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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F23D
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 F23D
管理番号 1404532
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-04 
確定日 2023-12-05 
事件の表示 特願2020−568185「固体燃料バーナ」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月30日国際公開、WO2020/153404、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願は、2020年(令和2年)1月22日(優先権主張 平成31年1月25日)を国際出願日とする出願であって、令和4年7月1日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年10月17日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。
これに対し、令和5年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がされ、同年4月17日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正の適否について
1. 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
固体燃料とその搬送気体の混合流体が流れ、火炉に向かって開口する燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの外周側に配置され、燃焼用気体を噴出させる燃焼用ガスノズルと、
前記燃料ノズルの中心側に設けられ、前記燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を前記混合流体に付与する燃料濃縮器とを備えた固体燃料バーナであって、
前記燃料濃縮器は、前記混合流体に旋回を与える複数の羽根を有し、各々の羽根が燃料ノズルの内側に全面固定されることなく前記燃料ノズルの内面から離れて配置されるものであって、前記混合流体の流れ方向の上流側に配置される第1の旋回器と、前記第1の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に配置され、前記複数の羽根の旋回方向が前記第1の旋回器とは逆方向である第2の旋回器と、を有し、
前記第2の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に、前記燃料ノズルの流路を流路断面における内側と外側とに区画する流路区画部材が設けられ、
前記第1の旋回器の外径は、前記流路区画部材の上流端の内径以下であり、
前記第1の旋回器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給し、
前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であり、
前記第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きいことを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項2】
前記燃料ノズルの流路は、内径が、前記第1の旋回器の上流側では同一または単調増加の上流部と、前記上流部の下流側に連通して内径が徐々に拡大する拡管部と、前記拡管部の下流側に連通して内径が一定の下流部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の固体燃料バーナ。
【請求項3】
前記第1の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の上流部の範囲に位置し、
前記第2の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の下流部の範囲に位置することを特徴とする請求項2に記載の固体燃料バーナ。
【請求項4】
前記各旋回器の外径は、前記燃料ノズルの流路の上流部の内径未満である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の固体燃料バーナ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の記載は、令和4年9月1日に手続補正した特許請求の範囲に記載された事項によって特定される次のとおりである。

「【請求項1】
固体燃料とその搬送気体の混合流体が流れ、火炉に向かって開口する燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの外周側に配置され、燃焼用気体を噴出させる燃焼用ガスノズルと、
前記燃料ノズルの中心側に設けられ、前記燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を前記混合流体に付与する燃料濃縮器とを備えた固体燃料バーナであって、
前記燃料濃縮器は、前記混合流体に旋回を与える複数の羽根を有し、各々の羽根が燃料ノズルの内側に全面固定されることなく前記燃料ノズルの内面から離れて配置されるものであって、前記混合流体の流れ方向の上流側に配置される第1の旋回器と、前記第1の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に配置され、前記複数の羽根の旋回方向が前記第1の旋回器とは逆方向である第2の旋回器と、を有し、
前記第2の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に、前記燃料ノズルの流路を流路断面における内側と外側とに区画する流路区画部材が設けられ、
前記第1の旋回器および前記第2の旋回器の外径は、前記流路区画部材の上流端の内径以下であり、
前記第1の旋回器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給することを特徴とする固体燃料バーナ。
【請求項2】
前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であることを特徴とする請求項1に記載の固体燃料バーナ。
【請求項3】
前記第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の固体燃料バーナ。
【請求項4】
前記燃料ノズルの流路は、内径が、前記第1の旋回器の上流側では同一または単調増加の上流部と、前記上流部の下流側に連通して内径が徐々に拡大する拡管部と、前記拡管部の下流側に連通して内径が一定の下流部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の固体燃料バーナ。
【請求項5】
前記第1の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の上流部の範囲に位置し、
前記第2の旋回器の少なくとも一部が前記燃料ノズルの流路の下流部の範囲に位置することを特徴とする請求項4に記載の固体燃料バーナ。
【請求項6】
前記各旋回器の外径は、前記燃料ノズルの流路の上流部の内径未満である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の固体燃料バーナ。」

