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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1404556
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-13 
確定日 2023-11-14 
事件の表示 特願2021−127902「ワイヤハーネス」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月16日出願公開、特開2021−192367、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月24日(優先権主張 平成28年5月19日)を国際出願日とする特願2018−518183号の一部を令和3年8月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 4月28日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年10月 7日付け:拒絶査定
令和5年 1月13日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年10月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1−5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開昭64−6307号公報

第3 本願発明
本願請求項1−4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明4」という。)は、令和5年1月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1−4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
導体の表面に絶縁層が被覆されている複数の絶縁電線が封止されているワイヤハーネスであって、
前記絶縁電線は、前記絶縁層が被覆されておらず前記導体が露出している露出部を端部に有し、前記露出部は、互いに接合しており、
少なくとも前記露出部は、射出成形物により封止されており、前記露出部の末端は前記射出成形物により直接、封止されており、
前記射出成形物の軸方向の一端部であって前記露出部の反対側には、前記複数の絶縁電線が存在しており、
前記射出成形物の前記軸方向の前記一端部とは反対側の他端部には絶縁電線が存在しておらず、
前記一端部から前記射出成形物の軸方向長さの1/3離れた位置(以下、1/3位置という)よりも他端部側に前記露出部が存在し、
前記一端部における前記軸方向に垂直な第1の断面での前記複数の絶縁電線の最外接線は、
前記1/3位置における前記軸方向に垂直な第2の断面での前記複数の絶縁電線の最外接線よりも長く、
前記1/3位置よりも他端部側の前記射出成形物の表面は露出していることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1の断面における前記複数の絶縁電線のうち少なくとも一部の絶縁電線は、互いに接触していない請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第1の断面における前記複数の絶縁電線の合計面積率は20面積%以上、90面積%以下である請求項1または2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第1の断面における前記複数の絶縁電線の最外接線で囲まれた領域に対する前記複数の絶縁電線の合計面積率は50面積%以上、90面積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のワイヤハーネス。」

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)「〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、自動車用のワイヤ・ハーネスにおける電線の接続部は、配線が複雑化するほど多くなるので、導体接続部に対する手作業によって絶縁テープを被覆する方法は、作業の能率がきわめて悪く、作業者の熟練の度合によって絶縁性の良否が左右される。
しかも、絶縁テープによる導体接続部の被覆方法は絶縁性が必ずしも良好でないと共に、絶縁テープ自体の耐熱性が充分でないので、高温かつ水とも接触し易い箇所での使用は信頼性の点で多くの問題を有し、かつこの程度の絶縁被覆では耐用年数が充分でないことが多い。
それ故、かゝる被覆方法によって絶縁被覆された導体被覆部を有するワイヤ・ハーネスを使用する場合には、高温部や水との接触を避けるよう電気配線の設計を行うことを余儀なくされる結果、電線の使用量が増大すると共に、ワイヤ・ハーネスの簡易化・軽量化を図ることが困難で、経済的にも好ましくない。
また、内部に撥水性グリス等を封入する絶縁テープによる絶縁被覆方法は、グリス封入が不完全である場合があるので、必ずしも信頼性がなく、かつ前記方法と同様な問題点もある。
さらに、導体接続部に対する塩化ビニル樹脂フィルムの加熱溶融方法は、塩化ビニル樹脂加熱時の耐熱性に起因する加熱温度の制限から、溶融樹脂の流動性不足を惹起し易く、このため導体接続部の間隙を完全に密封することが困難となる。
また、導体接続部に対する一液硬化型の樹脂によるコーティング方法は、コーティングした樹脂の硬化に時間がかゝる等の問題があると共に、耐熱性、耐久性の点でも信頼性に乏しいなどワイヤ・ハーネスの使用上多くの問題がある。」(2ページ左上欄4行−右上欄下から4行)

(2)「【図2】



(3)「具体的には、例えば第2図で略示した上下一対の金型を使用して注型成形によって絶縁接続部を形成するものである。」(2ページ右下欄4−6行)

(4)「まず、接続せんとする絶縁電線3,4,5のそれぞれの一端部の絶縁被覆を剥離して導体を露出せしめ、露出した各導体相互を適宜手段によって電気的に接続して接続部6を形成する。」(3ページ右上欄1−4行)

(5)「【図1】



(6)「金型10a,10b内のキャビティ11a,11bで形成される円筒状のキャビティに注入した熱可塑性共重合ポリエステルが冷却固化するのを待って、上型10bを上昇させて金型を開放し、セットした絶縁電線3,4および5を取り出せば、第1図に示したような絶縁電線3と絶縁電線4,5がほぼ円筒状に形成された絶縁接続部2の内部で電気的に確実に接続され、かつこの接続部6とその近傍の絶縁被覆部分が熱可塑性共重合ポリエステルによる前記絶縁接続部2によって一定厚みで強固かつ緊密に被覆されたワイヤ・ハーネス1を得ることができる。」(3ページ左下欄4−15行)

