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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E21D
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E21D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E21D
審判 全部申し立て 発明同一  E21D
管理番号 1403634
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-07-27 
確定日 2023-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7011688号発明「地盤凍結装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7011688号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2、4について訂正することを認める。 特許第7011688号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 特許第7011688号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7011688号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜4に係る特許についての出願は、平成29年3月10日に出願された特願2017−46450号の一部が令和2年8月3日に新たな特許出願(特願2020−131842号)として出願され、令和4年1月18日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。
その特許について、同年7月27日に特許異議申立人竹原 尚彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は同年10月31日付けで取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である同年12月23日に訂正の請求及び意見書の提出を行い、その訂正の請求に対して申立人は令和5年2月8日に意見書を提出した。
その後、当審は同年3月27日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者はその指定期間内である同年5月29日に訂正の請求及び意見書の提出を行い、その訂正の請求に対して申立人は同年7月5日に意見書を提出した。
なお、令和5年5月29日に訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたことにより、令和4年12月23日にされた訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。

第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する装置であって、
前記トンネルを構成するセグメントに設けられた第1冷媒流通管と、
前記トンネルにて隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管同士を連通する第2冷媒流通管と、
前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置されるスキンプレートと、を有し、
前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿って延び接触するように配置されている、地盤凍結装置。」
と記載されているのを、
「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、
前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と、
前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並び、
前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
前記地盤凍結装置は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する、地盤凍結装置。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記枠体は、複数の板状部材によって構成され、
前記トンネルにて隣り合う前記セグメント同士は、各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されており、
前記第2冷媒流通管は、前記互いに接触した状態の前記板状部材を跨ぐように延びている、請求項1に記載の地盤凍結装置。」
と記載されているのを、
「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、
前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と、
前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並び、
前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
前記枠体は、複数の板状部材によって構成され、
前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士は、各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されており、
前記第2冷媒流通管は、前記互いに接触した状態の前記板状部材を跨ぐように延びており、
前記地盤凍結装置は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する、地盤凍結装置。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正の単位について
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項1、2及び4について、請求項2及び4は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、2及び4に対応する訂正後の請求項1、2及び4は、一群の請求項である。
また、訂正前の請求項3及び4について、請求項4は、請求項3を引用するものであるから、訂正事項3によって訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項3及び4に対応する訂正後の請求項3及び4は、一群の請求項である。
そして、これら一群の請求項は共通する請求項4を有するから、請求項1〜4は一群の請求項である。したがって、訂正前の請求項1〜4に対応する訂正後の請求項1〜4は、一群の請求項である。

イ 別の訂正単位とする求めについて
特許権者は、訂正後の請求項2及び4について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する装置」について、「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置」であることを限定し、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「第1冷媒流通管」について、「前記トンネルを構成するセグメントに設けられた」ことを「前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられ」たことに限定し、かつ、「トンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ」ことを限定し、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「第2冷媒流通管」について、「前記トンネルにて隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管同士を連通する」ことを「前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する」ことに限定し、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「地盤凍結装置」について、「前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並」ぶことを限定し、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「スキンプレート」について「鋼製」であることを限定し、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「第1冷媒流通管」について、「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿って延び接触するように配置されている」ことを「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されて」いることに限定し、
訂正前の請求項1における発明特定事項である「地盤凍結装置」について、「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する」ことを限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項
訂正事項1により限定された事項は、本件特許の願書に添付した明細書における【0007】、【0012】、【0016】、【0024】、【0028】、【0029】、【0032】、【0034】、【0035】、【0038】及び【0039】、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲における請求項4並びに本件特許の願書に添付した図面における【図3】、【図5】及び【図6】に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
(ア)他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2の記載を、当該請求項の記載を引用しない形へと書き替えるものである。
よって、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の減縮
また、訂正事項2は、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する装置」について、「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置」であることを限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「第1冷媒流通管」について、「前記トンネルを構成するセグメントに設けられた」ことを「前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられ」たことに限定し、かつ、「トンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ」ことを限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「第2冷媒流通管」について、「前記トンネルにて隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管同士を連通する」ことを「前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する」ことに限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「地盤凍結装置」について、「前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並」ぶことを限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「スキンプレート」について「鋼製」であることを限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「第1冷媒流通管」について、「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿って延び接触するように配置されている」ことを「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されて」いることに限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されて」いる「前記セグメント同士」について、「前記トンネルにて隣り合」うことを「前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う」ことに限定し、
訂正前の請求項2における発明特定事項である「地盤凍結装置」について、「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する」ことを限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項2は、上記アのとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、また、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項
訂正事項2により限定された事項は、願書に添付した明細書における【0007】、【0012】、【0016】、【0024】、【0028】、【0029】、【0032】、【0034】、【0035】、【0038】及び【0039】、願書に添付した特許請求の範囲における請求項4並びに願書に添付した図面における【図3】、【図5】及び【図6】に記載された事項であるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(3)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び4は、訂正前の請求項3及び4を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項3及び4は、上記アのとおり、訂正前の請求項3及び4を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項
訂正事項3及び4は、請求項を削除する訂正であるから、本件明細書等に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項2及び4について、別の訂正単位とする求めも、認めることができる。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2、4について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正請求による訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1及び2に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、符号1A等は分説のため当審で付与した。以下、分説された本件訂正発明の発明特定事項を、符号に基づき「発明特定事項1A」等という。

「【請求項1】
1A 地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
1B 前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、
1C 前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と、
1D 前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
1L 前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並び、
1E 前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
1F 前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
1G 前記地盤凍結装置は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する、
1H 地盤凍結装置。