2.本件補正の目的及び新規事項の追加の有無について
(1)本件補正後の請求項1について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、流路区画部材について、「上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であり」との事項を加えることにより、具体的な形状を限定し、かつ、本件補正前の請求項1に記載された、第2の旋回器について、本件補正後の請求項1において、「第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きい」との事項を加えることにより、具体的な大きさを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正後の請求項1において、「前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であり、」との発明特定事項を追加する補正は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)における、請求項3、請求項8、段落【0045】及び段落【0052】の記載に基づくものであり、「前記第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きい」との発明特定事項を追加する補正は、当初明細書等における、請求項4、請求項8、段落【0054】及び段落【0055】の記載に基づくものであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(2)本件補正後の請求項2〜4について
本件補正後の請求項2〜4は、上記(1)の請求項1の補正に伴い、発明特定事項が重複する補正前の請求項2、3を削除して、補正前の請求項4〜6の項番を繰り上げるととともに、引用先の請求項を補正するものである。
この補正は、上記(1)で述べたのと同様に、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

(3)以上のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

3.独立特許要件について
3−1 本願発明について
本願の請求項1〜4に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される、上記第2の1.(1)のとおりである。

3−2 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献等一覧
引用文献1:国際公開第2018/207559号
引用文献2:特許第6231047号公報(拒絶査定時の引用文献3)
引用文献3:特開2003−240227号公報(拒絶査定時の引用文献4)
引用文献4:特開平9−112820号公報(拒絶査定時の引用文献5)

(2)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審が付したものである(以下同様。)。

ア 「【0026】
図2は実施例1の固体燃料バーナの説明図である。
図3は図2の矢印III方向から見た図である。
図2、図3において、実施例1の固体燃料バーナ7は、搬送気体が流れる燃料ノズル21を有する。燃料ノズル21の下流端の開口は、ボイラ6の火炉22の壁面(火炉壁、水管壁)23に設けられている。燃料ノズル21は、燃料配管8が上流端に接続される。燃料ノズル21は中空の筒状に形成されており、燃料ノズル21の内部には、固体燃料(粉砕されたバイオマス燃料)と搬送気体とが流れる流路24が形成されている。」

イ 「【0027】
燃料ノズル21の外周には、燃焼用空気を火炉22に噴出する内側燃焼用ガスノズル(2次燃焼用ガスノズル)26が設置されている。また、内側燃焼用ガスノズル26の外周側には、外側燃焼用ガスノズル(3次燃焼用ガスノズル)27が設置されている。各燃焼用ガスノズル26,27は、ウインドボックス(風箱)28からの空気を火炉22内に向けて噴出する。実施例1では、内側燃焼用ガスノズル26の下流端には、燃料ノズル21の中心に対して径方向外側に傾斜(下流側に行くに連れて径が拡大)するガイドベーン26aが形成されている。また、外側燃焼用ガスノズル27の下流部には、軸方向に沿ったスロート部27aと、ガイドベーン26aに平行する拡大部27bとが形成されている。したがって、各燃焼用ガスノズル26,27から噴出された燃焼用空気は、軸方向の中心から拡散するように噴出される。」

ウ 「【0029】
図2において、燃料ノズル21の内壁面には、ベンチュリ33が設置されている。ベンチュリ33は、上流側の径縮小部33aと、径縮小部33aの下流側に連続する最小径部33bと、最小径部33bの下流側に連続する径拡大部33cとを有する。径縮小部33aは、燃料ノズル21の内壁面に対して、下流側に行くに連れて流路断面の径方向中心側に傾斜して形成されている。したがって、径縮小部33aの上流端V1から下流端V2に向かうに連れて、流路24の内径は縮小する。また、最小径部33bは、燃料ノズル21の軸方向に平行して形成されている。径拡大部33cは、下流側に行くに連れて径方向外側に傾斜して形成されている。したがって、径拡大部33cの上流端V3から下流端V4に向かうに連れて、流路24の内径は拡大する。
したがって、実施例1のベンチュリ33では、燃料ノズル21に供給された燃料と搬送気体との混合流体が、径縮小部33aを通過する際に、径方向の内側に絞られる。したがって、燃料ノズル21の内壁面近傍に偏った燃料を中心側に移動させることが可能である。」

