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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E03C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E03C
管理番号 1404759
総通号数 24 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-09-02 
確定日 2023-10-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7034626号発明「排水トラップ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7034626号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 特許第7034626号の請求項1−5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7034626号(以下「本件特許」という。)に係る特許についての出願は、平成29年8月10日に出願され、令和4年3月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 9月 2日 特許異議申立人吉田瑞代(以下「申立人」と いう。)による請求項1〜5に係る特許に対 する特許異議の申立て
同年11月25日付け 取消理由通知書
令和5年 1月27日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 3月10日 意見書の提出(申立人)
同年 4月20日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月26日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 8月 4日 意見書の提出(申立人)

なお、令和5年1月27日にされた訂正の請求は、同年6月26日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和5年6月26日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態」と記載されているのを、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3〜5も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレても」と記載されているのを、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3〜5も同様に訂正する。)。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態」と記載されているのを、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3〜5も同様に訂正する。)。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレても」と記載されているのを、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3〜5も同様に訂正する。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、請求項1の「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態」における、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線」および「前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線」について、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線」および「前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線」と特定して限定するものである。
また訂正前の請求項3〜5が請求項1を引用するので、請求項1の訂正により、訂正後の請求項3〜5も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0032】には、「図3(a)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置である場合を示す」および「第1排水トラップ体10における12の開口中心を通る仮想中心線と、第2排水トラップ体20における22の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる理想的な取り付け状態にある。」との記載があり、【図3】(a)には、第1排水トラップ体10における固定フランジ部材12の開口中心を通って第2排水トラップ体20への近接方向D1に向かう仮想中心線と、第2排水トラップ体20における固定フランジ部材22の開口中心を通って第1排水トラップ体10への近接方向D2に向かう仮想中心線とが一直線になる第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の配置状態が示されている。
また、段落【0033】には、「第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置であれば、従来の排水トラップ装置のように、D1方向へ突出させた仮想連結管101(図3(a)〜(c)において二点鎖線で示す)を第1排水トラップ体10に設け、D2方向へ突出させた仮想連結管201(図3(a)〜(c) において二点鎖線で示す)を第2排水トラップ体20に設けた場合でも、第1排水トラップ体10の仮想連結管101と第2排水トラップ体20の仮想連結管201とがほぼズレ無しで対向状に配置される」と表記しており、第1排水トラップ体の第1仮想連結管と第2排水トラップ体の第2仮想連結管が仮想中心線上に揃った取り付け状態が、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体の理想的な配置であると示されている。
よって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、請求項1に記載された「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレ」ることについて、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレ」ることを特定して限定するものである。
また訂正前の請求項3〜5が請求項1を引用するので、請求項1の訂正により、訂正後の請求項3〜5も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項の有無
本件明細書等の段落【0035】には、「図3(b)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へαだけズレが生じている場合を示す」および「仮想連結管101と仮想連結管201はそれぞれ近接方向D1,D2へ突出しているため、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保することができず、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することは困難である。」との記載があり、【図3】(b)には、第1排水トラップ体10の仮想連結管101の開口端面と第2排水トラップ体20の仮想連結管201の開口端面とが、近接方向D1,D1方向に直交する方向(C1,C2方向)にαだけズレた配置状態が示されている。
さらに、段落【0037】には、「図3(c)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向ヘ−αだけズレが生じている場合を示すものである。」および「仮想連結管101と仮想連結管201はそれぞれ近接方向D1,D2へ突出しているため、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保することができず、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することは困難である。」との記載があり、【図3】(c)には、第1排水トラップ体10の仮想連結管101の開口端面と第2排水トラップ体20の仮想連結管201の開口端面とが、近接方向D1,D1方向に直交する方向(C1,C2方向)に−αだけズレた配置状態が示されている。
よって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、請求項2の「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態」における、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線」および「前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通る仮想中心線」について、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線」および「前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線」と特定して限定するものである。
また訂正前の請求項3〜5が請求項2を引用するので、請求項2の訂正により、訂正後の請求項3〜5も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項の有無
本件明細書等の段落【0032】には、「図3(a)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置である場合を示す」および「第1排水トラップ体10における12の開口中心を通る仮想中心線と、第2排水トラップ体20における22の開口中心を通る仮想中心線とが一直線になる理想的な取り付け状態にある。」との記載があり、【図3】(a)には、第1排水トラップ体10における固定フランジ部材12の開口中心を通って第2排水トラップ体20への近接方向D1に向かう仮想中心線と、第2排水トラップ体20における固定フランジ部材22の開口中心を通って第1排水トラップ体10への近接方向D2に向かう仮想中心線とが一直線になる第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の配置状態が示されている。
また、段落【0033】には、「第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置であれば、従来の排水トラップ装置のように、D1方向へ突出させた仮想連結管101(図3(a)〜(c)において二点鎖線で示す)を第1排水トラップ体10に設け、D2方向へ突出させた仮想連結管201(図3(a)〜(c) において二点鎖線で示す)を第2排水トラップ体20に設けた場合でも、第1排水トラップ体10の仮想連結管101と第2排水トラップ体20の仮想連結管201とがほぼズレ無しで対向状に配置される」と表記しており、第1排水トラップ体の第1仮想連結管と第2排水トラップ体の第2仮想連結管が仮想中心線上に揃った取り付け状態が、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体の理想的な配置であると示されている。
よって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4に係る訂正は、請求項2に記載された「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレ」ることについて、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレ」ることを特定して限定するものである。
また訂正前の請求項3〜5が請求項2を引用するので、請求項2の訂正により、訂正後の請求項3〜5も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 新規事項の有無
本件明細書等の段落【0035】には、「図3(b)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へαだけズレが生じている場合を示す」および「仮想連結管101と仮想連結管201はそれぞれ近接方向D1,D2へ突出しているため、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保することができず、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することは困難である。」との記載があり、【図3】(b)には、第1排水トラップ体10の仮想連結管101の開口端面と第2排水トラップ体20の仮想連結管201の開口端面とが、近接方向D1,D1方向に直交する方向(C1,C2方向)にαだけズレた配置状態が示されている。
さらに、段落【0037】には、「図3(c)は、排水トラップ装置1を浴槽側パン41と洗い場側パン42へ取り付けるとき、第1排水トラップ体10と第2排水トラップ体20の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向ヘ−αだけズレが生じている場合を示すものである。」および「仮想連結管101と仮想連結管201はそれぞれ近接方向D1,D2へ突出しているため、フレキシブルホース30で接続するのに必要な長さ以上の離隔距離を確保することができず、フレキシブルホース30を用いて仮想連結管101と仮想連結管201を無理なく接続することは困難である。」との記載があり、【図3】(c)には、第1排水トラップ体10の仮想連結管101の開口端面と第2排水トラップ体20の仮想連結管201の開口端面とが、近接方向D1,D1方向に直交する方向(C1,C2方向)に−αだけズレた配置状態が示されている。
よって、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