【請求項2】
2A 地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
2B 前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、
2C 前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と、
2D 前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
2L 前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並び、
2E 前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
2F 前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
2I 前記枠体は、複数の板状部材によって構成され、
2J 前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士は、各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されており、
2K 前記第2冷媒流通管は、前記互いに接触した状態の前記板状部材を跨ぐように延びており、
2G 前記地盤凍結装置は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する、
2H 地盤凍結装置。」

第4 取消理由(決定の予告)で通知した取消理由の概要
当審が令和5年3月27日付けの取消理由(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

令和4年12月23日付けの訂正の請求により訂正された請求項1及び2に係る発明は、特開平5−280278号公報に記載された発明、特開2010−265631号公報に記載された技術、特開2008−69246号公報に記載された技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 取消理由(決定の予告)で通知した取消理由についての当審の判断
1 引用例の記載
(1)引用例2
申立人が甲第2号証として提出した特開平5−280278号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は地盤中に適宜間隔をもって並列に築造したシールドトンネルの接続工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地盤中に並列に築造したシールドトンネルを側面がわで接続する場合は、これらシールドトンネル間の地山を掘削した後、これらのシールドトンネル間にわたってシールドトンネルの上下面に鉄筋コンクリートを覆工することにより接続していた。このシールドトンネル間の地山を開放掘削するには地山の自立及び止水をする必要があり、その主な方法として凍結工法がある。これは、図7に示すように、シールドトンネル20間の地山の上部及び下部に凍結管30の埋設用孔を削孔し、該埋設用孔に凍結管30を埋設して地山を凍結させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような地山の凍結工法は、凍結管の埋設用孔をシールドトンネルの内側から削孔しなければならないために手間がかかり、また工費もかさむという問題があった。本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、凍結管の埋設用孔を削孔する工程を省略することにより、シールドトンネルを短期間でかつ経済的に接続できるシールドトンネルの接続工法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】以上の課題を達成するための本発明の要旨は、地盤中にシールドトンネルを適宜間隔をもって並列に築造した後、これらのシールドトンネル間の地山を凍結工法により凍結させて各シールドトンネルを側面がわで接続するシールドトンネルの接続工法において、セグメント内面に凍結管を配管して前記シールドトンネル間の地山を凍結させ、この凍結地山を掘削して対向するセグメント同士を鉄筋コンクリート構造で接続することに存する。」

イ 「【0007】地下鉄のシールドトンネル1は2本が並列に構築され、その内の駅部1aを構築する200〜300m箇所が近接して構築されている。これらのシールドトンネル1は図2に示すような矩形状のシールド掘進機2で掘削した矩形の孔に鋼製セグメント3を覆工して断面矩形に構築する。そしてこのシールドトンネル1における200〜300mにわたって近接された箇所を側面がわで接続して駅部1aを構築する。
【0008】これは、先ず初めにシールドトンネル1間の対向する鋼製セグメント3内面に200〜300mにわたってブライン方式の凍結管4を配設してシールドトンネル1間の地山を凍結させる。この凍結管4は外管4aとフレキシブルな内管4bとによりなり、前記外管4aに内管4bが挿入されて冷却設備(図示せず)に連結されている。尚、この凍結管4は現場での配管の他に、予め鋼製セグメント3内面に配管させておくこともできる。」

ウ 「【図1】

……
【図3】

……
【図6】



エ 上記ウにおける図3及び図6の記載から、
凍結管4がシールドトンネル1の軸方向に延びること(以下「認定事項i1」という。)
が見て取れる。

オ 上記ウにおける図6の記載から、
鋼製セグメント3内面に凍結管4を配設すること(以下「認定事項i2」という。)
が見て取れる。

カ 上記ア〜ウの記載から、
凍結管4と、冷却設備と、を有する、装置(以下「認定事項i3」という。)
があるといえる。

キ 以上のことから、引用例2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用箇所の段落番号等を併記し、また、分説された引用発明の発明特定事項に本件訂正発明の発明特定事項1A等に概ね対応させて符号ia等を付与した(以下、符号に基づき、分説された引用発明の発明特定事項を「引用発明特定事項ia」等という。)。

「ia 矩形の孔に鋼製セグメント3を覆工して断面矩形に構築される2本の(【0007】)シールドトンネル1間の対向する鋼製セグメント3内面に凍結管4を配設してシールドトンネル1間の地山を凍結させる装置であって(【0008】、認定事項i3)、
ib 鋼製セグメント3内面に配設されてシールドトンネル1の軸方向に延びる凍結管4と(認定事項i1、認定事項i2)、
id 凍結管4が連結されている冷却設備と(【0008】)、
を有し、
icf 凍結管4は、予め鋼製セグメント3内面に配管させておく(【0008】)
ig 装置(認定事項i3)。」

(2)引用例3
申立人が甲第3号証として提出した特開2010−265631号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。以下、地下に埋設されたマンホール(地下構造物の一例)の内側に凍結装置を固定し、そのマンホールの外側周辺の地盤を凍結する例により、本発明の実施の形態に係る凍結管ユニット、その凍結管ユニットを含む凍結装置、ならびにその凍結装置を用いた凍結方法について説明する。ただし、地下構造物は、マンホールに限定されるものではなく、地下にその一部を埋設している構造物であれば、その形態を問わない。」