エ 「【0030】
ベンチュリ33の下流側には、燃料濃縮器34が点火バーナ32の外表面に設置されている。燃料濃縮器34は、上流側の径拡大部34aと、径拡大部34aの下流側に連続する最大径部34bと、最大径部34bの下流側に連続する径縮小部34cとを有する。径拡大部34aは、点火バーナ32の外面に対して、下流側に行くに連れて流路断面の径方向外側に傾斜して形成されている。したがって、径拡大部34aの上流端C1から下流端C2に向かうに連れて、径拡大部34aの外径が拡大する。また、最大径部34bは、燃料ノズル21の軸方向に平行して形成されている。径縮小部34cは、下流側に行くに連れて径方向中心側に傾斜して形成されている。したがって、径縮小部34cの上流端C3から下流端C4に向かうに連れて、径縮小部34cの外径は縮小する。
したがって、実施例1の燃料濃縮器34では、燃料と搬送気体との混合流体に、径拡大部34aを通過する際に、径方向の外側に向かう速度成分が付与される。よって、燃料が燃料ノズル21の内壁面に向かって濃縮される。」

オ 「【0031】
図4は実施例1の流路区画部材の説明図であり、図4(A)は側面図、図4(B)は図4(A)のIVB−IVB線断面図である。
図2、図3において、燃料濃縮器34の下流側には、流路区画部材36が配置されている。流路区画部材36は、支持部材37により燃料ノズル21の内面に支持されている。実施例1の流路区画部材36は、上流端S1から下流端S2に向かうに連れて内径が縮小する部分円錐状(コニカル形状)に形成[鈴3]されている。したがって、流路区画部材36は、流路24を外側流路24aと内側流路24bとに区画する。
図3、図4において、支持部材37は、径方向に沿って延びる板状に形成されている。支持部材37は、周方向に対して間隔をあけて複数配置されている。図3において、実施例1では、支持部材37は、保炎器31の内周側突起31aどうしの間に対応する位置に配置されている。」

カ 「【0032】
図2において、実施例1の固体燃料バーナ7では、流路区画部材36の上流端S1が、燃料濃縮器34の径拡大部34aの延長線41が燃料ノズル21の内壁に到達する位置Rpよりも下流側に設定されている。したがって、燃料濃縮器34の径拡大部34aで燃料ノズル21の内周壁に向かって濃縮された燃料のほとんどが、外側流路24aに供給される。よって、燃料濃縮器34により径方向の外側に向けられた粒子の流れを流路区画部材36が妨げにくいと共に、外側流路24aにおいて径方向外側に向かう燃料が内周壁で反射されて再び中心軸側に向かおうとしても、流路区画部材36で阻止される。よって、燃料濃縮器34で濃縮された燃料が、流路断面で均一に再分散されることが抑制される。」

キ 「図2



ク 「図3



ケ 【0030】の「ベンチュリ33の下流側には、燃料濃縮器34が点火バーナ32の外表面に設置されている。」との記載と図2、3から、燃料濃縮器34は、燃料ノズル21の中心側に設けられていると認められる。

コ 【0031】の「流路区画部材36は、上流端S1から下流端S2に向かうに連れて内径が縮小する部分円錐状(コニカル形状)に形成されている」との記載と、図2から、流路区画部材36は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であると認められる。

