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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1404728
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-14 
確定日 2023-09-27 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6901052号発明「粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6901052号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕について訂正することを認める。 特許第6901052号の請求項1、3に係る特許を取り消す。 特許第6901052号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6901052号の請求項1〜3に係る特許についての出願は、令和2年9月23日の出願である特願2020−158764号の一部を、令和3年2月18日に新たな特許出願としたものであって、同年6月21日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年7月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜3に係る特許に対し、令和4年1月14日に特許異議申立人真角侑子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は同年5月17日付けで取消理由を通知し、特許権者は同年7月15日に指定期間延長に関する上申書を提出し、当審はこれを認容して取消理由通知書に対応する応答期間を職権により30日間延長することとし、特許権者は延長された指定期間内である同年8月12日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は特許権者から訂正請求があったことを同年9月5日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は指定期間内である同年10月7日に意見書を提出し、当審は同年11月28日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は令和5年1月23日に指定期間延長に関する上申書を提出し、当審はこれを認容して取消理由通知書に対応する応答期間を職権により30日間延長することとし、特許権者は延長された指定期間内である同年2月28日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は特許権者から訂正請求があったことを同年3月7日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は指定期間内である同年4月7日に意見書を提出した。
なお、令和4年8月12日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の趣旨
令和5年2月28日付けの訂正請求による訂正の「請求の趣旨」は「特許第6901052号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜3について訂正することを求める。」というものである。

2 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1〜28からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記表面保護層は抗ウイルス剤に加え、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含み、」と記載されているのを、「前記表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるとともに、抗ウイルス剤を含み、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「10μm以下であり、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と」と記載されているのを、「10μm以下であり、前記抗ウイルス剤は、銀系材料であり、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3の「絵柄層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘着シート。」を「絵柄層を有することを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。」に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の【0007】の「本発明の一態様に係る粘着シートは、前記伸展性フィルム層に、絵柄層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート。」を「本発明の一態様に係る粘着シートは、前記伸展性フィルム層に、絵柄層を有することを特徴とする。」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の【0057】の「(実施例1)
実施例1では、」を「(参考例1)
参考例1では、」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の【0058】の「また、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の厚さD(本実施例では、3μm)」を「また、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の厚さD(本参考例では、3μm)」に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の【0059】の「以上により、実施例1の粘着シートを作製した。」を
「以上により、参考例1の粘着シートを作製した。」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の【0060】の「(実施例2)
実施例2では、抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の粘着シートを作製した。
(実施例3)
実施例3では、表面保護層の主成分を紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート樹脂)に変更した。また、表面保護層の厚さを6μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例3の粘着シートを作製した。」を「(参考例2)
参考例2では、抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は参考例1と同様の方法で、参考例2の粘着シートを作製した。
(実施例3)
実施例3では、表面保護層の主成分を紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート樹脂)に変更した。また、表面保護層の厚さを6μmに変更した。それ以外は参考例2と同様の方法で、実施例3の粘着シートを作製した。」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の【0061】の「(実施例4)
実施例4では、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の主成分を電子線硬化性型樹脂に変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例4の粘着シートを作製した。
(実施例5)
実施例5では、抗ウイルス剤の添加量を10質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の粘着シートを作製した。」を「(実施例4)
実施例4では、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の主成分を電子線硬化性型樹脂に変更した。それ以外は参考例2と同様の方法で、実施例4の粘着シートを作製した。」に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の【0062】を削除する。

(12)訂正事項12
明細書の【0063】を削除する。

(13)訂正事項13
明細書の【0064】を削除する。

(14)訂正事項14
明細書の【0065】を削除する。
(15)訂正事項15
明細書の【0066】を削除する。

(16)訂正事項16
明細書の【0067】を削除する。

(17)訂正事項17
明細書の【0068】を削除する。

(18)訂正事項18
明細書の【0069】を削除する。

(19)訂正事項19
明細書の【0070】の「(比較例1)
比較例1では、表面保護層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は実施例28と同様の方法で、比較例1の粘着シートを作製した。
(比較例2)
比較例2では、抗ウイルス剤の添加量を0.1質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の粘着シートを作製した。」を「(比較例1)
比較例1では、表面保護層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は参考例2と同様の方法で、比較例1の粘着シートを作製した。
(比較例2)
比較例2では、抗ウイルス剤の添加量を0.1質量%に変更した。それ以外は参考例1と同様の方法で、比較例2の粘着シートを作製した。」に訂正する。

(20)訂正事項20
明細書の【0071】を削除する。

(21)訂正事項21
明細書の【0072】の「(比較例5)
比較例5では、第一基材層50を着色ポリプロピレンフィルム、すなわち、「透明」から「着色」に変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、比較例5の粘着シートを作製した。
(比較例6)
比較例6では、抗ウイルス剤の添加量を14質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例6の粘着シートを作製した。」を「(比較例5)
比較例5では、第一基材層50を着色ポリプロピレンフィルム、すなわち、「透明」から「着色」に変更した。それ以外は参考例2と同様の方法で、比較例5の粘着シートを作製した。
(比較例6)
比較例6では、抗ウイルス剤の添加量を14質量%に変更した。それ以外は参考例1と同様の方法で、比較例6の粘着シートを作製した。」に訂正する。

(22)訂正事項22
明細書の【0073】の「(評価判定)
上述した実施例1〜実施例21、比較例1〜比較例6で得られた粘着シートについて、以下の方法で抗ウイルス性能及び曲げ加工性の評価を行った。
(抗ウイルス性能)
実施例1〜実施例21及び比較例1〜比較例6の粘着シートを」を「(評価判定)
得られた粘着シートについて、以下の方法で抗ウイルス性能及び曲げ加工性の評価を行った。
(抗ウイルス性能)
得られた粘着シートを」に訂正する。

(23)訂正事項23
明細書の【0077】の「×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化発生。以上の評価結果を表1に示す。」を「×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化発生。」に訂正する。

(24)訂正事項24
明細書の【0078】の「◎:全く視認できない 〇:ほぼ視認できない △:微かに視認できる ×:視認できる」を「×:全く視認できない △:ほぼ視認できない 〇:微かに視認できる ◎:視認できる」に訂正する。

(25)訂正事項25
明細書の【0079】を削除する。

(26)訂正事項26
明細書の【0080】の【表1】を削除する。

(27)訂正事項27
明細書の【0081】の「表1中に表されるように、実施例1〜実施例21、比較例1及び比較例2の評価結果から、実施例1〜実施例21のように抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合には、比較例1及び比較例2のように抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%未満である場合と比べて抗ウイルス性が高いことがわかった。また、実施例1〜実施例21、比較例3、比較例4及び比較例5の評価結果から、実施例1〜実施例21のように抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)が」を「これらの評価結果から、抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合には、抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%未満である場合と比べて抗ウイルス性が高いことがわかった。また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)が」に訂正する。

(28)訂正事項28
明細書の【0082】の「そして、実施例2及び比較例5の評価結果から、透明な基材層を使用した場合には上記層構成で貼り付け対象の意匠が十分に視認できる事が分かった。すなわち、比較例5は、他の実施例1〜実施例21、比較例1〜比較例4、並びに比較例5が「透明」なのに対し、唯一「着色」に変更した。一方、樹脂材料については、実施例1、実施例2、実施例5〜実施例21、比較例1〜比較例6が、「熱硬化性樹脂」を使用し、実施例3が「紫外線硬化型」の樹脂を、実施例4が「電子線硬化型」の樹脂をそれぞれ使用している。」を「そして、透明な基材層を使用した場合には上記層構成で貼り付け対象の意匠が十分に視認できる事が分かった。」に訂正する。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1〜3について、請求項2は請求項1を引用し、請求項3は請求項1、2を引用しているものであるから、本件訂正前の請求項1〜3は、一群の請求項である。したがって、本件訂正は、請求項1〜3からなる一群の請求項ごとにされた訂正であって、特許法120条の5第4項の規定に適合する。

4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
本訂正事項では、訂正前の請求項1に係る特許発明で、表面保護層に抗ウイルス剤とともに含む樹脂を「熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種」としていたものを「紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種」とし、選択できる樹脂を減らしている。なお、表面保護層の主成分は、抗ウイルス剤ではなく「紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種」であるため、「前記表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるとともに、抗ウイルス剤を含み、」との表現に変更している。
よって、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
前記アの記載から明らかなように、本訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
前記アの記載から明らかなように、本訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
本訂正事項では、訂正前の請求項2に係る特許発明で特定していた構成要件「前記抗ウイルス剤は、銀系材料であり」を請求項1に係る構成要件として追加した。
よって、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
前記アの記載から明らかなように、本訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、訂正前の請求項2に記載されている。
よって、本訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、本訂正事項は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、本訂正事項は、請求項2の削除に伴い引用対象が「請求項1又は2」から「請求項1」に変わることに伴って行ったものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定するに規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、訂正前の「本発明の一態様に係る粘着シートは、前記伸展性フィルム層に、絵柄層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート」が、現状の特許請求の範囲の記載と整合しないことを改めるために「請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート」を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例1が「実施例」に相当しなくなったが、他の実施例および比較例で「実施例1と同様の方法で」等として引用されているため、「参考例1」として残したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い、訂正事項6に記載された理由で「実施例1」を「参考例1」として残したことに伴い、「本実施例」を「本参考例」としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い、訂正事項6に記載された理由で「実施例1」を「参考例1」として残したことに伴い、「本実施例」を「本参考例」としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例2が「実施例」に相当しなくなったが、他の実施例および比較例で「実施例2と同様の方法で」等として引用されているため、「実施例2」を「参考例2」として残したものであるとともに、実施例1が「実施例」に相当しなくなったことに伴い「実施例1」を「参考例1」とし、実施例3での記載においては実施例2が「実施例」に相当しなくなったことに伴い「実施例2」を「参考例2」としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、訂正事項9と同様の目的で「実施例2」を「参考例2」とするとともに、請求項1の訂正に伴い実施例5が「実施例」に相当しなくなったことに伴い実施例5の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例6、7が「実施例」に相当しなくなったため、実施例6、7の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(12)訂正事項12
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例8、9が「実施例」に相当しなくなったため、実施例8、9の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(13)訂正事項13
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例10、11が「実施例」に相当しなくなったため、実施例10、11の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(14)訂正事項14
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例12、13が「実施例」に相当しなくなったため、実施例12、13の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(15)訂正事項15
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例14、15が「実施例」に相当しなくなったため、実施例14、15の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(16)訂正事項16
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例16、17が「実施例」に相当しなくなったため、実施例16、17の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(17)訂正事項17
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例18、19が「実施例」に相当しなくなったため、実施例12、13の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(18)訂正事項18
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、請求項1の訂正に伴い実施例20、21が「実施例」に相当しなくなったため、実施例20、21の記載を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(19)訂正事項19
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、訂正事項6に記載された理由で「実施例1」を「参考例1」として残したことに伴い、「実施例1」を「参考例1」とするとともに、訂正事項9に記載された理由で「実施例2」を「参考例2」として残したことに伴い、「実施例2」の誤記であった「実施例28」を「参考例2」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(20)訂正事項20
ア 訂正の目的について
訂正前の表1は、「抗ウイルス剤」の欄の「平均粒径(μm) 粒径の第1ピーク(μm) 粒径の第2ピーク(μm) 添加量(質量部)」の記載順が間違っており、正しくは「添加量(質量部) 平均粒径(μm) 粒径の第1ピーク(μm) 粒径の第2ピーク(μm)」である。この正された表1において、比較例3および比較例4は、粒径の第1ピークが3μm、粒径の第2ピークが7μmで、平均粒径はそれぞれ0.5mm、13mmとなっている。これは粒径の第1ピークおよび第2ピークの数値を間違って記載したためである。
本訂正事項は、上述のように、データの数値が間違って記載された比較例3および比較例4を削除することによって、明細書の不明瞭な記載を明瞭化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(21)訂正事項21
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、訂正事項6に記載された理由で「実施例1」を「参考例1」として残したことに伴い、「実施例1」を「参考例1」とするとともに、訂正事項9に記載された理由で「実施例2」を「参考例2」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(22)訂正事項22
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、実施例1、2、5〜21および比較例3、4の削除に伴い生じる明細書の文章との不整合を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(23)訂正事項23
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、表1の削除に伴い「以上の評価結果を表1に示す。」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(24)訂正事項24
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、明細書の誤記を訂正するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記及び誤訳の訂正を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、明細書の誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、明細書の段落【0080】の表1および【0082】の記載「実施例2及び比較例5の評価結果から、透明な基材層を使用した場合には上記層構成で貼り付け対象の意匠が十分に視認できる事が分かった。」に基づくものである。
よって、本訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(25)訂正事項25
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、表1の削除に伴い「以上の評価結果を表1に示す。」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(26)訂正事項26
ア 訂正の目的について
訂正事項20の「訂正の目的について」で記載されているように、正された表1において、比較例3および比較例4は、粒径の第1ピークが3μm、粒径の第2ピークが7μmで、平均粒径はそれぞれ0.5mm、13mmとなっている。これは粒径の第1ピークおよび第2ピークの数値が間違って記載されているためである。また、実施例6、7、12、16及び17も同様に、平均粒径が粒径の第1ピークと第2ピークの間になく、数値が間違って記載されている。さらに、実施例8、16、17では、表1の数値と本文の記載とが整合していないし、実施例1、2、5〜21および比較例3、4は今回の訂正により削除される。
つまり、本訂正事項は、明細書の誤記の訂正および表1と明細書の記載との不整合を解消するために、表1を削除するものである。
よって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記及び誤訳の訂正を目的とするものであるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、明細書の誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、明細書の誤記の訂正のために表1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(27)訂正事項27
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、表1の削除と実施例1、2、5〜21および比較例3、4の削除に伴い、「表1中に表されるように」と、実施例および比較例の番号を具体的に挙げての説明を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

(28)訂正事項28
ア 訂正の目的について
本訂正事項は、表1の削除と実施例1、2、5〜21および比較例3、4の削除に伴い、「表1中に表されるように」と、実施例および比較例の番号を具体的に挙げての説明を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
本訂正事項は、前記アの記載から明らかなように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

5 明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
訂正事項5〜28は、明瞭でない記載の釈明および誤記を訂正することを目的とするものであり、これは一群の請求項1〜3の全てについて行う訂正である。
したがって、訂正事項5〜8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6901052号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、令和5年2月28日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」〜「本件特許発明3」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
透明性を有する伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、前記伸展性フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有し、前記表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるとともに、抗ウイルス剤を含み、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、
前記抗ウイルス剤は、銀系材料であり、
前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備えることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記伸展性フィルム層には、絵柄層を有することを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 特許権設定登録時の請求項1〜3に係る特許に対して、当審が令和4年5月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである

