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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1404595
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-02-14 
確定日 2023-10-26 
事件の表示 特願2019−193482「電動移動体の制御システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月30日出願公開、特開2021− 69203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和1年10月24日の出願であって、令和4年4月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月5日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年11月10日付けで拒絶査定(謄本送達日同年11月15日)がなされ、これに対して令和5年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年4月25日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 令和5年2月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和5年2月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「回転翼またはスクリュを回転駆動させるモータ(19)と前記モータの動作を制御するインバータ装置(11)とを有する複数の電駆動システム(10)を備える電動移動体(500)の制御システム(100、100a、100b)であって、
前記インバータ装置は、スイッチング素子(13)を有するインバータ回路(12)と、キャリア周波数を用いて前記インバータ回路をPWM制御する回路制御部(15)と、を有し、
前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数は、互いに異なり、
前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数は、前記複数の電駆動システムのうちの少なくとも一部の前記電駆動システムの前記インバータ装置に接続されている配線(L)であって、該電駆動システムからの物理的距離が最も近い配線から放射される放射ノイズの周波数と異なる、
電動移動体の制御システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年7月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「回転翼またはスクリュを回転駆動させるモータ(19)と前記モータの動作を制御するインバータ装置(11)とを有する複数の電駆動システム(10)を備える電動移動体(500)の制御システム(100、100a、100b)であって、
前記インバータ装置は、スイッチング素子(13)を有するインバータ回路(12)と、キャリア周波数を用いて前記インバータ回路をPWM制御する回路制御部(15)と、を有し、
前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数は、互いに異なり、
前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数は、前記複数の電駆動システムのうちの少なくとも一部の前記電駆動システムの前記インバータ装置に接続されている配線(L)から放射される放射ノイズの周波数と異なる、
電動移動体の制御システム。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記インバータ装置に接続されている配線(L)」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1の記載事項及び引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2015−27236号公報(平成27年2月5日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

a 「【0001】
本発明による実施形態は、サーボ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーボ制御システムにおいて、インバータは、直流電流をスイッチングしてモータへ交流電流を流し、それにより、モータを駆動させる機能を有する。このようなインバータは、電流のスイッチング時にノイズ(以下、スイッチングノイズともいう)が発生する。スイッチングノイズによる悪影響を時間的に拡散させるために、スイッチングの周波数を周期的に変化させる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−099795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーボ制御システムが多軸モータを制御する場合、複数のインバータがそれぞれに対応するモータへ供給する電流をスイッチングする。この場合、スイッチングの周波数を周期的に変化させても、複数のインバータにおいてスイッチングのタイミングが重畳する場合が生じる。スイッチングのタイミングが重畳すると、複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまう。スイッチングノイズは、サーボアンプ間の通信ラインにも影響を与えるため、スイッチングノイズが増幅されると、通信異常の原因となり得る。従って、サーボ制御システムが多軸モータを制御する場合には、スイッチングノイズの増幅を抑制することが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、多軸モータを制御する場合であっても、スイッチングノイズの増幅を抑制することができるサーボ制御システムを提供することである。」

b 「【0013】
図1は、本実施形態によるサーボ制御システム1、数値制御装置NCおよび駆動機構DM1〜DM3の構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
サーボ制御システム1は、サーボ制御部としてのサーボアンプAMP1〜AMP3と、駆動部としてのモータM1〜M3とを備えている。サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3のそれぞれに対応して設けられている。サーボアンプAMP1〜AMP3は、数値制御装置NCから位置指令を受け、その位置指令に従って速度指令や電流指令を生成し、その速度指令や電流指令に基づいてモータM1〜M3を駆動させる。サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3への供給電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御によってスイッチングし、それにより、モータM1〜M3を駆動させる。モータM1〜M3は、それぞれサーボアンプAMP1〜AMP3から電力供給を受けて駆動機構DM1〜DM3を動作させる。尚、サーボアンプAMP1〜AMP3、モータM1〜M3および駆動機構DM1〜DM3のそれぞれの個数は、3つに限定されず、2つであっても、あるいは、4つ以上であってもよい。」