イ 「【0028】
凍結装置5は、16本の凍結管10と、凍結管10同士を連結するためのチューブ30と、凍結管10をマンホール3の内側に固定するための固定金具35a,35bとを備える。凍結管10は、その長さ方向(寸法1000mmの方向、紙面の裏方向)を鉛直方向としてマンホール3の内側に固定される。図2では、凍結管10は、その上面をハッチング領域として図示されている。凍結管10は、4本一組として、凍結管ユニット22を構成している。この実施の形態において、凍結管ユニット22中の隣り合う凍結管10同士の距離は、およそ150mmに設定されているが、かかる距離に限定されない。凍結管ユニット22は、液体窒素の注入口および排出口を有する凍結管10を4本連結して成り、1つの凍結管10の注入口から注入された液体窒素が残り3本の凍結管10を通って、最後の凍結管10の排出口から排出される構造を有する。このような構造の4組の凍結管ユニット22がマンホール3の内側に固定されている。各凍結管10は、マンホール3の曲面状の内側面になるべく隙間の無いように貼り付け、マンホール3の外側にある地盤2との熱交換を行いやすくする必要がある。このため、各凍結管10とマンホール3の内側面との間には、間詰部材としてのパテ25が介在するようにしている(図2中の拡大図Aの黒色部分を参照)。パテ25は、液状ポリマー(ポリブテン系など)のように、隙間を埋めるために十分に柔軟で、熱伝導性が高く、耐低温特性を有する材質が好ましい。ただし、パテ25は、凍結装置5にとって必須の構成ではなく、例えば、凍結管の一方の面をマンホール3の内側の曲面に合うような曲面とする場合には、パテ25を使用せず、あるいは使用したとしても極めて薄く介在させることもできる。」

ウ 「【0033】
3.凍結管の構成
図3は、凍結管の内部構造を示す断面図である。
【0034】
凍結管10は、その上方に、液体窒素の入口となる注入口40aと、液体窒素の出口となる排出口40bとを備えている。注入口40aおよび排出口40bは、この実施の形態では、連結管10の上方に突出する円筒であるが、角筒であっても良い。また、凍結管10の注入口と排出口を上方に突出させずに、単なる穴として形成し、あるいは凍結管10の内方に突出するように形成しても良い。
【0035】
凍結管10の内部には、その内部に液体窒素の流路を形成するための内管41が挿入されている。内管41は、凍結管10の内上部からその内底部の近傍まで延出しているが、内底部に接していない。図3の矢印で示すように、注入口40aから入ってきた液体窒素は始めに内管41の中を凍結管10の上方から下方へ流れ、下方から凍結管10の上方に戻り、排出口40bから出るようにする流路を形成するためである。」

エ 「【図3】



(3)引用例4
申立人が甲第5号証として提出した特開2008−69246号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0024】
図1に示すように、地盤凍結工法では、凍結対象地盤となる地盤Gを凍結するにあたり、ボーリング孔Hを掘削した後、このボーリング孔Hに凍結管1を配管し、凍結管1内に冷熱源となるブラインを循環供給する。凍結管1は、内管1Aと外管1Bとを備える二重管であり、内管1Aにブラインを供給し、内管1A内から外管1B内を流通して、排出口から排出される。このブラインの循環供給を行うことにより、ブラインの冷熱が地盤Gに伝熱されて地盤Gが凍結させられる。
【0025】
また、ボーリング孔Hの内壁面と凍結管1との間には、凍結用材料が充填された熱伝導部2が形成されている。熱伝導部2は、凍結管1を埋設するために形成したボーリング孔Hに凍結管1を配設した後、凍結管1の周囲に残る余掘り部に凍結用材料を充填することによって形成されている。この凍結用材料は、基材と高熱伝導性材料とが水に混合され、さらに分散剤が混合された構成原料を練り混ぜることによって形成されている。本実施形態では、基材として土質材料、高熱伝導性材料として金属粉が用いられている。また、構成原料には、このほか増粘剤および水硬性固化材などが適宜混合されている。」

(4)周知技術
ア 周知技術1
上記(2)における引用例3の記載、及び、上記(3)における引用例4の記載から、
地盤を凍結するための冷媒流通管を構造物等に取り付けるにあたり、伝熱性を高める(冷媒流通管と構造物等との間に隙間ができないようにする)ことを目的として、両者の間に充填材を介在させること(以下「周知技術1」という。)
は、周知であると認められる。

イ 周知技術2
シールド工法を用いて地中に構築される筒状のトンネルは、例をあげるまでもなく、周知技術である(以下「周知技術2」という。)。

2 対比
本件訂正発明2の発明特定事項の一部は本件訂正発明1の発明特定事項と重複するから、それらをまとめて、本件訂正発明と引用発明とを対比する。

(1)発明特定事項1A、2A
引用発明の「矩形の孔に」「構築される2本のシールドトンネル1」は、いずれも、本件訂正発明の「地中に構築される」「トンネル」に相当する。
そうすると、引用発明の「シールドトンネル1間の地山」は本件訂正発明の「トンネルの周辺地盤」に相当し、引用発明の「シールドトンネル1間の地山を凍結させる装置」は本件訂正発明の「トンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置」に相当する。
よって、引用発明の発明特定事項iaは、「地中に構築される」「トンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置」である点で、本件訂正発明の発明特定事項1A、2Aと共通する。

(2)発明特定事項1B、2B
引用発明の発明特定事項ibにおける「鋼製セグメント3」は、「シールドトンネル1」を「構築」するものであるから、本件訂正発明の発明特定事項1B、2Bにおける「前記トンネルを構成」する「セグメント」に相当する。
また、引用発明の発明特定事項ibにおける「凍結管4」は、本件訂正発明の発明特定事項1B、2Bにおける「第1冷媒流通管」に相当する。ここで、引用発明の発明特定事項ibによれば、引用発明の「凍結管4」は、「鋼製セグメント3内面に配設されてシールドトンネル1の軸方向に延びる」ものであるから、「前記トンネルを構成」する「セグメントに設けられてトンネル軸方向に延びる」ものであるといえる。
よって、引用発明の発明特定事項ibは、「前記トンネルを構成」する「セグメント」「に設けられてトンネル軸方向に延び」る「第1冷媒流通管」である点で、本件訂正発明の発明特定事項1B、2Bと共通する。