理由1(明確性要件)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

本件特許発明1は、その発明特定事項である「抗ウイルス剤」について「平均粒径は、1μm以上10μm以下であり」と特定されている。
ここで、知財高裁平成21年3月18日判決(平成20年(ネ)第10013号・いわゆる「遠赤外線放射体事件」最高裁ホームページ参照)において、「10μm以下の平均粒子径」という用語の定義に関し「この文言の意義が,どのような測定装置を使用しても「平均粒子径」が10μm以下であるかが確認できればよいという意味であると解して明確性の要件を満たすとすることは,当業者に過度の試行錯誤を課するものであって発明特定事項の開示として相当でなく,また 「平均粒子径」について明確性の要件の充足は要しないというに等しいものというほかない。」とされている。
そして、特に非球形の粒子に関して平均粒子径を定義するに当たっては、最低でも(1)1個の粒子の大きさをどのように表すか〔代表径のとり方〕、(2)粒子の大きさに分布がある粒子群をどのように表すか〔粒度分布の表し方〕、(3)粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶか〔平均粒子径の選び方〕の3点を定義する必要がある。
また、その測定方法も極めて多種多様なものが存在する。
しかし、(2)当該粒子の粒度分布の表し方に関しては、本件明細書においては、本件特許明細書に、粒子の量がどのような基準−個数、長さ、面積、体積(または質量)−で、いずれの測定方法で測定されたか、その解釈の手がかりとなる記載が全く存在しないし、本件発明に係る粒子がどのような分布を基にした平均粒径を意味しているのか不明確という他なく、また、(3)当該粒子の平均粒子径の選び方に関しても、手がかりとなる記載は存在しないし、それらに関し、出願時の技術常識もない。
そうすると、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると言わざるを得ず、特許法第36条第6項第2号に適合しない。

理由2(サポート要件)本件特許の請求項1〜3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(1)「貼り付け対象の元の意匠を保持しながら」について
本件特許発明が解決しようとする課題のうち、「貼り付け対象の元の意匠を保持しながら」については、「下柄視認性」によって評価しているものと認められるところ、本件特許明細書の実施例及び比較例で得られた粘着シートの下柄視認性評価について、【0078】に「(下柄視認性評価)
試験片を厚さ1mmの透明アクリル板に貼り付けてからJIS A6921隠蔽性グレースケールの上に置き、直後にD65光源の下で模様が視認できるか確認し、4段階で評価した。
◎:全く視認できない
〇:ほぼ視認できない
△:微かに視認できる
×:視認できる」と記載され、その結果を示す【表1】には、実施例のものがいずれも「◎:全く視認できない」との結果が示されている。
そうすると、本件特許発明1は、明らかに前記課題を解決できないといえる。

(2)実施例・比較例、表1の記載の不備について
本件特許明細書の実施例及び比較例に係る各記載(段落【0057】から【0072】)と、その結果をまとめた表1(段落【0080】)には、抗ウイルス剤に関する記載において相互に齟齬があるほか、本件明細書の他の箇所の記載とも齟齬がある。
例えば、実施例1について、段落【0057】には「表面保護層中に、抗ウイルス剤として銀系無機添加剤(株式会社タイショーテクノクス製、ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した」、段落【0058】に「抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。このとき、抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。」との記載があるところ、表1では平均粒径が0.2μm、粒径の第1ピークが5μm、第2ピークが3μm、添加量が7質量部と表記されており、両者の記載内容に齟齬がある。他の実施例及び比較例についても同様である。
また、段落【0063】には「実施例8では、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを0.1μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例8の粘着シートを作製した。」と記載され、段落【0064】には「実施例9では、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークを1μmに変更した。それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例9の粘着シートを作製した。」と記載され、段落【0060】には「実施例2では、抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の粘着シートを作製した。」と記載されているから、実施例8及び9の抗ウイルス剤の粒径の第1ピークは上記実施例1のものと同じ7μmとなり、段落【0037】には「抗ウイルス剤の粒径のピークは2つのピークを有し、2つのピークは、1μm以上5μm以下の範囲である第1ピークと、5μm以上10μm以下の範囲である第2ピークとを含んでいることが好ましい。ここで、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークは、第1ピークより大きい値とする。」という記載と矛盾する。
そうすると、各実施例における抗ウイルス剤の粒径の第1ピーク、第2ピーク、平均粒径、及び、添加量がいずれも不明であると言わざるを得ず、したがって、本件特許発明1の実施例に該当するとは認められない。また、実施例が記載されていなくても、本件特許発明1がその課題を解決することができるものであることを理解できるような説明等も発明の詳細な説明には記載されていない。したがって、本件特許発明1が前記課題を解決できるとはいえない。

理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1〜3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

本件特許明細書の実施例に係る各記載(段落【0057】から【0072】)と、その結果をまとめた表1(段落【0080】)には、抗ウイルス剤に関する記載において相互に齟齬があるほか、本件明細書の他の箇所(上記第3、3(2)で指摘した段落【0037】)の記載とも齟齬があるため、実施例は、いずれも、当業者といえどもその再現することが非常に困難であると認められる。また、実施例以外の態様についても、実施例と同様の(齟齬がある)結果が得られるようにする方法や手段について、発明の詳細な説明には何も説明が記載されていないし、参照できる技術常識も示されていない。したがって、当業者がどのように本件特許発明1を実施すればよいか理解できない。
そうすると、発明の詳細な説明に当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されているとはいえない。

理由4(進歩性)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2018−203898号公報
甲第2号証:特開2004−75845号公報
甲第3号証:特開2019−18541号公報
甲第7号証:広辞苑第6版、2008年1月11日発行、1007ページ、1459ページ
甲第10号証:国際公開第2005/037296号
甲第11号証:特開2018−203897号公報
甲第12号証:特開2018−105034号公報
甲第14号証:特開2015−80887号公報
甲第15号証:特開2019−25918号公報
甲第16号証:国際公開第2010/026730号
甲第17号証:実願平7−7684号(実開平8−30号)のCD−ROM
甲第18号証:特開2005−193484号公報
甲第19号証:特開2007−106001号公報
甲第20号証:特開2007−253370号公報
甲第21号証:特開2009−269945号公報
甲第22号証:特開2010−58395号公報
甲第23号証:特開2011−769号公報
甲第24号証:特開2017−218561号公報
甲第25号証:特開2020−50697号公報
引用文献28:シナネンゼオミック株式会社、銀系無機抗菌剤Zeomic「ゼオミック」のウェブ頁の出力物
(https://www.zeomic.co.jp/product/zeomic/index.html)

2 本件訂正前の請求項1〜3に係る特許に対して、当審が令和4年11月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

前記1 理由1(明確性要件)及び理由4(進歩性)と同じ。

第5 前記第4における理由4(進歩性)についての判断

本件特許発明1の「前記表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるとともに、抗ウイルス剤を含み」との特定は、「・・・からなる」及び「・・・を含み」という一見矛盾する表現を用いた特定となっているため、表面保護層が抗ウイルス剤を含むのか含まないのかが不明確であるが、令和5年2月28日付けの訂正請求書の「訂正事項1」の「(a)訂正の目的について」における「表面保護層の主成分は、抗ウイルス剤ではなく「紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種」であるため、「前記表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるとともに、抗ウイルス剤を含み、」との表現に変更している。」との記載から、表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂並びに抗ウイルス剤からなることを意味するものと解釈して、理由4を判断した。

1 甲号証について
甲第1号証:特開2018−203898号公報
甲第2号証:特開2004−75845号公報
甲第3号証:特開2019−18541号公報
甲第5号証:「微粒子ハンドブック」(52−61頁、174−207頁)初版第1刷 株式会社朝倉書店 1991年9月1日
甲第7号証:広辞苑第6版、2008年1月11日発行、1007ページ、1459ページ
甲第10号証:国際公開第2005/037296号
甲第11号証:特開2018−203897号公報
甲第12号証:特開2018−105034号公報
甲第14号証:特開2015−80887号公報
甲第15号証:特開2019−25918号公報
甲第16号証:国際公開第2010/026730号
甲第17号証:実願平7−7684号(実開平8−30号)のCD−ROM
甲第18号証:特開2005−193484号公報
甲第19号証:特開2007−106001号公報
甲第20号証:特開2007−253370号公報
甲第21号証:特開2009−269945号公報
甲第22号証:特開2010−58395号公報
甲第23号証:特開2011−769号公報
甲第24号証:特開2017−218561号公報
甲第25号証:特開2020−50697号公報
引用文献28:シナネンゼオミック株式会社、銀系無機抗菌剤Zeomic「ゼオミック」を照会するウェブサイドの出力物
https://www.zeomic.co.jp/product/zeomic/index.html

甲第29号証:特開2019−178320号公報
甲第30号証:特開2003−96410号公報
甲第31号証:特開2012−36302号公報

2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
基材と、
インクが付与され、印刷部が形成される印刷用コート層と、
前記基材の前記印刷用コート層に対向する面とは反対の面側に設けられた粘着剤層とを備え、
前記印刷用コート層が、コート剤樹脂と抗菌剤とを含む材料で構成されていることを特徴とする粘着フィルム。」
1b「【0028】
基材1は、いかなる材料で構成されていてもよく、基材1の構成材料としては、各種樹脂材料、紙系材料、金属材料等が挙げられる。
【0029】
基材1を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、基材1は、ポリエステル、ポリオレフィンのうち少なくとも一方を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0030】
これにより、粘着フィルム10により好適なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、被着体への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)をより向上させることができる。また、上記のような材料で構成された基材1は、一般に、後に詳述する材料で構成された印刷用コート層2や粘着剤層3との密着性に優れているため、粘着フィルム10の耐久性等を向上させることができ、また、粘着フィルム10を被着体から剥離する際の粘着フィルム10の不本意な破壊等を効果的に防止することができる。」
1c「【0041】
これにより、粘着フィルム10は抗菌性を発揮することができるとともに、インクの密着性にも優れる。印刷用コート層2は、粘着フィルム10の使用時(被着体に貼着した状態)において、外部に露出する部位である。
【0042】
コート剤樹脂は、印刷用コート層2全体としてその機能を十分に発揮することができる樹脂材料であればよく、その組成等は特に限定されないが、以下のような条件を満足するのが好ましい。
【0043】
すなわち、コート剤樹脂は、ウレタン変性ポリエステルと、イソシアネート系架橋剤とを含んでいるもの、すなわち、ウレタン変性ポリエステルがイソシアネート系架橋剤により架橋した構造を有するものであるのが好ましい。
【0044】
これにより、印刷用コート層2と基材1との密着性や、印刷用コート層2と印刷部との密着性をより向上させることができる。また、印刷用コート層2中に含まれる抗菌剤を好適に保持しつつ、抗菌剤(特に、粒子状の抗菌剤)を好適に外部に突出させることができる。その結果、粘着フィルム10について優れた耐久性を得つつ、抗菌剤の機能をより効果的に発揮させることができる。特に、印刷が施されていない状態だけでなく、印刷が施された状態においても好適に抗菌性を発揮することができる。より具体的には、インクが付与された場合であっても、印刷用コート層2がインクをより好適に吸収し、インクが付与された部位においても、抗菌剤の機能を好適に発揮させることができる。
【0045】
特に、前記コート剤樹脂は、アクリロイル基を有するものであるのが好ましい。コート剤樹脂に、アクリロイル基および水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートを含有させることにより、アクリロイル基を導入することができる。
【0046】
これにより、紫外線硬化型インクを用いるフレキソ印刷において、インクの密着性を向上させることができる。」
1d「【0057】
無機系抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、金、白金、チタン、ニッケル等の各種金属等が挙げられる。
【0058】
また、無機系抗菌剤としては、例えば、前記金属の化合物(金属化合物)を用いることができる。
・・・
【0060】
また、抗菌剤としては、前記金属やそのイオン(金属イオン)、金属化合物を担体に担持させたものが挙げられる。
・・・
【0064】
特に、印刷用コート層2は、Agイオンが担持された抗菌剤を含んでいるのが好ましい。」
1e「【0070】
このように、粒状をなす抗菌剤の平均粒径は、100nm以上5000nm以下であるのが好ましいが、300nm以上4500nm以下であるのがより好ましく、500nm以上4000nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
・・・
【0084】
印刷用コート層2中における抗菌剤の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがさらに好ましい。」
1f「【0099】
[印刷物]
次に、本発明に係る印刷物について説明する。
図2は、図1に示す粘着フィルムに印刷部を形成した印刷物の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0100】
印刷物100は、前述した粘着フィルム10の印刷用コート層2にインクを付与することにより形成された印刷部50を有している。
【0101】
印刷部50は、色、模様、文字、記号、図形等の情報を観察者に与える機能を有する部位であり、印刷により形成された部位である。
【0102】
印刷部50の形成に用いる印刷法は、特に限定されず、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等が挙げられる。
【0103】
印刷部50の形成に用いることができるインクとしては、例えば、水性インク、油性インク、UVインク、ラテックスインク等が挙げられる。
【0104】
印刷部50は、被着体に貼着される前に形成されてもよいし、被着体に貼着された後に形成されてもよい。」
1g「【0125】
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。
【0126】
[1]粘着フィルムの製造
(実施例1)
まず、基材として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、この一方の面(第1の面)に、バーコートにより、コート剤樹脂の前駆体および抗菌剤を含む組成物を付与し、さらに、90℃にて1分間の加熱処理を行った。これにより、印刷用コート層を形成した。
【0127】
組成物は、以下のようにして調製した。まず、コート剤樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、その後、トルエンにて希釈して調製した固形分1.5質量%の液体を調製した。その後、当該液体の固形分95質量部と、抗菌剤としてノバロンAG300(東亜合成社製、銀系抗菌剤)5.0質量部と、トルエンとを混合して調製した固形分1.5質量%の塗工液としての組成物を調製した。
【0128】
上記のようにして形成された印刷用コート層は、厚さが0.5μmであり、抗菌剤の含有率が5.0質量%、コート剤樹脂の含有率が95質量%であった。また、印刷用コート層中に含まれる抗菌剤の平均粒径は、900nmであった。
【0129】
次に、基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対側の面(第2の面)に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、100℃で3分間乾燥させ厚さ25μmの粘着剤層を形成し、該粘着剤層に剥離ライナーのシリコーン塗布面を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護された粘着フィルムを得た。
【0130】
(実施例2、3)
印刷用コート層の形成に用いる組成物の組成を変更することにより、粘着フィルムの構成を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして粘着フィルムを製造した。
・・・
【0137】
前記各実施例および比較例の粘着フィルムの構成を表1にまとめて示す。
なお、表1中、ポリエチレンテレフタレートを「PET」、抗菌剤としてのノバロンAG300(東亜合成社製、銀系抗菌剤)を「N−AG」、抗菌剤としてのゼオミック(シナネンゼオミック社製、銀系抗菌剤)を「ZEO」、実施例1で調製したウレタン変性ポリエステルがイソシアネート系架橋剤により架橋した構造を有するコート剤樹脂を「UMPEs」で示した。なお、前記各実施例では、印刷用コート層の厚さ方向での抗菌剤の含有率が最大となる領域は、印刷用コート層の外表面であった。
【0138】
【表1】


1h「【符号の説明】
【0148】
10…粘着フィルム
1…基材
11…第1の面
12…第2の面
2…印刷用コート層
3…粘着剤層
50…印刷部
100…印刷物
・・・
【図2】