c 「【0020】
サーボアンプAMP1は、インバータ2と、電源3と、バッファ4と、CPU5と、発振器11とを備えている。インバータ2は、電源3とモータM1と間に設けられており、電源3からの電力をスイッチングする。インバータ2は、CPU5からバッファ4を介してパルス信号を受け、そのパルス信号(パルス幅)に従ってスイッチング動作を行う。即ち、インバータ2のスイッチングは、PWM方式で制御される。
【0021】
CPU5は、制御部6と、シーケンサ8と、記憶部10とを備えている。制御部6は、位置指令およびフィードバックされた測定値から電流指令をシーケンサ8に出力する。シーケンサ8は、記憶部10に格納された所定のキャリア周波数に基づいてパルス信号を発生する。パルス信号は、インバータ2をスイッチング制御するためにインバータ2へ送られる。」

d 「【0028】
ここで、複数のサーボアンプAMP1〜AMP3が複数のモータM1〜M3を同じキャリア周波数で制御した場合、複数のサーボアンプAMP1〜AMP3のスイッチングノイズが重畳することがある。例えば、サーボアンプAMP1〜AMP3のスイッチングノイズは、通信線CLを伝搬する信号に重畳する場合がある。この場合、3つのサーボアンプAMP1〜AMP3のスイッチングノイズが重畳するため、そのスイッチングノイズは、非常に大きく増幅されてしまう。スイッチングノイズが大きいと、サーボアンプAMP1〜AMP3は、通信線CLを伝搬する信号を誤って検出する可能性が高まり、通信異常となる。
【0029】
そこで、本実施形態によるサーボ制御システム1の複数のサーボアンプAMP1〜AMP3は、互いに異なるキャリア周波数でモータM1〜M3への供給電流をスイッチングするように構成される。
【0030】
図3(A)および図3(B)は、軸番号とキャリア周波数との対応関係の一例を示す表である。図3(A)および図3(B)を参照して、本実施形態によるキャリア周波数の設定について説明する。図3(A)および図3(B)の表では、モータは、M1〜M16の16軸設けられており、それぞれのモータM1〜M16に対するキャリア周波数Fc(kHz)が表示されている。尚、これらの表は、予め設定されており、記憶部10に格納されている。また、モータM1〜M16に対応するサーボアンプは、それぞれAMP1〜AMP16とする。
【0031】
図3(A)に示す表では、クロック周波数に基づいて生成された基準キャリア周波数Frefが5kHzである。クロック周波数は、全ての軸(モータM1〜M16、サーボアンプAMP1〜AMP16)に対して共通であり、従って、基準キャリア周波数Frefも全ての軸に対して等しく共通である。キャリア周波数Fcの可変範囲(レンジ)Frは、5.0kHz〜6.0kHzである。キャリア周波数Fcの可変幅Δfは、0.1kHzである。即ち、モータM1〜M16のキャリア周波数Fcは、可変範囲Frの間で可変幅Δfずつずれるように設定されている。例えば、図3(A)では、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHz、並びに、モータM11〜M16のキャリア周波数Fcは、5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.5kHzと設定されている。
【0032】
このようにキャリア周波数Fcを設定することによって、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、可変幅Δf(0.1kHz)ずつずれているので、モータM1〜M10のスイッチングノイズは重畳しない。また、モータM11〜M16のキャリア周波数Fcも、可変幅Δf(0.1kHz)ずつずれているので、モータM11〜M16のスイッチングノイズは重畳しない。」

e 「図1



f 「図2



g 「図3



(イ)上記記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 上記(ア)aの「サーボ制御システムにおいて、インバータは、直流電流をスイッチングしてモータへ交流電流を流し、それにより、モータを駆動させる機能を有する」(【0002】)との記載から、引用例1には、“サーボ制御システム”が、“直流電流をスイッチングしてモータへ交流電流を流してモータを駆動させる機能を有するインバータを備える”ことが記載されている。
また、上記(ア)aの「サーボ制御システムが多軸モータを制御する場合…中略…複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまう…中略…サーボ制御システムが多軸モータを制御する場合には、スイッチングノイズの増幅を抑制することが必要となる」(【0004】)との記載、及び、「本発明は、…中略…多軸モータを制御する場合であっても、スイッチングノイズの増幅を抑制することができるサーボ制御システムを提供する」(【0005】)との記載から、引用例1には、“多軸モータを制御するサーボ制御システムにおいて、複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまうことを抑制することができるサーボ制御システム”が記載されている。