(3)発明特定事項1D、2D
引用発明の発明特定事項idにおける「冷却設備」は、本件訂正発明の発明特定事項1D、2Dにおける「冷媒供給装置」に相当する。
また、引用発明の発明特定事項idにおける「冷却設備」は、「凍結管4が連結されている」ものであるから、本件訂正発明の発明特定事項1D、2Dにおける「冷媒供給装置」と、「前記第1冷媒流通管内」「に冷媒を供給する」点で共通する。
よって、引用発明の発明特定事項idは、「前記第1冷媒流通管内」「に冷媒を供給する冷媒供給装置」である点で、本件訂正発明の発明特定事項1D、2Dと共通する。

(4)発明特定事項1H、2H
上記(1)で述べたように、引用発明の「装置」は、本件訂正発明の「地盤凍結装置」に相当する。
よって、引用発明は、本件訂正発明の発明特定事項1H、2Hに相当する構成を有する。

(5)一致点・相違点
上記(1)〜(4)からみて、本件訂正発明と引用発明とは、
「【請求項1】
1A’ 地中に構築されるトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
1B’ 前記トンネルを構成するセグメントに設けられてトンネル軸方向に延びる第1冷媒流通管と、
1D’ 前記第1冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有する、
1H 地盤凍結装置。

【請求項2】
2A’ 地中に構築されるトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
2B’ 前記トンネルを構成するセグメントに設けられてトンネル軸方向に延びる第1冷媒流通管と、
2D’ 前記第1冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有する、
2H 地盤凍結装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件訂正発明では、「トンネル」が「筒状」であるのに対し(発明特定事項1A、2A)、
引用発明では、「シールドトンネル1」が「断面矩形」である点。

<相違点2>
本件訂正発明では、「トンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と」を有し、「前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並」ぶのに対し(発明特定事項1B、1C、1L、2B、2C、2L)、
引用発明では、そのように構成されていない点。

<相違点3>
本件訂正発明では、「冷媒供給装置」が「前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する」のに対し(発明特定事項1D、2D)、
引用発明では、「冷却設備」がそのように構成されているか否かが明らかでない点。

<相違点4>
本件訂正発明では、「前記セグメント」が「枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有」するのに対し(発明特定事項1E、2E)、
引用発明では、「鋼製セグメント3」がそのように構成されているか否かが明らかでない点。

<相違点5>
本件訂正発明では、「前記第1冷媒流通管」が「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されて」いるのに対し(発明特定事項1F、2F)、
引用発明では、「凍結管4」がそのように構成されているか否かが明らかでない点。

<相違点6>
本件訂正発明では、「前記地盤凍結装置」が「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する」のに対し(発明特定事項1G、2G)、
引用発明では、「装置」がそのように構成されていない点。

<相違点7>
本件訂正発明2では、「前記枠体は複数の板状部材によって構成され」るのに対し(発明特定事項2I)、
引用発明は、そのような構成を有するか否かが明らかでない点。

<相違点8>
本件訂正発明2では、「前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士は、各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されて」いるのに対し(発明特定事項2J)、
引用発明は、そのような構成を有するか否かが明らかでない点。

<相違点9>
本件訂正発明2では、「前記第2冷媒流通管は、前記互いに接触した状態の前記板状部材を跨ぐように延びて」いるのに対し(発明特定事項2K)、
引用発明は、そのような構成を有するか否かが明らかでない点。

3 判断
(1)本件訂正発明1について
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用例3には、複数の凍結管10をチューブ30で接続することが示されているが、相違点2に係る本件訂正発明の構成のように、トンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントに設けられたトンネル軸方向に直列に並ぶ3つの第1冷媒流通管について、トンネル軸方向に隣り合う端部同士を2つの第2冷媒流通管で連通し、3つのセグメントに関する3つの第1冷媒流通管及び2つの第2冷媒流通管が、トンネル軸方向に、第1冷媒流通管、第2冷媒流通管、第1冷媒流通管、第2冷媒流通管、第1冷媒流通管の順に並ぶ、という具体的接続構造は示されていない。当該具体的接続構造は、引用例4、及び本件特許異議申立におけるその余の証拠にも、示されていない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、引用例3及び4、上記1の(4)に示した周知技術1及び2、並びに本件特許異議申立におけるその余の証拠を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
上記のとおり、相違点2が想到容易ではないから、その余の相違点1、3〜6について判断するまでもなく、本件訂正発明1は当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1と同様に、引用発明と相違点2で相違するから、上記(1)で述べたことと同様に、本件訂正発明2は、その余の相違点について判断するまでもなく、引用例3及び4、上記1の(4)に示した周知技術1及び2、並びに本件特許異議申立におけるその余の証拠を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の意見書における主張について
ア 「(1)本件発明1,2と引用例2の相違点について」について
申立人は令和5年7月5日付け意見書における「(1)本件発明1,2と引用例2の相違点について」において、一つの冷却設備に対して直列に繋ぐ凍結管の数は、冷却装置の能力、セグメントの大きさ、現場の状況等に応じて当業者が適宜設定する設計事項に過ぎないから、トンネル軸方向に隣り合う3つのセグメントの各々の第1冷媒流通管の端部同士を連結することは、当業者にとって格別困難なことではないこと等を主張している(第2頁第15行〜第19行参照。)。