3 独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の請求項1〜5が特許異議の申立ての対象とされているので、上記2(1)〜(4)の各アのとおり請求項1〜5について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1〜5に係る発明には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

4 一群の請求項について
訂正前の請求項3〜5は、請求項1を引用しており、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるとともに、訂正前の請求項3〜5は、請求項2を引用しており、訂正事項3及び4によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
そうすると、訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項1〜5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項1〜4に係る訂正は、一群の請求項〔1−5〕についてするものである。

5 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜5に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ、請求項番号により「本件発明1」等という。また、符号1A等は、分説するため当審で付した。「1A」等が付された事項を、以下「特定事項1A」等という。)。

「【請求項1】
1A 浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、
1B 前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
1C 前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
1E を備えた排水トラップ装置において、
1D 前記排水連通手段は、
1D1 前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
1D2 前記第1排水トラップ体の通水孔および前記第2排水トラップ体の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け、
1D3 前記第1排水トラップ体および前記第2排水トラップ体にそれぞれ設けた前記配管継ぎ手の前記連結口同士を中空の可撓性連結体で接続し、
1D4 前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレることで前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記配管継ぎ手の前記連結口同士の離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるようにした、
1E ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項2】
2A 浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、
2B 前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
2C 前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
2E を備えた排水トラップ装置において、
2D 前記排水連通手段は、
2D1 前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
2D2 前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の何れか一方の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け、
2D3 前記配管継ぎ手を設けない他方の前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体には、前記通水孔から外方に突出する連結管を設け、
2D4 前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の一方に設けた前記配管継ぎ手の前記連結口と前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の他方に設けた前記連結管の開口端と、を中空の可撓性連結体で接続し、
2D5 前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記連結管の開口端と前記配管継ぎ手の前記連通口との離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるようにした、
2E ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項3】
3F 前記第1排水トラップ体および/または前記第2排水トラップ体は、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面側から前記排水用貫通孔周辺に当着する所要幅の環状当着面を備える本体側フランジ部と、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの上面側から前記本体側フランジ部へ取り付けて固定する固定フランジ部材と、を備え、
3G 前記本体側フランジ部の環状当着面と前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面との間に、所要厚さのスペーサを介在させることで、前記浴槽側パンに取り付けた前記第1排水トラップ本体の貯水空部と前記洗い場側パンに取り付けた前記第2排水トラップ本体の貯水空部との相対的高さを調整できるようにした
3E ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水トラップ装置。
【請求項4】
4H 前記スペーサは、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面側に押し当たる上面および/または前記本体側フランジ部の前記環状当着面に押し当たる下面に、密封構造を設けた
4E ことを特徴とする請求項3に記載の排水トラップ装置。
【請求項5】
5I 前記スペーサには、前記本体側フランジ部の前記環状当着面に押し当たる前記下面の外側から下方に延出するホールド部を設け、
5J 前記スペーサの前記ホールド部を前記本体側フランジ部の外周上部に嵌め込むことで、前記スペーサが前記本体側フランジ部から脱落することを防止するようにした
5E ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の排水トラップ装置。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和5年4月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