(7)ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。
上記(2)【図2】の記載、上記(3)の「具体的には、例えば第2図で略示した上下一対の金型を使用して注型成形によって絶縁接続部を形成するものである。」との記載、上記(4)の「まず、接続せんとする絶縁電線3,4,5のそれぞれの一端部の絶縁被覆を剥離して導体を露出せしめ、露出した各導体相互を適宜手段によって電気的に接続して接続部6を形成する。」との記載、上記(5)【図1】の記載及び上記(6)の「金型10a,10b内のキャビティ11a,11bで形成される円筒状のキャビティに注入した熱可塑性共重合ポリエステルが冷却固化するのを待って、上型10bを上昇させて金型を開放し、セットした絶縁電線3,4および5を取り出せば、第1図に示したような絶縁電線3と絶縁電線4,5がほぼ円筒状に形成された絶縁接続部2の内部で電気的に確実に接続され、かつこの接続部6とその近傍の絶縁被覆部分が熱可塑性共重合ポリエステルによる前記絶縁接続部2によって一定厚みで強固かつ緊密に被覆されたワイヤ・ハーネス1を得ることができる。」との記載から、特に絶縁電線4−5に着目すると、引用文献1には、「導体の表面に絶縁被覆が被覆されている絶縁電線4−5が封止されているワイヤ・ハーネス1であって、
前記絶縁電線4−5は、絶縁電線4−5のそれぞれの一端部の絶縁被覆を剥離して導体を露出せしめ、露出した各導体相互を適宜手段によって電気的に接続した接続部6を有し、
少なくとも前記接続部6は、金型10a,10b内のキャビティ11a,11bで形成される円筒状のキャビティに注入した熱可塑性共重合ポリエステルが冷却固化して形成された絶縁接続部2により封止されており、前記接続部6の末端は前記絶縁接続部2により直接、封止されており、
前記絶縁接続部2の軸方向の一端部であって前記接続部6の反対側には、絶縁電線4−5が存在しており、
前記絶縁接続部2の前記軸方向の前記一端部とは反対側の他端部には絶縁電線3が存在しており、
前記絶縁接続部2の軸方向長さの中央に前記接続部6が存在し、
前記一端部における前記軸方向に垂直な第1の断面での前記絶縁電線4−5の最外接線は、
前記一端部から前記絶縁接続部2の軸方向長さの1/3離れた位置(以下、1/3位置という)における前記軸方向に垂直な第2の断面での前記絶縁電線4−5の最外接線よりも長く、
前記1/3位置よりも他端部側の前記絶縁接続部2の表面は露出していることを特徴とするワイヤ・ハーネス1」が記載されていると認められる。

2 引用発明
上記1から、特に下線部に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「導体の表面に絶縁被覆が被覆されている絶縁電線4−5が封止されているワイヤ・ハーネス1であって、
前記絶縁電線4−5は、絶縁電線4−5のそれぞれの一端部の絶縁被覆を剥離して導体を露出せしめ、露出した各導体相互を適宜手段によって電気的に接続した接続部6を有し、
少なくとも前記接続部6は、金型10a,10b内のキャビティ11a,11bで形成される円筒状のキャビティに注入した熱可塑性共重合ポリエステルが冷却固化して形成された絶縁接続部2により封止されており、前記接続部6の末端は前記絶縁接続部2により直接、封止されており、
前記絶縁接続部2の軸方向の一端部であって前記接続部6の反対側には、絶縁電線4−5が存在しており、
前記絶縁接続部2の前記軸方向の前記一端部とは反対側の他端部には絶縁電線3が存在しており、
前記一端部から前記絶縁接続部2の軸方向長さの中央に前記接続部6が存在し、
前記一端部における前記軸方向に垂直な第1の断面での前記絶縁電線4−5の最外接線は、
前記一端部から前記絶縁接続部2の軸方向長さの1/3離れた位置(以下、1/3位置という)における前記軸方向に垂直な第2の断面での前記絶縁電線4−5の最外接線よりも長く、
前記1/3位置よりも他端部側の前記絶縁接続部2の表面は露出していることを特徴とするワイヤ・ハーネス1。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「絶縁被覆」は、絶縁の層であることは明らかであるから、本願発明1の「絶縁層」に相当する。また、引用発明の「絶縁電線4−5」及び「ワイヤ・ハーネス1」は、それぞれ、本願発明1の「複数の絶縁電線」及び「ワイヤハーネス」に相当する。
したがって、引用発明の「導体の表面に絶縁被覆が被覆されている絶縁電線4−5が封止されているワイヤ・ハーネス1」は、本願発明1の「導体の表面に絶縁層が被覆されている複数の絶縁電線が封止されているワイヤハーネス」と一致する。