b 上記(ア)bの「サーボ制御システム1は、サーボ制御部としてのサーボアンプAMP1〜AMP3と、駆動部としてのモータM1〜M3とを備えている。…中略…サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3のそれぞれに対応して設けられている…中略…サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3への供給電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御によってスイッチングし、それにより、モータM1〜M3を駆動させる」(【0014】)との記載から、引用例1には、“サーボ制御システムは、サーボ制御部としてのサーボアンプAMP1〜AMP3と、駆動部としてのモータM1〜M3とを備え、サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3のそれぞれに対応して設けられ、サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3への供給電流をPWM制御によってスイッチングし、それにより、モータM1〜M3を駆動させ”ることが記載されている。

c 上記(ア)cの「サーボアンプAMP1は、インバータ2と、電源3と、バッファ4と、CPU5と、発振器11とを備えている…(中略)…インバータ2は、CPU5からバッファ4を介してパルス信号を受け、そのパルス信号(パルス幅)に従ってスイッチング動作を行う。即ち、インバータ2のスイッチングは、PWM方式で制御される」(【0020】)との記載、及び、「CPU5は、制御部6と、シーケンサ8と、記憶部10とを備えている。シーケンサ8は、記憶部10に格納された所定のキャリア周波数に基づいてパルス信号を発生する。パルス信号は、インバータ2をスイッチング制御するためにインバータ2へ送られる。」(【0021】)との記載から、引用例1には、“サーボアンプAMP1は、インバータ2と、電源3と、バッファ4と、CPU5と、発振器11とを備え、インバータ2は、CPU5からバッファ4を介してパルス信号を受け、そのパルス信号(パルス幅)に従ってスイッチング動作を行って、インバータ2のスイッチングは、PWM方式で制御され、CPU5は、制御部6と、シーケンサ8と、記憶部10とを備えており、シーケンサ8は、記憶部10に格納された所定のキャリア周波数に基づいてパルス信号を発生し、パルス信号は、インバータ2をスイッチング制御するためにインバータ2へ送られ”ることが記載されている。

d 上記(ア)dの「複数のサーボアンプAMP1〜AMP3が複数のモータM1〜M3を同じキャリア周波数で制御した場合…中略…3つのサーボアンプAMP1〜AMP3のスイッチングノイズが重畳するため、そのスイッチングノイズは、非常に大きく増幅されてしまう」(【0028】)との記載、及び、「本実施形態によるサーボ制御システム1の複数のサーボアンプAMP1〜AMP3は、互いに異なるキャリア周波数でモータM1〜M3への供給電流をスイッチングするように構成される」(【0029】)との記載から、引用例1には、“複数のサーボアンプAMP1〜AMP3が複数のモータM1〜M3を同じキャリア周波数で制御した場合、3つのサーボアンプAMP1〜AMP3のスイッチングノイズが重畳するため、そのスイッチングノイズは、非常に大きく増幅されてしまうため、サーボ制御システム1の複数のサーボアンプAMP1〜AMP3は、互いに異なるキャリア周波数でモータM1〜M3への供給電流をスイッチングするように構成され”ることが記載されている。

e 上記(ア)dの「図3(A)および図3(B)は、軸番号とキャリア周波数との対応関係の一例を示す表である。」(【0030】)との記載、「図3(A)では、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHzと設定されている。」(【0031】)との記載、及び、「このようにキャリア周波数Fcを設定することによって、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、可変幅Δf(0.1kHz)ずつずれているので、モータM1〜M10のスイッチングノイズは重畳しない。」(【0032】)との記載、並びに上記(ア)g(図3(A))から、引用例1には、“軸番号とキャリア周波数とが対応して予め表に記憶され、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHzと設定され、このようにキャリア周波数Fcを設定することによって、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、可変幅Δf(0.1kHz)ずつずれているので、モータM1〜M10のスイッチングノイズは重畳しない”ことが記載されている。