(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
基材シート上に粘着剤層が設けられた粘着シートにおいて、
該粘着剤層はその表面から外方に突出する多数の凸状体を有し、互いに隣接する凸状体間には溝状の谷部を有し、凸状体の頂上部分から谷部の谷底部分にかけての垂直断面形状が滑らかな連続曲線を成し、且つ谷部の谷底部分が、谷部入口部分である凸状体の肩部分に比べてより尖った形状で、且つ谷部の幅wが凸状体の高さhに対してw≦hである、粘着シート。」
2b「【0006】
この様な構成とすることで、粘着剤層表面に凸状体によって形成される凹凸によって、空気抜け容易性が確保される。しかもその上、凸状体頂上の部分から谷部の谷底部分にかけての垂直断面形状を滑らかな連続曲線形状とし、更に谷部の幅wを凸状体の高さh以下(つまり同等又はそれ未満)とし、且つ、谷底部分を谷部入口部分(凸状体の肩部分)よりも尖った形状としてあるので、貼着時に粘着シートを被着体に押しつける圧力で、谷部の両側の凸状体を谷部に向かってせり出させて、谷部内の空気を谷底部分も含めて容易に抜きながら谷部を消滅させる事ができる。また、仮に谷部が残ったとしても(凸状体の高さも含めた粘着剤層の厚みはせいぜい数十μmオーダーであるので)、谷底部分に空気を抱き込み難く、しかも谷部は極小さくなる。従って、貼着後の粘着剤層表面の凹凸は残り難く、また、仮に残ったとしても谷部は僅かとなり、粘着剤層の表面凹凸が貼着後に美観を損ねるのを防げる。」
2c「【0029】
〔基材シート〕
基材シート1としては、従来公知のものを用途に応じて適宜採用すれば良い。例えば、樹脂シート、金属箔、或いは、紙、不織布、織布、突板等の繊維質シート等、或いは、これら2種以上の積層シートや、樹脂含浸不織布等の様な複合シート等からなるシートである。なお、樹脂シートは、透明(無着色、着色)、不透明、半透明等のシートを用いる。なお、基材シートの厚みは、用途に応じたものとすれば良く、例えば、5〜500μm程度、通常は20〜300μm程度である。
【0030】
なお、粘着シートには、必要に応じて適宜、絵柄や凹凸等による模様、印字、コード、記号、画像等による可視或いは不可視情報を、公知の印刷・塗工手段等により施した構成としても良い。通常、これらは基材シートの片面(表面或いは裏面)、或いは両面に対して施される。絵柄等の模様を施したものは、建材用途にて化粧シートとして使用され得る。なお、模様とする絵柄には、全面着色等の全面ベタ模様もある。また、不可視情報とは、例えば、蛍光インキや赤外線吸収インキの印刷等による紫外線や赤外線照射にて判読可能な模様や文字等の情報等である。
【0031】
また、粘着シートには、必要に応じて、各種機能性を付与した構成としても良い。機能性としては、例えば、耐摩耗性、耐擦傷性、耐汚染性、防曇性、反射防止性、帯電防止性、断熱性、抗菌性、電磁波シールド性等である。これらは、その機能に応じて、樹脂シート等の基材シート中に、それに必要な物質を添加するか、基材シート上に該物質或いは該物質を添加したインキや塗液等の層を形成する等して実現する。例えば、耐摩耗性や耐擦傷性等は、シリカ等の耐摩剤を、樹脂シート中に添加するか、該耐摩剤を含む塗液で基材シート表面に塗工形成するる。」
2d「【0033】
〔実施例1〕
図1及び図3(B)の如き粘着シート10を次の様にして作製した。
先ず、離型シートとして、厚み150μmのポリプロピレン系樹脂シートの離型面とする面に対して、エンボスローラを用いて、所望の粘着剤層表面凹凸形状と逆凹凸形状の凹凸を形成して、離型シート3を得た。離型シートの離型面には、水平断面形状が縦横約5mmで角を丸めた正方形で深さが30μmの凹部(粘着剤層で凸状体2aとなる)と、この凹部と凹部との間(粘着剤層で溝状の谷部2bとなる)には、半分の深さ部分での幅が15μmで正方格子を成す峰状の凸部を全面に有し、凸部の峰中央部分から凹部中央部分にかけて、その断面形状は滑らかな連続曲線を無し、峰及び凹部の中央部共に丸みを帯びた形状である。
【0034】
次に、上記離型シート3の凹凸が形成された離型面に対して、粘度1Pa・s(1000cps)のアクリル系2液型粘着剤を、離型面の凹部を完全に充填し、更にその上に粘着剤層として20μmの厚さになる様に塗布し、120℃で1分間乾燥して粘着剤層2を形成して、離型シートと粘着剤層とが積層された積層シートを得た。
【0035】
そして、上記積層シートの粘着剤層2の面に、基材シート1として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシートをラミネータを用いて貼り合わせて、図1の断面図の如き、所望の粘着シート10を得た。
【0036】
この粘着シートの粘着剤層2は、厚さ20μmの基層2cの上(離型シート側)に、水平断面形状が縦横約5mmで頂上部が面積25mm2の平坦で角が若干丸みを帯びた正方形
の天面部を成し高さhが30μmで垂直断面が図1の如き角を丸めた台形状の四角錐体の凸状体2aを、正方格子状に多数配置した表面凹凸形状を有する。また、縦横で隣接する凸状体の間には、全面に走る溝状の谷部2bを有するが、凸状体の天面部から谷部の谷底までは、図3(B)の断面図の様に、その断面形状が滑らかな連続曲線を呈し、谷部は谷底に近いほど幅が狭くなる傾斜した側面を有し、h/2の部分に於ける幅wが15μmで、谷底部分は凸状体の肩部分より尖っているが丸みを帯び平坦部分が無い形状をしている。」
1e「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による粘着シートを概念的に説明する断面図。
・・・
【符号の説明】
1 基材シート
2 粘着剤層
2a 凸状体
2as 肩部分
2b 谷部
2bv 谷底部分
2c 基層
2d (平坦な)天面部
3 離型シート
10 粘着シート
・・・
【図1】



(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
樹脂材料の主成分が硬化型樹脂からなる表面保護層を備え、
上記表面保護層は、リン酸塩化合物を含み、
上記リン酸塩化合物の平均粒子径をA、上記表面保護層の膜厚をBとした場合、0.1<(A/B)の関係を有することを特徴とする化粧シート。」
3b「【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、光(紫外線)を必要とせず、長時間にわたって揮発性化合物、悪臭、菌・ウィルスなどの有機物汚染に対して浄化機能を有する化粧シートを提供することを目的とする。
・・・
【0007】
本発明の一態様によれば、表面保護層の中に酸素触媒機能を有するリン酸塩化合物を配合しているので、光の少ない場所・時間に関係なく、長時間に亘って、有機汚染物質に対する自浄性を具備する化粧シートを提供することが可能となる。
リン酸塩化合物は、たばこやペットなどが原因の悪臭を分解できるため、高い消臭性を発揮する。特に、菌に関しては、菌を死滅するだけではなく、その死骸や菌が出す毒素も分解できるため、高い抗菌性を発揮する。さらに、揮発性有機化合物を分解しながらマイナスイオンを発生し、室内の空気清浄効果を示すため、シックハウス症候群を予防することが可能となる。」
3c「【0015】
<表面保護層>
表面保護層4は、樹脂材料の主成分として、熱硬化型樹脂及び光硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂)の少なくとも1つが用いられる。本明細書で主成分とは、樹脂材料100質量部に対し70質量部以上、好ましくは80質量部以上含まれる樹脂材料のことを指す。
熱硬化型樹脂としては、特に限定されるものではないが、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、シリコーン系樹脂などが好ましく用いられる。これらは単体もしくは混合物として用いてもよい。
光硬化型樹脂としてはアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
硬化型樹脂として、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂の両方を混合して使用しても良い。
表面保護層4の厚さとしては0.1μm〜20μmの範囲内が好適である。
【0016】
(リン酸塩化合物)
本実施形態の表面保護層4には、リン酸塩化合物が配合されている。
リン酸塩化合物を構成するリン酸塩は、公知のものであれば特に限定されるものではないが、チタン、セリウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびガリウムからなる群から選択される金属を一種類以上含むものが好ましい。これらの金属は、その同位体の使用が可能である。コストの点から特に好ましいのはチタンである。
リン酸塩を製造する方法として公知の方法を用いればよい。
また、リン酸塩化合物は平均粒子径で0.1〜20μmであることが好ましい。粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定機を用いて測定できる。その粒度分布より平均粒子径が算出できる。
リン酸塩は、表面保護層4の樹脂材料100質量部に対し、1×10−3質量部以上5質量部以下の範囲で配合されていることが好ましい。」
3d「【0023】
以上のように本実施形態の化粧シート5は、耐候性、耐汚染性、耐傷性を有する化粧シートに好適であり、さらには光(紫外線)を必要とせず、抗菌性を有する建装材化粧シートを提供することが可能となる。
【0024】
以下に、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
<実施例1>
基材1として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加して押出成形された厚さ70μmのポリプロピレンシートに、接着助剤としてポリエステルポリオール樹脂を10μmの厚さになるようにグラビアコーティング法により塗布した。
この上にベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加したポリプロピレン樹脂を押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた。
更にこの上に、抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設けることにより、実施例1の化粧シートを作製した。」
3e「【符号の説明】
【0030】
1・・基材
2・・印刷インキ層
3・・透明熱可塑性樹脂層
4・・表面保護層
5・・化粧シート
【図1】



(4)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「

」第52ページ左欄第2〜21行

(5)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「

」(第1007ページ)
7b「

」(第1459ページ)

(6)甲第10号証(以下、「甲10」という。)
10a「[請求項1]
銀イオン担持体からなることを特徴とする抗コロナウィルス剤。」
10b「本発明における抗ウイルス剤中の有効成分である銀イオンは、その担持体に安定して担持されることが必要である。」(第4ページ第2〜3行)
10c「また該担持体の粒子径は0.1〜15μmが好ましく、更に0.5〜10μmが更に好ましい。この粒子径にすることで、効果的に有効性を発揮できることから好ましい。」(第5ページ第12〜13行)
10d「銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体をUV硬化アクリル塗料に対し1質量%の割合で配合し、抗菌性UV塗料を調製した。この抗菌塗料を、常法にてSUS板に塗布することにより抗コロナウイルス性SUS板を得た。」(第10ページ第4〜6行)

(7)甲第11号証(以下、「甲11」という。)
11a「【請求項1】
基材と印刷層とを有する部材に対して、前記印刷層を被覆するように貼着される粘着フィルムであって、
粘着剤を含む材料で構成された粘着剤層と、
抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層とを有することを特徴とする粘着フィルム。」
11b「【0029】
フィルム基材(基材)1は、いかなる材料で構成されていてもよく、フィルム基材1の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、フィルム基材1は、ポリエステル、ポリオレフィンのうち少なくとも一方を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0030】
これにより、粘着フィルム10により好適なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、部材50への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)をより向上させることができる。また、これらの材料は、一般に優れた光の透過性を有するため、粘着フィルム10が部材50に貼着された状態における、印刷層52の視認性を向上させることができる。また、上記のような材料で構成されたフィルム基材1は、一般に、粘着剤層2や後述する材料で構成された抗菌層3との密着性に優れているため、粘着フィルム10の耐久性等を向上させることができ、また、粘着フィルム10を部材50から剥離する際の粘着フィルム10の不本意な破壊等を効果的に防止することができる。」
11c「【0050】
抗菌剤としては、例えば、各種無機系抗菌剤、各種有機系抗菌剤やこれらの複合材料(無機・有機ハイブリッド系抗菌剤)等を用いることができる。
・・・
【0054】
また、無機系抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、金、白金、チタン、ニッケル等の各種金属や、金属の化合物(金属化合物)を用いることができる。
・・・
【0056】
また、抗菌剤としては、前記金属やそのイオン(金属イオン)、金属化合物を担体に担持させたものが挙げられる。
・・・
【0060】
特に、抗菌層3は、Agイオンが担持された抗菌剤を含んでいるのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。また、抗菌性を向上させつつ、抗菌層3の透明性(光の透過性)を向上させることができ、部材50に貼着した状態での印刷層52の視認性をより向上させることができる。また、抗菌層3中に抗菌剤をより均一に含ませることができ、各部位での抗菌性の不本意なばらつきの発生を効果的に防止することができる。」
11d「【0065】
このように、粒状をなす抗菌剤の平均粒径は、100nm以上5000nm以下であるのが好ましいが、300nm以上4500nm以下であるのがより好ましく、500nm以上4000nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
・・・
【0074】
抗菌層3中における抗菌剤の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがさらに好ましい。」

(8)甲第12号証(以下、「甲12」という。)
12a「【0009】
前記伸展性を有する合成樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートを素材としたフィルムであり、低放射性素材は、アルミ箔が好ましい。
なお、低放射性素材は、放射に対して低い放射率を有する素材であって、放射率が0.5以下あればよく、放射率が0.3以下のものが好ましい。
前記断熱材はガラス繊維を厚さ寸法5〜8mm程度のフェルト状としたものが好ましい。
本願の低放射性折板の製造方法は、少なくとも一方の側端部に、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所を備える折板を製造する方法である。本願の低放射性折板は、次のように製造される。
伸展性を有する合成樹脂フィルムにアルミ箔を接着して低放射性シートを形成する。これを断熱材の一面のうち、側端部を除いた残りの部分に接着して被覆材とする。
さらに、これをアルミ箔が最表面となる配置で金属板に接着する。
次いで、金属板のうち低放射性シートが重ならない部分に、相互取付け箇所が形成されるように、被覆材を接着した金属板を専用のロール成形機で折板形状に成形加工する。
【発明の効果】」

(9)甲第14号証(以下、「甲14」という。)
14a「【請求項1】
化粧シート最表面のコーティング樹脂中に銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウィルス性を有する内装用化粧シートにおいて、前記銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤の真比重が2.5以下であり、かつ平均粒径が1μ以下であり、かつ前記化粧シート最表面のコーティング樹脂に対して固形分比率で10〜30%配合してなることを特徴とする抗ウィルス性を有する内装用化粧シート。」
14b「【0019】
本発明における銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる、また有機抗菌剤、有機防カビ剤としてジンクピリジオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等が使用できるが、抗菌効果の点で銀系抗菌剤が優れている。」

(10)甲第15号証(以下、「甲15」という。)
15a「【請求項1】
基板と、
前記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、
前記表層樹脂層上に配置され、無機抗ウィルス粒子を含む抗ウィルス機能層と、からなり、
前記無機抗ウィルス粒子の平均粒子径に対する前記抗ウィルス機能層の膜厚の比率が、0.3〜1.1倍であることを特徴とする抗ウィルス性の化粧板。」
15b「【0017】
本発明の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、並びに、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子であることが望ましい。」
15c「【0046】
無機抗ウィルス粒子に、ウィルスや菌が接触すると、無機抗ウィルス粒子に含まれる活性成分は、ウィルスや菌を全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、菌やウィルスを減少させることができる。ただし、無機抗ウィルス粒子が凝集して存在すると、局所的にウィルスや菌と無機抗ウィルス粒子との接触頻度が低下し、想定される抗ウィルス性や抗菌性が発揮されにくくなる。したがって、抗ウィルス機能層に含まれる無機抗ウィルス粒子は、均一に分散されていることが望ましい。」