以上の事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「固体燃料とその搬送気体の混合流体が供給され、開口が、ボイラ6の火炉22の壁面23に設けられた燃料ノズル21と、
燃料ノズル21の外周に設置され、燃焼用空気を火炉22に噴出する内側燃焼用ガスノズル26と外側燃焼用ガスノズル27と、
燃料ノズル21の中心側に設けられ径方向の外側に向かう速度成分を混合流体に付与する燃料濃縮器34とを備えた固体燃料バーナ7であって、
燃料濃縮器34は、上流側の径拡大部34aと、径拡大部34aの下流側に連続する最大径部34bと、最大径部34bの下流側に連続する径縮小部34cとを有し、
燃料濃縮器34の下流側に、燃料ノズル21の流路24を外側流路24aと内側流路24bとに区画する流路区画部材36が配置され、
燃料濃縮器34の径拡大部34aで燃料ノズル21の内周壁に向かって濃縮された固体燃料を、流路区画部材36の外側に供給し、
流路区画部材36は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状である固体燃料バーナ7。」

(3)引用文献2に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、石炭やバイオマス等を燃料とする固体燃料バーナに関する。」

イ 「【0043】
図1には本発明の一実施例による固体燃料バーナの一部断面を示した側面図(概略図)を示す。
火炉13の壁面スロート13aに設けられた固体燃料バーナ1は、90°の曲がり部を持つ曲管部5と曲管部5に連続する直管部2とを有し、微粉の燃料と搬送気体との混合流体(固気二相流)が流れる断面円形の燃料供給用のノズル9を備え、直管部2の中心軸上には油バーナ8が設けられている。」

ウ 「【0046】
更に、一次空気ノズル9の周囲には二次空気ノズル3と三次空気ノズル4が同心円状に配置され、火炉13に向かって二次空気と三次空気が供給される。これらの空気流は外周方向に広がるように噴出される。更に、火炉13側に向かって末広がり状(円錐状)の保炎器(保炎リング)10が、一次空気ノズル9の出口周囲であって且つ一次空気ノズル9と二次空気ノズル3との間に設けられている。尚、保炎器10を設置しないバーナも本実施形態に含まれる。」

エ 「【0049】
そこで、混合流体に旋回を与えることで、その遠心効果により保炎器10近傍での燃料濃度を増加させることが可能となる。そのためには、一次空気ノズル9の中心部(円筒状のノズル断面の中心軸側)の油バーナ8周辺を流れる微粉炭を外周側(径方向外側、内壁9a近傍)に移動させることが重要である。一方、一次空気ノズル9の内壁9a近傍を流れる微粉炭は移動させる必要はない。」

オ 「【0050】
そこで、曲管部5直後の直管部2の入り口部であって、一次空気ノズル9の中心部に、第一旋回器(第一の旋回手段)6を設け、一次空気ノズル9の中心部を流れる微粉炭を外周側に移動させた。第一旋回器6は、油バーナ8の外周に取り付けた複数の板状の旋回羽根6aから構成した。また、曲管部5を通過直後の領域では、一次空気ノズル9の内壁9a近傍を流れる混合流体には旋回を与える必要が無いので、旋回羽根6aの外周端部は内壁9aから離して設置した。」

カ 「【0051】
一次空気ノズル9の出口で混合流体に強い旋回がかかっていると、火炉13内で微粉炭粒子が固体燃料バーナ1の外周側へ飛び散ることで、火炎の安定性が低下し、NOx排出量が増加することは上述の通りである。従って、混合流体が火炉13内に噴出される前に旋回強度を弱める必要がある。本実施形態では、第一旋回器6の下流側に第二旋回器(第二の旋回手段)7として、第一旋回器6と同様に、複数の板状の旋回羽根7aを油バーナ8の外周に取り付けた。これらの旋回器6、7は固定式のものとした。」

キ 「【0056】
一方、中心軸側を流れる混合流体は、第一旋回器6の旋回羽根6aにより、その下流側では、円筒状のノズル断面の半径方向外側に向かって拡がり、内壁9a側へ微粉炭が濃縮するような流れとなる。
このため、内壁9a近傍を流れる混合流体は、上記二つの流れが重畳する結果、旋回による多少の撹拌効果を受けるものの、周方向に生じた濃度分布がノズル出口に向かって持続されつつ、更に微粉炭濃度が高まってゆく傾向を示す。」