明確性)令和5年1月27日付け訂正請求により訂正された請求項1〜5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

明確性要件違反の取消理由の具体的内容
令和5年4月20日付け取消理由通知(決定の予告)において記載した、明確性要件違反の取消理由の具体的内容は、令和5年1月27日付け訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明の特許請求の範囲の「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う所定の近接方向」の記載、及び、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通って前記近接方向に向かう第1仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通って前記近接方向に向かう第2仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレても」の記載において、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体」は、常に「理想的な配置」にあることから、どのような方向ヘズレても「理想的な配置」であり、そうすると、「理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレても」の記載において、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置」が「理想的な配置から」「ズレ」るとは、どのような配置であることを特定しようとしているのか不明であり、明確でない、というものである。
また、請求項1または請求項2を引用する請求項3〜5に係る発明も、明確でない、というものである。

3 当審の判断
(1) 上記第1の「手続の経緯」に付記したとおり、令和5年1月27日にされた訂正の請求は、同年6月26日に本件訂正請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。
また、上記第2に示したとおり、本件訂正は認められ、本件特許の請求項1〜5に係る発明を特定する特許請求の範囲の記載は、上記第3に記載したとおりに訂正された。
そして、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1及び請求項2の記載において、「理想的な配置」とは、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である」ことが特定されて明確となり、「理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレる」配置についても明確となったので、先の取消理由通知(決定の予告)において通知した取消理由は解消した。

(2) 申立人の主張について
ア 申立人は、令和5年8月4日付け意見書の7頁5〜12行において、
「(5) 願書に添付した明細書の段落【0035】、【0037】および図3には、第1排水トラップ体と第2排水トラップ体の取付位置が理想的な配置からC1,C2方向へαまたは−αだけズレが生じている場合が示されているだけであり、「第1排水トラップ体と第2排水トラップ体の取付位置が近接方向に直交する方向ヘズレること」が「第1仮想連結管の開口端面と第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレること」であるとは記載されてない。よって、当該訂正は出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないというべきである。」と述べている。
上記主張について検討すると、まず、上記2(2)ウで検討したように、【0035】、【0037】、図3(b)(c)に、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレ」たものが示されている。
また、請求項1及び請求項2に係る発明の特許請求の範囲には、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても」と記載されていることから、「前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレ」ることは、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向ヘズレ」た結果のうちの一態様を例示したに過ぎない。
してみると、「第1排水トラップ体と第2排水トラップ体の取付位置が近接方向に直交する方向ヘズレること」が「第1仮想連結管の開口端面と第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレること」であるとする上記申立人の主張は認められない。
以上のことから、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、上記申立人の主張は認められない。

イ 申立人は、同意見書の7頁13〜18行において、
「仮に、当該訂正が、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるとしても、「仮想連結管」という、いかようにも解釈可能な仮想の構成に基づいて発明を特定することはできないし、また、「開口端面」がどのような形状か請求項内に記載が無いため、「開口端面が平行にズレる」とはどのような状態なのか不明確であり、また、そのズレを特定することも不可能であるから、訂正後の請求項1〜5も不明確というべきである。」と述べている。
しかしながら、「第1仮想連結管」及び「第2仮想連結管」は、請求項1、2における「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる」との特定から、明確に定義されるものであり、上記アで説示のとおり、「開口端面が平行にズレる」のは、「前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレ」た結果のうちの一態様の例示であるから、「開口端面」がどのような形状か請求項内に記載が無いからといって、本件発明1〜5が明確でないとはいえず、上記申立人の主張は認められない。