(11)甲第16号証(以下、「甲16」という。)
16a「[請求項1]
ヨウ素と周期律表の第4周期から第6周期かつ8族から15族の元素とからなる少なくとも1種のヨウ化物の粒子を有効成分として含むことを特徴とする抗ウイルス剤。
[請求項2]
前記周期律表の第4周期から第6周期かつ8族から15族の元素が、Cu、Ag、Sb、Ir、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn、In、またはHgであることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス剤。」
16b「【0033】
さらにまた、本発明の抗ウイルス剤は、前述の繊維構造体や成型体と同じく、混練やバインダーを用いた固定方法により、フィルムやシートに含有される、または外面に固定される構成とすることができる。フィルムまたはシートとして、具体的には、壁紙、包装袋、または包装用フィルムなどが挙げられる。これらの表面に付着したウイルスは、抗ウイルス剤の作用により不活化される。したがって、当該壁紙を病院の壁に貼り付けたり、当該包装袋または包装用フィルムにより医療用具を包装することで、病院における院内感染や、医療用具のウイルス汚染を抑制することができる。」

(12)甲第17号証(以下、「甲17」という。)
17a「【請求項1】 表面シート体1と、独立した多数の小凸部2…を基準平坦面3aから突出状に有する粘着層3と、この多数の小凸部2…に対応して密着する独立した多数の小凹部4…を有する剥離紙5と、から構成したことを特徴とする粘着加工シート。」
17b「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上述のような従来の粘着加工シートでは、粘着シート体とそれを貼り付ける物体の表面との間に空気が貼り込まれてしまうことが多く、空気が貼り込まれた部分がいわゆる「ふくれ」となって貼り付けた粘着シート体の表て面側に膨出部が生じる問題があった。そして、特に、粘着シート体の面積が大(例えば10cm平方以上)である場合に顕著であった。
・・・
【0006】
そこで、本考案は、上述の問題を解決して、いわゆる「ふくれ」が生じることなく、かつ、貼り直しが容易な粘着加工シートとその粘着加工シートの製造を容易とし得る剥離紙を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本考案に係る粘着加工シートは、表面シート体と、独立した多数の小凸部を基準平坦面から突出状に有する粘着層と、この多数の小凸部に対応して密着する独立した多数の小凹部を有する剥離紙と、から構成したものである。」
17c「【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の粘着加工シートの一実施例を示す拡大要部断面図である。
・・・
【符号の説明】
1 表面シート体
2 小凸部
3 粘着層
3a 基準平坦面
4 小凹部
5 剥離紙
A 剥離処理面
B 他面
【図1】



(13)甲第18号証(以下、「甲18」という。)
18a「【請求項1】
合成樹脂化粧シート本体、粘着剤層、剥離シートの積層構造になる粘着剤付き化粧シートにおいて、剥離シートの粘着剤層接合面には、多数の略多角形状がランダムに配列されたパターンで面方向に線状に連続する凸条が突出形成され、剥離シートを剥離した状態で粘着剤層の裏面には、前記凸条に対応してランダムに配列されたパターンで面方向に線状に連続するエア抜き溝が形成されていることを特徴とする粘着剤付き化粧シート。」
18b「【0002】
この種の粘着剤付き化粧シートは、合成樹脂による化粧シート本体と、その裏面の粘着剤層と、その裏面の剥離シートの積層構造になる。この粘着剤付き化粧シートから剥離シートを剥がして、店舗、オフィスなどの内装や、什器の加飾に用いるために被着体に貼着するにあたっては、空気を残さないように粘着させることが必要である。化粧シートと被着体との間に僅かでも空気が残ると、高温や高湿によって空気が気泡状に膨れ、見栄えが悪く、接着強度も落ちることになる。空気を残さないように粘着させるためには、職人的な技法に頼るほか、シートそれ自体の改良技術にもよっている。
【0003】
その一つに以下の特許文献1に示すように、剥離シートとして、高さ数μm(略1〜5μm)の連続した凸線状の凸条が形成されている合成樹脂フィルムを使用したものがある。凸条は平行な直線、曲線、格子状の交叉直線を一定のパターンで配列している。
この特許文献1の構成によれば、剥離シートを引き剥がした状態で、粘着剤層表面には、上記凸条の転写形状である線状の凹部が平行に密に形成され、被接着面に粘着剤が接触した状態で凹部が空気の逃げ道を作り、これによって空気溜まりの形成が防止される。」
18c「【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る粘着剤付き化粧シートの断面図である。
・・・
【符号の説明】
【0024】
10 化粧シート
1 化粧シート本体
2 粘着剤層
2a 平面部
2b エア抜き溝
3 剥離シート
3a 凸条
【図1】



(14)甲第19号証(以下、「甲19」という。)
19a「【請求項1】
樹脂フィルムおよびその片面に粘着している粘着剤層を有する化粧シートにおいて、該樹脂フィルムのループステフネス曲げ強さが150mN/15mm〜500mN/15mmであり、該粘着剤層は、該樹脂フィルムに粘着している面とは逆の面に1以上の溝を有し、該溝は、該粘着剤層の該逆の面の内側のみに存在して該粘着剤層の側面まで通じてはいないことを特徴とする化粧シート。」
19b「【0002】
樹脂フィルムの片面に粘着剤層を設けた化粧シートは一般に、それに剥離材が付いた状態で使用者に供給され、使用者は、化粧シートの被着体への貼着作業を、剥離材を取り除きながら行う。化粧シートは、例えば、建築物(店舗、オフィス、室内)の内装や家具、電化製品の加飾等に用いられるが、これらの被着体に貼着する際には、被着体と化粧シートとの間に空気が残留しないように貼着する技術が要求される。被着体と化粧シートとの間に空気が残留すると、高温、高湿の環境に化粧シートが置かれた場合、残留した空気が膨張し、外観の低下及び接着強度の低下を生じる。空気が残留した場合、化粧シートを剥がして再度貼着作業を行う必要がある。
【0003】
化粧シートを被着体に貼着するときに化粧シートの粘着剤層と被着体との間に空気が残留することで化粧シートの外観性が損なわれたり被着体に対する接着力が低下するという問題については、これを解決するために、化粧シートの粘着剤層の表面に、小凸部や凹凸構
造を設けたり、あるいは、図1に示すように、連続溝、すなわち被着体に貼り付けたときに化粧シートの側面へ空気を流出させる出口通路を形成する溝を設ける方法が提案されている(特許文献1〜6)。」
19c「【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】従来の化粧シートを示す見取り図である。
・・・
【符号の説明】
【0074】
1 化粧シート
2 樹脂フィルム
3 粘着剤層
4 溝
5 溝
【図1】



(15)甲第20号証(以下、「甲20」という。)
20a「【請求項1】
2つの主要面を有する透明樹脂フィルムと、
この透明樹脂フィルムの第一の主要面上に設けられた透明樹脂層と、
前記透明樹脂層上に配置された模様印刷層と、
前記透明樹脂フィルムの第二の主要面上に設けられた着色ベースフィルムと
を有する装飾シートであって、前記透明樹脂層が第一のビーズを含み、前記模様印刷層が第二のビーズを含み、前記第一のビーズが、その含有率、色、及び/又は粒径において前記第二のビーズと相違しており、前記第一のビーズ及び第二のビーズが、前記透明樹脂層及び模様印刷層中に埋め込まれている装飾シート。
・・・
【請求項3】
前記着色ベースフィルムの前記透明樹脂フィルムと接する面とは反対面上に、粘着剤層及び剥離シートを順に含む、請求項1又は2記載の装飾シート。
【請求項4】
前記粘着剤の剥離シートと接する面上に、被着体の表面に貼付した際にその表面と装飾シートの間に残留した空気を排除する溝が設けられている、請求項3記載の装飾シート。」

(16)甲第21号証(以下、「甲21」という。)
21a「【請求項1】
基材および該基材に保持された粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着剤層上に配置された剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き粘着シートであって、
前記剥離ライナーは、前記粘着剤層側の表面を構成するA層と該A層を支持するB層とを少なくとも有する積層構造であって、前記A層はリン系酸化防止剤を含まないか該酸化防止剤の含有割合が0.01質量%以下のポリオレフィン系樹脂組成物により形成され、
前記粘着剤層側表面は、該表面を横切って延びる高さ5μm〜50μmの複数の畝によって複数の部分領域に仕切られており、それらの部分領域のうち少なくとも一部は該領域の内接円が直径500μmを超えるサイズであり、且つ
前記剥離ライナーの25℃〜40℃の間における平均線膨張係数が7×10−5/℃以下である、剥離ライナー付き粘着シート。」
21b「【0005】
ここで、粘着シートの空気抜け性の観点からは、上記溝間の距離を短くして上記流通経路(空気抜け経路)を多く形成するほうが有利である。例えば特許文献1に記載の技術では、直径500μmの円形領域に所定体積以上の溝が含まれるように粘着剤層の表面形状を規制することによって空気抜け性の確保を図っている。しかしながら、上記溝部分では粘着剤層が被着体に密着しないことから、溝間の距離(溝のピッチ)を短くすると粘着剤層のうち被着体に密着する面(接着面)が細切れに分断されることとなる。また、溝間の距離の短縮(すなわち、単位面積当たりに含まれる溝数の増大)は上記接着面の合計面積(正味の接着面積)の減少につながる。このような接着面の断片化や接着面積の減少は、粘着シートの粘着性能(例えば、曲面接着性および剥離強度のうちの少なくとも一方)を低下させる要因ともなり得る。
【0006】
そこで本発明は、粘着シートの接着面を過度に細分化することなく良好な空気抜け性を確保することのできる剥離ライナー付き粘着シートを提供することを目的とする。」
21c「【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】剥離ライナー付き粘着シートの一構成例を示す模式的断面図である。
・・・
【符号の説明】
【0083】
1 :剥離ライナー付き粘着シート
2A,2B:畝
3A,3B:溝
10 :剥離ライナー
10A:粘着剤層側表面
12 :表面層(A層)
120 :格子状凸部
121 :第一畝群
122 :第二畝群
124 :部分領域
14 :支持層(B層)
20 :粘着シート
22 :基材
24 :粘着剤層
240 :格子状凹部
241 :第一溝群
242 :第二溝群
・・・
【図1】



(17)甲第22号証(以下、「甲22」という。)
22a「【請求項1】
剥離紙基材の一方の面上に、熱可塑性樹脂層AXと剥離層BXとが順次積層した剥離紙において、
前記熱可塑性樹脂層AX及び剥離層BXが積層している側の当該剥離紙の表面に、最頻ピッチが100〜2000μm、最頻深さが10〜140μmである凹凸構造Xを備え、該凹凸構造Xを構成する各凸部TXが窪み部HXを有さないことを特徴とする剥離紙。
ただし、凸部TXとは、凹凸構造Xをレーザー顕微鏡で測定した際の断面イメージにおいて、凹凸構造Xの深さ方向を上下方向としたときの最下部から上方向に10μm離れた地点を基準点とし、該基準点を通り上下方向に対して垂直方向に引かれた基準線をプラスの傾きで横切る点から、マイナスの傾きで横切る点までの上側部分のことであり、
窪み部HXとは、傾きがマイナスからプラスに転じる転化点があり、該転化点を有する凸部TXの最上部との高低差ΔGXが5μm以上である該転化点前後の、前記傾きがマイナスである部分からプラスである部分までの領域のことである。
・・・
【請求項4】
請求項1または2に記載の剥離紙と、粘着シート基材の片面に粘着剤層を備えた粘着シート本体とが、剥離紙の剥離層及び粘着シート本体の粘着剤層を内側にして積層されていることを特徴とする粘着シート。」
22b「【0003】
粘着シートには、被着体に貼付した際に空気(エアー)を巻き込み、被着体と粘着剤層との間にエアー溜まり、いわゆる「膨れ」ができやすく、外観を損ねるという問題がある。この問題は、特に、張り直し困難な強粘着タイプの粘着シートに顕著である。
その「膨れ」の生じる原因の1つとして、粘着剤層表面が通常、平坦であることが考えられている。そのため、この「膨れ」を改善するために、粘着剤層表面に凹凸構造を設けることが提案されている。これは、粘着剤層表面に凹凸構造を設けることにより、該粘着シートを被着体に貼付した際、粘着シートと被着体との間に、外部に通じる連通隙間が形成されるようにしてエアー抜き性を付与したもので、該連通隙間を通って、巻き込まれたエアーが外部に抜けるようになっている。
また、粘着剤層表面に凹凸構造を設けることで、被着体に対する剥離力を弱く調節することもできるようになる。」
22c「【図面の簡単な説明】
【0139】
・・・
【図7】(a)は本発明の剥離紙の断面構造の一例を示すための模式的な断面図であり、(b)は(a)に示す粘着シートの使用方法を説明する図である。
・・・
【符号の説明】
【0140】
10,20:剥離紙、11,21:剥離紙基材、13:押圧ロール、14:冷却ロール、30,40,52:粘着シート、31:粘着シート基材、32,41,51:接着剤層、33:粘着シート本体、50:粘着シート巻回体、AX,AY:熱可塑性樹脂層、BX,BY:剥離層、TX,TY:凸部、HX,HY:窪み部、αX,αY:最下部、βX,βY:基準点、LX,LY:基準線、LX1,LY1:基準線をプラスの傾きで横切る点、LX2,LY2:基準線をマイナスの傾きで横切る点、CX:転化点、ΔGX,ΔGY:高低差、γX,γY:最上部、MX,MY:積層体、KX,KY:対角線。
【図7】



(18)甲第23号証(以下、「甲23」という。)
23a「【請求項1】
少なくとも片面が剥離面とされた剥離性基材を加熱する加熱工程と、加熱した剥離性基材の剥離面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けるエンボス加工工程とを有し、
剥離性基材として、剥離シート用支持体と、該剥離シート用支持体の少なくとも片面に設けられた熱可塑性樹脂層とを有し、該熱可塑性樹脂層の露出面が剥離面にされたものを用い、
エンボス加工工程におけるエンボス形成体として、エッチングによりエンボス面を形成したものを用いることを特徴とする剥離シートの製造方法。
・・・
【請求項3】
粘着剤層および粘着シート用支持体を有する粘着シート本体と、該粘着シート本体の粘着剤層側に設けられた剥離シートとを備える粘着シートの製造方法において、
剥離シートとして、請求項1または2に記載の剥離シートの製造方法により製造した剥離シートを用いることを特徴とする粘着シートの製造方法。」
23b「【0047】
<作用効果>
上記第1および第2の実施形態では、剥離シート20,30を製造するためのエンボスロール120のエンボス面121の形成においてエッチングを適用するため、エンボス面121における溝の幅を狭くできる。また、剥離シート20,30の製造の際に、剥離性基材20d,30dを加熱して樹脂成分の粘度を低くして、エンボスロール120のエンボス面121に追従しやすくしている。そのため、エンボスロール120のエンボス面121の溝の幅を狭くしても、剥離性基材20d,30dへの転写性を充分に確保できる。したがって、上記剥離シート20,30の製造方法では、剥離面20a,30aの凸部20b,30bの幅が狭い剥離シート20,30を容易に製造できる。
また、上記実施形態では、粘着シート1,2を製造する際に、凸部20b,30bの幅が狭い剥離シート20,30を用いて粘着剤層12の溝12bを形成するため、溝12bの幅を狭くできる。
粘着剤層12の溝12bの幅が狭い粘着シート1,2によれば、被着体に貼着した際に溝12bが視認されにくく、また、溝12bへの水滴の浸入を防止できる。しかも、溝12bの幅を狭くすれば、溝12bの数を増やすことができ、空気を逃がす流路を増やせるため、空気除去性を向上させることができる。さらに、溝12bの幅を狭くして溝12bの数を増した場合でも、被着体に接触する粘着剤層12のランド部12c同士の間隔が短いため、充分な粘着性が得られる。」
23c「【符号の説明】
【0074】
1,2 粘着シート
10 粘着シート本体
11 粘着シート用支持体
12 粘着剤層
12a 凹凸面
12b 溝
12c,12d ランド部
20 剥離シート
20a 剥離面
20b 凸部
20c 凹部
20d 剥離性基材
・・・
【図1】