イ 「(2)本件発明の第1冷媒流通管および第2冷媒流通管について」について
申立人は令和5年7月5日付け意見書における「(2)本件発明の第1冷媒流通管および第2冷媒流通管について」において、引用例3は、1つの凍結管の注入口から注入された冷媒が複数の凍結管を通って別の凍結管の排出口から排出される構造(請求項1)を開示するものであって、各連結管10の一端部に注入口と排出口を設けることを必須とする発明ではないから、引用例3のチューブ30を引用例2に適用するにあたり、凍結管10の一端部に注入口と排出口を設ける構成に当業者が拘泥することはない等を主張している(第3頁第17行〜第22行参照。)。

ウ 当審の判断
引用発明において、鋼製セグメント3ごとに構成された凍結管4を、引用例3に記載されたチューブにより連結するとしても、トンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントについて、凍結管4がトンネル軸方向に直列に並び、凍結管4の端部同士がトンネル軸方向に隣り合うものとして、当該端部同士を連結し、トンネル軸方向に3つのセグメントにわたって凍結管−チューブ−凍結管−チューブ−凍結管の順に並ぶという、具体的な接続構造とすることまで、引用例2または引用例3に示唆されているとはいえない。
そうすると、相違点2の具体的接続構造は、申立人の主張を考慮しても、単なる設計事項とはいえず、引用発明において当該具体的接続構造を選択する動機付けがあったとはいえない。
したがって、上記ア及びイの申立人の主張を考慮しても、本件訂正発明1及び2の進歩性について、上記(1)及び(2)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

第6 取消理由(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書において、取消理由通知において採用した理由のほか、次の理由により、本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。

(1)拡大先願
本件特許の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特願2016−123248号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人がその出願前の特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許の請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

(2)新規性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平5−280278号公報に記載された発明であるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

2 先願、引用例の記載
(1)先願1
特許異議申立人が甲第1号証として提出した特開2017−227020号公報により出願公開がされた特願2016−123248号(以下「先願1」という。)は、本件特許の原出願日(平成29年3月10日)よりも前の平成28年6月22日に出願され、本件特許の原出願日よりも後の平成29年12月28日に出願公開がされたものであり、先願1の発明者は相馬啓及び塩屋祐太であるのに対し、本件特許の発明者は中川雅由、本田和之及び相馬啓であるから、本件特許とは発明者が完全に一致せず、また、先願1の出願人はケミカルグラウト株式会社1社であるのに対し、本件特許の出願人は鹿島建設株式会社及びケミカルグラウト株式会社の2社であるから、本件特許とは出願人が完全に一致しないところ、先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の事項が記載されている。

ア 「【0034】
次に図3、図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
既に地中の所定箇所に設置されている鋼製セグメント40に貼付凍結管1を取り付ける場合には、図3では3本の貼付凍結管1と、冷媒の供給源に連通する配管である円管2が、フレーム3(軽量フレームの枠部材)と一体に組み合わされて組立体10を構成している。組立体10はトンネル坑の内外で組み立てることが出来る。
ここで貼付凍結管1には、図1で示す様に、マイクロチャンネル1Aの一端に分散ソケット1Bが接合され、他端に集合ソケット1Cが接合されている。
【0035】
図3において、鋼製セグメント40におけるスキンプレート41、主桁42、セグメント継手板43で囲まれた空間には2本の縦リブ44(仕切り)が存在している。第2実施形態では、図3で示す2本の縦リブ44で仕切られた3つの空間のそれぞれにおいて、スキンプレート41に接する様にして貼付凍結管1を設置する。
3本の貼付凍結管1における各々の分散ソケット1Bに対して、図示しない冷媒供給源に連通する供給配管2A(円管)が3本に分岐して、それぞれ接続されている。そして3本の貼付凍結管1のそれぞれの集合ソケット1Cには、3本の戻り配管2B(円管)が各々接続されており、3本の戻り配管2Bは1本の戻り配管に合流(集合)している。
図3において、符号Pは供給配管2Aにおける分岐箇所を示し、符号Qは戻り配管2Bにおける集合箇所(合流箇所)を示す。
【0036】
図3において、円管2(供給配管2A、戻り配管2B)及びマイクロチャンネル1Aは剛性が小さいため、適度な剛性を有するフレーム3(軽量フレームの枠部材)を支持材として組み立てられる。
図3においては、フレーム3は、フレーム3A、フレーム3B、フレーム3Cを有している。フレーム3Aは、供給配管2A側における分岐箇所Pから分散ソケット1Bの上方の所定位置までの領域で、円管2A(供給配管)に沿う様に併設されている。そしてフレーム3Bは、戻り配管2B側における集合箇所Qから各集合ソケット1Cの上方の所定位置までの領域で、円管2B(戻り配管)に沿う様に併設されている。またフレーム3Cは、フレーム3Aとフレーム3Bを連結している。フレーム3Aとフレーム3C、フレーム3Bとフレーム3Cの連結部分近傍等には構造強化のための補強部3Dが設けられる。
ここで、フレーム3(フレーム3A、3B、3C)と円管2(供給配管2A、戻り配管2B)は適切な箇所において、従来公知の方法により、結合、固定されている。
【0037】
組立体10は、トンネル坑内外で、貼付凍結管1と円管2(供給配管2A、戻り配管2B)をフレーム3(フレーム3A、3B、3C)と一体的に組み立てることにより構成される。そしてトンネル坑内で、組立体10を鋼製セグメント40内の所定位置に押し当てて配置し、以て、貼付凍結管1を鋼製セグメント40の所定位置に取り付ける。
図3における符号3Eは組立体10の把持部を示し、把持部3Eは、組立体10を鋼製セグメント40内の所定位置に押し当てて配置する作業の際に作業者が組立体10を把持(保持)するのに用いられる。
第2実施形態によれば、複数(3本)の貼付凍結管1が組立体10として一体化されているため、組立体10を用いることによって、例えば鋼製セグメント40に貼付凍結管1を設置する作業の労力を軽減することが出来る。
【0038】
図3で示す様に貼付凍結管1を設置した鋼製セグメント40を(トンネル坑内で)リング状に接合した状態が図4に示されている。リング状に接合したセグメント100は7ピースの鋼製セグメント40で構成されている。
図4において、各鋼製セグメント40はセグメント継手板43で仕切られ、各鋼製セグメント40のスキンプレート41には貼付凍結管1(マイクロチャンネル1A)が3本配置されている。そして各鋼製セグメント40で隣接する貼付凍結管1は、縦リブ44を境にして離隔している。
各マイクロチャンネル1Aには円管2(供給配管及び戻り配管)が接続されている。上述した様に、各鋼製セグメント40において、3本の貼付凍結管1は円管2(供給配管及び戻り配管)と共にフレーム3と一体的に組み立てられ、組立体10を構成している。
【0039】
図4において、図示しない冷媒供給源から二次冷媒(例えば、液化二酸化炭素)を供給すると(矢印F)、二次冷媒は円管2(供給配管及び戻り配管)を介して貼付凍結管1内を流れ、その際にはスキンプレート41の外方に近接する地盤と熱交換を行って当該地盤を凍結する。
図4において、リング状に接合したセグメント100或いはライナーは、7ピースの鋼製セグメント40で構成されている。しかし、ライナーを構成するセグメントの数は、トンネル径等の条件が変化すれば変更される。
【0040】
図3、図4の第2実施形態によれば、3本の貼付凍結管1と二次冷媒用の配管2(円管)とフレーム3と一体に組み合わせて組立体10を構成し、組立体10をトンネル覆工用セグメント40に取り付けている。
組立体10をセグメント40の所定位置に配置すれば、一度に複数の(図3では3本の)凍結管1をセグメント40の所定位置に取り付けることが出来るので、凍結管1をセグメント40(構造物)に取り付ける作業の労力が軽減される。
図3、図4の第2実施形態におけるその他の構成と作用効果は、図1、図2の第1実施形態と同様である。」