ウ 申立人は、同意見書の8頁1〜12行において、
「(6)特許権者は、乙第1号証の(a)に示された配置状態を「理想的な配置」で、同(b)および(c)に示された配置状態を「理想的な配置からズレた配置」であると区別を意図しているようであるが、同(b)および(c)に示された配置状態でも、第1仮想連結管の開口端面と第2仮想連結管の開口端面とが近接して正対している状態、つまり、特許権者のいう「理想的な配置」を作り出すことは可能である。第1仮想連結管の開口端面と第2仮想連結管の開口端面とを斜めに傾けた状態で正対させれば同(b)および(c)の配置状態でも「理想的な配置」になりうる。つまり、「第1排水トラップ体と第2排水トラップ体とが向き合う近接方向」が定義されておらず、また、仮想連結管という仮想の構成について、その形状も定義されていなければ、第1仮想連結管の開口端面と第2仮想連結管の開口端面とを正対させる構成は同(a)の配置状態に限られることはなく、同(b)および(c)の配置状態でも構成することができる。」と述べている。
しかしながら、本件発明1〜5の「理想的な配置」は、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態であ」り、申立人の言う「第1仮想連結管の開口端面と第2仮想連結管の開口端面とが近接して正対している状態」とは異なるものである。
また、請求項1において、「近接方向」は、「配管継ぎ手」が「外方に突出して」「湾曲状」に向かう方向、「配管継ぎ手」の「連結口」が「開口する」方向としても限定されており、請求項2においても同様に限定されていることから、申立人の「「第1排水トラップ体と第2排水トラップ体とが向き合う近接方向」が定義されて」いないとの主張には根拠がない。
よって、上記申立人の主張は認められない。

(3) 以上のことから、本件発明1〜5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであり、先の取消理由通知(決定の予告)に記載した理由によって、取り消されるべきものではない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人が令和4年9月2日付けの特許異議申立書において申し立てた特許異議申立理由のうち、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった理由は、概略次のとおりである。

(1)新規性(特許法第29条第1項第3号
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載されている。

(2)進歩性(特許法第29条第2項
ア 請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求項3〜5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 証拠について
(1)申立人が提出した証拠のうち、本決定において引用する証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:特開2003−342987号公報
甲第2号証:特開2005−171483号公報
甲第3号証:特開2004−278090号公報
甲第4号証:特開2003−232064号公報
甲第5号証:特開2008−261124号公報
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。

(2) 甲1
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

「【0016】図1に本発明の実施例の浴室の排水装置を浴室に設置した状態を示す断面図、図2は同浴室の排水装置の斜視図である。上部に洗い場排水口11を有し、トラップ機能を備えたマス部13は洗い場8に螺合しており、前記マス部13の側面には浴槽排水ホース10aと浴槽受け排水ホース12aがそれぞれ接合されており、また前記マス部13の側面に設けられ雑排水口14には雑排水管14aが接合されており、これらは全てマス部13を介して連通している。
【0017】前記浴槽排水ホース10aの他端は浴室排水口10に接合しており、前記浴槽受け排水ホースの12a他端(当審注:「前記浴槽受け排水ホース12aの他端」の誤記と認められる。)は浴槽受け排水口12に接続されている。また前記浴槽受け排水口10には逆流防止装置15が着脱自在に係合している。」

「【図1】



「【図2】



イ 認定事項
(ア) 【0016】の「上部に洗い場排水口11を有し、トラップ機能を備えたマス部13は洗い場8に螺合しており」の記載、及び、図1から見て、甲1には、「洗い場8は薄板状で、その凹部に有する開口にマス部13が螺合される」ことが記載されていると認められる(認定事項ア)。

(イ) 【0016】には、「前記マス部13の側面には」「浴槽受け排水ホース12aが接合されており」と記載されている。
また、図1及び図2から、マス部13の浴槽受け排水ホース12aが接合される側面は、浴槽受け排水口12側とは異なる側面であることが見て取れる。
これらのことから、甲1には、「マス部13の浴槽受け排水口12側とは異なる側面に浴槽受け排水ホース12aが接合されている」ことが記載されていると認められる(認定事項イ)。

(ウ) 【0017】の「前記浴槽受け排水ホース12aの他端は浴槽受け排水口12に接続されている」の記載、及び、技術常識を踏まえ、図1、図2から見て、甲1には、「浴槽受け排水口12は、浴槽受けの開口に設けられている」ことが記載されていると認められる(認定事項ウ)。

(エ) 図1、図2から見て、甲1には、「洗い場排水口11と浴槽受け排水口12は近接して設けられている」ことが記載されていると認められる(認定事項エ)。

ウ 上記ア及び上記イより、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「上部に洗い場排水口11を有し、トラップ機能を備えたマス部13は薄板状の洗い場8の凹部に有する開口に螺合しており、前記マス部13の浴槽受け排水口12側とは異なる側面には浴槽受け排水ホース12aが接合されており、また前記マス部13の側面に設けられた雑排水口14には雑排水管14aが接合されており(【0016】、認定事項ア、認定事項イ)、
前記浴槽受け排水口12は、浴槽受けの開口に設けられ(認定事項ウ)、
前記浴槽受け排水ホース12aの他端は、洗い場排水口11に近接して設けられた浴槽受け排水口12に接続されている(【0017】、認定事項エ)、
浴室の排水装置(【0016】)。」