(19)甲第24号証(以下、「甲24」という。)
24a「【請求項1】
基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートであって、
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有するベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層の第2面上に配置された接着層と
を含み、
前記接着層の前記基材に対する初期接着力が20℃で0.5N/25mm以上であり、常態接着力が20℃で8N/25mm以下である、グラフィックシート。
【請求項2】
前記接着層が凹凸を有する微細構造化表面を有し、前記接着層の微細構造化表面が空気を外部に排出する又は前記接着層に取り込む通路又は開口を有する、請求項1に記載のグラフィックシート。」
24b「【0024】
一実施態様では、接着層は凹凸を有する微細構造化表面を有し、接着層の微細構造化表面は空気を外部に排出する又は接着層に取り込む通路又は開口を有している。この実施態様では、グラフィックシートの基材への貼り付け時に接着層表面と基材表面に挟まれた空気は、これらの通路又は開口を通じて外部に排出されるか接着層に吸収されて、グラフィックシートと基材の界面における観察可能な気泡の混入が抑制又は防止される。この構造により、貼り付け時に基材とグラフィックシート間に残る気泡を容易に取り除くことができるため、熟練者でなくても、気泡残りに起因する外観不良の発生のない良好な外観のグラフィックシートを貼り付け施工を容易に行うことができる。」
24c「【符号の説明】
【0112】
10、20、30 グラフィックシート
12、22、32 ベースフィルム層
14、24、34 接着層
16、26、36 ライナー
17、27、37 微細構造化表面
18 連通路
・・・
【図1】



(20)甲第25号証(以下、「甲25」という。)
25a「【請求項1】
保護層、コート層、基材層、粘着剤層、および、当該粘着剤層に隣接する面に凹凸が形成された剥離ライナーを、積層方向にこの順序で有し、
前記積層方向における前記保護層側および前記剥離ライナー側の両面のうち、
前記保護層側の一方の面は、前記剥離ライナー側の他方の面よりも大きな振幅のうねりを含んだ荒れた状態であり、
前記剥離ライナー側の前記他方の面は、前記一方の面よりもうねりの振幅が抑制された平滑な状態である、粘着シート。」
25b「【0033】
剥離ライナー150は、粘着剤層140に隣接する面に、凹凸152を有する。剥離ライナー150は、凹凸152が形成された第1のポリオレフィン系樹脂層153、支持基材154、および第2のポリオレフィン系樹脂層155を、積層方向にこの順序で有する。
・・・
【0039】
ここで述べてきた凹凸152の形状が、隣接する粘着剤層140に反転して転写される結果、粘着剤層140に溝が形成される。この溝が、貼付の際に被着体と粘着剤層140との間に入り込む空気を排出するため、ふくれが抑制される。」
25c「【符号の説明】
【0068】
100 粘着シート、
110 工程フィルム(保護層)、
111 工程フィルム側の一方の面(保護層側の一方の面)、
120 コート層、
130 基材層、
140 粘着剤層、
150 剥離ライナー、
151 剥離ライナー側の他方の面、
152 凹凸、
153 第1のポリオレフィン系樹脂層、
154 支持基材、
155 第2のポリオレフィン系樹脂層、
A うねりの振幅。
【図1】



(21)引用文献28
28a



・・・

」(1/5〜2/5ページ)

(22)甲第29号証(以下、「甲29」という。)
29a「【請求項1】
紫外線吸収剤1を含有する表面保護層を含むA層、及び紫外線吸収剤2を含有する粘着剤層を含むB層を有し、
JIS K0115:2004に準拠して測定した、該A層の波長300〜360nmにおける吸光度A1の平均値が0.8以上であり、JIS K0115:2004に準拠して測定した、該A層及び該B層の波長300〜360nmにおける吸光度A2の平均値が1.2以上である、粘着シート。
・・・
【請求項10】
前記表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の粘着シート。」

(23)甲第30号証(以下、「甲30」とう。)
30a「【請求項1】プラスチックフィルムの一方の表面に、離型剤層、厚さ3〜30μmの電離放射線硬化樹脂層、及び厚さ1〜30μmの粘着剤層が積層されていることを特徴とする表面保護用粘着シート。」

(24)甲第31号証(以下、「甲31」という。)
31a「【請求項1】
化粧シートの裏面に粘着剤層を有する床用枚葉状粘着シートであって、該化粧シートの2%伸度時の力が35〜80N/10mm幅である床用枚葉状粘着シート。」
31b「【0028】
《表面保護層14》
表面保護層14は、基材シート11と表面保護層14との間に設けられる層を保護するために設けられる層であり、好ましくは電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して得られる層である。電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂とその他必要に応じて添加される成分とからなる組成物である。」
31c「【0029】
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層14に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の化合物を適宜使用すれば良い。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0030】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、なかでも分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有するような多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いて用いれば良い。官能基数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0031】
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。これらのオリゴマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。」

3 甲1に記載された発明
甲1には、実施例3に着目すると、実施例3の粘着フィルムは、印刷用コート層の形成に用いる組成物の組成を変更することにより、粘着フィルムの構成を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして粘着フィルムを製造したものであるから(摘記1g参照)、甲1には
「ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面(第1の面)に、バーコートにより、
コート樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、その後、トルエンにて希釈して調製した固形分1.5質量%の液体を調製し、
その後、当該液体の固形分90質量部と、抗菌剤として平均粒径2500nmであるゼオミック(シナネンゼオミック社製、銀系抗菌剤)10.0質量部と、トルエンとを混合して調製した固形分1.5質量%の塗工液としての組成物を付与し、
90℃にて1分間の加熱処理を行って、印刷用コート層を形成し、
基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対側の面(第2の面)に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、100℃で3分間乾燥させ厚さ25μmの粘着剤層を形成し、該粘着剤層に剥離ライナーのシリコーン塗布面を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護された粘着フィルム。」の発明「以下、「甲1発明」という。」が記載されているといえる(摘記1g参照)。

4 対比・判断
本件特許発明1
ア 甲1発明との対比
甲1発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材」、「基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対側の面(第2の面)に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、100℃で3分間乾燥させ厚さ25μmの粘着剤層を形成し、該粘着剤層に剥離ライナーのシリコーン塗布面を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護された」及び「粘着フィルム」は、それぞれ、本件特許発明1の「フィルム層」、「フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シート」及び「粘着シート」に相当する。
甲1発明の「印刷用コート層を形成し」について、「印刷用コート層」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面(第1の面)に、バーコートにより、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、その後、トルエンにて希釈して調製した固形分1.5質量%の液体を調製し、その後、当該液体の固形分90質量部と、抗菌剤としてゼオミック(シナネンゼオミック社製、銀系抗菌剤)10.0質量部と、トルエンとを混合して調製した固形分1.5質量%の塗工液としての組成物を付与し、90℃にて1分間の加熱処理を行って、印刷用コート層を形成し、基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対側の面(第2の面)に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、100℃で3分間乾燥させ厚さ25μmの粘着剤層を形成」しているから、「基材」の「粘着剤層」と反対の面に形成されており、「粘着フィルム」の使用時(被着体に貼着した状態)において、外部に露出する部位であり、かつ、表面保護層としても機能する層である(摘記1c参照)。したがって、甲1発明の「印刷用コート層を形成し」は、本件特許発明1の「フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有し」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「フィルム層と、前記フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、前記フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有する粘着シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
フィルム層が、本件特許発明1では透明性を有する伸展性フィルム層であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。

<相違点2>
表面保護層が、本件特許発明1では紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるのに対し、甲1発明では、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、形成したものである点。

<相違点3>
表面保護層が、本件特許発明1では、抗ウイルス剤を含み、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、前記抗ウイルス剤は、銀系材料でありと特定されているのに対し、甲1発明では、抗菌剤として平均粒径2500nmであるゼオミック(シナネンゼオミック社製、銀系抗菌剤)10.0質量部を含む点。

<相違点4>
本件特許発明1は、「前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備える」と特定されているのに対し、甲1発明はそのような溝部がない点。

イ 相違点についての検討
<相違点1>
甲1発明の「基材」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる」と特定されていることから、「伸展性」を備えることが明らかである。また、甲1には、甲1発明の「基材」は、ポリエチレンテレフタレート等で構成されることにより、粘着フィルムにコシを持たせることができることが、記載されており(摘記1b参照)、ここで、「コシ」とは「弾力・粘りなど。」を意味し、「伸展」(「のばしひろげること。また、のびひろがること」(摘記7b参照)性を有することと矛盾するものではなく、甲12には「前記伸展性を有する合成樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートを素材としたフィルムであり」と記載されていることから(摘記12a参照)、甲1発明の基材は伸展性を有するといえる。
また、甲11には、ポリエチレンテレフタレートは一般的に優れた光の透過性を有することが、記載されているから(摘記11a参照)、甲1発明の基材は透明性を有するといえる。
そうすると、甲1発明の基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムは、透明性を有する伸展性フィルム層であるといえるから、この点は実質的な相違点とはならない。

<相違点2>
甲1発明の粘着フィルムの印刷用コート層は、コート樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、形成したものであり、ここで、ペンタエリスリトールトリアクリレートのような多官能性(メタ)アクリレートは、UV・EB硬化モノマーとして周知であり(摘記31c参照)、甲1発明の印刷用コート層のコート剤樹脂は、本件特許発明1の「紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂」に相当し、一方、本件特許発明1の「紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる」という特定は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種のみからなるとは解されず、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含むと解されるから、表面保護層が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる点は実質的な相違点とはならない。
仮に、表面保護層が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる点が相違点であるとしても、甲1には、甲1発明の印刷用コート層は、コート樹脂として、アクリロイル基を有するものであるのが好ましく、コート剤樹脂に、アクリロイル基および水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートを含有させることにより、アクリロイル基を導入することができることが、記載されている(摘記1c参照)。
そして、甲3、甲29、甲30及び甲31には、甲1発明のような粘着フィルムの表面保護層に使用する樹脂として紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が記載されているから(摘記3c、3d、29a、30a、31a、31b参照)、甲1発明の粘着フィルムの表面保護層として機能する印刷用コート層における樹脂として、甲1に記載され,甲3、甲29、甲30及び甲31にも記載されるペンタエリスリトールトリアクリレートのような紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のみを採用し、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点3>
甲1発明の粘着フィルムにおけるコート樹脂に含まれる抗菌剤である平均粒径2500nmであるゼオミック(シナネンゼオミック社製、銀系抗菌剤)は、引用文献28(摘記28a)によれば、1984年に製品化されたものであって、本件発明の原出願時の令和2年9月23日においても、製品名が同じである以上、摘記28aと同じスペックであると推認できる銀系無機抗菌剤であるから、本件特許発明1の「銀系材料」に相当し、該ゼオミックはコート樹脂中10質量%であるから、本件特許発明1における表面保護層に対する抗ウイルス剤の添加量及びウイルス剤の平均粒径を充足するものである。
ここで、本件特許明細書【0034】には「抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる」と記載されており、甲1発明の銀系無機抗菌剤も抗ウイルス剤として機能するものであるといえる。
さらに、甲14には、化粧シート最表面のコーティング樹脂中に銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウイルス性を有する内装用化粧シートが開示されており(摘記14a参照)、「本発明における銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる」と記載があり(摘記14b参照)、これらの抗菌剤が抗ウイルス剤として使用できることが記載されていえるといえ、甲15には、表層樹脂層上に抗ウイルス機能層が配置された抗ウイルス性の化粧板に係る発明が開示されており(摘記15a参照)、「無機抗ウィルス粒子は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、並びに、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子であることが望ましい。」との記載があり(摘記15b参照)、上記の金属が担持された無機粒子には抗ウイルス性があること、また、「無機抗ウィルス粒子に、ウィルスや菌が接触すると、無機抗ウィルス粒子に含まれる活性成分は、ウィルスや菌を全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、菌やウィルスを減少させることができる。」と記載があるとおり(摘記15c参照)、当該無機抗ウイルス粒子に、抗ウイルス及び抗菌作用があることが記載されているといえ、甲10には、「銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体をUV硬化アクリル塗料に対し1質量%の割合で配合し、抗菌性UV塗料を調整した。この抗菌塗料を、常法にてSUS板に塗布することにより抗コロナウイルス性SUS板を得た」と記載のあるとおり(摘記10d参照)、銀イオン担持体からなる抗薗塗料が抗コロナ)ウイルス性を有することが開示されているといえ、甲3の実施例1では、表面保護層中に抗菌剤として銀担持リン酸カルシウムが添加されているところ(摘記3c参照)、当該発明の課題として「揮発性化合物、悪臭、菌・ウィルスなどの有機物汚染に対して浄化機能を有する化粧シートを提供することを目的とする」と記載されており、その課題を解決するための構成として表面保護層にリン酸塩化合物を配合しているのであるから(摘記3b参照)、その実施例1において表面保護層に添加された銀担持リン酸カルシウムには、抗菌剤としてのみならず抗ウイルス剤としての機能をも有することは明らかであるといえるから、甲1発明の抗菌剤は抗ウイルス剤でもあるといえる。
そして、甲1発明の抗菌剤は、印刷用コート層に対して10質量%含有しており、平均粒径は2500nmであるから、本件特許発明1の「前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり」を充足する。
そうすると、<相違点3>は実質的な相違点とはならない。