イ 「【図3】

【図4】



ウ 上記イにおける図3の記載から、
円管2(供給配管2A、戻り配管2B)は、それぞれ、貼付凍結管1同士を連通すること(以下「認定事項s1」という。)、
一対の主桁42及び一対のセグメント継手板43により構成される枠体は、複数の板状部材によって構成されること(以下「認定事項s2」という。)、
鋼製セグメント40は、一対の主桁42及び一対のセグメント継手板43により構成される枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置されるスキンプレート41と、前記セグメント継手板43間にて前記主桁42同士を接続する複数の縦リブ44と、を有すること(以下「認定事項s3」という。)、及び、
円管2(供給配管2A、戻り配管2B)は、縦リブ44を跨ぐように延びていること(以下「認定事項s4」という。)
が見て取れる。

エ 上記イにおける図4の記載から、
7ピースの鋼製セグメント40で構成されているリング状に接合したセグメント100において、隣り合う鋼製セグメント40同士の各々の円管2(供給配管2A、戻り配管2B)同士を連通する、当該円管2の内周に位置する配管(以下「認定事項s5」という。)、
貼付凍結管1は、スキンプレート41における地山側と反対の側の面に、スキンプレート41に沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されていること(以下「認定事項s6」という。)、
トンネルにてトンネル周方向に隣り合う鋼製セグメント40同士は、各々のセグメント継手板43が互いに接触した状態で連結されていること(以下「認定事項s7」という。)、及び、
隣り合う鋼製セグメント40同士の各々の円管2(供給配管2A、戻り配管2B)同士を連通する、当該円管2の内周に位置する配管は、互いに接触した状態の板状部材(セグメント継手板43)を跨ぐように延びていること(以下「認定事項s8」という。)
が見て取れる。

オ 上記ア〜イの記載及び認定事項s5から、
貼付凍結管1と、円管2(供給配管2A、戻り配管2B)と、円管2の内周に位置する配管と、冷媒供給源と、を有する、装置(以下「認定事項s9」という。)
があるといえる。

カ 以上のことから、先願には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。なお、本件訂正発明の発明特定事項1A等に概ね対応させて符号sa等を付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。