(3) 甲2
ア 記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
この発明は、床パンと浴槽が分割された分割式洗い場付き浴槽における排水用部材の接続方法に関するものである。」

「【0009】
このような分割式洗い場付き浴槽1を所定位置に施工するに際し、床パン2を裏返しにして、この床パン2aの洗い場排水口2bにトラップ4を取り付ける。
なお、トラップ4には予めフレキホース6を介在させて浴槽排水接続具(排水エルボ)5が接続されている。
即ち、図2に示すように、トラップ4にフレキホース6を接続し、フレキホース6の他端を、浴槽排水接続具(排水エルボ)5側から一体に形成されている配管5aに接続して、予め短い配管構成でトラップ4には浴槽排水接続具(排水エルボ)5までが接続されており、このように予め浴槽排水接続具(排水エルボ)5まで配管で接続したトラップ4を床パン2の洗い場排水口2bに取り付けるのである。
【0010】
このようにトラップ4を取り付けた後、床パン2を表返しにして現場の所定位置に設置し、その後、設置した床パン2に対し浴槽3を図1のように接続して、浴槽3を所定位置に設置する。
その後に、浴槽3内に作業者が入り、浴槽排水口3aの上方より、浴槽排水口3a内に排水口フランジ10を差し込んで、排水口フランジ10を浴槽排水接続具(排水エルボ)5に締め付け、浴槽排水口3aに浴槽排水接続具(排水エルボ)5を固定できるものである。」

「【図1】



「【図2】



イ 上記アより、甲2には、以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「トラップ4にフレキホース6を接続し、フレキホース6の他端を、浴槽排水接続具(排水エルボ)5側から一体に形成されている配管5aに接続して、予め短い配管構成でトラップ4には浴槽排水接続具(排水エルボ)5までが接続されており、このように予め浴槽排水接続具(排水エルボ)5まで配管で接続したトラップ4を床パン2の洗い場排水口2bに取り付け(【0009】、図1、図2)、
浴槽排水口3aの上方より、浴槽排水口3a内に排水口フランジ10を差し込んで、排水口フランジ10を浴槽排水接続具(排水エルボ)5に締め付け、浴槽排水口3aに浴槽排水接続具(排水エルボ)5を固定する(【0010】、図1、図3)
排水用部材の接続方法(【0001】)。」

(4) 甲3
ア 記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。

「【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を更に具体的に説明する。
図1は、本発明の第1実施例の排水トラップで、(イ)は平面図、(ロ)はA−A断面図、(ハ)はB−B断面図、(ニ)はC−C断面図である。
排水トラップ20は、図示するように、主として、浴室洗い場側からの排水を受ける上部開口部6のある排水トラップ本体1と、浴槽からの排水を受ける口を有するL字状の排水エルボ11とで構成され、排水トラップの出口は排水管(汚水管)に繋がる排水排出管4である。
ここで、排水トラップ本体1の外観は略箱型形状ないしは略四角錐形状で、封水部2と、封水壁部(土手部)3と、封水壁部(土手部)3を介して封水部2に連なる排水排出部4とを備えるほか、その封水部2中には開口部6に固定するように防臭筒13が懸垂・配置され、また、排水トラップ本体1の下部又は底部には、這うようにして管トラップ(浴槽排水の通路)15を設けている。
【0013】
また、排水エルボ11側では、その下側部には横方向に突出する可撓性を有する(蛇腹の)排水配管14が接続され、その先に扁平部5aを有する接続部5が接続され、扁平部5aの先は管トラップ15に接続している。
・・・
【0016】
排水配管14のトラップ本体側では、一部に底部の高さを変えないままに管の頭の位置を低くかつ扁平にした(接続管の)扁平部5aを形成させている。
また、排水配管14は、蛇腹の可撓性の排水配管を用いている。」

「【図1】



イ 上記アより、甲3には、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「浴室洗い場側からの排水を受ける上部開口部6のある排水トラップ本体1と、浴槽からの排水を受ける口を有するL字状の排水エルボ11とで構成され、排水トラップの出口は排水管に繋がる排水排出管4である排水トラップ20であって(【0012】、図1)、
排水エルボ11側では、その下側部には横方向に突出する可撓性を有する(蛇腹の)排水配管14が接続され、その先に扁平部5aを有する接続部5が接続され、扁平部5aの先は管トラップ15に接続し(【0013】、図1)、
排水配管14は、蛇腹の可撓性の排水配管を用いている(【0016】)
排水トラップ20(【0012】)。」