(ウ)上記(ア)及び(イ)より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「直流電流をスイッチングしてモータへ交流電流を流してモータを駆動させる機能を有するインバータを備える多軸モータを制御するサーボ制御システムにおいて、複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまうことを抑制することができるサーボ制御システムであって、
サーボ制御システムは、サーボ制御部としてのサーボアンプAMP1〜AMP3と、駆動部としてのモータM1〜M3とを備え、サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3のそれぞれに対応して設けられ、サーボアンプAMP1〜AMP3は、モータM1〜M3への供給電流をPWM制御によってスイッチングし、それにより、モータM1〜M3を駆動させ、
サーボアンプAMP1は、インバータ2と、電源3と、バッファ4と、CPU5と、発振器11とを備え、インバータ2は、CPU5からバッファ4を介してパルス信号を受け、そのパルス信号(パルス幅)に従ってスイッチング動作を行って、インバータ2のスイッチングは、PWM方式で制御され、CPU5は、制御部6と、シーケンサ8と、記憶部10とを備えており、シーケンサ8は、記憶部10に格納された所定のキャリア周波数に基づいてパルス信号を発生し、パルス信号は、インバータ2をスイッチング制御するためにインバータ2へ送られ、
複数のサーボアンプAMP1〜AMP3が複数のモータM1〜M3を同じキャリア周波数で制御した場合、3つのサーボアンプAMP1〜AMP3のスイッチングノイズが重畳するため、そのスイッチングノイズは、非常に大きく増幅されてしまうため、サーボ制御システム1の複数のサーボアンプAMP1〜AMP3は、互いに異なるキャリア周波数でモータM1〜M3への供給電流をスイッチングするように構成され、
軸番号とキャリア周波数とが対応して予め表に記憶され、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHzと設定され、このようにキャリア周波数Fcを設定することによって、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、可変幅Δf(0.1kHz)ずつずれているので、モータM1〜M10のスイッチングノイズは重畳しない
サーボ制御システム。」

イ 引用例2の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、米国特許出願公開第2018/0346136号明細書(2018年12月6日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

a “[0007] According to various embodiments, this invention is directed to a vertical take-off and loading (VTOL) rotary aircraft or helicopter with eight propellers in a quad propeller arm configuration where each propeller arm has two counter-rotating propellers.”
(当審訳:
[0007]様々な実施形態によれば、本発明は、各プロペラアームが2つの逆回転プロペラを有するクワッドプロペラアーム構成の8つのプロペラを有する垂直離着陸(VTOL)回転航空機またはヘリコプターに向けられている。)