ク 「【0057】
ここで、第二旋回器7の下流側では旋回羽根7aの作用により、円筒状のノズル断面全体として見ると、旋回流が弱められる(又は消失する)が、ノズル内壁9a近傍を流れる混合流体の微粉炭濃度は微粉炭粒子の流れ方向に働く慣性力により、ノズル出口部(端縁部)まで持続する傾向を示す。」

ケ 「【0076】
更に、一次空気ノズル9出口に保炎器10を設けることで、着火性及び保炎性がより良好となり、火炎の安定性向上及びNOx排出量の抑制効果がより一層高くなる。また、各旋回羽根6a、7aを油バーナ8の外周に取り付けるという簡素な構成で、これら第一旋回器6と第二旋回器7を容易に形成できる。また、旋回羽根6a、7aを内壁9aから離して取り付けることで、火炎の安定性の向上効果も高まり、安定燃焼が可能となる。更に、旋回羽根6a、7aの設置や取り外しが容易となり、メンテナンス性が向上する。」

以上の事項から、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

<引用文献2記載事項>
「固定燃料バーナ1において、燃料供給用のノズル9は、燃料供給用のノズル9内に流れる混合流体に旋回を与える複数の旋回羽根6a、7aを有し、各々の羽根がノズル9の内側に全面固定されることなくノズル9の内面から離れて配置され、混合流体の流れ方向の上流側に配置される第1旋回器6と、第1の旋回器6に対して混合流体の流れ方向の下流側に配置され、複数の羽根7aの旋回方向が第1の旋回器とは逆方向である第2旋回器7とにより燃料を濃縮すること。」

(4)引用文献3に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体燃料を気流搬送して燃焼する固体燃料バーナに係り、特に、木材,ピート,石炭などの水分および揮発分の多い燃料を粉砕し、気流搬送し、浮遊燃焼させるのに適した固体燃料バーナ,固体燃料バーナの燃焼方法,固体燃料バーナを備えた燃焼装置,燃焼装置の運用方法に関する。」

イ 「【0069】
燃料ノズル11内には、上流側から流路縮小部材(ベンチュリ)32,障害物(濃縮器)33,分配器35を設置してある。また、追加空気ノズル12は、燃料ノズル11の外側隔壁22に噴出する空気が燃料ノズル11を流れる混合流体と略垂直となる向きに設けられる。したがって、バーナ軸に対して垂直方向から見たときに追加空気ノズル12の出口は、分配器35と重なる位置にある。」

ウ 「【0109】
図6に示す固体燃料バーナの場合、分配器35の外側流路37では、流路断面積がテーパ形状により広がるため、流速が低下し、追加空気ノズル12から噴出した追加空気21が、分配器35に到達しやすくなる。また、燃料ノズル11出口外周部での燃料とその搬送気体との流れ16の流速が下がるので、燃料粒子が固体燃料バーナ近くで着火しやすくなる。このため、火炎20を固体燃料バーナの近くから形成しやすくなる。」

エ 「図6



(5)引用文献4に記載された事項
原査定で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4には、次の事項が記載されている。

ア 「【0013】
【発明の実施形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る微粉炭バーナを示す図、図2は第2の実施形態に係る微粉炭バーナを示す図である。各図で、20は濃縮流希薄流分離管(以下、単に分離管という。)であり、希薄流C0 と濃縮流C1 とを分離する。200は分離管20の先端部分において中心側に狭められたテーパ部、201は希薄流C0 が流れる希薄流流路、202は濃縮流C1 が流れる濃縮流流路を示す。21は外周保炎リング、22は分離管20の出口先端に設置された内部保炎器、23は着火用の重油ノズルである。24は濃縮流流路202に設けられたベンチュリ型抵抗体である。25、26はそれぞれ二次空気A2 、三次空気A3に旋回を与えるスワラである。なお、各図で、内部保炎器23の右側部分がボイラ火炉1の内部となる。」

イ 「【0022】
図5および図6は第3および第4の実施形態の微粉炭バーナを示す図である。これらの図で、28は内部濃縮器、Fは重油ノズル23を通る中心線を示す。これら各実施形態では、微粉炭は固気二相流体(A+C)として供給され、内部濃縮器28を経てその後流の分離管20で希薄流C0 と濃縮流C1 に分離される。図5にはベンチュリ型抵抗体24を備えたものが示され、図6にはベンチュリ型抵抗体を備えていないものが示されている。」