(5) 甲4
甲4には、以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「接続継手1の下端に防水パンBの排水口B2よりも小径として当該排水口B2内を平面方向及び垂直方向に移動可能に突設した接続排水管11と、該接続排水管11の周面、且つ接続排水管11の下端よりも上方に、防水パンBの排水口B2よりも大径として周設したフランジ12と、防水パンBの排水口B2に、浴槽Aの設置時に前記フランジ12と水密状に密着する密着面22を有し(【0007】)、
高さ調整手段21を、防水パンBの排水口B2周りに、変形しやすく、且つ弾性復帰する軟質材を用いて内径を防水パンBの排水口B2と同径以上に形成した環状体とし、この環状体を排水口と同軸上に位置させて接着して構成し、この環状体の上面をフランジ12が密着する密着面22とし(【0008】、図1〜図3)
高さ調整手段21を、内径を前記接続排水管11径以上であり、防水パンBの排水口B2に上下動可能、且つ水密状に嵌合する形状に形成した筒状体とし、この筒状体の上端縁23の上面をフランジ12が密着する密着面22としてもよい(【0009】、図4〜図6)
浴槽の排水口と防水パンの排水口との排水接続構造(【0001】)。」

(6) 甲5
甲5には、以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「排水トラップ側接続管10は、大部分が、可撓性を有するフレキシブル管11で構成され(【0036】)、
フレキシブル管11は、その絶対的な長さが、極力長く形成されており(【0037】)、
浴槽側接続管30は、大部分が、可撓性を有するフレキシブル管33で構成され(【0045】)、
フレキシブル管33は、その絶対的な長さが、極力長く形成されており(【0046】)、
フレキシブル管11及びフレキシブル管33は、十分な絶対長さを有している(【0062】)
ユニットバスの配水管構造(【0027】)。」

3 取消理由通知(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
(1) 本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。なお、見出しは(1a)等とし、本件発明1の分説に対応させている。

(1a) 甲1発明の「浴槽受けの開口」は、本件発明1の「浴槽側パンの排水用貫通孔」に相当し、甲1発明の「浴槽受け排水口12」は、本件発明1の「浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられ」る「排水口」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項1Aと、「浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられ」る「排水口」を備える点で共通する。

(1b) 甲1発明の「洗い場8」は、「薄板状」で「凹部に有する開口に」「マス部13」が「螺合」されることから、甲1発明の「洗い場8」、「開口」は、本件発明1の「洗い場側パン」、「排水用貫通孔」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明の「浴槽受け排水口12」と「洗い場排水口11」が「近接して設けられ」ていることは、本件発明の「前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に」「洗い場側パンの排水用貫通孔」が「設けられる」ことに相当する。
また、甲1発明の「マス部13」は、本件発明1の「(洗い場側パンの)貯水空部」に相当し、甲1発明が「上部に洗い場排水口11を有し、トラップ機能を備えたマス部13」を備えることは、本件発明1の「貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成」することに相当する。
さらに、甲1発明の「前記マス部13の側面に設けられた雑排水口14には雑排水管14aが接合されて」いることは、本件発明1の「前記貯水空部を配水管と連通させる」ことに相当する。
以上のことから、甲1発明の「洗い場8」側の「マス部13」を備える排水装置は、本件発明1の「第2排水トラップ体」に相当し、甲1発明は、本件発明1の特定事項1Bを備える。

(1c) 甲1発明の「浴槽受け排水ホース12a」は、「浴槽受け排水口12」と「マス部13」に接続されることから、本件発明1の「排水連通手段」に相当し、甲1発明の「浴槽受け排水口12」は、本件発明1の「浴槽側パン」側の「排水口」に相当するから、甲1発明は、本件発明1の特定事項1Cと、浴槽側パンの排水口と「前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段」を備える点で共通する。

(1d1) 甲1発明は「前記マス部13の浴槽受け排水口12側とは異なる側面には浴槽受け排水ホース12aが接合され」ることから、「前記マス部13の浴槽受け排水口12側とは異なる側面に」通水孔を備えることは明らかである。
してみると、甲1発明は、本件発明1の特定事項1D1と、「前記第2排水トラップ体の貯水空部に」、浴槽側パンの排水口「と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け」る点で共通する。

(1d3) 甲1発明の「浴槽受け排水ホース12a」が、中空で可撓性を備えることは明らかであるから、甲1発明の「浴槽受け排水ホース12a」は、本件発明1の「中空の可撓性連結体」に相当する。
してみると、甲1発明は、本件発明1の特定事項1D3と、浴槽側の連結口と、「第2排水トラップ体」の連結口とを、「中空の可撓性連結体で接続」する点で共通する。