b “[0029] A rotor arm assembly 32 is mounted on top of the fuselage 12 and includes four rotor arms 34, each extending approximately 90 with respect to one another. The rotor arms 34 are mounted to the fuselage 12 in a fixed orientation. Each rotor arm 34 includes a fixed proximal portion 36 and a collapsible distal portion 38. The fixed and collapsible portions 36, 38 of each rotor arm 34 may be joined together by a hinge assembly 40.
[0030] A pair of counter-rotating rotors 42 are mounted at the distal end of each rotor arm 34 and oriented generally vertically relative to one another. Each rotor 42 is coupled to an electric motor 44 likewise mounted at the distal end of the rotor arm 34. As such, in various embodiments of the rotorcraft 10 according to this invention, eight rotors 42 are driven by eight distinct electric motors 44 each mounted at the distal end of one of four rotor arms 34 as shown generally in FIGS. 1 and 2. A central hub 48 of the rotor arm assembly 32 may include a cylindrical pod 50 adapted to contain an emergency parachute (not shown).
[0031] FIGS. 3-4 each show a representative rotor arm 34 according to various embodiments of this invention. The rotor arm 34 includes the hinge assembly 40 joining the two portions 36, 38 of the rotor arm 34 together. Referring to FIG. 3, the fixed proximal portion 36 of each rotor arm 34 may include a battery pack 46 therein. As shown in FIGS. 3 and 4, the distal end of each rotor arm 34 includes upper and lower electric motors 44a, 44b each having a rotor blade 42a, 42b mounted thereto. The lower rotor blade 42b according to various embodiments of this invention is approximately one foot longer than the corresponding upper rotor blade 42a.”
(当審訳:
[0029]ロータアセンブリ32は胴体12の上端に取り付けられ、4本のロータアーム34を含み、各々は互いに対して約90°に延在する。ロータアーム34は固定方向に胴体12に取り付けられている。各ロータアーム34は、固定された近位部分36と折り畳み可能な遠位部分38とを含む。各ロータアーム34の固定および折り畳み可能な部分36、38はヒンジ組立体40により互いに接合されてもよい。
[0030]反対方向に回転する一対のロータ42は、各ロータアーム34の遠位端に取り付けられ、そして互いに対してほぼ垂直方向を向いている。各ロータ42は、ロータアーム34の遠位端に同様に取り付けられた電動モータ44に結合されている。このように、本発明の回転翼航空機10の様々な実施形態によれば、概略図1および図2に示されるように、8個のロータ42は8個の独立した電気モータ44によって駆動され、それぞれのモータは4つのロータアーム34の遠位端に取り付けられている。ロータアームアセンブリ32の中央ハブ48は、緊急パラシュート(図示せず)を含むように適合された円筒容器50を含むことができる。
[0031]図3−4のそれぞれは、本発明の様々な実施形態による代表的なロータアーム34を示している。ロータアーム34は、ロータアーム34の2の部分36、38を一緒に接合するヒンジ組立体40を含む。図3を参照すると、各々のロータアーム34の固定端部36は、内部にバッテリパック46を含んでもよい。図3及び図4に示すように、各ロータアーム34の遠位端とは、それぞれロータ羽根42a,42bが取り付けられた電動モータ44a、44bを含む。本発明の様々な実施形態によれば、下側ロータブレード42bが対応する上側ロータブレード42aよりも約1フィートより長い。)

c “[0034] Output from the converters 68, in the form of DC electricity, is directed to the rotor arms 34 and coupled to a DC to 3-phase AC speed inverter 70 (FIGS. 3-4 which, in one embodiment, may be Reinhardt Motion Systems 3-Phase AC Speed Inverter PM 100 DZ which is available from Reinhardt Motion Systems, LLC, www.rinehartmotion.com/standard.html. The inverters 70 offer 150 ARMS continuous, 200 ARMS peak at 300-800 VDC. Each inverter 70 is housed within the rotor arm 34 and may be in the collapsible portion 38 and the output, in the form of AC electricity, is coupled to each of the motors 44 on the associated rotor arm 34. A cooler 76 may also be included in the collapsible portion 38 of the rotor arm as shown in FIG. 3. Each motor 44 in various embodiments may be an Emrax 3-Phase AC Motor Model 228 HV which utilizes an axial flux synchronous permanent magnet motor/generator in a sinusoidal 3-phase arrangement. The motors 44 are available from Emrax d.o.o., Slovenia, http://emrax.com/products/emrax-228/.”
(当審訳:
[0034]コンバータ68からの出力が、直流電力としてロータアーム34に向けられるとともに、直流3相交流高速インバータ70に接合される。(図3−4。一実施形態では、Reinhardt Motion Systems,LLC,www.rinehartmotion.com/standard.htmlから、入手可能である。インバータ70は300−800VDCで150ARMS連続、200ARMSピークを提供する。各インバータ70は、ロータアーム34内に収容され、折畳可能部38とすることができ、その出力が、交流として対応するロータアーム34のモータ44にそれぞれ結合されている。図3に示すように、冷却器76はまた、ロータアームの折畳可能部38に含まれてもよい。様々な実施形態における各モータ44は、正弦波3相配置の軸方向磁束同期永久磁石モータ/発電機を利用するEmrax 3相ACモータモデル228 HVであってもよい。モータ44はEmrax d.o.o.、スロベニア、http://emrax.com/products/emrax−228/から入手可能である。)

d 「図1


(イ)上記(ア)の記載(特に下線部。)から、引用例2には、次の技術的事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているといえる。