<相違点4>
しかし、甲2には、空気抜け容易性の確保のため、化粧シートにも使用される粘着シートの粘着剤層に谷部を設けることが記載されており(摘記2a〜2e参照)、甲17には、粘着加工シートにおいて、空気による「ふくれ」が生じないために、粘着層に小凸部を設けることが記載されており(摘記17a〜17c参照)、甲18には、空気の逃げ道を作るため、化粧シートの粘着剤層に剥離シートの凸状に対応したエア抜き溝を設けることが記載されており(摘記18a〜18c参照)、甲19には、空気を流出させるために、化粧シートの粘着剤層に溝を設けることが記載されており(摘記19a〜19c参照)、甲20には、空気を排除するため、装飾シートの粘着剤に溝を設けることが記載されており(摘記20a参照)、甲21には、空気抜け性の確保のため、粘着シートの粘着剤層に畝を設けることが記載されており(摘記21a〜21c参照)、甲22には、膨れを改善するために、粘着シートの粘着剤層表面に凹凸構造を設けることが記載されており(摘記22a〜摘記22c参照)、甲23には、膨れの形成防止のため、粘着シートの粘着剤層に凹凸面を設けることが記載されており(摘記23a〜23c参照)、甲24には、空気を外部に排出するために、グラフィックシートの接着層に凹凸を有する微細構造を設けることが記載されており(摘記24a〜24c参照)、甲25には、空気を排出するため、粘着剤層に凹凸の形状を設けることが記載されており(摘記25a〜25c参照)、それらは、いずれも本件特許発明1の「前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部」に相当するものといえる。
そうすると、甲1発明の粘着フィルムにおいても、粘着剤層30と被着体との間に閉じこめられた空気を周囲へ流出するために、粘着剤層にそのような溝部を設け、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 本件特許発明1の効果について
本件訂正により、効果を確認すべき実施例の表1は削除されており、本件特許明細書には、実質的な相違点である、表面保護層が、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなり、粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備えることにより奏される効果は示されていないから、本件特許発明1の効果は、甲1発明や甲2、甲3、甲10〜甲25及び甲29〜甲31の記載から、当業者が予測し得ない顕著なものとはいえない。

エ 特許権者の主張及び当審の判断について
特許権者は、令和5年2月28日付けの意見書において「先ず、甲1発明の印刷用コート層を構成するコート剤樹脂は、ペンタエリスリトールトリアクリレートを含有しているが、ペンタエリスリトールトリアクリレートの含有量は1.5質量部であり、主成分は、含有量が100質量部であるウレタン変性ポリエステル樹脂である。そして、「90℃にて1分間の加熱処理を行って形成した」と記載されているように、印刷用コート層は熱硬化性樹脂からなる層である。甲1発明の印刷用コート層を構成するコート剤樹脂において、ペンタエリスリトールトリアクリレートはUV硬化インキとの密着性を向上させる目的で添加している成分であって、印刷用コート層の主成分ではない。
これに対して、本件特許発明1の粘着シートが備える表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるもの、つまり、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を主成分とするものである。
一方、甲3、甲29、甲30及び甲31には、甲1発明のような粘着フィルムの表面保護層に使用する樹脂として紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が記載されているのかもしれない(摘記3c、3d、29a、30a、31a、31b参照)。
しかし、甲3に記載された化粧シートは、「樹脂材料の主成分が硬化型樹脂からなる表面保護層を備え、上記表面保護層はリン酸塩化合物を含むもの」であるのに対して、本件特許発明1の粘着シートが備える表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなり、銀系材料からなる抗ウイルス剤を含むものである。つまり、甲3に記載された化粧シートは前記構成(f)を満たさないし、甲3には、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる化粧シートに抗ウイルス剤を前記構成(d)(e)を充足するように含有させることについての記載も示唆もない。
また、特許権者は、「甲29、甲30及び甲31には、単に、粘着フィルムの表面保護層に使用する樹脂として紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が記載されているだけであって、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなる表面保護層に抗ウイルス剤を、前記構成(d)(e)を充足するように含有させることは記載されていないし、これを示唆する記載もない。
これに対して、本件特許発明1では、紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂からなる表面保護層に抗ウイルス剤を添加するにあたって、銀系材料からなり平均粒径が1μm以上0μm以下である抗ウイルス剤を0.2質量%以上20質量%以下の割合で添加することによって、抗ウイルス剤が均等に分散し、抗ウイルス性を効果的に発揮することができる。つまり、本件特許発明1は、紫外線硬化樹脂および/または電子線硬化樹脂と銀系材料からなり平均粒径がlμm以上10μm以下である抗ウイルス剤とを組み合わせることに特徴があるため、当業者が、甲1に記載された発明、並びに、甲2、甲3、甲10〜甲25、引用文献28及び甲28〜甲31に記載された発明を組み合わせて本件特許発明1に容易に想到することはない。
よって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに、甲2、甲3、甲10〜甲25、引用文献28、及び甲29〜甲31に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。」と主張する。
しかし、前記イ<相違点2>で検討したとおり、本件特許発明1の「紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる」なる特定は、紫紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含むと解されるから、表面保護層が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる点は実質的な相違点とはならない。
仮に、表面保護層が紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなる点が相違点であるとすれば、確かに、甲1発明の印刷用コート層を構成するコート剤樹脂において、ペンタエリスリトールトリアクリレートはUV硬化インキとの密着性を向上させる目的で添加している成分であって、印刷用コート層の主成分ではないが、前記イ<相違点2>で検討したとおり、甲1には、甲1発明の印刷用コート層は、コート樹脂として、アクリロイル基を有するものであるのが好ましく、コート剤樹脂に、アクリロイル基および水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートを含有させることにより、アクリロイル基を導入することができることが、記載されており、甲3、甲29、甲30及び甲31には、甲1発明のような粘着フィルムの表面保護層に使用する樹脂として紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が記載されているから、甲1発明の粘着フィルムの表面保護層として機能する印刷用コート層における樹脂として、ペンタエリスリトールトリアクリレートのような紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のみを採用し、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなるものを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、甲29、甲30及び甲31には、粘着フィルムの表面保護層に使用する樹脂として紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が記載されており、甲1発明の抗ウイルス剤を含む粘着フィルムにおいても、表面保護層に相当する印刷用コート層においても、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂からなるものとすることに阻害要因はない。
よって、特許権者の前記主張は採用できない。

オ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに、甲2、甲3、甲10〜甲25及び甲29〜甲31に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

(2)本件特許発明3
本件特許発明3は、本件特許発明1において「前記伸展性フィルム層には、絵柄層を有する」と特定するものであるが、甲1には、印刷部が基材の表面上に設けられている態様が記載されており(摘記1f参照)、印刷部は本件特許発明1の絵柄層に相当し、上記(1)イ<相違点1>で検討したとおり、基材は本件特許発明1の伸展性フィルム層に相当するから、甲1発明において印刷部が基材の表面上に設けられているもの、すなわち、前記伸展性フィルム層に、絵柄層を有するものとするものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

第6 前記第4における理由1(明確性)についての判断
明確性要件の観点について
一般に『法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。』とされている〔平成21年(行ケ)第10434号判決参照。〕

2 判断
本件特許発明1は、その発明特定事項である「抗ウイルス剤」について「平均粒径は、1μm以上10μm以下であり」と特定されている。
ここで、知財高裁平成21年3月18日判決(平成20年(ネ)第10013号・いわゆる「遠赤外線放射体事件」最高裁ホームページ参照)において、「10μm以下の平均粒子径」という用語の定義に関し「この文言の意義が,どのような測定装置を使用しても「平均粒子径」が10μm以下であるかが確認できればよいという意味であると解して明確性の要件を満たすとすることは,当業者に過度の試行錯誤を課するものであって発明特定事項の開示として相当でなく,また,「平均粒子径」について明確性の要件の充足は要しないというに等しいものというほかない。」とされている。
そして、甲5の52ページ「2.2.1 粒子径」によれば、特に非球形の粒子に関して平均粒子径を定義するに当たっては、最低でも(1)1個の粒子の大きさをどのように表すか〔代表径のとり方〕、(2)粒子の大きさに分布がある粒子群をどのように表すか〔粒度分布の表し方〕、(3)粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶか〔平均粒子径の選び方〕の3点を定義する必要があるとされている。
また、その測定方法も、動的光散乱、走査電子顕微鏡法、透過電子顕微鏡法、コールター法、遠心沈降法、篩い分け法等極めて多種多様なものが存在する。
しかし、(2)当該粒子の粒度分布の表し方に関しては、本件明細書の【0049】及び【表2】において、粒子の量が体積基準で測定されたことの手がかりとなる記載があるとしても、(1)1個の粒子の大きさをどのように表すかに関しては、手がかりとなる記載は存在しないし、また、(3)当該粒子の平均粒子径の選び方に関しても、手がかりとなる記載は存在しないし、それらに関し、出願時の技術常識もない。
そうすると、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると言わざるを得ず、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
本件特許発明1を引用する本件特許発明3も不明確である。

3 特許権者の主張及び当審の判断
(1)特許権者の主張
特許権者は、令和5年2月28日付けの意見書において「先ず、「訂正された本件特許明細書の【表1】からみて、平均粒径が粒径の第1ピークと第2ピークの間にない実施例7、12、16及び17、並びに、比較例3及び4がある」に関しては、表1の数値は誤記であり、正しい数値に変更する訂正を行いたいところであるが、そのような訂正は新規事項の追加と判断されるため、表1を削除するとともに、訂正前の特許請求の範囲に記載された発明に相当するが訂正後の特許請求の範囲に記載された発明には相当しない実施例1、2、及び5〜21と、比較例3及び4を削除する訂正を行っている。
次に、確かに、発明の詳細な説明には、抗ウイルス剤の代表径のとり方、粒度分布の表し方、平均粒子径の選び方について、体積基準で測定されたことの手がかりとなる記載以外の記載はないが、本件特許の技術分野において平均粒径の測定方法は当業者には自明なことであるから、明細書に記載がなくても当業者であれば平均粒径の測定は通常用いる方法で行えばよいと理解できる。
なお、本件特許の技術分野において平均粒径の測定に用いられる通常の測定方法としては、特許権者が提出する次の乙1〜3に記載のものがある。
乙1:「レーザ回折法(LD)」(Webページのタイトル)
https://www.ma1vernpana1ytica1.com/jp/products/techno1ogy/1ightscattering/laser-diffraction
乙2:「粒子径測定における体積平均径[MV]とはどのような粒子径か?」(Webページのタイトル)
https://www.microtrac.com/jp/applications/knowledge-base/volume-average-particle-size/
乙3:「レーザー回折散乱式粒子径分布装置セミナー動画」(Webページのタイトル)
https://www.youtube.com/playlist?list=PL2wIBTZfZRjeXTBzcbu4ijmMdIIalXFmo
なお、「平均粒径」は、JIS Z 8901:2006「試験用粉体及び試験用粒子」で、「平均粒子径光学顕微鏡法又は透過形電子顕微鏡法によって撮影した粒子の直径の算術平均値。」と定義されている。乙1〜3には、「レーザー回折法(レーザー回折散乱法)は、工業分野で最もよく利用されている粒子径分布(粒度分布)測定技術」が記載されている。なお、乙1には、乙3へのリンクが張られている。
また、乙2には、「代表径」のほか、粒子の形状に関し、「(ここで、上述したようにそれぞれの粒子は球形とします。)」と記載されている。
さらに、乙1〜3の発行日については明記されていないが、乙3には「最終更新日:2019/04/16」と記載されている。
してみると、「平均粒径」に関する指摘については、出願時の技術常識を有する当業者であれば特に記載がなくても容易に本件発明を理解することができるから、本件特許を取り消すほどのことではなく、明確性を有すると判断すべきものである。つまり、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは言えない。
以上のことから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
なお、上記主張は、本件特許権者に対する別の異議事件(異議2021−701133)における意見書での主張と同じであり、上記異議事件においては上記主張が認められて、明確性違反は解消されている。」と主張する。
(2)判断
しかし、本件特許発明1の抗ウイルス剤が球形であることは不明であるところ、前記主張において、特許権者も認めるとおり、本件特許明細書において、特に非球形の粒子に関して平均粒子径を定義するに当たって必要とされる、〔平均粒子径の選び方〕について、体積基準で測定されたことの手がかりとなる記載以外の記載はない、すなわち、(1)1個の粒子の大きさをどのように表すか〔代表径のとり方〕、(3)粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶか〔平均粒子径の選び方〕についての記載はない以上、依然として、「平均粒径」の意味が明確であるとはいえない。
また、JIS Z 8901:2006「試験用粉体及び試験用粒子」に記載されている「平均粒子径光学顕微鏡法又は透過形電子顕微鏡法によって撮影した粒子の直径」と、乙第1号証乃至乙第3号証に記載のレーザー回折法(レーザー回折散乱法)は、その原理は全く異なっており、いずれの定義を採用するかによって粒子径(代表径)は全く異なるものになり、その結果、平均粒径も、異なるものとなり、一義的に定まるとはいえない。
さらに、乙第1号証においても「レーザー回折法(レーザー回折散乱法)は、工業分野で最もよく使られる」と記載されているものの、仮にそうであるからと言って、本件発明の粒子径に関して定義がなくても一義的にこれに決まるということを意味するものではない。
実際、被申立人自身の引用するJIS Z 8901:2006「試験用粉体及び試験用粒子」の項においても、「c)粒子径 ふるい分け法によって試験用ふるいの目開きで表したもの,沈降法によるストークス相当径で表したもの,顕微鏡法による円相当径で表したもの及び光散乱法による球相当径,並びに電気抵抗試験方法(1)による球相当値で表したもの。粒径ともいう」と記載されており、前記以外にも、一般的に用いられる粒径の測定方法として、コールター法(電気的検知帯法)、遠心沈降法、篩い分け法などが存在しており、本件明細書の記載からそのいずれの測定方法による平均粒径を指しているか明らかでない以上、平均粒径の技術的意味が理解できるとはいえない。
また、前記乙第2号証の記載は「CSはマイクロトラックで求められた粒子径分布をもとに、粒子形状を球形と仮定して、単位体積あたりの表面積を計算により求めたものです」と記載されているとおり、単にマイクロトラックで求められた粒子径分布を粒子形状を球形と仮定して単位体積あたりの表面積を求めている計算過程を示すものに過ぎず、該粒子群が現実に球形であることを意味するものでなく、ましてや、本件発明の対象となる抗ウイルス剤が球形であることを示すものでもない。
そして、粒子が球形とは限らない場合、その測定方法によって値が異なることから、粒子径の定義、特に、代表径が、一義的に決まるものではない。
なお、別の異議事件(異議2021−701133)は事案を異にするものであるし、現時点で当該事件において明確性違反が解消されているという決定はなされていない。
よって、特許権者の前記主張は採用できない。

第7 前記第4における理由2(サポート要件)についての判断
1 検討手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

2 本件特許発明が解決しようとする課題
本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0005】の記載からみて、「貼り付け対象の元の意匠を保持しながら、物品に抗ウイルス性、或いはそれに加えて他の機能性も付与する粘着シートを提供すること」であると認められる。

3 検討・判断
本件訂正により、本件特許明細書は【0080】【表1】が削除されたものとなり、実施例3及び4における抗ウイルス剤の粒径の第1ピーク、第2ピーク、及び、平均粒径がいずれも不明となり、さらに、実施例3及び4の各評価結果も不明となり、したがって、実施例3及び4が本件特許発明1の実施例に該当するとは認められない。また、実施例が記載されていなくても、本件特許発明1がその課題を解決することができるものであることを理解できるような説明等も発明の詳細な説明には記載されていない。したがって、本件特許発明1が前記課題を解決できるとはいえない。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明3についても同様である。

4 特許権者の主張及び当審の判断
特許権者は、令和4年8月12日付けの意見書において「誤記の訂正が行われたことで、本件特許発明1およびこれを引用する本件特許発明2、3が発明の課題を解決できることが明確になった。」と主張するが、前記3で検討したとおり、【0080】【表1】が削除されたものとなり、その結果、実施例3及び4における抗ウイルス剤の粒径の第1ピーク、第2ピーク、及び、平均粒径がいずれも不明となり、さらに、実施例3及び4の各評価結果も不明となっている以上、本件特許発明1およびこれを引用する本件特許発明2が発明の課題を解決できることが明確になったとはいえない。
よって、特許権者の前記主張は採用できない。

