが判定される。そして、すべての回避ポイントでの評価が終了した場合(S808:Yes)、処理がS810へ移行され、評価が終了していない場合(S808:No)、処理がS802へ戻され、すべての回避ポイントについて評価が行われる。 【0087】 以上のようにして、回避ポイント(1)の車両A停止時かつ車両B通行時:19560点、車両A通行時かつ車両B停止時:14728点、回避ポイント(4)の車両A停止時かつ車両B通行時:18832点、車両A通行時かつ車両B停止時:2142.4点、回避ポイント(5)の車両A停止時かつ車両B通行時:13252点、車両A通行時かつ車両B停止時:12524点と評価される。 【0088】 続くS810において、各回避ポイントからS802及びS804で得られた評価点数が上位一定数(4件)を取り出す。図2の場合、最高点=回避ポイント(4)の車両A通行時かつ車両B停止時:20142.4点、2位=回避ポイント(1)の車両A停止時かつ車両B通行時:19560点、3位=回避ポイント(4)の車両A停止時かつ車両B通行時:18832点、4位=回避ポイント(2)の車両A停止時かつ車両B通行時:18730.4点が選出される。 【0089】 続くS812において、一番高評価点の回避ポイントが取り出される。図2の場合一番高得点の回避ポイント(4)の車両A通行時かつ車両B停止時:20142.4点が取り出される。 【0090】 続くS814において、車両Aの評価点数と車両Bの評価点数との差が一定以上であるか否かが判定される。そして、評価点の差が一定(2倍)以上の場合(S814:Yes)、処理がS816へ移行され、評価点の差が一定(2倍)未満の場合(S814:No)、処理がS820へ移行される。 【0091】 図2の場合、一番高得点の回避ポイント(4)の車両A通行時かつ車両B停止時:20142.4点について、両者の差が2倍以上ないので、処理がS820へ移行される。 続くS816において、蓄積したすべての上位ポイントについて評価したか否かが判定される。そして、すべての上位ポイントについて評価が終了している場合(S816:Yes)、処理がS818に移行され、評価が終了していない場合(S816:No)、処理がS812へ戻され、すべての上位ポイントについて評価が繰り返される。 【0092】 S818では、上位ポイントのうち一番高い評価点の回避ポイントとその回避ポイントにおける回避動作とが送受信機40を介して送信される。 S820では、S814で回避ポイントであると判定された回避ポイントとその回避ポイントにおける回避動作とが送受信機40を介して送信される。図2の場合、回避ポイント(4)と、車両Aに対しては「通行」、車両Bに対しては「停止」という回避動作が送受信機40を介して送信される。 【0093】 (運転支援システム1の特徴) 以上に説明した運転支援システム1によれば、複数のすれ違い可能なポイントうち最も容易にすれ違うことができるすれ違いポイントが決定されるとともに、そのすれ違いポイントを通過すればよいのか停止すればよいのかがすれ違う各車両に対して報知装置70によって報知される。 【0094】 したがって、各車両の運転者はその報知内容に従って運転操作を行えば、そのすれ違いポイントにおいて自車が通過する場合は対向車が待機しており、自車が待機する場合には対向車が通過していくので、安全かつスムーズにすれ違うことができる。 [第2実施形態] 次に、第2実施形態として、構成品をすべて車載した運転支援システム2について、図10に基づいて説明する。図10は、運転支援システム1の概略の機能構成を示すブロック図である。運転支援システム2は、第1実施形態でセンタ装置5に含まれていた構成品を車両に搭載したものである。」 上記記載事項からみて、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献3記載事項〕 「各回避ポイントについて、道路状況評価点数を運転手の技量に合わせて再評価を行い、一番高い評価点の回避ポイントとその回避ポイントにおける回避動作とが送受信機40を介して送信されることにより、複数のすれ違い可能なポイントうち最も容易にすれ違うことができるすれ違いポイントが決定されるとともに、そのすれ違いポイントを通過すればよいのか停止すればよいのかがすれ違う各車両に対して報知装置70によって報知され、各車両の運転者はその報知内容に従って運転操作を行うこと。」 4 引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0026】 以上のように構成された運転支援システム(1)では、車両(40)は、道路情報取得手段により取得した道路地図情報、他車両(50)と車両(40)の車体の大きさに関する情報、車両(40)と他車両(50)の現在位置及び脱輪情報及び接触情報に基づき、他車両(50)とすれ違うよう自動走行する。」 上記記載事項からみて、引用文献4には次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献4記載事項〕 「他車両(50)と車両(40)の車体の大きさに関する情報に基づき、他車両(50)とすれ違うよう自動走行すること。」 第5 対比及び判断 1 本願発明1について 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「自車走行路」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「自車両が走行する第1車線」に相当する。同様に、引用発明における「自車前方の所定の範囲の障害物」、「位置」、「検出」は、本願発明1における「自車両の前方の第1障害物」、「位置」、「検出」に相当する。