イ 引用発明の「接続部6」は、「絶縁電線4−5のそれぞれの一端部の絶縁被覆を剥離して導体を露出せしめ、露出した各導体相互を適宜手段によって電気的に接続した」ものであるから、上記アを踏まえると、本願発明1の「前記絶縁層が被覆されておらず前記導体が露出している露出部」に相当し、また、互いに接合しているといえる。
したがって、引用発明の「前記絶縁電線4−5は、絶縁電線4−5のそれぞれの一端部の絶縁被覆を剥離して導体を露出せしめ、露出した各導体相互を適宜手段によって電気的に接続した接続部6を有」する構成は、本願発明1の「前記絶縁電線は、前記絶縁層が被覆されておらず前記導体が露出している露出部を端部に有し、前記露出部は、互いに接合して」いる構成と一致する。

ウ 引用発明の「絶縁接続部2」は、「金型10a,10b内のキャビティ11a,11bで形成される円筒状のキャビティに注入した熱可塑性共重合ポリエステルが冷却固化して形成され」るものであるから、本願発明1の「射出成形物」に相当する。
したがって、引用発明の「少なくとも前記接続部6は、金型10a,10b内のキャビティ11a,11bで形成される円筒状のキャビティに注入した熱可塑性共重合ポリエステルが冷却固化して形成された絶縁接続部2により封止されており、前記接続部6の末端は前記絶縁接続部2により直接、封止されて」いる構成は、上記イを踏まえると、本願発明1の「少なくとも前記露出部は、射出成形物により封止されており、前記露出部の末端は前記射出成形物により直接、封止されて」いる構成と一致する。

エ 上記ア−ウを踏まえると、引用発明の「前記絶縁接続部2の軸方向の一端部であって前記接続部6の反対側には、絶縁電線4−5が存在して」いる構成は、本願発明1の「前記射出成形物の軸方向の一端部であって前記露出部の反対側には、前記複数の絶縁電線が存在して」いる構成と一致する。

オ 上記イ−ウを踏まえると、引用発明の「前記絶縁接続部2の軸方向長さの中央に前記接続部6が存在」する構成は、本願発明1の「前記一端部から前記射出成形物の軸方向長さの1/3離れた位置(以下、1/3位置という)よりも他端部側に前記露出部が存在」する構成と、「前記一端部から前記射出成形物の軸方向長さの特定の割合で離れた位置よりも他端部側に前記露出部が存在」である点で共通するといえる。

カ 上記アを踏まえると、引用発明の「前記一端部における前記軸方向に垂直な第1の断面での前記絶縁電線4−5の最外接線は」、「前記一端部から前記絶縁接続部2の軸方向長さの1/3離れた位置(以下、1/3位置という)における前記軸方向に垂直な第2の断面での前記絶縁電線4−5の最外接線よりも長」い構成は、本願発明1の「前記一端部における前記軸方向に垂直な第1の断面での前記複数の絶縁電線の最外接線は」、「前記1/3位置における前記軸方向に垂直な第2の断面での前記複数の絶縁電線の最外接線よりも長」い構成と一致する。

キ 上記ウを踏まえると、引用発明の「前記1/3位置よりも他端部側の前記絶縁接続部2の表面は露出している」構成は、本願発明1の「前記1/3位置よりも他端部側の前記射出成形物の表面は露出している」構成と一致する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「導体の表面に絶縁層が被覆されている複数の絶縁電線が封止されているワイヤハーネスであって、
前記絶縁電線は、前記絶縁層が被覆されておらず前記導体が露出している露出部を端部に有し、前記露出部は、互いに接合しており、
少なくとも前記露出部は、射出成形物により封止されており、前記露出部の末端は前記射出成形物により直接、封止されており、
前記射出成形物の軸方向の一端部であって前記露出部の反対側には、前記複数の絶縁電線が存在しており、
前記一端部から前記射出成形物の軸方向長さの特定の割合で離れた位置よりも他端部側に前記露出部が存在し、
前記一端部における前記軸方向に垂直な第1の断面での前記複数の絶縁電線の最外接線は、
前記1/3位置における前記軸方向に垂直な第2の断面での前記複数の絶縁電線の最外接線よりも長く、
前記1/3位置よりも他端部側の前記射出成形物の表面は露出していることを特徴とするワイヤハーネス。」

(相違点1)
前記射出成形物の前記軸方向の前記一端部とは反対側の他端部には、本願発明1では、「絶縁電線が存在して」いないのに対し、引用発明では、絶縁電線3が存在している点。

(相違点2)
前記一端部から前記射出成形物の軸方向長さの特定の割合で離れた位置よりも他端部側に前記露出部が存在することにおいて、特定の割合が、本願発明1では、「1/3」であるのに対し、引用発明では、絶縁接続部2の軸方向長さの中央に接続部6が存在しているが、当該割合について明確に特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、上記相違点1に係る本願発明1の構成について記載も示唆もなく、また、このような構成が本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明から、上記相違点1に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2−4について
本願発明2−4は、本願発明1を減縮した発明である。したがって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
令和5年1月13日提出の手続補正書により、補正後の請求項1−4は、上記相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第5で説示したとおり、本願発明1−4は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-10-23 
出願番号 P2021-127902
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山澤 宏
特許庁審判官 岩間 直純
野崎 大進
発明の名称 ワイヤハーネス  
代理人 弁理士法人アスフィ国際特許事務所  

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