ウ 「図5


3−3 当審の判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを、その技術的意義を考慮して対比する。

引用発明の「固体燃料」は、本願発明1の「固体燃料」に相当し、以下同様に、「搬送気体」は「搬送気体」に、「混合流体」は「混合流体」に、「供給され」は「流れ」に、「火炉22」は「火炉」に、「燃料ノズル21」は「燃料ノズル」に、「外周」は「外周側」に、「設置され」は「配置され」に、「燃焼用空気」は「燃焼用気体」に、「噴出する」は「噴出させる」に、「内側燃焼用ガスノズル26と外側燃焼用ガスノズル27」は「燃焼用ガスノズル」に、「径方向の外側に向かう速度成分」は「中心から離れる向きの速度成分」に、「燃料濃縮器34」は「燃料濃縮器」に、「固体燃料バーナ7」は「固体燃料バーナ」に、「流路区画部材36」は「流路区画部材」に、「配置され」は「設けられ」に、それぞれ相当する。

引用発明の「固体燃料とその搬送気体の混合流体が供給され、開口が、ボイラ6の火炉22の壁面23に設けられた燃料ノズル21」は、「開口が、ボイラ6の火炉22の壁面23に設けられ」ていることが「火炉に向かって開口する」ことといえるから、本願発明1の「固体燃料とその搬送気体の混合流体が流れ、火炉に向かって開口する燃料ノズル」に相当する。
引用発明の「燃料ノズル21の外周に設置され、燃焼用空気を火炉22に噴出する内側燃焼用ガスノズル26と外側燃焼用ガスノズル27」は、本願発明1の「前記燃料ノズルの外周側に配置され、燃焼用気体を噴出させる燃焼用ガスノズル」に相当する。
引用発明の「燃料ノズル21の中心側に設けられ径方向の外側に向かう速度成分を混合流体に付与する燃料濃縮器34とを備えた固体燃料バーナ7」は、本願発明1の「前記燃料ノズルの中心側に設けられ、前記燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を前記混合流体に付与する燃料濃縮器とを備えた固体燃料バーナ」に相当する。
引用発明の「燃料ノズル21の流路24を外側流路24aと内側流路24bとに区画する流路区画部材36が配置され」ることは、本願発明1の「前記燃料ノズルの流路を流路断面における内側と外側とに区画する流路区画部材が設けられ」ることに相当する。
引用発明の「燃料濃縮器34の径拡大部34aで燃料ノズル21の内周壁に向かって濃縮された固体燃料を、流路区画部材36の外側に供給し、」と、本願発明1の「前記第1の旋回器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給し、」とは、「前記燃料濃縮器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給し、」という限りにおいて一致している。
引用発明の「流路区画部材36は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状である」ことは、本願発明1の「前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状であ」ることに相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

<一致点>
「固体燃料とその搬送気体の混合流体が流れ、火炉に向かって開口する燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの外周側に配置され、燃焼用気体を噴出させる燃焼用ガスノズルと、
前記燃料ノズルの中心側に設けられ、前記燃料ノズルの中心から離れる向きの速度成分を前記混合流体に付与する燃料濃縮器とを備えた固体燃料バーナであって、
前記燃料ノズルの流路を流路断面における内側と外側とに区画する流路区画部材が設けられ、
前記燃料濃縮器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給し、
前記流路区画部材は、上流端の内径が下流端の内径よりも大きい形状である、
固体燃料バーナ。」

<相違点1>
本願発明1は、「前記燃料濃縮器は、前記混合流体に旋回を与える複数の羽根を有し、各々の羽根が燃料ノズルの内側に全面固定されることなく前記燃料ノズルの内面から離れて配置されるものであって、前記混合流体の流れ方向の上流側に配置される第1の旋回器と、前記第1の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側に配置され、前記複数の羽根の旋回方向が前記第1の旋回器とは逆方向である第2の旋回器と、を有」するのに対して、引用発明は、燃料濃縮器34は、上流側の径拡大部34aと、径拡大部34aの下流側に連続する最大径部34bと、最大径部34bの下流側に連続する径縮小部34cとを有するものであって、第1の旋回器と第2の旋回器とを有しない点。