そうすると、引用発明における「自車走行路上にある自車前方の所定の範囲の障害物の位置を検出し」は、本願発明1における「自車両が走行する第1車線において前記自車両の前方の第1障害物の位置を検出し」に相当する。 引用発明における「対向車線」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「第1車線に隣接する対向車線である第2車線」に相当する。同様に、引用発明における「自車前方の道路の中心から右側の所定範囲の障害物」、「位置」、「検出」は、本願発明1における「自車両の前方の第2障害物」、「位置」、「検出」に相当する。そうすると、引用発明における「対向車線上の自車前方の道路の中心から右側の所定範囲の障害物の位置を検出し」は、本願発明1における「前記第1車線に隣接する対向車線である第2車線において前記自車両の前方の第2障害物の位置を検出し」に相当する。 引用発明における「通過可能限界位置Ys」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「決定した停車位置」に相当する。同様に、引用発明における「自車の走行を停止するような走行制御を行う」は、本願発明1における「自車両の停車を支援する」に相当する。 引用発明における「車両の走行状態を変更する方法」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1における「運転支援方法」に相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 〔一致点〕 「自車両が走行する第1車線において前記自車両の前方の第1障害物の位置を検出し、 前記第1車線に隣接する対向車線である第2車線において前記自車両の前方の第2障害物の位置を検出し、 前記決定した停車位置への前記自車両の停車を支援する、 ことを特徴とする運転支援方法」 〔相違点〕 本願発明1は「対向車両の走行領域を推定し、推定した前記走行領域に基づいて、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の位置を基準にして前記第1障害物の手前側に決定した停車位置で停車した場合に、前記自車両が前記対向車両の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判定し、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に前記対向車両の走行領域に干渉する可能性がある場合には、前記自車両の停車位置として前記第2障害物を基準に前記第2障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定」するのに対し、引用発明はこのような構成を備えていない点。 上記相違点について検討する。 引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。 また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、本願の出願前に周知の技術ではなく、当業者が適宜なし得た設計的事項でもない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2ないし6、及び、9について 本願発明2ないし6、及び、9は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに本願発明2ないし本願発明6、及び、本願発明9で新たに特定される発明特定事項を含むものであるから、本願発明1に対して述べたものと同様の理由により、引用発明及び、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明7ないし8、及び、10について 本願発明7ないし8、及び、10は、本願発明1ないし2、及び、9をそれぞれ「装置」の発明として表現したものであって、本願発明1の全ての発明特定事項に対応する事項を含むから、本願発明1に対して述べたものと同様の理由により、引用発明及び、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 原査定の理由(2)(明確性)について 審判請求時の補正により、補正前の請求項1及び8の「前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行に干渉する可能性があるか否かを判定し」という記載は、「対向車両の走行領域を推定し、推定した前記走行領域に基づいて、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の位置を基準にして前記第1障害物の手前側に決定した停車位置で停車した場合に、前記自車両が対向車両の走行領域に干渉する可能性があるか否か判定し」に補正されており、さらに補正前の請求項4を削除したことにより、本願発明1ないし10は明確となった。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2023-10-11 |
出願番号 | P2020-566341 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(B60W)
P 1 8・ 121- WY (B60W) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
山本 信平 |
特許庁審判官 |
倉橋 紀夫 吉村 俊厚 |
発明の名称 | 運転支援方法及び運転支援装置 |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 小林 龍 |