「sa 貼付凍結管1を設置した鋼製セグメント40をトンネル坑内でリング状に接合し(【0038】)、リング状に接合したセグメント100或いはライナーは、7ピースの鋼製セグメント40で構成されていて、冷媒供給源から二次冷媒を供給すると、二次冷媒は円管2(供給配管及び戻り配管)を介して貼付凍結管1内を流れ、その際には鋼製セグメント40におけるスキンプレート41の外方に近接する地盤と熱交換を行って当該地盤を凍結する装置であって(【0035】、【0039】、認定事項s9)、
sb 鋼製セグメント40に取り付けられる3本の貼付凍結管1と(【0034】、【0035】)、
sc それぞれ、貼付凍結管1同士を連通する円管2(供給配管2A、戻り配管2B)と(認定事項s1)、
7ピースの鋼製セグメント40で構成されているリング状に接合したセグメント100において、隣り合う鋼製セグメント40同士の各々の円管2(供給配管2A、戻り配管2B)同士を連通する、当該円管2の内周に位置する配管と(認定事項s5)、
sd 円管2(供給配管及び戻り配管)を介して貼付凍結管1内を流れるように二次冷媒を供給する冷媒供給源と(【0039】)、
を有し、
se 鋼製セグメント40は、一対の主桁42及び一対のセグメント継手板43により構成される枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置されるスキンプレート41と、前記セグメント継手板43間にて前記主桁42同士を接続する複数の縦リブ44と、を有し(認定事項s3)、
sf 貼付凍結管1は、スキンプレート41における地山側と反対の側の面に、スキンプレート41に沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており(認定事項s6)、
si 一対の主桁42及び一対のセグメント継手板43により構成される枠体は、複数の板状部材によって構成され(認定事項s2)、
sj トンネルにてトンネル周方向に隣り合う鋼製セグメント40同士は、各々のセグメント継手板43が互いに接触した状態で連結されており(認定事項s7)、
sk 隣り合う鋼製セグメント40同士の各々の円管2(供給配管2A、戻り配管2B)同士を連通する、当該円管2の内周に位置する配管は、互いに接触した状態の板状部材(セグメント継手板43)を跨ぐように延びており(認定事項s8)、
sm 鋼製セグメント40におけるスキンプレート41、主桁42、セグメント継手板43で囲まれた空間には2本の縦リブ44(仕切り)が存在していて、2本の縦リブ44で仕切られた3つの空間のそれぞれにおいて、スキンプレート41に接する様にして貼付凍結管1を設置し(【0035】)、
sn 円管2(供給配管2A、戻り配管2B)は、縦リブ44を跨ぐように延びている(認定事項s4)
sh 装置(認定事項s9)。」

(2)引用例2
申立人が上記1(2)の新規性に係る特許異議申立理由の証拠として引用した特開平5−280278号公報は、上記第5の1(1)で示した引用例2である。そして、引用例2に記載されている発明は、上記第5の1(1)キで示した引用発明のとおりである。

3 当審の判断
(1)本件訂正発明と拡大先願との対比
本件訂正発明2の発明特定事項の一部は本件訂正発明1の発明特定事項と重複するから、それらをまとめて、本件訂正発明と先願発明とを対比する。

ア 発明特定事項1A、2A
先願発明の「鋼製セグメント40を」「リング状に接合」する「トンネル」は、本件訂正発明の「地中に構築される筒状のトンネル」に相当し、先願発明の「鋼製セグメント40におけるスキンプレート41の外方に近接する地盤」及び「当該地盤」は、本件訂正発明の「トンネルの周辺地盤」に相当する。
そうすると、先願発明の「当該地盤を凍結する装置」は、本件訂正発明の「地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置」に相当する。
よって、先願発明は、本件訂正発明の発明特定事項1A、2Aに相当する構成を有する。

イ 発明特定事項1B、2B
先願発明の「鋼製セグメント40」は、発明特定事項saによれば「トンネル坑内でリング状に接合」するものであるから、本件訂正発明の「前記トンネルを構成」する「セグメント」に相当し、先願発明の「鋼製セグメント40に取り付けられる」「貼付凍結管1」は、本件訂正発明の「前記トンネルを構成」する「セグメントに設けられ」る「第1冷媒流通管」に相当する。
また、先願発明の「貼付凍結管1」は、発明特定事項sfによれば「トンネル軸方向に延び」るものであるから、本件訂正発明の「トンネル軸方向に延び」る「第1冷媒流通管」に相当する。
よって、先願発明の「貼付凍結管1」は、「前記トンネルを構成」する「セグメント」「に設けられてトンネル軸方向に延び」る「第1冷媒流通管」である点で、本件訂正発明の発明特定事項1B、2Bと共通する。

ウ 発明特定事項1C、2C
先願発明の「7ピースの鋼製セグメント40で構成されているリング状に接合したセグメント100において、隣り合う鋼製セグメント40」は、本件訂正発明の「前記トンネルにて」「隣り合う前記セグメント」に相当する。
また、先願発明の「7ピースの鋼製セグメント40で構成されているリング状に接合したセグメント100において、隣り合う鋼製セグメント40同士の各々の円管2(供給配管2A、戻り配管2B)同士を連通する、当該円管2の内周に位置する配管」は、「円管2」の端部同士を連通することが明らかであるから、本件訂正発明の「前記トンネルにて」「隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管」「同士」「を連通する第2冷媒流通管」に相当する。
よって、先願発明の「配管」は、「前記トンネルにて」「隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管」「同士」「を連通する第2冷媒流通管」である点で、本件訂正発明の発明特定事項1C、2Cと共通する。

エ 発明特定事項1D、2D
先願発明の「円管2(供給配管及び戻り配管)を介して貼付凍結管1内を流れるように二次冷媒を供給する冷媒供給源」は、本件訂正発明の「前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置」に相当する。
よって、先願発明は、本件訂正発明の発明特定事項1D、2Dに相当する構成を有する。

オ 発明特定事項1E、2E
先願発明の「鋼製セグメント40」が有する「一対の主桁42及び一対のセグメント継手板43により構成される枠体」、「前記枠体の地山側を塞ぐように配置されるスキンプレート41」は、それぞれ、本件訂正発明の「枠体」、「前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレート」に相当する。
よって、先願発明は、本件訂正発明の発明特定事項1E、2Eに相当する構成を有する。

カ 発明特定事項1F、2F
上記イより、先願発明の「貼付凍結管1は、スキンプレート41における地山側と反対の側の面に、スキンプレート41に沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されて」いることは、本件訂正発明の「前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されて」いることに相当する。
よって、先願発明は、本件訂正発明の発明特定事項1F、2Fに相当する構成を有する。

キ 発明特定事項1H、2H
上記アで述べたように、先願発明の「装置」は、本件訂正発明の「地盤凍結装置」に相当する。
よって、先願発明は、本件訂正発明の発明特定事項1H、2Hに相当する構成を有する。