第8むすび
以上のとおりであるから、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1、3に係る記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たさないから、請求項1、3に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
請求項2は本件訂正により削除されたため、請求項2についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】粘着シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般建具などの建装材に用いられる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗ウイルス剤を添加することにより抗ウイルス性の付与を可能にしたシートは、大部分の抗ウイルス剤が樹脂に練り込まれて成形品の中に入っているため、表面において抗ウイルス作用が示されないという課題があった。
これに対し、シートの最表面に抗ウイルス剤を添加することにより、優れた抗ウイルス性を有するシートが提案されている(例えば、特許文献1の段落[0018]及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−080887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シートの張替えは剥がし作業から再施工に至るまで多くの応力と費用を要し、また張替え時に壁面などの基材を傷付けてしまうため建物の劣化を促進してしまう。
また、張替えを避けるためにドアや建具等の物品全体を交換するのは張替え以上のコストを要する。
また、壁面や家具などの現在の意匠をそのまま利用したい消費者にとっては、柄入りや不透明、半透明のシートは障害となる。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、貼り付け対象の元の意匠を保持しながら、物品に抗ウイルス性、或いはそれに加えて他の機能性も付与する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る粘着シートは、透明性を有する伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、前記伸展性フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有し、前記表面保護層は抗ウイルス剤に加え、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含み、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る粘着シートは、前記粘着剤層の前記フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係る粘着シートは、前記抗ウイルス剤が、銀系材料であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る粘着シートは、前記伸展性フィルム層に、絵柄層を有することを特徴とする。
本発明の一態様に係る粘着シートは、前記抗ウイルス剤の粒径のピークが、複数存在することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る粘着シートの製造方法は、透明性を有する伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、前記伸展性フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有し、前記表面保護層は抗ウイルス剤に加え、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含み、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、前記抗ウイルス剤には、平均粒径のものと、平均粒径のものを微粉砕若しくは前記平均粒径と粒径の異なるメッシュのふるいにかけ、抽出した粒径の異なるものとを混在させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、貼り付け対象の元の意匠を保持しながら、物品に抗ウイルス性、或いはそれに加えて他の機能性も付与する粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係わる粘着シートの断面図である。
【図2】抗ウイルス剤の粒度分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下に、図面を参照して、本発明の一つの実施形態に係る粘着シートについて説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。
本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(粘着シート10)
本開示の第1実施形態に係る粘着シート10の基本構成について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る粘着シート10の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る粘着シート10は、伸展性フィルム層20と、伸展性フィルム層20の一方の面(以下、「裏面22」と呼ぶ)側に形成された粘着剤層30とを備えている。また、粘着剤層30の伸展性フィルム層20と反対の面(以下「裏面31」と呼ぶ)側には、剥離性シート40が貼り付けられている。粘着シート10は、例えば、壁紙に好適なものである。
【0013】
(伸展性フィルム層20)
伸展性フィルム層20は、第一基材層50と、第一基材層50の粘着剤層30と反対の面、すなわち表面51の側に配置された第二基材層60と、第一基材層50と第二基材層60との間に配置された絵柄層70とを備えるようにした。
なお、伸展性フィルム層20の第二基材層60側の表面21に、表面保護層80が配置された例について説明するが、このような構成に限られない。
【0014】
(第一基材層50)
第一基材層50は、第二基材層60とともに粘着シート10のベースとなるシート状の部材である。
第一基材層50の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネードのような耐熱性、耐火性、及び機械的強度に優れた樹脂等を用いることができる。第一基材層50は透明性を有する層である。
また、第一基材層50の厚さは、目標とする十分な強度等の諸物性とを付与しつつ、隠蔽性を満たすために、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。50μm以上の場合には、強度等の諸物性と隠蔽性とが向上する。また、150μm以下の場合には、防火性能等の他の諸物性が向上する。
【0015】
(第二基材層60)
第二基材層60は、第一基材層50とともに粘着シート10のベースとなるシート状の部材である。
第二基材層60を構成する樹脂としては、第一基材層50のフィルムと同様に、耐熱性、耐寒性、及び機械的強度の点から、例えば、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネート等を用いることができる。また、第二基材層60は、絵柄層70を視認可能な透明性を有する。
第二基材層60の厚さは、目標とする十分な弾性と耐衝撃性を付与しつつ、防火性能等の他の諸物性を満たすために、50μm以上100μm以下とすることが好ましい。
また、本例においては、第二基材層60が設けられている例について説明するが、このような構成に限られない。例えば、第二基材層60は、必要に応じて設けられていなくても良い。
【0016】
(絵柄層70)
絵柄層70は、絵柄模様により粘着シート10の表層側を加飾するための層である。
絵柄層70としては、第一基材層50の表面51に絵柄模様を印刷することで形成され、印刷インキの塗膜を用いる。印刷インキとしては、壁紙に一般的に求められるような耐光性、発色性及び使用成分の安全性の要件を満たしていれば、特に限定されるものではない。安全性の要件としては、例えば、顔料や添加剤として重金属や硫黄化合物を含まない材料等が挙げられる。絵柄層70は貼り付け対象となる物品の意匠の視認を妨げない程度のものとする。
絵柄層70の厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。絵柄層70の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが好ましい。
また、本例においては、第一基材層50の表面51に絵柄層70が設けられた例について説明するが、このような構成に限られない。例えば、絵柄層70は、必要に応じて設けられていなくても良い。
【0017】
(表面保護層80)
表面保護層80は、第一基材層5及び絵柄層70を保護するための層である。
表面保護層80は、貼り付け対象の物品の意匠及び絵柄層70を視認可能な透明性を有するとともに、保護に必要な十分な強度、耐汚染性、耐候性等の物性を有する。
表面保護層80としては、例えば、第二基材層60の絵柄層70と反対側の面(以下「表面21」と呼ぶ)に、メチルエチルケトン等の溶媒とポリウレタン系樹脂とイソシアネート系の硬化剤とを含むコート剤を塗布・乾燥させた後に紫外線照射により硬化させることで形成される塗膜を用いる。
また、表面保護層80を構成する樹脂としては、他にも、アクリル樹脂系コート剤等を用いても良い。表面保護層80の坪量は、表面強度の高さの点から、2.0g/m2以上7.0g/m2以下とすることが好ましい。
【0018】
具体的には、表面保護層80は、粘着シート10に耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層80は単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層80としても良い。
図1に示すように、本実施形態の粘着シート10では、表面保護層80を単層として設けている。
表面保護層80の形成方法は、それぞれの層を、硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置、熱乾燥装置及び紫外線照射装置を用いて塗布及び塗膜の硬化を行うことで、表面保護層80を形成する。
【0019】
また、表面保護層80は、曲げ加工性、耐候性、耐傷付性や清掃性に関してその優劣を左右する重要な役割をもつ。
表面保護層80は、硬化型樹脂(硬化性樹脂)を主成分とする。
すなわち、樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上を指す。表面保護層80には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤等を含んでも良い。
【0020】
本実施形態では、表面保護層80は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも1種を含んでいる。
なお、電子線硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とをまとめて、以下、「電離放射線硬化型樹脂」とも記載する。
表面保護層80は、一般的に反応性樹脂を塗工することにより塗膜形成をし、その後、加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成ことができる。
表面保護層80においては、硬化方法の違いによる特性差もある。
例えば、一般的に電離放射線硬化型樹脂で形成された表面保護層80は、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。
一方で、熱硬化型樹脂で形成された表面保護層80は、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従などの柔軟性に優れる傾向にある。
【0021】
表面保護層80は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のいずれか1種を主成分としても良い。
つまり、表面保護層80の主成分は、熱硬化型樹脂単体であっても良いし、紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂単体であっても良い。
例えば、粘着シート10を部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性(例えば加工適正)が要求されることが多い。このため、例えば建具に用いる粘着シート10において、表面保護層80の主成分には、熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。
また、粘着シート10において柔軟性よりも耐傷性が求められる場合には、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
また、表面保護層80の主成分は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物であっても良い。当該混合物を主成分とする場合、使用用途によって、表面保護層80における熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の比率をコントロールすることで、粘着シート10を各種用途の要求に応じて使い分けることができる。
例えば、粘着シート10を建具に用いる場合、表面保護層80の主成分となる熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、熱硬化型樹脂を最も多く含有することが好ましい。
具体的には、当該混合物において熱硬化型樹脂が50重量%を超えていれば良く、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0023】
また、例えば、粘着シート10に耐傷性が求められる場合、表面保護層80の主成分となる熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の少なくとも一方を最も多く含有することが好ましい。
具体的には、当該混合物において紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が50重量%を超えていれば良く、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0024】
このように、表面保護層80の主成分が、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂の混合物とすることで、耐傷性を満足させると同時に曲げ加工においては表面保護層80の白化や割れが発生し難くなる。
ただし、表面保護層80に用いる樹脂の硬化方法の違いのみで、上記のような耐傷付性や加工適性といった粘着シート10の性能が決まるわけではない。
粘着シート10の性能(ここでは耐傷付性や加工適性)は、樹脂自体の材料設計やフィラーなどの添加剤の添加作用、つまり表面保護層80に含まれる各種成分の物性が性能に大きく寄与する。このため、表面保護層80全体としての設計が重要になってくる。
【0025】
(電離放射線硬化型樹脂)
ここで表面保護層80に用いる電離放射線硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂を含む)としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。
これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。電離放射線硬化型樹脂における硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、上述のプレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。
ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0026】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
【0028】
また、上述のプレポリマーとして、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。
ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0029】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。
通常は紫外線又は電子線を用いれば良いが、可視光線、X線、イオン線等を用いても良い。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。
紫外線の波長としては、通常、190nm以上380nm以下の範囲が好ましい。
【0030】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。
その中でも、特に100keV以上1000keV以下の範囲のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100keV以上300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
【0031】
(熱硬化型樹脂)
ここで、表面保護層80に用いる熱硬化型樹脂としては、特に限定されないが、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。また、熱硬化型樹脂としてはこれらに限られず、1液反応硬化型のポリウレタン系樹脂や、1液又は2液反応硬化型のエポキシ系樹脂などを用いても良い。
【0032】
また、表面保護層80は、界面活性剤が添加されている。
界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の少なくとも一種を含んでいる。
界面活性剤が添加されていることにより、銀系抗ウイルス剤と表面保護層のバインダ中の相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス剤の沈殿等による濃度のばらつきが抑制された粘着シートを得ることができる。
表面保護層80の層厚は、抗ウイルス剤を含んでいる層において3μm以上15μm以下の範囲内が望ましい。
表面保護層80の厚さが3μm以上であれば、耐傷性、耐摩耗性、耐候性等、各種耐性が向上する。第1表面保護層80aの厚さが15μm以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することができる。
【0033】
また、表面保護層80の表面にエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を行い、エンボス模様を賦型(付与)しても良い。
この場合、表面保護層80の表面に賦型されたエンボス模様により、触感による立体感をより感じさせる構成とすることができる。
エンボス加工では、例えば、深度15μm以上の凹部をエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、粘着シート10に凹凸形状を施すようにしても良い。
硬度の計測方法としては、例えば、JIS K−6253に示す測定方法が挙げられる。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。なお、後述するように、エンボス加工を省略し、エンボス模様を施さなくても良い。
【0034】
(抗ウイルス剤)
表面保護層80は、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含んでいる。
抗ウイルス剤は、銀系材料であることが好ましい。
抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる、また抗ウイルス剤としてジンクピリジオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であっても良い。
【0035】
(抗ウイルス剤の添加量)
表面保護層80における抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下の範囲内である。
抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上する。抗ウイルス剤の添加量が20質量%以下である場合、耐傷性が向上する。
【0036】
(抗ウイルス剤の平均粒径)
抗ウイルス剤の平均粒径は、表面保護層80の厚さに対しては0.5倍以上2倍以下であることが望ましい。
すなわち、抗ウイルス剤の平均粒径をΦ、表面保護層の厚さをDとしたときに、0.5≦Φ≦2Dの関係が成り立つことが望ましい。
抗ウイルス剤の平均粒径が表面保護層80の0.5倍以上2倍以下である場合、抗ウイルス剤との接触面先拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積拡大により抗ウイルス性が良好になる。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが望ましい。
抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、表面保護層80と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
【0037】
(抗ウイルス剤の粒径の複数のピーク)
また、抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることが好ましい。
具体的には、抗ウイルス剤の粒径のピークは2つのピークを有し、2つのピークは、1μm以上5μm以下の範囲である第1ピークと、5μm以上10μm以下の範囲である第2ピークとを含んでいることが好ましい。
ここで、抗ウイルス剤の粒径の第2ピークは、第1ピークより大きい値とする。
抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることにより、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加することができる。このため、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性が向上する。
【0038】
(表面保護層80)
表面保護層80は、抗ウイルス剤以外に様々な機能性を有する薬剤を添加する事が可能である。
機能性としては抗菌性、抗アレルゲン性、消臭性、赤外線反射等の様々な選択肢が考えられ、複数種の機能を有するものであっても良い。
【0039】
(粘着剤層30)
粘着剤層30は、伸展性フィルム層20に粘着性をもたせるための層である。