(1e) 甲1発明の「浴室の排水装置」は、本件発明1の「排水トラップ装置」に相当する。

以上のことから、本件発明1と甲1発明は、
「1A’浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられる排水口と、
1B 前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
1C’浴槽側パンの排水口と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
1E を備えた排水トラップ装置において、
1D 前記排水連通手段は、
1D1’前記第2排水トラップ体の貯水空部に、浴槽側パンの排水口と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
1D3’浴槽側の連結口と、前記第2排水トラップ体の連結口を中空の可撓性連結体で接続した、
1E 排水トラップ装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](特定事項1A)
「第1排水トラップ体」に関して、
本件発明1は、「浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する」のに対し、
甲1発明は、「浴槽受けの開口」に取り付けられる「浴槽受け排水口12」は有するものの、本件発明1の「貯水空部」を備えているか不明であるため、「トラップ構造の排水口を形成」するか不明である点。

[相違点2](特定事項1C)
「排水連通手段」に関して、
本件発明1は、「前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続」しているのに対し、
甲1発明は、「マス部13」に「浴槽受け排水ホース12aが接合され」、「浴槽受け排水ホース12aの他端は」、「浴槽受け排水口12に接続されている」点、すなわち、「浴槽受け排水口12」(「浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられ」る「排水口」)が「貯水空部」を備えているか不明であるため、本件発明1の特定事項1Cの構成を備えているか不明である点。

[相違点3](特定事項1D1)
「通水孔」に関して、
本件発明1は、「前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け」ているのに対し、
甲1発明は、「前記マス部13の浴槽受け排水口12側とは異なる側面には」通水孔が設けられているが、「浴槽受け排水口12」が「貯水空部」を備えているか不明であるため、本件発明1の特定事項1D1の構成を備えているか不明である点。

[相違点4](特定事項1D2)
本件発明1は、「前記第1排水トラップ体の通水孔および前記第2排水トラップ体の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け」ているのに対し、
甲1発明は、本件発明1の「配管継ぎ手」に相当する構成を備えているか不明である点。

[相違点5](特定事項1D3)
本件発明1は、「前記第1排水トラップ体および前記第2排水トラップ体にそれぞれ設けた前記配管継ぎ手の前記連結口同士を中空の可撓性連結体で接続」しているのに対し、
甲1発明は、本件発明1の「配管継ぎ手」に相当する構成を備えているか不明であるため、本件発明1の特定事項1D3の構成を備えているか不明である点。

[相違点6](特定事項1D4)
本件発明1は、「前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレることで前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記配管継ぎ手の前記連結口同士の離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるように」しているのに対し、
甲1発明は、「配管継ぎ手」を備えているか不明であるため、このような位置関係を備えているか不明である点。

イ 判断
(ア) 相違点1〜6は、いずれも実質的な相違点と認められる。
してみると、本件発明1は、甲1発明とはいえない。

(イ) 相違点1について検討する。
甲2記載事項は、浴槽側の排水用部材の接続方法として、「浴槽排水口3aの上方より、浴槽排水口3a内に排水口フランジ10を差し込んで、排水口フランジ10を浴槽排水接続具(排水エルボ)5に締め付け、浴槽排水口3aに浴槽排水接続具(排水エルボ)5を固定する」ものであるところ、甲2記載事項の「浴槽排水接続具(排水エルボ)5」は、本件発明1の「第1排水トラップ体」が備える「浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する」という、上記相違点1に係る構成を有するものとはいえない。
また、甲3記載事項は、浴槽側の排水部材として、「浴槽からの排水を受ける口を有するL字状の排水エルボ11」を備えるものであるところ、甲3記載事項の「排水エルボ11」は、本件発明1の「浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体」に相当する構成を備えてるとはいえないから、甲3記載事項は、上記相違点1に係る本件発明1の構成を有するものとはいえない。
そして、甲4記載事項も甲5記載事項も、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有するものではない。
さらに、甲1には、「浴槽受け排水口12」に、本件発明1の「貯水空部」に相当する構成を設けることについて記載も示唆もない。
以上のことから、甲1発明に、甲2記載事項〜甲5記載事項を適用することにより、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(ウ) 相違点2〜相違点6は、いずれも甲1発明が、本件発明1の「貯水空部」に相当する構成を備えているか不明であることを前提とするものである。
してみると、上記(イ)と同様に、甲1発明に、甲2記載事項〜甲5記載事項を適用することにより、上記相違点2〜6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(エ) 以上のことから、本件発明1は、当業者であっても、甲1発明及び甲2記載事項〜甲5記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2) 本件発明2
本件発明2も、本件発明1の特定事項1A((1)の相違点1に係る構成)と同一の構成(特定事項2A)を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明及び甲2記載事項〜甲5記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3) 本件発明3〜5
本件発明3〜5は、本件発明1または2の発明特定事項を含み、さらに限定したものであるところ、本件発明1または2が甲1発明及び甲2〜甲5記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない以上、本件発明3〜5も同様に、当業者が容易に発明できたものではない。