ク 発明特定事項2I
先願発明の「一対の主桁42及び一対のセグメント継手板43により構成される枠体は、複数の板状部材によって構成され」ることは、本件訂正発明2の「前記枠体は、複数の板状部材によって構成され」ることに相当する。
よって、先願発明は、本件訂正発明2の発明特定事項2Iに相当する構成を有する。

ケ 一致点・相違点
上記ア〜クからみて、本件訂正発明と先願発明とは、
「【請求項1】
1A 地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
1B” 前記トンネルを構成するセグメントに設けられてトンネル軸方向に延びる第1冷媒流通管と、
1C” 前記トンネルにて隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管同士を連通する第2冷媒流通管と、
1D 前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
1E 前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
1F 前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されている、
1H 地盤凍結装置。

【請求項2】
2A 地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
2B” 前記トンネルを構成するセグメントに設けられてトンネル軸方向に延びる第1冷媒流通管と、
2C” 前記トンネルにて隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管同士を連通する第2冷媒流通管と、
2D 前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
2E 前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
2F 前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
2I 前記枠体は、複数の板状部材によって構成される、
2H 地盤凍結装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点10>
本件訂正発明と先願発明とは、トンネルを構成するセグメントに設けられてトンネル軸方向に延びる第1冷媒流通管と、トンネルにて隣り合うセグメント同士の各々の第1冷媒流通管同士を連通する第2冷媒流通管と、を有する点で共通するものの、第1冷媒流通管及び第2冷媒流通管の具体的配置並びに具体的接続構造に関し、
本件訂正発明では、「トンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と」を有し、「前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並」ぶのに対し(発明特定事項1B、1C、1L、2B、2C、2L)、
先願発明では、そのように構成されていない点。

<相違点11>
本件訂正発明では、「前記地盤凍結装置」が「前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する」のに対し(発明特定事項1G、2G)、
先願発明では、「装置」がそのように構成されていない点。

<相違点12>
本件訂正発明2では、「前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士は、各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されており、前記第2冷媒流通管は、前記互いに接触した状態の前記板状部材を跨ぐように延びて」いるのに対し(発明特定事項2J、2K)、
先願発明では、そのように構成されていない点。

(2)拡大先願について
本件訂正発明と先願発明とは、上記(1)ケで示した相違点10〜相違点12で相違する。
そして、これらの相違点のうち相違点10は、上記第5の3(1)で検討した相違点2と同様の相違点であるから、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
したがって、本件訂正発明は先願発明と同一であるとは認められない。

(3)新規性について
本件訂正発明1と引用発明とは、上記第5の2(5)で示した相違点1〜6で相違する。
したがって、本件訂正発明1は引用発明と同一であるとは認められない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由(決定の予告)で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3及び4に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により請求項3及び4が削除されたことにより、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、
前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と、
前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並び、
前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
前記地盤凍結装置は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する、地盤凍結装置。
【請求項2】
地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤を凍結する地盤凍結装置であって、
前記トンネルを構成してトンネル軸方向に並ぶ3つのセグメントの各々に設けられてトンネル軸方向に延び、かつ、トンネル軸方向に直列に並ぶ第1冷媒流通管と、
前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士の各々の前記第1冷媒流通管の端部同士であってトンネル軸方向に隣り合う前記端部同士を連通する第2冷媒流通管と、
前記第1冷媒流通管内及び前記第2冷媒流通管内に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
を有し、
前記3つの前記セグメントに関して、トンネル軸方向に、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、前記第1冷媒流通管、前記第2冷媒流通管、及び、前記第1冷媒流通管の順に並び、
前記セグメントは、枠体と、前記枠体の地山側を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレートと、を有し、
前記第1冷媒流通管は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面に、前記スキンプレートに沿ってトンネル軸方向に延び接触するように配置されており、
前記枠体は、複数の板状部材によって構成され、
前記トンネルにてトンネル軸方向に隣り合う前記セグメント同士は、各々の前記板状部材が互いに接触した状態で連結されており、
前記第2冷媒流通管は、前記互いに接触した状態の前記板状部材を跨ぐように延びており、
前記地盤凍結装置は、前記スキンプレートにおける地山側と反対の側の面と前記第1冷媒流通管との間に介装された充填材を更に有する、地盤凍結装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-08-31 
出願番号 P2020-131842
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (E21D)
P 1 651・ 113- YAA (E21D)
P 1 651・ 121- YAA (E21D)
P 1 651・ 161- YAA (E21D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 有家 秀郎
太田 恒明
登録日 2022-01-18 
登録番号 7011688
権利者 ケミカルグラウト株式会社 鹿島建設株式会社
発明の名称 地盤凍結装置  
代理人 徳本 浩一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 森本 聡二  
代理人 田中 祐  
代理人 徳本 浩一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 松島 鉄男  
代理人 関谷 充司  
代理人 森本 聡二  
代理人 中村 綾子  
代理人 田中 祐  
代理人 奥山 尚一  
代理人 田中 祐  
代理人 西山 春之  
代理人 西山 春之  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 森本 聡二  
代理人 中村 綾子  
代理人 森本 聡二  
代理人 有原 幸一  
代理人 関谷 充司  
代理人 中村 綾子  
代理人 関谷 充司  
代理人 小川 護晃  
代理人 西山 春之  
代理人 徳本 浩一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
代理人 徳本 浩一  
代理人 有原 幸一  
代理人 関谷 充司  
代理人 小川 護晃  
代理人 有原 幸一  
代理人 西山 春之  
代理人 奥山 尚一  
代理人 中村 綾子  
代理人 小川 護晃  
代理人 田中 祐  
代理人 小川 護晃  

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