粘着剤層30を構成する粘着剤組成物としては、一例として、アクリル酸又はアクリル酸エステルを出発原料とするアクリル系感圧接着剤を用いる。
アクリル系感圧接着剤としては、例えば、米国特許第3239478号明細書、同第3935338号明細書、同第5169727号明細書、再発行特許第24906号明細書、米国特許第4952650号明細書及び同第4181752号明細書に開示されている接着剤を採用できる。また、粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ナイフコーティングを採用できる。
また、粘着剤層30の最厚部の厚さは、施工性及び十分な粘着力を付与するために、粘着剤組成物の塗布後に乾燥を経た段階において、20μm以上であることが好ましい。
【0040】
(溝部90)
粘着剤層30の裏面31には、後述する印刷樹脂皮膜100の形状に合わせた凹凸を形成しても良い。この場合、凹部として複数の溝部90が形成されている。
各溝部90は、粘着剤層30の外周部分で終端するか、或いは粘着剤層30の外周部分で終端する他の溝部90と連通している。
これにより、粘着シート10を被着体に貼り付けるときに、粘着剤層30と被着体との間に閉じこめられた空気を周囲へ流出可能となっている。そして、空気が周囲に流出した後、溝部90の底部を被着体の表面と密着させ、これにより溝部90を消失させることが可能となっている。また、溝部90の底部を被着体の表面と密着させることで、耐衝撃性及び耐寒性を向上可能となっている。
【0041】
溝部90の断面形状としては、例えば、V字型、U字型、長方形型、台形型、直線型などを採用できる。
溝部90の形成方法としては、例えば、溝部90の形成用の凹凸を有する剥離性シート40を貼り付けることで、溝部90を形成する方法によって製造することが好ましい。
他にも、例えば、伸展性フィルム層20の第一基材層50の裏面22に粘着剤を均一に塗布した後に溝部90の形成用の凹凸を有する型を用いて型押することで、溝部90を形成する方法を採用できる。
【0042】
(印刷樹脂皮膜100)
本製品には、印刷樹脂皮膜100を形成しても良い。
印刷樹脂皮膜100は、剥離性シート40の粘着剤層30側の面、すなわち隣接面41に形成された、溝部90にはまり合う凸部である。印刷樹脂皮膜100を構成する材料としては、剥離性シート40との接着性が弱く、剥離性シート40に連続的な開口部を有するパターンを印刷できる材料であれば、特に限定されるものではない。
また、印刷樹脂皮膜100を構成する材料として、粘着剤層30を構成する粘着剤組成物のアクリルやトルエン等の溶剤に侵されることなく、長期間にわたって印刷樹脂皮膜100を維持可能な材料を用いる。たとえば、印刷樹脂皮膜100を構成する材料としては、メチルエチルケトン等の溶媒に混合したポリウレタン系樹脂を用いることができる。
【0043】
印刷樹脂皮膜100を形成する方法としては、例えば、グラビア印刷により塗布して印刷樹脂皮膜100を形成する方法を採用できる。他にも、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ロータリー印刷等の印刷手法を用いることができる。また、ローラ状の金型を用いて印刷樹脂皮膜100を型押しする方法、ローラ状の金型と流動性の樹脂組成物とを用いて、プラスチックフィルム等の表面に樹脂製の印刷樹脂皮膜100を形成する方法を採用できる。
印刷樹脂皮膜100は、前述した溝部90の形状に合わせて、剥離性シート40の外周部分で終端するか、或いは剥離性シート40の外周部分で終端する他の印刷樹脂皮膜100と連通している。
印刷樹脂皮膜100を外周部分で終端させる事で、気泡を侵入させずに粘着シート10を被着体に接着することができる。また、粘着シート10を接着して長期間経過した後も、剥がした痕が残らないように剥がすことができる。
【0044】
(剥離性シート40)
剥離性シート40は、粘着剤層30に貼り付けられるシート状の部材である。
剥離性シート40としては、例えば、プラスチックフィルムや紙等の適宜な基材の表面にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層した積層体、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを採用できる。
(製造方法)
上記粘着シート10の製造方法は、次の通りである。
粘着シート10は、(1)フィルム層20、(2)粘着剤層30、(3)剥離性シート40の順に積層して形成する。
【0045】
(フィルム層20の第一基材層50の形成)
フィルム層20の第一基材層50として、厚さ30μmの無着色ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス製、OW)を用意した。
(絵柄層70の形成)
絵柄層70として、第一基材層50の表面51に絵柄模様を印刷することで形成する。
(第二基材層60の形成)
絵柄層70の上層に、第二基材層60として、厚さ80μmの無着色ポリプロピレンフィルム(株式会社プライムポリマー製、CPS−DB)をラミネートした。
【0046】
(表面保護層80)
第二基材層60の表面に、グラビア印刷により熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製UCクリヤー)を厚さ3μmで塗布して表面保護層80を形成する。
このとき、表面保護層80中に、抗ウイルス剤として銀系無機添加剤(株式会社タイショーテクノクス製、ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した。
なお、抗ウイルス剤は、無機系材料に銀イオンを担持させた構造となっている。また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。このとき、抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。表面保護層の最表層(第1表面保護層)の厚さD(本実施例では、3μm)に対する抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1.67Dとした。これにより、伸展性フィルム層20を作製した。
【0047】
(粘着剤層30の形成)
続いて、伸展性フィルム層20の裏面22に、コーティング機により、アクリル系感圧接着剤(東洋インキ製造株式会社、BPS6113)の塗布・乾燥を行って、粘着剤層30を形成する。
粘着剤層30の乾燥後の最厚部の厚さは、10μmとした。
(剥離性シート40の形成)
最後に、剥離性シート40として、厚さ120μmの積層シートを用意した。
積層シートとしては、ポリプロピレンフィルム層の上層にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層し、ポリプロピレンフィルム層の下層に紙層をラミネートしたシート(サンエー化研株式会社製、SHA80)を用いた。
以上により、粘着シート10を製造した。
【0048】
(抗ウイルス剤の複数のピーク)
抗ウイルス剤として例示した「ビオサイドTB−B100」の粒度分布が、図2に示すように、5μm未満と5μm以上との間に、少なくとも2つのピークを持つ場合には、そのまま使用する。
これに対し、「ビオサイドTB−B100」の粒度分布が、少なくとも2つのピークを持っていない場合には、平均粒径5μmのものと、平均粒径のものを微粉砕若しくは前記平均粒径と粒径の異なるメッシュのふるいにかけ、抽出した粒径の異なるものとを混在させても良い。
【0049】
その結果、抗ウイルス剤の粒度分布が、図2に示すように、5μm未満と5μm以上との間に、少なくとも2つのピークを持つ。
例えば、粒度分布計を用いて測定した前記「ビオサイドTB−B100」の「平均粒径」は、「6.86μm」であった。これが1つ目のピークである。
2つ目のピークは、抗ウイルス剤の固有のものであっても良いし、或いは人工的に2つ目のピークを持たせても良い。
例えば、前記「ビオサイドTB−B100」を微粉砕し、平均粒径を0.49μmとした。
【0050】
その結果、「平均粒径」の「6.86μm」のものと、微粉砕した「平均粒径を0.49μm」のものとを、例えば1:1で混ぜることで、平均粒径「6.86μm」による1つ目のピークと、微粉砕した「平均粒径を0.49μm」による2つ目のピークとを人工的に作ることができる。
また、微粉砕に限らず、前記「ビオサイドTB−B100」を、「平均粒径」を超える10μmメッシュのふるいにかけても良い。逆に、「平均粒径」未満、例えば「5.0μm」未満のメッシュのふるいにかけても良い。
【0051】
(実施形態の作用・効果)
実施形態の作用・効果は、次の通りである。
(1)本実施形態の粘着シート10は、表面保護層80に、0.2質量%以上20質量%以下の抗ウイルス剤を含む。
上記構成によれば、製品表面における抗ウイルス性と耐傷性を十分に確保できる。
また、本実施形態の粘着シート10は、第一基材層50及び第二基材層60が透明性を有する。
上記構成によれば、貼り付け対象の物品の意匠を保持する事ができる。
さらに、表面保護層80は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含む。
【0052】
上記構成によれば、貼り付け対象の元の意匠を保持しながら、物品に抗ウイルス性、或いはそれに加えて、例えば用途に応じ、柔軟性(例えば適正加工)、耐傷性、曲げ加工などの他の機能性も付与できる。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下である。
上記構成によれば、抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、表面保護層80と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
【0053】
(2)本実施形態の粘着シート10は、粘着剤層30のフィルム層20と反対の面側に形成された複数の溝部90を備える。
上記構成によれば、粘着シート10を被着体に貼り付けるときに、粘着剤層30と被着体との間に閉じこめられた空気を周囲へ流出可能である。そして、空気が周囲に流出した後、溝部90の底部を被着体の表面と密着させ、これにより溝部90を消失させることが可能である。また、溝部90の底部を被着体の表面と密着させることで、耐衝撃性及び耐寒性を向上可能である。
【0054】
(3)本実施形態の粘着シート10は、抗ウイルス剤が、銀系材料である。
上記構成によれば、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。
(4)本実施形態の粘着シート10は、絵柄層70を有する。
上記構成によれば、絵柄層70の絵柄模様により粘着シート10の表層側を加飾できる。
なお、絵柄層70は貼り付け対象となる物品の意匠の視認を妨げない程度のものとしている。
【0055】
(5)本実施形態の粘着シート10は、抗ウイルス剤の粒径のピークが、複数存在する。
上記構成によれば、抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることにより、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加できる。このため、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性を向上できる。
【0056】
(6)本実施形態の粘着シート10の製造方法は、透明性を有する伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、前記伸展性フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有し、前記表面保護層は抗ウイルス剤に加え、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種を含み、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、前記抗ウイルス剤には、平均粒径のものと、平均粒径のものを微粉砕若しくは前記平均粒径と粒径の異なるメッシュのふるいにかけ、抽出した粒径の異なるものとを混在させている。
上記構成によれば、抗ウイルス剤の粒径のピークは複数存在していることにより、抗ウイルス剤の充填密度がより向上し、抗ウイルス剤をより多く添加できる。このため、抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス自体の表面積も拡大することにより、抗ウイルス性を向上できる。
【実施例】
【0057】
(参考例1)
参考例1では、まず、第一基材層として、厚さ30μmの無着色ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス製、OW)を用意した。
続いて、絵柄層の上層に、第二基材層として、厚さ80μmの無着色ポリプロピレンフィルム(株式会社プライムポリマー製、CPS−DB)をラミネートした。
第二基材層の表面に、グラビア印刷により熱硬化性樹脂(DICグラフィックス株式会社製UCクリヤー)を厚さ3μmで塗布して表面保護層を形成した。
このとき、表面保護層中に、抗ウイルス剤として銀系無機添加剤(株式会社タイショーテクノクス製、ビオサイドTB−B100)を、固形分比率で0.2質量%配合した。
【0058】
なお、抗ウイルス剤は、無機系材料に銀イオンを担持させた構造となっている。
また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を5μmとした。
このとき、抗ウイルス剤の粒径の第1ピークを3μmとし、第2のピークを7μmとした。
また、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の厚さD(本参考例では、3μm)に対する抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)を1.67Dとした。これにより、伸展性フィルム層を作製した。
【0059】
続いて、伸展性フィルム層の裏面に、コーティング機により、アクリル系感圧接着剤(東洋インキ製造株式会社、BPS6113)の塗布・乾燥を行って、粘着剤層を形成した。粘着剤層の乾燥後の最厚部の厚さは、10μmとした。
最後に、剥離性シートとして、厚さ120μmの積層シートを用意した。積層シートとしては、ポリプロピレンフィルム層の上層にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層し、ポリプロピレンフィルム層の下層に紙層をラミネートしたシート(サンエー化研株式会社製、SHA80)を用いた。
以上により、参考例1の粘着シートを作製した。
【0060】
(参考例2)
参考例2では、抗ウイルス剤の添加量を7質量%に変更した。それ以外は参考例1と同様の方法で、参考例2の粘着シートを作製した。
(実施例3)
実施例3では、表面保護層の主成分を紫外線硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート樹脂)に変更した。また、表面保護層の厚さを6μmに変更した。それ以外は参考例2と同様の方法で、実施例3の粘着シートを作製した。
【0061】
(実施例4)
実施例4では、表面保護層の最表層(第1表面保護層)の主成分を電子線硬化性型樹脂に変更した。それ以外は参考例2と同様の方法で、実施例4の粘着シートを作製した。
【0062】(削除)
【0063】(削除)
【0064】(削除)
【0065】(削除)
【0066】(削除)
【0067】(削除)
【0068】(削除)
【0069】(削除)
【0070】
(比較例1)
比較例1では、表面保護層において、抗ウイルス剤の添加を省略した。それ以外は参考例2と同様の方法で、比較例1の粘着シートを作製した。
(比較例2)
比較例2では、抗ウイルス剤の添加量を0.1質量%に変更した。それ以外は参考例1と同様の方法で、比較例2の粘着シートを作製した。
【0071】(削除)
【0072】
(比較例5)
比較例5では、第一基材層50を着色ポリプロピレンフィルム、すなわち、「透明」から「着色」に変更した。それ以外は参考例2と同様の方法で、比較例5の粘着シートを作製した。
(比較例6)
比較例6では、抗ウイルス剤の添加量を14質量%に変更した。それ以外は参考例1と同様の方法で、比較例6の粘着シートを作製した。
【0073】
(評価判定)
得られた粘着シートについて、以下の方法で抗ウイルス性能及び曲げ加工性の評価を行った。
(抗ウイルス性能)
得られた粘着シートをISO 21702に準じて抗ウイルス試験を実施した。50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
【0074】
(ウイルス感染価の測定(プラーク法))
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO2・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2〜3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
(ウイルス感染価の算出)
以下の式に伴い、試料1cm2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0075】
(抗ウイルス活性値の算出)
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。ここで、抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)−log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm2当たりのウイルス感染価の常用対数値
算出した抗ウイルス活性値を以下の「◎」、「○」、「×」の4段階で評価した。
(評価基準)
◎:抗ウイルス活性値3log10以上である場合
○:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log10未満である場合
【0076】
(曲げ加工性)
建具基材である厚み3mmのMDF(広葉樹)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(重量比BA−10L/BA−11B=100:2.5))をウエット状態で100g/m2に塗工した後、実施例1〜実施例21及び比較例1〜比較例6の粘着シートをそれぞれ貼り合わせ、24時間養生することで、建具化粧材とした。
これらの建具化粧材にVカット加工を実施し、折り曲げ頂上部の目視確認にて外観状態を確認した。Vカット加工としては、建具化粧材において粘着シートが張り付けられていない面側から上記建具基材と粘着シートとを貼り合わせている境界まで、粘着シートにキズが付かないようにV型の溝を入れた。次に、粘着シート1を貼付した面が山折りとなるようにして、建具基材を当該V型の溝に沿って90度まで折り曲げた。
【0077】
(評価基準)
◎:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が全く無し。
○:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等がほとんど無し。
△:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化が一部のみ発生。
×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化発生。
【0078】
(下柄視認性評価)
試験片を厚さ1mmの透明アクリル板に貼り付けてからJIS A6921隠蔽性グレースケールの上に置き、直後にD65光源の下で模様が視認できるか確認し、4段階で評価した。
×:全く視認できない
△:ほぼ視認できない
○:微かに視認できる
◎:視認できる
【0079】(削除)
【0080】(削除)
【0081】
これらの評価結果から、抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%以上である場合には、抗ウイルス剤の添加量が0.2質量%未満である場合と比べて抗ウイルス性が高いことがわかった。
また、抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)が1μm以上10μm以下である場合には、比較例3のように抗ウイルス剤の平均粒径(Φ)が1μm未満かつ10μmを超える場合と比べて抗ウイルス性が高いことがわかった。
【0082】
そして、透明な基材層を使用した場合には上記層構成で貼り付け対象の意匠が十分に視認できる事が分かった。
なお、本発明の粘着シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 粘着シート
20 伸展性フィルム層
21 表面
22 裏面
30 粘着剤層
31 裏面
40 剥離性シート
41 隣接面
50 第一基材層
51 表面
60 第二基材層
70 絵柄層
80 表面保護層
90 溝部
100 印刷樹脂皮膜
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、前記伸展性フィルム層の他方の面側に表面保護層とを有し、前記表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一種からなるとともに、抗ウイルス剤を含み、前記表面保護層に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上20質量%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であり、
前記抗ウイルス剤は、銀系材料であり、
前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備えることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記伸展性フィルム層には、絵柄層を有することを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-08-16 
出願番号 P2021-024668
審決分類 P 1 651・ 113- ZAA (C09J)
P 1 651・ 121- ZAA (C09J)
P 1 651・ 537- ZAA (C09J)
P 1 651・ 536- ZAA (C09J)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 関根 裕
特許庁審判官 門前 浩一
瀬下 浩一
登録日 2021-06-21 
登録番号 6901052
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 粘着シート  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 宮坂 徹  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 廣瀬 一  
代理人 宮坂 徹  
代理人 廣瀬 一  

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