(4) 小括
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件発明1〜5は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件発明1〜5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由により取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1〜5に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、
前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
を備えた排水トラップ装置において、
前記排水連通手段は、
前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
前記第1排水トラップ体の通水孔および前記第2排水トラップ体の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け、
前記第1排水トラップ体および前記第2排水トラップ体にそれぞれ設けた前記配管継ぎ手の前記連結口同士を中空の可撓性連結体で接続し、
前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記配管継ぎ手の前記連結口同士の離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるようにした、
ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項2】
浴槽側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成する第1排水トラップ体と、
前記浴槽側パンの排水用貫通孔近傍に設けられる洗い場側パンの排水用貫通孔に取り付けられて、貯水空部の所定高さまで封水が溜まるトラップ構造の排水口を形成し、前記貯水空部を配水管と連通させる第2排水トラップ体と、
前記第1排水トラップ体の貯水空部と前記第2排水トラップ体の貯水空部とを接続する排水連通手段と、
を備えた排水トラップ装置において、
前記排水連通手段は、
前記第1排水トラップ体の貯水空部および前記第2排水トラップ体の貯水空部に、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体とが向き合う近接方向とは異なる向きに通水孔を設け、
前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の何れか一方の通水孔に連通し、外方に突出して前記近接方向へ向かう湾曲状で、前記近接方向に向かって開口する連結口が形成された配管継ぎ手を設け、
前記配管継ぎ手を設けない他方の前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体には、前記通水孔から外方に突出する連結管を設け、
前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の一方に設けた前記配管継ぎ手の前記連結口と前記第1排水トラップ体または前記第2排水トラップ体の他方に設けた前記連結管の開口端と、を中空の可撓性連結体で接続し、
前記第1排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第1排水トラップ体から突出した第1仮想連結管の中心を通る仮想中心線と、前記第2排水トラップ体における前記排水口の開口中心を通り、かつ、前記近接方向に向かって前記第2排水トラップ体から突出した第2仮想連結管の中心を通る仮想中心線とが一直線になる取り付け状態である前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の理想的な配置から、前記第1排水トラップ体と前記第2排水トラップ体の取付位置が前記近接方向に直交する方向へズレることで、前記第1仮想連結管の開口端面と前記第2仮想連結管の開口端面とが平行にズレても前記中空の可撓性連結体で接続できるように、前記連結管の開口端と前記配管継ぎ手の前記連通口との離隔距離が、前記中空の可撓性連結体で接続可能な長さ以上となるようにした、
ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項3】
前記第1排水トラップ体および/または前記第2排水トラップ体は、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面側から前記排水用貫通孔周辺に当着する所要幅の環状当着面を備える本体側フランジ部と、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの上面側から前記本体側フランジ部へ取り付けて固定する固定フランジ部材と、を備え、
前記本体側フランジ部の環状当着面と前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面との間に、所要厚さのスペーサを介在させることで、前記浴槽側パンに取り付けた前記第1排水トラップ本体の貯水空部と前記洗い場側パンに取り付けた前記第2排水トラップ本体の貯水空部との相対的高さを調整できるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水トラップ装置。
【請求項4】
前記スペーサは、前記浴槽側パンまたは前記洗い場側パンの下面側に押し当たる上面および/または前記本体側フランジ部の前記環状当着面に押し当たる下面に、密封構造を設けたことを特徴とする請求項3に記載の排水トラップ装置。
【請求項5】
前記スペーサには、前記本体側フランジ部の前記環状当着面に押し当たる前記下面の外側から下方に延出するホールド部を設け、
前記スペーサの前記ホールド部を前記本体側フランジ部の外周上部に嵌め込むことで、前記スペーサが前記本体側フランジ部から脱落することを防止するようにしたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の排水トラップ装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-09-27 
出願番号 P2017-155306
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (E03C)
P 1 651・ 121- YAA (E03C)
P 1 651・ 537- YAA (E03C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 蔵野 いづみ
北川 創
登録日 2022-03-04 
登録番号 7034626
権利者 タカラスタンダード株式会社
発明の名称 排水トラップ装置  
代理人 水崎 慎  
代理人 福田 伸一  
代理人 高橋 克宗  
代理人 水崎 慎  
代理人 福田 伸一  
代理人 高橋 克宗  

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