「ロータアセンブリ32は胴体12の上端に取り付けられ、4本のロータアーム34を含み([0029])、8個のロータ42は8個の独立した電気モータ44によって駆動され([0030])、
コンバータ68からの出力が、直流電力としてロータアーム34に向けられるとともに、直流3相交流高速インバータ70に接合される([0034])
垂直離着陸(VTOL)回転航空機またはヘリコプター([0007])。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「モータ」は、本件補正発明の「モータ」に相当する。
引用発明の「サーボアンプAMP1〜AMP3」は、「モータM1〜M3への供給電流をPWM制御によってスイッチングし、それにより、モータM1〜M3を駆動させ」るものであり、また、引用発明の「サーボアンプ」は、「インバータ2」を備えることから、本件補正発明の「モータの動作を制御するインバータ装置」に相当するものといえる。
引用発明の「サーボアンプAMP1〜AMP3」及び「モータM1〜M3」からなる系は、電力によってモータを駆動するシステムといえるから、“複数の電駆動システム”といい得る。
そして、引用発明の「サーボ制御システム」は、「モータM1〜M3」と当該「モータM1〜M3」の動作を制御する「インバータ」を備える“制御システム”であるといえるから、引用発明と本件補正発明とは、後記する点(相違点1)で相違するものの、“モータと前記モータの動作を制御するインバータ装置とを有する複数の電駆動システムを備える制御システム”である点で一致する。

イ 引用発明の「サーボアンプ」は、「インバータ2」と「CPU5」とを備え、「CPU5」が備える「シーケンサ8」は、「所定のキャリア周波数に基づいてパルス信号を発生し、パルス信号は、インバータ2をスイッチング制御するためにインバータ2へ送られ」るところ、「インバータ2」が、当該「パルス信号」によってスイッチングを行う“スイッチング素子”を有することは技術常識である。
また、引用発明の「インバータ2」は、「CPU5から…パルス信号を受け、そのパルス信号(パルス幅)に従ってスイッチング動作を行って、インバータ2のスイッチングは、PWM方式で制御され」ることから、当該「CPU5」は、上記アの認定を踏まえると、“キャリア周波数を用いてインバータ回路をPWM制御する回路制御部”であるといえる。
したがって、引用発明と本件補正発明とは、“前記インバータ装置は、スイッチング素子を有するインバータ回路と、キャリア周波数を用いて前記インバータ回路をPWM制御する回路制御部と、を有”する点で一致する。

ウ 引用発明の「モータM1〜M10のキャリア周波数Fc」は、本件補正発明の「前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数」に相当する。
そして、当該「キャリア周波数Fc」は、「5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHzと設定され」ていることから、互いに異なっているといえるので、引用発明と本件補正発明とは、“前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数は、互いに異なる”点で一致する。

エ 以上、ア〜ウの検討から、引用発明と本件補正発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
モータと前記モータの動作を制御するインバータ装置とを有する複数の電駆動システムを備える制御システムであって、
前記インバータ装置は、スイッチング素子を有するインバータ回路と、キャリア周波数を用いて前記インバータ回路をPWM制御する回路制御部と、を有し、
前記複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数は、互いに異なる、
制御システム。

〈相違点1〉
本件補正発明は、「電動移動体の制御システム」であって、本件補正発明の「モータ」が「回転翼またはスクリュを回転駆動させる」ものであるのに対し、引用発明は、「サーボ制御システム」であって、引用発明の「モータ」が何を駆動するものかが特定されていない点。

〈相違点2〉
本件補正発明の「複数の電駆動システムにおける前記キャリア周波数」が、「前記複数の電駆動システムのうちの少なくとも一部の前記電駆動システムの前記インバータ装置に接続されている配線(L)であって、該電駆動システムからの物理的距離が最も近い配線から放射される放射ノイズの周波数と異なる」のに対し、引用発明は、「モータを駆動させる機能を有するインバータを備える多軸モータを制御するサーボ制御システムにおいて、複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまうことを抑制することができる」ものであって、「モータM1〜M10のキャリア周波数Fc」が「5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHzと設定され、このようにキャリア周波数Fcを設定することによって、…モータM1〜M10のスイッチングノイズは重畳しない」ものの、「サーボ制御システム」における配線から放射される放射ノイズがどのようなものであるかが特定されていない点。