<相違点2>
本願発明1は、流路区画部材が「前記第2の旋回器に対して前記混合流体の流れ方向の下流側」に設けられるのに対して、引用発明は、「第2の旋回器」を有さず、「燃料濃縮器34の下流側」に流路区画部材が設けられている点。

<相違点3>
本願発明1は、「前記第1の旋回器の外径は、前記流路区画部材の上流端の内径以下」であるのに対して、引用発明は、「第1の旋回器」を有さず、第1の旋回器の外径と流路区画部材の上流端の内径との関係が不明な点。

<相違点4>
「燃料濃縮器」に関して、本願発明1は、「前記第1の旋回器で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給」するに対して、引用発明は、「第1の旋回器」を有さず、「燃料濃縮器の径拡大部で前記燃料ノズルの内周壁に向かって濃縮された前記固体燃料を、前記流路区画部材の外側に供給」する点。

<相違点5>
本願発明1は、「前記第2の旋回器の外径が、前記流路区画部材の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きい」のに対して、「第2の旋回器」を有さず、第2の旋回器の外径と流路区画部材の上流端、下流端の内径との関係が不明な点。

イ 当審の判断
相違点1から検討する。

引用発明と引用文献2記載事項とは、燃料濃縮器を有するバイオマス等を燃料とする固体燃料バーナという同一の技術分野に属し、引用発明の「燃料濃縮器」と引用文献2記載事項の「混合流体に旋回を与える複数の旋回羽根6a、7a」とは、燃料ノズルの内壁面に向かって燃料を濃縮するという共通の機能を有するから、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせる動機付けが存在する。
そうすると、引用発明の「燃料濃縮器」に引用文献2記載事項の「混合流体に旋回を与える複数の旋回羽根6a、7a」を適用し、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

事案に鑑みて、次に、相違点3、5について検討する。

引用文献3の図6から、濃縮器33の外径が、分配器35の上流端の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きいことが看取でき、引用文献4の図5から、内部濃縮器28の外径が、分離管20の内径よりも小さく、下流端の内径よりも大きいことが看取できるとしても、引用文献3の濃縮器33、引用文献4の内部濃縮器28は、いずれも、第1旋回器と第2旋回器を有するものではない。
よって、上記相違点1についての検討において述べたように、引用発明の燃料濃縮器に引用文献2に記載の発明を適用し、燃料濃縮器として第1の旋回器と第2の旋回器を有するものを採用することは当業者であれば容易に想到し得たとしても、第1の旋回器と第2の旋回器の外径と流路区画部材の内径との関係を、上記相違点3、5に係る本願発明1の発明特定事項のように構成することまでは、当業者が容易に想到できたとはいえない。

してみると、相違点2、4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項並びに引用文献3及び引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明ということができる。

(2)本願発明2〜4について
本願の特許請求の範囲における請求項2〜4は、請求項1の記載を他の記載と置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2〜4は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2〜4は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載事項並びに引用文献3及び引用文献4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明し得たということはできない。

4.小括
以上のとおり、本願発明1〜4は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するから、本件補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

第3 原査定について
1.原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

この出願の請求項1〜4に係る発明は、上記第2の3.3−2の引用文献1〜4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.原査定についての当審の判断
本願発明1〜4は、上記第2の3.3−3で論じたとおり、当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献1〜4に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2023-11-20 
出願番号 P2020-568185
審決分類 P 1 8・ 575- WY (F23D)
P 1 8・ 121- WY (F23D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 鈴木 充
特許庁審判官 村山 美保
間中 耕治
発明の名称 固体燃料バーナ  
代理人 藤田 考晴  
代理人 川上 美紀  
代理人 長田 大輔  

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