(4)当審の判断
上記相違点につき検討する。

ア 相違点1について
回転翼またはスクリュを回転駆動するモータを有する電動移動体、すなわちロータを回転駆動する電気モータをインバータによって駆動する垂直離着陸(VTOL)回転航空機またはヘリコプターは、引用例2記載事項にみられるように、本願出願前公知なものである。
当該電動移動体も、インバータを含む複数のサーボアンプによって複数のモータを駆動する引用発明も、複数のインバータによって複数のモータを駆動する点においては共通するものであり、引用発明のサーボ制御システムを、本願出願前公知な電動移動体において採用することに特段の困難性は無い。
したがって、相違点1に係る構成は、引用発明及び引用例2記載事項に基づけば、当業者が容易に想到し得るものであり、格別な構成とはいえない。

イ 相違点2について
引用発明は、「直流電流をスイッチングしてモータへ交流電流を流してモータを駆動させる機能を有するインバータを備える多軸モータを制御するサーボ制御システムにおいて、複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまうことを抑制することができるサーボ制御システム」であり、その解決手段として、「モータM1〜M10のキャリア周波数Fc」を「5.0kHz、5.1kHz、5.2kHz・・・5.9kHzと設定」し、「このようにキャリア周波数Fcを設定することによって、モータM1〜M10のキャリア周波数Fcは、可変幅Δf(0.1kHz)ずつずれているので、モータM1〜M10のスイッチングノイズは重畳しない」作用をなすものである。
一方、引用発明においても、「サーボアンプAMP1〜AMP3」とこれにより駆動される「モータM1〜M3」との間に、「供給電流」を供給するための所定の“配線”が存在することは自明である。
そして、引用発明が、「複数のインバータのスイッチングノイズが重畳し増幅されてしまうことを抑制する」ものである以上、少なくとも、当該配線から、「スイッチングノイズ」に関連するノイズが放射されることを想定ないし考慮したものであることは明らかである。
そして、そのような配線から放射される放射ノイズが、「複数のインバータのスイッチングノイズ」の高調波成分を含むことは、当業者にとって広く知られた単なる周知技術に過ぎない。また、複数の配線のうち、放射ノイズにもっとも深く関与することになる、「サーボアンプAMP1〜AMP3」及び「モータM1〜M3」からなる系、すなわち電駆動システムに物理的距離が最も近い配線から放射されるノイズも、同様に、「複数のインバータのスイッチングノイズ」の高調波成分を含み、当該高調波の周波数、すなわち放射ノイズの周波数は、複数の当該高調波成分である、「キャリア周波数」の整数倍の周波数などを含むことは技術常識であるから、当然に、「キャリア周波数」と異なることは自明である。
したがって、相違点2に係る構成は、単に引用例1に明記が無く、引用発明の構成としても特定されていないだけの構成であって、引用発明においても当然に備える構成ともいうべきものであるから、格別なものとはいえない。

ウ 当審の判断についての結論
以上検討したとおり、相違点1及び2はいずれも格別なものではなく、またそのことによる効果も、当業者であれば普通に想起し得る程度のことに過ぎない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
令和5年2月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年7月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、請求項4に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2015−027236号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2018/0346136号明細書
引用文献3:特開2002−084790号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)においてそれぞれ、引用例1及び引用例2として記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記インバータ装置に接続されている配線(L)」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]の2(3)、(4)において対比及び判断したとおり、引用発明及び引用例2(原査定の引用文献2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。


第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-08-25 
結審通知日 2023-08-29 
審決日 2023-09-12 
出願番号 P2019-193482
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
P 1 8・ 575- Z (H02M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 須田 勝巳
特許庁審判官 山崎 慎一
吉田 美彦
発明の名称 電動移動体の制御システム  
代理人 弁理士法人明成国際特許事務所  

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